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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1373016
審判番号 不服2019-7227  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-03 
確定日 2021-04-07 
事件の表示 特願2016-199937「ビロキサジン塩を製造する方法及びその新規な多形」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月23日出願公開、特開2017- 39754〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2011年4月12日(パリ条約による優先権外国庁受理 2010年4月12日(US)米国)を国際出願日とする特願2013-505028号の一部を平成27年7月15日に特願2015-141683号として新たな特許出願とし、さらにその一部を平成28年10月11日に新たな特許出願としたものであって、平成28年11月8日に手続補正書が提出され、平成29年6月21日付けで拒絶理由が通知され、同年12月25日に意見書および手続補正書が提出され、平成30年5月14日付けで拒絶理由が通知され、平成31年1月29日付けで拒絶査定され、令和1年6月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年11月20日付けで上申書が提出され、当審から令和2年6月29日付けで拒絶理由が通知され、同年9月25日に意見書が提出されたものである。
第2 本願発明について
この出願の特許請求の範囲の1?4記載は、令和1年6月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「 【請求項1】
図6に示される粉末X線回折スペクトルと、図9に示されるラマン赤外線スペクトルと、188℃の示差走査熱量(DSC)の融点を有する、塩酸ビロキサジン多形体A。」

第3 当審の拒絶の理由
当審からの令和2年6月29日付け拒絶理由の理由は、以下のとおりである。
「第3 拒絶理由
理由:この出願の下記の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:P.F.C.BAYLISS,D.E.CASE,Br.J.clin.Pharmac.,1975年,2巻,p.209?214
刊行物2 岡野定舗編著,新・薬剤学総論(改訂第3版),株式会社南江堂,(1987年4月10日),p.26,111,256,257
刊行物3 C. G. WERMUTH編,長瀬博監訳,最新 創薬化学 下巻,株式会社テクノミック,(1999年9月25日),p.452-453
刊行物4 社団法人日本化学会編,化学便覧 応用化学編 第6版,丸善株式会社(2003年1月30日),p.178
刊行物5 平山令明編,有機結晶作製ハンドブック,丸善株式会社,(2000年4月20日)p.110?112,125
刊行物6 松岡正邦監修,結晶多形の基礎と応用,株式会社シーエムシー出版,(2010年10月22日),p.105
刊行物7 浅原照三 外4名編,溶剤ハンドブック,株式会社講談社,1985年9月1日,p.47?51
刊行物8:社団法人日本化学会編,「第5版 実験化学講座5 -化学実験のための基礎技術-」,丸善株式会社,平成17年2月28日,p.24?25

なお、刊行物2?8は、本願優先日時点の技術常識を示すためのものである。」

第4 当審の判断
当審は、上記当審の拒絶の理由のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明及び本願の優先日前の技術常識に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと考える。
なお、刊行物2?8及び電子的技術情報9は、本願優先日時点の技術常識を示すためのものである。
理由は、以下のとおりである。

1 引用刊行物びその記載事項
(1)刊行物1:P.F.C.BAYLISS,D.E.CASE,Br.J.clin.Pharmac.,1975年,2巻,p.209?214
原査定で引用された本願優先日前に頒布された刊行物である上記「刊行物1」には、次の記載がある。
訳文にて示す。
(1a)「新規抗うつ剤であるビロキサジン塩酸塩の薬物動態学的特性が4つの別々の研究として調査された。 」(209頁 要約の欄 1?2行)

(1b)「ビロキサジン塩酸塩(ICI 58,834,2-(2-エトキシフェノキシメチル)-2,3,5,6,テトラヒドロ-1,4-オキサジン, ビヴァラン)は、新規化学構造の新規抗うつ剤である。」(209頁 左欄 緒言の欄 1?4行)

(1c)「薬物の薬物動態力学的特性は治療用途、このケースでは抗抑うつ剤の領域に関連して考えられなければならない。ビロキサジン塩化水素塩は、急速にほとんど完全に経口で1?4時間以内で、最高血中濃度で吸収される。」(213頁 右欄 考察の欄 1?6行)

(2)刊行物2:岡野定舗編著,新・薬剤学総論(改訂第3版),株式会社南江堂,(1987年4月10日),p.26,111,256,257

本願優先日前に頒布された刊行物である上記「刊行物2」には、次の記載がある。
(2a)「1.2.3 化学構造と溶解性
・・・
ix.結晶多形では準安定形(低融点)のものの方が安定形(高融点)のものより溶けやすい(例.インドメタシン).^(*)
x.同種薬品で無晶性のものは結晶より溶けやすい(例.novobiocin)^(**).」(26頁10?27行)

