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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B42D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1373051
審判番号 不服2020-4384  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-02 
確定日 2021-04-08 
事件の表示 特願2015-240095「写真アルバムと収納ケースの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月15日出願公開、特開2017-105048〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月9日の出願であって、令和1年6月6日付けで拒絶理由が通知され、同年9月13日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正書が提出され、同年10月15日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年12月20日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正書が提出され、同年12月27日付けで同月20日付けで提出された手続補正書による補正が却下されるとともに、拒絶査定がなされ、これに対し、令和2年4月2日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 令和2年4月2日付けで提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年4月2日付けで提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和1年9月13日付けで提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1乃至7を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
写真アルバムと該写真アルバムを収納する収納ケースの製造方法であって、
ユーザの依頼を受けて写真を撮影する撮影工程と、
該写真を編集した該写真アルバムを作成するアルバム作成工程と、
該写真を利用した該収納ケースを作成するケース作成工程と、を備え、
該写真アルバムは、該写真が表示される表紙を有し、
該収納ケースは、該写真アルバムの該表紙に表示される該写真と共通する写真が対応する位置関係で表示される表紙を有する
ことを特徴とする写真アルバムと収納ケースの製造方法。
【請求項2】
該アルバム作成工程は、該ユーザの依頼に応じて該写真アルバムを作成することを特徴とする請求項1に記載の写真アルバムと収納ケースの製造方法。
【請求項3】
該ケース作成工程は、該ユーザの依頼に応じて該収納ケースを作成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の写真アルバムと収納ケースの製造方法。
【請求項4】
該撮影工程で得られた写真を修整する修整工程を備え、
該アルバム作成工程及び該ケース作成工程では、該修整工程により修整された写真を用いる
ことを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の写真アルバムと収納ケースの製造方法。
【請求項5】
該写真アルバムの該表紙及び該収納ケースの該表紙に表示される該写真は、該ユーザの所望によって大きさ、位置、または形が決められる
ことを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の写真アルバムと収納ケースの製造方法。
【請求項6】
ユーザの依頼を受けて撮影した写真を編集して作成され、該写真が表示される表紙を有する写真アルバムと、
該写真アルバムを収納するとともに、該写真アルバムの該表紙に表示される該写真と共通する写真が対応する位置関係で表示される表紙を有する収納ケースとからなる
ことを特徴とする写真アルバムと収納ケース。
【請求項7】
該写真アルバムの該表紙及び該収納ケースの該表紙に表示される該写真は、該ユーザの所望によって大きさ、位置、または形状が決められる
ことを特徴とする請求項6に記載の写真アルバムと収納ケース。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
写真アルバムと該写真アルバムを収納する収納ケースの製造方法であって、
ユーザの依頼を受けて、背景や照明の工夫を行うとともに顔のメイクやヘアーメイク、着付けを行ったうえで、被写体の写真を撮影する撮影工程と、
該撮影工程と一連の流れとして連携して行う工程であって、該撮影工程で得られた写真を修整する修整工程と、
該撮影工程及び該修整工程と一連の流れとして連携して行う工程であって、該修整工程を経て得られた該写真のデータを用いることにより、該写真アルバムの表紙に表示される写真を印画紙に印刷するとともに、内部に表示される写真を編集してこの編集した写真を印画紙に印刷して、これらの印画紙を台紙に貼り付けて製本して、該写真を編集した該写真アルバムを作成するアルバム作成工程と、
該撮影工程、該修整工程及び該アルバム作成工程と一連の流れとして連携して行う工程であって、該修整工程を経て得られた該写真のデータであって該アルバム作成工程で使用された該写真のデータと同じ該写真のデータを用いることにより、該写真アルバムの該表紙に表示される該写真と共通する写真を対応する位置関係で印画紙に印刷し、この印画紙を台紙に接着して箱状に成型することにより、該写真を利用した該収納ケースを作成するケース作成工程と、を備える
ことを特徴とする写真アルバムと収納ケースの製造方法。」


2 補正の適否について
本件補正により、本件補正前の請求項1を引用する請求項4の「写真アルバムと収納ケースの製造方法」における「写真を撮影する撮影工程」について、「背景や照明の工夫を行うとともに顔のメイクやヘアーメイク、着付けを行ったうえで、被写体の」と限定し(以下「補正事項1」という。)、「該撮影工程で得られた写真を修整する修整工程」について、「該撮影工程と一連の流れとして連携して行う工程であって」と限定し(以下「補正事項2」という。)、「写真を編集した該写真アルバムを作成するアルバム作成工程」について、「撮影工程及び該修整工程と一連の流れとして連携して行う工程であって、該修整工程を経て得られた該写真のデータを用いることにより」、該写真アルバムの表紙に表示される写真「を印画紙に印刷するとともに、内部に表示される写真を編集してこの編集した写真を印画紙に印刷して、これらの印画紙を台紙に貼り付けて製本して」と限定し(以下「補正事項3」という。)、「該写真を利用した該収納ケースを作成するケース作成工程」について、「該撮影工程、該修整工程及び該アルバム作成工程と一連の流れとして連携して行う工程であって、該修整工程を経て得られた該写真のデータであって該アルバム作成工程で使用された該写真のデータと同じ該写真のデータを用いることにより」、該写真アルバムの該表紙に表示される該写真と共通する写真を対応する位置関係で「印画紙に印刷し、この印画紙を台紙に接着して箱状に成型することにより」と限定する(以下「補正事項4」という。)ものである。

(1)補正事項1について
上記補正事項1は、本件補正前の請求項1を引用する請求項4の「写真アルバムと収納ケースの製造方法」における「写真を撮影する撮影工程」に関して、「背景や照明の工夫を行うとともに顔のメイクやヘアーメイク、着付けを行ったうえで、被写体の」と具体的に特定したものであるから、上記補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項1は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

(2)補正事項2について
上記補正事項2は、本件補正前の請求項1を引用する請求項4の「写真アルバムと収納ケースの製造方法」における「該撮影工程で得られた写真を修整する修整工程」に関して、「該撮影工程と一連の流れとして連携して行う工程であって」と具体的に特定したものであるから、上記補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項2は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

