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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B |
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管理番号 | 1373400 |
審判番号 | 不服2020-4115 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-03-27 |
確定日 | 2021-04-22 |
事件の表示 | 特願2015-245258「出題問題決定方法、出題問題決定装置、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月22日出願公開、特開2017-111292〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年12月26日の出願であって、令和1年5月30日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月16日付けで意見書が提出されたところ、同年12月25日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、令和2年3月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和2年3月27日の手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年3月27日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) 本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の出願当初の特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。 (本件補正前) 「【請求項1】 問題に対する解答の入力を受け付けると、問題と該問題の教科との対応関係を示す情報と、問題と該問題の種別との対応関係を示す情報と、を記憶する記憶部を参照して、前記解答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科で、前記解答の入力を受け付けた前記問題と同じ種別の問題を抽出する処理と、 抽出した前記問題を次に出題する問題に決定する処理と、 をコンピュータが実行することを特徴とする出題問題決定方法。」 (本件補正後) 「【請求項1】 問題に対する解答の入力を受け付けると、問題と該問題の教科との対応関係を示す情報と、問題間の種別に基づく関連付けを示す情報と、を記憶する記憶部を参照して、前記解答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科で、前記解答の入力を受け付けた前記問題に関連付けられている問題を抽出する処理と、 抽出した前記問題を次に出題する問題に決定する処理と、 をコンピュータが実行することを特徴とする出題問題決定方法。」 2 補正の適否 (1)新規事項の追加について 本件補正は、 ア 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「問題を抽出する処理」において「参照」される「記憶部」に「記憶」される「情報」について、「問題と該問題の教科との対応関係を示す情報と、問題と該問題の種別との対応関係を示す情報」を、「問題と該問題の教科との対応関係を示す情報と、問題間の種別に基づく関連付けを示す情報」に変更すること(以下、「補正事項ア」という。)、 イ 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「問題を抽出する処理」において「抽出」される「問題」について、「前記解答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科で、前記解答の入力を受け付けた前記問題と同じ種別の問題」を、「前記解答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科で、前記解答の入力を受け付けた前記問題に関連付けられている問題」に変更すること(以下、「補正事項イ」という。) を含むものである。 そして、補正事項アに関連して、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある(下線は当審で付した。)。 「【0018】 出題データ記憶部14には、出題対象の問題の一覧情報が記憶されている。問題カテゴリ記憶部15には、各問題と、教科、単元、各問題が分類されるカテゴリ(種別)等との対応関係を示す情報が記憶されている。なお、教科は、例えば、国語、社会、算数、理科等であり、科目として言い換えられてもよい。また、単元は、各教科における学習活動のまとまり(単位)をいう。例えば、算数であれば、足し算、引き算、かけ算等が単元の一例である。但し、例えば、1桁の足し算、2桁以上の足し算等、更に細分化された単位が単元として把握されてもよい。」 「【0034】 一方、入力された解答が正答でない場合(S206でNo)、又は入力された解答が正答であっても解答時間が閾値αを超える場合(S207でNo)、出題した問題の理解度は不十分であると判断する。