• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1373351
審判番号 不服2020-236  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-08 
確定日 2021-05-11 
事件の表示 特願2018- 73963「情報処理装置の制御方法、制御プログラム及び情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月 5日出願公開、特開2018-106764、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年(平成25年)12月4日(優先権主張 平成24年12月26日)を国際出願日とする出願である特願2014-554273号とし、その一部を平成28年9月12日に新たな特許出願である特願2016-177487号とし、その一部を平成28年12月26日に新たな特許出願である特願2016-250952号とし、その一部を平成30年4月6日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年12月 5日付け:拒絶理由通知書
平成31年 2月 8日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 4月19日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 元年 6月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月 1日付け:令和元年6月24日の手続補正についての
補正の却下の決定、拒絶査定(原査定)
令和 2年 1月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年12月15日付け:拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由」
という。)
令和 3年 2月15日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和元年10月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、以下の引用文献に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項1-3,5,7,11-14
・引用文献等 A-B

・請求項4
・引用文献等 A-C

・請求項6,8
・引用文献等 A-D

・請求項9,10
・引用文献等 A-E

引用文献等一覧
A.国際公開第2010/071187号
B.特開2011-28345号公報
C.米国特許出願公開第2011/0157046号明細書
D.特開2010-49629号公報
E.特開2000-267777号公報


第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、以下の引用文献に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項1-13
・引用文献等 1-2

引用文献等一覧
1.特表2008-508600号公報
2.特開2012-234569号公報

第4 本願発明

本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、令和3年2月15日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-11は以下のとおりの発明である(補正箇所に下線を付した)。

「 【請求項1】
画像を表示する表示ユニットと、上記表示ユニットと一体にして設けられたタッチパネルと、コンピュータとを有する情報処理装置が実行する制御方法であって、
上記コンピュータが、
アプリケーションプログラムの実行時に、マルチタッチでなく、上記タッチパネル上の一つの位置へのタッチ操作を受け付けたことに応答して、上記タッチ操作を受け付けた位置に応じた位置にリング状の枠画像を上記アプリケーションプログラムの画像に重ねて上記表示ユニットに表示するとともに、上記枠画像の中に上記情報処理装置の機能を示す画像であって、上記アプリケーションプログラムの画像とは異なる画像を表示し、
上記リング状の枠画像に沿った方向に連続するタッチ操作を受け付けて、上記情報処理装置の機能の設定を行う、情報処理装置の制御方法。
【請求項2】
上記タッチ操作を受け付けた位置を中心として上記枠画像を表示する
請求項1に記載の情報処理装置の制御方法。
【請求項3】
上記連続するタッチ操作の操作方向及び操作量に応じて、上記機能の設定を行う、請求項1又は2に記載の情報処理装置の制御方法。
【請求項4】
上記枠画像に対する、上記枠画像の径方向の連続するタッチ操作を受け付け、
上記連続するタッチ操作の方向及び操作の量に応じて、上記枠画像の大きさを変更する、請求項1?3のいずれか1項に記載の情報処理装置の制御方法。
【請求項5】
上記枠画像に対する、上記枠画像の円弧方向に沿わない連続するタッチ操作を受け付け、
上記連続するタッチ操作の方向及び操作の量に応じて、上記枠画像の表示位置を変更する、請求項1?4の何れか1項に記載の情報処理装置の制御方法。
【請求項6】
上記リング状の枠画像に加えて径方向に突出した操作レバーの画像を表示させ、
上記操作レバーの画像に対する上記リング状の枠画像に沿った連続するタッチ操作を受け付ける、請求項1?5の何れか1項に記載の情報処理装置の制御方法。
【請求項7】
上記連続するタッチ操作の操作方向に応じて音量を増大又は減少させる、請求項1?6の何れか1項に記載の情報処理装置の制御方法。
【請求項8】
上記連続するタッチ操作の操作方向に応じて上記表示ユニットの明るさを増大又は減少させる、請求項1?7の何れか1項に記載の情報処理装置の制御方法。
【請求項9】
上記枠画像の中に、複数の候補が表示されたリストを表示し、
上記連続するタッチ操作の操作方向に応じて上記複数の候補のうち一つを選択する、請求項1?8の何れか1項に記載の情報処理装置の制御方法。
【請求項10】
画像を表示する表示ユニットと、上記表示ユニットと一体にして設けられたタッチパネルと、コンピュータとを有する情報処理装置が実行する制御プログラムであって、
上記コンピュータに、
アプリケーションプログラムの実行時に、マルチタッチでなく、上記タッチパネル上の一つの位置へのタッチ操作を受け付けたことに応答して、上記タッチ操作を受け付けた位置に応じた位置にリング状の枠画像を上記アプリケーションプログラムの画像に重ねて上記表示ユニットに表示するとともに、上記枠画像の中に上記情報処理装置の機能を示す画像であって、上記アプリケーションプログラムの画像とは異なる画像を表示し、
上記リング状の枠画像に沿った方向に連続するタッチ操作を受け付けて、上記情報処理装置の機能の設定を行うことを実行させる、制御プログラム。
【請求項11】
画像を表示する表示ユニットと、上記表示ユニットと一体にして設けられたタッチパネルと、コンピュータとを備えた情報処理装置であって、
上記コンピュータは、
アプリケーションプログラムの実行時に、マルチタッチでなく、上記タッチパネル上の一つの位置へのタッチ操作を受け付けたことに応答して、上記タッチ操作を受け付けた位置に応じた位置にリング状の枠画像を上記表示ユニットに表示するとともに、上記枠画像の中に上記情報処理装置の機能を示す画像であって、上記アプリケーションプログラムの画像とは異なる画像を表示し、
上記リング状の枠画像に沿った方向に連続するタッチ操作を受け付けて、上記情報処理装置の機能の設定を行う、情報処理装置。」