(3)補正事項3について
上記補正事項3は、本件補正前の請求項1を引用する請求項4の「写真アルバムと収納ケースの製造方法」における「写真を編集した該写真アルバムを作成するアルバム作成工程」に関して、「撮影工程及び該修整工程と一連の流れとして連携して行う工程であって、該修整工程を経て得られた該写真のデータを用いることにより」、及び写真アルバムの表紙に表示される写真「を印画紙に印刷するとともに、内部に表示される写真を編集してこの編集した写真を印画紙に印刷して、これらの印画紙を台紙に貼り付けて製本して」と具体的に特定したものであるから、上記補正事項3は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項3は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

(4)補正事項4について
上記補正事項4は、本件補正前の請求項1を引用する請求項4の「写真アルバムと収納ケースの製造方法」における「該写真を利用した該収納ケースを作成するケース作成工程」に関して、本件補正前の「該収納ケースは、該写真アルバムの該表紙に表示される該写真と共通する写真が対応する位置関係で表示される表紙を有する」との事項が、「該写真アルバムの該表紙に表示される該写真と共通する写真を対応する位置関係で印画紙に印刷し、この印画紙を台紙に接着して箱状に成型することにより、該写真を利用した該収納ケース」と補正するものである。
上記補正は、「収納ケース」が、「表紙を有する」との発明特定事項を削除するものであるから,特許法第17条の2第5項の各号に規定するいずれかの目的とするものにも該当しない。

してみると,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反してされたものというほかないから,同法第159条第1項において読み替えて適用される同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 独立特許要件について
上記のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するものではないが,念のため,本件補正が限定的減縮であると仮定して、本件補正後の請求項1に係る発明(令和2年4月2日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】(以下、「本願補正発明」という。)における本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に記載したとおりのものと認める。

(2)引用例
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由において引用された本願の出願日前に頒布された実用新案登録第3090895号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、結婚式等の記念行事に関する多数の写真を編集してなる記念アルバムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、結婚式並びに結婚披露宴の写真をまとめて記念行事のアルバムを作成する場合には、一般的に、結婚式並びに結婚披露宴の記録の他、新郎・新婦の誕生から現在までの記録写真を編集して成長の順序に従った配置に貼付することなどが行われている。しかし、このように、ただ、結婚式等の記録や成長の記録をまとめるだけでは物足りなさを覚えさせられることから、種々の工夫が加えられている。また、近時はコンピューター技術を駆使してすべての写真を印刷することも可能となっているが、このような印刷による写真では、未だ現像した写真に匹敵する質感を得るには至っておらず、かつての安価な卒業アルバムに似た感じを抱かせるものとなってしまうことは否めない。こうして、実際の写真を貼付したアルバムの価値が見直されることになるが、単にアルバム台紙に写真を貼付してメッセージを記載するだけでは、折角の大事な記念行事の記録として不十分なものと感じさせられることが多い。そこで専門業者による写真の撮影とこれに続くアルバムの製作により内容の充実した記念アルバムの製作が行われることになる。専門業者によるアルバムの製作においては、単に撮影した写真や持ち込まれた写真を貼付するだけではなく、記念アルバムとしての質感を向上させるための種々の工夫が試みられている。」
(イ)「【0007】
(請求項1に記載した考案の特徴)
請求項1に記載した考案の記念アルバムを構成するアルバム台紙は、一方の側を綴じ込み可能な基板台紙と、この基板台紙の少なくとも一方の面に貼付してあり、内周部に曲線を含む任意の形状の枠孔が少なくとも1個は設けてある中枠紙と、各枠孔にこれらの枠孔の形状に対応する形状の写真を嵌め込んである写真と、これらの写真を含む中枠紙の表面を保護するラミネート層とにより構成されているところに特徴がある。上記の通り、記念アルバムに綴じられるアルバム台紙は、所定厚さの基板台紙の両面に貼付する写真の形状に対応する枠孔を設けた中枠紙を貼り付け、この枠孔に選択された写真を嵌め込んで固定し、さらにその上に写真や台紙の表面を保護するためのラミネート処理を施したものからなる。

