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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N |
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管理番号 | 1373384 |
審判番号 | 不服2020-10879 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-08-05 |
確定日 | 2021-05-11 |
事件の表示 | 特願2016- 34883「自動分析装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日出願公開、特開2017-151002、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年2月25日の出願であって、令和元年12月20日付けで拒絶理由が通知され、令和2年2月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月29日付けで拒絶査定(原査定)されたところ、同年8月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされ、同年9月18日付けで前置報告がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和2年5月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の下記の請求項に係る発明は、下記の引用文献に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項1-4,10,11,14 ・引用文献等1,2 ・請求項5,6 ・引用文献等1-3 ・請求項7 ・引用文献等1-4 ・請求項8 ・引用文献等1,2,5 ・請求項9 ・引用文献等1,2,4,5 ・請求項12 ・引用文献等1,6 ・請求項13 ・引用文献等1,2,6 <引用文献等一覧> 1.特開2012-032310号公報 2.特開2007-101366号公報 3.特開2010-175417号公報 4.特開2008-175791号公報 5.国際公開第2016/017294号 6.特開2005-181135号公報 第3 本願発明 本願の請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、令和2年8月5日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される発明であるところ、本願発明1は以下のとおりである(下線部は、補正箇所を示す。)。 「 【請求項1】 上下及び水平方向に移動し、液体容器から液体を吸引して、反応容器に吐出する液体分注ノズルと、当該液体分注ノズルを上下方向及び水平方向に移動させる支柱とを有する液体分注機構と、 上記反応容器が複数配置される反応槽と、 上記反応容器内の試料を計測する光度計と、 上記液体分注機構の上記支柱の側面側に配置され、上記支柱の移動に伴って、上記液体分注ノズルの上下方向及び水平方向に移動し、上記液体分注ノズルの側面側から上記液体分注ノズルの先端部分を撮影する液体分注ノズル用カメラと、 上記液体分注機構、上記反応槽、上記光度計、及び上記液体分注ノズル用カメラの動作を制御する制御部と、 を備え、 上記反応槽は、上記液体分注ノズルから上記液体が吐出される液体吐出位置を有し、上記液体吐出位置における上記反応槽の側面に透明の反応槽スリットが形成されていることを特徴とする自動分析装置。」 なお、本願発明2ないし14は、本願発明1を減縮した発明である。 第4 引用文献の記載事項、引用発明等 1 引用文献1について (1)本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には、下記の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。 (1-1) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 検体を処理するために移動可能な移動機構と、 前記移動機構と一体的に移動可能に取り付けられ、前記移動機構がアクセスしようとする対象物を撮像する撮像部と、 前記撮像部により取得された画像に基づいて、前記対象物に対する前記移動機構の調整を行う調整手段と、 を備える、 検体処理装置。」 (1-2) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、血液及び尿等の検体を処理する検体処理装置に関する。」 (1-3) 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 多くの分注装置の場合、特定の経路上を移動しながら(直線移動又は円弧移動)又は平面上を二次元的に移動しながら、複数の場所で液体の吸引及び吐出動作を行なうので、これら各位置で適切に停止しているかどうかを確認する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載された液体分注装置においては、CCDカメラによって各分注素子が吸引位置及び吐出位置において適切に停止しているかどうかを確認することは困難である。 【0006】 本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、移動部位の移動経路の複雑さにかかわらず移動部位の位置調整を従来に比して容易且つ正確に行うことができる検体処理装置を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の検体処理装置は、検体を処理するために移動可能な移動機構と、前記移動機構と一体的に移動可能に取り付けられ、前記移動機構がアクセスしようとする対象物を撮像する撮像部と、前記撮像部により取得された画像に基づいて、前記対象物に対する前記移動機構の調整を行う調整手段と、を備える。」 (1-4) 「【0017】 <検体分析装置の構成> 図2は、本実施の形態に係る検体分析装置2の構成を示す斜視図である。検体分析装置2は、検体(血液)に含まれる成分を光学的に測定する測定ユニット3と、測定ユニット3による測定データを分析するとともに、測定ユニット3に操作指示を与える情報処理ユニット4とで構成されている。 【0018】 図3は、測定ユニット3の内部を上方向から見たときの概略構成を示す平面図である。測定ユニット3は、測定部10と、検出部40と、搬送部50とによって構成されている。 【0019】 測定部10は、第1試薬テーブル11と、第2試薬テーブル12と、第1容器ラック13と、第2容器ラック14と、キュベットテーブル15と、加温テーブル16と、テーブルカバー17と、第1検体分注ユニット21と、第2検体分注ユニット22と、第1試薬分注ユニット23と、第2試薬分注ユニット24と、第3試薬分注ユニット25と、第1キャッチャユニット26と、第2キャッチャユニット27と、第3キャッチャユニット28と、試薬バーコードリーダ31と、キュベット搬送器32と、希釈液搬送器33と、キュベット口34と、廃棄口35、36を備えている。」 (1-5) 「【0022】 キュベットテーブル15と加温テーブル16には、図示の如く、それぞれ、円周に沿って複数のキュベット保持孔15a、16aが形成されている。キュベット保持孔15a、16aにキュベットがセットされると、かかるキュベットは、それぞれ、キュベットテーブル15と加温テーブル16の回転に合わせて、円周位置を移動することとなる。また、加温テーブル16は、保持孔16aにセットされたキュベットを、所定の温度にて加温する。 【0023】 図4は、第1試薬分注ユニット23の構成を示す側面図である。第1試薬分注ユニット23は、図示の如く、駆動部23aと、アーム23bと、ピペット23cとを備えている。駆動部23aは、回転用モータ231と、昇降用モータ232と、回転用モータ231及び昇降用モータ232の動力を軸233に伝達する伝達機構234とを備えている。伝達機構234は、回転用モータ231の回転動力を減速して軸233に伝達するベルト伝動機構又はギヤ機構等、昇降用モータ232の回転動力を上下方向の直線動力に変換して軸233に伝達するベルト伝動機構又はラック・ピニオン機構等により構成されている。回転用モータ231の回転方向及び回転量はロータリーエンコーダ235によって、昇降用モータ232の回転方向及び回転量(つまり、ピペット23cの上下移動方向及び移動量)はロータリーエンコーダ236によってそれぞれ検出される。 ・・・ 【0026】 また、第1試薬分注ユニット23は、CCD等の撮像素子を備えるカメラ23dを備えている。カメラ23dは、アーム部23bの先端に取り付けられており、下方のピペットPを含む領域を撮像可能である。また、カメラ23dはアーム部23bに固定されているため、アーム部23bが移動したとしてもピペットPとの相対的な位置関係は変化せず、常にピッペットPの先端を含む領域を撮像するようになっている。カメラ23dは具体的にはピペットの一部とピペットがアクセスしようとしている対象物である容器(さらに具体的には容器の開口部)とを撮像する。また、カメラ23dはアーム部23bの回転軸とピペット取付位置とを結ぶライン上に設けられており、カメラ23dによってピペットの容器に対する位置ずれを良好に判別可能な画像が得られるようになっている。 【0027】 なお、第1検体分注ユニット21、第2検体分注ユニット22、第2試薬分注ユニット24及び第3試薬分注ユニット25の構成は、第1試薬分注ユニット23の構成と同様であるので、その説明を省略する。」 (1-6) 「【0032】 検出部40は、上面にキュベットを収容する20個の保持孔41が設けられており、下面裏側に検出部(図示せず)が配されている。保持孔41にキュベットがセットされると、検出部により、キュベット中の測定試料から光学的情報が検出される。」 (1-7) 「【0043】 また、撮像部324は、前述した第1試薬分注ユニット23のカメラ23d並びに第1検体分注ユニット21、第2検体分注ユニット22、第2試薬分注ユニット24及び第3試薬分注ユニット25それぞれのカメラによって構成されている。CPU301は、かかる撮像部324に含まれる各カメラの出力信号(画像信号)を受け取ることが可能である。」 (1-8) 「【0057】 <検体毎の分析手順> まず、検体分析装置2による検体の分析の手順について説明する。検体の分析手順は、検体の測定項目(PT,APTT等)によって異なる。検体の測定項目は、測定オーダにより指定される。検体分析装置2では、ユーザによる測定オーダの登録が可能であり、また図示しないホストコンピュータから測定オーダを受け付けることも可能である。つまり、ユーザが測定オーダを登録する場合は、ユーザが情報処理ユニット4の入力部408を操作することにより、測定オーダを検体分析装置2に入力する。ホストコンピュータから測定オーダを受け付ける場合には、予めユーザがホストコンピュータに測定オーダを登録しておく。 ・・・ 【0060】 第1検体分注ユニット21は、搬送路51の搬送領域の所定の検体吸引位置53に位置づけられた検体容器61の検体を吸引する。第1検体分注ユニット21によって吸引された検体は、キュベットテーブル15の前方位置にある検体吐出位置18に位置づけられたキュベット保持孔15aにセットされたキュベットに吐出される。」 (1-9) 【図3】 【図4】 (1-10)図3、図4より、第1試薬分注ユニット23の「軸233」は、「ピペット23c」を、上下方向に移動させるとともに、軸233回りに回転移動させることが見てとれる。 (1-11)上記(1-5)の「【0027】なお、第1検体分注ユニット21・・・の構成は、第1試薬分注ユニット23の構成と同様である」との記載から、上記(1-5)の【0023】及び【0026】並びに上記(1-10)の第1試薬分注ユニット23についての記載を、第1検体分注ユニット21と置き換えたものが記載されているといえる。 (2)上記(1-1)?(1-11)の記載から、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。なお、参考のため、引用発明の認定に使用した引用文献1の記載箇所を段落番号等で付記してある。 「(A)検体(血液)に含まれる成分を光学的に測定する測定ユニット3と、測定ユニット3による測定データを分析するとともに、測定ユニット3に操作指示を与える情報処理ユニット4とで構成されている検体分析装置2であって(【0017】)、 (B)測定ユニット3を構成する測定部10は、キュベットテーブル15と、第1検体分注ユニット21を備えており、また、測定ユニット3は、キュベット中の測定試料から光学的情報を検出する検出部40を備えており(【0018】【0019】【0032】)、 (C)第1検体分注ユニット21は、駆動部21aと、アーム21bと、ピペット21cと、ピペット21cを上下方向に移動させるとともに、その回りに回転移動させる軸213を備え、駆動部21aは、回転用モータと、昇降用モータと、回転用モータ及び昇降用モータの動力を軸213に伝達する伝達機構214とを備えており(【0023】【図4】)、 (D)キュベットテーブル15には、複数のキュベット保持孔15aが形成され、第1検体分注ユニット21は、検体容器61の検体を吸引し、吸引された検体は、キュベットテーブル15の前方位置にある検体吐出位置18に位置づけられたキュベット保持孔15aにセットされたキュベットに吐出され(【0022】【0060】)、 (E)また、第1検体分注ユニット21は、CCD等の撮像素子を備えるカメラ21dを備えており、カメラ21dは、アーム部21bの先端に取り付けられ、アーム部21bに固定されているため、アーム部21bが移動したとしてもピペットPとの相対的な位置関係は変化せず、常にピッペットPの先端を含む領域を撮像するようになっており、カメラ21dは具体的にはピペットの一部とピペットがアクセスしようとしている対象物である容器の開口部とを撮像し、また、カメラ21dはアーム部21bの回転軸とピペット取付位置とを結ぶライン上に設けられており、カメラ21dによってピペットの容器に対する位置ずれを良好に判別可能な画像が得られるようになっている(【0026】)、 (F)検体分析装置2。」(以下「引用発明」という。) 2 引用文献2について (1)本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された引用文献2には、「液体自動注入装置及び液体自動注入装置における液体自動注入方法」について、下記の事項が記載されている。 (2-1) 「【要約】 【課題】従来の液体自動注入装置では,標線付容器を,センサ手段により標線と液面を検出する位置に正確に移動しなければならず,高精度の制御が必要となる。 【解決手段】本発明では,標線付容器に液体を注入する際に位置させる空間を横方向に隔てて,二次元イメージセンサと,それに対向させて,面状投光部と,その左右側に配置し,面状投光部の投光色とは色を異ならせた配色部とから構成し面状照明手段を配置し,標線付容器を二次元イメージセンサにより撮像した二次元画像から水平方向の位置と,標線及び液面の夫々の位置を検出する検出手段と,それにより検出したそれらの位置に基づき液体注入手段を制御する制御手段を構成し,検出手段は,標線付容器の両端縁に線状に表れる配色部の像により,標線付容器の二次元画像上の水平方向の位置を検出する構成として課題を解決した。」 (2-2) 「【0036】 次に本発明を実施するための最良の形態を添付図面を参照して説明する。 図1は本発明に係る液体自動注入装置の全体構成の一例を模式的に示す斜視図,図2は要部を模式的に示す側面図,図3は面状照明手段を模式的に示す正面図である。 符号1は基台であり,この基台1上に液体注入手段2と,標線付容器3を所定位置に移動させるためのターンテーブル4を設けている。 【0037】 液体注入手段2は,シリンジポンプ5と,その吸込側にチューブ6を介して接続した液体容器7と,吐出側にチューブ8を介して接続したプローブニードル等の液体注入部9と,注入制御手段10とから構成している。液体注入部9は,基台1上に設けた支持部11によりターンテーブル4の上方に支持されており,その下方空間12において標線付容器3に液体を注入する構成としている。 【0038】 そして支持部11は,上記下方空間12を横方向に隔てて,一方側に二次元イメージセンサ13を支持すると共に,他方側に,この二次元イメージセンサ13に対向させて面状照明手段14を支持している。 【0039】 二次元イメージセンサ13にはレンズ等の撮像用光学系15を設けており,また面状照明手段14は,矩形状の面状投光部16を設けており,その周囲に面状投光部16の投光色とは色を異ならせた配色部17を構成している。図3に示されるように,左右側の配色部17aと下側の配色部17bは幅を太く形成している。 【0040】 また,ターンテーブル4には,標線付容器3を安定に載置して支持するための凹部18を形成している。 ・・・ 【0044】 以上の構成において,この実施の形態では,標線付容器3をターンテーブル4の凹部18上に載置した状態で,ターンテーブル4を駆動して標線付容器3を液体注入部9の下方空間12に移動する。 