第5 引用文献、引用発明等

1.当審拒絶理由に引用された引用文献
(1)引用文献1、引用発明について
(ア)当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審により付与した。以下、同様。)

「【請求項51】
タッチ・センシティブ・デバイスを介して浮動制御を開始するためのコンピュータによって実施される方法であって、
前記タッチ・センシティブ・デバイス上でオブジェクトの存在を検出するステップと、
前記オブジェクトを認識するステップと、
前記認識されたオブジェクトに基づき、前記タッチ・スクリーン上で前記オブジェクトの付近にユーザ・インタフェース要素を生成するステップとを含む方法。」

「【0103】
現在のアプリケーションには、例えば、オペレーティング・システム(例えば、Mac OS)、ワード・プロセッシング・プログラム、スプレッドシート・プログラム、描画編集プログラム、イメージ編集プログラム、ゲーム・プログラム、写真管理プログラム(例えば、iPhoto)、音楽管理プログラム(例えば、iTune)、ビデオ編集プログラム(例えば、iMovie)、映画管理プログラム(例えば、QuickTime)、音楽編集プログラム(例えば、GarageBand)、インターネット・インタフェース・プログラム、および/または類似のプログラムが含まれる。
【0104】
アプリケーションの現在の状態またはモードは、アプリケーションの活性の部分(例えば、現在のウインドウ、またはウインドウ内の現在のウインドウ)に対応する。例えば、音楽管理プログラムの活性の部分は、音楽制御モード、再生リスト選択モード、メニュー・モード、および/または類似するモードに対応する。さらに、写真管理プログラムの活性の部分は、写真ブラウズ・モードまたは写真編集モードに対応する。さらに、インターネット・インタフェース・プログラムの活性の部分は、Webモードまたは電子メール・モードに対応する。
【0105】
他方、タッチ特性は、前述した諸実施形態の多くで説明されるとおり、例えば、タッチ位置、タッチID、タッチの数などに対応する。
【0106】
アプリケーションに関して、異なるアプリケーションは異なるUIモードを示す。例えば、ワード・プロセッシング・アプリケーションまたはスプレッドシート・アプリケーションは、データ入力モードを示すのに対して、音楽管理プログラムは、制御モードまたはスクロール・モードを示す。アプリケーションの現在の状態に関して、アプリケーションの異なるモードは、異なるUIモードを示す。例えば、音楽管理プログラムでは、メニュー・ウインドウが、1つのUIモードを示すことが可能であるのに対して、再生リスト・ウインドウは別のUIモードを示す。」