【0009】
(請求項2に記載した考案の特徴)
請求項2記載した考案の記念アルバムは、上記の枠孔及び写真の形状はカッティングプロッター(静電プロッター)で裁断することにより形成したものであるところに特徴がある。この裁断は、枠孔又は写真のどちらかに適用したものでもよい。上記したように、枠孔の裁断を従来から行われている型抜きの方法によって行っていたのでは、曲線を含む形状の枠孔や写真の外形に打ち抜くことは困難であったが、本考案はカッティングプロッターによる裁断工法を採用することにより、ハート形などの曲線を含む形状の枠孔や写真の外形を容易にかつ任意の寸法のものが得られるようになった。このため、任意の形状の写真を任意の位置に配置可能となるとともに、製作コストの引き下げを可能とするものである。このことは、枠孔の寸法を僅かにそこに嵌め込まれる写真の外形よりも大きくすることにより写真の嵌め込み作業を容易化する効果を生じ、アルバムの製造コストのさらなる低減を実現可能とした。もちろん、写真の裁断については、裁断する形状に応じてこれまで採用していたカッター等を使用して行うものも含まれる。」
(ウ)「【0015】
【考案の実施の形態】
次に本考案の一実施形態の例について図面を参照して説明する。図1は、本考案に係る記念アルバム1の全体の構成についてアルバム台紙を開げた状態について示したものであり、これを閉じて後述のケース31と組み合わせることにより収納並びに保管に適するようになっている。この記念アルバム1は、複数のアルバム台紙2、…、前表紙7、裏表紙8及び背表紙9により構成されている。アルバム台紙2には、図の左側に位置している普通台紙3と、台紙の一辺で折り返しをする折り重ね台紙4とがある。普通台紙3は各表紙の寸法よりもやや小さい寸法になっているのに対し、折り重ね台紙4は、右側に示されている普通台紙3と同一形状の被連結台紙4aの側部に連結された折り返し台紙4bを、この被連結台紙の一辺で折り返すことにより2点鎖線で示すように、被連結台紙の任意の範囲と重なるようになっている。折り重ね台紙4は通常、普通台紙3、3間に1桁の枚数を適宜配設することにより、アルバムの機能に興趣を付加するものとなっている。折り返し台紙4bは、場合により被連結台紙4aの側部の他、上部又は下部に連結するようにしてもよい。
【0016】
各普通台紙3及び折り重ね台紙4には、各種の形状・寸法の写真5の他、メッセージや写真の説明などを印刷により表示してなる情報表示部6が設けてある。情報表示部6は、貼付した写真5の周囲のおける後述の中枠紙にメッセージや絵又は模様等の組み合わせを印刷したものからなる。写真5は、長方形写真5a、ハート形写真5b、楕円形写真5cなどが適宜配置されている。また、折り重ね台紙4は、被連結台紙4aと折り返し台紙4bとをヒンジ部4cを介して揺動可能に連結したものからなる。折り返し台紙4bの上下辺は、被連結台紙の上下辺の延長線上と一致しているのに対し、側辺は垂直線又は斜線の直線部の中程に、縦長の楕円形の半分が突出してなる突出部4dが形成してある。この突出部4dは、被連結台紙4aと折り返し台紙4bとを折り重ねると、被連結台紙の中程に貼付してある楕円形の写真5eと重なるようになっている。これと同時に、突出部4dの上下の直線部は、被連結台紙4aの背表紙側の所定範囲を残して覆い隠すととに、折り返し台紙4bの裏面に貼付された写真(図示略)が表われるようになっている。この写真も半楕円形の部分が上記の楕円形の写真を含む楕円形と折り重なるように貼付されている。」
(エ)「【0018】
次にアルバム台紙2の構成について説明する。図2は、両面に写真が貼付してあるアルバム台紙2について厚さを変則的に拡大して示したものである。図示してあるように、厚紙からなる基板台紙11の両面に写真5の厚さとほぼ同じ厚さの着色紙からなる中枠紙13が貼付してある。この中枠紙13には、任意の形状の枠孔13aが設けてあり、この枠孔に、これと同形の写真5が嵌め込まれている。これらの写真5は両面粘着テープや、透明粘着テープにより固定してある。中枠紙13の厚さは、写真5の厚さとはほぼ同じくしてあるため、貼付された写真と中枠紙との間には殆ど高低差を生じないものとなっている。これらの写真を貼付した中枠紙13の表面には、薄いラミネート層17が形成してあり、写真5や中枠紙13の表面を保護している。中枠紙13、写真5及びラミネート層17は、基板台紙11の反対側にも同様に設けることにより、両面に写真を貼付してなるアルバム台紙3(折り重ね台紙4)ができ上がる。

【0020】
次にアルバム台紙の製作要領について説明する。図3に示すように、基板台紙11は、従来技術と同じ要領で所定の寸法に裁断した用紙を用いる。これに対し中枠紙13は、コンピューターによる作図をフラットベッドタイプのカッティングプロッターに入力し、それに従って上記の作図通りの枠孔13aを繰り抜く。折り重ね台紙4(図1参照)については、外周部に曲線部分がある場合にも上記のカッティングプロッターにより基板台紙と中枠紙とを同時に又は別々に裁断するとよい。これと平行して写真についてもカッティングプロッターを用いて上記の枠孔と対応する外形に裁断する。次に枠孔13aを設けた中枠紙13を糊で基板台紙11に貼付する。続いて裁断した写真5aを枠孔13a内に嵌め込み、両面粘着テープや糊を用いて固定する。最後にラミネート層17を公知の方法で形成する。この作業は、基板台紙11の両面について行う。また、折り重ね台紙4の折り返し台紙4bについては、被連結台紙4aとは別々にこの作業を行う。記念アルバム1は、上記した複数のアルバム台紙3、4、前表紙7、裏表紙8とを従来から行われている要領で綴じることにより製作される。なお、上記の折り重ね台紙の配置、中枠紙13のデザインやメッセージの挿入などは、貼付される写真の内容に対応して適宜決定すればよい。」
(オ)「【0022】
図4(a)は、普通台紙の見開き面を示すものであるが、左側の普通台紙12aは、基板台紙11よりも小さめの中枠紙13cを貼付したものである。この中枠紙13cには、横長の楕円形の枠孔13aと横長の長方形の枠孔13aとが設けてあり、上部にはメッセージ部6が配置されている。右側の普通台紙12bの中枠紙は、左側に縦長の中枠紙13dが貼付してあり、右側には正方形に近い長方形の中枠紙13eが貼付されている。両中枠紙13d、13eは異なる色彩を有しており、長方形の枠孔13aの左方及び下方にメッセージ部6が配置されている。」
(カ)「【0025】
次にケースについて説明する。ケース31の外形は、図6に示すように、記念アルバムを収納可能な箱体からなることについては従来と同様である。しかし、これまでのケースは、アルバムをカバーしてこれを保護することを目的とするものであったため、デザインやアルバムの内容に関する情報の表示がないか、あっても題名などわずかなものであった。これに対し、本考案の記念アルバムに係るケースは、アルバムの内容に関する情報を、文字及び写真その他の表示手段をデザイン的に表示してある。さらに、アルバム台紙3に写真15を貼付する要領(図3参照)で、ケースの前面31aや背面31bに貼付することも可能である。また、背中31cにも写真や文字などの情報36を印刷することにより、アルバムの内容を補充可能としてある。なお、これらの印刷は、コンピューターで作成した図柄や文字をプリンターで打ち出すことにより、個別製作に対応可能としてある。」
(キ)上記(カ)より、ケースは、その前面に、アルバムの内容に関する写真を貼付して製作するものと認められる。
(ク)上記(イ)より、記念アルバムには、任意の形状の写真を任意の位置に配置可能となることから、写真を嵌め込む枠孔も任意の形状で任意の位置に繰り抜き可能であると認められる。
(ケ)上記(エ)及び(カ)の記載より、記念アルバム及び記念アルバムを収納可能なケースの製造方法が記載されているものと認められる。
(コ)上記(ウ)「写真5は、長方形写真5a、ハート形写真5b、楕円形写真5cなどが適宜配置されている。」及び上記(オ)「横長の楕円形の枠孔13aと横長の長方形の枠孔13aとが設けてあり」の記載から、写真を枠孔内に嵌め込むに際しては、複数の写真を複数の枠孔の形状に合わせて配置することが認められる。
(サ)図6より箱状のケースが看取できる。