【0045】 次いで背面側から面状照明手段14により照明されている標線付容器3を二次元イメージセンサ13により撮像し,その二次元画像24から標線付容器3の水平方向の位置と,標線22及び液面の夫々の位置を検出する。」 (2-3)【図1】 (2)上記(2-1)?(2-3)の記載からみて、引用文献2には、 「基台1上に液体注入手段2と、標線付容器3を所定位置に移動させるためのターンテーブル4を設けている液体自動注入装置において、 液体注入手段2のプローブニードル等の液体注入部9は、基台1上に設けた支持部11によりターンテーブル4の上方に支持されており、その下方空間12において標線付容器3に液体を注入する構成であり、 支持部11は、下方空間12の横方向一方側に二次元イメージセンサ13を支持しており、 標線付容器3を二次元イメージセンサ13により撮像し、その二次元画像24から標線付容器3の水平方向の位置と、標線22及び液面の夫々の位置を検出すること」 という技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 3 引用文献3について (1)本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された引用文献3には、下記の事項が記載されている。 (3-1) 「【0013】 また、サンプル分注を行う反応容器ポジションに小型のカメラを配置し、各反応容器の反応容器底面とサンプルプローブの隙間寸法をカメラにて正確に測定を実施し分注時の反応容器底面からサンプルプローブ先端との距離を正確に制御する。」 (3-2) 「【0019】 図1に本発明が実施される一般的な自動分析装置の概略を示す。 【0020】 各部の機能は公知のものであるため、詳細についての記述は省略する。 【0021】 サンプリング機構1のサンプリングアーム2は上下すると共に回転し、サンプリングアーム2に取り付けられたサンプルプローブ3を用いて、左右に回転するサンプルディスク102に配置された試料容器101内の試料を吸引し、反応容器5へ分注するように構成されている。本図からもわかるように試料容器101のサンプルディスク102上への配置はサンプルディスク102上へ直接配置する場合や試験管(図示は無い)上に試料容器101を載せることも可能なユニバーサルな配置に対応可能な構造のものが一般的である。 【0022】 回転自在な試薬ディスク125上には分析対象となる複数の分析項目に対応する試薬ボトル112が配置されている。可動アームに取り付けられた試薬分注プローブ110は、試薬ボトル112から反応容器5へ所定量の試薬を分注する。 【0023】 サンプルプローブ3は、サンプル用シリンジポンプ107の動作に伴ってサンプルの吸引動作、及び分注動作を実行する。試薬分注プローブ110は、試薬用ポンプ111の動作に伴って試薬の吸引動作、及び分注動作を実行する。各試料のために分析すべき分析項目は、キーボード121、又はCRT118の画面のような入力装置から入力される。この自動分析装置における各ユニットの動作はコンピュータ103により制御される。 【0024】 サンプルディスク102の間欠回転に伴って試料容器101はサンプル吸引位置へ移送され、停止中の試料容器内にサンプルプローブ3が降下される。その下降動作に伴ってサンプルプローブ3の先端が試料の液面に接触すると液面検出回路151から検出信号が出力され、それに基づいてコンピュータ103がサンプリングアーム2の駆動部の下降動作を停止するよう制御する。次にサンプルプローブ3内に所定量の試料を吸引した後、サンプルプローブ3は上死点まで上昇する。サンプルプローブ3が試料を所定量吸引している間は、サンプルプローブ3とサンプル用ポンプ107流路間の吸引動作中の流路内圧力変動を圧力センサ152からの信号を用い圧力検出回路153で監視し、吸引中の圧力変動に異常を発見した場合は所定量吸引されていない可能性が高いため、当該分析データに対しアラームを付加する。 【0025】 次にサンプリングアーム2が水平方向に旋回し反応ディスク4上の反応容器5の位置でサンプルプローブ3を下降し反応容器5内へ保持していた試料を分注する。試料が入った反応容器5が試薬添加位置まで移動された時に、該当する分析項目に対応した試薬が試薬分注プローブ110から添加される。サンプル、及び試薬の分注に伴って試料容器101内の試料、及び試薬ボトル112内の試薬の液面が検出される。試料、及び試薬が加えられた反応容器内の混合物は、攪拌器113により攪拌される。混合物が収納された反応容器が光度計115に移送され、各混合物の発光値、或いは吸光度が測定手段としての光電子増倍管、或いは光度計により測定される。発光信号あるいは受光信号は、A/D変換器116を経由しインターフェース104を介してコンピュータ103に入り、分析項目の濃度が計算される。分析結果は、インターフェース104を介してプリンタ117に印字出力するか、又はCRT118に画面出力すると共に、メモリ122に格納される。測光が終了した反応容器5は、反応容器洗浄機構119の位置にて洗浄される。洗浄用ポンプ120は、反応容器へ洗浄水を供給すると共に、反応容器から廃液を排出する。図1の例では、サンプルディスク102に同心円状に3列の試料容器101がセットできるように3列の容器保持部が形成されており、サンプルプローブ3による試料吸引位置が各々の列に1個ずつ設定されている。 【0026】 以上が自動分析装置の一般的な動作である。 【0027】 次に図2から図14を用いて本特許の実施例を説明する。 【0028】 図2のようにサンプルプローブ3先端を反応容器底面201に接触させる。サンプル用ポンプ107で吐出する際はサンプルプローブ3でサンプルを吐出しながらサンプルプローブ3を上昇させる。 