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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1373027
審判番号 不服2020-2048  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-14 
確定日 2021-04-07 
事件の表示 特願2018- 94180「チップスケールパッケージング発光素子の斜角チップ反射器およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年11月21日出願公開、特開2019-201089〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)5月15日の出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成31年 2月14日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 8月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月 2日付け:拒絶査定(原査定)
令和 2年 2月14日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 本願発明の認定
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年2月14日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)後の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「チップ上面、該チップ上面に対向するチップ下面、前記チップ上面と前記チップ下面との間に延伸するチップ縁表面、および前記チップ下面上に配置された1組の電極を含むフリップチップ発光半導体ダイと、
層上面、該層上面の反対側の層下面、および前記層上面と前記層下面との間に延伸する層縁表面を含み、前記層下面は、前記フリップチップ発光半導体ダイの前記チップ上面上に配置され、前記チップ上面よりも大きい層と、
前記フリップチップ発光半導体ダイの前記チップ上面と前記層の前記層下面との間に配置された粘着層と、
前記フリップチップ発光半導体ダイの前記チップ縁表面および前記層の前記層下面の両方に隣接して配置され、前記チップ縁表面へ接続された斜角側スペーサ表面を含み、屈折率が1.45以下であるシリコーンである第1の透明な樹脂材料と、該第1の透明な樹脂材料中に分散された20重量%までの量の第1の光散乱粒子とを含むチップ側スペーサ構造部と、
該チップ側スペーサ構造部の前記サイドスペーサ縁表面を包囲しこれを覆い、第2の透明な樹脂材料と、該第2の透明な樹脂材料中に分散された少なくとも20重量%の量の第2の光散乱粒子とを含む反射構造部とを含む発光素子。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
本件補正前の本願の請求項8に係る発明(本願発明に該当)は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2017-69368号公報に記載された発明に基づいて、本願の出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない
というものである。

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1:特開2017?69368号公報
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2017?69368号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)