そうすると、上記(ア)乃至(サ)の記載事項から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「複数のアルバム台紙、前表紙、裏表紙及び背表紙により構成されている記念アルバム及び記念アルバムを収納可能なケースの製造方法であって、
複数のアルバム台紙は、所定の寸法に裁断した用紙を用いた基板台紙に、カッティングプロッターで任意の位置に任意の形状の枠孔を繰り抜いた中枠紙を糊で貼付し、枠孔と対応する外形にカッティングプロッターで裁断した複数の写真を複数の枠孔の形状に合わせて枠孔内に嵌め込み、両面粘着テープや糊を用いて固定し、最後にラミネート層を設けることにより製作し、
記念アルバムは、上記した複数のアルバム台紙、前表紙、裏表紙とを綴じることにより製作され、
記念アルバムを収納可能なケースは、その前面に、アルバムの内容に関する写真を貼付して製作する、
記念アルバム及び記念アルバムを収納可能な箱状のケースの製造方法。」

イ 引用例2
原査定の拒絶の理由において引用された本願の出願日前に頒布された特開2003-48381号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、写真を保存する写真用アルバムに関する。

【0003】【発明が解決しようとする課題】ところで、近年、ユーザーのニーズに即したオリジナルデザインを表紙に採用したアルバムが要望されている。例えば、挙式時のメモリアル写真や、赤ちゃんのメモリアル写真と共に生誕日を文字にした画像等をアルバムの表紙に採り入れたユーザー独特のオリジナルアルバム等が挙げられる。従来、この種の要望を満たすものとして、記念日、名前を印刷もしくは貼付することは行なわれているが、写真を取り込むことまでは行なわれていなかった。この理由は、写真を従来の印刷手段で採り入れるとなると、オリジナル写真毎に印刷用の原版が必要となり、製作コストがかかる問題があったためである。本発明は、このような問題点を解決するために創案されたものであり、発明が解決しようとする課題は、コンピュータの画像処理手段を用いることによりオリジナル写真をアルバムの表紙に採り入れた写真用アルバムを安価に作成することを可能とすることにある。」
(イ)「【0005】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。本実施の形態は、写真を台紙に貼ってファイルする台紙式アルバムを用いた例である。図1は、本実施の形態に係わるアルバム1の概略を示す斜視図である。図2は、図1を矢印A-Aから見た断面図である。
【0006】アルバム1は、例えば台紙7の増設を可能とし、厚さ18mm、縦横の長さが約240mmのほぼ正方形で形成された、比較的小さな写真用アルバムである。アルバム1は、図1及び図2に示すように、アルバム1の表側表紙4及び裏側表紙5から成る表紙部3と、写真をファイルする台紙7が複数綴じられた台紙部6によって構成されている。アルバム1における表側表紙4の表面8と裏側表紙5の表面24の上下方向を共に合わせた状態で、表側表紙4の表面8と裏側表紙5の表面24との向きが正反対になるように形成されている以外は、裏側表紙5は、表側表紙4と基本的に同じ構成、構造で形成されている。よって以下では、表側表紙4について詳述し、裏側表紙5については説明を省略する。【0007】表側表紙4は、図3に示されている。図3は、図2に示す製本状態の表側表紙4を直線状に展開して図示したものである。表側表紙4では、表側表紙4における表面8の心材となる基材9と表側表紙4の縁部10の心材となる基材11とは、印画紙12によって連結されている。そして、印画紙12は、両基材9、11の端面までを覆った状態で、両基材9、11に接着剤で貼付されている。表側表紙4における印画紙12の表面12aには、後述するように、オリジナル写真2とその写真2に付随して表示される文字、メッセージ等がプリントされている。そして、オリジナル写真2等がプリントされた面に、水気や指紋等の汚れが付着するのを防止するため、表側表紙4全体の印画紙12の表面12aには、例えば無色透明の塩化ビニル製等の樹脂製フィルム13が被膜されている。」
(ウ)「【0011】表側表紙4にプリントされるオリジナル写真2の画像とその写真2に付随して表示される文字、メッセージ等は、例えば次に挙げるようなものがある。
(1)結婚式及びその披露宴に関するメモリアル写真と、この写真に添えて表示される文字等として、結婚日付、新郎/新婦の名前、挙式場所のメッセージ等がある。
(2)赤ちゃんのメモリアル写真と、この写真に添えて表示される文字等として、赤ちゃんの名前、生誕日、親から赤ちゃんに送られたメッセージ等がある。(図1及び図2に示す実施の形態の例)
(3)愛犬などのペットを写した写真と、この写真に添えて表示される文字等として、ペットの名前、生誕日、飼い始めた日付、ペットが出産した様子、ペットから発しているメッセージ等がある。