「【0111】
GUI要素は、様々な形でディスプレイされる。例えば、GUI要素は、現在、ディスプレイされているグラフィック・イメージの上に位置付けられることも、現在、ディスプレイされているグラフィック・イメージに取って代わる(例えば、最小化する、移動するなど)ことも可能である。一部のケースでは、GUI要素は、GUI要素の下に配置された現在のグラフィック・イメージを見ることができる(したがって、最小化することや移動することを無くす)ように、半透明にされる。これは、スクロール・ホイールを使用して、スクロール・ホイールの下に配置されたリストを走査する際に、役立つ。さらに、GUI要素は、タッチの付近に配置されても、何らかの所定の場所に配置されてもよい。所定の場所は、アーゴノミクスに、すなわち、ユーザに最良の場所がどこであるかに基づくことが可能である。
【0112】
以上に加えて、GUI要素は、成長すること、フェード・インすること、ポップ・アップすることなどの、従来の効果を使用してディスプレイされたり、一部のケースでは、脈打ったり、振動することなどさえ可能である。効果が、ポップアップすることである場合、GUI要素は即時に見えるようにされる。効果が、図29A?図29Dに示されるとおり、成長することである場合、小さいGUI要素820A(スクロール・ホイール)が、最初にディスプレイされ、その後、様々なサイズ820B、820Cを介して絶えず大きくなり、ついには、所望されるサイズ820Dに達する。成長の速度はタッチの圧力に基づくことが可能である。例えば、タッチ圧力が低い場合、GUI要素は、ゆっくりと成長することが可能であり、タッチ圧力が高い場合、GUI要素はより急速に成長することが可能である。加えて、GUI要素の最終サイズは、タッチの長さに基づくことが可能である。例えば、GUI要素は、タッチがもはや検出されなくなると、成長するのを止める。代替的に、速度とサイズは、例えば、コントロール・パネルを介して、ユーザ調整可能であってもよい。効果が、図30A?図30Dに示されるとおり、フェージングである場合、GUI要素822は、無から様々なレベルの歪みまたは透明度822A?822Cを介して、最終の完全なイメージ822Dまで、ゆっくりと見えるようにされる。フェージングは、成長と同様に制御されることが可能である。例えば、フェードの速度やレベルは、タッチの圧力と長さによって制御されることが可能である。
【0113】
遷移効果は、現在、ディスプレイされているイメージ、すなわち、タッチが検出される前に現行でディスプレイされていたイメージに持ち込まれることさえ可能である。一実施形態では、逆の効果が、現在、ディスプレイされているイメージに生じる。例えば、図31A?図31Dに示されるとおり、現在、ディスプレイされているグラフィック・イメージ826は、GUI要素820が大きくなるにつれ、小さくなり最小化される。代替的に、GUI要素が、即時にポップインする場合、現在、ディスプレイされているグラフィック・イメージは、即時にポップアウトする、または即時に最小化される。」