ア「【0001】
本開示は、発光装置の製造方法に関する。」

イ「【0011】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る発光装置の概略平面図である。図2(a)は、図1のA-A線に沿った概略断面図である。
図1および図2(a)に示す本実施の形態に係る発光装置10は、発光素子20、発光素子20の側面23に設けられた透光性部材30、透光性部材30の外面33を覆う反射性部材40、および発光装置10の発光面11側に配置された波長変換部材50を備えている。
【0012】
図2(b)は、図2(a)の発光装置に含まれる発光素子の概略断面図である。
図2(b)に示すように、発光素子20は、透光性基板27と、透光性基板27の下面側に形成された半導体積層体28とを含む半導体発光素子であってもよい。発光素子20は、発光面21(透光性基板27側の面)、発光面21と反対側の裏面22(半導体積層体28側の面)、および発光面21と裏面22との間に位置する側面23を有している。
図2(a)、(b)において、発光素子20の半導体積層体28で発光した光は、半導体積層体28から透光性基板27を通って、又は半導体積層体28から発光素子20の側面23および透光性部材30を通って、発光装置10の発光面11側に取り出される。
【0013】
発光素子20の裏面22(半導体積層体28の下面)には、発光素子20に通電するための一対の電極251、252が設けられている(図2(b))。なお、本明細書において、発光素子20の「裏面22」は、電極251、252を除いた発光素子20の下面を指している。
【0014】
再び図2(a)を参照すると、透光性部材30は、発光素子20の側面23の少なくとも一部を覆っており、その側面23から出射される光を発光装置10の発光面11方向に導光する。つまり、発光素子20の側面23に到達した光を、側面23で反射させずに、透光性部材30を通して発光素子20の外側に取り出すことができる。透光性部材30を設けることにより、発光素子20の側面23で反射されて発光素子20内に戻る光(戻り光)が低減される。戻り光は発光素子20内で減衰するため、戻り光が低減されると光の損失が抑制され、発光装置10の光取出し効率を向上できる。
【0015】
図2(a)の例では、透光性部材30は、発光素子20の発光面21と波長変換部材50との間に、薄い層として存在している。つまり、発光素子20の発光面21は、透光性部材30で覆われている。発光素子20の発光面21に到達した光は、透光性部材30の薄い層を通って波長変換部材50に到達する。
発光素子20の発光面21と波長変換部材50との間に透光性部材30が存在していなくてもよい。つまり、発光素子20の発光面21と波長変換部材50とが直接接触していてもよい。
【0016】
透光性部材30は、発光素子20の発光面21側に位置する第1の面31を有している。ここで「発光素子20の発光面21側」とは、発光素子の中心からみて、発光面21が向いている方向側のことを指し、図2では、上側のことを意味する。
また、透光性部材30は、反射性部材40で覆われた外面33を有している。外面33は、第1反射性部材40aで覆われる第1外面331と、第2反射性部材40bで覆われる第2外面332とを含む。図2(a)の例では、第1外面331は平面で、第2外面332は外向き(反射性部材40の方向)に凸状の曲面である。
【0017】
反射性部材40は、透光性部材30の外面33を覆っており、さらに、発光素子20の側面23および裏面22が透光性部材30から露出している場合には、その露出した面も覆っている。発光素子20の発光面21は、反射性部材40では覆われない。反射性部材40は、発光素子20の発光面21側に位置する第1の面41と、第1の面41と反対側にある第2の面42とを有している。
反射性部材40は、第1の面41側に第1反射性部材40aと、第2の面側に第2反射性部材40bとを含む。第1反射性部材40aと第2反射性部材40bは、同じ反射性材料から形成されていても、異なる反射性材料から形成されていてもよい。第1反射性部材40aと第2反射性部材40bは互いに接触している。第1反射性部材40aと第2反射性部材40bとの界面40x1は、平坦面であるのが好ましい。
第1反射性部材40aは、発光装置10の発光面11のうち、実際に発光する領域(発光領域11R)を規定する。透光性部材30を伝播する光は、第1反射性部材40aの内側面により反射されるため、発光装置10の発光領域11Rは、第1反射性部材40aの内側面で囲まれた範囲とほぼ一致する。」

ウ「【0038】
<工程8.発光装置10の個片化>
複数の貫通孔410を形成した場合には、隣接する貫通孔410の間の位置(X-X線の位置)で、反射性材料400b、反射性シート400および波長変換シート500を切断して(図4(f))、発光装置10に個片化する(図4(g))。このように、複数の発光装置10を同時に製造することができる。個片化により、反射性材料400b、反射性シート400および波長変換シート500は、それぞれ、第1反射性部材40a、第2反射性部材40bおよび波長変換部材50となる。また、X-X線で切断することにより、発光装置10の外側面にて、第1反射性部材40a、第2反射性部材40bおよび波長変換部材50が面一に形成されることとなる。」

