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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01L
管理番号 1373024
審判番号 不服2020-265  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-09 
確定日 2021-04-07 
事件の表示 特願2016-553879「差圧検知ダイ用のパッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 3日国際公開、WO2015/131094、平成29年 3月 9日国内公表、特表2017-506750〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)2月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年2月28日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 9月19日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月 7日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 3月 5日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 元年 5月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 9月 5日付け:拒絶査定(令和元年9月10日送達、以下「原査定」という。)
令和 2年 1月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 令和2年1月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年1月9日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和2年1月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により、本件補正前(令和元年5月15日にされた手続補正の後をいう。以下同様。)の特許請求の範囲の請求項1が、下記の補正前請求項1から補正後請求項1に補正された。

<補正前請求項1>
「【請求項1】
差圧検知ダイ(300)を受容するためのパッケージ(800)であって、
前記差圧検知ダイ(300)が、一体型隔壁(313)の対向する両面に加えられる差圧を測定するように適合される前記一体型隔壁(313)を有する半導体ダイ(310)を備え、
前記パッケージ(800)が、
前記差圧検知ダイ(300)を受容するように構成される第1のハウジング部材(803)と、
少なくとも1つの第2のハウジング部材(801)であって、前記第1のハウジング部材(803)および前記少なくとも1つの第2のハウジング部材(801)が互いと合体してハウジング(802)を画定するように構成され、前記ハウジング(802)はその中に前記差圧検知ダイ(300)を収容するための内部容積が画定される、第2のハウジング部材(801)と、
前記第1のハウジング部材(803)の壁を通して画定される第1のポート(809)であって、前記差圧検知ダイ(300)が前記第1のハウジング部材(803)内に収容されているときに、前記差圧検知ダイ(300)の第1の側に画定される第1の開口(309)と流体連通して封止を行うように位置付けられる、第1のポート(809)と、
前記第2のハウジング部材(801)の壁を通して画定される第2のポート(807)であって、前記第1のハウジング部材(803)が前記第2のハウジング部材(801)と合体するときに、前記第1の側と反対側の前記差圧検知ダイ(300)の第2の側に画定される第2の開口(307)と流体連通して封止を行うように位置付けられる、第2のポート(807)と、を備えるとともに、
前記差圧検知ダイ(300)の前記第1の開口(309)と、前記第1のポート(809)と、前記差圧検知ダイ(300)の前記第2の開口(307)と、前記第2のポート(807)とが一直線上に配置されるとともに、
前記第1のハウジング部材(803)と前記少なくとも1つの第2のハウジング部材(801)との間に、ガスケットまたは接着剤シール(805)が配設され、
前記第1のポート(809)が、車両のオイルフィルタの入口に接続されるように構成され、かつ、
前記第2のポート(807)が、前記オイルフィルタの出口に接続されるように構成される、
パッケージ。」

<補正後請求項1>
「【請求項1】
差圧検知ダイ(300)を受容するためのパッケージ(800)であって、
前記差圧検知ダイ(300)が、一体型隔壁(313)の対向する両面に加えられる差圧を測定するように適合される前記一体型隔壁(313)を有する半導体ダイ(310)と、前記一体型隔壁(313)に形成されるピエゾ抵抗素子(365)と、を備え、
前記一体型隔壁(313)の一面と前記半導体ダイ(310)の一面(310u)が面一であり、
前記パッケージ(800)が、
前記差圧検知ダイ(300)を受容するように構成される第1のハウジング部材(803)と、
少なくとも1つの第2のハウジング部材(801)であって、前記第1のハウジング部材(803)および前記少なくとも1つの第2のハウジング部材(801)が互いと合体してハウジング(802)を画定するように構成され、前記ハウジング(802)はその中に前記差圧検知ダイ(300)を収容するための内部容積が画定される、第2のハウジング部材(801)と、
前記第1のハウジング部材(803)の壁を通して画定される第1のポート(809)であって、前記差圧検知ダイ(300)が前記第1のハウジング部材(803)内に収容されているときに、前記差圧検知ダイ(300)の第1の側に画定される第1の開口(309)と流体連通して封止を行うように位置付けられる、第1のポート(809)と、
前記第2のハウジング部材(801)の壁を通して画定される第2のポート(807)であって、前記第1のハウジング部材(803)が前記第2のハウジング部材(801)と合体するときに、前記第1の側と反対側の前記差圧検知ダイ(300)の第2の側に画定される第2の開口(307)と流体連通して封止を行うように位置付けられる、第2のポート(807)と、を備えるとともに、
前記差圧検知ダイ(300)の前記第1の開口(309)と、前記第1のポート(809)と、前記差圧検知ダイ(300)の前記第2の開口(307)と、前記第2のポート(807)とが一直線上に配置されるとともに、
前記第1のハウジング部材(803)と前記少なくとも1つの第2のハウジング部材(801)との間に、ガスケットまたは接着剤シール(805)が配設され、
前記第1のポート(809)が、車両のオイルフィルタの入口に接続されるように構成され、かつ、
前記第2のポート(807)が、前記オイルフィルタの出口に接続されるように構成されるとともに、
前記ハウジング(802)は、前記差圧検知ダイ(300)の側面が前記ハウジング(802)に非接触の状態で、その中に前記差圧検知ダイ(300)を収容するための前記内部容積が画定され、
前記第1のハウジング部材(803)および前記第2のハウジング部材(801)が、プラスチックから構成される、
パッケージ。」(下線は、補正箇所を示す。)

本件補正は、本件補正前の「一体型隔壁(313)を有する半導体ダイ(310)」を備える「差圧検知ダイ(300)」について、「前記一体型隔壁(313)に形成されるピエゾ抵抗素子(365)」をさらに備えるとともに、「前記一体型隔壁(313)の一面と前記半導体ダイ(310)の一面(310u)が面一」であることを限定し、かつ本件補正前の「ハウジング(802)」について、「前記差圧検知ダイ(300)の側面が前記ハウジング(802)に非接触の状態で、その中に前記差圧検知ダイ(300)を収容するための前記内部容積が画定され」ること、及びハウジング(802)を構成する「前記第1のハウジング部材(803)および前記第2のハウジング部材(801)が、プラスチックから構成される」ことを限定する補正であり、かつ本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。