(2b)「多形polymorphism:同一化合物が異なる結晶構造,結晶形をもつ現象を多形という.多形の結晶はX線回折像,融点,屈折率,溶解度などが異なる.多くの化合物は多形で,医薬品でも,アスピリン,インドメタシン,カカオ脂,グリセリド,脂肪酸,スルホンアミド類,セファロリジン,バルビタール類,chloramphenicol palmitate,ステロイドホルモン(プレドニゾロン,エストロンなど),リボフラビンなど多くのものについて結晶多形が報告されている.^(3)) プロゲステロンには5種の結晶形が知られている.
結晶多形によって溶解度が異なる事実は製剤学的に重要で,多くの場合,結晶の溶解度(または溶解速度)は消化管吸収を律速するが,溶解度の大きい方が吸収が速い.多形のうち安定性の低い結晶(準安定形meta-stable form)の方が安定形stable formより融点が低く,溶解度も大きい.Ostwaldによれば,溶液から結晶が析出するさいには,準安定形の方がさきに結晶化する(逐次転移の法則law of successive transformation).結晶形の移行は,再結溶媒,結晶化の速さ(冷却温度)および保存の温度条件,粉砕などによって起きる.たとえばアスピリンを95%エタノールから再結したものと,n-ヘキサンから再結したものは結晶形が異なるが,後者の方がはるかに速やかに水に溶解する.」(111頁3?18行)

(2c)「c)結晶形crystal form
すでに述べたように,多くの薬物は結晶多形^(*) を示し,多形のうち準安定形の方が安定形より溶解度が大きい.
Chloramphenicol palmitateの結晶には少なくともA,B2種の多形があり,B型の方が易溶性である.懸濁液を経口投与するとき,B型のCmax はA型の7倍であることが報告されている.^(5)) また,インドメタシンには3種の結晶多形があるが,このうちα,γ両型が実用される.坐剤にした場合,α型の溶出性はγ型の約2倍とすぐれており・・・血中濃度もα型の坐剤の方が高い・・・.
結晶多形のうち,溶解度の大きい準安定形は安定形より熱力学的に不安定で,時間がたつにつれて前者は後者に転移する.したがって準安定形の薬物を用いて製剤をつくる場合は,そのバイオアベイラビリティが保存中に低下することに留意する必要がある.
薬物の無晶形のものは溶解時に結晶の格子エネルギーに打ち勝つ必要がないので,結晶性のものに比べて溶解しやすい.インスリン-亜鉛錯体には結晶性のものと無晶性のものがあるが,後者の方が吸収が速やかである・・・.」(256頁下から3行?257頁下から8行)

(3)刊行物3: C. G. WERMUTH編,長瀬博監訳,最新 創薬化学 下巻,株式会社テクノミック,(1999年9月25日)p.452?453,347?365
本願優先日前に頒布された刊行物である上記「刊行物3」には、次の記載がある。

