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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1373217
審判番号 不服2020-1185  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-29 
確定日 2021-04-27 
事件の表示 特願2018-127484「情報処理装置、情報処理システム、情報処理プログラムおよび情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月27日出願公開、特開2018-152137、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月15日に出願した特願2014-253261号の一部を平成30年7月4日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 3月 6日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 5月31日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月21日付け:拒絶査定(原査定)
令和 2年 1月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年12月22日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 3年 3月 5日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年10月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし10に係る発明は、以下の引用文献AないしDに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
A 特開平11-053236号公報
B 特開2013-222324号公報(周知技術を示す文献)
C 特開2001-228841号公報(周知技術を示す文献)
D 特開2013-058123号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
[理由1]明確性要件
本願請求項1ないし8に係る発明は、以下の点において明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1,7及び8の記載において、「情報処理装置」の「送信手段」が「更新された自機属性情報の複製データを前記他の情報処理装置に同期させるよう送信する」旨の記載は、同期元と同期先の関係が判然とせず、明確ではない。
(2)請求項2の記載において、「情報処理装置」が、直接接続されていない「別の情報処理装置」に「複製データ」をどのように「送信」するのか明確ではない。
(3)請求項5の記載は、上流にある「情報処理装置」が下流にある「他の情報処理装置」から「複製データ」を受信するものであり、これとは逆方向に「複製データ」が送受信される、請求項5が間接的に引用する請求項2の記載と矛盾する。

[理由2]進歩性
本願請求項1及び3ないし6に係る発明は、以下の引用文献1ないし6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
1 特開平11-53236号公報(原査定の引用文献A)
2 特開2013-222324号公報(周知技術を示す文献、原査定の引用文献B)
3 特開2001-228841号公報(周知技術を示す文献、原査定の引用文献C)
4 特開2013-58123号公報(周知技術を示す文献、原査定の引用文献D)
5 特開2004-127004号公報(周知技術を示す文献、当審において新たに提示する文献)
6 特開2005-44155号公報(周知技術を示す文献、当審において新たに提示する文献)

第4 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、令和3年3月5日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし6は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
他の情報処理装置と通信可能に接続された情報処理装置であって、
タッチ入力を検出する入力検出手段と、
前記タッチ入力に基づき画像を表示する表示手段と、
前記画像の表示において設定された自機属性情報に基づき前記画像を表示する画像表示処理手段と、
前記情報処理装置において前記自機属性情報の更新入力を受け付けた場合、前記自機属性情報を更新する属性情報更新手段と、
前記自機属性情報を更新することに応じて、更新された自機属性情報の複製データに前記他の情報処理装置の他機属性情報を同期させるよう、前記更新された自機属性情報の複製データを前記他の情報処理装置に送信する送信手段と、
前記他の情報処理装置から応答情報を受信する受信手段と、を備え、
前記送信手段が、前記情報処理装置と前記他の情報処理装置と別の情報処理装置とがこの順にデイジーチェーン接続されている場合、前記受信手段が前記応答情報を受信した後、前記他の情報処理装置に前記別の情報処理装置宛の複製データを送信することにより、前記複製データは、前記他の情報処理装置を通過して、前記別の情報処理装置に送信される、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記タッチ入力に用いられる入力手段から識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記識別情報が付加された自機属性情報を記憶する記憶手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記属性情報更新手段は、前記入力手段により前記自機属性情報を更新する入力指示を受け付けた場合、前記入力手段の識別情報が付加された自機属性情報を更新し、
前記送信手段は、更新された前記識別情報が付加された自機属性情報の複製データを前記他の情報処理装置に送信することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記入力手段はタッチペンであって、
前記タッチペンは、自身の識別情報を送信する送信手段を含み、
前記識別情報取得手段は、前記タッチペンから送信された前記識別情報を受信することを特徴とする請求項2または3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
他の情報処理装置と通信可能に接続された情報処理装置によって実行される情報処理プログラムであって、
タッチ入力を検出する入力検出ステップと、
前記タッチ入力に基づき画像を表示する表示ステップと、
前記画像の表示において設定された自機属性情報に基づき前記画像を表示する画像表示処理ステップと、
前記情報処理装置において前記自機属性情報の更新入力を受け付けた場合、前記自機属性情報を更新する属性情報更新ステップと、
前記自機属性情報を更新することに応じて、更新された自機属性情報の複製データを前記他の情報処理装置の他機属性情報を同期させるよう、前記更新された自機属性情報の複製データを前記他の情報処理装置に送信する送信ステップと、
前記他の情報処理装置から応答情報を受信する受信ステップと、を実行させ、
前記送信ステップにおいて、前記情報処理装置と前記他の情報処理装置と別の情報処理装置とがこの順にデイジーチェーン接続されている場合、前記受信ステップにおいて前記応答情報を受信した後、前記他の情報処理装置に前記別の情報処理装置宛の複製データを送信することにより、前記複製データは、前記他の情報処理装置を通過して、前記別の情報処理装置に送信される、
情報処理プログラム。
【請求項6】
他の情報処理装置と通信可能に接続された情報処理装置の情報処理方法であって、
タッチ入力を検出する入力検出ステップと、
前記タッチ入力に基づき画像を表示する表示ステップと、
前記画像の表示において設定された属性情報に基づき前記画像を表示する画像表示処理ステップと、
前記情報処理装置において前記自機属性情報の更新入力を受け付けた場合、前記自機属性情報を更新する属性情報更新ステップと、
前記自機属性情報を更新することに応じて、更新された自機属性情報の複製データを前記他の情報処理装置の他機属性情報を同期させるよう、前記更新された自機属性情報の複製データを前記他の情報処理装置に送信する送信ステップと、
前記他の情報処理装置から応答情報を受信する受信ステップと、を含み、
前記送信ステップにおいて、前記情報処理装置と前記他の情報処理装置と別の情報処理装置とがこの順にデイジーチェーン接続されている場合、前記受信ステップにおいて前記応答情報を受信した後、前記他の情報処理装置に前記別の情報処理装置宛の複製データを送信することにより、前記複製データは、前記他の情報処理装置を通過して、前記別の情報処理装置に送信される、
ことを特徴とする情報処理方法。」

なお、本願発明1は、本件補正前の請求項1に係る発明に本件補正前の請求項2に記載された事項を付加等したものに対応し、本願発明2、3及び4はそれぞれ、本件補正前の請求項3、4及び6に相当し、本願発明5及び6はそれぞれ、本件補正前の請求項7及び8に本件補正前の請求項2の内容を付加したものであって、かつ、本願発明1とはカテゴリ表現が異なるものであり、本件補正前の請求項1及び5は本件補正により削除されたと認められる。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
ア 引用文献1記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献1(原査定の引用文献A)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のため当審が付与した。(以降においても同様。)

「【0005】本発明は、このような実情を鑑みてなされたものであり、1のコンピュータ内でのデータの移動、又は、複数のコンピュータ間でのデータの伝送を自然且つ簡便に行うユーザインターフェースを用いたデータ送信/受信/送受信装置、データ伝送システム、データ送信/受信/送受信/伝送方法、及び、データ送信/受信/送受信プログラム格納媒体を提供することを目的とする。」

「【0040】図1に示すように、本発明の実施の形態のデータ伝送システム1は、ネットワーク10上に複数のコンピュータが接続されている(以下、このネットワーク10に接続された複数のコンピュータおのおのを代表して各コンピュータ20という。)。各コンピュータ20は、ディスプレイを有しており、このディスプレイにより出力データの表示がされる(以下、この各コンピュータ20のディスプレイを総称してディスプレイDという。)。
【0041】各コンピュータ20のディスプレイDは、出力データの表示をするとともに、例えばペン型入力デバイスPにより直接入力操作がされる入出力一体型のものである。すなわち、このディスプレイDは、液晶等による表示機能と、タブレットやデジタイザといわれる入力機能が一体となったものである。ペン型入力デバイスPは、ペンの形状をしたポインティングデバイスであり、各コンピュータ20の入力インターフェースの為の装置である。ユーザは、マウスやトラックボール等の入力装置の替わりにこのペン型入力デバイスPを用いてディスプレイDに対して入力操作を行う。ユーザは、このペン型入力デバイスPを用いることにより、アイコン等に対するクリック操作、アイコン等に対するいわゆるドラッグアンドドロップの操作、文字や図形等の手書き入力操作等を行うことができる。」

「【0044】各コンピュータ20は、複数のペン型入力デバイスP(P1?Pn)により操作入力がされる。各ペン型入力デバイスP(P1?Pn)は、各コンピュータ20のディスプレイDに対して共通に用いられる。また、各ペン型入力デバイスP(P1?Pn)は、それぞれに異なるID番号が設定されている。ペン型入力デバイスPを用いて各コンピュータ20のディスプレイDに対し入力操作を行うと、このID番号を当該コンピュータ20が認識する。
【0045】各コンピュータ20は、ネットワーク10上に設けられた管理テーブル10aを共有している。この管理テーブル10aは、ペン型入力デバイスPのID番号に対応して設けられている。このネットワーク10上の管理テーブル10aは、各コンピュータ20のいずれからもネットワーク10を介して参照や書き込みができるテーブルである。例えば、この管理テーブル10aは、ネットワーク10に接続される1のコンピュータがホストコンピュータとなり、このホストコンピュータが管理するものであってもよいし、各コンピュータ20が共通のファイルをもち、このファイルにより各コンピュータ20がそれぞれ管理するものであってもよい。
【0046】このような各コンピュータ20は、図2に示すように、中央処理装置(CPU)51と、データ処理領域やデータの格納領域となるメモリ52と、処理プログラムや処理データを格納するデータ格納媒体53と、ディスプレイDに画像を表示する画面表示部54と、入力されたペン型入力デバイスPの入力位置を認識するペン位置認識部55と、入力されたペン型入力デバイスPの入力状態を認識するペン状態認識部56と、入力されたペン型入力デバイスPのID番号を認識するペンID認識部57と、ネットワーク10を介して他のコンピュータとデータの伝送をするネットワーク接続部58とを備えている。」

「【0049】ペン状態認識部56は、操作入力されたペン型入力デバイスPのディスプレイDとの距離等を認識する。具体的には、図3(a)に示すようにペン型入力デバイスPとディスプレイDが接触しているか、図3(b)に示すようにペン型入力デバイスPとディスプレイDが接触していないが接近しているか、また、図3(c)に示すようにペン型入力デバイスPがディスプレイDから充分遠ざかっているかを認識する。CPU51は、ペン状態認識部56がペン型入力デバイスPとディスプレイDが接触していると認識する場合は、このときにペン型入力デバイスPがアイコンを選択していればこのアイコンの配色を変えて表示する。また、CPU51は、ペン状態認識部56がペン型入力デバイスPとディスプレイDが接近していると認識する場合は、このときにペン型入力デバイスPがアイコンを選択していればこのアイコンに陰等を付けて表示する。また、CPU51は、ペン状態認識部56がペン型入力デバイスPとディスプレイDが充分に遠ざかっていると認識する場合は、ペン型入力デバイスPに対する表示の処理を行わない。なお、このようなペン状態の認識は、例えば、手書き文字入力した際に文字の濃淡等を表せるペン型入力デバイスや、ペン型入力デバイスの入力圧力や距離等が検出できるタブレット等により実現でき、このようなものとしてワコム社の電磁授受方式のペン型入力デバイスやタブレットが知られている。
【0050】ペンID認識部57は、操作入力されたペン型入力デバイスPに設定されているID番号を認識する。例えば、このペン型入力デバイスPのID番号は、図4に示すように、上述した電磁授受方式のペン型入力デバイスPの内部にある共振回路の所定数(R,L,C)をそれぞれのデバイスで異なるように設定して置くことにより、認識することができる。また、図5に示すように、ペン型入力デバイスPに固有のIDを定期的に発信する赤外線ダイオードLEDや無線発信機、ワイヤレスタグ等を搭載し、ディスプレイD側に受信機RCV等を設けることにより認識することができる。CPU51は、ペンID認識部57が各ペン型入力デバイスP(P1?Pn)のID番号を認識することにより、複数のペン型入力デバイスP(P1?Pn)により操作入力がされた場合、例えば、複数のユーザがそれぞれペン型入力デバイスP(P1?Pn)を有しており、各ユーザにより操作入力がされた場合、いずれのペン型入力デバイスP(P1?Pn)により操作入力がされたかを判断する。」

「【0092】つぎに、上述したデータ伝送システム1を応用した他の実施の形態のデータ伝送システムについて、図15を用いて説明する。
【0093】この他の実施の形態のデータ伝送システム1aは、図15に示すように、壁面型ディスプレイ25Dを有するメインコンピュータ25と、ディスプレイ26Dを有しユーザが片手で携帯できる程度の小型携帯端末26とがネットワーク10を介して接続されている。また、このネットワーク10上には、管理テーブル10aが上述したデータ伝送システム1と同様に設けられている。
…(中略)…
【0095】また、壁面型ディスプレイ25Dには、ペン型入力デバイスPの属性を変更するツールパレットTが表示されている。このツールパレットTは、例えば描画入力をする際の線種,図形,線色等のオブジェクトが示されている。ユーザは、ペン型入力デバイスPによりこのツールパレットTのオブジェクトをピックし、ペン型入力デバイスPの属性を変更して、壁面型ディスプレイ25Dに対して描画入力等を行う。
【0096】小型携帯端末26は、いわゆるPDA(Personal Digital Assistant)と呼ばれる個人用情報機器及び手帳型コンピュータ等である。この小型携帯端末26のディスプレイ26Dは、出力データの表示をするとともに、例えばペン型入力デバイスPにより直接入力操作がされる入出力一体型のものである。このディスプレイDには、上述したツールパレットTと同様のオブジェクトが表示されている。また、小型携帯端末26は、このオブジェクトに応じたデータを格納しており、すなわち、ペン型入力デバイスPの属性データを格納している。
【0097】このようなメインコンピュータ25及び小型携帯端末26は、図2に示した各コンピュータ20の内部構成と同様の構成を有している。
【0098】このような構成のデータ伝送システム1aの小型携帯端末26とメインコンピュータ25の間のデータの伝送方法について説明する。
【0099】まず、ユーザは、ペン型入力デバイスPをディスプレイ26D上のオブジェクトに接触させ一定時間内に持ち上げる。つまり、ペン型入力デバイスPによりオブジェクトをピックする。ペン型入力デバイスPによりオブジェクトをピックすると、小型携帯端末26は、このピックしたペン型入力デバイスPのID番号を認識する。小型携帯端末26は、このペン型入力デバイスPのID番号を認識すると、このID番号に対応したネットワーク10上に設けられた管理テーブル10aにオブジェクトに対応する管理情報を登録する。この管理情報は、すなわち、ペン型入力デバイスPの属性データであり、この属性データは、ペン型入力デバイスPの属性に応じた情報である。このペン型入力デバイスの属性とは、上述したように、描画入力する際の線種,図形,線色等である。この状態において、ペン型入力デバイスPは、属性が変更されている状態となっている。
【0100】続いて、ペン型入力デバイスPをメインコンピュータ26の壁面型ディスプレイ25Dに接触させる。すなわち、壁面型ディスプレイ25Dにペン型入力デバイスPをドロップする。ペン型入力デバイスPをドロップするとメインコンピュータ25は、このドロップされたペン型入力デバイスPのID番号を認識する。メインコンピュータ25は、このペン型入力デバイスPのID番号を認識すると、ネットワーク10上に設けられた管理テーブル10aを参照し、このID番号に対応した管理情報が登録されているかどうかを確認する。このペン型入力デバイスPのID番号に対応する管理情報が、ネットワーク10上の管理テーブル10aに登録されていると判断する場合は、この管理情報、すなわち、ペン型入力デバイスPの属性データを取得する。そして、メインコンピュータ25は、必要であれば、この管理情報に示されているコンピュータ、この場合は、小型携帯端末26に対して、属性データの伝送要求をネットワーク10を介して行う。
【0101】メインコンピュータ26は、この属性データに基づきペン型入力デバイスPの属性を変更し、ペン型入力デバイスPの操作に応じた描画等の表示を行う。
【0102】以上のように、データ伝送システム1aでは、ネットワーク10上に管理テーブル10aを設け、小型携帯端末26で選択された属性データをこの管理テーブルに登録する。そして、ホストコンピュータ25が操作入力されたペン型入力デバイスPの属性データをこの管理テーブルから取得して、ペン型入力デバイスPの属性を変更することにより、ペン型入力デバイスPによる自然且つ簡便な操作を実現することができる。さらに、この小型携帯端末26を用いてペン型入力デバイスPの属性を変更することにより、ツールパレットTを用いて属性を変更しなければならない操作上のわずらわしさを解消することができる。」