【0029】 実際は、サンプルプローブ3上部に取り付けられたバネにより、反応容器底面201に接触後、さらにサンプルプローブ3を反応容器底面201に押し付ける動作でサンプルプローブ3をバネクッションで反応容器底面201に押し付ける。サンプルプローブ3を上昇させる時にサンプルプローブ3はバネクッションしている寸法分は反応容器底面201から離れず反応容器底面201に接触したままであり、バネクッションが無くなり反応容器底面201から外れる時にサンプルプローブ3で吐出しながらサンプルプローブ3を上昇させながら分注を開始することでサンプルプローブ3外面にサンプル付着をつけない分注が可能となる。 【0030】 また、図3に示すように分注量に対する反応容器5の分注後サンプル高さ203は、反応容器の縦×横の寸法から容易に算出可能であり、分注する場合、サンプルプローブ3を隙間200まで下降させ、分注したサンプルが反応容器底面201に接触後、サンプルプローブ3を分注させながら分注後サンプル高さ203まで上昇させ、吐出したサンプルが、分注後サンプル高さ203になるのを待つことで、サンプルプローブ3先端のサンプル玉残りを低減しサンプルプローブ3外面に付着するサンプルを無くすことが可能となる。 【0031】 ここで、サンプルプローブ3と全反応容器5の寸法にはバラツキがあり、そのバラツキを補正する手段として以下の方法が考えられる。 【0032】 図4のようにサンプルプローブ3にて反応容器5に分注するポジションにCCDカメラ202を配置し全反応容器底面201とサンプルプローブ3先端との隙間200の高さを測定する。各反応容器の隙間200はバラツキがある。隙間200のバラツク原因として反応容器は樹脂製の成型品で製作されており、成型時の熱収縮変形が原因で僅かな反りが発生したり、また、反応容器形状は反応ディスク一周分を一体で樹脂成形するのは大変困難であるため、図5のように分割ブロック状の形状をした反応容器を用いる。複数ブロックで一周分を形成しネジ穴11を使って反応容器ブロック17を反応ディスク4にネジでしっかり固定することで反応容器が変形することも反応容器の隙間200のバラツク原因となっている。」 (3-3)「【0054】 ・・・ 9 反応槽」 (3-4)【図4】 (3-5)上記(3-4)の図4から、反応槽9の側面にCCDカメラ202を組み込んでいることが見て取れる。 (2)上記(3-1)?(3-5)の記載からみて、引用文献3には、 「自動分析装置において、反応槽9のサンプルプローブ3にて反応容器5に分注するポジションにおける反応槽9の側面に組み込むことによりCCDカメラ202を配置して、全反応容器底面201とサンプルプローブ3先端との隙間200の高さを測定し、分注時の反応容器底面からサンプルプローブ先端との距離を正確に制御すること」 という技術事項(以下「引用文献3技術事項」という。)が記載されていると認められる。 4 引用文献4について (1)本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された引用文献4には、下記の事項が記載されている。 (4-1) 「【0014】 本発明によれば、チップ先端に液滴が発生したことを検知できるので、予期しない場所へ液滴が垂れることで生じる、検体の混入(コンタミ)等の不具合を未然に防ぐことが可能となる。又、分注後にチップ先端の液滴有無を検知できるので、液滴があった場合には、分注量が少なかった可能性があるので、この時点でアラームを発生させて注意を喚起させ、検査結果としてのデータが疑わしいことを発見することができる。」 (4-2) 「【0017】 本実施形態の分注装置は、分注ヘッドユニット10を備えている。この分注ヘッドユニット10には、先端にチップ(吸引部)12が装着され、該チップ12内を負圧にすると共に、一体で上下動可能な複数の分注ノズル(明示せず)が内蔵され、チップ12には、図示しない所定位置で検体等の液体Lを吸引することが可能になっている。ここで、図3のチップ12は液体Lが吸引されておらず、図4のチップ12は液面L1まで所定量の液体Lが吸引されており、符号Lbは、チップ12先端に発生した液滴である。 【0018】 又、上記分注ヘッドユニット10には、CCDカメラ(撮像手段)14がその側面に取付けられ、該CCDカメラ14により、図示されている位置に位置決めされたチップ12を、バックライト照明16による照明の下で傾斜ミラー18により反射させて撮像可能になっている。」 (4-3)【図1】 (4-4)上記(4-3)の図1から、分注ヘッドユニット10の側面にCCDカメラ14が鉛直下方に向けて取付けられていることが見て取れる。 (2)上記(4-1)?(4-4)の記載からみて、引用文献4には、 「先端にチップ(吸引部)12が装着された分注ヘッドユニット10を備えている分注装置において、分注ヘッドユニット10の側面にCCDカメラ(撮像手段)14を鉛直下方に向けて取付け、チップ12を、傾斜ミラー18により反射させて撮像可能にすることにより、チップ先端に液滴が発生したことを検知して、予期しない場所へ液滴が垂れることを未然に防ぎ、分注後にチップ先端に液滴があった場合には、分注量が少なかった可能性があるのでアラームを発生させること」 という技術事項(以下「引用文献4技術事項」という。)が記載されていると認められる。 5 引用文献5について (1)本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、原査定の拒絶理由に引用された引用文献5には、下記の事項が記載されている。 (5-1) 「[0012]本発明の目的は、検体容器設置部へのアクセスのための移動範囲が小さく、かつ、検体容器設置部から取り外すことなく移動が可能なプローブガードを有する自動分析装置を実現することである。」 (2)上記(5-1)の記載からみて、引用文献5には、 「検体容器設置部へのアクセスのための移動範囲が小さく、かつ、検体容器設置部から取り外すことなく移動が可能なプローブガード」 という技術事項(以下「引用文献5技術事項」という。)