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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F04C
管理番号 1373046
審判番号 不服2019-17632  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-26 
確定日 2021-04-08 
事件の表示 特願2017-218206「軸偏心の補償の為の連結装置を有する真空ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月14日出願公開、特開2018- 91330〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年11月13日(パリ条約に基づく優先権主張2016年12月5日、欧州特許庁)の出願であって、平成30年10月26日付けで拒絶理由が通知され、平成31年4月23日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和元年8月26日付けで拒絶査定がなされ、この査定に対し、令和元年12月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和元年12月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
令和元年12月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
1.本件補正の内容
(1)本件補正後の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。)
「真空ポンプ、特に回転ポンプ(10)であって、電動モーターによって駆動ささるポンプシステムを有し、このため電動モーターは被動軸(18)を有し、この被動軸が、ポンプシステムの駆動軸(16)と、連結装置(20)を介して駆動に有効なよう接続されており、その際、連結装置(20)が、
電動モーターの被動軸(18)と回転固定的に接続されている第一の連結ハブ(22)を有し、
ポンプシステムの駆動軸(16)と回転固定的に接続されている第二の連結ハブ(24)を有し、そして、
被動軸(18)と駆動軸(16)の間の力束パス中の連結ディスク(26)を有し、
その際、連結ディスク(26)が、第一の線形案内部によって第一の連結ハブ(22)と回転固定的に接続されており、そして、第二の線形案内部によって、第二の連結ハブ(24)と回転固定的に接続されており、その際、第二の線形案内部が第一の線形案内部に対して垂直に向けられており、
連結ディスク(26)が、四つの長穴(40)により貫通されており、その長手方向延在が、其々、半径方向に推移しており、その際、長穴(40)が、其々、周囲方向において互いに90度ずらされており、
その際、第一の連結ハブ(22)の正面端部に二つのカム(30)が形成されており、これらが、連結ディスク(26)の二つの長穴(40)内に介入し、これらが、周囲方向において互いに180度ずらされており、そして、
その際、第二の連結ハブ(24)の正面端部に、同様に二つのカム(32)が形成されており、これらが、第一の連結ハブ(22)の正面端部に形成されるカム(30)が介入しない、連結ディスク(26)の二つの長穴(40)内に介入し、
各長穴(40)が、其々、開かれた一つの縁部を有し、この縁部が、連結ディスク(26)の周囲縁部に移行しており、
その際、長穴(40)が,平行かつ半径方向に向けられたそれぞれ二つの案内面(38)を有するU字形状であり、当該案内面が、U字形状に曲げられた面を介して互いに接続されているか、または、
第二の連結ハブ(24)のカム(32)が、連結ディスク(26)の周囲縁部を越えて半径方向に突き出していることを特徴とする真空ポンプ。」


(2)本件補正前の請求項1の範囲
本件補正前の、平成31年4月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「真空ポンプ、特に回転ポンプ(10)であって、電動モーターによって駆動ささるポンプシステムを有し、このため電動モーターは被動軸(18)を有し、この被動軸が、ポンプシステムの駆動軸(16)と、連結装置(20)を介して駆動に有効なよう接続されており、その際、連結装置(20)が、
電動モーターの被動軸(18)と回転固定的に接続されている第一の連結ハブ(22)を有し、
ポンプシステムの駆動軸(16)と回転固定的に接続されている第二の連結ハブ(22)を有し、そして、
被動軸(18)と駆動軸(16)の間の力束パス中の連結ディスク(26)を有し、
その際、連結ディスク(26)が、第一の線形案内部によって第一の連結ハブ(22)と回転固定的に接続されており、そして、第二の線形案内部によって、第二の連結ハブ(24)と回転固定的に接続されており、その際、第二の線形案内部が第一の線形案内部に対して垂直に向けられており、
連結ディスク(26)が、四つの長穴(40)により貫通されており、その長手方向延在が、其々、半径方向に推移しており、その際、長穴(40)が、其々、周囲方向において互いに90度ずらされており、
各長穴(40)が、其々、開かれた一つの縁部を有し、この縁部が、連結ディスク(26)の周囲縁部に移行していることを特徴とする真空ポンプ。」