エ「【0068】
(接着剤300(透光性部材30))
接着剤300は、発光素子20を反射性シート400の貫通孔410に固定するために使用され、硬化後に透光性部材30を構成する。接着剤300としては、特に、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性の透光性樹脂であるのが好ましい。
硬化後の接着剤300(すなわち透光性部材30)は発光素子20の側面23と接触しているので、点灯時に発光素子20で発生する熱の影響を受けやすい。熱硬化性樹脂は、耐熱性に優れているので、透光性部材30に適している。なお、透光性部材30は、光の透過率が高いことが好ましい。望ましい特性を付与するために、接着剤300に添加物を添加してもよい。例えば、透光性部材30の屈折率を調整するため、または接着剤300の粘度を調整するために、各種フィラーを添加してもよい。光散乱剤は、大量に添加すると光取出し効率を低下させるが、少量の添加により光取出し効率を向上し得る。必要に応じて、接着剤300に適量の光散乱剤を添加してよい。
【0069】
(反射性シート400、470、480(第1反射性部材、第3反射性部材))
反射性シート400、470、480は、光反射性材料をシート状に成形したものであり、発光装置の第1反射性部材または第3反射性部材を構成する。本明細書において「光反射性材料」とは、発光素子20からの光に対する反射率が70%以上の材料のことを意味する。
光反射性材料としては、例えば透光性材料に、光反射性物質を分散させたものが使用できる。
光反射性物質としては、例えば、酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライトなどが好適である。光反射性物質は、粒状、繊維状、薄板片状などが利用できる。
透光性材料としては、例えばガラス材料などの無機材料、および樹脂材料等の有機材料が好適である。特に、樹脂材料が好ましく、反射性シート400に貫通孔410をパンチング等で形成しやすいので好ましい。樹脂材料としては、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が好適である。
反射性シート470、480を構成する第1反射性シート470a、480aと、第2反射性シート470c、480cは、同じ材料から形成しても、異なる材料から形成してもよい。
【0070】
(反射性材料400b(第2反射性部材))
反射性材料400bは、発光装置の第2反射性部材を構成するものであり、光反射性樹脂が利用できる。本明細書において「光反射性樹脂」とは、発光素子20からの光に対する反射率が70%以上の樹脂のことを意味する。
光反射性樹脂としては、例えば透光性樹脂に、光反射性物質を分散させたものが使用できる。
光反射性物質としては、例えば、酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライトなどが好適である。光反射性物質は、粒状、繊維状、薄板片状などが利用できる。
透光性樹脂としては、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が好適である。
なお、反射性材料400bは、反射性シート400、470、480と同じ材料から形成しても、異なる材料から形成してもよい。」

オ 図1は次のものである。

カ 図2は次のものである。

キ 図1及び図2の記載並びに技術常識に照らせば、発光素子20は、ダイといえるものであり、フリップチップ実装されている。

ク 図1及び図2(a)によれば、波長変換部材50は発光素子20の発光面21上に配置され、層といえるものであり、上面、下面及び側面を有し、波長変換部材50の該下面は発光素子20の発光面21よりも大きいことが見て取れる。

ケ 図2(a)によれば、透光性部材30の外面33は、発光素子20の側面23に接続している。

(2)前記ア?ケから、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(括弧書きは、参考までに、記載の根拠を示したものである。)

「発光装置であって(【0001】)、
発光装置20は、発光素子20、発光素子20の側面23に設けられた透光性部材30、透光性部材30の外面33を覆う反射性部材40、および発光装置10の発光面11側に配置された波長変換部材50を備え(【0011】)、
発光素子20は、透光性基板27と、透光性基板27の下面側に形成された半導体積層体28とを含む半導体発光素子であってもよく、発光素子20は、発光面21、発光面21と反対側の裏面22、および発光面21と裏面22との間に位置する側面23を有し(【0012】)、
発光素子20は、ダイといえるものであり、フリップチップ実装されており(上記キ)、
発光素子20の裏面22には、発光素子20に通電するための一対の電極251、252が設けられ(【0013】)、
波長変換部材50は発光素子20の発光面21上に配置され、層といえるものであり、上面、下面及び側面を有し、波長変換部材50の該下面は発光素子20の発光面21よりも大きく(上記ク)、
透光性部材30は、発光素子20の側面23の少なくとも一部を覆っており(【0014】)、
透光性部材30は、発光素子20の発光面21と波長変換部材50との間にも、薄い層として存在し(【0015】)、
透光性部材30は、発光素子20の発光面21側に位置する第1の面31を有し、また、反射性部材40で覆われた外面33を有し(【0016】)、
透光性部材30の外面33は、発光素子20の側面23に接続し(上記ケ)、
硬化後に透光性部材30を構成する接着剤300としては、特に、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性の透光性樹脂であるのが好ましく、光取出し効率を向上し得るために、接着剤300には少量の光散乱剤を添加してもよく(【0068】)、
反射性部材40は、透光性部材30の外面33を覆っており、反射性部材40は、第1の面41側に第1反射性部材40aと、第2の面側に第2反射性部材40bとを含み(【0017】)、
第1反射性部材は、光反射性材料をシート状に成形したものであり、光反射性材料としては、透光性材料に、光反射性物質を分散させたものが使用でき(【0069】)、
第1反射性部材40aと第2反射性部材40bは、同じ反射性材料から形成されていてもよい(【0017】)、
発光装置。」