(3a)「IV.メソモルフィック結晶(mesomorphic crystalline)^(〔訳註5〕) の取り扱い□
ある種の物質は結晶となるときに複数の結晶状態をとりうることが知られている.その結晶状態に決定する要因には,結晶化溶媒の物性,結晶化するときの温度,不純物の有無などがある.このような性質を結晶多形または単に多形(polymorphism)という.可能な結晶状態のなかには準安定な結晶がある.準安定状態(metastable state)の結晶はより安定な状態に変化して異なる物理化学性質を示すことになる.この変化は2つのタイプに分けられる.可逆的転移である互変(enantiotropy)と不可逆的転移の単変(monotropy)である.前者は文字どおり多形のそれぞれの状態が相互変換可能な場合である.後者は,熱力学的に不安定な状態からより安定な状態へ変化する現象であり,一般的にはこの種の転移が多い.ある薬物が異なる結晶形を示すときに,それぞれの結晶形を識別する方法には,融点測定,溶解度測定,示差走査熱量測定,熱重量分析,赤外分光,X線回折,走査電子顕微鏡による形態観察などがある.
一般論として,準安定状態の物質には安定状態に比べてその溶解度および溶解速度が大きいという特徴がある.極端な場合,両状態の溶解度の差が4倍以上にもなることがあるが^(21,22),通常よく観察されるのは溶解度が50?100%程度上昇する現象である^(23).一例としてここではリボフラビン(riboflavin)を挙げる.この薬物には3種の多形があり,その溶解度はそれぞれ60mg/L,810mg/L,1200mg/Lと大きな開きがみられる^(24).また,準安定状態の結晶を溶媒と接触できるようにしておくと,この結晶は最も安定な状態に徐々に変化し,これに伴って溶解度が低下することがある.たとえば,ノボビオシン(novobiocin)は酸性のアモルファス固体(無定形または非晶質固体)であるが,溶解度の非常に低い結晶に変化しやすい^(25).このためにノボビオシンを懸濁液として投与することは困難である.薬物を噴霧乾燥(spray drying)によって溶解度の高いアモルファス固体とすることがある.この場合,純粋な薬物を噴霧しても良いが,実際には均質な分散薬物を得るために添加剤を加えることが多い^(26).
ある結晶状態が他の状態に変化する現象すなわち転移は,工業的な製造プロセスにおいても起こりうる.たとえば,クロロキン二リン酸(chloroquine diphosphate)の一水和物の結晶を高温で保存しておくと無水物となることがある.この脱水反応は薬物を粉砕する際にも起こりやすい.さらにクロロキン二リン酸無水物を湿度の高い状態で保存していると他の水和物に転移することもある.また,薬物の原末を圧縮する際にも結晶形の変化が起こりうる^(27).クロラムフェニコール(chloramphenicol)のステアリン酸塩の場合は,A結晶(form A)をコロイドシリカ(colloidal silica)の存在下で粉砕するとB結晶(form B)に変化することが知られている^(28).以上の事例から明らかなことではあるが,固体の薬物を製造する場合は,プロセスを標準化するのと同時に,品質管理の一環として固体薬物の結晶状態に関するより精密な検査を行うことが特に重要であることをここで強調しておきたい.
・・・
(a)塩または錯体の生成
抗ヒスタミン剤,神経遮断剤,局所麻酔剤などの薬効分類に属する薬物の多くは塩基性の油状物質である.これらの薬物を固体とする方法として,塩酸,リン酸,酒石酸などの適切な酸との塩に変換することが代表的な手段と考えられる(34章も参照).」(452頁下から12行?453頁31行)

(3b)「34章
塩形成による
水溶性有機化合物の調製
・・・
I.薬物評価の初期段階における
水溶性塩の重要性・・・
・・・複数の塩を検討した中で最も水溶性の高い塩を医薬品候補として選択すべきことは言うまでもない.・・・
・・・
IV.対イオンの構造と溶解度の関係・・・
・・・
弱塩基性薬物には強酸との塩,弱酸性薬物には強塩基との塩が好ましいとする上記の指針は,与えられた薬物の中性の固体におけるpHと溶解度の挙動に由来するものである.しかし,上記の基準では第一選択となり得る塩酸塩やナトリウム塩といった塩・・・
・・・
薬物の塩の選定は,固形製剤ではさらに重要である.・・・
・・・
V.最適な塩の選定基準・・・
・・・
(1)吸湿性が低いこと
(2)さまざまな保存条件のもと,結晶形が完全に保持されること
(3)水に対する十分な溶解性があること
(4)化学的に安定であること
・・・
A.さまざまな保存条件下における吸湿性/結晶性

製剤化条件下における周囲の相対湿度(30?50%RH)条件,乾燥中または錠剤の圧縮時などの高温の条件において吸湿性もしくは除湿傾向の大きい塩は,製剤上の観点から望ましい性質とはいえない.・・・
・・・
B.塩の化学的安定性
特に固体状態での薬物の化学的安定性が薬物の吸湿性と密接に関係する一方で,安定性の見地から最適な塩形態の選定には,以下の吸湿性以外の因子も考慮する必要がある.」(347頁1行?361頁6行)

(4)刊行物4:社団法人日本化学会編,化学便覧 応用化学編 第6版,丸善株式会社(2003年1月30日),p.178
本願優先日前に頒布された刊行物である上記「刊行物4」には、次の記載がある。
(4a)「4.3.3 晶析
a.晶析とその役割
晶析は,目的の特性を有する結晶を,再現性よく,確実に製造する技術である.晶析は,化学物質の製造全般に広く用いられており,分離精製のみならず,機能性固体(結晶)の生産という観点からも重要である.たとえば,糖・アミノ酸などの食品の製造,記録媒体としてのα-鉄(α-Fe)・マグへマイト(γ-Fe_(2)O_(3))などの電子材料の製造,ナノ粒子の製造,さらにその90%が結晶である医薬品(原薬)とその中間体の製造などであり,いずれも結晶特性の制御が高度に要求されている.
1998年の調査(化学工学会晶析技術特別研究会)によれば,わが国で行われている晶析は,80%が溶液からの晶析である.また,75%が回分法で行われている.次に融液からの晶析が多く,大規模の精製晶析についても優れた技術,たとえばKCP法(呉羽テクノエンジ)が開発されている.

