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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1373125
審判番号 不服2020-10847  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-05 
確定日 2021-04-30 
事件の表示 特願2017-553932「無線通信システムにおける端末が再分散範囲を計算する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月24日国際公開、WO2016/186408、平成30年 7月19日国内公表、特表2018-519691、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2016年(平成28年)5月16日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年5月16日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成31年 3月18日 上申書,手続補正書の提出
令和 2年 1月 7日付け 拒絶理由通知書
令和 2年 3月10日 意見書,手続補正書の提出
令和 2年 6月 2日付け 拒絶査定
令和 2年 8月 5日 拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の
提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年6月2日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。

この出願の請求項1ないし19に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.国際公開第2014/014859号
2.特開2002-16958号公報

第3 本願発明について
本願請求項1ないし13に係る発明は(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は,令和2年8月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲請求項1ないし13に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1ないし13は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
無線通信システムにおいて端末(UE)が再分散手順を実行する方法であって,前記方法は,
ネットワークから再分散要素を受信することと,
前記再分散要素のうちの少なくとも1つの有効な再分散要素を決定することと,
前記少なくとも1つの有効な再分散要素に基づいて,少なくとも1つの再分散範囲を取得することと,
前記少なくとも1つの再分散範囲に基づいて,前記再分散手順を実行することと
を含み,
前記少なくとも1つの再分散範囲は,以下の数式:
【数1】

に基づいて取得される,方法。
【請求項2】
前記再分散要素は,負荷分散のための周波数毎の再分散確率値であり,
前記有効な再分散要素は,前記UEに対して有効な周波数の再分散確率値である,請求
項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再分散手順は,前記UEに対して有効な周波数で実行される,請求項2に記載の方
法。
【請求項4】
前記再分散要素は,システム情報ブロック(SIB)を介して受信される,請求項1に
記載の方法。
【請求項5】
前記UEが前記ネットワークから周波数リストを受信することをさらに含む,請求項1
に記載の方法。
【請求項6】
前記周波数リストは,SIBを介して受信される,請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記再分散範囲は,前記UEに対して有効な周波数と前記周波数リストに含まれている周波数とが異なる場合に取得される,請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記UEは,RRC_IDLEモードである,請求項1に記載の方法。
【請求項9】
無線通信システムにおいて再分散手順を実行する端末(UE)であって,前記UEは,
メモリと,
送受信機と,
前記メモリおよび前記送受信機に動作可能に連結されるプロセッサと
を備え,
前記プロセッサは,
ネットワークから再分散要素を受信するように前記送受信機を制御することと,
前記再分散要素のうちの少なくとも1つの有効な再分散要素を決定することと,
前記少なくとも1つの有効な再分散要素に基づいて,少なくとも1つの再分散範囲を取
得することと,
前記少なくとも1つの再分散範囲に基づいて,前記再分散手順を実行することと
を行うように構成され,
前記少なくとも1つの再分散範囲は,以下の数式:
【数2】

に基づいて取得される,UE。
【請求項10】
前記再分散要素は,負荷分散のための周波数毎の再分散確率値であり,
前記有効な再分散要素は,前記UEに対して有効な周波数の再分散確率値である,請求
項9に記載のUE。
【請求項11】
前記再分散手順は,前記UEに対して有効な周波数で実行される,請求項10に記載の
UE。
【請求項12】
前記再分散要素は,システム情報ブロック(SIB)を介して受信される,請求項9に
記載のUE。
【請求項13】
前記UEは,RRC_IDLEモードである,請求項9に記載のUE。」

第4 引用発明について
1.引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2014/014859号には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「Overview of Network Architecture
FIG. lA illustrates a portion of a wireless communications network 100. Referring to FIG. lA, wireless commumcations network 100 may follow, for example, a Long Term Evolution (LTE) protocol. Communications network 100 includes a macro base station (BS) 1lOA; a small cell BS 110B; a macro cell 120, a small cell 125; and first through third UEs 105A-C. The small cell 125 may be, for example a pico cell, a femto cell or a metro cell. Further, the term small cell as used herein may be considered synonymous to and/ or referred to as pico cell, a femto cell or a metro cell. Multiple carriers are used by the macro and small cells.」(第8ページ第4行-第14行)