2.本件補正の適否
(1)本件補正の目的
本件補正における請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載した発明特定事項である「第一の連結ハブ(22)」について、「第一の連結ハブ(22)の正面端部に二つのカム(30)が形成されており、これらが、連結ディスク(26)の二つの長穴(40)内に介入し、これらが、周囲方向において互いに180度ずらされており」と技術的に限定し、
また、「第二の連結ハブ(24)」について、「第二の連結ハブ(24)の正面端部に、同様に二つのカム(32)が形成されており、これらが、第一の連結ハブ(22)の正面端部に形成されるカム(30)が介入しない、連結ディスク(26)の二つの長穴(40)内に介入し」と技術的に限定し、
さらに、「長穴(40)」又は「第二の連結ハブ(24)」について、「長穴(40)が,平行かつ半径方向に向けられたそれぞれ二つの案内面(38)を有するU字形状であり、当該案内面が、U字形状に曲げられた面を介して互いに接続されているか、または、第二の連結ハブ(24)のカム(32)が、連結ディスク(26)の周囲縁部を越えて半径方向に突き出している」と技術的に限定するものであり、補正前の請求項1に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明とは、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、本件補正の請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)本件補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、次のとおりであると認める。

「真空ポンプ、特に回転ポンプ(10)であって、電動モーターによって駆動されるポンプシステムを有し、このため電動モーターは被動軸(18)を有し、この被動軸が、ポンプシステムの駆動軸(16)と、連結装置(20)を介して駆動に有効なよう接続されており、その際、連結装置(20)が、
電動モーターの被動軸(18)と回転固定的に接続されている第一の連結ハブ(22)を有し、
ポンプシステムの駆動軸(16)と回転固定的に接続されている第二の連結ハブ(24)を有し、そして、
被動軸(18)と駆動軸(16)の間の力束パス中の連結ディスク(26)を有し、
その際、連結ディスク(26)が、第一の線形案内部によって第一の連結ハブ(22)と回転固定的に接続されており、そして、第二の線形案内部によって、第二の連結ハブ(24)と回転固定的に接続されており、その際、第二の線形案内部が第一の線形案内部に対して垂直に向けられており、
連結ディスク(26)が、四つの長穴(40)により貫通されており、その長手方向延在が、其々、半径方向に推移しており、その際、長穴(40)が、其々、周囲方向において互いに90度ずらされており、
その際、第一の連結ハブ(22)の正面端部に二つのカム(30)が形成されており、これらが、連結ディスク(26)の二つの長穴(40)内に介入し、これらが、周囲方向において互いに180度ずらされており、そして、
その際、第二の連結ハブ(24)の正面端部に、同様に二つのカム(32)が形成されており、これらが、第一の連結ハブ(22)の正面端部に形成されるカム(30)が介入しない、連結ディスク(26)の二つの長穴(40)内に介入し、
各長穴(40)が、其々、開かれた一つの縁部を有し、この縁部が、連結ディスク(26)の周囲縁部に移行しており、
その際、長穴(40)が,平行かつ半径方向に向けられたそれぞれ二つの案内面(38)を有するU字形状であり、当該案内面が、U字形状に曲げられた面を介して互いに接続されているか、または、
第二の連結ハブ(24)のカム(32)が、連結ディスク(26)の周囲縁部を越えて半径方向に突き出していることを特徴とする真空ポンプ。」

なお、本件補正後の請求項1には「電動モーターによって駆動ささるポンプシステムを有し」と記載されているが、当該記載は日本語として不自然であり、また、本願明細書の段落[0022]には「このポンプシステムは、電動モーターハウジング14内に収納される電動モーター(図示せず)によって駆動される。」と記載されていることから、「電動モーターによって駆動されるポンプシステムを有し」の誤記と認め、上記のように認定した。

