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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1373251 |
審判番号 | 不服2020-134 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-01-07 |
確定日 | 2021-05-11 |
事件の表示 | 特願2015-115486「車載入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月 5日出願公開、特開2017- 4136、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年6月8日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 9月11日付け:拒絶理由通知書 平成30年10月30日 :意見書、手続補正書の提出 平成31年 3月19日付け:拒絶理由通知書(最後の拒絶理由) 令和 元年 5月21日 :意見書の提出 令和 元年10月 3日付け:拒絶査定 令和 2年 1月 7日 :拒絶査定不服審判の請求 令和 2年12月 1日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書 令和 3年 1月13日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、令和3年1月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である(下線は補正箇所を示す。)。 「【請求項1】 下部電極と、前記下部電極に対向するように設けられた上部電極と、前記下部電極と前記上部電極との間に設けられたスペーサ部材と、を有したタッチパネルを備え、前記下部電極と前記上部電極との間の静電容量を検知可能な車載入力装置であって、 前記タッチパネルは、車両のステアリングホイールに搭載されるものであり、 前記上部電極の上側には複数の操作領域を有する操作面が設けられていて、 前記スペーサ部材には、平面視で前記操作領域と重なる部分に開口部が形成されており、前記操作面と前記上部電極との間、又は前記操作面の上面に、操作者と前記上部電極との間に静電容量が形成されることを抑制する層であって前記上部電極と別個の上側抑制層が設けられ、 前記下部電極の下側に、前記タッチパネルの下方側において、操作者と前記下部電極との間に静電容量が形成されることを抑制する層であって前記下部電極と別個の下側抑制層が設けられており、 前記操作領域が操作者によって押圧された時にのみ、前記下部電極と前記上部電極との間の距離の変化に基づいて入力操作を検知する、 ことを特徴とする車載入力装置。 【請求項2】 前記操作領域が操作者によって押圧され、前記下部電極と前記上部電極とが接触した時に入力操作を検知する第1検知手段と、 前記操作領域が操作者によって押圧された時に、前記下部電極と前記上部電極との間の距離の変化に伴う静電容量の変化に基づいて入力操作を検知する第2検知手段と、を用いることが可能である、 ことを特徴とする請求項1に記載の車載入力装置。 【請求項3】 前記第1検知手段によって前記操作領域のスイッチ操作を検知し、前記第2検知手段によって前記操作領域のスライド操作を検知する、 ことを特徴とする請求項2に記載の車載入力装置。 【請求項4】 前記操作面に第1操作領域と第2操作領域とを設けると共に、前記スペーサ部材に、前記第1操作領域に対応した第1開口部と前記第2操作領域に対応した第2開口部とを設け、 前記第1操作領域が操作された後の所定時間内に前記第2操作領域が操作された時に、フリック操作されたと判定する、 ことを特徴とする請求項3に記載の車載入力装置。 【請求項5】 前記操作面に複数の第3操作領域を設けると共に、前記スペーサ部材に、複数の前記第3操作領域それぞれに対応した第3開口部を設け、 複数の前記第3開口部それぞれに弾性部材を充填すると共に、複数の前記第3操作領域それぞれを、前記操作面から上方向に突出する凸部とした、 ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車載入力装置。 【請求項6】 前記下部電極と前記上部電極との対向する面の少なくとも1つの面に、前記開口部へ突出する導電性を有する接点部材を設けた、 ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の車載入力装置。」 