「【0118】
図33は、本発明の一実施形態によるユーザ・インタフェース方法900である。方法は、例えば、ディスプレイと、タッチ・スクリーンなどのタッチ・センシティブ入力デバイスとを有するコンピューティング・デバイス上で実行される。図34Aは、曲リスト932Aを含むウインドウ930Aの一例を示し、図35Aは、曲リスト932Bを含むウインドウ930Bの別の例を示す。図34Aは、例えば、カリフォルニア州、クパチーノ所在のアップルコンピュータ株式会社によって製造されるiPod(登録商標)上でディスプレイされたグラフィカル・ユーザ・インタフェースで、図35Aは、例えば、カリフォルニア州、クパチーノ所在のアップルコンピュータ株式会社によって製造されるiTune(登録商標)などの音楽管理プログラムに関連するグラフィカル・ユーザ・インタフェースである。
【0119】
ブロック902に続いて、ユーザ・インタフェース方法900は、ブロック904に進み、ディスプレイされた曲リスト(またはウインドウ、またはGUI全体)の上でタッチが検出される。これは、スタイラス、または1本または複数の指などのオブジェクトが、タッチ・センシティブ入力デバイスのタッチ・センシティブ面上に置かれた際に、タッチ・センシティブ入力デバイスを使用して行われる。図34B、図35Bは、曲リスト932を含むウインドウ930の上に置かれた指925を示す。
【0120】
タッチが検出されると、ユーザ・インタフェース方法900は、ブロック906に進み、仮想スクロール・ホイールが活性化される。つまり、仮想スクロール・ホイールは、曲リストに加えてディスプレイされて、ホイールの機能が有効にされる。要するに、曲リストに触れられたため、ユーザが、曲リストの中の曲を走査することを可能にするスクロール・ホイールが提供される。一部のケースでは、仮想スクロール・ホイールは、メディア・アイテムに取って代わる、すなわち、メディア・アイテムは、仮想スクロール・ホイールのためのスペースを空けるように、最小化または移動される。他のケースでは、仮想スクロール・ホイールは、メディア・アイテムの上に位置付けられ、または重ねられる(メディア・アイテムは、現行のサイズ、形状、および位置を維持する)。仮想スクロール・ホイールは、メディア・アイテムが、仮想スクロール・ホイールを通して見えるように、半透明にされる。図34C、図35Cは、曲リスト932を含むウインドウ930の上に重ねられた透明な仮想スクロール・ホイール936を示す。代替的に、仮想スライダ・バーがディスプレイされてもよい。
【0121】
ディスプレイされると、仮想スクロール・ホイールに対するスクロール・タッチ・イベント(またはジェスチャ)が実行されたか否かについての判定908が行われる。例えば、スクロール・ホイールの上に指が位置付けられているか否か、またはその指が、スクロール・ホイールの周りで旋回する形で動かされているかどうか。
【0122】
スクロール・タッチ・イベントが、ユーザによって実行された場合、ユーザ・インタフェース方法900はブロック910に進み、曲リストのスクロールがスクロール・タッチ・イベントに応じて実施される。例として、指を仮想スクロール・ホイールの周りで旋回させるにつれ、セレクタ・バーが1つの曲から別の曲に移動する。図34D、図35Dは、仮想スクロール・ホイール936の周りで旋回する指925と、その旋回する指925に応じて、曲リスト932を直線的に移動するセレクタ・バー938を示す。例示される諸実施形態では、セレクタ・バーは、指を時計方向に旋回させると、直線的に上方に動かされ、指を反時計方向に旋回させると、直線的に下方に動かされる。しかし、以上は、限定ではないことに留意されたい。例えば、セレクタ・バーは、指を時計方向に旋回させると、直線的に下方に動かされ、指を反時計方向に旋回させると、直線的に上方に動かされてもよい。
【0123】
スクロールまたは選択タッチ・イベントが実行されない場合、ユーザ・インタフェース方法900は、ブロック916に進み、仮想スクロール・ホイールが非活性化される。つまり、仮想スクロール・ホイールは無効にされ、ディスプレイから除去される。図34E、図35Eは、仮想スクロール・ホイール936のないディスプレイ928を示す。仮想スクロール・ホイール936は、除去されているものの、曲リストに加えられた変更、すなわち、セレクタ・バーの位置は、通常、そのままである。
【0124】
一部のケースでは、仮想スクロール・ホイールは、ホイールの表面を横切るボタン・ゾーン、またはホイール中央もしくはホイール側部における仮想ボタンを含むことが可能である。ボタン群やボタン・ゾーンは、例えば、メニュー、再生、シーク、一時停止、および/または以上に類することに対応する。この特定の実施形態では、前述した方法はブロック416より前に行われる、さらなるステップを含むことが可能である。例えば、スクロール・タッチ・イベントが実行されない場合、ユーザ・インタフェース方法900は、仮想スクロール・ホイールに対して選択タッチ・イベント(またはジェスチャ)が実行されたか否かについての判定が行われる、さらなるブロックを含むことが可能である。選択タッチ・イベントは、ボタンをタップすることにより、または仮想スクロール・ホイールの表面の周りの旋回ではなく、ボタン上により高い圧力、またはより低い圧力を加えることにより、実施されることが可能である(図34F、35Fを参照)。ボタンが、曲選択ボタンまたは曲エンタ・ボタンである場合、方法は、セレクタ・バーが上に置かれた曲が選択される別のブロックを含む。つまり、仮想ボタンがタップされる、または別の形で選択されると、セレクタ・バーによって現在、覆われている曲が再生され、ユーザが享受するために出力される。
【0125】
前述した方法は、曲リストをスクロールすることに限定されないことに留意されたい。任意のメディア・アイテムや任意の要素グループが、前述した技術を使用してスクロールされる。例えば、図36A?図36Cに示された写真レイアウト942では、ユーザが、写真レイアウト942(またはグループ化)の上にユーザの指925を置くと、仮想スクロール・ホイール936が現れ、その後、ホイール936を使用して、レイアウト942における様々な写真943の間でハイライタ944を動かすことができる。例として、写真は、多数のイメージを走査することを、より容易にするサムネール・イメージである。」