(3)引用文献1の記載事項
ア.原査定(令和元年8月26日付けの拒絶査定)の拒絶の理由で引用された、本願の出願前(優先日前)に頒布された刊行物である特開平5-180236号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に、次の記載がある。(下線は注目箇所を示すために当審で付したものである。)
「【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】各種回転力伝達機構において2つの回転軸の端部どうしが継手により接続される。例えば、モーターの出力回転軸とポンプの入力回転軸とが継手により接続される。この場合、モーターの出力回転軸とポンプの入力回転軸とが十分に整列する様に注意深くモーター及びポンプの据え付けを行うことはかなりの労力を要する。また、この様な整列に十分気を配って据え付けを行っても、双方の回転軸間には幾分かの偏心や偏角が残り、更にモーターやポンプには作動時に振動が発生するので、これらを継手部分で吸収するために、従来、バネやゴム等の可撓性部材を用いたフレキシブル継手が用いられている。また、偏心及び偏角に対処可能な継手としてオルダム継手が用いられている。」

「【0011】図1は本発明による軸継手の第1の実施例を示す分解斜視図である。これらの図において、2は原動軸端部であり、2’は原動軸回転中心である。また、4は従動軸端部であり、4’は従動軸回転中心である。原動軸端部2と従動軸端部4とは互いに対向し且つ回転中心2’,4’が合致してZ方向となる様に配置されている。」
「【0012】原動軸端部2の外周面には金属製の原動軸側ハブ6が取付けられている。この取付けはキー結合やスプライン結合その他圧入等の適宜の手段によりなされ、該ハブ6の従動側端面が上記原動軸端部2の従動側端面とほぼ同一平面に位置する様に設定される。ハブ6の外周面には原動軸回転中心2’に関し対称的な位置に2つの原動軸側スライド部材10a,10bがボルトにより着脱可能に取付けられている。これらスライド部材10a,10bはそれぞれ原動軸側ハブ6の従動側端面より更に従動側へと延出せる延出部分10a-1,10a-2及び10b-1,10b-2を有しており、これらの延出部分にはそれぞれX-Z面と平行な対をなすスライド外面が形成されている。各延出部分の対をなすスライド外面間の寸法(Y方向寸法)はWであり、これと直交するX方向の寸法はL1である。」
「【0013】同様に、従動軸端部4の外周面には金属製の従動軸側ハブ8が取付けられている。この取付けはキー結合やスプライン結合その他圧入等の適宜の手段によりなされ、該ハブ8の原動側端面が上記従動軸端部4の原動側端面とほぼ同一平面に位置する様に設定される。ハブ8の外周面には従動軸回転中心4’に関し対称的な位置に2つの従動軸側スライド部材12a,12bがボルトにより着脱可能に取付けられている。これらスライド部材12a,12bはそれぞれ従動軸側ハブ8の原動側端面より更に原動側へと延出せる延出部分12a-1,12a-2及び12b-1,12b-2(図示されていない)を有しており、これらの延出部分にはそれぞれY-Z面と平行な対をなすスライド外面が形成されている。原動軸側と同様、各延出部分の対をなすスライド外面間の寸法(X方向寸法)はWであり、これと直交するY方向の寸法はL1である。」
「【0014】14は、原動軸側ハブ6と従動軸側ハブ8との間に配置された回転力伝達部材である。該回転力伝達部材14はX-Y面と平行な円板形状であり、ここにはZ方向に貫通せる8つの貫通孔16a-1,16a-2,16b-1,16b-2,18a-1,18a-2,18b-1,18b-2が形成されている。貫通孔16a-1,16a-2,16b-1,16b-2にはそれぞれX-Z面と平行な対をなすスライド内面が形成されており、貫通孔18a-1,18a-2,18b-1,18b-2にはそれぞれY-Z面と平行な対をなすスライド内面が形成されている。