2 引用文献2:特開2012-169646号公報
(1)本願の出願日前に頒布された、本願出願時の技術常識を示す刊行物である特開2012-169646号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色発光するMn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体と、該蛍光体の励起源であるLED(発光ダイオード)素子とを備える白色発光装置に関する。」

イ「【0015】
( 実施形態1 )
図1に、本発明の実施形態1に係る白色発光装置の断面を模式的に示す。この図に示す白色発光装置10は、パッケージ11に設けられた凹部の底面上に固定された青色LED素子12と、青色LED素子12を封止する波長変換層13とを備えている。波長変換層13の内部には、粒子状の黄色蛍光体および赤色蛍光体(図示せず)が略均一に分散されている。」

ウ「【0042】
Mn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体は母体が含フッ素化合物であるため、一般に、低い屈折率を有する。特に、ヘキサフルオロケイ酸塩を母体とするものの屈折率は低く、母体結晶の屈折率で近似すると、KSFの屈折率は1 .3 4、(NH_(4))_(2)SiF_(6):Mnの屈折率は1.37となる。よって、Mn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体の粒子に対して外部から入射する励起光が、表面で強く反射されないように、波長変換層13のベース材料は、1.45以下の低い屈折率を有することが望ましい。推奨されるベース材料として、ジメチルシリコーン系のシリコーン樹脂が挙げられる。波長変換層13中には光拡散材を添加してもよい。」

エ 図1は次のものである。

オ 上記ア?エによれば、引用文献2には、発光素子(青色LED素子12)の被覆部材(波長変換層13)のベース材料が、1.45以下の低い屈折率を有するシリコーン樹脂である点について記載されている。

3 引用文献3:国際公開第2015/156227号
(1)本願の出願日前に頒布された、本願出願時の技術常識を示す刊行物である国際公開第2015/156227号(以下、「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。

ア「[0001] 本発明は、量子ドットを有する波長変換部材、成形体、波長変換装置、シート部材、発光装置、導光装置、並びに表示装置に関する。」

イ「[0030] 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本実施の形態におけるLED装置(発光装置)20は、図1Aに示すように、底面21aと底面21aの周囲を囲む側壁21bとを有する収納ケース21と、収納ケース21の底面21aに配置されたLEDチップ(発光素子)22と、収納ケース21内に充填され、LEDチップ22の上面側(発光側)を封止する樹脂層(波長変換部材)23とを有して構成される。ここで上面側とは、収納ケース21からLEDチップ22の発した光が放出される方向であって、LEDチップ22に対して、底面21aの反対の方向を示す。」

ウ「[0048] 第1の樹脂層24に含まれる光散乱剤27は、0.2体積%?20体積%程度であることが好ましい。また第1の樹脂層24に含まれる光散乱剤27は、1重量%?45重量%であることが好ましい。添加量が0.2体積%あるいは1重量%よりも低いと光散乱効果が適切に発揮されず、黒変発生を適切に抑制できない。また添加量が20体積%あるいは45重量%よりも高いと第1の樹脂層24での光の透過性が低下し、発光効率の低下を招きやすくなる。また光散乱剤27の粒径は、0.2μm?100μmの範囲内であることが好ましい。」

エ 図1は次のものである。

オ 上記ア?エによれば、引用文献3には、発光素子(LEDチップ22)の被覆部材(第1の樹脂層24)に含まれる光散乱粒子(光散乱剤27)の配合割合が、1重量%?45重量%である点について記載されている。

4 引用文献4:特開2017-201666号公報
(1)本願の出願日前に頒布された、本願出願時の技術常識を示す刊行物である特開2017-201666号公報(以下、「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。

ア「【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置の製造方法に関する。」

イ「【0012】
図1A,1Bに示すように、実施の形態に係る発光装置100は、チップ・サイズ・パッケージ(CSP;Chip Size Package)型の発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)装置である。発光装置100は、第1光反射部材10と、第2光反射部材20と、光透過部材30と、発光素子50と、接着部材60と、外部接続端子70と、を備えている。・・・(中略)・・・」