(イ)上記下線部の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

〈引用発明〉
「ディスプレイと、タッチ・スクリーンなどのタッチ・センシティブ入力デバイスとを有するコンピューティング・デバイス上で実行されるユーザ・インタフェース方法900であって、
音楽管理プログラムに関連するグラフィカル・ユーザ・インタフェースであり、
ディスプレイされた曲リストの上でタッチが検出され、
これは、スタイラス、または1本または複数の指などのオブジェクトが、タッチ・センシティブ入力デバイスのタッチ・センシティブ面上に置かれた際に、タッチ・センシティブ入力デバイスを使用して行われ、
タッチが検出されると、仮想スクロール・ホイールが活性化され、
つまり、仮想スクロール・ホイールは、曲リストに加えてディスプレイされて、ホイールの機能が有効にされ、
仮想スクロール・ホイールは、メディア・アイテムに取って代わる、すなわち、メディア・アイテムは、仮想スクロール・ホイールのためのスペースを空けるように、最小化または移動され、
他のケースでは、仮想スクロール・ホイールは、メディア・アイテムの上に位置付けられ、または重ねられ、仮想スクロール・ホイールは、メディア・アイテムが、仮想スクロール・ホイールを通して見えるように、半透明にされ、
ディスプレイされると、例えば、スクロール・ホイールの上に指が位置付けられているか否か、またはその指が、スクロール・ホイールの周りで旋回する形で動かされているかどうかにより、仮想スクロール・ホイールに対するスクロール・タッチ・イベント(またはジェスチャ)が実行されたか否かについての判定908が行われ、
スクロール・タッチ・イベントが、ユーザによって実行された場合、曲リストのスクロールがスクロール・タッチ・イベントに応じて実施される、
ユーザ・インタフェース方法900。」

(2)引用文献2について
当審拒絶理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0188】
この状態Nにおいて、スクロールホイール処理部23は、第2の指が固定領域外NF内の或る位置でダブルクリックしたというタッチ入力操作が行われたか否かを判定する。当該タッチ入力操作が行われたと判定された場合、スクロールホイール処理部23は、状態Oに示すように、当該第2の指がタッチしている第2接触点を中心部とする所定長の径をそれぞれ有する同心円状のスクロールホイールSWを表示する。このスクロールホイールSWのそれぞれの径の長さは、スクロールホイール処理部23の動作又は情報格納媒体25において予め規定されていることが好ましい。」

2.原査定の拒絶の理由に引用された引用文献
(1)引用文献Aについて
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献A(特に、第5欄第21-25行、第15欄第23行-第16欄4行、[図2]及び[図14]を参照のこと。)には、以下の技術的事項が開示されている。
「画像を表示する表示ユニット(平面ディスプレイパネル14。[図2]を参照。)と、上記表示ユニットと一体にして設けられたタッチパネル(タッチパネル15。[図2]を参照。)と、コンピュータとを有する情報処理装置(電子機器10。第5欄第21-25行には、電子機器10が、CPU11、RAM12、ROM13等を備えることが記載されているから、電子機器10は、コンピュータを有するといえる。)において、
上記コンピュータが、上記タッチパネルに対する予め設定されたタッチ操作を受け付けて、上記表示ユニットにリング状の枠画像を表示し、
上記リング状の枠画像に沿った方向に連続するタッチ操作を受け付けて、前記情報処理装置の機能の設定を行う(第15欄第23行-第16欄4行及び[図14]には、リング状のスライドバー(リング状の枠画像)とスライダ(操作レバー)を画面に表示し、タッチによりスライダーをバーに沿って移動させることにより、設定値を変更することが記載されている。)こと」