これら各貫通孔の対をなすスライド内面間の寸法はWであり、これと直交する方向の寸法はL2(>L1)である。そして、貫通孔16a-1,16a-2は上記原動軸側スライド部材延出部分10a-1,10a-2をX方向両端に余裕をもって受入れており、貫通孔16b-1,16b-2は上記原動軸側スライド部材延出部分10b-1,10b-2をX方向両端に余裕をもって受入れており、貫通孔18a-1,18a-2は上記従動軸側スライド部材延出部分12a-1,12a-2をY方向両端に余裕をもって受入れており、貫通孔18b-1,18b-2は上記従動軸側スライド部材延出部分12b-1,12b-2をY方向両端に余裕をもって受入れている。かくして、上記各スライド部材延在部分のスライド外面は回転力伝達部材14の対応する貫通孔スライド内面とそれらの接触面内で摺動可能である。」
「【0016】かくして、本実施例において、回転力伝達部材14は、原動軸側スライド部材10a,10bに対しX方向のスライド移動、Z方向のスライド移動及びY方向を中心とする回動をなすことにより原動軸側ハブ6に対し相対移動でき、従動軸側スライド部材12a,12bに対しY方向のスライド移動、Z方向のスライド移動及びX方向を中心とする回動をなすことにより従動軸側ハブ8に対し相対移動できる。」
「【0017】本実施例において、原動軸端部2が回転すると、その回転力は原動軸側ハブ6に取付けられた原動軸側スライド部材10a,10bから回転力伝達部材14を介して従動軸側スライド部材12a,12bを取付けた従動軸側ハブ8へと伝達され、従動軸端部4が回転せしめられる。原動軸端部2と従動軸端部4とに偏心、偏角またはスラスト移動が生じた場合には、上記の様に回転力伝達部材14と原動軸側スライド部材10a,10bとの間の相対移動及び回転力伝達部材14と従動軸側スライド部材12a,12bとの間の相対移動により、良好に対処できる。尚、原動軸端部2と従動軸端部4との間隔は、予想されるスラスト移動分だけ回転力伝達部材14の厚さより大きく設定されている。」
「【0022】図2は本発明による軸継手の第2の実施例を示す分解斜視図である。これらの図において、上記図1におけると同一の機能を有する部材には同一の符号が付されている。本実施例では、原動軸側スライド部材10a,10bが原動軸側ハブ6の従動側端面に形成されており、従動軸側スライド部材12a,12bが従動軸側ハブ8の原動側端面に形成されている。各スライド部材は対をなすスライド面を有し、これらスライド面間の寸法はWであり、これと直交する方向の寸法はL1である。また、回転力伝達部材14には、原動軸側スライド部材10a,10b及び従動軸側スライド部材12a,12bをそれぞれ受入れている4つの貫通孔16a,16b,18a,18bが形成されている。これら各貫通孔の対をなすスライド内面間の寸法はWであり、これと直交する方向の寸法はL2(>L1)である。本実施例は、上記第1の実施例のいくつかの作用効果と同様の作用効果がある。」
「【0023】図3は本発明による軸継手の第3の実施例を示す分解斜視図である。これらの図において、上記図2におけると同一の機能を有する部材には同一の符号が付されている。本実施例では、回転力伝達部材14に4つの切欠き17a,17b,19a,19bが形成されている。切欠き17a,17bにはそれぞれX-Z面と平行な対をなすスライド内面が形成されており、切欠き19a,19bにはそれぞれY-Z面と平行な対をなすスライド内面が形成されている。本実施例は、上記第2の実施例と同様の作用効果がある。」

イ.引用文献1の記載から把握できる技術的事項
(ア)段落[0002]の記載から、モーターの出力回転軸とポンプの入力回転軸とが継手により接続されていることから、モーター、ポンプ、継手等を合わせた装置は、回転ポンプ装置と呼ぶことができる。

(イ)段落[0002][0011]の記載から、モーターの出力回転軸が原動軸であり、ポンプの入力回転軸が従動軸であり、出力回転軸と入力回転軸とを接続する継手が、軸継手であるといえる。