2 本件補正後の本願発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面からみて、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。


3 引用刊行物に記載された発明

(1)引用刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の2010年5月20日に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2010/0122583号明細書(以下「引用刊行物1」という。)には、「DESIGN OF WET/WET DIFFERENTIAL PRESSURE SENSOR BASED ON MICROELECTRONIC PACKAGING PROCESS」(発明の名称)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、当審による邦訳を併せて示す。

<記載事項1>
「[0003]In particular, one type or configuration of pressure sensor is referred to as a differential pressure sensor. This type of sensor measures the difference between two or more pressures that are supplied as inputs. An example application for a differential pressure sensor may involve measuring the pressure drop across a furnace filter or an oil filter to determine the level of clogging. Another differential pressure sensor application may be implemented in conjunction with the venturi effect to measure flow. In such a situation, a pressure differential can be created between two segments of a venturi tube that are designed with a different aperture. The pressure difference is directly proportional to the flow rate through the venturi tube and can be accurately measured by a differential pressure sensor.」
([0003] 具体的には、1つのタイプ又は構成の圧力センサは差圧センサと呼ばれる。このタイプのセンサは、入力として供給される2以上の圧力間の差を測定する。差圧センサの例示的な用途は、目詰まりのレベルを決定するために、炉フィルタ又はオイルフィルタの前後の圧力降下を測定することを含み得る。別の差圧センサの用途は、流量を測定するためにベンチュリ効果に関連して実施することができる。このような状況では、異なる開口を有するように設計されたベンチュリ管の2つのセグメントの間に圧力差を生じさせることができる。圧力差は、ベンチュリ管を通る流量に比例し、差圧センサによって正確に測定することができる。)

<記載事項2>
「[0020] A MEMS-configured pressure sensor design utilizing wafer fabrication processes and microelectronic packaging techniques is disclosed herein. In such a device, a differential pressure sensor with high isolation between the sensed media and the sensor's electronics can be implemented. Referring to FIG. 1, a cross sectional view of a differential pressure sensor 100 is illustrated, in accordance with a preferred embodiment. Note that in FIGS. 1-4, identical or analogous parts or elements are generally indicated by identical reference numerals. The pressure sensor 100 generally includes a MEMS-configured pressure sense die 150 with a top side 105 and a back side 110. The MEMS-configured pressure sense die 150 can be fabricated utilizing silicon piezoresistive technology or capacitive technology but not limited to these technologies.
[0021] In a preferred embodiment a diaphragm 115 can be etched from the pressure sense die 150 such that one or more piezoresistors 120 can be located on pressure sense die 150. A top cap 130 can be attached to the top side 105 of the pressure sense die 150 utilizing well-known wafer bonding approaches such as, for example, anodic bonding and/or glass frit bonding. Before attachment of the top cap 130 a separate hole 165 can be etched or drilled through the top cap 130 as shown in FIG. 3. The top cap 130 may be configured from a material such as, for example, silicon or glass but not limited to these materials. The top cap 130 can protect the wirebonds 370, bonding pads 360 and other exposed circuitry from exposure to the sensed media, thereby avoiding damage to the sensor.」
([0020]ウェハ製造プロセス及びマイクロエレクトロニクスパッケージング技術を利用したMEMSに構成された圧力センサの設計が、本明細書に開示されている。このような装置では、検知される媒体とセンサの電子機器の間の高い隔離を有する差圧センサを実装することができる。図1を参照すると、好ましい実施形態による差圧センサ100の断面図が示されている。なお、図1-4において、同一又は類似の部品又は要素は、全体として同一の参照番号で示されている。圧力センサ100は、一般に上面105及び背面110を有するMEMSに構成された圧力検知ダイ150を備えている。MEMSに構成された圧力検知ダイ150は、シリコンピエゾ抵抗技術又は容量技術を用いて製造することができるが、これらの技術に限定されない。
[0021]好ましい実施形態では、1つ又は複数のピエゾ抵抗120が圧力検知ダイ150上に位置することができるように、ダイアフラム115を圧力検知ダイ150からエッチングすることができる。トップキャップ130は、例えば、陽極ボンディング及び/又はガラスフリットボンディング等の周知のウエハーボンディングアプローチを利用して圧力検知ダイ150の上面105に取り付けることができる。図3に示すように、トップキャップ130を装着する前に、別個の孔165はトップキャップ130を通してエッチング又は穿孔され得る。トップキャップ130は、例えば、シリコンやガラス等の材料から構成され得るが、これらの材料に限定されない。トップキャップ130は、ボンディングワイヤ370、ボンディングパッド360及びび他の露出した回路を、感知された媒体への暴露から保護することができ、これにより、センサへの損傷を回避する。)