(2)引用文献Bについて
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Bの段落[0043]-[0044]及び[図4]には、以下の技術的事項が記載されている。
「デジタルカメラの画面50の左右を両手タッチし、両指で回動操作が行われたことを、タッチ検出部11aが検出すると、すなわち、タッチ操作を受け付けたことに応答して、ズーミングのための操作補助画像として画面50上に左右のタッチ位置を楕円の長円とするような楕円形上の図形、リング61を表示すること、すなわち、表示ユニットにおけるタッチ位置に応じた位置にリング状の枠画像を表示すること」

(3)引用文献Cについて
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Cの段落[0110]-[0111]及び図13A-13Cには、以下の技術的事項が記載されている。
「スクロールバー1010(枠画像)内に、ボリュームアイコン1003(情報処理装置の機能を示す画像)が表示され、スクロールバー1010を用いてボリュームを調整すること(機能の設定を行うこと)」

(4)引用文献Dについて
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Dの段落[0021]及び[図8]には、以下の技術的事項が記載されている。
「コンピュータのコラボトレイ上で、円形の描画領域の描画領域内の回転/拡大ハンドルを半径方向にドラッグすると描画領域を拡大し、描画領域の移動用ハンドルをドラッグする(円弧に沿わない連続するタッチ操作をする)と、任意の位置に動かすこと」

(5)引用文献Eについて
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Eの段落[0022]には、以下の技術的事項が記載されている。
「タッチパネルを用いた入力装置において、表示された回転ダイヤルをタッチ操作することで、表示装置の明るさが調節できること」

第6 対比・判断

1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると次のことがいえる。
(ア)引用発明の「ディスプレイと、タッチ・スクリーンなどのタッチ・センシティブ入力デバイスとを有するコンピューティング・デバイス」は、本願発明1の「画像を表示する表示ユニットと、上記表示ユニットと一体にして設けられたタッチパネルと、コンピュータとを有する情報処理装置」に対応する。
(イ)引用発明の「音楽管理プログラムに関連するグラフィカル・ユーザ・インタフェースであり」、「ディスプレイされた曲リストの上でタッチが検出され」、「タッチが検出されると、仮想スクロール・ホイールが活性化され」、「仮想スクロール・ホイールは、曲リストに加えてディスプレイされて、ホイールの機能が有効にされ」、「仮想スクロール・ホイールは、メディア・アイテムの上に位置付けられ、または重ねられ、仮想スクロール・ホイールは、メディア・アイテムが、仮想スクロール・ホイールを通して見えるように、半透明にされ」ることは、本願発明1の「アプリケーションプログラムの実行時に」、「上記タッチパネル上のタッチ操作を受け付けたことに応答して」、「リング状の枠画像を上記アプリケーションプログラムの画像に重ねて上記表示ユニットに表示する」とともに、「上記枠画像の中に」「画像を表示し」ていることに対応する。
(ウ)ここで引用発明において、「スタイラス、または1本または複数の指などのオブジェクトが、タッチ・センシティブ入力デバイスのタッチ・センシティブ面上に置かれた際に、タッチ・センシティブ入力デバイスを使用して行われ」ることにより「タッチが検出され」るものであるところ、図35B乃至図35Cの記載からみて、必ずしも複数の指である必要はなく、1本の指でタッチ・センシティブ入力デバイスのタッチ・センシティブ面上の一つの位置へタッチする場合にタッチが検出され、タッチが検出された位置に応じた位置に仮想スクロール・ホイールを曲リストに重ねるようにディスプレイされているといえる。
(エ)そうしてみると、引用発明と本願発明1とは、「アプリケーションプログラムの実行時に、マルチタッチでなく、上記タッチパネル上の一つの位置へのタッチ操作を受け付けたことに応答して、上記タッチ操作を受け付けた位置に応じた位置にリング状の枠画像を上記アプリケーションプログラムの画像に重ねて上記表示ユニットに表示するとともに、上記枠画像の中に、画像を表示し」ている点で共通する。
(オ)引用発明の「スクロール・ホイールの上に指が位置付けられているか否か、またはその指が、スクロール・ホイールの周りで旋回する形で動かされているかどうかにより、仮想スクロール・ホイールに対するスクロール・タッチ・イベント(またはジェスチャ)が実行されたか否かについての判定908が行われ」、「スクロール・タッチ・イベントが、ユーザによって実行された場合、曲リストのスクロールがスクロール・タッチ・イベントに応じて実施される」ことは、本願発明1の「上記リング状の枠画像に沿った方向に連続するタッチ操作を受け付けて、上記情報処理装置の機能の設定を行う」ことに対応する。
(カ)引用発明の「コンピューティング・デバイス上で実行されるユーザ・インタフェース方法900」は、後述する相違点を除き、本願発明1の「情報処理装置が実行する制御方法」に相当するといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、以下の、一致点と相違点があるといえる。