(ウ)図3から、回転力伝達部材が、切欠き17a,17b,19a,19bにより貫通されていること、切欠きは回転力伝達部材の半径方向に延びていること、切欠き17a,17bはX軸方向に対向して並ぶとともに回転中心に対して周囲方向においてお互いに180度ずらされていること、切欠き19a,19bはY軸方向に対向して並ぶとともに回転中心に対して周囲方向においてお互いに180度ずらされていること、切欠き17a,17b,19a,19bは回転力伝達部材の半径方向外周に開かれた縁部を有していること、切欠き17a,17b,19a,19bはコ字形状であることが看取される。


ウ.引用発明
引用文献1の前記記載事項及び、これら記載事項から把握できる前記技術的事項からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると言える。
<引用発明>
「回転ポンプ装置であって、モーターの原動軸とポンプの従動軸とが軸継手により接続されるポンプを有し、前記モーターは前記原動軸を有し、前記原動軸と前記ポンプの前記従動軸とが前記軸継手により接続されており、
前記軸継手が、
前記原動軸とキー結合やスプライン結合その他圧入等の手段により取付けられた原動軸側ハブを有し、
前記従動軸とキー結合やスプライン結合その他圧入等の手段により取付けられた従動軸側ハブを有し、
前記原動軸側ハブと前記従動軸側ハブとの間に配置された回転力伝達部材を有し、
前記回転力伝達部材は、原動軸側スライド部材10a,10bと切欠き17a,17bによって前記原動軸側ハブに対してX方向のスライド移動、Z方向のスライド移動及びY方向を中心とする回動をなすことによる相対移動ができ、従動軸側スライド部材12a,12bと切欠き19a,19bによって前記従動軸側ハブに対してY方向のスライド移動、Z方向のスライド移動及びX方向を中心とする回動をなすことによる相対移動ができ、
前記回転力伝達部材が、前記切欠き17a,17b,19a,19bにより貫通されており、前記切欠き17a,17b,19a,19bは前記回転力伝達部材の半径方向に延びており、前記切欠き17a,17bはX軸方向に対向して並んでいるとともに前記切欠き19a,19bはY軸方向に対向して並んでおり、
前記原動軸側ハブの従動側端面に原動軸側スライド部材10a,10bが形成されており、前記回転力伝達部材の前記切欠き17a,17bが前記原動軸側スライド部材10a,10bを受入れ、前記切欠き17a,17bは、回転中心に対して周囲方向においてお互いに180度ずらされており、
前記従動軸側ハブの原動側端面に従動軸側スライド部材12a,12bが形成されており、前記回転力伝達部材の切欠き19a,19bが前記従動軸側スライド部材12a,12bを受入れ、
前記切欠き17a,17b,19a,19bは前記回転力伝達部材の半径方向外周に開かれた縁部を有しており、
前記切欠き17a,17b,19a,19bはX-Z平面又はY-Z平面と平行な対をなすスライド内面を含むコ字形状であり、前記スライド内面が互いに接続されている
回転ポンプ装置。」


(4)本件補正発明と引用発明との対比、一致点及び相違点
ア.対比
本件補正発明の各構成要素と、引用発明の各構成要素とは、それらの構造及び機能等から見て、以下の相当関係又は共通点があると言える。
(ア)引用発明の「回転ポンプ装置」は本件補正発明の「回転ポンプ」に相当し、以下同様に、「モーター」が「電動モータ」に、
「ポンプ」は「ポンプシステム」に、
「モーターの原動軸とポンプの従動軸とが軸継手により接続されるポンプ」は「電動モーターによって駆動されるポンプシステム」に
「原動軸」は「被動軸」に
「従動軸」は「駆動軸」に、
「軸継手」は「連結装置」に、
「前記原動軸とポンプの従動軸とが軸継手により接続されて」いる事項は「この被動軸が、ポンプシステムの駆動軸と、連結装置を介して駆動に有効なよう接続されて」いる事項に、
「キー結合やスプライン結合その他圧入等の手段により取付けられた」という事項は「回転固定的に接続されている」事項に、
「原動軸側ハブ」は「第一の連結ハブ」に、
「従動軸側ハブ」は「第二の連結ハブ」に、それぞれ相当する。