<記載事項3>
「[0023] Referring to FIG. 2 a cross sectional view of the differential pressure sensor 100 with a constraint 135 for wet-wet applications is illustrated, in accordance with a preferred embodiment. A constraint 135 can be attached to the backside 110 of the pressure sense die 150 for stress relief utilizing well-known wafer bonding approaches such as, for example, anodic bonding and/or glass frit bonding. The constraint 135 may be configured from a material such as, for example, silicon or glass but not limited to these materials. Other types of materials may be utilized in place of these materials.
[0024] A separate hole 210 can be etched or drilled through the constraint 135 and can be at least partially aligned with a hole in pressure port P2 (not shown). Those of skill in the art will recognize that by forming holes 165 and 210 through the top cap 130 and the constraint 135, the method described herein can be utilized to fabricate a differential pressure sensor package for wet-wet applications where the media on the both sides of the sense element are wet. The media from the pressure port P1 and P2 are applied through the opening 165 and 210.
[0025] In one preferred embodiment the silicon cap 130 and the constraint 135 can be bonded to the silicon pressure die 150 using a glass frit bonding process. Bonding of silicon to silicon can minimize thermal mismatch created by bonding dissimilar material. Depending on the particular application, the quality of a bonding method can be judged on the criteria such as bonding precision, mechanical strength and thermal properties. Most wafer bonding processes are carried out at a much higher temperature than the operating temperature of the differential pressure sensor, which creates a high-temperature rated interface. The differential pressure sense die 150 can also be bonded to a substrate 155 with standard die attach materials 160. The die attach material can be configured from adhesives and/or composed of, for example, silicone, epoxy or solder. The die attach material can be utilized for isolating stress in the differential pressure sensor 100.」
([0023]図2を参照すると、好ましい実施形態による、ウェット/ウェット用途のコンストレイント135を有する差圧センサ100の断面図が図示されている。コンストレイント135は、例えば、陽極ボンディング及び/又はガラスフリットボンディング等の周知のウエハーボンディングアプローチを利用して、応力を緩和するため、圧力検知ダイ150の背面110に取り付けることができる。コンストレイント135は、例えば、シリコンやガラス等の材料から構成され得るが、これらの材料に限定されない。これらの材料の代わりに他の種類の材料を用いてもよい。
[0024]別の孔210は、コンストレイント135を通してエッチングされ又は穿孔されることができ、少なくとも部分的に圧力ポートP2(図示せず)の孔と整合されることができる。当業者であれば、トップキャップ130及びコンストレイント135を貫通するスルーホール165及び210を形成することによって、本明細書に記載の方法が、上記感知素子の両側が媒体で濡れているウェット-ウェット用途のための差動圧力センサのパッケージを製造するために利用することができることを認識するであろう。圧力ポートP1,P2からの媒体は、孔165及び210を介して適用される。
[0025] 1つの好ましい実施形態では、トップキャップ130及びコンストレイント135は、ガラスフリット接合プロセスを使用して圧力検知ダイ150に接合することができる。シリコンとシリコンの接合は、異種材料を接合することにより生じる熱的不整合を最小限に抑えることができる。特定の用途に応じて、接合の品質は、接合精度、機械的強度及び熱的特性のような基準で判定することができる。大部分のウェーハボンディングプロセスは、差圧センサの作動温度よりもかなり高い温度で実行さ、これにより、高温定格インターフェースが形成される。差圧検知ダイ150は、標準ダイ取付材料160を用いて基板155に接合することもできる。ダイ取付材料は接着剤で構成されることができ、及び/又は、例えば、シリコーン、エポキシ又ははんだで形成することができる。ダイ取付材料は、差圧センサ100内の応力を隔離するために利用することができる。)

<記載事項4>
「[0026]FIG. 3 illustrates a perspective view of a wet-wet differential pressure sensor 100, in accordance with a preferred embodiment. The wet-wet differential pressure sensor 100 can be utilized in wet/wet applications where both sides of the sense element 150 being exposed to the sensed media such as water or oil. The top cap 130 with the hole 165 can be attached to a top package cap 230 utilizing a topside seal 220.A topside pressure port 305 of the MEMS-configured pressure sense die 150 with the pressure sensing diaphragm 115 allows the sensed media with pressure P1 to come in contact with the top side 105 of the pressure sensing diaphragm 115.
[0027]The gasket or media seal 220 provide a pressure seal to the topside surface of the top cap 130. The optional constraint 135 with the hole 210 for stress relief can be attached to a bottom package cap 330 utilizing the bottom side seal 320. It should be noted that the top side seal 220 and the bottom side seal 320 can be accomplished with multiple materials such as a compressed elastomeric gasket or adhesive material or several other common techniques utilized in the sensor manufacturing industry. A bottom side pressure port 310 of the MEMS-configured pressure sense die 150 allows the sensed media with pressure P2 to come in contact with the bottom side 110 of the pressure sensing diaphragm 115. The gasket or other media seal 320 provide a pressure seal to the bottom side surface of the constraint 135. The diaphragm 115 can be incorporated with piezoresistive elements 120 that can receive the stress or media pressure applied on the diaphragm 115. The piezoresistive elements 120 can convert the applied pressure into electrical signals using well-known piezoresistive principles. The bond pads 360 can provide an external electrical connection for the diaphragm 115. Such bond pads 360 can preferably comprise aluminum or gold metallization.
[0028]The top cap 130 can seal the media from the bond pads 360 in order to avoid creation of harsh environment for the exposed bond pads 360. Thus, the differential pressure sensor 100 can operate reliably and accurately sense the media pressure. The die attach or gasket 220 and 320 can be utilized to seal the pressure sense die 150 allowing media to be sensed to come in contact with both sides of the pressure-sensing diaphragm 115 without affecting the wirebond pads 360, wirebonds 370, and the package terminals 350. Such microelectronic packaging processes yield a high performance and cost effective solution that has true wet-wet pressure sensing capability.
[0029]Each pressure port 305 and 310 can carry media at different pressures. The difference between pressures in each pressure ports 305 and 310 can be measured by exposing both sides of the silicon pressure-sensing diaphragm 115 to the media. In such a way the differential pressure sensor 100 can sense the differential pressure in media, including but not limited to water, fuel, oil, acids, bases, solvents and corrosive gases.」
([0026]図3は、好ましい実施形態による、ウェット/ウェット型の差圧センサ100の斜視図を示している。このウェット/ウェット型の差圧センサ100は、圧力検知ダイ150の両側が水やオイルなどの検知媒体に曝されるウェット/ウェット用途で利用することができる。孔165を有するトップキャップ130は、上側側部シール220を利用してトップパッケージキャップ230に取り付けることができる。圧力感知ダイヤフラム115を有する、MEMSに構成された圧力検知ダイ150の上部圧力ポート305は、圧力P1を有する感知媒体が圧力感知ダイヤフラム115の上側105と接触することを可能にする。
[0027]ガスケット又は媒体シール220は、トップキャップ130の上側面に圧力シールを提供する。応力緩和のための孔210を有するオプションのコンストレイント135は、下側シール320を利用して、ボトムパッケージキャップ330に取付けることができる。上側側部シール220及び下側側部シール320は圧縮された弾性ガスケット又は接着材料等の複数の材料又はセンサを製造する産業で利用されるいくつかの他の一般的な技術を用いて達成することができることに留意すべきである。MEMSに構成された圧力検知ダイ150の下部の圧力ポート310は、圧力P2を有する感知媒体が圧力感知ダイヤフラム115の底側110と接触することを可能にする。ガスケット又は他の媒体シール320は、コンストレイント135の底側表面に圧力シールを提供する。ダイアフラム115には、ダイアフラム115に加えられた応力又は圧力を受けることが可能なピエゾ抵抗素子120を組み込むことができる。ピエゾ抵抗素子120は、周知のピエゾ抵抗の原理を使用して、加えられた圧力を電気信号に変換することができる。ボンドパッド360は、ダイヤフラム115のための外部電気接続を提供することができる。このようなボンディングパッド360は、好ましくはアルミニウム又は金の金属層を含むことができる。
[0028]露出した接合パッド360の過酷な環境の生成を回避するため、トップキャップ130は、媒体をボンドパッド360から封止することができる。このように、差圧センサ100は、確実に動作し、正確に媒体圧力を感知することができる。ダイ接着剤又はガスケット220及び320は、圧力検知ダイ150を封止するために使用することができ、ワイヤボンド・パッド360、ボンディングワイヤ370及びパッケージ端子350に影響を及ぼすことなく、検知媒体が感圧ダイアフラム115aの両側面に接触することを可能にする。このような超小型電子パッケージング法は、真のウェット-ウェット感圧能力を有する高性能及び費用効果的な解決策をもたらす。
[0029]各圧力ポート305及び310は、異なる圧力の媒体を運ぶことができる。各圧力ポート305及び310間の圧力の差は、シリコン圧力センサダイアフラム115の両側を媒体に接触させることによって測定することができる。このように、差圧センサ100は、水、燃料、オイル、酸、塩基、溶媒及び腐食性ガスを含むがこれらに限定されない媒体の差圧を感知することができる。)

