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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N |
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管理番号 | 1373124 |
審判番号 | 不服2020-15986 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-11-19 |
確定日 | 2021-04-30 |
事件の表示 | 特願2018-519944「液体試薬を保管するための試薬容器、試薬容器の下方部分を製造するための器具、および試薬容器の下方部分を製造するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月27日国際公開、WO2017/067873、平成30年11月 8日国内公表、特表2018-533007、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)10月17日(パリ条約による優先権主張2015年10月20日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成30年6月25日に手続補正書が提出され、令和2年3月31日付けで拒絶理由が通知され、同年6月17日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月22日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年11月19日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和2年10月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1?15に係る発明は、以下の引用文献1?4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2005-17176号公報 引用文献2:特表2010-537161号公報 引用文献3:特表平8-506789号公報 引用文献4:特開平6-254918号公報 第3 本願発明 本願の請求項1?15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明15」という。)は、令和2年6月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される発明であり、独立請求項形式の本願発明1、本願発明8及び本願発明14は、それぞれ以下のとおりである。 (本願発明1) 「 【請求項1】 分析機器のための試薬容器(100)であって、前記試薬容器(100)は、液体試薬を保管するように構成され、カバー(102)および下方部分(104)を備え、 前記下方部分(104)は、底壁(106)、前壁(108)、後壁(110)、2つの向かい合った側壁(112)、および少なくとも1つの接続壁(116)を備え、 前記カバー(102)、前記底壁(106)、前記前壁(108)、前記後壁(110)、および前記2つの向かい合った側壁(112)は、少なくとも1つの液体試薬を保管するための少なくとも1つの内部容積部(114)を画定し、 前記2つの向かい合った側壁(112)は、前記少なくとも1つの内部容積部(114)内に位置する前記少なくとも1つの接続壁(116)によって、互いに少なくとも部分的に接続され、 前記接続壁(116)は、前記底壁(106)から離間しており、前記接続壁(116)および少なくとも前記2つの向かい合った側壁(112)は、射出成型され、モノリシックに形成され、 前記少なくとも1つの接続壁(116)は、2.0mm?30.0mmの距離(118)だけ前記底壁(106)から離間している、試薬容器。」 (本願発明8) 「 【請求項8】 分析機器のための試薬容器(100)の下方部分(104)を製造するための器具(148)であって、 前記下方部分(104)は、底壁(106)、前壁(108)、後壁(110)、2つの向かい合った側壁(112)、および少なくとも1つの接続壁(116)を備え、 前記器具(148)は、モールド(150)を備え、 前記モールド(150)は、モールドキャビティ(152)、第1のモールドコア(154)、第2のモールドコア(156)、および第3のモールドコア(158)を備え、 前記モールドキャビティ(152)は、前記試薬容器(100)の前記下方部分(104)の形状を定めるように構成され、 前記第2のモールドコア(156)および前記第3のモールドコア(158)は、前記試薬容器(100)の2つの向かい合った側壁(112)を接続する前記少なくとも1つの接続壁(116)の形状を定める第1のキャビティ部分(160)を形成し、 前記第1のキャビティ部分(160)は、前記接続壁(116)が射出成型によって前記2つの向かい合った側壁(112)と共にモノリシックに形成可能であり、かつ前記底壁(106)から離間するよう形成可能となるように、形成され、 前記第2のモールドコア(156)は、前記試薬容器(100)の前記下方部分(104)が前記モールドから離型可能となるように、前記第1のモールドコア(154)および/または前記第3のモールドコア(158)に対して移動可能であり、 前記少なくとも1つの接続壁(116)は、2.0mm?30.0mmの距離(118)だけ前記底壁(106)から離間している、器具。」 (本願発明14) 「 【請求項14】 分析機器のための試薬容器(100)の、底壁(106)、前壁(108)、後壁(110)、2つの向かい合った側壁(112)、および少なくとも1つの接続壁(116)を備える下方部分(104)を製造するための方法であって、 前記試薬容器(100)は、カバー(102)をさらに備え、 前記カバー(102)、前記底壁(106)、前記前壁(108)、前記後壁(110)、および前記2つの向かい合った側壁(112)は、少なくとも1つの液体試薬を保管するための少なくとも1つの内部容積部を画定し、 前記2つの向かい合った側壁(112)は、前記少なくとも1つの内部容積部(114)内に位置する前記少なくとも1つの接続壁(116)によって互いに少なくとも部分的に接続され、 前記方法は、 モールド(150)を提供する工程であって、 前記モールド(150)は、モールドキャビティ(152)、第1のモールドコア(154)、第2のモールドコア(156)、および第3のモールドコア(158)を備え、 前記モールドキャビティ(152)は、前記試薬容器(100)の前記下方部分(104)の形状を定めるように構成され、 前記第2のモールドコア(156)および前記第3のモールドコア(158)は、前記試薬容器(100)の前記下方部分(104)の前記2つの向かい合った側壁(112)を接続する前記少なくとも1つの接続壁(116)の形状を定める第1のキャビティ部分(160)を形成する、 提供する工程と、 プラスチック材料を前記モールドキャビティ(152)に注入する工程であって、前記少なくとも1つの接続壁(116)は、射出成型によって前記2つの向かい合った側壁(112)と共にモノリシックに形成され、かつ前記底壁(106)から離間するように形成される、注入する工程と、 前記試薬容器(100)の前記下方部分(104)を前記モールド(150)から離型する工程であって、前記第2のモールドコア(156)は、前記第1のモールドコア(154)および/または前記第3のモールドコア(158)に対して移動される、離型する工程と、 を含み、 前記少なくとも1つの接続壁(116)は、2.0mm?30.0mmの距離(118)だけ前記底壁(106)から離間している、方法。」 なお、引用請求項形式の本願発明2?7、9?13及び15の概要は以下のとおりである。 本願発明2?7は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明9?13は、本願発明8を減縮した発明である。 本願発明15は、本願発明14を減縮した発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同じ。) (引1ア) 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、試薬容器に関するもので、より詳細には、分析装置において検体の分析に用いる液状の試薬を貯留するための試薬容器に関するものである。」 (引1イ) 「【0009】 本発明は、上記実情に鑑みて、分析処理のスループットを低下させることなく、規定量の試薬を正確に分注することが可能な試薬容器を提供することを目的とする。」 (引1ウ) 「【0019】 一方、試薬収容庫30に配置される試薬容器50は、内部に液状の試薬Eを貯留するための容器本体51を備えている。容器本体51は、図2?図4に示すように、底壁部51a、上壁部51b、外周壁部51c、内周壁部51dおよび一対の側壁部51eを有したもので、例えば合成樹脂によって一体に成形してある。容器本体51の底壁部51aは、円筒状を成す試薬収容庫30の内部に周方向に沿って並設するために、大小2つの同心円と径方向に沿った2つの直線とによって囲まれる略扇形状に形成してある。容器本体51の上壁部51bは、底壁部51aと同一の形状に形成したもので、一対の側壁部51eから等距離となる中心線上に分注口51fを有している。分注口51fは、上壁部51bの上面から突出する筒状部51gの中心部に開口したもので、容器本体51の内部と外部とを連通している。この分注口51fは、試薬容器50を吸引対象位置P2に配置した状態において分注プローブ40を支持軸40bの軸心回りに回転させた場合にその移動軌跡上に位置し、かつ分注プローブ40の外径よりも大きな口径を有して形成してある。なお、容器本体51の外周壁部51c、内周壁部51dおよび一対の側壁部51eは、底壁部51aおよび上壁部51bの間を連接する周囲壁部を構成するものである。 【0020】 上記容器本体51の内部には、一対の側壁部51eの間に規制板部材として仕切板52を複数並設してある。複数の仕切板52は、容器本体51を試薬収容庫30に配置した場合に、試薬収容庫30の回転軸O_(2)を中心とした径方向に沿う態様で延設したもので、つまり回転軸O_(2)を中心とした円の接線に直交する態様で延設したもので、それぞれの相互間がほぼ等間隔となるように並設してある。本実施の形態では、仕切板52の2つが分注口51fの下方域を相互間に挟む態様で合計4つの仕切板52を容器本体51と一体に成形してある。それぞれの仕切板52は、上端部と上壁部51bとの間に間隙を確保してある一方、左右方向の各端部が容器本体51の外周壁部51cおよび内周壁部51dに連接し、さらに下端部が容器本体51の底壁部51aに連接してあり、互いの間並びに側壁部51eとの間にそれぞれ貯留空間を画成することによって容器本体51の内部を複数(本実施の形態では5つ)に区画している。 【0021】また、容器本体51には、底壁部51aにおいて分注口51fに対向する部位を含み、かつ底壁部51aの外周縁が成す円弧と同心の円弧状となるように連通溝53が形成してある。連通溝53は、それぞれの仕切板52に対して交差するように延在し、仕切板52によって区画された複数の貯留空間を互いに連通するための連絡通路Dを構成している。なお、連通溝53は、底壁部51aにおいて分注口51fに対向する部位を含み、かつそれぞれの仕切板52に対して交差するように延在するものであれば、円弧状に形成したものに限定されず、例えば直線状に形成したものであっても良い。」 (引1エ) 「【0030】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明に係る試薬容器によれば、少なくとも容器本体の内部において分注プローブの下動域を含む試薬の慣性力による流動を妨げる規制板部材を設けているため、分析処理のスループットを低下させることなく、規定量の試薬を正確に分注することが可能になる。」 (引1オ)図2 ![]() (2)引用文献1に記載された発明 上記(1)の記載事項及び図面から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 分析装置において検体の分析に用いる、内部に液状の試薬Eを貯留するための容器本体51であって、 容器本体51は、底壁部51a、上壁部51b、外周壁部51c、内周壁部51dおよび一対の側壁部51eを有したもので、合成樹脂によって一体に成形してあり、 容器本体51の上壁部51bは、分注口51fを有し、分注口51fは、上壁部51bの上面から突出する筒状部51gの中心部に開口したもので、容器本体51の内部と外部とを連通しており、 容器本体51の外周壁部51c、内周壁部51dおよび一対の側壁部51eは、底壁部51aおよび上壁部51bの間を連接する周囲壁部を構成するものであり、 容器本体51の内部には、一対の側壁部51eの間に規制板部材として仕切板52を複数並設してあり、複数の仕切板52は、容器本体51を試薬収容庫30に配置した場合に、試薬収容庫30の回転軸O_(2)を中心とした径方向に沿う態様で延設したもので、仕切板52の2つが分注口51fの下方域を相互間に挟む態様で合計4つの仕切板52を容器本体51と一体に成形してあり、それぞれの仕切板52は、上端部と上壁部51bとの間に間隙を確保してある一方、左右方向の各端部が容器本体51の外周壁部51cおよび内周壁部51dに連接し、さらに下端部が容器本体51の底壁部51aに連接してあり、互いの間並びに側壁部51eとの間にそれぞれ貯留空間を画成することによって容器本体51の内部を複数に区画しており、 容器本体51には、底壁部51aにおいて分注口51fに対向する部位を含み、かつ連通溝53が形成し、連通溝53は、それぞれの仕切板52に対して交差するように延在し、仕切板52によって区画された複数の貯留空間を互いに連通するための連絡通路Dを構成している、 容器本体51。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (引2ア) 「【0032】 図1aは、本発明に係るシステムの好ましい態様を模式的に示す。ピペット操作可能な物質(試薬)を充填済みの容器(20)は蓋(30)によって閉じられる。この蓋は少なくとも1つの開口部領域(40)を有する。」 (引2イ) 「【0051】 図6は、本発明の好ましい態様に係る容器(20)の蓋(30)の詳細を示す。開口部領域(40)は境界領域(50)によって境界がつけられる。境界領域は、一種の壊れ易い点又は弱化された点として作用し、それに沿って切縁によって開口部領域と蓋の接続が壊されることになっている。この目的で、切縁を用いて容易な分離が保証されるように境界領域は設計される。これは、様々な方法で達成され得る。 ・・・ 【0053】 別の態様では、境界領域は、蓋の残りとは異なる材料で作られ、それは、たとえば、当該分野で既知である2C射出成形を用いて達成されてもよい。境界領域はまた、たとえば、ホイル又はフィルムの形態であってもよい。」 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 (引3ア)15頁13?18行 「本発明の流動性材料容器は、広範な種々の自動化されたサンプル分配、分析又は処理装置に適用でき、これらの装置と協調して使用される試薬の、安全で、簡単で、便利でそして適合性のある貯蔵を提供する。更には、該容器は、先行技術でこれまで得られなかった程度までの試薬の操作及び貯蔵を許容する。そのようなものとして、本発明の流動性材料容器は、血液のような生理学的又は生物学的サンプルの自動化された処理又は分析において使用するのに特によく適している」 (引3イ)17頁12?21行 「流動物収容チャンバー及び本発明の液体試薬容器の他の構成要素は、好ましくは、プラスチック、金属又はガラスのような高価でない材料で作られる。これらの材料の使用は、囲いこまれた流動性試薬材料との潜在的反応性によってのみ制限される。従って、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスルホン、アセテート、セルロースその他の適当な材料を、容器チャンバー及び他の構成要素を、キャスティング、射出成形、インベストメント成形、機械研削その他の適当な技術によって形成するのに利用することができる。本発明の該好ましい具体例が、射出成形又はキャスティング製造技術に特に適していることは、強調しなければならない。これは、生産方法を非常に単純化し、そして関連コストを低下させる。」 4 引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 (引4ア) 「【要約】 【目的】 この発明は多数のアンダーカットを持った複雑な製品を製造できるプラスチック射出成形装置を特徴としている。 【構成】 この発明の射出成形装置のリフターヘッドは成形製品の内部を形成する型の突部の溝に受けられ、リフターヘッドの横の突起はアンダーカットを形成するよう突部を取り囲む空所内に延び、エゼクタピンはリフターヘッドから外方に製品を動かし、リフターヘッドの突起は製品の除去を容易にする内傾斜面を有し、リフターヘッドは製品の交差する内壁間の隅部近くに2つのアンダーカットを形成する2つの角度のずれた突起を有するよう出来、突起はリフターヘッドから離れて横方向に製品を動かすことが出来るよう傾斜した放出面を有している。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「分析装置において検体の分析に用いる、内部に液状の試薬Eを貯留するための容器本体51」は、本願発明1の「分析機器のための試薬容器(100)」に相当する。 イ 引用発明の「上壁部51b」は、本願発明1の「カバー(102)」に相当する。また、引用発明の「底壁部51a」、「外周壁部51c」、「内周壁部51d」、「一対の側壁部51e」、「4つの仕切板52」及び「連通溝53」が、本願発明1の「下方部分(104)」に相当する。 よって、引用発明の「容器本体51」が、「内部に液状の試薬Eを貯留するため」に、「上壁部51b」、「底壁部51a」、「外周壁部51c」、「内周壁部51d」、「一対の側壁部51e」、「4つの仕切板52」及び「連通溝53」を備えることは、本願発明1の「前記試薬容器(100)は、液体試薬を保管するように構成され、カバー(102)および下方部分(104)を備え」ることに相当する。 ウ 引用発明の「底壁部51a」、一方の「側壁部51e」、他方の「側壁部51e」、「外周壁部51c」と「内周壁部51d」、及び「4つの仕切板52」は、それぞれ、本願発明1の「底壁(106)」、「前壁(108)」、「後壁(110)」、「2つの向かい合った側壁(112)」、及び「少なくとも1つの接続壁(116)」に相当する。 よって、引用発明が、「底壁部51a」、一方の「側壁部51e」、他方の「側壁部51e」、「外周壁部51c」と「内周壁部51d」、及び「4つの仕切板52」を備えることは、本願発明1の「前記下方部分(104)は、底壁(106)、前壁(108)、後壁(110)、2つの向かい合った側壁(112)、および少なくとも1つの接続壁(116)を備え」ることに相当する。 エ 引用発明の「容器本体51の内部」が「貯留空間を画成する」ことは、本願発明1の「前記カバー(102)、前記底壁(106)、前記前壁(108)、前記後壁(110)、および前記2つの向かい合った側壁(112)は、少なくとも1つの液体試薬を保管するための少なくとも1つの内部容積部(114)を画定」することに相当する。 オ 引用発明の「容器本体51の内部に」「複数並設してあ」る「それぞれの仕切板52は」、「左右方向の各端部が容器本体51の外周壁部51cおよび内周壁部51dに連接」していることは、本願発明1の「前記2つの向かい合った側壁(112)は、前記少なくとも1つの内部容積部(114)内に位置する前記少なくとも1つの接続壁(116)によって、互いに少なくとも部分的に接続され」ることに相当する。 カ 引用発明の「容器本体51は、底壁部51a、上壁部51b、外周壁部51c、内周壁部51dおよび一対の側壁部51eを有したもので、合成樹脂によって一体に成形し」、「仕切板52を容器本体51と一体に成形」することと、本願発明1の「前記接続壁(116)および少なくとも前記2つの向かい合った側壁(112)は、射出成型され、モノリシックに形成され」ることとは、「前記接続壁(116)および少なくとも前記2つの向かい合った側壁(112)は、モノリシックに形成され」る点で共通する。 すると、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致し、次の各点で相違する。 (一致点) 「分析機器のための試薬容器(100)であって、前記試薬容器(100)は、液体試薬を保管するように構成され、カバー(102)および下方部分(104)を備え、 前記下方部分(104)は、底壁(106)、前壁(108)、後壁(110)、2つの向かい合った側壁(112)、および少なくとも1つの接続壁(116)を備え、 前記カバー(102)、前記底壁(106)、前記前壁(108)、前記後壁(110)、および前記2つの向かい合った側壁(112)は、少なくとも1つの液体試薬を保管するための少なくとも1つの内部容積部(114)を画定し、 前記2つの向かい合った側壁(112)は、前記少なくとも1つの内部容積部(114)内に位置する前記少なくとも1つの接続壁(116)によって、互いに少なくとも部分的に接続され、 前記接続壁(116)および少なくとも前記2つの向かい合った側壁(112)は、モノリシックに形成される、 試薬容器。」 (相違点1) 本願発明1では、「前記少なくとも1つの接続壁(116)は、2.0mm?30.0mmの距離(118)だけ前記底壁(106)から離間している」のに対し、引用発明では、「それぞれの仕切板52」は、その「下端部が容器本体51の底壁部51aに連接し」、「底壁部51aに」「連通溝53が形成」されている点。 (相違点2) 接続壁(116)および少なくとも2つの向かい合った側壁(112)が、本願発明1では、「射出成型」されているのに対し、引用発明では、「合成樹脂によって一体に成形」されている点。 (2)判断 上記相違点1について検討する。 上記相違点1に係る本願発明1の構成は、引用文献2?4(上記「第4」の2?4を参照。)に記載も示唆もなく、周知技術であるといえる証拠もない。 一方、引用発明では、底壁部51aの連通溝53のところだけ、仕切板52と接していないが、底壁部51aの連通溝53は、「仕切板52によって区画された複数の貯留空間を互いに連通するための連絡通路D」にすぎないから、底壁部51aに形成された溝をもって、仕切板52が底壁部51aと離間していると認定することはできない。 そして、この仕切板52は「規制板部材」として機能し、「少なくとも容器本体の内部において分注プローブの下動域を含む試薬の慣性力による流動を妨げる」効果を奏する必要があるところ(上記「第4」の1(1)(引1エ)を参照。)、引用発明において、仕切板52の下端部を底壁部51aから離間させることは、むしろ、試薬の慣性力による流動を進めることにもなり、上記(引1イ)に記載の課題を解決するものともいえない。 したがって、引用発明において、仕切板52の下端を底壁部51aから離間させることはできず、そのような設計とすることに阻害要因があるといえる。 よって、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることではない。 (3)小括 したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2?7について 本願発明2?7は、本願発明1を引用する発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 3 本願発明8について 本願発明8は、本願発明1の上記相違点1に係る構成を備える「下方部分(104)」を専ら製造するための器具(148)の発明といえることから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 4 本願発明9?13について 本願発明9?13は、本願発明8を引用する発明であるから、本願発明8と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 5 本願発明14について 本願発明14は、本願発明1の上記相違点1に係る構成を備える「下方部分(104)」を製造するための方法の発明といえることから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 6 本願発明15について 本願発明15は、本願発明14を引用する発明であるから、本願発明14と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 原査定について 上記「第5」で検討したように、本願発明1?15は、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえないから、拒絶査定において引用された引用文献1?4に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-04-14 |
出願番号 | 特願2018-519944(P2018-519944) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01N)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 野田 華代 |
特許庁審判長 |
三崎 仁 |
特許庁審判官 |
▲高▼見 重雄 伊藤 幸仙 |
発明の名称 | 液体試薬を保管するための試薬容器、試薬容器の下方部分を製造するための器具、および試薬容器の下方部分を製造するための方法 |
代理人 | 松尾 淳一 |
代理人 | 鐘ヶ江 幸男 |
代理人 | 山本 修 |
代理人 | 宮前 徹 |