この場合、問題選択部11は、対象問題とは異なる教科の問題であって、対象問題と同じカテゴリ(同じ種別)に属する問題を、問題カテゴリ記憶部15を参照して選択する(S208)。 【0035】 図6は、第1の実施の形態における問題カテゴリ記憶部の構成例を示す図である。図6に示されるように、問題カテゴリ記憶部15には、問題ごとに、教科名、単元名、問題ID、及びカテゴリ名等を記憶する。 【0036】 教科名、単元名、及び問題IDは、図4において説明した通りである。カテゴリ名は、カテゴリの名称である。カテゴリは、例えば、問題の正解の内容や、問題の正解を導き出すために必要な知識等を分類する概念である。本実施の形態において、カテゴリは、教科は異なるが、関連の有る問題を関連付けることを目的とする。例えば、共通の知識が必要とされる問題同士や、一方の問題に他方の問題の解答が含まれているような問題には、共通のカテゴリ名が設定される。具体的には、「国語」における漢字の書き取り問題と、当該書き取り問題の正解の漢字を含む地名を問う「社会」の問題とに対して、共通のカテゴリ名が設定されてもよい。 ・・・ 【0038】 ステップS208では、対象問題レコードの教科名と異なる教科名を含み、対象問題レコードのカテゴリ名と同じカテゴリ名を含むレコードが、問題カテゴリ記憶部15から抽出(検索)される。該当するレコードが一つであれば、当該レコードが選択される。該当するレコードが複数であれば、例えば、得意教科のレコードが優先的に選択されてもよい。誤答した後で間違えた問題と同じカテゴリで得意教科の問題に取り組むことで、学習者は出題された問題を正解できる可能性が高いだけでなく、直前に間違えた問題の理解が補助される。これによって、学習意欲の向上を期待することができるだけでなく、理解度の向上および定着を図る事ができる。また、正解したが解答に時間を要した場合にも、同じカテゴリの関連する問題を出題することで、迅速な解答が期待でき、理解度を定着させることができる。なお、ステップS208では、当日の処理において既に出題された問題は、選択対象から除外されるようにしてもよい。」 ここで、上記段落【0036】には、「カテゴリ」が、「教科は異なるが、関連の有る問題を関連付けることを目的とする」こと、そのために「共通の知識が必要とされる問題同士や、一方の問題に他方の問題の解答が含まれているような問題には、共通のカテゴリ名が設定される」ことが記載されているが、当該記載からは、「カテゴリ」がそのような目的として、一定のルールでそれぞれの問題に割り当てられる情報であることが読み取れるのみであって、「カテゴリ」という情報自体が「問題間の種別に基づく関連付けを示す情報」であると理解できるわけでもないし、そもそも「種別」に相当するものである「カテゴリ」が、それぞれの「問題」に対応付けた「種別」に基づいて「それらの関連づけを示す情報」という「種別」と異なる情報を意味するものといえないことは明らかである。 したがって、補正事項アの「問題間の種別に基づく関連付けを示す情報」「を記憶する記憶部」とする点は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 以上のとおりであるから、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 (2)補正の目的について 上記(1)で述べたとおり、補正事項アは、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「問題を抽出する処理」において「参照」される「記憶部」に「記憶」される「情報」について、「問題と該問題の教科との対応関係を示す情報と、問題と該問題の種別との対応関係を示す情報」を、「問題と該問題の教科との対応関係を示す情報と、問題間の種別に基づく関連付けを示す情報」に変更するものであるところ、補正後の「問題間の種別に基づく関連付けを示す情報」は、補正前の「問題と該問題の種別との対応関係を示す情報」の下位概念ということはできず、発明を特定するために必要な事項を限定するものに該当するものといえないことは明らかである。 また、補正事項イは、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「問題を抽出する処理」において「抽出」される「問題」について、「前記解答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科で、前記解答の入力を受け付けた前記問題と同じ種別の問題」を、「前記解答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科で、前記解答の入力を受け付けた前記問題に関連付けられている問題」に変更するものであるところ、補正後の「前記問題に関連付けられている問題」は、補正前の「前記問題と同じ種別の問題」の下位概念ということはできず、発明を特定するために必要な事項を限定するものに該当するものといえないことは明らかである。 ゆえに、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものとはいえないから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当せず、また、同条第5項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)、第4号(明りょうでない記載の釈明)のいずれにも該当しないことも明らかである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。 