(4)子息の入学式や卒業式のメモリアル写真と、この写真に添えて表示される文字等として、子息の名前、日付、学校名、表彰された事柄、子息から発しているメッセージ等がある。
(5)フルムーン旅行などのメモリアル写真と、この写真に添えて表示される文字等として、結婚記念日、夫婦の名前、夫の座右の銘、撮影場所、のメッセージ等がある。
(6)新築した家の写真、バイクや自動車等の趣味品を撮った写真、運動会や演奏会等のイベントに家族が出席している時の記念写真、展示会に出品した生け花の写真他と、この種の写真に添えて表示される文字等として、被写体の名称や被写体に対する気持ちを表すコメント等がある。なお、上述したオリジナル写真2等は、通常では表側表紙4だけにプリントされるものであるが、必要に応じて裏側表紙5にもプリントしてよい。
【0012】次に、前述したようなオリジナル写真2の画像を、コンピュータの画像処理手段によって上述したアルバム1の表側表紙4の表面8に採り入れる製作方法について、図4に基づいて説明する。図4は、オリジナル写真2の画像を表側表紙4の表面8に採り入れてアルバム1の表側表紙4を製作する方法を示すフローチャート図である。ステップS1では、ユーザーはアルバムの表紙にプリントする写真の画像を決定する。例えば、図1に示すアルバム1の場合では、赤ちゃんの写真をオリジナル写真2として決定する。
【0013】次に、ステップS2では、コンピュータの画像処理手段は、表側表紙4の表面8にプリントする画像における画像処理データを読み込む。…ところで、本実施の形態で用いるコンピュータの画像処理手段とは、例えばデータの入力側としてコンピュータ本体(入力手段を含む)以外に、コンピュータ本体に接続されたイメージスキャナ、デジタルカメラで撮影した写真の画像に対するデジタル信号をコンピュータに転送させる手段、出力側として画像をプリントするプリンタ等で構成されている。そして、コンピュータには、画像の読み込みから紙にプリントするまでの画像処理を実行するためのソフトや、コメント用の文字を表示するソフト等が記憶されている。また、オリジナル画像2の周囲における表側表紙4の表面8のデザイン(以下、「背景のデザイン」という)は、あらかじめコンピュータに記憶されおり、背景のデザインは、プリントするオリジナル画像2と同様に、ユーザーが選択したデザインを採用することもできるようになっている。なお、コンピュータの画像処理手段を構成する機器類は限定されるものではなく、種々変更可能である。例えば、イメージスキャナを省いてもよい。
【0014】次に、ステップS3では、背景のデザインを、コンピュータの画像処理手段に登録されているデザインのバリエーションから選択する。また、この背景のデザインは、例えばユーザーが選択したデザインを用いてもよく、適宜変更可能である。以上により、表側表紙4の表面8にプリントする画像の画像データと、画像のバックとなる背景のデザインに関するデータは、コンピュータに入力される。なお、必要に応じて、表側表紙4の表面8に採用するオリジナル写真2の画像と共に添えるコメントとして文字を書き込んでもよい。コメントとして、例えば図1に示すような赤ちゃんの名前、生誕日、メッセージ等が表示されていれば、オリジナル写真2の画像だけよりもさらに強い印象を、アルバム1を見る人に与える効果がある。
【0015】画像データと背景のデザインに関するデータが入力された後、コンピュータの画像処理手段のプリンタは、入力された両データに基づいて、所定サイズの印画紙12に、プリントする画像とその画像のバックとなる背景のデザインをプリントする。…
【0016】次に、ステップS4では、印画紙12における画像とその背景がプリントされた表面12aの全体には、例えば厚さ100μm、無色透明の塩化ビニル製等の樹脂製フィルム13の皮膜が形成される。…
【0017】次に、ステップS5では、例えば、図1に示すアルバム1において、プリントされた印画紙12は、アルバム1が厚さ18mm、縦横の長さが約240mmの大きさで形成されるように糊代や曲げ代、連結部15等を考慮して、所定の大きさに裁断される。
【0018】次に、ステップS6では、図2に示すように、オリジナル写真2の画像が表側表紙4の表面8の所定位置に位置合わせされた状態で、膠等の接着剤で裁断された印画紙12を両基材9、11に貼付する。そして、両基材9、11の周囲からはみ出した部分の印画紙12を、アルバム1の内側(表側表紙4の裏面9b側)方向に折り曲げる。アルバム1の四隅の角では、折り曲げられた印画紙12同志を前述の接着剤で貼付する。この後、内張り紙14が、図3に示すように、連結された状態の両基材9、11の裏面9b側に接着剤で貼付される。このようにして、アルバム1の表側表紙4の表面8に、ユーザーによって選択されたオリジナル写真2の画像をコンピュータの画像処理手段によって採り入れたアルバム1の表側表紙4を製作することができる。なお、オリジナル写真2の画像やアルバム1の大きさは限定されるものではなく、適宜変更可能である。」
(エ)「【図4】


