ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 A63F |
---|---|
管理番号 | 1373098 |
審判番号 | 不服2020-6838 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-05-20 |
確定日 | 2021-04-15 |
事件の表示 | 特願2015- 39076「表示制御プログラム、表示制御装置、及び表示制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 5日出願公開、特開2016-158795〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年2月27日の出願であって、平成30年10月11日付けで拒絶理由が通知され、同年12月3日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和1年8月9日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年9月20日付けで意見書が提出されたが、令和2年2月20日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年5月20日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1乃至7に係る発明は、平成30年12月3日に提出された手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されるとおりのものであり、当該特許請求の範囲の請求項1乃至7の記載は、つぎのとおりのものである。 「【請求項1】 コンピュータを、 ユーザの頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイの姿勢を示す情報を取得するヘッドマウントディスプレイ情報取得部、 仮想三次元空間において、複数の規則のうちのいずれかに基づいて決定された視点位置と、前記ヘッドマウントディスプレイの姿勢に基づいて決定された視線方向を用いて、前記仮想三次元空間をレンダリングすることにより、前記ヘッドマウントディスプレイに表示される前記仮想三次元空間の画像を生成する画像生成部、 として機能させ、 前記画像生成部は、前記仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則に基づいて視点位置を決定し、前記操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているときには、前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則に基づいて視点位置を決定する ことを特徴とする表示制御プログラム。 【請求項2】 前記視点位置を決定するための規則は、前記仮想三次元空間を複数の領域に分割した場合の領域ごとに設定されることを特徴とする請求項1に記載の表示制御プログラム。 【請求項3】 コンピュータを、入力装置に入力された指示に基づいて前記操作対象の位置を変更する位置制御部として更に機能させ、 前記画像生成部は、前記操作対象の位置が属する領域に設定された規則に基づいて前記視点位置を決定する ことを特徴とする請求項2に記載の表示制御プログラム。 【請求項4】 前記視点位置を決定するための規則は、前記仮想三次元空間の地形に応じて設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の表示制御プログラム。 【請求項5】 ユーザの頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイの姿勢を示す情報を取得するヘッドマウントディスプレイ情報取得部と、 仮想三次元空間において、複数の規則のうちのいずれかに基づいて決定された視点位置と、前記ヘッドマウントディスプレイの姿勢に基づいて決定された視線方向を用いて、前記仮想三次元空間をレンダリングすることにより、前記ヘッドマウントディスプレイに表示される前記仮想三次元空間の画像を生成する画像生成部と、 を備え、 前記画像生成部は、前記仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則に基づいて視点位置を決定し、前記操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているときには、前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則に基づいて視点位置を決定する ことを特徴とする表示制御装置。 【請求項6】 コンピュータに、 ユーザの頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイの姿勢を示す情報を取得するステップと、 仮想三次元空間において、複数の規則のうちのいずれかに基づいて決定された視点位置と、前記ヘッドマウントディスプレイの姿勢に基づいて決定された視線方向を用いて、前記仮想三次元空間をレンダリングすることにより、前記ヘッドマウントディスプレイに表示される前記仮想三次元空間の画像を生成するステップと、 前記仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則に基づいて視点位置を決定するステップと、 前記操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているときには、前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則に基づいて視点位置を決定するステップと、 を実行させることを特徴とする表示制御方法。 【請求項7】 請求項1から4のいずれかに記載の表示制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」 第3 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、令和1年8月9日付け拒絶理由通知書(以下、「本件拒絶理由通知書」という。)において記載した理由によって拒絶すべきものであるというものであり、その理由は、つぎの理由をその要旨とするものである。 (新規事項)平成30年12月3日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 記 ・請求項 1-7 補正後の請求項1、5には「前記画像生成部は、前記仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則に基づいて視点位置を決定し、前記操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているときには、前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則に基づいて視点位置を決定する」と記載され、請求項6には「前記仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則に基づいて視点位置を決定するステップと、前記操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているときには、前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則に基づいて視点位置を決定するステップ」と記載され、請求項1、5-6はその下線部において補正されている。 この補正に関して、出願人は、平成30年12月3日付け意見書において、「請求項1、5-7に関する補正は、主に、本願明細書の0073段落の「第1画像生成部316は、ゲームフィールドにおいて第1キャラクタの位置に視点位置を設定し、ヘッドマウントディスプレイ100が向いている方向に視線方向を設定して、第1画像を生成する。したがって、本図の例では、一人称視点のゲーム画像がヘッドマウントディスプレイ100に表示される。」との記載や、0056段落の「ゲーム制御部311がゲームフィールド内で操作対象の位置を変更する際に、第1画像生成部316は、ゲームフィールドの位置に応じて、視点位置の設定方式を異ならせることが可能である。例えば、ゲームフィールドのある領域では、操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定して、操作対象の移動に伴って視点位置を追随させ、別の領域では、操作対象の位置の変化にかかわらず、所定位置に視点位置を固定してもよい。」との記載や、0068段落の「本図の例では、視点位置がゲームフィールドの所定位置に固定され、ヘッドマウントディスプレイ100の姿勢に応じて視線方向のみが変更される。」との記載などに基づいています。」と主張する。 出願人の上記主張における明細書の段落[0056]には視点位置の設定方式をゲームフィールドの位置に応じて異ならせる点について記載されている。 しかしながら、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全体を参照しても、「操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているとき」であることをもって、視点位置の設定方式を「前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則」とすることについての記載がない。 第4 当審の判断 1 原査定の拒絶の理由において指摘された補正事項は、請求項1及び5の「前記画像生成部は、前記仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則に基づいて視点位置を決定し、前記操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているときには、前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則に基づいて視点位置を決定する」との記載、及び請求項6の「前記仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則に基づいて視点位置を決定するステップと、前記操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているときには、前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則に基づいて視点位置を決定するステップ」との記載であるから、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲または図面(以下、これらをあわせて「当初明細書等」という。)において、「前記画像生成部は、前記仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則に基づいて視点位置を決定し、前記操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているときには、前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則に基づいて視点位置を決定する」(以下「本件補正事項」という。)ことが記載されているか否かについて、以下検討する。 2 当初明細書等の記載事項 (1)当初明細書等には、本件補正事項に関してつぎの記載がある。 ア 「【0055】 第1画像生成部316は、入力装置6とヘッドマウントディスプレイ100の相対位置に基づいて、入力装置6の画像を第1画像に表示することが可能である。ヘッドマウントディスプレイ100を装着しているユーザは、現実世界における周囲の状況を見ることができないが、ユーザがヘッドマウントディスプレイ100を装着していなければ入力装置6が見えるであろう第1画像内の位置に入力装置6の画像を表示することにより、現実世界を見ているような感覚をユーザに与えることができ、第1画像のリアリティをより高めることができるとともに、より深い没入感をユーザに与えることができる。 【0056】 ゲーム制御部311がゲームフィールド内で操作対象の位置を変更する際に、第1画像生成部316は、ゲームフィールドの位置に応じて、視点位置の設定方式を異ならせることが可能である。例えば、ゲームフィールドのある領域では、操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定して、操作対象の移動に伴って視点位置を追随させ、別の領域では、操作対象の位置の変化にかかわらず、所定位置に視点位置を固定してもよい。これにより、ゲームフィールドの位置に応じて、適切に視点位置を設定してゲームフィールドの画像を生成することができるので、操作性のよいユーザインタフェースを提供し、ユーザの利便性を向上させることができる。」 イ 「【0066】 (アクションゲーム) 図13は、ヘッドマウントディスプレイに表示される第1ゲーム画像の例を示す。本図は、プレイヤーズキャラクタを操作してゲームフィールド内を移動させ、所定のゴールへ導くゲームの画像を示す。ゲーム制御部311は、障害物や起伏などが設けられたゲームフィールドにおいて、入力装置6の方向キーやアナログスティックなどの入力に応じてプレイヤーズキャラクタ516を移動させ、ボタンなどの入力に応じてプレイヤーズキャラクタ516をジャンプさせる。 【0067】 このアクションゲームにおいては、ゲームフィールドの位置に応じて、第1画像生成部316が第1ゲーム画像を生成する際に用いるカメラの視点位置を設定する方式が異なる。本図の例では、視点位置がプレイヤーズキャラクタ516の後方かつ上方の所定位置に設定され、プレイヤーズキャラクタ516の移動に伴って視点位置も移動される。視線方向は、ヘッドマウントディスプレイ100の姿勢に応じて変更される。つまり、ユーザが、プレイヤーズキャラクタ516を後方から追随する乗り物に乗ってゲームフィールドを見ているような画像が生成される。 【0068】 図14は、ヘッドマウントディスプレイに表示される第1ゲーム画像の例を示す。本図の例では、視点位置がゲームフィールドの所定位置に固定され、ヘッドマウントディスプレイ100の姿勢に応じて視線方向のみが変更される。つまり、ユーザが乗り物から降りて、自身は移動することなくゲームフィールドを見渡しているような画像が生成される。 【0069】 ゲームフィールドのデータとして、地形などの形状データや配置されたキャラクタ及びアイテムなどのデータのほか、視点位置を決定するための規則を指定するためのデータが設定される。このデータは、ゲームフィールドを複数の領域に分割し、領域ごとに設定されてもよい。ゲーム制御部311は、ユーザからの指示入力にしたがってプレイヤーズキャラクタの位置を更新すると、更新後の位置において指定されている視点位置を決定するための規則を第1画像生成部316に伝達する。第1画像生成部316は、ゲーム制御部311から伝達された規則にしたがって視点位置を決定し、ゲームフィールドをレンダリングする。例えば、図14の例では、プレイヤーズキャラクタが所定の領域内にいる間は視点位置は固定されたまま変更されないが、プレイヤーズキャラクタの位置が所定の領域から外れて別の領域に入ると、新たな領域で指定されている規則にしたがって視点位置が決定され、例えば、プレイヤーズキャラクタの後方の所定位置に視点位置が設定される。 【0070】 これにより、ゲームの制作者がゲームフィールドを設計する際に、ゲームフィールドの地形、配置されたアイテム、ギミック、キャラクタなどの種類、プレイヤーズキャラクタが実行すべきアクションなどに応じて、視点位置をどのように設定してゲーム画像を生成するのがよいかを柔軟に設定することができる。また、ゲームフィールドの状況に合わせて適切なゲーム画像を生成することができるので、ユーザの利便性を向上させることができる。 【0071】 視点位置を決定するための規則は、ゲームフィールドの状況に応じて動的に設定されてもよい。例えば、ゲームフィールドの地形が変化する場合などに、ゲームフィールドの地形から規則を決定するためのアルゴリズムが予め指定され、まず、ゲームフィールドの地形から規則を決定し、決定された規則にしたがって視点位置が決定されてもよい。これにより、ゲームフィールドの状況に即して適切な視点位置を設定することができるので、ユーザの利便性を向上させることができる。」 ウ 「【0072】 (対戦ゲーム) 図15は、ヘッドマウントディスプレイに表示される第1ゲーム画像の例を示す。本図は、ヘッドマウントディスプレイ100を装着した第1ユーザと、表示装置12を視聴している第2ユーザとが対戦するゲームの画像を示す。この対戦ゲームにおいて、第1ユーザは、入力装置6に対する入力により、第2ユーザの第2キャラクタ520に向けて爆弾522を投げつつ、ヘッドマウントディスプレイ100を移動させることにより、第1キャラクタを移動させて第2キャラクタ520が投げてくる爆弾524を避ける。第2ユーザは、入力装置6に対する入力により、第1キャラクタに向けて爆弾524を投げつつ、入力装置6に対する入力により、第2キャラクタ520を移動させて第1キャラクタが投げてくる爆弾522を避ける。複数の第2ユーザが対戦ゲームに参加してもよく、この場合、複数の第2キャラクタが第1キャラクタを攻撃してもよい。 【0073】 第1画像生成部316は、ゲームフィールドにおいて第1キャラクタの位置に視点位置を設定し、ヘッドマウントディスプレイ100が向いている方向に視線方向を設定して、第1画像を生成する。したがって、本図の例では、一人称視点のゲーム画像がヘッドマウントディスプレイ100に表示される。第2キャラクタ520が投げてくる爆弾524は、ユーザ自身に向かって飛んでくるように見えるので、リアリティの高いゲームを提供することができる。」 (2)上記(1)に摘示した記載から読み取れる事項 ア 上記(1)アから読み取れる事項 (ア)操作対象がゲームフィールドのある領域に位置するときは、操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定し、操作対象がゲームフィールドの別の領域に位置するときは、所定位置に視点位置を固定するという、操作対象のゲームフィールドの位置に応じて、視点位置を設定してゲームフィールドの画像を生成して、ヘッドマウントディスプレイに画像を表示すること。 (イ)操作対象がゲームフィールドを移動することを考慮すると、これらのヘッドマウントディスプレイに表示する画像を生成するための視点位置は、操作対象が位置するゲームフィールドのある領域に位置するときは、操作対象の後方の所定位置であって、操作対象の移動に伴って視点位置は追随し、操作対象がゲームフィールドの別の領域に位置するときは、操作対象の移動にかかわらず、所定位置に固定されるといい得るものである。 なお、これらは、いずれも、仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則とは異なるものである。 イ 上記(1)イから読み取れる事項 アクションゲームにおいて、ヘッドマウントディスプレイに表示する画像を生成するための視点位置の設定規則は、 (ア)プレイヤーズキャラクタがゲームフィールドのある位置(図13の場合)に位置するときは、プレイヤーズキャラクタの後方かつ上方の所定位置に視点位置を設定するというもの。 (イ)プレイヤーズキャラクタがゲームフィールドのある位置(図14の場合)に位置するときは、ゲームフィールドの所定位置に視点位置を固定するというもの。 (ウ)ゲームフィールドを複数の領域に分割し、領域毎に視点位置を決定するための規則を指定するためのゲームフィールドのデータが設定でき、上記(イ)(図14の場合)のようにプレイヤーズキャラクタが所定の領域内にいる間は、視点位置は固定されたまま変更されず、プレイヤーズキャラクタの位置が所定の領域から外れて別の領域に入ると、プレイヤーズキャラクタの後方の所定位置に視点位置を設定するというもの。 (エ)プレイヤキャラクタがゲームフィールドを移動することを考慮すると、上記(ア)の視点位置が、プレイヤーズキャラクタの後方かつ上方の所定位置に設定された場合は、プレイヤーズキャラクタの移動に伴って視点位置も移動され、上記(イ)の視点位置がゲームフィールドの所定位置に固定された場合は、プレイヤーズキャラクタが移動しても、視点位置は、ゲームフィールドの所定の位置に固定されたままであるというものといえる。 なお、これらは、いずれも、仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則とは異なるものである。 ウ 上記(1)ウから読み取れる事項 対戦ゲームにおいて、ヘッドマウントディスプレイに表示する画像を生成するための視点位置の設定規則は、ゲームフィールドにおいて第1キャラクタの位置に視点位置(一人称視点)を設定するというもの。 なお、対戦ゲームについての記載事項においては、対戦ゲームの画面において、視点を設定する規則を切り替えることについては記載も示唆もされていない。 3 検討 (1)本件補正事項について ア 本件補正事項は、「操作対象が仮想三次元空間を移動しているとき」には、「操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2規則」と記載されているから、「視点位置を決定する」「第2規則」は、「操作対象が仮想三次元空間を移動しているとき」に、「操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定する」ものと認められる。 イ そうすると、本件補正事項における「第1規則」の「視点位置」である「操作対象の位置」は、「第2規則」の「視点位置」である「操作対象の後方の所定位置」を包含しない、異なる位置であるから、「仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定する第1規則」は、「第2規則」を設定する「操作対象が仮想三次元空間を移動しているとき」以外である「操作対象が仮想三次元空間を移動していないとき」に設定することを意味するものと認められる。 ウ してみると、本件補正事項における「視点位置」を「第1の規則」又は「第2の規則」のいずれの規則に基づいて決定するかは、操作対象が仮想三次元空間を移動しているときか否かという「条件」(以下「本願補正事項の条件」という。)によるものと認められる。 (2)上記「(2)上記(1)に摘示した記載から読み取れる事項」について 以下、「視点位置」を「第1の規則」又は「第2の規則」のいずれの規則に基づいて決定するのかを、上記(1)の「本件補正事項の条件」により決定することが、当初明細書等に記載されたものであるか否かについて、上記「(2)上記(1)に摘示した記載から読み取れる事項」に基づき検討する。 ア 上記「(2)ア 上記(1)アから読み取れる事項」について 上記「(2)ア 上記(1)アから読み取れる事項」によれば、当初明細書等には、操作対象のゲームフィールドの位置に応じて、視点位置を設定することは記載されているものの、そこから読み取れる視点位置を決定するための「条件」は、操作対象が位置するゲームフィールドの「領域」である。 なお、「(2)ア 上記(1)ア(イ)」のとおり、操作対象がある領域に位置するときは、移動に伴って視点位置が追随し、別の領域に位置するときは、視点位置が固定されるものであることを考慮したとしても、上記のとおり、あくまで、操作対象が位置する領域に基づいて視点位置を設定する規則が決定されるのであって、操作対象が移動するか否かによって視点を切り替えることが読み取れるものでもない。 したがって、上記(1)アの記載を考慮しても、上記「本件補正事項の条件」が当初明細書等に記載されたものとはいえないし、また、その点が自明の事項といえるものでもない。 イ 上記「(2)イ 上記(1)イから読み取れる事項」について (ア)上記「(2)イ 上記(1)イから読み取れる事項 (ア)」によれば、当初明細書等には、プレイヤーズキャラクタの後方かつ上方の所定位置に視点位置を設定することは記載されているものの、プレイヤーズキャラクタが移動しているか否かで視点位置が決定されるものではないから、上記「本件補正事項の条件」は、上記「(2)イ 上記(1)イから読み取れる事項(ア)」に照らしても、当初明細書等に記載されたものではないし、自明の事項といえるものでもない。 (イ)上記「(2)イ 上記(1)イから読み取れる事項 (イ)」によれば、当初明細書等には、プレイヤーズキャラクタがゲームフィールドのある位置に位置するときは、ゲームフィールドの所定位置に視点位置を設定することは記載されているものの、プレイヤーズキャラクタが移動しているか否かで視点位置が決定されるものではないから、上記「本件補正事項の条件」は、上記「(2)イ 上記(1)イから読み取れる事項(イ)」に照らしても、当初明細書等に記載されたものではないし、自明の事項といえるものでもない。 (ウ)上記「(2)イ 上記(1)イから読み取れる事項 (ウ)」によれば、当初明細書等には、プレイヤーズキャラクタが所定の領域内にいる間は、視点位置は固定されたまま変更されず、プレイヤーズキャラクタの位置が所定の領域から外れて別の領域に入ると、プレイヤーズキャラクタの後方の所定位置に視点位置を設定することは記載されているものの、プレイヤーズキャラクタが移動しているか否かで視点位置が決定されるものではないから、上記「本件補正事項の条件」は、上記「(2)イ 上記(1)イから読み取れる事項(ウ)」に照らしても、当初明細書等に記載されたものではないし、自明の事項といえるものでもない。 (エ)上記「(2)イ 上記(1)イから読み取れる事項 (エ)」によれば、当初明細書等には、視点位置が、プレイヤーズキャラクタの後方の所定位置に設定された場合は、プレイヤーズキャラクタの移動に伴って視点位置も移動され、視点位置がゲームフィールドの所定位置に固定された場合は、視点位置は、ゲームフィールドの所定の位置に固定されたままであるということは記載されているものの、上記(ウ)のとおり、ここでの視点位置の設定は、プレイヤーズキャラクタが移動するか否かによって変更されるものではなく、あくまでもプレイヤーズキャラクタが位置するゲームフィールドの位置により切り替えられるものが記載されているのみである。 したがって、上記(1)イの記載を考慮しても、上記「本件補正事項の条件」が当初明細書等に記載されたものとはいえないし、自明の事項といえるものでもない。 ウ 上記「(2)ウ 上記(1)ウから読み取れる事項」について 上記「(2)ウ 上記(1)ウから読み取れる事項」によれば、当初明細書等には、第1キャラクタの位置に視点位置(一人称視点)を設定することは記載されているものの、当該記載においては、対戦ゲームの画面において視点を設定する規則を切り替えることについては記載されていない。 したがって、上記(1)ウの記載を考慮しても、上記「本件補正事項の条件」は、当初明細書等に記載されたものとはいえないし、自明の事項といえるものでもない。 (3)以上の検討から、当初明細書等には、「視点位置を設定する条件」については、「操作対象」の位置するゲームフィールドの「位置」に応じて視点の位置を設定することについては記載されているものの、本件補正事項である「前記画像生成部は、前記仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則に基づいて視点位置を決定し、前記操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているときには、前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則に基づいて視点位置を決定する」ことについては、記載も示唆もされていない。 また、「前記画像生成部は、前記仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則に基づいて視点位置を決定し、前記操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているときには、前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則に基づいて視点位置を決定する」ことが、技術常識を考慮したとしても、当初明細書等の記載から当業者にとって自明な事項であるということもできない。 (4)審判請求人は、「本願明細書の段落0070には、「ゲームの制作者がゲームフィールドを設計する際に、・・・プレイヤーズキャラクタが実行すべきアクションなどに応じて、視点位置をどのように設定してゲーム画像を生成するのがよいかを柔軟に設定することができる。」と記載されています。デジタル大辞泉によれば、「アクション」とは、「動作。活動。」を意味しますので、「移動」が「アクション」に含まれることは明らかです。また、仮想三次元空間で操作対象を操作するゲームにおいて、操作対象が実行すべき「アクション」の1つに「移動」が含まれることは、当業者には明らかです。すなわち、「前記操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているときには、前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則に基づいて視点位置を決定する」という事項は、本願明細書の段落0070の「ゲームの制作者がゲームフィールドを設計する際に、・・・プレイヤーズキャラクタが実行すべきアクションなどに応じて、視点位置をどのように設定してゲーム画像を生成するのがよいかを柔軟に設定することができる。」という記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、本願明細書に記載されているのと同然であると理解する事項です。」と主張する。 しかしながら、上記(1)イのとおり、【0070】の「プレイヤーズキャラクタが実行すべきアクションなどに応じて、視点位置をどのように設定して」とは、「各フィールド」毎のプレイヤーズキャラクタが実行すべきアクション」が異なることを前提として、各フィールド毎のプレイヤーズキャラクタが実行すべきアクション」に応じた規則を設定することを説示していると解されるのであって、当該記載を考慮したとしても、ゲームフィールド毎に実行されるプレイヤーズキャラクタのアクションに応じた視点位置の設定ができることに留まり、仮に、プレイヤーズキャラクタのアクションが変更されたとしても、その変更に伴って、視点位置が、異なる位置に設定し直されることまでが記載されていると当業者が理解するものとはいえない。 よって、審判請求人の主張は採用できない。 (5)上記のとおりであるから、本件補正のうち、請求項1及び5の「前記画像生成部は、前記仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則に基づいて視点位置を決定し、前記操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているときには、前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則に基づいて視点位置を決定する」と特定する補正、及び請求項6の「前記仮想三次元空間に配置された操作対象の位置に視点位置を設定するという第1の規則に基づいて視点位置を決定するステップと、前記操作対象が前記仮想三次元空間を移動しているときには、前記操作対象の後方の所定位置に視点位置を設定するという第2の規則に基づいて視点位置を決定するステップ」と特定する補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項が導入されるものとなる。 してみると、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 第5 むすび 上記第4で検討したとおり、本件補正(平成30年12月3日付けで提出された手続補正書による補正)は、当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 したがって、本願は、特許法第49条第1号に該当するから拒絶をすべき旨の査定をしなければならないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-02-02 |
結審通知日 | 2021-02-09 |
審決日 | 2021-02-25 |
出願番号 | 特願2015-39076(P2015-39076) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
Z
(A63F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 金田 理香 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 畑井 順一 |
発明の名称 | 表示制御プログラム、表示制御装置、及び表示制御方法 |
代理人 | 村田 雄祐 |
代理人 | 三木 友由 |
代理人 | 森下 賢樹 |
代理人 | 青木 武司 |