第3 原査定の概要 原査定(令和元年10月3日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 この出願の請求項1?6に係る発明は、引用文献1?6に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1 特開2014-160448号公報 2 特開2014-179062号公報 3 特開2010-79791号公報 4 特開2013-149010号公報 5 特開2014-229014号公報 6 国際公開第2013/080448号 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1 (1)引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。引用文献2についても同様。)。 ア 「【0032】 <第1の実施形態> 図1は本技術の第1の実施形態に係る入力装置1の概略断面図、図2は入力装置1の平面図、図3は入力装置1の要部の拡大断面図である。以下、本実施形態の入力装置1の構成について説明する。なお図中、X軸及びY軸は相互に直交する方向(入力装置1の面内方向)を示し、Z軸はX軸及びY軸に直交する方向(入力装置1の厚み方向)を示している。 【0033】 [入力装置] 入力装置1は、操作部材10と、電極基板20と、支持体30とを有する。本実施形態の入力装置は、例えばコンピュータのキーボード装置として構成される。 【0034】 操作部材10は、複数のキー領域10aを有する。 電極基板20は、複数の第1の電極線210と、複数の第1の電極線210に対向して配置され上記複数の第1の電極線210と交差する複数の第2の電極線220とを有し、複数のキー領域10a各々との距離の変化を静電的に検出することが可能に構成される。支持体30は、複数の構造体320と、第1の空間部331と、第2の空間部332とを有する。複数の構造体320は、電極基板20と操作部材10との間を接続する。第1の空間部331は、複数の構造体320の間に個々のキー領域10aに対応して形成される。第2の空間部332は、複数の構造体320の間に所定の複数のキー領域10aに共通に形成される。 【0035】 (操作部材) 本実施形態において操作部材10は、フレキシブルシート11と、基材12との積層構造を有する。」 イ 「【0038】 基材12の裏面にはCu(銅)、Al(アルミニウム)等の金属箔あるいはメッシュ材で構成された導体層14が設けられている。導体層14は、複数のキー領域10aに対する入力操作を受けて電極基板20側へ部分的に変形可能に構成される。導体層の厚みは特に限定されず、例えば数10nm?数10μmである。導体層14は、例えばグランド電位に接続される。 【0039】 基材12及び導体層14は、樹脂シートの表面にあらかじめ金属箔が貼り付けられた複合シート等で構成されてもよい。導体層14は、基材12の表面に形成された蒸着膜やスパッタ膜等で構成されてもよいし、基材12の表面に印刷された導電ペースト等の塗膜であってもよい。 【0040】 各キー領域10aは、ユーザによって押圧操作されるキートップに相当し、キーの種類に応じた形状、大きさを有する。各キー領域10aには、適宜のキー表示が施されていてもよく、当該キー表示は、キーの種類を表示するものであってもよいし、個々のキーの位置(輪郭)を表示するものであってもよいし、これら両方を表示するものであってもよい。表示には、適宜の印刷手法、例えば、スクリーン印刷やフレキソ印刷、グラビア印刷等が採用可能である。 【0041】 操作部材10は、全体として平坦なシート状に形成される例に限られず、例えばキー領域10aが所定の凹凸面で形成されていてもよい。図4Aから図4Cに、キー領域10aの形態が異なる操作部材の構成をそれぞれ示す。各図において上図は要部平面図、下図はその断面図である。なお理解容易のため、各図においてシートの凸面(最上面)をハッチングで表している。 ウ 「【0046】 (電極基板) 電極基板20は、第1の電極線210を有する第1の配線基板21と、第2の電極線220を有する第2の配線基板22との積層体で構成される。図6は第1の配線基板21の平面図、図7は第2の配線基板22の平面図である。」 エ 「【0054】 図3に示すように電極基板20は、第1の配線基板21と第2の配線基板22とを相互に接合する接着層23を有する。