[図1]


[図2]


[図3]



[図3]から、トップパッケージキャップ230、下部パッケージキャップ330により内部に空間を有する筐体が構成され、当該空間内に、トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150が収容されていることが読み取れる。よって、上部の圧力ポート305を有するトップパッケージキャップ230及び下部の圧力ポート310を有する下部パッケージキャップ330は、トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150を収容するパッケージとして機能しているといえる。
また、[図3]から、収容された当該圧力検知ダイ150の側面は、トップパッケージキャップ230及び下部パッケージキャップ330から構成される筐体に接触していないことが読み取れる。

[図1]?[図3]から、ダイアフラム115の上面と、圧力検知ダイ150の上面は、面一であることが読み取れる。

[図3]から、上部の圧力ポート305は、トップパッケージキャップ230の上壁を貫通して設けられていること、下部の圧力ポート310は、下部パッケージキャップ330の底壁を貫通して設けられていることが読み取れる。

[図3]から、トップキャップ130が有する孔165とトップパッケージキャップ230が有する圧力ポート305が連通していること、コンストレイント135が有する孔210と下部パッケージキャップ330が有する圧力ポート310が連通していることが読み取れる。

[図3]から、コンストレイント135が有する孔210と、下部の圧力ポート310の端部と、トップキャップ130が有する孔165と、上部の圧力ポート305の端部は、一直線上に配置されているが、下部の圧力ポート310及び上部の圧力ポート305が直線状でなくL字状に形成されているため、コンストレイント135が有する孔210と、L字状の下部の圧力ポート310と、トップキャップ130が有する孔165と、L字状の上部の圧力ポート305は、全体としてみた場合、コ字状に配置されていることが読み取れる。

以上を総合すると、上記記載事項2?4及び上記図1?3の記載からみて、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150を収容するパッケージであって([0021]、[0023]、[図3])、
トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150が、両側に接触するオイルなどの検知媒体の圧力の差を測定するダイアフラム115を有する圧力検知ダイ150([0026]、[0029]、[図3])と、前記ダイアフラム115に組み込まれたピエゾ抵抗素子120([0027]、[図1]、[図2])と、を備え、
前記ダイアフラム115の上面と、前記圧力検知ダイ150の上面は、面一であり([図1]?[図3])、
前記パッケージが、
前記トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150を受容する下部パッケージキャップ330と([図3])、
上部パッケージキャップ230であって、前記下部パッケージキャップ330と前記上部パッケージキャップ230により内部に空間を有する筐体が構成され、当該空間内には、トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150が収容される、上部パッケージキャップ330([図3])と、
下部パッケージキャップ330の底壁を貫通して設けられている下部の圧力ポート310であって、前記トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150が前記下部パッケージキャップ330に受容されているときに、前記圧力検知ダイ150の背面に取り付けられたコンストレイント135が有する孔210と連通して、オイルなどの検知媒体から、前記圧力検知ダイ150のワイヤボンド・パッド360、ボンディングワイヤ370及びパッケージ端子350を封止するように配置される、下部の圧力ポート310と([0026]?[0028]、[図3])、
上部パッケージキャップ230の上壁を貫通して設けられている上部の圧力ポート305であって、前記下部パッケージキャップ330が前記上部パッケージキャップ230と合体するときに、前記圧力検知ダイ150の背面と反対側の上面に取り付けられたトップキャップ130が有する孔165と連通して、オイルなどの検知媒体から、前記圧力検知ダイ150のワイヤボンド・パッド360、ボンディングワイヤ370及びパッケージ端子350を封止するように配置される、上部の圧力ポート305と([0026]?[0028]、[図3])、を備えるとともに、
前記コンストレイント135が有する孔210と、L字状の前記下部の圧力ポート310と、前記トップキャップ130が有する孔165と、L字状の前記上部の圧力ポート305が、コ字状に配置されるとともに([図3])、
前記上部パッケージキャップ230及び前記下部パッケージキャップ330により構成される筐体は、トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150の側面が前記筐体に接触していない状態で、前記圧力検知ダイ150を収容する内部空間を有する([図3])、
パッケージ。」