(イ)本件補正発明における「力束パス」という用語は、技術用語として必ずしも意味が明瞭でないが、明細書の段落[0023]の記載及び図3を参酌すると、「回転力の伝達経路」を意図する用語であると解されるから、引用発明の「原動軸側ハブと従動軸側ハブとの間に配置された回転力伝達部材」は本件補正発明の「被動軸と駆動軸の間の力束パス中の連結ディスク」に相当する。

(ウ)本願補正発明における「第一の線形案内部」とは、明細書の段落[0027]の記載を参酌すると、第一の連結ハブ(22)のカム(30)と、これが介入する連結ディスク(26)の長穴(40)とが関連して形成する部位である。ここで、引用発明の「原動軸側スライド部材10a,10b」及び「切欠き17a,17b,19a,19b」は、本件補正発明における、第一の連結ハブ(22)の正面端部に形成されている「二つのカム(30)」及び「四つの長穴(40)」にそれぞれ相当するから、引用発明の「原動軸側スライド部材10a,10bと切欠き17a,17b」は本件補正発明の「第一の線形案内部」に相当する。
同様に、引用発明の「従動軸側スライド部材12a,12b」は、本願補正発明における、第二の連結ハブ(24)の正面端部に形成されている「二つのカム(32)」に相当するから、引用発明の「従動軸側スライド部材12a,12bと切欠き19a,19b」は本件補正発明の「第二の線形案内部」に相当する。

(エ)引用発明の「原動軸側ハブに対してX方向のスライド移動、Z方向のスライド移動及びY方向を中心とする回動をなすことによる相対移動ができ」る事項は本件補正発明の「第一の連結ハブ(22)と回転固定的に接続されており」という事項に相当し、以下同様に、
「従動軸側ハブに対してY方向のスライド移動、Z方向のスライド移動及びX方向を中心とする回動をなすことによる相対移動ができ」るという事項は「第二の連結ハブ(24)と回転固定的に接続されて」いるという事項に、
「切欠きは回転力伝達部材の半径方向に延びて」いるという事項は「その長手方向延在が、其々、半径方向に推移して」いるという事項に、
「切欠き17a,17bはX軸方向に対向して並んでいるとともに切欠き19a,19bはY軸方向に対向して並んで」いる事項は「長穴(40)が、其々、周囲方向において互いに90度ずらされて」いる事項に、
「原動軸側ハブの従動側端面」は「第一の連結ハブ(22)の正面端部」に、
「回転力伝達部材の切欠き17a,17bが原動軸側スライド部材10a,10bを受入れ」るという事項は「二つのカム(30)が連結ディスク(26)の二つの長穴(40)内に介入し」ているという事項に、
「従動軸側ハブの原動側端面」は「第二の連結ハブ(24)の正面端部」に、
「回転力伝達部材の切欠き19a,19bが・・・受入れ」る事項は「第一の連結ハブ(22)の正面端部に形成されるカム(30)が介入しない、連結ディスク(26)の二つの長穴(40)に介入し」ている事項に、
「切欠き17a,17b,19a,19bは回転力伝達部材の半径方向外周に開かれた縁部を有して」いる事項は「各長穴(40)が、其々、開かれた一つの縁部を有し、この縁部が、連結ディスク(26)の周囲縁部に移行している」事項に、
「X-Z平面又はY-Z平面と平行な対をなすスライド内面」が「平行かつ半径方向に向けられたそれぞれ二つの案内面」に、それぞれ相当する。

(オ)引用発明の「前記スライド内面が互いに接続されている」という事項と本件補正発明の「当該案内面が、U字形状に曲げられた面を介して互いに接続されている」という事項は、「当該案内面が互いに接続されている」点で共通する。


