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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A45D
管理番号 1373261
審判番号 不服2020-8765  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-24 
確定日 2021-05-17 
事件の表示 特願2016-543057「転写メイクアップ方法および関連するデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成27年7月2日国際公開、WO2015/097618、平成29年1月19日国内公表、特表2017-501815、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)12月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年12月27日、(FR)フランス共和国)を国際出願日とする出願であって、平成30年12月10日付け(発送日:平成30年12月17日)で拒絶理由通知がされ、平成31年3月14日に意見書及び手続補正書が提出された後、令和元年8月20日付け(発送日:令和元年8月26日)で再度、拒絶理由通知がされ、令和元年11月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年4月22日付け(発送日:令和2年4月27日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して令和2年6月24日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともにその審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

(進歩性)本願の請求項1ないし14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1ないし14
・引用文献等1及び2

<引用文献等一覧>
1.特開平11-169231号公報
2.特開昭62-180000号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は、令和2年6月24日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
少なくとも1つの化粧用インクを収容するプリンタ(500)であって、基材(2)によって画定され、人体のケラチン物質上に接触によって化粧用インク(4)の塗膜を転写することが意図された平坦でない転写面(3)上に、前記化粧用インクの塗膜を形成することを可能にするように設計され、
前記プリンタ(500)は、ローラ(200)またはパッドホルダ(350)を除去可能に収容するレセプタクルを備え、前記転写面(3)は、少なくとも部分的に、前記ローラ(200)の、または前記パッドホルダ(350)がもつパッドそれぞれの外表面であり、
前記ローラは、印刷時に、前記プリンタ(500)に除去可能に収容されるような保持システム(250)を備え、
前記ローラは、インクを受け入れるように意図された、前記転写面(3)を画定する変形可能な基材(2)を支持する、プリンタ。
【請求項2】
前記ローラ(200)および/または前記パッドホルダ(350)を回転させるための手段を備える、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
外部から前記転写面(3)にアクセスして、前記基材(2)が前記プリンタ内に存在する状態で前記化粧用インクの、人体のケラチン物質への転写を可能にする窓を備える、請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
印刷幅が、0.2から40cmである、請求項1から3のいずれか一項に記載のプリンタ。
【請求項5】
化粧用インクのいくつかのカートリッジ(21)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のプリンタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のプリンタで使用するように意図されたローラ(200)であって、前記転写面(3)が前記ローラ(200)の外表面を少なくとも部分的に形成する、ローラ(200)。
【請求項7】
前記基材(2)が、摩擦もしくは結合によって、または締結手段によって、前記ローラ(200)に締結される、請求項6に記載のローラ(200)。
【請求項8】
前記ローラ(200)は中空である、請求項6または7に記載のローラ(200)。
【請求項9】
前記基材(2)をもつ少なくとも1つのパッド(300)をもつように設計された、請求項1から5のいずれか一項に記載のプリンタで使用することが意図されたパッドホルダ(350)。
【請求項10】
請求項6から8のいずれか一項に記載のいくつかのローラ(200)を備えるアセンブリ(30)であって、前記ローラ(200)が、前記基材(2)の厚さ(e)によって異なり、前記基材(2)が前記ローラ(200)上の適所にあるときに測定して同じ直径(D)を有する、アセンブリ。
【請求項11】
化粧用インクまたはトナーを収容したケースを備え、前記ケースが、請求項1から5のいずれか一項に定義されるようなプリンタの内部に受け入れられるように設計されたことを特徴とする、化粧用インクのカートリッジ(21)。
【請求項12】
人体のケラチン物質(P)にメイクアップを施す転写デバイス(1)を製造する方法であって、前記人体のケラチン物質との接触によって化粧用インクを転写するように意図された平坦でない転写面(3)上に、請求項1から5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのプリンタを使用して、化粧用インク(4)の塗膜を印刷するステップを含む、方法。
【請求項13】
人体のケラチン物質と接触することが意図され、化粧用インク(4)を受け入れるように構成された平坦でない転写面(3)を有する基材(2)を備えるメイクアップデバイス(1)を使用して、前記ケラチン物質のある範囲(P)にメイクアップを施す方法であって、
請求項1から5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのプリンタを使用して、化粧用インク(4)の塗膜を前記転写面(3)上に印刷するステップと、
前記化粧用インク(4)の塗膜を、メイクアップを施される前記範囲(P)と接触させるステップと
を含む、方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-169231号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「化粧方法及びその方法に用いる化粧装置並びに化粧転写膜」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下、同様。)。