なお、上記の【0100】及び【0101】において、「メインコンピュータ26」は、「メインコンピュータ25」の誤記と認められる。

「【図15】



イ 引用発明
前記アより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 複数のコンピュータ間でのデータの伝送を自然且つ簡便に行うユーザインターフェースを用いたデータ送信/受信/送受信装置、データ伝送システム、データ送信/受信/送受信/伝送方法、及び、データ送信/受信/送受信プログラム格納媒体であって、
データ伝送システム1は、ネットワーク10上に複数のコンピュータが接続され、各コンピュータ20のディスプレイDは、出力データの表示をするとともに、ペン型入力デバイスPにより直接入力操作がされる入出力一体型のものであり、
各ペン型入力デバイスP(P1?Pn)は、各コンピュータ20のディスプレイDに対して共通に用いられ、各ペン型入力デバイスP(P1?Pn)は、それぞれに異なるID番号が設定され、ペン型入力デバイスPを用いて各コンピュータ20のディスプレイDに対し入力操作を行うと、このID番号を当該コンピュータ20が認識し、
各コンピュータ20は、中央処理装置(CPU)51と、メモリ52と、データ格納媒体53と、画面表示部54と、入力されたペン型入力デバイスPの入力位置を認識するペン位置認識部55と、ペン状態認識部56と、入力されたペン型入力デバイスPのID番号を認識するペンID認識部57と、ネットワーク接続部58とを備え、
CPU51は、ペン状態認識部56がペン型入力デバイスPとディスプレイDが接触していると認識する場合は、このときにペン型入力デバイスPがアイコンを選択していればこのアイコンの配色を変えて表示し、このようなペン状態の認識は、例えば、手書き文字入力した際に文字の濃淡等を表せるペン型入力デバイスや、ペン型入力デバイスの入力圧力や距離等が検出できるタブレット等により実現でき、
ペンID認識部57は、ペン型入力デバイスPのID番号を、ペン型入力デバイスPに固有のIDを定期的に発信する赤外線ダイオードLEDや無線発信機、ワイヤレスタグ等を搭載し、ディスプレイD側に受信機RCV等を設けることにより認識することができ、
上述したデータ伝送システム1を応用した他の実施の形態のデータ伝送システム1aは、壁面型ディスプレイ25Dを有するメインコンピュータ25と、ディスプレイ26Dを有しユーザが片手で携帯できる程度の小型携帯端末26とがネットワーク10を介して接続され、ネットワーク10上には、管理テーブル10aが設けられ、
壁面型ディスプレイ25Dには、ペン型入力デバイスPの属性を変更するツールパレットTが表示され、ツールパレットTは、例えば描画入力をする際の線種,図形,線色等のオブジェクトが示されており、ユーザは、ペン型入力デバイスPによりこのツールパレットTのオブジェクトをピックし、ペン型入力デバイスPの属性を変更して、壁面型ディスプレイ25Dに対して描画入力等を行い、
小型携帯端末26のディスプレイ26Dには、上述したツールパレットTと同様のオブジェクトが表示され、小型携帯端末26は、このオブジェクトに応じたデータを格納しており、すなわち、ペン型入力デバイスPの属性データを格納しており、
メインコンピュータ25及び小型携帯端末26は、各コンピュータ20の内部構成と同様の構成を有し、
まず、ユーザは、ペン型入力デバイスPをディスプレイ26D上のオブジェクトに接触させ一定時間内に持ち上げると、小型携帯端末26は、このピックしたペン型入力デバイスPのID番号を認識し、このID番号に対応したネットワーク10上に設けられた管理テーブル10aにオブジェクトに対応する管理情報を登録し、この管理情報は、すなわち、ペン型入力デバイスPの属性データであり、この属性データは、ペン型入力デバイスPの属性に応じた情報であり、このペン型入力デバイスの属性とは、描画入力する際の線種,図形,線色等であり、この状態において、ペン型入力デバイスPは、属性が変更されている状態となっており、
続いて、ペン型入力デバイスPをメインコンピュータ25の壁面型ディスプレイ25Dに接触させると、メインコンピュータ25は、このドロップされたペン型入力デバイスPのID番号を認識し、ネットワーク10上に設けられた管理テーブル10aを参照し、このID番号に対応した管理情報が登録されているかどうかを確認し、登録されていると判断する場合は、この管理情報、すなわち、ペン型入力デバイスPの属性データを取得し、そして、メインコンピュータ25は、必要であれば、この管理情報に示されているコンピュータ、この場合は、小型携帯端末26に対して、属性データの伝送要求をネットワーク10を介して行い、
メインコンピュータ25は、この属性データに基づきペン型入力デバイスPの属性を変更し、ペン型入力デバイスPの操作に応じた描画等の表示を行い、
以上のように、データ伝送システム1aでは、ツールパレットTを用いて属性を変更しなければならない操作上のわずらわしさを解消することができる、
データ送信/受信/送受信装置、データ伝送システム、データ送信/受信/送受信/伝送方法、及び、データ送信/受信/送受信プログラム格納媒体。」