接着層23は、電気絶縁性を有し、例えば、接着剤の硬化物、粘着テープ等の粘着材料等で構成される。 【0055】 本実施形態では、第1の電極線210と第2の電極線220とが相互に対向するように第1の配線基板21及び第2の配線基板22が相互に接合される。これに限られず、第1の電極線210と第2の電極線220とが第1の基材211、第2の基材221あるいはこれらの双方を挟んで相互に対向するように第1の配線基板21及び第2の配線基板22が相互に接合されてもよい。また本実施形態では、第1の配線基板21が第2の配線基板22よりも上層となるように積層されるが、これに限られず第2の配線基板22を第1の配線基板21よりも上層となるように積層されてもよい。 【0056】 電極基板20は、第1の電極線210と第2の電極線220との交差領域に各々形成された複数の検出部20sを有する。検出部20sは、キー領域10aとの相対距離に応じて容量が可変に構成される。検出部20sは、第1の電極線210と、第1の電極線210と対向する第2の電極線220と、第1及び第2の電極線210,220の間に設けられた誘電層(接着層23)とを有する容量素子で構成される。検出部20sの初期容量は、例えば、第1及び第2の電極線210,220間の対向面積、第1及び第2の電極線210,220間の対向距離、接着層23の誘電率によって設定される。 【0057】 電極基板20は、複数のキー領域10a各々との距離の変化を静電的に検出することが可能に構成される。本実施形態において検出部20sは、主として、第1の電極線210の電極群21wと第2の電極線220の電極群22wとの交差領域に形成される。上述のように電極群21w,22wは、各キー領域10aの直下にそれぞれ配置されており、したがって各々の検出部20sは各キー領域10aの直下に配置される。検出部20sは、押圧操作されたキー領域10aと共に電極基板20側へ接近する導体層14との静電的な結合による検出部20s自身の容量変化を通じて、当該キー領域10aの接近を検出する。電極基板20は、検出部20sの容量変化量に関する情報を含み、入力操作されたキー領域10aを特定するための信号を制御部50へ出力する。 【0058】 電極基板20は、シールド層24をさらに有する。シールド層24は金属箔や金属メッシュ体、導電ペーストの塗膜等で構成され、第2の配線基板22の裏面に設けられる。シールド層24は、入力装置1の外部から容量素子20sへ入射する電磁ノイズを遮蔽する機能を有する。シールド層24は、典型的には、グランド電位に接続される。 【0059】 (支持体) 支持体30は、操作部材10と電極基板20との間に配置される。支持体30は、複数の構造体320と、第1の空間部331を形成するための第1の凹部321と、第2の空間部332を形成するための第2の凹部322と、枠体323とを有する。」 オ 「【図3】 」 (2)上記(1)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「操作部材10と、電極基板20と、支持体30とを有する入力装置1であって、 操作部材10は、複数のキー領域10aを有し、電極基板20は、複数の第1の電極線210と、複数の第1の電極線210に対向して配置され上記複数の第1の電極線210と交差する複数の第2の電極線220とを有し、複数のキー領域10a各々との距離の変化を静電的に検出することが可能に構成され、支持体30は第1の空間部331を有し、第1の空間部331は、個々のキー領域10aに対応して形成され、 操作部材10は、フレキシブルシート11と、基材12との積層構造を有し、 基材12の裏面には導体層14が設けられており、導体層14は、例えばグランド電位に接続され、 各キー領域10aは、ユーザによって押圧操作されるキートップに相当し、 操作部材10は、全体として平坦なシート状に形成され、 電極基板20は、第1の電極線210を有する第1の配線基板21と、第2の電極線220を有する第2の配線基板22との積層体で構成され、第1の配線基板21と第2の配線基板22とを相互に接合する接着層23を有し、 第1の電極線210と第2の電極線220とが相互に対向するように第1の配線基板21及び第2の配線基板22が相互に接合され、 電極基板20は、第1の電極線210と第2の電極線220との交差領域に各々形成された複数の検出部20sを有し、検出部20sは、第1の電極線210と、第1の電極線210と対向する第2の電極線220と、第1及び第2の電極線210,220の間に設けられた誘電層(接着層23)とを有する容量素子で構成され、 