(1)「【0013】次いで、このようにして得られた化粧画像を画像処理手段2から印刷手段3に出力する。これに応じて印刷手段3は、前記化粧画像に基づいた化粧パターンを、ファンデーション、眉墨、アイシャドー、口紅などの化粧剤を印剤として、薄くて柔軟な基材に印刷して化粧転写膜Mを作成する。
【0014】このようにして化粧転写膜Mが得られたら、これを被化粧者が自分の顔に押し当てて軽く擦るなどする。これにより化粧転写膜Mの化粧剤が被化粧者の顔に転写される。その後、化粧転写膜Mを剥がし、顔にのっている化粧剤を軽く延ばすなどして最終的な仕上げをして完了となる。尚、以上の説明においては、個人の好みに合わせて化粧を行う場合に重点をおいたが、上述の技術を、同一の化粧転写膜を一定量生産しこれを販売するような大規模な利用に供することももちろん可能である。」

したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「化粧画像に基づいた化粧パターンを、ファンデーション、眉墨、アイシャドー、口紅などの化粧剤を印剤として薄くて柔軟な基材に印刷して、被化粧者の顔に転写される化粧転写膜Mを作成する印刷手段3。」

2 引用文献2について
本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-180000号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「 本発明の転写方法には転写シート1および転写用具を用いる。
前記転写シート1は、第1図に示す如く文字図形等フィルム状転写パターン1の裏面に粘着層3を形成して、これをシリコンペーパ或いは表面にシリコン処理された紙、合成樹脂フィルム等のベース4の表面に剥離可能に軟止着している。該転写シートの製作は主に2つの方法を採用する。その1つは、ベース4の表面へ、文字図形等転写パターンと同一形状の粘着層3、この粘着層3の表面に必要に応じてメジューム層、所謂合成樹脂層を介して所定着色インクによる転写パターン2を公知の印刷法により処理して行う。他の1つは、合成樹脂シートの表面に着色インクによる転写パターン、このパターン上に合成樹脂層、樹脂層の表面に粘着層を積層形成し、粘着層に対し前述と同様な剥離性ベースを軟止着した後、合成樹脂シートをベース上の転写パターンから剥離することにより、第1図と同様な転写シートが得られる。
転写用具5は、第2図に示す如く、片面に粘着層6を有す可撓性テープ材51、或いは第3図に示す如く、ハンドル52先端に押圧板53を設けてその表面に粘着層6を形成し、または第4図に示す如く、ハンドル52先端に回転ロール54を設けてその周面に粘着層6を形成したもの等、被接着面の形状に応じて選択使用する。
然して、転写に際しては、転写用具5の粘着層6をベース4上の転写パターン2に押圧して接着し(第5図a)、転写パターン2をベース4から剥離して転写用具5に移した後(第5図b)、該転写パターン2の粘着層3を被転写面7に接合して押圧する(第5図c)。このとき、転写パターン2における粘着層3の粘着力を転写用具5の粘着層6より大となしているため、転写用具5は、転写パターン2を被転写面7に残してこれより離れる(第5図d)。その後、被接着面7上の転写パターン2の全面を加圧することにより、転写作業は完了する。」(第2頁右上欄第10行ないし右下欄第9行)