(一致点)
「画像を表示する表示ユニットと、上記表示ユニットと一体にして設けられたタッチパネルと、コンピュータとを有する情報処理装置が実行する制御方法であって、
上記コンピュータが、
アプリケーションプログラムの実行時に、マルチタッチでなく、上記タッチパネル上の一つの位置へのタッチ操作を受け付けたことに応答して、上記タッチ操作を受け付けた位置に応じた位置にリング状の枠画像を上記アプリケーションプログラムの画像に重ねて上記表示ユニットに表示するとともに、上記枠画像の中に、画像を表示し、
上記リング状の枠画像に沿った方向に連続するタッチ操作を受け付けて、上記情報処理装置の機能の設定を行う、情報処理装置の制御方法。」

(相違点)
本願発明1では、リング状の枠画像を上記表示ユニットに表示するとともに、上記枠画像の中に「上記情報処理装置の機能を示す画像であって、上記アプリケーションプログラムの画像とは異なる画像を表示し」ているのに対し、引用発明では、仮想スクロール・ホイールの中に、「情報処理装置の機能を示す画像であって、上記アプリケーションプログラムの画像とは異なる画像を表示」することは特定されていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用発明における仮想スクロール・ホイールは、アプリケーションプログラムの画像である曲リストを表示させた状態で、この曲リストをスクロールするものであり、アプリケーションプログラムに関する操作を行うためのものであるところ、引用文献1には、仮想スクロール・ホイール操作することによってアプリケーションプログラムを実行しながら、例えば音量や明るさ等といった情報処理装置の機能を設定することについて記載および示唆はなく、引用発明の仮想スクロール・ホイールの中に、「情報処理装置の機能を示す画像であって、上記アプリケーションプログラムの画像とは異なる画像を表示」させるようにする動機付けは認められない。
他方、仮に曲リストに代えて、アプリケーションプログラムの画像とは異なる画像を表示してしまうと、曲リストが表示されない状態で曲リストをスクロールさせるという極めて不便な発明になることから、引用発明において、アプリケーションプログラムの画像とは異なる画像を表示させるようにすることには阻害要因が認められる。
また、相違点に係る本願発明1の構成は、上記引用文献2にも記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-9について
本願発明2-9も、上記相違点に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明10、11について
本願発明10は、本願発明1に対応する制御プログラムの発明であり、また、本願発明11は、本願発明1に対応する情報処理装置の発明であり、本願発明10および本願発明11は、上記相違点に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断

令和3年2月15日付けの補正により、補正後の請求項1-11は、「リング状の枠画像を上記表示ユニットに表示するとともに、上記枠画像の中に上記情報処理装置の機能を示す画像であって、上記アプリケーションプログラムの画像とは異なる画像を表示し」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献A-Eには記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-11は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Eに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-04-13 
出願番号 特願2018-73963(P2018-73963)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 星野 裕  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 ▲吉▼田 耕一
太田 龍一
発明の名称 情報処理装置の制御方法、制御プログラム及び情報処理装置  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