各々の検出部20sは各キー領域10aの直下に配置され、検出部20sは、押圧操作されたキー領域10aと共に電極基板20側へ接近する導体層14との静電的な結合による検出部20s自身の容量変化を通じて、当該キー領域10aの接近を検出し、電極基板20は、検出部20sの容量変化量に関する情報を含み、入力操作されたキー領域10aを特定するための信号を制御部50へ出力し、 電極基板20は、シールド層24をさらに有し、シールド層24は第2の配線基板22の裏面に設けられ、入力装置1の外部から容量素子20sへ入射する電磁ノイズを遮蔽する機能を有し、グランド電位に接続され、 支持体30は、操作部材10と電極基板20との間に配置される、 入力装置1。」 2 引用文献2 (2)引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0034】 <第1の実施形態> 図1は本技術の第1の実施形態に係る入力装置100の概略断面図、図2は入力装置100の分解斜視図、図3は入力装置100の要部の概略断面図、図4は入力装置100を用いた電子機器70のブロック図である。以下、本実施形態の入力装置100の構成について説明する。なお図中、X軸及びY軸は相互に直交する方向(入力装置100の面内方向)を示し、Z軸はX軸及びY軸に直交する方向(入力装置100の厚み方向又は上下方向)を示している。 【0035】 [入力装置] 入力装置100は、ユーザによる操作を受け付けるフレキシブルディスプレイ(表示部)11と、ユーザの操作を検出するセンサ装置1とを有する。入力装置100は、例えばフレキシブルなタッチパネルディスプレイとして構成され、後述する電子機器70に組み込まれる。センサ装置1及びフレキシブルディスプレイ11は、Z軸に垂直な方向に延びる平板状である。」 イ 【0038】 センサ装置1は、金属膜(第1の導体層又は第2の導体層)12と、導体層(第2の導体層又は第1の導体層)50と、電極基板20と、第1の支持体30と、第2の支持体40を有する。センサ装置1は、フレキシブルディスプレイ11の第2の面120側に配置されている。 【0039】 金属膜12は、変形可能なシート状に構成される。導体層50は、金属膜12に対向して配置される。電極基板20は、複数の第1の電極線210と、複数の第1の電極線210に対向して配置され複数の第1の電極線210と交差する複数の第2の電極線220とを有し、金属膜12と導体層50との間に変形可能に配置され、金属膜12及び導体層50各々との距離の変化を静電的に検出することが可能である。第1の支持体30は、金属膜12と電極基板20との間を接続する複数の第1の構造体310と、複数の第1の構造体310の間に形成された第1の空間部330とを有する。第2の支持体40は、隣り合う複数の第1の構造体310間にそれぞれ配置され導体層50と電極基板20との間を接続する複数の第2の構造体410と、複数の第2の構造体410の間に形成された第2の空間部430とを有する。 【0040】 本実施形態に係るセンサ装置1(入力装置100)は、フレキシブルディスプレイ11の第1の面110上での入力操作による金属膜12及び電極基板20と、導体層50及び電極基板20との間の距離の変化を静電的に検出することで、当該入力操作を検出する。当該入力操作は、第1の面110上を意識的な押圧(プッシュ)操作に限られず、接触(タッチ)操作であってもよい。すなわち、入力装置100は、後述するように、一般的なタッチ操作により付加される微小な押圧力(例えば約数十g程度)であっても検出可能であるため、通常のタッチセンサと同様のタッチ操作が可能に構成される。 【0041】 入力装置100は、制御部60を有し、当該制御部60は、演算部61及び信号生成部62を含む。演算部61は、検出部20sの静電容量の変化に基づいて、ユーザによる操作を検出する。信号生成部62は、演算部61による検出結果に基づいて操作信号を生成する。」 ウ 「【0068】 図8Aは、検出部20sの構成を説明するための模式的な断面図である。検出部20sは、第1の電極線210と、第1の電極線210とZ軸方向に対向する第2の電極線220と、第1及び第2の電極線210,220の間に設けられた誘電層とを有する相互キャパシタンス方式の容量素子で構成される。なお図8A,Bでは、各第1及び第2の電極線210,220がそれぞれ単一の電極線で構成されているとして説明する。」 エ 「【0072】 (制御部) 制御部60は、電極基板20に電気的に接続される。より詳細には、制御部60は、複数の第1及び第2の電極線210,220各々に端子を介してそれぞれ接続される。制御部60は、複数の検出部20sの出力に基づいて第1の面110に対する入力操作に関する情報を生成することが可能な信号処理回路を構成する。制御部60は、所定の周期で複数の検出部20s各々をスキャンしながら各検出部20sの容量変化量を取得し、その容量変化量に基づいて入力操作に関する情報を生成する。 」 オ 「【図3】 」 (2)上記(1)から、引用文献2には次の事項が記載されていると認められる。 「ユーザによる操作を受け付けるフレキシブルディスプレイ(表示部)11と、ユーザの操作を検出するセンサ装置1とを有する入力装置100であって、 センサ装置1は、金属膜(第1の導体層又は第2の導体層)12と、導体層(第2の導体層又は第1の導体層)50と、電極基板20と、第1の支持体30と、第2の支持体40を有し、 金属膜12は、変形可能なシート状に構成され、導体層50は、金属膜12に対向して配置される。電極基板20は、複数の第1の電極線210と、複数の第1の電極線210に対向して配置され複数の第1の電極線210と交差する複数の第2の電極線220とを有し、金属膜12と導体層50との間に変形可能に配置され、金属膜12及び導体層50各々との距離の変化を静電的に検出することが可能であり、 入力装置100は、制御部60を有し、当該制御部60は、演算部61及び信号生成部62を含み、演算部61は、検出部20sの静電容量の変化に基づいて、ユーザによる操作を検出し、 検出部20sは、第1の電極線210と、第1の電極線210とZ軸方向に対向する第2の電極線220と、第1及び第2の電極線210,220の間に設けられた誘電層とを有する相互キャパシタンス方式の容量素子で構成され、 制御部60は、複数の第1及び第2の電極線210,220各々に端子を介してそれぞれ接続され、複数の検出部20sの出力に基づいて第1の面110に対する入力操作に関する情報を生成することが可能な信号処理回路を構成する、 入力装置100。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (ア)引用発明の「入力装置1」が有する「電極基板20」は、「複数の第1の電極線210と、複数の第1の電極線210に対向して配置され上記複数の第1の電極線210と交差する複数の第2の電極線220とを有し」、かつ、「第1の電極線210を有する第1の配線基板21と、第2の電極線220を有する第2の配線基板22との積層体で構成され、第1の配線基板21と第2の配線基板22とを相互に接合する接着層23を有」するものである。 そうすると、「第1の電極線210」は、「第2の電極線220」に「対向するように設けられた」ものであり、「接着層23」は、「第2の電極線220」と「第1の電極線210」との「間に設けられた」ものである。 そして、引用発明の「第2の電極線220」、「第1の電極線210」、「接着層23」は、それぞれ、本願発明1の「下部電極」、「上部電極」、「スペーサ部材」に相当する。 (イ)引用発明の「入力装置1」が有する「操作部材10」は、「複数のキー領域10aを有し」、「フレキシブルシート11と、基材12との積層構造を有し」、「全体として平坦なシート状に形成され」るものであり、また、「各キー領域10aは、ユーザによって押圧操作される」から、「平坦なシート状」、すなわちパネル状のものであり、かつ「キー領域10a」に対する「ユーザ」による「押圧操作」、すなわちタッチがなされるものであって、上記(ア)の「電極基板20」とともに「タッチパネル」を構成しているといえる。 また、「フレキシブルシート11」は、ユーザのタッチがなされる面、すなわち「操作面」を構成しているといえ、当該面は「複数のキー領域10a」を有しているといえる。ここで、引用文献1の図3(上記第4の1(1)オ、以下同様。)を参照すると、「フレキシブルシート11」は、「第1の電極線210」の「上側」に設けられているといえる。 そして、引用発明の「キー領域10a」は本願発明1の「操作領域」に相当し、引用発明の「入力装置1」と本願発明1の「車載入力装置」とは、「入力装置」という点で共通している。 (ウ)引用発明の「電極基板20」は、「第1の電極線210と第2の電極線220との交差領域に各々形成された複数の検出部20sを有し」、かつ、「検出部20sの容量変化量に関する情報を含み、入力操作されたキー領域10aを特定するための信号を制御部50へ出力」するものであるから、「第1の電極線210」と「第2の電極線220」との間の静電容量を「検知可能」であるといえる。 なお、引用発明の「導体層14」は、その導体から「容量変化量に関する情報」が引き出されるものではないことから、本願発明1の「上部電極」に相当するとはいえない。 (エ)上記(ア)?(ウ)から、本願発明1の 「下部電極と、前記下部電極に対向するように設けられた上部電極と、前記下部電極と前記上部電極との間に設けられたスペーサ部材と、を有したタッチパネルを備え、前記下部電極と前記上部電極との間の静電容量を検知可能な車載入力装置であって、 前記タッチパネルは、車両のステアリングホイールに搭載されるものであり、 前記上部電極の上側には複数の操作領域を有する操作面が設けられていて」 との構成に関して、引用発明と本願発明1とは、 「下部電極と、前記下部電極に対向するように設けられた上部電極と、前記下部電極と前記上部電極との間に設けられたスペーサ部材と、を有したタッチパネルを備え、前記下部電極と前記上部電極との間の静電容量を検知可能な入力装置であって、 前記上部電極の上側には複数の操作領域を有する操作面が設けられて」いる という点で共通している。 (オ)引用発明は、「操作部材10」が有する「積層構造」のうちの「基材12」の「裏面に」、「例えばグランド電位に接続され」た「導体層14」が設けられ、「支持体30」が「操作部材10と電極基板20との間に配置され」るものである。また、ここで、「操作部材10」は「フレキシブルシート11」を有し、「電極基板20」は「第1の電極線210」を有している。 これらの点について引用文献1の図3も参照すると、「導体層14」は、「フレキシブルシート11」と「第1の電極線210」との間に設けられており、「第1の電極線210」と「別個」の層であるといえる。 そして、当該「導体層14」と本願発明1の「上側抑制層」とは、「層」である点で共通している。 以上の点について上記(ア)、(イ)を踏まえると、本願発明1の「前記スペーサ部材には、平面視で前記操作領域と重なる部分に開口部が形成されており、前記操作面と前記上部電極との間、又は前記操作面の上面に、操作者と前記上部電極との間に静電容量が形成されることを抑制する層であって前記上部電極と別個の上側抑制層が設けられ、」との構成に関して、択一的記載である「前記操作面と前記上部電極との間、又は前記操作面の上面」のうちの「前記操作面と前記上部電極との間」との対比で、引用発明と本願発明1とは、「前記操作面と前記上部電極との間に、前記上部電極と別個の層が設けられ」ているという点で共通している。 (カ)引用発明は、「電極基板20」を「構成」する「積層体」に「第2の電極線220を有する第2の配線基板22」が含まれ、また、「電極基板20は、シールド層24をさらに有し、シールド層24は第2の配線基板22の裏面に設けられ」るものである。 これらの点について引用文献1の図3も参照すると、「シールド層24」は、「第2の電極線220」の「下側」に設けられており、「第2の電極線220」と「別個」の層であるといえる。 そして、当該「シールド層24」と本願発明1の「下側抑制層」とは、「層」である点で共通している。 以上の点について上記(ア)を踏まえると、本願発明1の「前記下部電極の下側に、前記タッチパネルの下方側において、操作者と前記下部電極との間に静電容量が形成されることを抑制する層であって前記下部電極と別個の下側抑制層が設けられており、」との構成に関して、引用発明と本願発明1とは、「前記下部電極の下側に、前記下部電極と別個の層が設けられ」ているという点で共通している。 (キ)引用発明の「各々の検出部20sは各キー領域10aの直下に配置され、検出部20sは、押圧操作されたキー領域10aと共に電極基板20側へ接近する導体層14との静電的な結合による検出部20s自身の容量変化を通じて、当該キー領域10aの接近を検出し、電極基板20は、検出部20sの容量変化量に関する情報を含み、入力操作されたキー領域10aを特定するための信号を制御部50へ出力し」との構成は、「キー領域10a」が「押圧操作され」た時にのみ、「検出部20s」への「当該キー領域10aの接近を検出」するというものであるといえる。 また、「押圧操作」は「操作者」による操作であることが明らかであり、引用発明の「入力操作されたキー領域10aを特定する」ことは、本願発明1の「入力操作を検知する」ことに相当する。 以上の点について上記(イ)を踏まえると、本願発明1の「前記操作領域が操作者によって押圧された時にのみ、前記下部電極と前記上部電極との間の距離の変化に基づいて入力操作を検知する」との構成に関して、引用発明と本願発明1とは、「前記操作領域が操作者によって押圧された時にのみ、入力操作を検知する」という点で共通している。 イ したがって、本願発明1と引用発明とは以下の点で一致する。 (一致点) 「下部電極と、前記下部電極に対向するように設けられた上部電極と、前記下部電極と前記上部電極との間に設けられたスペーサ部材と、を有したタッチパネルを備え、前記下部電極と前記上部電極との間の静電容量を検知可能な入力装置であって、 前記上部電極の上側には複数の操作領域を有する操作面が設けられていて、 前記操作面と前記上部電極との間に、前記上部電極と別個の層が設けられ、 前記下部電極の下側に、前記下部電極と別個の層が設けられ、 前記操作領域が操作者によって押圧された時にのみ、入力操作を検知する 入力装置。」 ウ また、本願発明1と引用発明とは以下の点で相違する。 (相違点1) 本願発明1では、「入力装置」が「車載入力装置」であり、また、「前記タッチパネル」が「車両のステアリングホイールに搭載されるもの」であるのに対し、引用発明は、「入力装置1」が「車載入力装置」であるとは特定されず、また、「操作部材10」等は「タッチパネル」を構成しているといえるものの、「車両のステアリングホイールに搭載されるもの」とは特定されない点。 (相違点2) 本願発明1では、「前記スペーサ部材には、平面視で前記操作領域と重なる部分に開口部が形成されて」いるのに対し、引用発明の「接着層23」には、「開口部が形成されて」いない点。 (相違点3) 本願発明1では、「前記操作面と前記上部電極との間」(「又は前記操作面の上面」)に設けられる「前記上部電極と別個の」「層」が、「操作者と前記上部電極との間に静電容量が形成されることを抑制する層であって」、「上側抑制層」であるのに対し、引用発明の「導体層14」は、「操作者と前記上部電極との間に静電容量が形成されることを抑制する」との機能を有するものとは特定されず、そのため、「上側抑制層」と呼称されるとも特定されない点。 (相違点4) 本願発明1では、「前記下部電極の下側」に設けられる「前記下部電極と別個の」「層」が、「前記タッチパネルの下方側において、操作者と前記下部電極との間に静電容量が形成されることを抑制するであって」、「下側抑制層」であるのに対し、引用発明の「シールド層24」は、「前記タッチパネルの下方側において、操作者と前記下部電極との間に静電容量が形成されることを抑制する」との機能を有するものとは特定されず、そのため、「下側抑制層」と呼称されるとも特定されない点。 (相違点5) 本願発明1は、「入力操作を検知する」ことを、「前記下部電極と前記上部電極との間の距離の変化に基づいて」行うのに対し、引用発明は、「入力操作されたキー領域10aを特定する」することを、「第1の電極線210と第2の電極線220との交差領域に各々形成された複数の検出部20s」が、「押圧操作されたキー領域10aと共に電極基板20側へ接近する導体層14との静電的な結合による検出部20s自身の容量変化を通じて、当該キー領域10aの接近を検出」することにより行うものであって、「第1の電極線210」と「第2の電極線220」との間の距離が変化するものではない点。 (2)判断 事案に鑑みて、相違点2以降について先に検討する。本願発明1において、「入力操作を検知する」ことを「前記下部電極と前記上部電極との間の距離の変化に基づいて」行うのは、「前記下部電極と前記上部電極との間の静電容量を検知可能」であって、「前記下部電極と前記上部電極との間に設けられたスペーサ部材」に、「開口部が形成されて」いるためであると解され、また、「操作者と前記上部電極との間に静電容量が形成されることを抑制する層であって前記上部電極と別個の上側抑制層が設けられ」、かつ「前記タッチパネルの下方側において、操作者と前記下部電極との間に静電容量が形成されることを抑制する層であって前記下部電極と別個の下側抑制層が設けられ」ているのは、「前記下部電極と前記上部電極との間の静電容量を検知可能」としているためであると解されることから、相違点2?5は相互に密接に関連しているので、それらについてまとめて検討する。 相違点2,5に係る、下部電極と上部電極との間に設けられたスペーサ部材に、平面視で操作領域と重なる部分に開口部を形成し、前記下部電極と前記上部電極との間の距離の変化に基づいて入力操作を検知するとの構成は、原査定で引用された引用文献2?6のいずれにも記載されていない。 