(オ)上記(ウ)及び(エ)【図4】より、引用例2には、画像を決定するステップ、プリントする画像における画像処理データを読み込むステップ、所定サイズの印画紙に、プリントする画像とその画像のバックとなる背景のデザインをプリントするステップ、樹脂製フィルムの皮膜を形成するステップ、印画紙を所定の大きさに裁断するステップ、印画紙を貼付するステップからなるオリジナルアルバムの製造方法が記載されているものと認められる。
(カ)上記(ウ)【0013】及び【0014】の記載より、画像処理には、読み込んだ画像データに対して背景のデザインに関するデータを入力する処理を含むものと認められる。

そうすると、上記(ア)乃至(カ)の記載事項から、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「表側表紙4及び裏側表紙5から成る表紙部3と、写真をファイルする台紙7が複数綴じられた台紙部6によって構成されているオリジナルアルバムを、画像を決定するステップ、プリントする画像における画像処理データを読み込むステップ、読み込んだ画像データに対して背景のデザインに関するデータを入力し、所定サイズの印画紙に、プリントする画像とその画像のバックとなる背景のデザインをプリントするステップ、樹脂製フィルムの皮膜を形成するステップ、印画紙を所定の大きさに裁断するステップ、印画紙を貼付するステップから製造する製造方法であって、
表側表紙4における印画紙12の表面12aには、オリジナル写真2がプリントされ、
表側表紙4にプリントされるオリジナル写真2の画像は、
(1)結婚式及びその披露宴に関するメモリアル写真、
(2)赤ちゃんのメモリアル写真
である、
製造方法。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
ア 後者の「写真」とは、(2)ア(ア)より、専門業者により撮影されてものであるところ、裁断し貼付するものでもあること、及び、一般的に「写真」とは、被写体から発される光線を再構成して実像を結ばせ、印画紙に焼き付けたのち、現像処理をして可視化したものを意味することから、前者の「写真」と後者の「写真」とは、「印画紙に表示された写真」との概念で一致する。
イ 後者の「記念アルバム」、「記念アルバムを収納可能なケース」、「記念アルバム及び記念アルバムを収納可能なケースの製造方法」は、それぞれ、前者の「写真アルバム」、「写真アルバムを収納する収納ケース」、「写真アルバムと該写真アルバムを収納する収納ケースの製造方法」に相当する。
ウ 前者の「編集」について明細書等には、「【0022】<編集工程>…写真の編集としては、撮影された写真の中からアルバム11及び収納ケース21に使用する写真の選択を行う。また、選択された写真を、どのようにアルバム11及び収納ケース21に配置するかのレイアウトについても決定する。写真の配置では、例えば、アルバム11及び収納ケース21における写真の大きさ、位置、形状等について決定する。」と記載されていることからすると、前者の「編集」とは、アルバムに使用する写真を選択し、選択された写真をどのように配置するかのレイアウトを決定することと認められる。
これに対し、後者の「製造方法」において、「枠孔」は任意の位置にくり抜いたものであって、「複数の写真を複数の枠孔の形状に合わせて枠孔内に嵌め込」むものであることからすると、複数の写真は、任意の位置に配置されることとなるのであるから、後者の「複数の枠孔の形状に合わせて枠孔内に嵌め込」まれる「複数の写真」は、前者の「内部に表示される写真を編集してこの編集した写真」に相当する。
エ 後者の「製造方法」は、枠孔内に両面粘着テープや糊を用いて固定した写真が嵌め込まれた複数のアルバム台紙と、前表紙、裏表紙とを綴じることにより製作するものであるから、前者の「製造方法」と後者の「製造方法」とは、「内部に表示される写真が表示された印画紙を、台紙に貼り付けて製本して、写真アルバムを作成するアルバム作成工程」を備える点で共通する。
エ 後者の「製造方法」は、記念アルバムを収納可能な箱状のケースを、その前面に、アルバムの内容に関する写真を貼付して製作するものであって、記念アルバムを収納可能なケースは、その形状が箱形であることが一般的であることから、前者の「製造方法」と後者の「製造方法」とは、「写真が表示された印画紙を台紙に接着して箱状にすることにより、該写真を利用した該収納ケースを作成するケース作成工程」を有する点で共通する。

したがって、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「写真アルバムと該写真アルバムを収納する収納ケースの製造方法であって、
内部に表示される写真を編集してこの編集した写真が表示された印画紙を、台紙に貼り付けて製本して、該写真を編集した該写真アルバムを作成するアルバム作成工程と、
写真が表示された印画紙を台紙に接着して箱状にすることにより、該写真を利用した該収納ケースを作成するケース作成工程と、を備える
写真アルバムと収納ケースの製造方法。」

[相違点1]
本願補正発明は、「ユーザの依頼を受けて、背景や照明の工夫を行うとともに顔のメイクやヘアーメイク、着付けを行ったうえで、被写体の写真を撮影する撮影工程」を備えるものであるのに対し、引用発明1は、前記撮影工程を備えるのか否か明らかでない点。

[相違点2]
本願補正発明は、「撮影工程で得られた写真を修整する修整工程」を備えるものであるのに対し、引用発明1は、前記修正工程を備えるのか否か明らかでない点。

[相違点3]
本願補正発明の「アルバム作成工程」は、「該修整工程を経て得られた該写真のデータを用いることにより、該写真アルバムの表紙に表示される写真を印画紙に印刷するとともに」、「写真を印画紙に印刷して」、作成するものであるのに対し、引用発明1は複数の写真を複数の枠孔の形状に合わせて枠孔内に嵌め込み、枠孔内に両面粘着テープや糊を用いて固定した写真が嵌め込まれた複数のアルバム台紙と、前表紙、裏表紙とを綴じることにより製作するものである点。

[相違点4]
本願補正発明の「ケース作成工程」は、「該修整工程を経て得られた該写真のデータであって該アルバム作成工程で使用された該写真のデータと同じ該写真のデータを用いることにより、該写真アルバムの該表紙に表示される該写真と共通する写真を対応する位置関係で印画紙に印刷し」、印画紙を台紙に接着して箱状に「成型する」ものであるのに対し、引用発明1は、その点明らかでない点。

[相違点5]
本願補正発明は、「撮影工程」と、「修整工程」と、アルバム作成工程、及びケース作成工程とが「一連の流れとして連携して行う工程」であるのに対し、引用発明1は、その点明らかでない点。

(4)判断
上記各相違点について、以下、検討する。
ア [相違点1]について
上記(2)ア(ア)のとおり、アルバムに貼付する写真の撮影は、従来より、専門業者により行われていたこと、そして、専門業者による写真撮影に際しては、ユーザの依頼に基づき、背景や照明の工夫がされ、顔のメイクやヘアーメイク及び着付けが行われることが、一般的に行われてきていることからすると、引用発明1には記載されていないものの、引用発明1が、「記念アルバム及び記念アルバムを収納可能なケースの製造方法」であることからすれば、引用発明1も、「ユーザの依頼を受けて、背景や照明の工夫を行うとともに顔のメイクやヘアーメイク、着付けを行ったうえで、被写体の写真を撮影する撮影工程」を備えているか、少なくとも、引用発明1において、「ユーザの依頼を受けて、背景や照明の工夫を行うとともに顔のメイクやヘアーメイク、着付けを行ったうえで、被写体の写真を撮影する撮影工程」を備えるようにすることは、当業者にとって容易になし得るものといえる。
してみると、上記相違点1は、実質的な相違点ではないか、少なくとも、引用発明1において、「ユーザの依頼を受けて、背景や照明の工夫を行うとともに顔のメイクやヘアーメイク、着付けを行ったうえで、被写体の写真を撮影する撮影工程」を備えるようにし、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。