ウ「【0034】
(第1光反射部材10、第2光反射部材20)
第1光反射部材及び第2光反射部材は、前方への光取り出し効率の観点から、発光素子の発光ピーク波長における光反射率が、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがよりいっそう好ましい。さらに、第1光反射部材及び第2光反射部材は、白色であることが好ましい。よって、第1光反射部材及び第2光反射部材は、母材中に白色顔料を含有してなることが好ましい。
【0035】
・・・(中略)・・・
【0036】
白色顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムのうちの1種を単独で、又はこれらのうちの2種以上を組み合わせて用いることができる。白色顔料の形状は、適宜選択でき、不定形若しくは破砕状でもよいが、流動性の観点では球状が好ましい。また、白色顔料の粒径は、例えば0.1μm以上0.5μm以下程度が挙げられるが、光反射や被覆の効果を高めるためには小さい程好ましい。第1光反射部材及び第2光反射部材中の白色顔料の含有量は、適宜選択できるが、光反射性及び液状時における粘度などの観点から、例えば10wt%以上80wt%以下が好ましく、20wt%以上75wt%以下がより好ましく、30wt%以上70wt%以下がよりいっそう好ましい。なお、「wt%」は、重量パーセントであり、第1光反射部材及び第2光反射部材の全重量に対する当該材料の重量の比率を表す。」

エ 図1Bは次のものである。

オ 上記ア?エによれば、引用文献4には、反射構造部(第1光反射部材10及び第2光反射部材20)に含まれる光散乱粒子(白色顔料)の配合割合が、好ましくは30重量%?70重量%である点について記載されている。

第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(1)本願発明の「チップ上面、該チップ上面に対向するチップ下面、前記チップ上面と前記チップ下面との間に延伸するチップ縁表面、および前記チップ下面上に配置された1組の電極を含むフリップチップ発光半導体ダイと、」との特定事項について
引用発明の「発光素子20」は「フリップチップ実装され」た「ダイ」であって、「発光面21、発光面21と反対側の裏面22、および発光面21と裏面22との間に位置する側面23を有」すると共に、上記「裏面22」上に「一対の電極251、252が設けられ」るものである。
よって、引用発明の「発光面21」、「裏面22」、「側面23」、「一対の電極251、252」及び「発光素子20」は、それぞれ、本願発明の「チップ上面」、「チップ下面」、「チップ縁表面」、「1組の電極」及び「フリップチップ発光半導体ダイ」に相当する。
したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

(2)本願発明の「層上面、該層上面の反対側の層下面、および前記層上面と前記層下面との間に延伸する層縁表面を含み、前記層下面は、前記フリップチップ発光半導体ダイの前記チップ上面上に配置され、前記チップ上面よりも大きい層と、」との特定事項について
引用発明の「波長変換部材50」は、「上面、下面及び側面を有し」、「発光素子20の発光面21上に配置され」、「発光素子20の発光面21よりも大きく」、「層といえるものであ」る。
よって、引用発明の「波長変換部材50」、「上面」、「下面」及び「側面」は、本願発明の「層」、「層上面」、「層下面」及び「層縁表面」に相当する。
したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

(3)本願発明の「前記フリップチップ発光半導体ダイの前記チップ上面と前記層の前記層下面との間に配置された粘着層と、」との特定事項について
引用発明の「透光性材料30」からなる「薄い層」は、「発光素子20の発光面21と波長変換部材50との間に」「存在」するものであるから、本願発明の「前記フリップチップ発光半導体ダイの前記チップ上面と前記層の前記層下面との間に配置された」ものといえる。
そして、上記「透光性部材30」は「特に、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性の透光性樹脂」からなるものであるから、引用発明の上記「薄い層」は本願発明の「粘着層」に相当する。
したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