したがって、引用文献2には次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

<引用文献2記載事項>
「公知の印刷法により所定着色インクが処理された転写パターン2の裏面に粘着層3を形成して、ベース4の表面に剥離可能に軟止着した転写シート1を製作し、転写に際しては、転写用具5の粘着層6をベース4上の転写パターン2に押圧して接着し、転写パターン2をベース4から剥離して転写用具5に移した後、転写パターン2の粘着層3を被転写面7に接合して押圧する転写作業であって、被接着面7の形状に応じて、転写用具5は、ハンドル52先端に押圧板53を設けてその表面に粘着層6を形成したもの、または、ハンドル52先端に回転ロール54を設けてその周面に粘着層6を形成したものを選択使用すること。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
第1に、引用発明における「ファンデーション、眉墨、アイシャドー、口紅などの化粧剤」は、「印刷手段3」の「印剤」として用いられるものであるから、「印刷手段3」内に収容されているといえる。
また、引用発明における「印刷手段3」は、「化粧画像に基づいた化粧パターン」を、「ファンデーション、眉墨、アイシャドー、口紅などの化粧剤」を用いて印刷するものである。
そうすると、引用発明における「ファンデーション、眉墨、アイシャドー、口紅などの化粧剤」は、本願発明1における「少なくとも1つの化粧用インク」に相当し、引用発明における「印刷手段3」は、本願発明1における「プリンタ(500)」に相当する。
第2に、本願発明1における「人体のケラチン物質」は、本願明細書の段落【0012】を参酌すると皮膚を指すことが定義されているから、引用発明における「被化粧者の顔」は、本願発明1における「人体のケラチン物質」に相当する。
また、引用発明における「薄くて柔軟な基材」は、「化粧剤」が印刷されて作成された「化粧転写膜M」を「被化粧者の顔に転写」するためのものである。
そうすると、引用発明における「薄くて柔軟な基材」、「化粧転写膜M」は、それぞれ、本願発明1における「基材(2)」、「化粧用インクの塗膜」に相当する。
さらに、引用発明における「薄くて柔軟な基材」の印刷面と、本願発明1における「基材(2)によって画定され、人体のケラチン物質上に接触によって化粧用インク(4)の塗膜を転写することが意図された平坦でない転写面(3)」とは、「基材によって画定され、人体のケラチン物質上に接触によって化粧用インクの塗膜を転写することが意図された転写面」という限りにおいて一致している。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「少なくとも1つの化粧用インクを収容するプリンタであって、基材によって画定され、人体のケラチン物質上に接触によって化粧用インクの塗膜を転写することが意図された転写面上に、化粧用インクの塗膜を形成することを可能にするように設計されたプリンタ。」

<相違点1>
「基材によって画定され、人体のケラチン物質上に接触によって化粧用インクの塗膜を転写することが意図された転写面」の構成に関して、本願発明1は「平坦でない」のに対して、引用発明は平坦でないのかどうか不明である点。

<相違点2>
本願発明1は「前記プリンタ(500)は、ローラ(200)またはパッドホルダ(350)を除去可能に収容するレセプタクルを備え、前記転写面(3)は、少なくとも部分的に、前記ローラ(200)の、または前記パッドホルダ(350)がもつパッドそれぞれの外表面であり、前記ローラは、印刷時に、前記プリンタ(500)に除去可能に収容されるような保持システム(250)を備え、前記ローラは、インクを受け入れるように意図された、前記転写面(3)を画定する変形可能な基材(2)を支持する」のに対して、引用発明はそのような構成を備えていない点。

事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用文献2記載事項には、「転写用具5」として、「ハンドル52先端に回転ロール54を設けてその周面に粘着層6を形成したもの」が開示されているが、転写(本願発明1における「化粧用インクの塗膜を形成」に対応。)に際しては、「転写用具5」の「粘着層6」を、既に製作済みの「転写シート1」における「ベース4上の転写パターン2に押圧して接着し、転写パターン2をベース4から剥離して転写用具5に移した後、転写パターン2の粘着層3を被転写面7に接合して押圧する」ものである。
つまり、引用文献2記載事項における「転写用具5」の「回転ロール54」は、その周面に直接印刷してインクの塗膜を形成するものではない。
そのため、引用発明に引用文献2記載事項を適用して、引用発明における「印刷手段3」に、引用文献2記載事項における「転写用具5」の「回転ロール54」を収容して、その周面に直接印刷する構成に至る動機付けは存在しない。
そして、他に、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項が本願優先日前に公知であったというべき証拠や根拠もない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
なお、前置報告書で引用された引用文献2ないし9についても検討したが、いずれの引用文献にも上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項が記載されていないので、本願発明1は、当業者であっても引用発明並びに引用文献2記載事項及び前置報告書で引用された引用文献2ないし9に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし13について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし13は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく直接的又は間接的に引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし13は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2ないし13は、本願発明1について述べたものと同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 小括
そうすると、本願発明1ないし13は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-04-22 
出願番号 特願2016-543057(P2016-543057)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A45D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 遠藤 邦喜  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 鈴木 充
高島 壮基
発明の名称 転写メイクアップ方法および関連するデバイス  
代理人 堀江 健太郎  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
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