3 独立特許要件について 仮に、本件補正が、新規事項の追加に該当せず、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、すなわち、本件の特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、念のため検討しておく。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。 ここで、本件補正が、新規事項の追加に該当せず、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものといえるためには、上記2の検討を踏まえれば、補正事項アの「問題間の種別に基づく関連付けを示す情報」とは、「問題間の種別に基づく関連付け」を目的とする、「問題と該問題の種別との対応関係を示す情報」を意味するものであり、補正事項イの「前記解答の入力を受け付けた前記問題に関連付けられている問題を抽出する」とは、「前記解答の入力を受け付けた前記問題に同じ種別として関連付けられている問題を抽出する」ことを意味するものであることが必要であると解される。 そこで、以下、本願補正発明を次のように解して、独立特許要件を検討する。 (仮の本願補正発明) 「問題に対する解答の入力を受け付けると、問題と該問題の教科との対応関係を示す情報と、問題間の種別に基づく関連付けを目的とする、問題と該問題の種別との対応関係を示す情報と、を記憶する記憶部を参照して、前記解答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科で、前記解答の入力を受け付けた前記問題に同じ種別として関連付けられている問題を抽出する処理と、 抽出した前記問題を次に出題する問題に決定する処理と、 をコンピュータが実行することを特徴とする出題問題決定方法。」 (2)引用文献に記載された事項 ア 原査定の拒絶の理由で引用され本願の出願前に頒布された特開2006-215482号公報(以下「引用文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 (ア)「【請求項 15】 格納されている複数の、問題に関する情報である問題情報から、1以上の問題情報を取得する問題情報取得ステップと、 前記取得した問題情報を送信する問題情報送信ステップと、 前記問題情報に対応した解答についての情報である解答情報を受信する解答情報受信ステップとを具備し、 前記問題情報取得ステップにおいて、前記受信した解答情報に基づいて、前記一以上の問題情報を取得する情報処理方法。」 「【0018】 解答情報受信部14は、情報処理端末2から送信された、問題情報送信部13が送信した問題情報に対応した解答についての情報である解答情報を受信する。」 「【0022】 カテゴリー情報格納部18は、問題情報格納部11に格納されている問題情報に対するカテゴリーを示す情報であるカテゴリー情報を格納している。カテゴリー情報は、具体的には、各問題情報がどのカテゴリーに属するかを示す情報である。カテゴリーはどのようなものであってもよい。例えば、国語、理科、算数等の科目についてのカテゴリーや、文章問題、計算問題という問題の出題形態のカテゴリーなどであってもよい。また、応用問題、基礎問題等の問題のレベルについてのカテゴリーや、小学1年生、中学3年生といった問題の対応する学年のカテゴリーや、計算、図形といった分野のカテゴリーであってもよい。カテゴリー情報格納部18は、例えば、カテゴリー情報を、問題情報を識別するための識別情報と関連付けて格納している。カテゴリー情報格納部18は、ハードディスクや、CD-ROM等の不揮発性の記録媒体が好適であるが、RAM等の揮発性の記録媒体でも実現可能である。 「【0029】 次に、サーバ装置1の動作について、図2に示したフローチャートを用いて説明する。 (ステップS201)問題情報取得部12が、情報処理端末2に対して送信する問題情報を取得する指示を受けたか否かを判定する。問題情報取得部12が、この問題情報を送信する指示をどこから受けるかは問わない。例えば、情報処理端末2から受けてもよいし、他のサーバ装置等から受けてもよい。受け付けた場合、ステップS202へ進み、受け付けていない場合、ステップS201に戻る。 (ステップS202)問題情報取得部12が、内部のカウンターの値iを1に設定する。 (ステップS203)問題情報取得部12が、問題情報を取得する指示が指定する問題情報を、問題情報格納部11から取得する。 (ステップS204)問題情報送信部13が、ステップS203により取得された問題情報を、情報処理端末2に対して送信する。 【0030】 (ステップS205)解答情報受信部14が、情報処理端末2が送信した解答情報を受信したか否かを判定する。受信した場合、ステップS206に進み、受信していない場合ステップS205に戻る。 【0031】 (ステップS206)解答情報評価部16が、ステップS205において受信した解答情報に対応する問題情報の評価情報を、評価情報格納部15から取得する。 