(4)本願発明の「前記フリップチップ発光半導体ダイの前記チップ縁表面および前記層の前記層下面の両方に隣接して配置され、前記チップ縁表面へ接続された斜角側スペーサ表面を含み、屈折率が1.45以下であるシリコーンである第1の透明な樹脂材料と、該第1の透明な樹脂材料中に分散された20重量%までの量の第1の光散乱粒子とを含むチップ側スペーサ構造部と、」との特定事項について
引用発明の「透光性部材30」は、「外面33」が「発光素子20の側面23に接続」され、「第1の面31」が「発光素子20の発光面21側に位置する」ものであるから、「発光素子20の側面23」と「波長変換部材30」の「下面」の両方に隣接して配置されているといえる。
また、引用発明は「硬化後に透光性部材30を構成する接着剤300としては、特に、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性の透光性樹脂であるのが好ましく、光取出し効率を向上し得るために、接着剤300には少量の光散乱剤を添加してもよ」いものであるから、引用発明の「透光性部材30」は、「透光性樹脂」と「光散乱剤」を含むものである。
よって、引用発明の「透明性部材30」、「外面33」、「透光性樹脂」及び「光散乱剤」は、それぞれ、本願発明の「チップ側スペーサ構造部」、「斜角側スペーサ表面」、「第1の透明な樹脂材料」及び「第1の光散乱粒子」に相当する。
したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項のうち、「前記フリップチップ発光半導体ダイの前記チップ縁表面および前記層の前記層下面の両方に隣接して配置され、前記チップ縁表面へ接続された斜角側スペーサ表面を含み、第1の透明な樹脂材料と、該第1の透明な樹脂材料中に分散された第1の光散乱粒子とを含むチップ側スペーサ構造部と、」との特定事項を備える。

(5)本願発明の「該チップ側スペーサ構造部の前記サイドスペーサ縁表面を包囲しこれを覆い、第2の透明な樹脂材料と、該第2の透明な樹脂材料中に分散された少なくとも20重量%の量の第2の光散乱粒子とを含む反射構造部とを含む」との特定事項について
引用発明の「反射性部材40」は「透光性部材30の外面33を覆」うものである。また、引用発明の「反射性部材40」は、「第1の面41側に第1反射性部材40aと、第2の面側に第2反射性部材40bとを含み」、「第1反射性部材は、光反射性材料をシート状に成形したものであり、光反射性材料としては、透光性材料に、光反射性物質を分散させたものが使用でき」、「第1反射性部材40aと第2反射性部材40bは、同じ反射性材料から形成されていてもよい」ものである。そうすると、引用発明の「反射性部材40」は、「透光性材料」と「光反射性物質」を含むものである。
よって、引用発明の「反射性部材40」、「外面33」、「透光性材料」及び「光反射性物質」は、それぞれ、本願発明の「反射構造部」、「サイドスペーサ縁表面」、「第2の透明な樹脂材料」及び「第2の光散乱粒子」に相当する。
したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項のうち、「該チップ側スペーサ構造部の前記サイドスペーサ縁表面を包囲しこれを覆い、第2の透明な樹脂材料と、該第2の透明な樹脂材料中に分散された第2の光散乱粒子とを含む反射構造部とを含む」との特定事項を備える。

(6)本願発明の「発光素子」との特定事項について
引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

(7)以上(1)?(6)により、本願発明と引用発明は、下記の点で一致している。

[一致点]
「チップ上面、該チップ上面に対向するチップ下面、前記チップ上面と前記チップ下面との間に延伸するチップ縁表面、および前記チップ下面上に配置された1組の電極を含むフリップチップ発光半導体ダイと、
層上面、該層上面の反対側の層下面、および前記層上面と前記層下面との間に延伸する層縁表面を含み、前記層下面は、前記フリップチップ発光半導体ダイの前記チップ上面上に配置され、前記チップ上面よりも大きい層と、
前記フリップチップ発光半導体ダイの前記チップ上面と前記層の前記層下面との間に配置された粘着層と、
前記フリップチップ発光半導体ダイの前記チップ縁表面および前記層の前記層下面の両方に隣接して配置され、前記チップ縁表面へ接続された斜角側スペーサ表面を含み、第1の透明な樹脂材料と、該第1の透明な樹脂材料中に分散された第1の光散乱粒子とを含むチップ側スペーサ構造部と、
該チップ側スペーサ構造部の前記サイドスペーサ縁表面を包囲しこれを覆い、第2の透明な樹脂材料と、該第2の透明な樹脂材料中に分散された第2の光散乱粒子とを含む反射構造部とを含む発光素子。」