が記載されていると認められる。 6 引用文献6について (1)本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された引用文献6には、下記の事項が記載されている。 (6-1) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ロボットアームを備えた自動分注装置、及びその動作方法に関する。例えば、精製されたDNA試料の一塩基多型(SNP)解析をする装置に関する。」 (6-2) 「【0013】 図1は、本実施例にかかるDNAチップを用いるSNP解析装置の分解斜視図である。以下、図1を参照して、SNP解析装置の概要を説明する。」 (6-3) 「【0036】 光学系ユニットは、CCDカメラ(214)、EMフィルタ(215)、EXフィルタ(216)、及びLED(217)を含む。LED(217)は、EMファイル(215)により波長特性でフィルターされ、フローセル(219)内のDNAチップ上の蛍光体に光を照射できる。蛍光体から生じた蛍光は、EXフィルター(216)により波長特性でフィルターされ、フローセル(219)の映像はCCDカメラ(214)により取得される。光源としてLED(217)を使用しており、光源の寿命は従来のレーザーの場合より十分長くい為、装置寿命中の光源交換作業を回避でき、メンテナンスが容易となる。」 (6-4) 「【0076】 キャリブレーションの目的は、装置の総組後の各点の座標が理論値から僅かにずれていることが有るために、それを補正すべく行うものである。したがって、この変形例として、キャリブレーションにこだわることなく、各点の座標を装置に記憶させる作業も含んでいる。そこで、装置総組後の僅かにずれた各座標を、アーム1にCCDカメラなど各座標のターゲットを認識できる部品でそのターゲットを探し、その位置でのロボットアーム1とアーム2の角度を記憶させていく。オートメーション化することで、人手によるキャリブレーションを必要としないため、キャリブレーションの煩雑から回避される。」 (6-5) 【図1】 【図2】 (2)上記(6-1)?(6-5)の記載からみて、引用文献6には、 「DNAチップを用いるSNP解析装置において、装置総組後の僅かにずれた各座標を、アーム1にCCDカメラなど各座標のターゲットを認識できる部品でそのターゲットを探し、その位置でのロボットアーム1とアーム2の角度を記憶させていくことで、キャリブレーションをオートメーション化すること、及び、フローセル(219)内のDNAチップ上の蛍光体に光を照射し、蛍光体から生じた蛍光をEXフィルター(216)により波長特性でフィルターし、フローセル(219)の映像をCCDカメラ(214)により取得すること」 という技術事項(以下「引用文献6技術事項」という。)が記載されていると認められる。 7 前置報告で新たに引用された文献について (1)本願の出願前に頒布され、前置報告書において周知技術を示す文献として引用された特開平1-219670号公報(以下「引用文献7」という。)には、 「本例においては、従来公知の自動化学分析装置と同様に、光源部及び測定部を備える分析項目成分用の吸光度測定装置31が移動可能に設けられており、また、反応ディスク2には、窓部32を有する側壁部33が備えられ、反応温度の温度調節が可能であると共に吸光度の測定が可能に形成されている恒温槽34が設けられている。」(第5頁左下欄13?19行) との記載がある。 (2)本願の出願前に頒布され、前置報告書において周知技術を示す文献として引用された特開2009-115614号公報(以下「引用文献8」という。)には、 「【0039】 反応容器ホルダ14は、有底の中空角柱形状をなし、透明な材料を用いて形成される反応容器55を保持する保持部141を複数個備える。保持部141は、反応容器55の移送軌跡をなす第4の円C4の円周に沿って設けられている。第4の円C4は、第1の円C1、第2の円C2および第3の円C3を所定の平面(例えば図1の面)へ射影したとき第1の円C1、第2の円C2および第3の円C3とそれぞれ交わる。反応容器ホルダ14は、ホルダ駆動部32の駆動によって第4の円C4の円周方向に回転可能である。 【0040】 反応容器ホルダ14の外側面および内側面には、測光部17が反応容器55へ照射する光を透過させるための窓142および143がそれぞれ設けられている。また、反応容器ホルダ14は、保持部141が保持する反応容器55の内部の温度を37℃程度に保つための恒温槽(図示せず)を有する。」 との記載がある。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 液体分注機構について (ア)引用発明の「(C)第1検体分注ユニット21は、駆動部21aと、アーム21bと、ピペット21cと、ピペット21cを上下方向に移動させるとともに、その回りに回転移動させる軸213を備え」ていることから、軸213はピペット21cを上下方向及び水平方向に移動させるといえる。 (イ)引用発明の「検体(血液)」は液体であるから、本願発明1の「液体」に相当する。 そして、引用発明の「検体容器61」、「キュベット」及び「ピペット21c」は、それぞれ本願発明1の「液体容器」、「反応容器」及び「液体分注ノズル」に相当する。 また、引用発明の「軸213」は、本願発明1の「支柱」に相当する。 さらに、引用発明の「液体分注機構」は、本願発明1の「液体分注機構」に相当する。 (ウ)上記(ア)(イ)より、引用発明の「駆動部21aと、アーム21bと、ピペット21cと、ピペット21cを上下方向に移動させるとともに、その回りに回転移動させる軸213を備え」、「検体容器61の検体を吸引し、吸引された検体は、キュベット保持孔15aにセットされたキュベットに吐出され」る「第1検体分注ユニット21」は、本願発明1の「上下及び水平方向に移動し、液体容器から液体を吸引して、反応容器に吐出する液体分注ノズルと、当該液体分注ノズルを上下方向及び水平方向に移動させる支柱とを有する液体分注機構」に相当する。 イ 反応槽について 引用発明の「キュベットテーブル15には、複数のキュベット保持孔15aが形成され」、「キュベット」は「キュベット保持孔15aにセットされ」るので、引用発明の「キュベットテーブル15」と、本願発明1の「反応容器が複数配置される反応槽」とは、「反応容器が複数配置される反応容器配置部」で共通する。 ウ 光度計について 引用発明の「検出部」は、「キュベット中の測定試料から光学的情報を検出する」が、光学的情報は、光度以外も含む広い概念であるから、引用発明の「キュベット中の測定試料から光学的情報を検出する検出部」と、本願発明1の「反応容器内の試料を計測する光度計」とは、「反応容器内の試料から光学的情報を抽出する光学的検出装置」で共通する。 エ 液体分注ノズル用カメラについて (ア)上記(1?9)?(1-11)から、引用発明の「アーム部21b」は、「軸213」に固定されているといえる。 (イ)上記アを踏まえると、引用発明の「アーム部21b」とその先端に取り付けられた「カメラ21d」は、「軸213」の上下移動及び回転移動に伴って上下方向及び水平方向に移動するものである。 (ウ)そうすると、引用発明の「アーム部21bの先端に取り付けられ、アーム部21bに固定されているため、アーム部21bが移動したとしてもピペットPとの相対的な位置関係は変化せず、常にピッペットPの先端を含む領域を撮像するようになっており」、「具体的にはピペットの一部とピペットがアクセスしようとしている対象物である容器の開口部とを撮像」する、「第1検体分注ユニット21」の「備えて」いる「CCD等の撮像素子を備えるカメラ21d」と、本願発明1の「液体分注機構の上記支柱の側面側に配置され、上記支柱の移動に伴って、上記液体分注ノズルの上下方向及び水平方向に移動し、上記液体分注ノズルの側面側から上記液体分注ノズルの先端部分を撮影する液体分注ノズル用カメラ」とは、「液体分注機構の側面側に配置され、上記支柱の移動に伴って、上記液体分注ノズルの上下方向及び水平方向に移動し、上記液体分注ノズルの先端部分を撮影する液体分注ノズル用カメラ」で共通する。 オ 制御部について (ア)引用発明の「情報処理ユニット4」は、「測定ユニット3に操作指示を与える」ものであり、「測定ユニット3を構成する測定部10は、キュベットテーブル15と、第1検体分注ユニット21を備えており、また、測定ユニット3は、キュベット中の測定試料から光学的情報を検出する検出部40を備えて」いるから、「情報処理ユニット4」は、第1検体分注ユニット21、キュベットテーブル15、キュベット中の測定試料から光学的情報を検出する検出部40、及び「第1検体分注ユニット21」の「備えるカメラ21d」の動作を含めた制御を行うといえる。 (イ)そうすると、上記ア?エを踏まえると、引用発明の「情報処理ユニット4」と、本願発明1の「上記液体分注機構、上記反応槽、上記光度計、及び上記液体分注ノズル用カメラの動作を制御する制御部」とは、「上記液体分注機構、上記反応容器配置部、上記光学的検出装置、及び上記液体分注ノズル用カメラの動作を制御する制御部」で共通する。 カ 液体吐出位置について (ア)引用発明の「検体吐出位置18」は、本願発明1の「液体吐出位置」に相当する。 (イ)そうすると、引用発明の「吸引された検体は、キュベットテーブル15の前方位置にある検体吐出位置18に位置づけられたキュベット保持孔15aにセットされたキュベットに吐出され」ることと、本願発明1の「上記反応槽は、上記液体分注ノズルから上記液体が吐出される液体吐出位置を有し、上記液体吐出位置における上記反応槽の側面に透明の反応槽スリットが形成されている」こととは、「上記液体分注ノズルから上記液体が吐出される液体吐出位置を有する」ことで共通する。 (2)よって、本願発明1と引用発明とは、 「 上下及び水平方向に移動し、液体容器から液体を吸引して、反応容器に吐出する液体分注ノズルと、当該液体分注ノズルを上下方向及び水平方向に移動させる支柱とを有する液体分注機構と、 上記反応容器が複数配置される反応容器配置部と、 上記反応容器内の試料から光学的情報を抽出する光学的検出装置と、 上記液体分注機構の側面側に配置され、上記支柱の移動に伴って、上記液体分注ノズルの上下方向及び水平方向に移動し、上記液体分注ノズルの先端部分を撮影する液体分注ノズル用カメラと、 上記液体分注機構、上記反応容器配置部、上記光学的検出装置、及び上記液体分注ノズル用カメラの動作を制御する制御部と、 を備え、 上記液体分注ノズルから上記液体が吐出される液体吐出位置を有する、自動分析装置。」 の発明である点で一致し、次の2点で相違する。 (相違点1) 液体分注ノズル用カメラの取付け位置、液体分注ノズルの先端部分を撮影する方向、及び反応容器配置部の構成について、本願発明1では、「液体分注ノズルを上下方向及び水平方向に移動させる支柱」に液体分注ノズル用カメラが取り付けられており、「液体分注ノズルの側面側から」液体分注ノズルの先端部分を撮影するものであり、「反応容器配置部」が「反応槽」であって、「液体吐出位置における上記反応槽の側面に透明の反応槽スリットが形成されている」のに対して、引用発明では、「アーム部21bの先端」にカメラ21dが取り付けられており、そのため、「ピペット21c」の斜め上方からピペット21cの先端を撮影するようになっており、「反応容器配置部」が「キュベットテーブル15」であって、「槽」を備えているかは不明な点。 (相違点2) 上記反応容器内の試料から光学的情報を抽出する光学的検出装置が、本願発明1においては「光度計」であるのに対し、引用発明においては「光度計」であることは特定されていない点。 (3)相違点についての判断 ア 上記相違点1について検討する。 (ア)引用文献2技術事項は、プローブニードル等の液体注入部9をターンテーブル4の上方に支持する支持部11に支持された二次元イメージセンサ13により、ターンテーブル4上の標線付容器3を撮像し、その二次元画像24から標線付容器3の水平方向の位置と、標線22及び液面の夫々の位置を検出することを開示しているが、支持部11はプローブニードル等の液体注入部9を移動させるものではなく、二次元イメージセンサ13はプローブニードル等の液体注入部9の先端を撮影するものではなく、反応槽も有していない。 (イ)また、「ピペットの一部とピペットがアクセスしようとしている対象物である容器の開口部とを撮像し」、「ピペットの容器に対する位置ずれを良好に判別可能な画像が得られるように」している引用発明において、「標線付容器3の水平方向の位置と、標線22及び液面の夫々の位置を検出する」ものである引用文献2技術事項における二次元イメージセンサ13の配置の採用を動機付ける事情があるとはいえない そうすると、引用発明及び引用文献2の記載事項から、当業者であっても上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想起し得たとはいえない。 (ウ)引用文献3技術事項は、CCDカメラ202によりサンプルプローブ3の側方からサンプルプローブ3先端を撮影することを開示しているといえるが、CCDカメラ202は反応槽9の側面に組み込まれており、サンプルプローブ3を移動させる支柱に取り付けられたものではなく、反応槽の側面に透明のスリットを形成することを動機付けるものではない。 (エ)引用文献4技術事項は、チップ12の側方からチップ12の先端を撮影することを開示しているといえるが、CCDカメラ(撮像手段)14は分注ヘッドユニット10の側面に取り付けられており、チップ12を移動させる支柱に取付けられてものではないし、側面に透明のスリットを有する反応槽を開示するものでもない。 (オ)引用文献5技術事項は、プローブガードを開示しているが、プローブを撮影するカメラを開示するものではない。 (カ)引用文献6技術事項は、アーム1に設けたCCDカメラでターゲットを撮影することを開示しているといえるが、CCDカメラをアーム1の支柱に取り付けてプローブチップの先端を撮影することを開示するものではない。 また、引用文献6技術事項のCCDカメラ(214)は、フローセル(219)の映像を取得するものであり、蛍光体から生じた蛍光を取得するためのもので、プローブチップの先端を撮影するものではない。 (キ)引用文献7に記載された、反応ディスク2の側壁部33に設けられた窓部32は、反応槽の側面に形成された透明の反応槽スリットであるといえるが、吸光度を測定するためのものであり、液体分注ノズルの先端部分を撮影するものではないから、液体吐出位置における反応槽の側面に透明の反応槽スリットを形成することを動機付けるものではない。 (ク)引用文献8に記載された、反応容器ホルダ14の外側面及び内側面に設けられた窓142及び143は、反応槽の側面に形成された透明の反応槽スリットであるといえるが、測光部17が反応容器55へ照射する光を透過させるためのものであり、液体分注ノズルの先端部分を撮影するものではないから、液体吐出位置における反応槽の側面に透明の反応槽スリットを形成することを動機付けるものではない。 (ケ)以上より、引用発明及び引用文献2?8に記載の事項から、当業者であっても上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想起し得たともいえない。 また、上記相異点1に係る本願発明1の発明特定事項が周知技術であるともいえない。 イ したがって、上記相違点2についての判断を示すまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2?8に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし14について 本願発明2ないし14は、本願発明1を技術的に限定・減縮した発明であって、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2?8に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 原査定についての判断 令和2年8月5日付けの補正により、補正後の本願発明1ないし14は、反応槽について、「液体吐出位置における上記反応槽の側面に透明の反応槽スリットが形成されている」という技術的事項を有するものとなった。当該技術事項は、原査定における引用文献1?6には記載されておらず、本願出願時における周知技術でもないので、本願発明1ないし14は、当業者であっても、原査定における引用文献1?6に基づいて容易に発明できたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由により、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-04-26 |
出願番号 | 特願2016-34883(P2016-34883) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01N)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 野田 華代 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
福島 浩司 渡戸 正義 |
発明の名称 | 自動分析装置 |
代理人 | 特許業務法人開知国際特許事務所 |