【0032】 (ステップS207)解答情報評価部16が、ステップS206において取得した評価情報を用いて、解答情報が示す解答が、「正解」であるか、「不正解」であるかを評価し、評価結果情報を得る。 【0033】 (ステップS208)問題情報取得部12が、カウンターの値iが所定のテスト回数の上限を定める値k(kは2以上の値)より小さいか否か判定する。kより小さい場合、ステップS209に進み、k以上である場合、ステップS201に戻る。 (ステップS209)問題情報取得部12が、ステップS207で得られた評価結果情報を取得する。 (ステップS210)問題情報取得部12が、ステップS210で取得した評価結果情報に基づき、問題情報格納部11から問題情報を取得する。 (ステップS211)問題情報取得部12が、カウンターの値iを1インクリメントし、ステップS204へ戻る。 なお、図2のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより、処理は終了する。」 「【0036】 次に、問題情報取得部12が、解答情報評価部16から取得した評価結果情報に基づいて、1以上の問題情報を取得する処理の例について説明する。 問題情報取得部12は、評価結果情報を取得した場合、評価結果情報が示す解答情報の評価結果、具体的には、解答情報が正解であるか、不正解であるかという評価結果に基づいて、問題情報格納部11から問題情報を取得する。例えば、解答情報に対する解答情報評価部16の評価結果が不正解であれば、問題情報取得部12が、この解答情報に対応する問題情報を、再度、取得するようにしてもよい。また、解答情報評価部16の評価結果が正解である解答情報に対応する問題情報を、再び取得しないことを条件として、この条件を満たす問題情報を取得してもよい。」 「【0040】 また、問題情報取得部12は、解答情報評価部16から取得した評価結果情報に加えて、カテゴリー情報格納部18の格納するカテゴリー情報に基づいて、取得する問題情報を決定するようにしてもよい。例えば、解答情報に対する評価結果情報が不正解であれば、問題情報取得部12が、この解答情報に対応する問題情報のカテゴリー情報をカテゴリー情報格納部18から取得し、このカテゴリー情報と同じカテゴリーであることを条件として、この条件を満たす問題情報を取得するようにしてもよい。また、解答情報に対する評価結果情報が正解であれば、問題情報取得部12が、この解答情報に対応する問題情報のカテゴリー情報をカテゴリー情報格納部18から取得し、このカテゴリー情報と異なるカテゴリーであることを条件として、この条件を満たす問題情報を取得するようにしてもよい。」 「【0047】 図4は、問題情報格納部11が格納している問題情報と、難易度情報と、カテゴリー情報とを管理するための問題情報管理表である。この問題情報管理表は、「問題ID」、「問題情報」、「学習レベル」、「科目」、「分野」、「テーマ名称」、「難易度」という属性を有している。「問題ID」は、問題情報を識別するための識別情報である。「問題情報」は、問題情報格納部11に格納されている問題情報のファイル名である。なお、ファイル名の代わりに、データの格納場所等を指定する情報であってもよいし、問題情報自身を有していてもよい。「学習レベル」は、問題情報の対象とするユーザを示す指標であり、ここではユーザの学年を示している。「科目」は、算数や、国語等の問題情報の科目である。「分野」は、問題情報の科目内における、問題情報の分野を示している。「テーマ名称」は、問題情報の分野内におけるテーマの名称を示している。「難易度」は、問題情報の難易度で、ここでは0から100までの数値で表している。値の大きいほうが難易度が高い、すなわち難しいことを示している。「科目」、「学習レベル」、「分野」、「テーマ名称」の属性は、それぞれカテゴリー情報に相当する。また、ここでは、問題情報格納部11に格納されている一つの問題情報からは、一つの解答情報のみが得られるものであるとする。「問題ID」、「問題情報」、「科目」、「学習レベル」、「分野」、「テーマ名称」、「難易度」のデータ構造は問わない。」 (認定事項1) 段落【0022】及び【0047】の記載から、カテゴリー情報格納部18に格納されるカテゴリー情報には、国語、理科、算数等の問題情報の科目についてのカテゴリー、小学1年生、中学3年生といった問題情報の学年についてのカテゴリー、計算、図形といった問題情報の分野についてのカテゴリー及び問題情報のテーマ名称についてのカテゴリーが含まれるものと認められる。 (認定事項2) 段落【0040】に記載の「問題情報取得部12が、この解答情報に対応する問題情報のカテゴリー情報をカテゴリー情報格納部18から取得し、このカテゴリー情報と異なるカテゴリーであることを条件として、この条件を満たす問題情報を取得する」とは、「カテゴリー情報」の対象が、段落【0022】に記載された「国語、理科、算数等の科目についてのカテゴリー」であるときは、「この解答情報に対応する問題情報のカテゴリー情報をカテゴリー情報格納部18から取得し、国語、理科、算数等の科目についてのカテゴリーに関して、このカテゴリー情報と異なるカテゴリーであることを条件として、この条件を満たす問題情報を取得する」ことであるものと認められる。 