b.結晶特性
おもな結晶特性は,晶癖・粒径・粒径分布・純度・多形・結晶化度である.これらの特性が異なれば,溶解度・溶解速度・安定性・比容・操作性(ろ過性(注:ろ過の「ろ」は原文ではさんずいに戸であるが、ひらがなで記す。以下も同じ。)・粉じん爆発性・打錠性・計量性)などが異なり,医薬品ではとくにバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)が異なることから,結晶特性の制御は非常に重要である.
(i) 晶癖 ・・・
(ii) 粒径・粒径分布・・・
(iii) 純度 結晶への不純物の取込みについては,二つのメカニズムがある.母液の結晶への取込み,あるいは結晶表面への付着によるものと,結晶構造への組込みによるものである.前者は,結晶成長の粗さ,凝集などによって引き起こされるものであり,晶析速度の調整,洗浄などで解決する可能性がある.後者は,溶媒の変更,多形の選択など根本的な変更が必要である.結晶溶媒(結晶構造に組み込まれた溶媒)も不純物と見なすことができる.
(iv) 多形 化合物は同じで,結晶構造が異なるものである.結晶溶媒の有無で溶媒和結晶は擬多形とよばれている.多形結晶は,外観のみでは判断できない.粉末あるいは単結晶X線回折・赤外吸収(IR)・示差走査熱量測定(DSC)などで同定する必要がある.多形は,溶媒の種類・温度・冷却速度・過飽和度・かくはん速度・不純物などに影響を受ける.溶媒によって異なる多形が析出する場合が多く,重要な溶媒については混合溶媒も含めて,どのような結晶が析出するか,点検することが必要である.溶媒を選択することによって,目的の結晶多形が唯一選択的に得られる場合と,いったん析出した結晶多形(準安定結晶)が経時的に他の多形(安定結晶)に転移する,いわゆる溶媒媒介転移が起こる場合がある.溶媒媒介転移が起こるのは,準安定結晶と安定結晶の溶解度が異なるためである.どの多形が析出するかはオストワルドの段階則(Ostwald's step rule;状態の移行は,エネルギー的にもっとも近い状態を経由して順次に進行するという法則)に従うとされており,通常,溶解度が大きいほうの結晶が先に析出する.しかし,オストワルドの段階則に従わない場合もあり,多形を制御するためには,平衡論(オストワルドの段階則)のみではなく,速度論的な検討を行う必要がある.

c.晶析操作
晶析操作としては,冷却晶析,濃縮晶析,反応晶析,貧溶媒晶析が多い.・・・」(178頁左欄5行?右欄下から7行)

(5)刊行物5:平山令明編,有機結晶作製ハンドブック,(平成12年4月20日)丸善株式会社,p.110?112,125
本願優先日前に頒布された刊行物である上記「刊行物5」には、次の記載がある。
(5a)「6.5 医薬品の結晶化例
6.5.1 一般的な結晶化条件
医薬品を開発するうえで,初期段階においては種々の条件下における結晶多形の検索を行い,製剤化検討の結果なども考慮して開発の基本形となる結晶形を選択する.その後,工業化に向けたスケールアップの検討を行い,工場での生産が安定に行えるように準備する必要がある.したがって,開発初期段階における結晶多形の有無などを含めた結晶状態の検討は,医薬品の開発を効率的に進めるうえで非常に重要である.ここでは,医薬品を結晶化する一般的な条件を示し,さらに医薬品の結晶化の実例を記述する.
一般に使用される晶析溶媒としては,水,メタノール,エタノール,1-プロパノール,2-プロパノール,・・・,酢酸エチル,アセトン,・・・,トルエン,・・・ジメチルホルムアミドなどである.
結晶化はおよそ以下のような方法を用いる.
(1)試料を水浴上で加温した溶媒に加え,飽和溶液を調製する.熱時炉過し,残留試料を除いた後,室温付近まで徐々に冷却する.
(2)試料を水浴上で加温した溶媒に加え,飽和溶液を調製する.熱時炉過し,残留試料を除いた後,氷などにより急冷する.
(3)試料を適当な溶媒に溶かした液に,試料が溶けにくい溶媒を滴下する.
(4)試料を適当な溶媒に溶かした液をエバポレータなどを用いて脱溶媒する.
・・・」(125頁1?24行)

(5b)「6.2.1 結晶多形の検索
複数の結晶相が存在する結晶多形は,医薬品においてもしばしば認められる現象である.しかし,結晶構造と晶析条件との相間はいまだ解明されておらず,結晶多形の有無は試行錯誤を繰り返しつつ求めざるを得ないのが現状である.したがって,偶然に見いだされる場合も少なくないが,結晶多形に重要な影響を与えると思われる各因子を適宜組み合わせ,比較的簡便な方法で検索しているいくつかの報告もある^(4,5)).
表6.1はその例の一つで,抗高血圧剤あるいは利尿剤として広く用いられているFurosemide[図6.1(a)]での析出条件と,各結晶形の析出挙動をまとめたものである^(4)).医薬品における結晶多形の制御は溶媒の選択によってなされることが多いが,ここでも水を含めて18種類の溶媒が検討に用いられた.これら溶媒に対して,さまざまな冷却法や溶媒の蒸発法を組み合わせることにより温度や過飽和度の異なる条件を発生させた.その結果,従来はI形とII形の2種の多形についてだけ報告されていたが,新たに多形1種(III形)と,N,N-ジメチルホルムアミドおよび1,4-ジオキサンを含有した2種の溶媒和物(IV形およびV形)が見いだされた.表6.1(1)の加温溶解し徐冷する方法においてはメタノールやエタノールのような低沸点の溶媒からI形が,ブタノールなどのより高沸点の溶媒からII形が析出する傾向がみられた.(3)の有機溶媒に加温溶解し水を添加する方法でも,また(4)のN,N-ジメチルホルムアミドに加温溶解し他の溶媒を添加する方法においても,同様の傾向がみられた.」(110頁25行?111頁16行)

(5c)「

」(111?112頁表6.1)

(6)刊行物6 松岡正邦監修,結晶多形の基礎と応用(2010年10月22日)株式会社シーエムシー出版,p.105
本願優先日前に頒布された刊行物である上記「刊行物6」には、次の記載がある。

(6a)「1 医薬品研究開発における結晶多形スクリーニングの重要性
同一化合物であっても,それぞれの結晶多形の間で溶解性,物理化学的安定性は異なる^(1))。医薬品の吸収性に影響する溶解性,貯法・使用期限に影響する物理化学的安定性は重要な物性であり,最終的に医薬品の有効性,安全性をも左右する。
結晶多形は,溶解性,物理化学的安定性が異なるばかりでなく,多形間で準安定形は再安定形へ転移する。・・・結晶多形スクリーニングを適切に実施し,存在し得る結晶多形を見出し,熱力学的に安定な結晶形を明らかにしなければならない。」(105頁8?17行)

(7)刊行物7:浅原照三 外4名編,溶剤ハンドブック,株式会社講談社,1985年9月1日,p.47?51
本願の優先日前に頒布された刊行物である上記「刊行物7」には、以下の記載がある。
(7a)「3.2 再結晶
再結晶の目的達成には,その技術的操作法とともに適当な溶媒の使用が重要な要素となる.この適合した溶媒選びはもちろん少量の予備実験においてなされるわけであるが,なるべく早く最適の溶媒を見つけるにはいくつかのルール,または経験則がある.

3.2.1 溶媒の選び方
・・・
3.2.2 溶媒選択上の注意
・・・
3.2.3 再結晶溶媒の種類と特徴
再結晶溶媒として普通使用されるものを表3.3と表3.4にあげる.表3.3は最も一般的に使用される溶媒で,これらのもので成功しない場合に表3.4にあげられている少し特殊なものの使用が推奨される.なお表3.3の溶媒名においては,厳密な順序ではないが,上部から下部に向かって非極性溶媒→極性溶媒になるように配列されている.表3.5(p.51)は普遍的に用いられる混合溶媒である。
・・・

」(47頁右欄20行?51頁左欄上の表)

(8)社団法人日本化学会編,「第5版 実験化学講座5 -化学実験のための基礎技術-」,丸善株式会社,平成17年2月28日,p.24?25
本願優先日前に頒布された刊行物である上記「刊行物8」には、次の記載がある。
(8a)「(i)再結晶: 物質の精製法として蒸留法および再結晶法は基本操作である.・・・再結晶法は加熱下で溶質を溶媒に溶解して飽和溶液とし,次にこの溶液を冷却すると溶質の溶解度が下がり,飽和の溶質は沈殿(結晶)し,一方,不純物は飽和溶液に達せず,そのまま溶液に留まることを利用している.・・・不純物・・・は再結晶により除去できることになる.
(1)試料の純度 再結晶を行う試料の純度は,とくに有機化合物では最初に薄層クロマトグラフィーで確認しておく.その際,用いた展開剤の極性と薄層上のRf 値との関係は再結晶の溶媒選択に有用で,不純物についてもそのRf値からおおよその極性がわかる.精製する物質の純度は高い方が望ましく,純度が低すぎる場合には、一般には蒸留,カラムクロマトグラフィーによる精製や活性炭による脱色などの前処理を行い,夾雑物をある程度除去しておくのがよい.もちろん,精製が可能かどうかは再結晶の原理から溶解度曲線に関係するので,不純物が多い場合にも純粋な結晶が得られることも少なくない.
(2)溶媒と溶解 再結晶の溶媒の選択には一定の規則があるわけではないので,試行錯誤により選択するのが基本である.したがって,数mgの試料を用いてサンプル管で溶媒に対する溶解性や結晶性をあらかじめ調べてみるのがよい.既知化合物であれば,化合物辞典などでデータを参照する^(1)).手元にデータがない場合,古くから同族体は同族体をよく溶かすという経験則があり,これを基本にして選ぶとよい選択ができる.つまり精製しようとする化合物が,水素結合性であるのか非水素結合性か,極性基または疎水基の有無,イオン性であるかどうかなどである.一般には,水素結合性,極性を考慮すると,次の6種の溶媒の中から選択すれば十分であろう.
ヘキサン<ベンゼン(トルエン)<酢酸エチル<アセトン<エタノール<水(極性小から大の順)
この溶媒の中間の極性をもつものが欲しい場合には,2種の溶媒を混合するか,表1.4を参照されたい.その際,極性値(誘電率ε,溶解度パラメータδ,極性値E_(T),双極子能率d.p;いずれも数値が大きいと極性は大きい)や沸点,融点を選択の基準とすればよい.反応性溶媒や沸点が高い溶媒はできれば避けた方がよい.このような溶媒では試料の加熱中に脱離や置換が起きる可能性がある.」(24頁6行?25頁9行)

(9)Gwenaelle Le Bourdon 外1名,製薬分野におけるラマン分光分析,Readout No.27,HORIBA,[online],2003年9月,[令和2年10月26日検索]インターネット<URN:https://www.horiba.com/uploads/media/R027-12-050_01.pdf>p.50?53
本願優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったといえる上記「電子的技術情報9」には、次の記載がある。

(9a)「1 はじめに
ここ10年間のラマン分光法の著しい発展と共にラマン市場は加速度的な成長を遂げた。・・・
・・・
・ラマンスペクトルにはフーリエ変換赤外分光(FTRI)やX線回折(XRD)などを補完する多くの情報を含んでいる。
・・・
例えば,・・・活性成分の多形(ポリモルフィ)の識別,・・・などである。
製薬産業にとって特に興味のあるのは,多形^(*1)で,それには2つの理由がある。活性成分の多形体は,可溶性や生体適合性などに明らかに影響を与える。しかしそれ以上に,その特性のため,製薬会社が化学構造と同様に,多形についても特定した特許権を取ってきたためである。」(50頁左欄1行?末行)

2 刊行物1に記載された発明について
刊行物1は、摘記(1a)によれば、抗抑うつ剤であるビロキサジン塩酸塩の薬物動態学の研究に関する文献であり、摘記(1b)摘記(1c)から2-(2-エトキシフェノキシメチル)-2,3,5,6,テトラヒドロ-1,4-オキサジンの塩酸塩が具体的薬物動態などを伴って記載されている。
そうすると、刊行物1には、「ビロキサジン塩酸塩」の発明(以下「引用発明」といい、その化合物を「引用化合物」という。)が記載されているということができる。

3 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用化合物である「2-(2-エトキシフェノキシメチル)-2,3,5,6,テトラヒドロ-1,4-オキサジン(ビロキサジン)の塩酸塩」とは、本願発明の「塩酸ビロキサジン」であり、引用発明のビロキサジン塩酸塩は、医薬化合物の分野で、医薬化合物の安定性、溶解性等の点から技術常識として検討される塩の固体であることは明らかであるところ、本願発明の多形体Aも固体であるから(摘記(3a)(3b))、本願発明と引用発明とは、

「塩酸ビロキサジンの固体」に関する発明
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:
本願発明においては、塩酸ビロキサジンの固体が、「図6に示される粉末X線回折スペクトルと、図9に示されるラマン赤外線スペクトルと、188℃の示差走査熱量(DSC)の融点を有する、」「多形体A」と特定されているのに対し、引用発明においてそのように特定されていない点

(2)相違点についての判断
ア 化合物塩の固体を「多形体A」と特定している点について
この出願の優先日当時、一般に、医薬化合物については、安定性、純度、扱いやすさ等の観点において結晶性の物質が優れていることから、その物質を結晶化することについては強い動機付けがあり、医薬化合物が結晶で得られる条件を検討したり、結晶多形体を調べたりすることは、当業者がごく普通に行うことであるものと認められる(摘記(2b)、摘記(3a)、摘記(4a)、摘記(5a)、摘記(6a)摘記(9a))。結晶化の条件により得られる結晶が異なることがあることも、よく知られている(摘記(2a)?(2c)、摘記(3a))。

イ 本願発明の多形体Aを得るための製造方法の検討について
(ア)本願明細書には、多形体Aの製造方法として、【0066】?【0068】に、「【0066】
別の重要な態様では、本発明は、本発明者らによるこれまでに特定されていないビロキサジン塩、例えばHCl塩の多形体の予期せぬ発見に関する。これまでに知られていないビロキサジンの多形を、水及び様々な有機溶媒における急冷手順及び徐冷手順と、スラリー実験とを用いた一連の単一及び複数の溶媒による結晶化により分離した。また様々な形態のビロキサジンHClを、プロセス又は条件、例えば溶媒の添加順序、HCl塩の形成速度、温度、撹拌、時間及び他の変数を制御することによっても調製した。新規な多形は、XRPD、DSC、TGA、IC、ラマン、光学顕微鏡検査、^(1)H NMR及び吸湿分析により特性化した。
【0067】
本発明の一実施形態では、特有の結晶形態のビロキサジンを、水、酢酸、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、ジメチルホルムアミド(DMF)及びN-メチルピロリドン(NMP)から選択される溶媒中の単一溶媒による結晶化により分離した。
【0068】
本発明の更なる実施形態では、特有の結晶形態のビロキサジンを、酢酸、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、ジメチルホルムアミド(DMF)及びN-メチルピロリドン(NMP)から選択される一次溶媒と、アセトニトリル、酢酸エチル、アセトン、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン(DCM)及びヘプタンから選択される逆溶媒とを用いる二成分溶媒による結晶化により分離した。水を一次溶媒として使用してもよい。この場合、逆溶媒は、メタノール、エタノール,イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びN-メチルピロリドン(NMP)から選択することができる。ビロキサジンHCl塩のこれらの多形体の内の2つを、本明細書では無水多形体A及び無水多形体Bと称する。多形体Aは図6に示されるようなXRPDのパターン及びピークと、図9に示されるようなラマンのスペクトル及びピークを特徴とし、多形体Bは図7に示されるようなXRPDのパターン及びピークと、図10に示されるようなラマンのスペクトル及びピークを特徴とする。ビロキサジンHClの無水多形体A及び無水多形体Bの生理化学的特性化は実施例45に示される。」(下線は当審にて追加。以下同様。)と記載されている。
また、【0115】?【0116】には、
「 【0115】
実施例27?実施例45
以下の実施例27?実施例45は、多形体A及び多形体Bの形成又は分離のために選択される溶媒系に関する例示的なプロセス及び方法を示す。
【0116】
【表8】
・・・」
と記載され、表8には、DSCで測定した多形体Aの融点(188℃)が示されている。

そして、【0122】表11には、徐冷プロファイルを用いたビロキサジンHClの単一溶媒による結晶化として、MeOHで多形体Aが析出したこと、【0146】表23には、一次溶媒の水に対する逆溶媒のアセトンを用い徐冷プロファイルを用いたビロキサジンHClの二成分溶媒による結晶化により多形体Aが析出したことが示されている。

(イ)摘記(7a)、摘記(8a)に記載されるとおり、【0066】?【0068】に示された結晶化のための溶媒は最も一般的に使用される溶媒であり、実施例に示された混合溶媒の組み合わせも有用な組み合わせとして広く知られているものである。
また、その結晶析出方法も、摘記(4a)、摘記(5a)?(5c)に見られるように、通常用いられる方法であるといえる。

ウ 多形体Aを「図6に示される粉末X線回折スペクトルと、図9に示されるラマン赤外線スペクトルと、188℃の示差走査熱量(DSC)の融点を有する」と特定していることについて
上記アのとおり、この出願の優先日当時、一般に、医薬化合物については、安定性、純度、扱いやすさ等の観点において結晶性の物質が優れていることから、その物質を結晶化することについては強い動機付けがあり、医薬化合物が結晶で得られる条件を検討したり、結晶多形を調べたりすることは、当業者がごく普通に行うことであり、上記イのとおり、その結晶化に用いた溶媒も結晶析出方法も通常のものであるため、「図6に示される粉末X線回折スペクトルと、図9に示されるラマン赤外線スペクトルと、188℃の示差走査熱量(DSC)の融点を有する」と特定することは、結晶の同定に用いられることが周知の分析方法である、粉末X線回折、ラマン分光法、示差走査熱量測定(DSC)による分析結果を表示したものにすぎない(摘記(3a)、摘記(4a)、摘記(9a))。

エ 以上によれば、引用発明において、引用化合物の結晶を得ることを試み、その際に結晶化条件を検討したり、得られた結晶について分析することにより、相違点に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

オ 本願発明の効果について
本願明細書には、多形体Aと多形体Bに関する各溶媒に対する安定性評価や温度安定性等の評価結果があるが、多形体間でそれらの特性に相違があることは技術常識であり、当業者の予測を超える顕著な効果であるとはいえない。
本願明細書においては、【0107】の実施例22に純粋なビロキサジンHClが得られたことの記載があるが、結晶化によって純粋な結晶が得られたからといって当業者の予測を超える顕著な効果であるとはいえない。

カ 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物1に記載された技術的事項、並びに本願優先日前の技術常識に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 審判請求人の主張の検討
(1)令和2年9月25日付け意見書における主張について
ア 審判請求人は、上記意見書1頁において、本願発明の多形体Aは、固有の特性を有し、その多形体の存在及び物性は、刊行物1?8のいずれにも示唆されていないので、多形体を取得する動機付けは存在しないし、結晶を取得する方法が知られていても、本願発明は、結晶の製造方法に関するものではないため進歩性を否定する根拠として妥当でない旨主張している。

イ しかしながら、本願発明は、医薬化合物の結晶多形体の発明であり、医薬化合物については、安定性、純度、扱いやすさ等の観点において結晶性の物質が優れていることから、その物質を結晶化することについては強い動機付けがあり、医薬化合物が結晶で得られる条件を検討したり、結晶多形体を調べたりすることは、当業者がごく普通に行うことであることは、上述のとおりである。
また、結晶の発明において、結晶の製造方法(結晶の析出方法)が通常のものであれば、当業者が容易に発明することができるものといえ、本願発明の結晶多形体Aは、当業者が、引用発明から上記強い動機付けに基づき、通常の結晶析出方法によって得たものであり、得られた結晶多形体の特性を、結晶の周知の分析手法で得た結果で特定することも容易になし得る技術的事項である。そして、得られた結晶多形体が当業者の予測を超える顕著な効果を有しているとはいえないことも上述のとおりである。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。

(2)平成29年12月25日付け意見書及び審判請求書における主張
審判請求人は、平成29年12月25日付け意見書及び審判請求書において、引用文献に本願発明が記載も示唆もされていない旨の主張をしているだけであるので、前記3(2)及び上記(1)で検討したとおり、本願発明は、当業者が容易に発明することができたものであり、審判請求人の該主張を採用することはできない。

(3)したがって、上記審判請求人の主張はいずれも採用できない。

5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物1に記載された技術的事項、並びに本願優先日前の技術常識に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物1に記載された技術的事項、並びに本願優先日前の技術常識に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-10-29 
結審通知日 2020-11-04 
審決日 2020-11-20 
出願番号 特願2016-199937(P2016-199937)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 雅雄▲吉▼澤 英一村守 宏文  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 瀬良 聡機
冨永 保
発明の名称 ビロキサジン塩を製造する方法及びその新規な多形  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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