(2)引用刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成6年3月29日に頒布された刊行物である特開平6-88762号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項5>
「【0021】
そして、P型シリコン基板1側からは絶縁台座11を、導圧台10側からは絶縁台座12を被せるようにして突き合わせ接合し、半導体圧力センサ本体を図示するごとくパッケージングする。」

【図1】



(3)引用刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成20年12月18日に頒布された刊行物である特開2008-304245号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項6>
「【0025】
(第1実施形態) 以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態で示される圧力センサは、例えば車両のエンジンから排出される排気ガスを浄化するDPFシステムにおいて、フィルタであるDPFを通過する排気ガスの通過前と通過後との差圧を検出することでDPFの目詰まりの診断する際等に用いられるものである。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧力センサを示したものであり、(a)は圧力センサの概略断面図、(b)は(a)のA-A矢視断面図である。図1に示されるように、圧力センサS1は、ケース10と、当該ケース10に収納される第1センサチップ21と、第2センサチップ22とを備えている。」

<記載事項7>
「【0032】
上記ケース10は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)やエポキシ樹脂等の樹脂材料を型成形してなるものである。」

【図1】



(4)引用刊行物4
本願の優先日前の平成13年10月5日に頒布された刊行物である特開2001-272294号公報(以下、「引用刊行物4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項8>
「【0002】
【従来の技術】MEMSセンサ、つまり集積回路サイズのミニチュア・センサは、種々の周囲状態を感知するために小型装置を必要とする多種多様な消費製品および工業製品に導入されている。MEMS圧力センサの組込みの潜在的可能性が自動車タイヤより大きい適用分野は、現在、おそらく存在しない。この適用分野は、RF送信機を装備した1つまたはそれ以上のMEMS圧力センサを自動車タイヤ内に埋め込むことが必要である。このセンサはタイヤ空気圧を監視し、低空気圧警報を提供する信号を自動車の処理装置および表示装置に送信して、危険なタイヤのことをドライバに警告する。
【0003】
図1は、接着剤17によりプラスチック・パッケージ12に結合された圧力センサ・ダイ13を有するプラスチック・パッケージ12上に形成されたキャビティに封止ゲル11を注入する、MEMSデバイス10の従来の封止を示す。封止ゲル11の目的は、圧力センサ・ダイ13とリード・フレーム14との間のワイヤ・ボンド15を保護することである。しかし、従来使用された総封止技術は、圧力センサ・ダイアフラム16を含め、圧力センサ・ダイ13を完全に被覆した。」

【図1】



(5)引用刊行物5
本願の優先日前の平成6年1月14日に頒布された刊行物である実願平4-38227号(実開平6-2188号)の願書に最初に添付した明細書及び図面の内容を記録したCD-ROM(以下、「引用刊行物5」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項9>
「【0008】
【実施例】図面を参照して実施例を説明する。図1において、1は、先側が自動車のエンジンオイル室にねじ込まれる金属製の接続本体であり、その基部側には、後方にポテンショメータ2が立設された金属製のベース3が、かしめられて固定されている。
【0009】
接続本体1とベース3との間には、ダイアフラム室4が形成されていて、ダイアフラム室4は、面と垂直の方向に変位自在な可撓性薄膜からなるダイアフラム5によって仕切られている。
【0010】
そして、接続本体1の先端とダイアフラム室4との間には連通孔7が穿設されていて、その連通孔7を経由して、エンジンオイルの油圧がダイアフラム5の外面側の面に加わるようになっている。8はシール用のOリング、9はダイアフラム5を受ける受け盤であり、中央には孔が穿設されている。
【0011】
ベース3中央の孔内には、一端がダイアフラム5の内面の中央部分に当接する短いロッド11が摺動自在に配置されている。また、ダイアフラム5側からみてベース3の逆側の面には、図2にも示されるような回動板12が、回動自在に両端で軸支されている。
【0012】
この回動板12の中央部分には、ロッド11の端面に当接する突起14が突設されており、回動板12の一端側には、突起14をロッド11の端面に押し付ける方向に回動板12を付勢するバネ16が取り付けられている。
【0013】
このように、回動板12は、油圧によって押されるダイアフラム5の力をロッド11と突起14を介して受けると共に、それと逆方向の力をバネ16から受け、両方の力がつり合う位置で静止する。
【0014】
回動板12の他端側には、ポテンショメータ2の抵抗(電気抵抗)列21に接触するブラシ22が固着されている。したがって、油圧が変化するとそれに追随してダイアフラム5が変位し、さらにその変位に追随して回動する回動板12と共にブラシ22が回動する。
【0015】
その結果、抵抗列21に対してブラシ22先端の電気接点22aの接触位置が変化すると、抵抗列21から外部に引き出されたリード線23の電位が変化して、その電位から油圧を検出することができる。」

<記載事項10>
「【0018】
このような機構が配置されたベース3の裏面側には、図3にも示されるような、回動板12とポテンショメータ2の形状に合わせて形成されたプラスチック製の内キャップ17が被せられている。
【0019】
そして、内キャップ17の外側には、膨縮自在な膜状のゴム製のゴムキャップ18が、外気との間を完全にシールする状態で被せられて、その内側を気密室20に形成している。そして、さらにその外側には、プラスチック製又は金属製の円筒状の外キャップ19が被せられている。」