他方、本願発明と引用発明は、下記の点で相違する。

[相違点1]
「第1の透明な樹脂材料」が、本願発明においては「屈折率が1.45以下であるシリコーンである」のに対し、引用発明においてはそのような特定がなされていない点

[相違点2]
「第1の透明な樹脂材料中に分散された第1の光散乱粒子」の配合割合が、本願発明においては「20重量%までの量」であるのに対し、引用発明においてはそのような特定がなされていない点

[相違点3]
「第2の透明な樹脂材料中に分散された第2の光散乱粒子」の配合割合が、本願発明においては「少なくとも20重量%の量」であるのに対し、引用発明においてはそのような特定がなされていない点

2 判断
上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
引用発明は「硬化後に透光性部材30を構成する接着剤300としては、特に、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性の透光性樹脂であるのが好まし」いから、引用発明は「透光性樹脂30」の材料として「シリコーン樹脂」を選択できる。そして、例えば引用文献2に示されるように、発光素子の被覆部材のベース材料(本願発明の「第1の透明な樹脂材料」に相当)を1.45以下の低い屈折率を有するシリコーン樹脂としたものは本願出願時の技術常識である(上記第4 2(1)オ)。
そうすると、引用発明において「透光性樹脂30」の材料を「屈折率が1.45以下であるシリコーン」とすることに格別困難は認められない。

(2)相違点2について
引用発明は、引用文献1の【0068】(上記第4 1(1)エ)の「光散乱剤は、大量に添加すると光取出し効率を低下させるが、少量の添加により光取出し効率を向上し得る。必要に応じて、接着剤300に適量の光散乱剤を添加してよい。」との記載から、「光取出し効率」が低下しない程度に「光散乱剤」を「少量」添加できるものである。そして、例えば引用文献3に示されるように、発光素子の被覆部材に含まれる光散乱粒子の配合割合を1重量%?45重量%としたものは本願出願時の技術常識である(上記第4 3(1)オ)。
そうすると、引用発明において「光散乱剤」の添加量を、技術常識に照らし「少量」の範囲内であると認められる「20重量%までの量」とすることは、当業者にとって単なる設計事項にすぎない。

(3)相違点3について
引用発明の「反射性部材40」は「透光性材料に、光反射性物質を分散させたものが使用でき」るものであるところ、「透光性材料」に対する「光反射性物質」の配合量が少なければ、「反射性部材40」に求められる反射機能が十分に得られないことは明らかであるから、「透光性材料」に対する「光反射性物質」の配合量は、「反射性部材40」の他の物性に支障を来さない範囲内で、多い方が好ましい。そして、例えば引用文献4に示されるように、反射構造部に含まれる光散乱粒子の配合割合が30重量%?70重量%であるものは本願出願時の技術常識である(上記第4 4(1)オ)。
そうすると、引用発明において「透光性材料」に対する「光反射性物質」の配合割合を「少なくとも20重量%の量」とすることに格別困難は認められない。

(4)本願発明の効果について
本願発明の効果は、明細書の【0010】に基づけば、「上面発光型CSP型LEDの発光効率のさらなる向上のためのバッチ大量生産工程に適したチップスケールパッケージング(CSP)LED」「を提供すること」というものであると認められる。
一方、引用発明は、引用文献1の【0038】の記載によれば「発光装置10の個片化」により「複数の発光装置10を同時に製造することができる」ものであって(上記第4 1(1)ウ)、また、「反射性部材40」により発光効率を向上させたものであると理解できる。
そうすると、本願発明の効果は、引用発明の効果と同様の効果であって、格別なものということができない。

(5)審判請求人の主張について
ア 請求人は令和2年2月14日に提出された審判請求書において、以下のように主張する。

[主張1]
「従来のLEDパッケージに関する通常の知識を有する当業者によく理解されるように、通常、高屈折率のシリコーンが選択され、発光半導体ダイを覆うように配置されれば、光抽出効率が向上できる。これは、シリコーンの高屈折率は発光半導体ダイの屈折率(通常>2)に近いため、高屈折率のシリコーンと発光半導体ダイとの界面での全内部反射が抑制できる。
一方、本願発明の補正後の請求項は、チップ側スペーサ構造30の構成材料として低屈折率のシリコーンを利用し、チップ側スペーサ構造30と発光半導体ダイ10のチップ縁表面13との間の界面での全内部反射を増加させる。以下の図に示すように、発光半導体ダイ10のチップ縁表面13から反射された光L(注釈付き)は、より良い光を提供するため、発光半導体ダイ10のチップ上面11から再方向付けされて出射確率がより高くなる。これは、従来の技術で教えられず、当技術分野では一般的な知識でもないと思料する。

・・・(中略)・・・
したがって、引用文献1?5には、それぞれのLEDダイのチップ縁表面を覆う透明部品を、補正後の請求項1に記載される1.45以下の屈折率を有するシリコーンに変更する動機付けがない。
上述のように、補正後の請求項に係る発明は、より低い屈折率を有するシリコーンを利用して、より優れた光抽出効率を提供し、これは従来の技術によって教示されず、当技術分野では一般的な知識でもないと思料する。このため、当業者は、引用文献1?5のいずれかおよび当技術分野の通常知識に基づいて、補正後の請求項に係る発明を容易に想到できない。」
(審判請求書第5頁1行?第8頁8行)

[主張2]
「また、補正後の請求項に係る「第1の透明な樹脂材料中に分散された20重量%までの量の第1の光散乱粒子」との特徴について、引用文献1?5には、光散乱粒子の特定の重量パーセント範囲は開示されていないため、当業者は、引用文献1?5で重量パーセント範囲の基底数を見つけて補正後の本願発明(すなわち、20重量%まで)に調整することはできない。」
(審判請求書第8頁9行?13行)

イ 上記主張について検討する。
(ア)主張1について
請求人は、チップ側スペーサ構造30の構成材料を低屈折率シリコーンとすることで、チップ側スペーサ構造30と発光半導体ダイ10のチップ縁表面13との界面で全内部反射が増加し、チップ上面11からの光の出射確率がより高くなる点は、従来の技術によって教示されず、当技術分野では一般的な知識でもない旨を主張する。
しかしながら、上記主張1で主張する本願発明の効果は、本願明細書に記載されたものでないから、採用することはできない。
また、それを措くとしても、引用発明において、透光性部材30の構成材料に低屈折率シリコーンを採用することで、発光素子20と透光性部材30の屈折率差が拡大し、発光素子20の側面23と透光性部材30の界面において全内部反射が増加する結果、発光面21から出射される光の割合が高くなることは物理法則に照らし明らかであるから、当業者が予期し得ない顕著なものということはできない。

(イ)主張2について
上記(2)に記載したように、引用発明において「透光性樹脂」に対する「光散乱剤」の添加量を「20重量%までの量」とすることは、本願出願時の技術水準から容易である。また、本願発明の「チップ側スペーサ構造部」において、「第1の透明な樹脂材料」に対する「第1の光散乱粒子」の配合割合の限界を「20重量%」とすることについて、本願明細書を参照しても臨界的な効果は認められない。

ウ よって、審判請求人の主張は採用できない。

3 小括
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-10-28 
結審通知日 2020-11-04 
審決日 2020-11-18 
出願番号 特願2018-94180(P2018-94180)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 佐藤 洋允
山村 浩
発明の名称 チップスケールパッケージング発光素子の斜角チップ反射器およびその製造方法  
代理人 舛谷 威志  
代理人 中尾 洋之  
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