引用文献2には、上記第4の2(2)の事項が記載されていることが認められるが、「第1の電極線210」と「第2の電極線220」との間の距離が変化するものではなく、上記構成とは異なるものであって、上記構成については記載されていない。 したがって、引用発明に引用文献2?6のいずれかの記載事項を適用しても、相違点2,5に係る構成には至らない。 また、仮に上記構成が本願出願日前において公知のものであって、引用発明に適用することについて当業者が容易に想到し得たとしても、例えば、引用発明の「導体層14」を「操作者と前記上部電極との間に静電容量が形成されることを抑制する層」であるものとしたり、同「シールド層24」を「操作者と前記下部電極との間に静電容量が形成されることを抑制する層」であるものとしたりするといった、相違点3,4に係る構成を得ることについてまで、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。 よって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1?6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2?6について 本願発明2?6は、いずれも本願発明1を減縮した発明である。 したがって、本願発明2?6も本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1?6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 原査定についての判断 本願発明1?6は、いずれも相違点2?5に係る発明特定事項を有するものであるから、上記第5のとおり、引用文献1?6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。 第7 当審拒絶理由について 1 当審が令和2年12月1日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。 この出願は、特許請求の範囲の記載が次の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 請求項1に「前記下側電極」、「前記上側電極」と記載されているが、それらの記載よりも前に「下側電極」、「上側電極」との記載はないから、ぞれぞれの「前記」が何を指しているのか不明である。(請求項2にも「前記下側電極」、「前記上側電極」との記載があり、同様である。) 請求項4に「前記第1操作領域が前記第1検知手段として操作された後の所定時間内に前記第2操作領域が前記第2検知手段として操作された時」と記載されているが、請求項2、請求項3のそれぞれの記載と整合していない。 2 これに対し、令和3年1月13日に提出の手続補正書により、請求項1の「前記下側電極」、「前記上側電極」との記載がぞれぞれ「前記下部電極」と「前記上部電極」との記載に補正され、請求項2においても同様に補正されたことから、それぞれの「前記」は、それらよりも前に記載されている「下部電極」又は「上部電極」を指していることが明確となった。 また、同じく、請求項4の記載が「前記第1操作領域が操作された後の所定時間内に前記第2操作領域が操作された時」との記載に補正されて、補正前に「前記第1操作領域」、「前記第2操作領域」のそれぞれの機能を特定するものとして記載されていた「前記第1検知手段として」及び「前記第2検知手段として」が削除された。これにより、請求項4が引用する請求項2において、「操作領域」と「第1検知手段」とは別の構成であるものとして記載され、同じく請求項3において、「操作領域」と「第2検知手段」とは別の構成であるものとして記載されていることとの不整合が解消した。 よって、当審拒絶理由は解消した。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明1?6は、当業者が引用文献1?6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-04-13 |
出願番号 | 特願2015-115486(P2015-115486) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 菅原 浩二 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
林 毅 富澤 哲生 |
発明の名称 | 車載入力装置 |
代理人 | 野▲崎▼ 照夫 |
代理人 | 大窪 克之 |