イ [相違点2]について
上記アの検討より、引用発明1の「写真」は「撮影工程で得られた」ものといえる。
また、従来より、写真データの編集して、アルバムを作成することは、周知の技術といえるものである(例えば、「北九州イノベーションギャラリー|Kitakyushu Innovation Gallery & Studio [KIGS],日本,北九州イノベーションギャラリー,2007.10.30保存,[online],[検索日2021年1月11日],URL,http://web.archive.org/web/20151109121915/https://www.sansyo.co.jp/service/event/」、「印刷物制作 | サンショウ株式会社 ,日本,サンショウ株式会社,2015.11.09保存,[online],[検索日2021年1月11日],URL,http://web.archive.org/web/20151109122840/https://www.sansyo.co.jp/service/print/」及び「撮影の流れ|ラヴィ・ファクトリー フォトスタジオ,日本,LA-VIE PTHOTOGRAPHY PHOTO STUDIO,2015.10.23 保存,[online],[検索日2021年1月11日],URL,http://web.archive.org/web/20151023034821/http://www.la-viephotostudio.com/flow/」(以下「周知技術」という。))
ここで、本願補正発明の「修整」とは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に「【0024】<修整工程>…写真の修整は、特に限定されず公知の方法により行うことができ、例えば、写真のトリミング(クロッピング)、拡大、縮小、回転、明るさの変更、濃淡の変更、レタッチなどが挙げられる。」と記載されていることからすると、上記相違点2に係る構成は、前記周知技術に示されているといえる。
そして、引用発明1の「枠孔と対応する外形にカッティングプロッターで裁断」することは、本願補正発明の「修正」における一態様である「トリミング(クロッピング)」に相当することからすれば、引用発明1の「枠孔と対応する外形にカッティングプロッターで裁断」することに、上記周知技術を適用し、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。

ウ [相違点3]について
上記周知技術に示されているように、写真のデータからアルバムに掲載する写真を選択し、写真データを修正した上で印画紙に印刷して台紙に貼り付けてアルバムを作成することも周知技術といえる。
してみると、上記相違点3における、修正工程を経て得られた写真のデータを用いること、及び写真を印画紙に印刷して台紙に貼り付けて作成するアルバム作成工程は周知技術といえる。
また、引用発明2の「写真」、「プリントする画像における画像処理データ」、「表側表紙4」、「印画紙12」及び「プリント」は、それぞれ、本願補正発明の「写真」、「写真のデータ」、「表紙」、「印画紙」及び「印刷」に相当する。
そして、本願補正発明の「アルバム作成工程」と引用発明2の「製造方法」とは、「写真のデータを用いることにより、写真アルバムの表紙に表示される写真を印画紙に印刷する」ものとの概念で一致する。
そうすると、引用発明2には、上記相違点3における、写真のデータを用いることにより、写真アルバムの表紙に表示される写真を印画紙に印刷するアルバム作成工程が記載されているものと認められる。
そして、引用発明1は、上記(2)ア(カ)のとおり、アルバムの内容に関する情報の表示のために、ケースの前面にアルバムの内容に関する写真を貼付するのであるから、引用発明1のアルバムの前表紙にも、ケースの前面と同様にアルバムの内容に関する情報を表示するために、引用発明2を適用し、写真データを用いることにより、写真アルバムの表紙に表示される写真を印画紙に印刷するようにすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
してみると、引用発明1に、引用発明2を適用することにより、写真のデータを用いることにより、写真アルバムの表紙に表示される写真を印画紙に印刷することは、当業者が容易になし得るものであって、修正工程を経て得られた写真のデータを用い、印画紙に印刷して台紙に貼り付けてアルバムを作成することが周知技術である以上、表紙に表示される写真に、修正工程を経て得られた写真データを用いることも、また、修正工程を経て得られた写真データを印画紙に印刷して台紙に貼り付けてアルバムを作成することも、当業者が適宜なし得る程度のことである。
よって、上記相違点3に係る本願補正発明は、引用発明1,引用発明2及び上記周知技術から、当業者が容易になし得るものである。

(エ)[相違点4]について
引用発明1の記念アルバムを収納可能なケースの前面には、アルバムの内容に関する写真を貼付しているのであるから、引用発明1に、引用発明2を適用し、引用発明1の前表紙に写真を貼付するに際し、アルバムの内容に関する写真を貼付することは、当業者であれば、当然採用する事項といえるものである。
そして、一般に、写真アルバムとその収納ケースは、外観のデザイン性が重要視されるものであるところ、写真を貼付する位置について、デザインの統一感、共通性等を考慮し、写真アルバムと収納ケースとで対応する位置関係で印刷するようにすることは、当業者であれば、当然採用する事項といえるものである。
また、引用発明1のアルバムを収納可能なケースは、箱状であるところ、箱状のケースを成型して作成することは慣用手段といえる事項である。
そうすると、引用発明1に、上記周知技術を参酌し、引用発明2を適用し、上記相違点4の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

オ [相違点5]について
本願補正発明の「一連の流れとして連携して行う工程」について、明細書等に「【0020】 図1に示すように、本実施形態の製造方法は、作業の順序に従って、撮影工程S11、編集工程S12、修整工程S13、アルバム作製工程S14、ケース作製工程S15、及び収納工程S16を備えて構成される。本実施形態の製造方法は、これらの工程を全て一箇所で完結して行うワンストップサービスである。ここでいうワンストップサービスとは、全ての工程を行う主体が一貫しており、各工程を包括して、一連の流れとして連携して行うことをいう。なお、主体が一貫するとは、一人のスタッフが全ての工程を行うことを意味するのではなく、例えば工程の途中、または工程のうち一つ以上を外部に依頼して行わせるものではないことをいう。また、一箇所とは、物理的に一つの場所で全ての工程を行うことを意味するものではなく、例えば撮影工程S11は写真スタジオで行い、編集工程S12、修整工程S13、アルバム作製工程S14、ケース作製工程S15、及び収納工程は別の場所にあるラボで行うようにしてもよい。以下これらの工程を順に説明する。」と記載されているものの、「外部に依頼して行わせるものではない」こと以外に具体的に明らかでないところ、撮影工程から収納工程までを、外部に依頼することなく、工程間の連携が途切れないように行うものと善解して、以下、検討する。
上記(2)ア(ア)のとおり、引用例1には、従来より、専門業者による写真の撮影とこれに続くアルバムの製作により内容の充実した記念アルバムの製作を行うことが行われていたことが記載されている。
そして、引用例1の「写真の撮影とこれに続くアルバムの製作」とは、撮影工程と製作工程とが途切れていないことを意味すると解される。してみると、引用例1の従来技術に記載された「専門業者による写真の撮影とこれに続くアルバムの製作」とは、上記相違点4の「撮影工程」と、修整工程と、アルバム作成工程、及びケース作成工程とが「一連の流れとして連携して行う工程」に相当する。
また、上記イのとおり、アルバムの作成を自社工場で行うことで、撮影からアルバム作成(写真データの編集、印刷)までを、1つの会社で、全てまかなうようにして、アルバムを作成することは、周知の技術といえるものである。
そうすると、引用発明1において、引用例1の記載もしくは上記周知技術を参酌し、写真の撮影とこれに続くアルバムの製作を行うようにし、以て、上記相違点5の構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。

そして、本願補正発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術から、当業者が予測しうる範囲内のものである。

請求人は、「審査官殿は、本願発明と引用文献1との相違点については「当業者が適宜決め得る程度のこと」又は「当業者が通常行う程度のこと」であると認定しております(上記[拒絶査定の要点]における下線部参照)。しかしながら、これらの認定の根拠となる副引用発明は挙げられていません。(中略)本願発明(請求項1)の「写真アルバムと収納ケースの製造方法」と主引用発明である引用文献1との間には、上記〔4〕に記載の相違点1?6が存在していますが、これら全ての相違点に対応する副引用発明は挙げられていません。また、これら全ての相違点が、引用文献1の「記念アルバム」を設計変更等することで相違点でなくなることの根拠が示されていません。」と主張する。
しかし、上記ア乃至ウのとおりであって、請求人の主張する相違点1は上記ウに、相違点2は上記アに、相違点3は上記(3)ウに、相違点4乃至6は上記イに、それぞれ説示したとおり、引用発明2、引用例1に記載された事項、当該技術分野における従来技術から、当業者が容易に想到し得るものであると認める。
よって、上記請求人の主張は採用できない。

よって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ない。
したがって、本願補正発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。

4 補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、上記2で検討したように、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、本件補正は、上記3で検討したように、仮に特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当したとしても,同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1を引用する請求項4に係る発明は、令和1年9月13日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
写真アルバムと該写真アルバムを収納する収納ケースの製造方法であって、
ユーザの依頼を受けて写真を撮影する撮影工程と、
該写真を編集した該写真アルバムを作成するアルバム作成工程と、
該写真を利用した該収納ケースを作成するケース作成工程と、を備え、
該写真アルバムは、該写真が表示される表紙を有し、
該収納ケースは、該写真アルバムの該表紙に表示される該写真と共通する写真が対応する位置関係で表示される表紙を有する
ことを特徴とする写真アルバムと収納ケースの製造方法。
【請求項4】
該撮影工程で得られた写真を修整する修整工程を備え、
該アルバム作成工程及び該ケース作成工程では、該修整工程により修整された写真を用いる
ことを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の写真アルバムと収納ケースの製造方法。」(以下、請求項1を引用する請求項4に係る発明を「本願発明」という。)

2 引用例
令和1年10月15日付けの拒絶理由通知に引用された引用例、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、実質的に、本願補正発明の「背景や照明の工夫を行うとともに顔のメイクやヘアーメイク、着付けを行ったうえで、被写体の」、「該撮影工程と一連の流れとして連携して行う工程であって」、「撮影工程及び該修整工程と一連の流れとして連携して行う工程であって、該修整工程を経て得られた該写真のデータを用いることにより」、「を印画紙に印刷するとともに、内部に表示される写真を編集してこの編集した写真を印画紙に印刷して、これらの印画紙を台紙に貼り付けて製本して」、「該撮影工程、該修整工程及び該アルバム作成工程と一連の流れとして連携して行う工程であって、該修整工程を経て得られた該写真のデータであって該アルバム作成工程で使用された該写真のデータと同じ該写真のデータを用いることにより」及び「印画紙に印刷し、この印画紙を台紙に接着して箱状に成型することにより」との限定を省くものである。

そうすると、本願発明と引用発明1とを対比すると、上記「第2 3 (3)対比」での検討を勘案すると、両者は、
「写真アルバムと該写真アルバムを収納する収納ケースの製造方法であって、
写真を修整する修整工程と、
該写真を編集した該写真アルバムを作成するアルバム作成工程と、
該写真を利用した該収納ケースを作成するケース作成工程と、を備える
写真アルバムと収納ケースの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で、相違する。

[相違点1’]
本願発明は、「ユーザの依頼を受けて、写真を撮影する撮影工程」を備えるものであるのに対し、引用発明1は、撮影工程を備えるのか否か明らかでない点。

[相違点2]
本願発明は、「撮影工程で得られた写真を修整する修整工程」を備えるものであるのに対し、引用発明1は、前記修正工程を備えるのか否か明らかでない点。

[相違点3’]
本願発明の「アルバム作成工程」は、「写真アルバムの表紙」に「写真」を「表示させる」ものであるのに対し、引用発明1は、表示させるものではない点。

[相違点4’]
本願発明の「ケース作成工程」は、「該写真アルバムの該表紙に表示される該写真と共通する写真を対応する位置関係で表示される」ものであるのに対し、引用発明1は、その点明らかでない点。

そして、上記相違点1’は、上記相違点1の一部の構成を削除したものであり、また、上記相違点3’は、上記相違点3の一部の構成を削除したものであり、また、上記相違点4’は、上記相違点4の一部の構成を削除したものであるから、上記「第2 3 (4)判断」における検討内容を踏まえれば、上記と同様の理由により、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-01-26 
結審通知日 2021-02-02 
審決日 2021-02-16 
出願番号 特願2015-240095(P2015-240095)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B42D)
P 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 俊彦  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 藤本 義仁
藤田 年彦
発明の名称 写真アルバムと収納ケースの製造方法  
代理人 真田 有  

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