(当審訳:
ネットワーク・アーキテクチャの概要
図1Aは,ワイヤレス通信ネットワーク100の一部を示している。図1Aを参照すると,ワイヤレス通信ネットワーク100は,たとえば,ロング・ターム・エボリューション(LTE:Long Term Evolution)プロトコルに従うことができる。通信ネットワーク100は,マクロ基地局(BS)110A,スモール・セルBS110B,マクロ・セル120,スモール・セル125,および第1から第3のUE105A?Cを含む。スモール・セル125は,たとえば,ピコ・セル,フェムト・セル,またはメトロ・セルの場合がある。さらに,本明細書に使用されるスモール・セルという?語は,ピコ・セル,フェムト・セル,またはメトロ・セルと同意語であると考えられ,かつ/または呼ぶことができる。マクロ・セルおよびスモール・セルによって,複数のキャリアが使用される。)

(2)「User equipment operation based on network entity assigned probability
FIG. 5 illustrates a method for traffic redistribution by UE according to an example embodiment. While describing the steps of the method associated with FIG. 5, reference will be made to the wireless network 100 of FIG. lA. In the method associated with FIG. 5, the UE may include a processor and a memory which operate together to run UE functionality. For example, the memory may store code segments regarding apparatus functions. The code segments may in-turn be executed by the processor. Further, the memory may store process variables and constants for use by the processor.
In step S505 the UE 105 receives a reselection paging message. For example, the reselection broadcast message may be the message transmitted in step S350 described above. The message may include a set of cell reselection probability values associated with the neighboring carrier frequencies.
In step S510 the UE 105 determines if the UE 105 is in an idle mode. UE being in an idle mode is known to those skilled in the art. For example, a UE (e.g., UE 105) is connected (e.g., RRC_CONNECTED state) when an RRC connection has been established. Otherwise, the UE is in an idle mode (e.g., RRC_IDLE state).
In step S515 the UE 105 generates n percentage ranges based on the carrier probability values (n equal to the number of carriers). For example, the entire percentage range may be 1-100%. As discussed above, an algorithm to generate the probability value based on desired percentages of transfer may have been used. The same algorithm may be used in a reverse manner. For example, the result of using the reverse algorithm may be that UE's reselect to a first carrier 50% of the time, a second carrier 25% of the time and a third carrier 25% of the time. For instance, a first range may include 1-50, a second range may include 51-75 and a third range may include 76-100.
In step S520 the UE 105 assigns one of the n percentage ranges to each of the carriers. For example, the set of cell probability values received in the message may include associated carriers. Each of the carriers may be assigned one of the n ranges based on associated carriers in the received message. For example, the first range including 1-50 may be assigned to carrier 1, the second range including 51-75 may be assigned to carrier2 and the third range including 76-100 may be assigned to carrier3.
In step S525 the UE 105 generates a random number. For example, the UE 105 may generate a random integer number between 1 and 100 (using any known algorithm). The random number may be uniformly distributed over the entire percentage range. The UE 105 may store this value in a memory if necessary.
In step S530 the UE 105 reselects a carrier based on the random number and the n percentage ranges. For example, as discussed above, there may be three carriers each with an assigned range. If the random number is between 1 and 50, the UE 105 may reselect carrier. If the random number is between 51 and 75, the UE 105 may reselect carrier2. If the random number is between 76 and 100, the UE 105 may reselect carrier3.
As one skilled in the art will appreciate there may be more or less than three carriers and the range corresponding to ay carrier may be varied as desired.」(第23ページ第8行-第24ページ第29行)

(当審訳:ネットワーク・エンティティに割り当てられた確率に基づくユーザ機器の操作
図5は,例示的実施形態によるUEによるトラフィック再分配のための方法を示している。図5に関連する方法のステップを記述するときに,図1Aのワイヤレス・ネットワーク100について言及する。図5に関連する方法で,UEは,UE機能を実行するためにともに動作するプロセッサおよびメモリを含むことができる。たとえば,メモリは,装置の機能に関するコード・セグメントを格納することができる。コード・セグメントは,次に,プロセッサによって実行することができる。さらに,メモリは,プロセッサによって使用するためにプロセス変数および定数を格納することができる。
ステップS505で,UE105は,再選択ページングメッセージを受信する。例えば,再選択ブロードキャストメッセージは,上述したようにステップ350で送信されるメッセージであり得る。上記メッセージは,隣接するキャリア周波数に関連付けられた1組のセル再選択確率の値を含むことができる。
ステップS510で,UE105は,UE105がアイドル・モードにあるかどうかを決定する。アイドル・モードにあるUEは,当業者に認識されている。たとえば,RRC接続が確立された場合,UE(たとえばUE105)は接続される(たとえばRRC_CONNECTED状態)。そうでない場合,UEは,アイドル・モード(たとえばRRC_IDLE状態)にある。
ステップS515で,UE105は,キャリア確率値に基づいてn個の割合範囲を生成する(nはキャリアの数に等しい)。たとえば,割合範囲全体は1?100%の場合がある。上記のように,転送の望まれる割合に基づいて確率値を生成するアルゴリズムを使用することができる。同じアルゴリズムを逆の方法で使用することができる。たとえば,逆のアルゴリズムを使用する結果,UEが,50%の確率で第1のキャリア,25%の確率で第2のキャリア,および25%の確率で第3のキャリアを再選択する場合がある。たとえば,第1の範囲は,1?50を含むことができ,第2の範囲は,51?75を含むことができ,第3の範囲は,76?100を含むことができる。

ステップS520で,UE105は,キャリアのそれぞれにn個の割合範囲の1つを割り当てる。たとえば,上記メッセージで受信された1組のセル確率値は,関連付けられたキャリアを含むことができる。キャリアのそれぞれには,受信されたメッセージの関連付けられたキャリアに基づいて,n個の範囲の1つを割り当てることができる。たとえば,1?50を含む第1の範囲は,キャリア1に割り当てることができ,51?75を含む第2の範囲は,キャリア2に割り当てることができ,76?100を含む第3の範囲は,キャリア3に割り当てることができる。
ステップS525で,UE105は,乱数を生成する。たとえば,UE105は,(任意の知られているアルゴリズムを使用して)1から100の間でランダムな整数を生成することができる。乱数は,割合範囲全体で一様に分配することができる。必要に応じて,UE105は,メモリにこの値を格納することができる。
ステップS530で,UE105は,乱数およびn個の割合範囲に基づいて,キャリアを再選択する。たとえば,上に記述したように,それぞれ割り当てられた範囲を持つ3つのキャリアがある場合がある。乱数が1と50との間にある場合,UE105は,キャリア1を再選択することができる。乱数が51と75との間にある場合,UE105は,キャリア2を再選択することができる。乱数が76と100との間にある場合,UE105は,キャリア3を再選択することができる。3より多いまたは少ない数のキャリアがある場合があり,任意のキャリアに対応する範囲は,望まれるように変動させることができることを当業者は理解されるであろう。)

(3)図1A




(4)図5




上記記載及び当業者における技術常識からみて,
ア 上記(1)の「ワイヤレス通信ネットワーク100」との記載,「通信ネットワーク100は,マクロ基地局(BS)110A,スモール・セルBS110B,マクロ・セル120,スモール・セル125,および第1から第3のUE105A?Cを含む。」との記載によれば,ワイヤレス通信ネットワークには,UEが含まれる。そして,上記(2)の「UEによるトラフィック再分配」との記載によれば,トラフィック再分配の処理はUEにより実行されているといえるから,引用例1には,ワイヤレス通信ネットワークにおいてUEによるトラフィック再分配を実行する方法が記載されているといえる。

イ 上記(2)の「例示的実施形態によるUEによるトラフィック再分配のための方法を示している。・・・UE105は,再選択ページングメッセージを受信する。例えば,再選択ブロードキャストメッセージは,上述したようにステップ350で送信されるメッセージであり得る。上記メッセージは,隣接するキャリア周波数に関連付けられた1組のセル再選択確率の値を含むことができる。」との記載によれば,引用例1には,「UEは,隣接するキャリア周波数に関連付けられた1組のセル再選択確率の値を含む再選択ページングメッセージを受信」することが記載されている。

ウ 上記(2)には,「UE105は,キャリア確率値に基づいてn個の割合範囲を生成する(nはキャリアの数に等しい)。・・・UE105は,キャリアのそれぞれにn個の割合範囲の1つを割り当てる。・・・キャリアのそれぞれには,受信されたメッセージの関連付けられたキャリアに基づいて,n個の範囲の1つを割り当てることができる。」との記載がある。ここで,キャリア確率値は,上記(2)の「上記メッセージは,隣接するキャリア周波数に関連付けられた1組のセル再選択確率の値を含むことができる。」との記載におけるセル再選択確率の値のことであることは明らかであるから,引用例1のUEが,「上記セル再選択確率の値に基づいてn個の割合範囲を生成し,キャリアのそれぞれに,受信されたメッセージに関連付けられたキャリアのそれぞれにn個の割合範囲の1つを割り当てることができ」ることが記載されている。

エ 上記(2)には,「UE105は,乱数を生成する。・・・UE105は,乱数およびn個の割合範囲に基づいて,キャリアを再選択する」との記載がある。ここで,キャリアを再選択することとは,キャリアの再分配を行っていることといえるから,引用例1のUEが,「乱数を生成し,乱数及びn個の割合範囲に基づいて,キャリアを再分配する」ことが記載されているといえる。

以上を総合すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ワイヤレス通信ネットワークにおいて,UEによるトラフィック再分配を実行する方法であって,UEは,隣接するキャリア周波数に関連付けられた1組のセル再選択確率の値を含む再選択ページングメッセージを受信し,上記セル再選択確率の値に基づいてn個の割合範囲を生成し,キャリアのそれぞれに,受信されたメッセージに関連付けられたキャリアのそれぞれにn個の範囲の1つを割り当てることができ,UEは乱数を生成し,UEは,乱数及びn個の割合範囲に基づいて,キャリアを再分配する,方法」

2.引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-16958号公報には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「【0005】しかしながら,このような従来の移動無線端末装置では,ハンドオーバ処理の必要が生じる度に,通知されたリストにある,すべての無線基地局について検証するため,結果的に接続しない無線基地局に対しても検証するといった不必要な処理が避けられず,ハンドオーバ先の無線基地局を選択するのに時間がかかるばかりか,いたずらに電力を消費してしまうという問題があった。」(第2ページ第2欄第3行-第10行)

(2)「【0034】次に,上記構成の移動無線端末装置のハンドオーバ時の動作について説明する。図6は,ハンドオーバ条件成立時に,制御部100によってなされる接続基地局の選択処理を示すフローチャートである。
【0035】あるフィンガ(16b,16c,16d)にて受信されるパスのEc/Ioが,所定レベルより低下するなどして,ハンドオーバの必要が生じると,図6に示す処理が開始される。【0036】まず,ステップPにおいて,速度検出回路18にて検出した移動速度に基づいて,当該移動無線端末装置が高速移動状態にあるか否かを判定する。ここで,高速移動時には,後述する高速移動処理に移行し,高速移動していない場合には,ステップ6aに移行する。
【0037】ステップ6aでは,ハンドオーバ履歴記憶エリア200aを参照し,上記フィンガが受信していた信号の送信元である基地局(以下,移動前基地局と称する)が記載される通信履歴データを読み出し,ステップ6bに移行する。なお,この際に参照される通信履歴データは,有効フラグデータにより有効設定がなされる通信履歴データのみである。
【0038】ステップ6bでは,ステップ6aにて読み出された通信履歴データに基づいて,図4に示すように,移動前基地局からハンドオーバして接続された基地局(以下,移動後基地局と称する)となった基地局を,その回数の多い順に集計した候補基地局リストAを作成し,ステップ6cに移行する。なお,この候補基地局リストAは,候補基地局リスト記憶エリア200c上で作成される。
【0039】ステップ6cでは,上記候補基地局リストA中で,除外設定されていない(OFF設定の)基地局のうち,もっとも回数の多い基地局を選択し,ステップ6dに移行する。
【0040】ステップ6dでは,ステップ6cで選択された基地局に対応する拡散符号を用いて,上記基地局からのパイロット信号の受信を試み,ハンドオーバ先の基地局として適当か否かを判定する。ここで,ハンドオーバ先の基地局として適当な場合には,ステップ6eに移行し,一方,適当でない場合には,ステップ6fに移行する。
【0041】ステップ6eでは,上記選択した基地局にハンドオーバするために,上記選択した基地局からのメッセージ信号を,上記フィンガが受信するように,種々の設定を施し,ステップ6iに移行する。
【0042】ステップ6fでは,上記候補基地局リスト記憶エリア200cの候補基地局リストAにおいて,上記選択した基地局に除外設定を施し(ON設定),ステップ6gに移行する。【0043】ステップ6gでは,上記候補基地局リスト記憶エリア200cの候補基地局リストAに,除外設定されていない(OFF設定の)基地局があるか否かを判定し,ある場合にはステップ6cに移行して,残る基地局について検証し,一方,すべて除外設定されている場合には,ステップ6hに移行する。
【0044】ステップ6hでは,移動前基地局からハンドオーバ先の候補として通知される基地局のうち,ステップ6bにて作成した当初の候補基地局リストAにある基地局を除く基地局からハンドオーバが可能な基地局を検出し,この検出した基地局にハンドオーバし,ステップ6iに移行する。
【0045】ステップ6iでは,ハンドオーバ先となった基地局,すなわち上記移動後基地局となった基地局の識別データを,今回の通信で接続した基地局として履歴作成テーブル記憶エリア200bに記録し,当該処理を終了する。」(第4ページ左欄第46行-第5ページ第左欄第10行)

(3)図6「



したがって,引用例2には,「ハンドオーバ先の候補として通知される基地局のうち,当初の候補基地局リストにある基地局を除く基地局からハンドオーバ可能な基地局を検出し,この検出した基地局にハンドオーバする」という技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明の「UE」は,本願発明1の「端末(UE)」に相当する。

イ ワイヤレスは無線を意味し,通信ネットワークは,全体としてシステムを構成しているから,引用発明の「ワイヤレス通信ネットワーク」は,本願発明1の「無線通信システム」に相当する。

ウ 「分配」とは「わけくばること。」(広辞苑第六版)であり,「分散」は「分けること。」(広辞苑第六版)であることを考慮すれば,引用発明の「再分配」は,本願発明の「再分散」に含まれる。また,引用発明は,再分配するに当たって,必要な手順を実行しているから,本願発明1の「再分散手順を実行する方法」と引用発明の「再分配する方法」とは,「再分散手順を実行する方法」である点で,共通する。

エ 引用発明は「隣接するキャリア周波数に関連付けられた1組のセル再選択確率の値を含む再選択ページングメッセージを受信し,上記セル再選択確率の値に基づいてn個の割合範囲を生成し,キャリアのそれぞれに,受信されたメッセージに関連付けられたキャリアのそれぞれにn個の範囲の1つを割り当てることができ,UEは乱数を生成し,UEは,乱数及びn個の割合範囲に基づいて,キャリアを再分配する」ものである。ここで,上記再選択ページングメッセージは,ネットワークからUEが受信するものであることは,技術常識である。そして,上記再選択ページングメッセージで受信されたセル再選択確率の値は,n個の割合範囲を生成するために使用されるものであり,当該n個の割合範囲に基づいて,キャリアの再配分が行われるものであるから,引用発明の「セル再選択確率の値」は,本願発明1の「再分散要素」に相当する。
よって,上記「ウ」で説示したことも考慮すれば,引用発明の「UEは,隣接するキャリア周波数に関連付けられた1組のセル再選択確率の値を含む再選択ページングメッセージを受信し,上記セル再選択確率の値に基づいてn個の割合範囲を生成し,キャリアのそれぞれに,受信されたメッセージの関連付けられたキャリアのそれぞれn個の範囲の1つを割り当てることができ,UEは乱数を生成し,UEは,乱数及びn個の割合範囲に基づいて,キャリアを再分配する」ことと,本願発明1の「ネットワークから再分散要素を受信すること」は,「ネットワークから再分散要素を受信すること」を含む点で,共通する。

オ 上記「ウ」で説示したことを考慮すれば,引用発明の「キャリアを再配分する」ことは,本願発明1の「再分散手順を実行すること」に相当する。

以上のことから,本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。

(一致点)
「無線通信システムにおいて端末(UE)が再分散手順を実行する方法であって,前記方法は,
ネットワークから再分散要素を受信することと,
前記再分散手順を実行することととを含む,方法」

(相違点)
本願発明1は,
「前記再分散要素のうちの少なくとも1つの有効な再分散要素を決定することと,
前記少なくとも1つの有効な再分散要素に基づいて,少なくとも1つの再分散範囲を取得することと,
前記少なくとも1つの再分散範囲に基づいて,前記再分散手順を実行することと
を含み,
前記少なくとも1つの再分散範囲は,以下の数式:
【数1】

に基づいて取得される」ことを含むのに対して,引用発明には,当該発明特定事項が特定されていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について,検討する。
引用例2には,「ハンドオーバ先の候補として通知される基地局のうち,当初の候補基地局リストにある基地局を除く基地局からハンドオーバ可能な基地局を検出し,この検出した基地局にハンドオーバする」ことが記載されているが,再分散要素のうちの少なくとも1つの有効な再分散要素を決定し,前記少なくとも1つの有効な再分散要素に基づいて,少なくとも1つの再分散範囲を取得し,前記少なくとも1つの再分散範囲に基づいて,前記再分散手順を実行することであって,前記少なくとも1つの再分散範囲は,以下の数式:

に基づいて取得される点は記載も示唆もされていない。また,そもそも引用発明の再分散は,アイドルモードの端末の再分散に関するものであるのに対し,引用例2に記載された技術的事項は,ハンドオーバに関するものであるから,引用発明に引用例2に記載された技術的事項を組み合わせる動機付けがない。
したがって,当業者であっても引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基いて,容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし8
本願発明2ないし8も,本願発明1の「前記再分散要素のうちの少なくとも1つの有効な再分散要素を決定することと,
前記少なくとも1つの有効な再分散要素に基づいて,少なくとも1つの再分散範囲を取得することと,
前記少なくとも1つの再分散範囲に基づいて,前記再分散手順を実行することと
を含み,
前記少なくとも1つの再分散範囲は,以下の数式:
【数1】

に基づいて取得される」と同一の発明特定事項を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明9ないし13
本願発明9ないし13は,プロセッサが,本願発明1の「再分散要素のうちの少なくとも1つの有効な再分散要素を決定することと,前記少なくとも1つの有効な再分散要素に基づいて,少なくとも1つの再分散範囲を取得することと,前記少なくとも1つの再分散範囲に基づいて,前記再分散手順を実行することを含み,前記少なくとも1つの再分散範囲は,以下の数式
【数2】

に基づいて取得される」との発明特定事項を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-04-14 
出願番号 特願2017-553932(P2017-553932)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石田 紀之  
特許庁審判長 廣川 浩
特許庁審判官 望月 章俊
國分 直樹
発明の名称 無線通信システムにおける端末が再分散範囲を計算する方法及び装置  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  
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