(2)引用文献2ないし6について
ア 引用文献2について
引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【要約】
【課題】ネットワークを介して多地点で接続して、互いの手書きや画面を共有する情報共有装置において、書込み送信側の心理的な負担を軽減する。
【解決手段】書き込み送信側は、ユーザによる座標入力があると、ストロークを生成して該ストロークを非定常状態で表示すると共に、座標情報を書き込み受信側へ送信する。書き込み受信側は、書き込み送信側から送信された座標情報をもとにストロークを生成して表示し、表示成功の応答情報を書き込み送信側へ返送する。書き込み送信側は、書き込み受信側から応答情報を受信すると、ストローク表示を非定常状態から定常状態に変化させる。」

イ 引用文献3について
引用文献3には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0007】
【発明が解決しようとする課題】ここで、従来、パケットでデータを転送する場合、ACK(Acknowledge)/NACK(Not Acknowledge)によりデータの授受を確認することが一般的である。このACK/NACKは、1パケットを送信する度に受信側から確認応答を返し、パケットの内容を正しく受け取れるとACKを、そうでなければNACKを返すものである。…(後略)」

ウ 引用文献4について
引用文献4には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
「【0025】
なお、図中(例えば図1)の矢印は、データや制御などの流れについて主要な方向を補助的に示すもので、他の流れを否定するものでも、方向の限定を意味するものでもない。例えばデータをある方向に取得する場合、必要に応じ事前のデータリクエストや事後のアクノリッジ(ACK:確認応答)が逆方向に送信される。また、記憶手段以外の各手段は、以下に説明するような情報処理の機能・作用(例えば図3)を実現・実行する処理手段であるが、これらは説明のために整理した機能単位であり、実際のハードウェア要素やソフトウェアモジュールとの一致は問わない。」

エ 引用文献5について
引用文献5には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0002】
【従来の技術】
従来、ネットワークを介して接続された複数のコンピュータ間で共有されるとともにそれぞれのコンピュータに保存される共有ファイルが、いずれかのコンピュータで最新版に更新された際、それ以外のコンピュータに保存されている共有ファイルを同期して該最新版に更新するためには、各コンピュータに保存されている共有ファイルが属性として持つ最終更新日時をコンピュータ間で比較することにより、最終更新日時のより新しいものを最新版と判断し、該最新版を各コンピュータにコピーして、該同期を実現していた。代表的な技術に、UNIX(登録商標)のコマンドであるrsyncが挙げられる。」

オ 引用文献6について
引用文献6には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0004】
また、特許文献1及び特許文献2には、ネットワークで結合された複数の情報機器間でファイルを共有するシステムの例が開示されている。これらのシステムにおいて、ネットワークにつながるそれぞれの情報機器は、共有するファイルを、それぞれの情報機器が別個に保管し、それらを常に同期化するようにしている。ここで、ファイルの同期化とは、異なる情報機器が別個に保管するファイルの内容を一致させることをいう。そのため、これらのシステムにおいては、同一ファイルが複数の情報機器で保管されるとともに、それらに差異が生じることはない。従って、ある情報機器においてあるファイルが破損しても、他の情報機器に保管されているファイルによって、破損したファイルを再生することができる。すなわち、これらの文献に示されているファイル共有方法は、信頼性が非常に高い方法である。
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示されているシステムにおいては、ファイルが作成/変更/削除されるたびにファイルの同期化が行われる。そのため、同期化に伴うファイル転送によってネットワークの負荷が重くなってしまう。そこで、特許文献1の例では、ファイルそのものを転送するのではなく、ファイルの変更に係る部分のみ、いわゆる差分ファイルを転送するようにして、ネットワーク負荷の軽減を図っている。
…(中略)…
【0006】
ネットワークで結合された複数の情報機器間でファイルを一元的に管理するもうひとつの例としては、サーバを利用する方法がある。ここでいうサーバはいわば共有ファイルの管理を専門に行うコンピュータである。すなわち、ネットワーク内で共有しようとするファイルはすべてサーバが保管する。従って、特許文献1や特許文献2に記載の例とは異なり、同一のファイルを各情報機器間で別個に保管する必要も、ファイルを同期化する必要もない。そのため、システム全体としての記憶装置の記憶容量が大きくなることはなく、また、ファイル同期化に伴
うネットワークの負荷も生じない。」

第6 当審拒絶理由通知について
1 理由1(明確性要件)について
(1)本件補正により、本願請求項1、5及び6の記載において、「更新された自機属性情報の複製データに前記他の情報処理装置の他機属性情報を同期させるよう、前記更新された自機属性情報の複製データを前記他の情報処理装置に送信する」と補正されたことにより、同期元(情報処理装置の自機属性情報)と同期先(他の情報処理装置の他機属性情報)の関係が明確となった。
(2)本件補正により、本願請求項1の記載において、「前記送信手段が、前記情報処理装置と前記他の情報処理装置と別の情報処理装置とがこの順にデイジーチェーン接続されている場合、前記受信手段が前記応答情報を受信した後、前記他の情報処理装置に前記別の情報処理装置宛の複製データを送信することにより、前記複製データは、前記他の情報処理装置を通過して、前記別の情報処理装置に送信される」と補正されたことにより、「情報処理装置」が「別の情報処理装置」に「複製データ」をどのように「送信」するのかが明確となった。
(3)本件補正前の請求項5は、本件補正により削除された。

以上により、当審拒絶理由の理由1は解消した。

2 理由2(進歩性)について
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「小型携帯端末26」及び「メインコンピュータ25」はそれぞれ、本願発明1の「情報処理装置」及び「他の情報処理装置」に相当する。

(イ)引用発明は、「壁面型ディスプレイ25Dを有するメインコンピュータ25と、ディスプレイ26Dを有しユーザが片手で携帯できる程度の小型携帯端末26とがネットワーク10を介して接続され」との構成を備えることから、「メインコンピュータ25」と「小型携帯端末26」とはネットワーク10を介して通信可能に接続されているといえる。
よって、前記(ア)を参酌すると、引用発明は、本願発明1の「他の情報処理装置と通信可能に接続された情報処理装置」との構成を備える。

(ウ)引用発明は、「各コンピュータ20は、中央処理装置(CPU)51と、メモリ52と、データ格納媒体53と、画面表示部54と、入力されたペン型入力デバイスPの入力位置を認識するペン位置認識部55と、ペン状態認識部56と、入力されたペン型入力デバイスPのID番号を認識するペンID認識部57と、ネットワーク接続部58とを備え」及び「メインコンピュータ25及び小型携帯端末26は、各コンピュータ20の内部構成と同様の構成を有し」との構成を備えるから、「小型携帯端末26」は、「各コンピュータ20」が備える「入力されたペン型入力デバイスPの入力位置を認識するペン位置認識部55」を備えるものである。
ここで、「ペン型入力デバイスP」による入力は、「タッチ入力」といい得るものであり、そうすると、「入力されたペン型入力デバイスPの入力位置を認識する」ことは、「タッチ入力を検出する」ことに等しい。
よって、引用発明において、「小型携帯端末26」が備える「ペン位置認識部55」は、本願発明1の「タッチ入力を検出する入力検出手段」に相当する。

(エ)引用発明は、「CPU51は、ペン状態認識部56がペン型入力デバイスPとディスプレイDが接触していると認識する場合は、このときにペン型入力デバイスPがアイコンを選択していればこのアイコンの配色を変えて表示し、このようなペン状態の認識は、例えば、手書き文字入力した際に文字の濃淡等を表せるペン型入力デバイスや、ペン型入力デバイスの入力圧力や距離等が検出できるタブレット等により実現でき」との構成を備えるから、前記(ウ)を参酌すると、「小型携帯端末26」の「中央処理装置(CPU)51」は、「ペン型入力デバイスP」による「タッチ入力に基づいて画像を表示する」機能(アイコンの配色を変えて表示する機能、手書き文字(画像)を表示する機能)を備えている。
よって、引用発明において、「小型携帯端末26」の「中央処理装置(CPU)51」は、本願発明1の「前記タッチ入力に基づき画像を表示する表示手段」に相当する。

(オ)引用発明は、「壁面型ディスプレイ25Dには、ペン型入力デバイスPの属性を変更するツールパレットTが表示され、ツールパレットTは、例えば描画入力をする際の線種,図形,線色等のオブジェクトが示されており、ユーザは、ペン型入力デバイスPによりこのツールパレットTのオブジェクトをピックし、ペン型入力デバイスPの属性を変更して、壁面型ディスプレイ25Dに対して描画入力等を行い、小型携帯端末26のディスプレイ26Dには、上述したツールパレットTと同様のオブジェクトが表示され、小型携帯端末26は、このオブジェクトに応じたデータを格納しており、すなわち、ペン型入力デバイスPの属性データを格納しており」(以下、「構成1」という。)、「まず、ユーザは、ペン型入力デバイスPをディスプレイ26D上のオブジェクトに接触させ一定時間内に持ち上げると、小型携帯端末26は、このピックしたペン型入力デバイスPのID番号を認識し、このID番号に対応したネットワーク10上に設けられた管理テーブル10aにオブジェクトに対応する管理情報を登録し、この管理情報は、すなわち、ペン型入力デバイスPの属性データであり、この属性データは、ペン型入力デバイスPの属性に応じた情報であり、このペン型入力デバイスの属性とは、描画入力する際の線種,図形,線色等であり、この状態において、ペン型入力デバイスPは、属性が変更されている状態となっており」(以下、「構成2」という。)、「続いて、ペン型入力デバイスPをメインコンピュータ25の壁面型ディスプレイ25Dに接触させると、メインコンピュータ25は、このドロップされたペン型入力デバイスPのID番号を認識し、ネットワーク10上に設けられた管理テーブル10aを参照し、このID番号に対応した管理情報が登録されているかどうかを確認し、登録されていると判断する場合は、この管理情報、すなわち、ペン型入力デバイスPの属性データを取得し、そして、メインコンピュータ25は、必要であれば、この管理情報に示されているコンピュータ、この場合は、小型携帯端末26に対して、属性データの伝送要求をネットワーク10を介して行い」(以下、「構成3」という。)及び「メインコンピュータ25は、この属性データに基づきペン型入力デバイスPの属性を変更し、ペン型入力デバイスPの操作に応じた描画等の表示を行い」(以下、「構成4」という。)との構成を備える。
「ペン型入力デバイスP」の「属性データ」は、構成2からすると、ネットワーク上の「管理テーブル10a」上で管理され、また、構成1、構成3及び構成4からすると、「小型携帯端末26」及び「メインコンピュータ25」のそれぞれにおいても格納されており、「小型携帯端末26」及び「メインコンピュータ25」は、自機に格納されている「ペン型入力デバイスP」の「属性データ」(線種,図形,線色等)に基づいて描画入力するものと認められる。
よって、構成1は、ユーザが、「ペン型入力デバイスPをディスプレイ26D上のオブジェクトに接触させ一定時間内に持ち上げる」と、「オブジェクト」に対応する「管理情報」として「ペン型入力デバイスP」の「属性データ」を自機に格納し、格納された「属性データ」に基づいて「ペン型入力デバイスP」による描画入力とその描画入力に応じた画像(例えば、手書き文字等)を表示するものといえる。
ここで、「小型携帯端末26」に格納される「属性データ」は、「自機属性情報」といい得るものであり、また、ここでの「格納」は「設定」と同義である。
したがって、引用発明における「小型携帯端末26」は、本願発明1の「前記画像の表示において設定された自機属性情報に基づき前記画像を表示する画像表示処理手段」に相当する手段を備える。

(カ)前記(オ)において、「ペン型入力デバイスPをディスプレイ26D上のオブジェクトに接触させ一定時間内に持ち上げる」と、「オブジェクト」に対応する「管理情報」として「ペン型入力デバイスP」の「属性データ」(線種,図形,線色等)を、「自機」に格納する場合に、すでに「属性データ」が格納済みである場合は、格納済みの「属性データ」を「更新」することになることは明らかである。
よって、「属性データ」が格納済みである場合に「オブジェクト」を「持ち上げる」ことは、「自機属性情報の更新入力」といい得るものである。
したがって、引用発明における「小型携帯端末26」は、本願発明1の「前記情報処理装置において前記自機属性情報の更新入力を受け付けた場合、前記自機属性情報を更新する属性情報更新手段」に相当する手段を備える。

(キ)上記(ア)及び(オ)を参酌すると、引用発明において、「メインコンピュータ25」に格納される「ペン型入力デバイスP」の「属性データ」は、本願発明1の「他の情報処理装置の他機属性情報」に相当する。
また、上記(オ)の構成3によれば、引用発明においては、「ペン型入力デバイスPをメインコンピュータ25の壁面型ディスプレイ25Dに接触させる」と「ペン型入力デバイスPの属性データを取得し、そして、メインコンピュータ25は、必要であれば、この管理情報に示されているコンピュータ、この場合は、小型携帯端末26に対して、属性データの伝送要求をネットワーク10を介して行い」との構成を備えることから、前記(カ)を参酌すると、「小型携帯端末26」は、「小型携帯端末26」において更新された「ペン型入力デバイスP」の「属性データ」(自機属性情報)の複製データを「メインコンピュータ25」に送信する送信手段を備えるものといえる。
よって、引用発明と、本願発明1の「前記自機属性情報を更新することに応じて、更新された自機属性情報の複製データに前記他の情報処理装置の他機属性情報を同期させるよう、前記更新された自機属性情報の複製データを前記他の情報処理装置に送信する送信手段」とは、「前記更新された自機属性情報の複製データを前記他の情報処理装置に送信する送信手段」との構成を備える点において共通する。

イ 一致点、相違点
したがって、本願発明1と引用発明とは、以下の点において一致ないし相違するといえる。

[一致点]
「 他の情報処理装置と通信可能に接続された情報処理装置であって、
タッチ入力を検出する入力検出手段と、
前記タッチ入力に基づき画像を表示する表示手段と、
前記画像の表示において設定された自機属性情報に基づき前記画像を表示する画像表示処理手段と、
前記情報処理装置において前記自機属性情報の更新入力を受け付けた場合、前記自機属性情報を更新する属性情報更新手段と、
前記更新された自機属性情報の複製データを前記他の情報処理装置に送信する送信手段と、を備える、
ことを特徴とする情報処理装置。」

[相違点]
<相違点1>
「前記更新された自機属性情報の複製データを前記他の情報処理装置に送信する送信手段」に係る「送信」が、本願発明1は、「前記自機属性情報を更新することに応じて、更新された自機属性情報の複製データに前記他の情報処理装置の他機属性情報を同期させるよう」になされるものであるのに対し、引用発明は、「必要であれば、この管理情報に示されているコンピュータ、この場合は、小型携帯端末26に対して、属性データの伝送要求をネットワーク10を介して行い」との構成を備えるものの、「伝送要求」が、「前記自機属性情報を更新することに応じて」、かつ、「更新された自機属性情報の複製データに前記他の情報処理装置の他機属性情報を同期させるよう」なされるものではない点。

<相違点2>
本願発明1は、「前記他の情報処理装置から応答情報を受信する受信手段」を備えるのに対し、引用発明においては、当該構成を備えることについて具体的に特定していない点。

<相違点3>
前記<相違点1>及び<相違点2>に関連して、本願発明1は、「前記送信手段が、前記情報処理装置と前記他の情報処理装置と別の情報処理装置とがこの順にデイジーチェーン接続されている場合、前記受信手段が前記応答情報を受信した後、前記他の情報処理装置に前記別の情報処理装置宛の複製データを送信することにより、前記複製データは、前記他の情報処理装置を通過して、前記別の情報処理装置に送信される」との構成を備えるのに対し、引用発明は、当該構成について具体的に特定していない点。

ウ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。
引用文献2ないし4に記載されているように、情報処理装置が、他の情報処理装置にデータを送信した場合に、他の情報処理装置から応答情報を受信することは、本願出願時の周知技術であり、また、引用文献5及び6に記載されているように、複数の情報処理装置がネットワークを介して接続されたシステムにおいて、各情報処理装置が共有ファイルを保存している場合に、一の情報処理装置において共有ファイルが更新されると他の情報処理装置が保存している共有ファイルを同期して更新することは、本願出願時の周知技術であるといえる。
しかしながら、引用文献1ないし6のいずれにも、複数の情報処理装置が「デイジーチェーン接続されている場合」について記載されておらず、また、引用発明における「データ伝送システム1は、ネットワーク10上に複数のコンピュータが接続され」との接続形態を、「デイジーチェーン接続」に変更する動機付けが、引用文献1には存在しない。また、引用文献2ないし6には、「前記受信手段が前記応答情報を受信した後、前記他の情報処理装置に前記別の情報処理装置宛の複製データを送信することにより、前記複製データは、前記他の情報処理装置を通過して、前記別の情報処理装置に送信される」との構成に対応する事項は記載されていないから、仮に、引用発明の接続形態を「デイジーチェーン接続」に変更し得たとして、そのような変更後の引用発明に、さらに上記各周知技術を適用しても、「前記情報処理装置と前記他の情報処理装置と別の情報処理装置とがこの順にデイジーチェーン接続されている場合」に、「前記受信手段が前記応答情報を受信した後、前記他の情報処理装置に前記別の情報処理装置宛の複製データを送信することにより、前記複製データは、前記他の情報処理装置を通過して、前記別の情報処理装置に送信される」との構成には直ちには至らないし、このような構成を採用することが当業者にとって自明ないし容易であるともいえない。
また、相違点3に係る本願発明1の構成は、本願出願時における周知技術ともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし6に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4も、上記相違点3に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし6に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本願発明5及び6について
本願発明5及び6は、本願発明とカテゴリ表現が異なるものであって、上記相違点3に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし6に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

以上により、当審拒絶理由の理由2は解消した。

第7 原査定についての判断
本件補正により、本件発明1ないし6は、上記相違点3に係る本願発明1の構成又はこれに対応する構成を備えるものとなった。上記相違点3に係る本願発明1の構成は、原査定における引用文献AないしD(当審拒絶理由における引用文献1ないし4)には記載されておらず、本願出願時の周知技術でもないので、本願発明1ないし6は、当業者であっても、原査定における引用文献AないしDに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-04-06 
出願番号 特願2018-127484(P2018-127484)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 富澤 哲生
林 毅
発明の名称 情報処理装置、情報処理システム、情報処理プログラムおよび情報処理方法  
代理人 井上 知哉  
代理人 加藤 浩二  

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