イ.一致点及び相違点
以上の対比を総合すると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「回転ポンプであって、電動モーターによって駆動されるポンプシステムを有し、このため電動モーターは被動軸を有し、この被動軸が、ポンプシステムの駆動軸と、連結装置を介して駆動に有効なよう接続されており、その際、連結装置が、 電動モーターの被動軸と回転固定的に接続されている第一の連結ハブを有し、
ポンプシステムの駆動軸と回転固定的に接続されている第二の連結ハブを有し、そして、
被動軸と駆動軸の間の力束パス中の連結ディスクを有し、
その際、連結ディスクが、第一の線形案内部によって第一の連結ハブと回転固定的に接続されており、そして、第二の線形案内部によって、第二の連結ハブと回転固定的に接続されており、その際、第二の線形案内部が第一の線形案内部に対して垂直に向けられており、
連結ディスクが、四つの長穴により貫通されており、その長手方向延在が、其々、半径方向に推移しており、その際、長穴が、其々、周囲方向において互いに90度ずらされており、
その際、第一の連結ハブの正面端部に二つのカムが形成されており、これらが、連結ディスクの二つの長穴内に介入し、これらが、周囲方向において互いに180度ずらされており、そして、
その際、第二の連結ハブの正面端部に、同様に二つのカムが形成されており、これらが、第一の連結ハブの正面端部に形成されるカムが介入しない、連結ディスクの二つの長穴内に介入し、
各長穴が、其々、開かれた一つの縁部を有し、この縁部が、連結ディスクの周囲縁部に移行しており、
その際、長穴が,平行かつ半径方向に向けられたそれぞれ二つの案内面を有する形状であり、当該案内面が互いに接続されている
回転ポンプ。」

<相違点1>
本件補正発明では、「回転ポンプ」が、「真空ポンプ」であるのに対し、引用発明では、「真空ポンプ」であるか明らかでない点。

<相違点2>
本件補正発明では、長穴が「U字」形状であり、案内面が「U字形状に曲げられた面を介して」互いに接続されているのに対し、引用発明では案内面が互いに接続されているものの「コ字形状」に接続されている点。

なお、本件補正発明は、「長穴(40)が、平行かつ半径方向に向けられたそれぞれ二つの案内面(38)を有するU字形状であり、当該案内面が、U字形状に曲げられた面を介して互いに接続されているか、または、
第二の連結ハブ(24)のカム(32)が、連結ディスク(26)の周囲縁部を越えて半径方向に突き出している」という発明特定事項を備えているが、「または」で接続された選択肢のうちの一方である「長穴(40)が、平行かつ半径方向に向けられたそれぞれ二つの案内面(38)を有するU字形状であり、当該案内面が、U字形状に曲げられた面を介して互いに接続されている」との発明特定事項について検討すれば足りることは明らかである。

(5)相違点についての判断
ア.相違点1について
真空ポンプである回転ポンプは、周知かつ慣用されているポンプであり、引用発明の回転ポンプとして、真空ポンプを採用することに格別のものは見あたらず、この点は当業者が適宜なすべき単なる設計的事項である。

イ.相違点2について
引用発明の回転力伝達部材14では、回転力を伝達する際に各切欠き17a,17b,19a,19bの各スライド内面に対して、スライド部材10a,10b,12a,12bから周方向又は軸方向の力が加えられること、その結果として、コ字形状のスライド内面に応力が生じること、そして、当該応力は、曲率半径が小さい箇所である角部に集中して大きな応力となることが、機械技術の常識から、当業者に明らかである。そして、応力が大きい部分には、材料の疲労や破壊が生じる可能性が高いこと、及び応力の集中を緩和して発生する応力を小さくするためには、角部の曲率半径を大きくすることが有効であることは、機械技術の常識であり、いわゆるオルダム継手の回転力伝達部材である連結ディスクに設ける切欠きの形状をU字形状とすることも、例えば、米国特許第3116619号明細書(図1を参照)や米国特許出願公開第2016/0305485号明細書(図6を参照)にも開示されているとおり、周知の技術的事項(以下、「周知技術」という。)である。
そうすると、上記したとおり、引用発明におけるコ字形状のスライド内面に生じる応力集中を緩和し、材料の疲労や破壊が生じる可能性を低減するために、コ字形状のスライド内面の曲率半径を大きくするべく、回転力伝達部材の径方向内側のスライド内面を、上記の周知技術の切欠きのようにU字形状の湾曲面とし、当該湾曲面に他のスライド面を接続することで、各切欠きの形状をコ字形状からU字形状に変えることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ.そして、本件補正発明が奏する効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができる発明ではない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
令和元年12月26日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年4月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみてその請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものであると認める。

「真空ポンプ、特に回転ポンプ(10)であって、電動モーターによって駆動されるポンプシステムを有し、このため電動モーターは被動軸(18)を有し、この被動軸が、ポンプシステムの駆動軸(16)と、連結装置(20)を介して駆動に有効なよう接続されており、その際、連結装置(20)が、
電動モーターの被動軸(18)と回転固定的に接続されている第一の連結ハブ(22)を有し、
ポンプシステムの駆動軸(16)と回転固定的に接続されている第二の連結ハブ(24)を有し、そして、
被動軸(18)と駆動軸(16)の間の力束パス中の連結ディスク(26)を有し、
その際、連結ディスク(26)が、第一の線形案内部によって第一の連結ハブ(22)と回転固定的に接続されており、そして、第二の線形案内部によって、第二の連結ハブ(24)と回転固定的に接続されており、その際、第二の線形案内部が第一の線形案内部に対して垂直に向けられており、
連結ディスク(26)が、四つの長穴(40)により貫通されており、その長手方向延在が、其々、半径方向に推移しており、その際、長穴(40)が、其々、周囲方向において互いに90度ずらされており、
各長穴(40)が、其々、開かれた一つの縁部を有し、この縁部が、連結ディスク(26)の周囲縁部に移行していることを特徴とする真空ポンプ。」

なお、平成31年4月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には、「電動モーターによって駆動ささるポンプシステムを有し」及び「回転固定的に接続されている第二の連結ハブ(22)」と記載されている。
前者については、上記第2の〔理由〕2(2)と同様に「電動モーターによって駆動されるポンプシステムを有し」の誤記と認め、上記のように認定した。
後者については、本願明細書の段落[0023]?[0028]に一貫して「第二の連結ハブ24」と記載されていること及び図3の連結関係から、「回転固定的に接続されている第二の連結ハブ(24)」の誤記であると認め、上記のように認定した。

2.原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、本願発明は、日本国内又は外国において、その出願(優先日)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用文献及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記第2の〔理由〕2(3)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、前記第2の〔理由〕2で検討した本件補正発明から、「第一の連結ハブ(22)の正面端部に二つのカム(30)が形成されており、これらが、連結ディスク(26)の二つの長穴(40)内に介入し、これらが、周囲方向において互いに180度ずらされており」との特定事項、「第二の連結ハブ(24)の正面端部に、同様に二つのカム(32)が形成されており、これらが、第一の連結ハブ(22)の正面端部に形成されるカム(30)が介入しない、連結ディスク(26)の二つの長穴(40)内に介入し」との特定事項、及び「長穴(40)が,平行かつ半径方向に向けられたそれぞれ二つの案内面(38)を有するU字形状であり、当該案内面が、U字形状に曲げられた面を介して互いに接続されているか、または、第二の連結ハブ(24)のカム(32)が、連結ディスク(26)の周囲縁部を越えて半径方向に突き出している」との特定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明との相違点は、前記第2の〔理由〕2(4)イにおける相違点1のみとなる。
本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の〔理由〕2(5)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、相違点2に相当する発明特定事項が削除された本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-10-30 
結審通知日 2020-11-04 
審決日 2020-11-18 
出願番号 特願2017-218206(P2017-218206)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F04C)
P 1 8・ 575- Z (F04C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 尋原田 愛子  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 柿崎 拓
小川 恭司
発明の名称 軸偏心の補償の為の連結装置を有する真空ポンプ  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 江崎 光史  
代理人 中村 真介  
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