【図1】


【図3】



(6)引用刊行物6
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の昭和58年11月7日に頒布された刊行物である実願昭57-64488号(実開昭58-166820号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下、「引用刊行物6」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項11>
「この考案によればフイルター本体に対する入側・出側の圧力差検出用のセンサーを流路に付設した構成としたので、フイルター本体の劣化の状態をセンサーで検出しては適切な時期にフイルター本体を交換すれば良いので、定期的にのみ交換していた従来に比べて無駄がなくなり又早期劣化による流路システム全体の異常を未然に防止できるという効果があり、フイルター本体の実際の使用状態をチェックしにくい流路システムにとつて好適なフイルター装置を提供することができ、例えば自動車用燃料フイルター、自動車用オイルフイルター、自動車用エアクリーナー等のフイルター装置として広い用途に供することができるものである。」(第7頁第1?15行)

【図3】



4 対比

(1)本願補正発明と引用発明の対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明の「トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150」、「収容する」は、それぞれ本願補正発明の「差圧検知ダイ(300)」、「受容する」に相当する。
よって、引用発明の「トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150を収容するパッケージ」は、本願補正発明の「差圧検知ダイ(300)を受容するためのパッケージ(800)」に相当する。

イ 引用発明の「ダイアフラム115」は、[0021]の「ダイアフラム115を圧力検知ダイ150からエッチングすることができる。」という記載からみて、「圧力検知ダイ150」と一体となって形成されているものといえるから、本願補正発明の「一体型隔壁(313)」に相当する。
引用発明の「両側に接触するオイルなどの検知媒体の圧力の差を測定する」、「ダイアフラム115に組み込まれたピエゾ抵抗素子120」は、それぞれ本願補正発明の「対向する両面に加えられる差圧を測定する」、「一体型隔壁(313)に形成されるピエゾ抵抗素子(365)」に相当する。
引用発明の「圧力検知ダイ150」は、[0020]の「ウェハ製造プロセス及びマイクロエレクトロニクスパッケージング技術を利用したMEMSに構成された圧力センサの設計が、本明細書に開示されている。」という記載からみて、本願補正発明の「半導体ダイ(310)」に相当する。
よって、引用発明の「トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150が、両側に接触するオイルなどの検知媒体の圧力の差を測定するダイアフラム115を有する圧力検知ダイ150と、前記ダイアフラム115に組み込まれたピエゾ抵抗素子120と、を備え、」は、本願補正発明の「差圧検知ダイ(300)が、一体型隔壁(313)の対向する両面に加えられる差圧を測定するように適合される前記一体型隔壁(313)を有する半導体ダイ(310)と、前記一体型隔壁(313)に形成されるピエゾ抵抗素子(365)と、を備え、」に相当する。

ウ 引用発明の「前記ダイアフラム115の上面と、前記圧力検知ダイ150の上面は、面一であり」は、本願補正発明の「前記一体型隔壁(313)の一面と前記半導体ダイ(310)の一面(310u)が面一であり」に相当する。

エ 引用発明の「トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150を受容する下部パッケージキャップ330」は、本願補正発明の「差圧検知ダイ(300)を受容するように構成される第1のハウジング部材(803)」に相当する。

オ 引用発明の「上部パッケージキャップ230」、及び「筐体」は、それぞれ本願補正発明の「少なくとも1つの第2のハウジング部材(801)」、及び「ハウジング(802)」に相当するから、上記エをふまえると、引用発明の「上部パッケージキャップ230であって、前記下部パッケージキャップ330と前記上部パッケージキャップ230により内部に空間を有する筐体が構成され、当該空間内には、トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150が収容される、上部パッケージキャップ330」は、本願補正発明の「少なくとも1つの第2のハウジング部材(801)であって、前記第1のハウジング部材(803)および前記少なくとも1つの第2のハウジング部材(801)が互いと合体してハウジング(802)を画定するように構成され、前記ハウジング(802)はその中に前記差圧検知ダイ(300)を収容するための内部容積が画定される、第2のハウジング部材(801)」に相当する。

カ 引用発明の「下部パッケージキャップ330の底壁を貫通して設けられている下部の圧力ポート310」、「前記圧力検知ダイ150の背面に取り付けられたコンストレイント135が有する孔210」、「連通して、オイルなどの検知媒体から、前記圧力検知ダイ150のワイヤボンド・パッド360、ボンディングワイヤ370及びパッケージ端子350を封止する」、「配置される」は、それぞれ本願補正発明の「第1のハウジング部材(803)の壁を通して画定される第1のポート(809)」、「前記差圧検知ダイ(300)の第1の側に画定される第1の開口(309)」、「流体連通して封止を行う」、「位置付けられる」に相当する。
よって、引用発明の「下部パッケージキャップ330の底壁を貫通して設けられている下部の圧力ポート310であって、前記トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150が前記下部パッケージキャップ330に受容されているときに、前記圧力検知ダイ150の背面に取り付けられたコンストレイント135が有する孔210と連通して、オイルなどの検知媒体から、前記圧力検知ダイ150のワイヤボンド・パッド360、ボンディングワイヤ370及びパッケージ端子350を封止するように配置される、下部の圧力ポート310」は、本願補正発明の「第1のハウジング部材(803)の壁を通して画定される第1のポート(809)であって、前記差圧検知ダイ(300)が前記第1のハウジング部材(803)内に収容されているときに、前記差圧検知ダイ(300)の第1の側に画定される第1の開口(309)と流体連通して封止を行うように位置付けられる、第1のポート(809)」に相当する。

キ 引用発明の「上部パッケージキャップ230の上壁を貫通して設けられている上部の圧力ポート305」、「前記圧力検知ダイ150の背面と反対側の上面に取り付けられたトップキャップ130が有する孔165」、「連通して、オイルなどの検知媒体から、前記圧力検知ダイ150のワイヤボンド・パッド360、ボンディングワイヤ370及びパッケージ端子350を封止する」、「配置される」は、それぞれ本願補正発明の「第2のハウジング部材(801)の壁を通して画定される第2のポート(807)」、「前記第1の側と反対側の前記差圧検知ダイ(300)の第2の側に画定される第2の開口(307)」、「流体連通して封止を行う」、「位置付けられる」に相当する。
よって、引用発明の「上部パッケージキャップ230の上壁を貫通して設けられている上部の圧力ポート305であって、前記下部パッケージキャップ330が前記上部パッケージキャップ230と合体するときに、前記圧力検知ダイ150の背面と反対側の上面に取り付けられたトップキャップ130が有する孔165と連通して、オイルなどの検知媒体から、前記圧力検知ダイ150のワイヤボンド・パッド360、ボンディングワイヤ370及びパッケージ端子350を封止するように配置される、上部の圧力ポート305」は、本願補正発明の「第2のハウジング部材(801)の壁を通して画定される第2のポート(807)であって、前記第1のハウジング部材(803)が前記第2のハウジング部材(801)と合体するときに、前記第1の側と反対側の前記差圧検知ダイ(300)の第2の側に画定される第2の開口(307)と流体連通して封止を行うように位置付けられる、第2のポート(807)」に相当する。


ク 引用発明の「前記上部パッケージキャップ230及び前記下部パッケージキャップ330により構成される筐体」、「前記筐体に接触していない状態」、「前記圧力検知ダイ150を収容する内部空間を有する」は、それぞれ本願補正発明の「前記ハウジング(802)」、「前記ハウジング(802)に非接触の状態」、「前記差圧検知ダイ(300)を収容するための前記内部容積が画定」するに相当する。
よって、引用発明の「前記上部パッケージキャップ230及び前記下部パッケージキャップ330により構成される筐体は、トップキャップ130及びコンストレイント135が取り付けられた圧力検知ダイ150の側面が前記筐体に接触していない状態で、前記圧力検知ダイ150を収容する内部空間を有する」は、本願補正発明の「前記ハウジング(802)は、前記差圧検知ダイ(300)の側面が前記ハウジング(802)に非接触の状態で、その中に前記差圧検知ダイ(300)を収容するための前記内部容積が画定され」に相当する。


(2)一致点及び相違点
上記(1)の検討を総合すると、本願補正発明と引用発明の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
差圧検知ダイを受容するためのパッケージであって、
前記差圧検知ダイが、一体型隔壁の対向する両面に加えられる差圧を測定するように適合される前記一体型隔壁を有する半導体ダイと、前記一体型隔壁に形成されるピエゾ抵抗素子と、を備え、
前記一体型隔壁の一面と前記半導体ダイの一面が面一であり、
前記パッケージが、
前記差圧検知ダイを受容するように構成される第1のハウジング部材と、
少なくとも1つの第2のハウジング部材であって、前記第1のハウジング部材および前記少なくとも1つの第2のハウジング部材が互いと合体してハウジングを画定するように構成され、前記ハウジングはその中に前記差圧検知ダイを収容するための内部容積が画定される、第2のハウジング部材と、
前記第1のハウジング部材の壁を通して画定される第1のポートであって、前記差圧検知ダイが前記第1のハウジング部材内に収容されているときに、前記差圧検知ダイの第1の側に画定される第1の開口と流体連通して封止を行うように位置付けられる、第1のポートと、
前記第2のハウジング部材の壁を通して画定される第2のポートであって、前記第1のハウジング部材が前記第2のハウジング部材と合体するときに、前記第1の側と反対側の前記差圧検知ダイの第2の側に画定される第2の開口と流体連通して封止を行うように位置付けられる、第2のポートと、を備えるとともに、
前記ハウジングは、前記差圧検知ダイの側面が前記ハウジングに非接触の状態で、その中に前記差圧検知ダイを収容するための前記内部容積が画定される、
パッケージ。

<相違点1>
本願補正発明では「前記差圧検知ダイ(300)の前記第1の開口(309)と、前記第1のポート(809)と、前記差圧検知ダイ(300)の前記第2の開口(307)と、前記第2のポート(807)とが一直線上に配置され」ているのに対して、引用発明では、コンストレイント135が有する孔210と、L字状の下部の圧力ポート310と、トップキャップ130が有する孔165と、L字状の上部の圧力ポート305は、全体としてみた場合、コ字状に配置されている点。

<相違点2>
本願補正発明では「前記第1のハウジング部材(803)と前記少なくとも1つの第2のハウジング部材(801)との間に、ガスケットまたは接着剤シール(805)が配設され」ているのに対して、引用発明では、下部パッケージキャップ330と上部パッケージキャップ230との間に、ガスケットまたは接着剤シールが配設されているかどうか不明な点。

<相違点3>
本願補正発明では「前記第1のポート(809)が、車両のオイルフィルタの入口に接続されるように構成され、かつ、前記第2のポート(807)が、前記オイルフィルタの出口に接続されるように構成され」ているのに対して、引用発明では、下部の圧力ポート310及び上部の圧力ポート305の接続先については特定されていない点。

<相違点4>
本願補正発明では「前記第1のハウジング部材(803)および前記第2のハウジング部材(801)が、プラスチックから構成され」ているのに対して、引用発明では、下部パッケージキャップ330及び上部パッケージキャップ230の材質については特定されていない点。


5 当審の判断

(1)相違点1について
上記相違点1について、検討する。
圧力ポートをL字状とするか直線状とするかは、差圧センサと当該差圧センサの検出対象の位置関係に応じて、当業者が適宜に選択し得るものであるから(例えば、引用刊行物2の図1には圧力ポートが直線状のものが示されている。)、引用発明の下部の圧力ポート310及び上部の圧力ポート305において、L字状でなく直線状にすること、すなわち「差圧検知ダイの第1の開口と、第1のポートと、前記差圧検知ダイの第2の開口と、前記第2のポートとが一直線上に配置される」構成とすることに格別の困難性があるものではない。

したがって、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。


(2)相違点2について
上記相違点2について、検討する。
2つの部材間の接続箇所に気密性及び液密性を持たせるために、シールやガスケットを用いることは、例えば、引用刊行物1の[0026]?[0028]に記載されているように周知技術である。
そして、引用発明においては、圧力検知ダイ150のワイヤボンド・パッド360、ボンディングワイヤ370及びパッケージ端子350を、オイルなどの検知媒体から封止するという課題を有しているところ、当該封止をさらに強固にするために、下部パッケージキャップ330と上部パッケージキャップ230の間にも、当該周知技術を適用してシールやガスケットを配設するようにすることは当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。


(3)相違点3について
上記相違点3について、検討する。
オイルフィルタの前後の圧力降下を測定し、当該オイルフィルタの目詰まりのレベルを決定することは、差圧センサの用途の一つとして、例えば引用刊行物1の[0003]、引用刊行物6の第7頁第1?15行に記載されているように、本願優先日前に公知である。よって、同様に差圧センサである引用発明において、下部の圧力ポート310及び上部の圧力ポート305に当該オイルフィルタの入口と出口を接続し、当該オイルフィルタの目詰まりのレベルを決定するようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明及び引用刊行物6に記載された技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。


(4)相違点4について
上記相違点4について、検討する。
圧力センサを収容するケースやパッケージの材質をプラスチックとすることは、例えば、引用刊行物3の【0025】、【0026】、【0032】、【図1】、引用刊行物4の【0002】、【0003】、【図1】、引用刊行物5の【0008】?【0015】、【0018】、【0019】、【図1】、【図3】に記載されているように周知技術である。よって、引用発明において当該周知技術を適用して、下部パッケージキャップ330及び上部パッケージキャップ230の材質をプラスチックにすることは格別なことでない。

したがって、上記相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。


(5)小括
以上のとおり、上記相違点1?4に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明、引用刊行物6に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明によって奏される効果は、引用発明、引用刊行物6に記載された技術及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。

よって、本願補正発明は、引用発明、引用刊行物6に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。


6 まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和元年5月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
差圧検知ダイ(300)を受容するためのパッケージ(800)であって、
前記差圧検知ダイ(300)が、一体型隔壁(313)の対向する両面に加えられる差圧を測定するように適合される前記一体型隔壁(313)を有する半導体ダイ(310)を備え、
前記パッケージ(800)が、
前記差圧検知ダイ(300)を受容するように構成される第1のハウジング部材(803)と、
少なくとも1つの第2のハウジング部材(801)であって、前記第1のハウジング部材(803)および前記少なくとも1つの第2のハウジング部材(801)が互いと合体してハウジング(802)を画定するように構成され、前記ハウジング(802)はその中に前記差圧検知ダイ(300)を収容するための内部容積が画定される、第2のハウジング部材(801)と、
前記第1のハウジング部材(803)の壁を通して画定される第1のポート(809)であって、前記差圧検知ダイ(300)が前記第1のハウジング部材(803)内に収容されているときに、前記差圧検知ダイ(300)の第1の側に画定される第1の開口(309)と流体連通して封止を行うように位置付けられる、第1のポート(809)と、
前記第2のハウジング部材(801)の壁を通して画定される第2のポート(807)であって、前記第1のハウジング部材(803)が前記第2のハウジング部材(801)と合体するときに、前記第1の側と反対側の前記差圧検知ダイ(300)の第2の側に画定される第2の開口(307)と流体連通して封止を行うように位置付けられる、第2のポート(807)と、を備えるとともに、
前記差圧検知ダイ(300)の前記第1の開口(309)と、前記第1のポート(809)と、前記差圧検知ダイ(300)の前記第2の開口(307)と、前記第2のポート(807)とが一直線上に配置されるとともに、
前記第1のハウジング部材(803)と前記少なくとも1つの第2のハウジング部材(801)との間に、ガスケットまたは接着剤シール(805)が配設され、
前記第1のポート(809)が、車両のオイルフィルタの入口に接続されるように構成され、かつ、前記第2のポート(807)が、前記オイルフィルタの出口に接続されるように構成される、
パッケージ。」


第4 原査定における拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1-4に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.米国特許出願公開第2010/0122583号明細書(上記引用刊行物1と同じ)
引用文献2.特開平06-088762号公報(上記引用刊行物2と同じ)
引用文献3.特開2008-304245号公報(上記引用刊行物3と同じ)
引用文献4.実願昭57-64488号(実開昭58-166820号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(上記引用刊行物6と同じ)


第5 引用文献に記載された発明
引用文献1に記載された発明、引用文献2?4に記載された技術は、前記第2の「3 引用刊行物に記載された発明」において、引用発明、引用刊行物2?3、6に記載された事項として示したとおりである。


第6 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、前記第2の「4 対比」で検討した上記相違点4に係る構成である「前記第1のハウジング部材(803)および前記第2のハウジング部材(801)が、プラスチックから構成される」という限定事項、「差圧検知ダイ(300)」が「前記一体型隔壁(313)に形成されるピエゾ抵抗素子(365)」を備えるとの限定事項、「前記一体型隔壁(313)の一面と前記半導体ダイ(310)の一面(310u)が面一」であるとの限定事項及び「ハウジング(802)」に「前記差圧検知ダイ(300)の側面が前記ハウジング(802)に非接触の状態で、その中に前記差圧検知ダイ(300)を収容するための前記内部容積が画定され」るとの限定事項を省いたものである。
そうすると、本願補正発明と引用発明は、前記第2の「4 対比」で検討したとおり、前記相違点1?4において相違し、その他の点で一致しているから、本願発明と引用発明は、前記相違点4を除いた前記相違点1?3において相違し、その他の点で一致していることになることは明らかである。
そして、前記相違点1?3については、前記第2の「5 当審の判断」において示した理由のとおり、当業者が、引用発明、引用文献4に記載された技術及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献4に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。




 
別掲
 
審理終結日 2020-10-30 
結審通知日 2020-11-04 
審決日 2020-11-20 
出願番号 特願2016-553879(P2016-553879)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01L)
P 1 8・ 575- Z (G01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大森 努  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱本 禎広
中塚 直樹
発明の名称 差圧検知ダイ用のパッケージ  
代理人 佐々木 まどか  
代理人 堀川 美夕紀  
代理人 山下 聖子  
代理人 大竹 夕香子  
代理人 大場 充  

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