上記記載事項及び認定事項を総合すれば、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「解答情報受信部14が、情報処理端末2が送信した、問題情報に対応した解答についての情報である解答情報を受信し、 解答情報評価部16が、受信した解答情報に対応する問題情報の評価情報を、評価情報格納部15から取得し、取得した評価情報を用いて、解答情報が示す解答が、「正解」であるか、「不正解」であるかを評価し、評価結果情報を得て、 問題情報取得部12が、解答情報評価部16から取得した評価結果情報に加えて、各問題情報が、国語、理科、算数等の科目についてのカテゴリー、小学1年生、中学3年生といった学年についてのカテゴリー、計算、図形といった分野についてのカテゴリー及びテーマ名称についてのカテゴリーに関して、それぞれどのカテゴリーに属するかを示す情報を格納するカテゴリー情報格納部18のカテゴリー情報に基づいて、問題情報格納部11から問題情報を取得するものであって、解答情報に対する評価結果情報が正解であれば、問題情報取得部12が、この解答情報に対応する問題情報のカテゴリー情報をカテゴリー情報格納部18から取得し、国語、理科、算数等の科目についてのカテゴリーに関して、このカテゴリー情報と異なるカテゴリーであることを条件として、この条件を満たす問題情報を取得し、 問題情報送信部13が、取得された問題情報を、情報処理端末2に対して送信する ことをサーバ装置1が実行する、問題情報を取得する情報処理方法。」 (3)対比・判断 ア 対比 仮の本願補正発明と引用発明とを対比する。 (a)引用発明の「解答情報受信部14が、情報処理端末2が送信した、問題情報に対応した解答についての情報である解答情報を受信」することは、仮の本願補正発明の「問題に対する解答の入力を受け付ける」ことに相当する。 (b)引用発明の「各問題情報が国語、理科、算数等の科目についてのカテゴリー」「について」「どのカテゴリーに属するかを示す情報」は、仮の本願補正発明の「問題と該問題の教科との対応関係を示す情報」に相当する。 (c)引用発明の「各問題情報が」「小学1年生、中学3年生といった問題の対応する学年のカテゴリー、計算、図形といった分野についてのカテゴリー及びテーマ名称についてのカテゴリーに関して、それぞれどのカテゴリーに属するかを示す情報」は、問題間のカテゴリーという種別に基づく関連付けを目的とする、問題と該問題のカテゴリーという種別との対応関係を示す情報といえるから、仮の本願補正発明の「問題間の種別に基づく関連付けを目的とする、問題と該問題の種別との対応関係を示す情報」に相当する。 (d)引用発明において、「カテゴリー情報格納部18」は「カテゴリー情報」を記憶する記憶部といえ、「カテゴリー情報格納部18のカテゴリー情報に基づ」くことは、「カテゴリー情報」を記憶する記憶部を参照することといえるから、引用発明の「カテゴリー情報格納部18のカテゴリー情報に基づ」くことは、仮の本願補正発明の「記憶部を参照」することに相当する。 (e)引用発明の「解答情報に対する評価結果情報が正解であれば、問題情報取得部12が、この解答情報に対応する問題情報のカテゴリー情報をカテゴリー情報格納部18から取得し、国語、理科、算数等の科目についてのカテゴリーに関して、このカテゴリー情報と異なるカテゴリーであることを条件として、この条件を満たす問題情報を取得」することは、仮の本願補正発明の「前記解答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科」の「問題を抽出する処理」に相当する。 (f)引用発明は、「正解」した場合に、「条件を満たす問題を取得し」て、「取得」した「問題」を「情報端末」に「送信」するものであり、この問題をユーザに解答させるものであるから、出題問題を決定するものといえ、引用発明は、仮の本願補正発明の「抽出した前記問題を次に出題する問題に決定する処理」に相当するものを備えるものといえる。 (g)サーバ装置がコンピュータで構成されるという技術常識に鑑みれば、引用発明の「サーバ装置1が実行する」ことは、仮の本願補正発明の「コンピュータが実行する」ことに相当する。 (h)引用発明の「問題情報を取得する情報処理方法」は、上記(f)の検討を踏まえれば、出題問題を決定するものといえるから、仮の本願補正発明の「出題問題決定方法」に相当するものといえる。 してみると、仮の本願補正発明と引用発明とは、 「問題に対する解答の入力を受け付けると、問題と該問題の教科との対応関係を示す情報と、問題間の種別に基づく関連付けを目的とする、問題と該問題の種別との対応関係を示す情報と、を記憶する記憶部を参照して、前記解答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科の問題を抽出する処理と、 抽出した前記問題を次に出題する問題に決定する処理と、 をコンピュータが実行する出題問題決定方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 「抽出する処理」において「抽出」される「前記回答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科の問題」が、仮の本願補正発明は「前記解答の入力を受け付けた前記問題に同じ種別として関連付けられる問題」であるのに対し、引用発明は小学1年生、中学3年生といった学年についてのカテゴリー、計算、図形といった分野についてのカテゴリー及びテーマ名称についてのカテゴリーに関して、解答情報に対応する問題情報のカテゴリー情報と、同じカテゴリーである問題情報が取得されるのか否か、不明な点。 イ 判断 (相違点について) 引用発明において、解答情報に対する評価結果情報が正解で、国語、理科、算数等の科目についてのカテゴリーに関して、解答情報に対応する問題情報のこのカテゴリー情報と異なるカテゴリーの問題情報を取得する際に、この問題情報のその他のカテゴリー情報である、小学1年生、中学3年生といった学年についてのカテゴリー、計算、図形といった分野についてのカテゴリー及びテーマ名称についてのカテゴリーに関して、解答情報に対応する問題情報のカテゴリー情報と、同じカテゴリーの問題情報が取得されるようにするか否かは、ユーザの学習効率を考慮して当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。そして、一般に、学習効率が良くなるように学年別に学習用教材が作られていることに鑑みれば、小学1年生、中学3年生といった学年についてのカテゴリーに関しては、同じカテゴリーの問題情報が選択されるようにしてユーザに解答させることが、学習効率上好ましいであろうことは、当業者にとって明らかである。したがって、引用発明において、解答情報に対する評価結果情報が正解で、国語、理科、算数等の科目についてのカテゴリーに関して、解答情報に対応する問題情報のこのカテゴリー情報と異なるカテゴリーの問題情報を取得する際に、この問題情報の小学1年生、中学3年生といった学年についてのカテゴリーに関して、同じカテゴリーの問題情報が選択されるようにして、相違点に係る仮の本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 そして、仮の本願補正発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明から、当業者が予測し得る範囲内のものである。 (4)審判請求書における請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、「問題に対する解答の入力を受け付けると、問題と該問題の教科との対応関係を示す情報と、問題間の種別に基づく関連付けを示す情報と、を記憶する記憶部を参照して、前記解答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科で、前記解答の入力を受け付けた前記問題に関連付けられている問題を抽出する」といった構成は、引用文献には示唆されていない旨主張する。 しかしながら、上記(3)アで検討したように、引用発明は、「問題に対する解答の入力を受け付けると、問題と該問題の教科との対応関係を示す情報と、問題間の種別に基づく関連付けを示す情報と、を記憶する記憶部を参照して」「問題を抽出する」ものといえるし、上記(3)イで検討したように、引用発明において「前記解答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科で、前記解答の入力を受け付けた前記問題に同じ種別として関連付けられている問題を抽出する」ものとすることは当業者が容易になし得たことであるから、請求人の主張は採用できない。 (5)小括 したがって、仮の本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 4 まとめ 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項に規定する要件に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 また、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件に違反するものでなく、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当するとしても、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成27年12月16日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶理由 原査定の拒絶の理由のうち請求項1に係るものは、 (進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・特開2006-215482号公報(引用文献) というものである。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 ア 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (a)引用発明の「解答情報受信部14が、情報処理端末2が送信した、問題情報に対応した解答についての情報である解答情報を受信」することは、本願発明の「問題に対する解答の入力を受け付ける」ことに相当する。 (b)引用発明の「各問題情報が国語、理科、算数等の科目についてのカテゴリー」「について」「どのカテゴリーに属するかを示す情報」は、本願発明の「問題と該問題の教科との対応関係を示す情報」に相当する。 (c)引用発明の「各問題情報が」「小学1年生、中学3年生といった問題の対応する学年のカテゴリー、計算、図形といった分野についてのカテゴリー及びテーマ名称についてのカテゴリーに関して、それぞれどのカテゴリーに属するかを示す情報」は、問題と該問題のカテゴリーという種別との対応関係を示す情報といえるから、本願発明の「問題と該問題の種別との対応関係を示す情報」に相当する。 (d)引用発明において、「カテゴリー情報格納部18」は「カテゴリー情報」を記憶する記憶部といえ、「カテゴリー情報格納部18のカテゴリー情報に基づ」くことは、「カテゴリー情報」を記憶する記憶部を参照することといえるから、引用発明の「カテゴリー情報格納部18のカテゴリー情報に基づ」くことは、本願発明の「記憶部を参照」することに相当する。 (e)引用発明の「解答情報に対する評価結果情報が正解であれば、問題情報取得部12が、この解答情報に対応する問題情報のカテゴリー情報をカテゴリー情報格納部18から取得し、国語、理科、算数等の科目についてのカテゴリーに関して、このカテゴリー情報と異なるカテゴリーであることを条件として、この条件を満たす問題情報を取得」することは、本願発明の「前記解答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科」の「問題を抽出する処理」に相当する。 (f)引用発明は、「正解」した場合に、「条件を満たす問題を取得し」て、「取得」した「問題」を「情報端末」に「送信」するものであり、この問題を解答させるものであるから、出題問題を決定するものといえ、引用発明は、本願発明の「抽出した前記問題を次に出題する問題に決定する処理」に相当するものを備えるものといえる。 (g)サーバ装置がコンピュータで構成されるという技術常識に鑑みれば、引用発明の「サーバ装置1が実行する」ことは、本願発明の「コンピュータが実行する」ことに相当する。 (h)引用発明の「問題情報を取得する情報処理方法」は、上記(f)の検討を踏まえれば、出題問題を決定するものといえるから、本願発明の「出題問題決定方法」に相当するものといえる。 してみると、本願発明と引用発明とは、 「問題に対する解答の入力を受け付けると、問題と該問題の教科との対応関係を示す情報と、問題と該問題の種別との対応関係を示す情報と、を記憶する記憶部を参照して、前記解答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科の問題を抽出する処理と、 抽出した前記問題を次に出題する問題に決定する処理と、 をコンピュータが実行する出題問題決定方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 「抽出する処理」において「抽出」される「前記回答の入力を受け付けた前記問題と異なる教科の問題」が、本願補正発明は「前記解答の入力を受け付けた前記問題と同じ種別の問題」であるのに対し、引用発明は小学1年生、中学3年生といった学年についてのカテゴリー、計算、図形といった分野についてのカテゴリー及びテーマ名称についてのカテゴリーに関して、解答情報に対応する問題情報のカテゴリー情報と、同じカテゴリーである問題情報が取得されるのか否か、不明な点。 イ 判断 (相違点について) 引用発明において、解答情報に対する評価結果情報が正解で、国語、理科、算数等の科目についてのカテゴリーに関して、解答情報に対応する問題情報のこのカテゴリー情報と異なるカテゴリーの問題情報を取得する際に、この問題情報のその他のカテゴリー情報である、小学1年生、中学3年生といった学年についてのカテゴリー、計算、図形といった分野についてのカテゴリー及びテーマ名称についてのカテゴリーに関して、解答情報に対応する問題情報のカテゴリー情報と、同じカテゴリーの問題情報が取得されるようにするか否かは、ユーザの学習効率を考慮して当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。そして、一般に、学習効率が良くなるように学年別に学習用教材が作られていることに鑑みれば、小学1年生、中学3年生といった学年についてのカテゴリーに関しては、同じカテゴリーの問題情報が選択されるようにしてユーザに解答させることが、学習効率上好ましいであろうことは、当業者にとって明らかである。 したがって、引用発明において、解答情報に対する評価結果情報が正解で、国語、理科、算数等の科目についてのカテゴリーに関して、解答情報に対応する問題情報のこのカテゴリー情報と異なるカテゴリーの問題情報を取得する際に、この問題情報の小学1年生、中学3年生といった学年についてのカテゴリーに関して、同じカテゴリーの問題情報が選択されるようにして、相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明から、当業者が予測し得る範囲内のものである。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-02-09 |
結審通知日 | 2021-02-16 |
審決日 | 2021-03-02 |
出願番号 | 特願2015-245258(P2015-245258) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西村 民男 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
藤田 年彦 吉村 尚 |
発明の名称 | 出題問題決定方法、出題問題決定装置、及びプログラム |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |