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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1373401
審判番号 不服2020-4427  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-02 
確定日 2021-04-22 
事件の表示 特願2015-191437「情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開、特開2017- 63949〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月29日の出願であって、平成30年9月7日付けで手続補正書が提出され、令和1年7月31日付けで拒絶理由が通知され、同年9月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和2年2月14日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年4月2日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 令和2年4月2日付けで提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年4月2日付けで提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和1年9月20日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至29を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至30へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
センサの出力情報に基づいて生成される、ユーザの動作を示す動作情報と、前記動作によって生じる結果を示す結果情報とを対応付ける対応付け処理部を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記ユーザの動作は、前記ユーザが用いる道具の動きを含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記動作情報は、動き検出センサによる前記ユーザの動作の検出結果を示す動き検出データを含む、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記動作情報は、所定の処理を行うことで前記ユーザの動作を検出できる動き推定データを含む、請求項1?3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記動き推定データは、前記ユーザが撮像された撮像画像を示す、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記センサの出力情報のうち、1または2以上の区間に対応する情報を前記動作情報とする、請求項1?5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記区間は、前記ユーザの動作の開始を示す入力と前記ユーザの動作の終了を示す入力に基づいて決定される、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記区間は、検出されたインパクトのタイミングの前後所定時間に基づいて決定される、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記区間は、検出された前記ユーザの動作の、開始と終了に基づいて決定される、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記対応付け処理部は、前記動作情報に付加されている第1の識別情報と、前記結果情報に付加されている第2の識別情報とに基づいて、前記動作情報と前記結果情報とを対応付ける、請求項1?9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記対応付け処理部は、前記第1の識別情報と前記第2の識別情報とが一致した場合に、前記動作情報と前記結果情報とを対応付ける、請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記第1の識別情報は、前記動作情報に埋め込まれ、
前記第2の識別情報は、前記結果情報に埋め込まれる、請求項10または11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記第1の識別情報は、前記動作情報の名称に含まれ、
前記第2の識別情報は、前記結果情報の名称に含まれる、請求項10または11に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記第1の識別情報は、前記動作情報の識別子であり、
前記第2の識別情報は、前記結果情報の識別子である、請求項10?13のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記第1の識別情報は、前記動作情報が生成された時間を示す前記動作情報の時間情報であり、
前記第2の識別情報は、前記結果情報が生成された時間を示す前記結果情報の時間情報である、請求項10?13のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記結果情報に基づいて、前記動作を評価する評価部をさらに備える、請求項1?15のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記評価部は、前記結果情報が示す位置と目標位置に基づいて評価する、請求項16に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記評価部は、前記結果情報が示す位置と前記目標位置のズレに基づいて評価する、請求項17に記載の情報処理装置。
【請求項19】
前記評価部は、前記結果情報が示す位置の方向と前記目標位置の方向のズレに基づいて評価する、請求項18に記載の情報処理装置。
【請求項20】
前記評価部は、前記結果情報が示す位置と前記目標位置との距離に基づいて評価する、請求項18に記載の情報処理装置。
【請求項21】
前記評価部は、前記結果情報が示す位置が所定の領域に含まれるか否かに基づいて評価する、請求項17?20のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項22】
前記結果情報が示す位置は、ボールの到達位置を示す、請求項17?21のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項23】
前記評価部は、前記動作の結果を数値化することにより評価する、請求項16?22のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項24】
前記動作情報と前記結果情報とが対応付けられた対応付け結果と、前記結果情報に基づく前記動作の評価結果とに基づいて、前記動作情報が示す前記動作を複数の区分に分類する分類部をさらに備える、請求項16?23のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項25】
前記動作情報が示す前記動作の分類結果に基づいて、ユーザの動作を分析する分析部をさらに備える、請求項24に記載の情報処理装置。
【請求項26】
前記分析部は、異なる前記区分に属するユーザの動作の差分をとることによって、ユーザの動作を分析する、請求項25に記載の情報処理装置。
【請求項27】
ユーザの動作の分析結果を通知させる通知処理部をさらに備える、請求項25または26に記載の情報処理装置。
【請求項28】
センサの出力情報に基づいて生成される、ユーザの動作を示す動作情報と、前記動作によって生じる結果を示す結果情報とを対応付けるステップを有する、情報処理装置により実行される情報処理方法。
【請求項29】
センサの出力情報に基づいて生成される、ユーザの動作を示す動作情報と、前記動作によって生じる結果を示す結果情報とを対応付ける機能を、コンピュータに実現させるためのプログラム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
センサの出力情報に基づいて生成される、ユーザの動作を示す動作情報と、前記ユーザの動作によって生じる結果を示す結果情報とを対応付ける対応付け処理部と、
前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価する評価部と、を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記結果情報は、位置を示す情報を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記結果情報は、ボールの位置を示す情報を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ユーザの動作は、前記ユーザが用いる道具の動きを含む、請求項1?3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記動作情報は、動き検出センサによる前記ユーザの動作の検出結果を示す動き検出データを含む、請求項1?4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記動作情報は、所定の処理を行うことで前記ユーザの動作を検出できる動き推定データを含む、請求項1?5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記動き推定データは、前記ユーザが撮像された撮像画像を示す、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記センサの出力情報のうち、1または2以上の区間に対応する情報を前記動作情報とする、請求項1?7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記区間は、前記ユーザの動作の開始を示す入力と前記ユーザの動作の終了を示す入力に基づいて決定される、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記区間は、検出されたインパクトのタイミングの前後所定時間に基づいて決定される、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記区間は、検出された前記ユーザの動作の、開始と終了に基づいて決定される、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記対応付け処理部は、前記動作情報に付加されている第1の識別情報と、前記結果情報に付加されている第2の識別情報とに基づいて、前記動作情報と前記結果情報とを対応付ける、請求項1?11のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記対応付け処理部は、前記第1の識別情報と前記第2の識別情報とが一致した場合に、前記動作情報と前記結果情報とを対応付ける、請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記第1の識別情報は、前記動作情報に埋め込まれ、
前記第2の識別情報は、前記結果情報に埋め込まれる、請求項12または13に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記第1の識別情報は、前記動作情報の名称に含まれ、
前記第2の識別情報は、前記結果情報の名称に含まれる、請求項12または13に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記第1の識別情報は、前記動作情報の識別子であり、
前記第2の識別情報は、前記結果情報の識別子である、請求項12?15のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記第1の識別情報は、前記動作情報が生成された時間を示す前記動作情報の時間情報であり、
前記第2の識別情報は、前記結果情報が生成された時間を示す前記結果情報の時間情報である、請求項12?15のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記評価部は、前記結果情報が示す位置と目標位置に基づいて評価する、請求項1?17のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項19】
前記評価部は、前記結果情報が示す位置と前記目標位置のズレに基づいて評価する、請求項18に記載の情報処理装置。
【請求項20】
前記評価部は、前記結果情報が示す位置の方向と前記目標位置の方向のズレに基づいて評価する、請求項19に記載の情報処理装置。
【請求項21】
前記評価部は、前記結果情報が示す位置と前記目標位置との距離に基づいて評価する、請求項19に記載の情報処理装置。
【請求項22】
前記評価部は、前記結果情報が示す位置が所定の領域に含まれるか否かに基づいて評価する、請求項18?21のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項23】
前記結果情報が示す位置は、ボールの到達位置を示す、請求項18?22のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項24】
前記評価部は、前記ユーザの動作の結果を数値化することにより評価する、請求項1?23のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項25】
前記動作情報と前記結果情報とが対応付けられた対応付け結果と、前記結果情報に基づく前記ユーザの動作の評価結果とに基づいて、前記動作情報が示す前記ユーザの動作を複数の区分に分類する分類部をさらに備える、請求項1?24のいずれか1項に記載の情報
処理装置。
【請求項26】
前記動作情報が示す前記ユーザの動作の分類結果に基づいて、ユーザの動作を分析する分析部をさらに備える、請求項25に記載の情報処理装置。
【請求項27】
前記分析部は、異なる前記区分に属するユーザの動作の差分をとることによって、ユーザの動作を分析する、請求項26に記載の情報処理装置。
【請求項28】
ユーザの動作の分析結果を通知させる通知処理部をさらに備える、請求項26または27に記載の情報処理装置。
【請求項29】
センサの出力情報に基づいて生成される、ユーザの動作を示す動作情報と、前記ユーザの動作によって生じる結果を示す結果情報とを対応付けるステップと、
前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価するステップと、を有する、情報処理装置により実行される情報処理方法。
【請求項30】
センサの出力情報に基づいて生成される、ユーザの動作を示す動作情報と、前記ユーザの動作によって生じる結果を示す結果情報とを対応付ける機能と、
前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価する機能と、を、コンピュータに実現させるためのプログラム。」

2 本件補正について
(1)補正目的について
特許法第17条の2第5項の規定によれば、拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲についての補正は、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の減縮(第2号)、誤記の訂正(第3号)、明瞭でない記載の釈明(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
そこで、本件補正について、以下、検討する。
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1が本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に対応する場合
(ア)請求項の追加について
本件補正前の特許請求の範囲の請求項2?15、17?27が、それぞれ、本件補正後の特許請求の範囲の請求項4?17、18?28に対応し、本件補正前の特許請求の範囲の請求項28及び29が、それぞれ、本件補正後の特許請求の範囲の請求項29及び30に対応し、本件補正前の特許請求の範囲の請求項16が削除されたこととなる。
してみると、本件補正後の特許請求の範囲の請求項2及び3に対応する本件補正前の特許請求の範囲に記載された請求項はないから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項2及び3を追加する補正(以下「補正事項1」という。)は、特許請求の範囲の請求項数を増加する補正であって、「n項引用形式請求項をn-1以下の請求項に変更する補正」にも「発明特定事項が択一的なものとして記載された一つの請求項について、その択一的な発明特定事項をそれぞれ限定して複数の請求項に変更する補正」にも該当しないものである。
そうすると、補正事項1は、上記第2号に掲げられた特許請求の範囲を減縮する補正には該当しない。
また、上記補正事項1が、上記第1、3、4の各号に掲げられた、いずれの目的とするものにも該当しないことは明らかである。

(イ)発明特定事項の追加について
本件補正後の請求項1及び請求項1を引用する請求項2?28においては、「前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価する評価部」が新たに特定されることになった(以下「補正事項2」という。)。
また、本件補正後の請求項29においては、「前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価するステップ」が新たに特定されることになった(以下「補正事項3」という。)。
さらに、本件補正後の請求項30においては、「前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価する機能」が新たに特定されることになった(以下「補正事項4」という。)。
そして、本件補正前の請求項1においては、「ユーザの動作を評価する評価部」については特定されておらず、本件補正前の請求項28においては、「ユーザの動作を評価するステップ」については特定されておらず、また、本件補正前の請求項29においては、「ユーザの動作を評価する機能」については特定されてていないから、本件補正により、本件補正後の請求項1及び請求項1を引用する請求項2?28に、「前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価する評価部」を発明特定事項として追加したこと、本件補正後の請求項29に、「前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価するステップ」を発明特定事項として追加したこと、及び、本件補正後の請求項30に、「前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価する機能」を発明特定事項として追加したことは、それぞれ、本件補正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項2?28、請求項28並びに29における発明特定事項を限定したものではなく、いわゆる外的付加に相当するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないことは明らかである。
また、上記補正事項2?4が、上記第1、3、4の各号に掲げられた、いずれの目的とするものにも該当しないことは明らかである。

イ 本件補正前の請求項16が本件補正後の請求項1に対応する場合
(ア)請求項の追加について
上記1の通り、本件補正前の特許請求の範囲の請求項16が、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に対応し、本件補正前の特許請求の範囲の請求項2?15、17?27が、それぞれ、本件補正後の特許請求の範囲の請求項4?17、18?28に対応し、本件補正前の特許請求の範囲の請求項28及び29が、それぞれ、本件補正後の特許請求の範囲の請求項29及び30に対応している。
そうすると、本件補正後の特許請求の範囲の請求項2及び3を追加する補正(以下「補正事項1」という。)は、特許請求の範囲の請求項数を増加する補正であって、「n項引用形式請求項をn-1以下の請求項に変更する補正」にも「発明特定事項が択一的なものとして記載された一つの請求項について、その択一的な発明特定事項をそれぞれ限定して複数の請求項に変更する補正」にも該当しないものである。
そうすると、補正事項1は、上記第2号に掲げられた特許請求の範囲を減縮する補正には該当しない。
また、上記補正事項1が、上記第1、3、4の各号に掲げられた、いずれの目的とするものにも該当しないことは明らかである。

(イ)発明特定事項の追加について
本件補正により、本件補正前の請求項1?15が削除され、請求項1?15を引用する本件補正前の請求項16を、それぞれ引用する請求項毎に限定して、本件補正後の請求項1、4?17に対応するものとすると、本件補正前の請求項28に対応する、本件補正後の請求項29においては、「前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価するステップ」が新たに特定されることになった(「補正事項3」)。
同様に、本件補正前の請求項29に対応する、本件補正後の請求項30においては、「前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価する機能」が新たに特定されることになった(「補正事項4」)。
そして、本件補正前の請求項28においては、「ユーザの動作を評価するステップ」については特定されておらず、また、本件補正前の請求項29においては、「ユーザの動作を評価する機能」については特定されてていないから、本件補正により、本件補正後の請求項29に、「前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価するステップ」を発明特定事項として追加したこと、及び、本件補正後の請求項30に、「前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価する機能」を発明特定事項として追加したことは、それぞれ、本件補正前の請求項28及び29における発明特定事項を限定したものではなく、いわゆる外的付加に相当するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないことは明らかである。
また、上記補正事項3及び4が、上記第1、3、4の各号に掲げられた、いずれの目的とするものにも該当しないことは明らかである。


なお、審判請求人は、審判請求書において、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?3、24?26、29、30の補正が新規事項の追加でないことしか主張せず、本件補正が、特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれの目的に該当するかについては、何らの説明もしていない。

以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反してされたものというほかない、。

3 独立特許要件について
上記のとおり、本件補正前の請求項29に係る補正は、いわゆる外的付加に相当するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するものではないが、念のため、本件補正前の請求項29に係る補正が限定的減縮であると仮定して、本件補正後の前記請求項30に係る発明(令和2年4月2日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項30】に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項30】に記載したとおりのものと認める。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由において引用された特開2009-125509号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、球技改善支援システムに関するものである。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使用者によって与えられたボールの挙動を客観的に自動分析して、使用者に対して球技動作の改善内容を提示する球技改善支援システムを提供することを課題とするものである。」
ウ 「【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の球技改善支援システム1にあっては、使用者の動作によるボール2の挙動を検出するためにボール2に内蔵された挙動検出手段3と、挙動検出手段3にて検出した検出挙動データに基づいて球技動作の改善内容を作成する改善内容作成手段4と、改善内容作成手段4にて作成した改善内容を通知するための通知手段5とを備えたことを特徴とする。
【0006】
これによると、使用者Aがボール2に投げる・打つ・蹴る等の動作をして挙動を与えると、このボール2の挙動は挙動検出手段3によって検出挙動データとして検出され、改善内容作成手段4によって上記検出挙動データを基に球技動作の改善内容が自動作成されるのであり、そして、使用者Aはこの球技動作の改善内容を通知手段5を介して知ることができるから、使用者A自身でボール2の検出挙動データを分析することなくて、熟練さを備えない使用者Aであっても一定基準の客観的な改善内容を受けて球技動作の改善を図ることができる。
【0007】
また、ボール2の挙動の違いで種別される各挙動種類のうち使用者Aがボール2に加えようとする挙動種類を入力する挙動種類入力部6を有し、改善内容作成手段4が、各挙動種類に応じてあらかじめ設定された設定挙動データと挙動検出手段3にて検出した検出挙動データとを比較してこの結果から改善内容を作成するようにして成ることも好ましく、これによると、使用者Aはボール2に加えようとする挙動種類に即した改善内容を受けることができ、球技動作の改善を的確に図ることができる。
【0008】
また、上記挙動検出手段3を内蔵したボール2が野球のボール2aであり、挙動種類入力部6では、少なくともストレート及びカーブを含む複数の球種のうちから選択して挙動種類が入力されることも好ましく、これによると、野球のピッチング練習に適した球技改善支援システム1にすることができる。
【0009】
また、上記挙動検出手段3を内蔵したボールがサッカーボール2bであり、挙動種類入力部6では、少なくともストレート、左回転及び右回転を含む複数の球種のうちから選択して挙動種類が入力されることも好ましく、これによると、サッカーのキック練習に適した球技改善支援システム1にすることができる。
【0010】
また、挙動検出手段3が、加速度センサ3a、ジャイロセンサ3bの少なくとも一方で構成されて成ることも好ましく、これによると、加速度センサ3aにてボール2の軌跡や速度、ジャイロセンサ3bにてボール2の回転具合を検出することができる。
【0011】
また、通知手段5が、改善内容を音声にして使用者Aに通知する音声通知手段5aで構成されたり、改善内容を画像にして使用者Aに通知する表示通知手段5bで構成されて成ることも好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にあっては、ボールの挙動から使用者が客観的な球技動作の改善内容を受けることができる、という利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0014】
本例の球技改善支援システム1は、図1のように、ボール2に、投げたり蹴ったり打ったりして移動されるボール2の挙動を検出するための挙動を検出する挙動検出手段3を内蔵し、ボール2とは別体の機器本体7に、上記挙動検出手段3にて検出した検出挙動データに基づいて球技動作の改善内容を作成する改善内容作成手段4と、改善内容作成手段4にて作成した改善内容を通知するための通知手段5とを備えることで、構成されている。
【0015】
挙動検出手段3は、加速度センサ3a、ジャイロセンサ3bの少なくとも一方を用いることができる。加速度センサ3aは、垂直関係にある3軸方向への各加速度を検出でき、ボール2の軌跡や速度を検出することができる。また、ジャイロセンサ3bは、ボール2の角速度や重力加速度との関係で回転軸の傾斜角を検出でき、ボール2の回転速度や回転軸の傾きなどのボール2の回転具合を検出することができる。無論、ボール2には、挙動検出手段3で得た検出挙動データを後述の受信部9に送信する送信部8や、送信部8や挙動検出手段3の駆動源となる取替可能な電池部(図示せず)も備えている。
【0016】
機器本体7には、上記改善内容作成手段4や通知手段5のほかに、上記送信部8から送信された検出挙動データを受信する受信部9、使用者Aが設定操作をする挙動種類入力部6、駆動源となる取替可能な電池部(図示せず)が備えられている。挙動種類入力部6は、ボール2の挙動の違いで種別される各挙動種類のうち、使用者Aがボール2に加えようとする挙動種類(モード)を入力するモード選択部位である。
【0017】
改善内容作成手段4は、設定挙動データ記憶部10と、判定部11と、改善内容データ記憶部12とを備えた電気回路で構成される。
【0018】
設定挙動データ記憶部10は、ボール2の挙動の違いにて種別される挙動種類毎の設定挙動データを記憶した部位である。設定挙動データは別途設けた設定挙動データ入力部(図示せず)にて使用者が任意に設定するようにしてもよいが、本例では挙動種類毎の基本挙動データが予め設定されている。
【0019】
改善内容データ記憶部12は、使用者Aに提示する複数の改善内容データを記憶した部位である。改善内容データは対象球技にもよるが、たとえば「もっと腕を振りましょう」とか「もっと回転をかけるようにしましょう」などの各種の指示的なデータであって、本例ではボール2の挙動の違いにて種別される挙動種類毎に対応した各種の指示的なデータが改善内容データ記憶部12に蓄積、記憶されている。
【0020】
判定部11は、受信部9で受信された検出挙動データと、設定挙動データ記憶部10に記憶された設定挙動データとを比較して判定し、改善内容データ記憶部12から上記判定に対応する改善内容データを選択するといった処理を行う部位である。本例では、挙動種類入力部6で入力された挙動種類に対応する設定挙動データが、検出挙動データと比較されて判定されるようになっており、挙動種類入力部6で入力された挙動種類に対応する改善内容データのうち、判定結果に応じた改善内容データが選択され、改善内容が自動的に作成されるようにされている。
【0021】
通知手段5は、上記改善内容作成手段4にて作成された改善内容を通知するための手段であり、改善内容を音声にして使用者Aに通知する音声通知手段5aや、改善内容を画像にして使用者Aに通知する表示通知手段5bで構成することができる。音声通知手段5aとしてはスピーカー、表示通知手段5bとしては表示画面14によって、それぞれ構成することができる。
【0022】
この球技改善支援システム1によると、使用者Aがボール2に投げる・打つ・蹴る等の動作をしてボール2に挙動を与えると、このボール2の挙動は挙動検出手段3によって検出挙動データとして検出され、改善内容作成手段4によって上記検出挙動データを基に球技動作の改善内容が自動的に作成されるのであり、そして、使用者Aはこの球技動作の改善内容を通知手段5を介して知ることができるから、使用者A自身でボール2の検出挙動データを分析することなくて、熟練さを備えない使用者Aであっても一定基準の客観的な改善内容を受けて球技動作の改善を図ることができたものである。
【0023】
具体的には、本例の球技改善支援システム1は、図2のように、挙動検出手段3が内蔵されるボール2が野球のボール2aであり、ピッチング練習に用いる、投球の改善を目的とするシステムとなっている。詳しくは、ボール2には挙動検出手段3として加速度センサ3aとジャイロセンサ3bが内蔵されている。機器本体7は携帯可能な大きさの板状のコントローラ13で構成され、このコントローラ13の上面には、画像を表示する表示画面14や、挙動種類入力部6への入力等に用いる操作ボタン15が設けられている。コントローラ13には音声を発生させるスピーカ(図示せず)も設けられている。なお、本例では、コントローラ13の出力端子に大型のディスプレイ装置16を接続し、表示画面14に表示する表示物を上記ディスプレイ装置16でも表示可能にして通知手段5を構成させている。
【0024】
いわゆる投手である使用者Aは、まず、操作ボタン15を操作して表示画面14にメニュー画面(図3)を表示させて、メニュー画面に表示されたボール2の挙動の違いで種別される各挙動種類(ここでは投げる球種)のうち、使用者Aが投げようとする球種を選択して挙動種類入力部6に入力する。その上でボール2を投げるものである。
【0025】
使用者Aがボール2を投げると、挙動検出手段3としての加速度センサ3aとジャイロセンサ3bとで、「ボール2の軌跡」、「回転の具合」が検出されて、検出挙動データとして機器本体7側に送られる。すると、改善内容作成手段4にて、挙動種類入力部6で入力された挙動種類に対応する設定挙動データが上記送られて来た検出挙動データと比較されて判定され、挙動種類入力部6で入力された挙動種類に対応する改善内容データのうち、判定結果に応じた改善内容データが選択され、改善内容が作成される。つまり、設定挙動データ記憶部10や改善内容データ記憶部12には、それぞれ挙動種類に応じた複数の設定挙動データや改善内容データが予め記憶されており、改善内容作成手段4にて検出挙動データに対して適当な改善内容が作成されるようになっている。そして、この改善内容が通知手段5を介して使用者Aに通知されるようになっている。
【0026】
具体的には、たとえば挙動種類入力部6に「カーブ」が入力された場合、改善内容作成手段4の判定部11では、挙動種類の「カーブ」に対応した設定挙動データ(本例では「カーブ」基本挙動データ)を設定挙動データ記憶部10から読み出して検出挙動データと比較し、たとえばボール2の軌跡(曲り具合)やボール2の回転具合などの判定項目毎に良否の判定を行う。 【0027】
この場合、改善内容データ記憶部12には、挙動種類の「カーブ」に対応した「カーブ」改善内容データとしてたとえば4種類の改善内容データ(改善内容データa:「曲り具合も回転も良好ですので特に改善点はありません」、改善内容データb:「回転は良好ですが曲がり具合がいまひとつなので縫い目に注意してボールを握りましょう」、改善内容データc:「曲がり具合は良好ですが回転はいまひとつなのでボール2に回転をつければより変化が増します」、改善内容データd:「曲がり具合も回転もいまひとつなので縫い目に注意してボールにより回転をつけましょう」)が記憶されており、図4の判定テーブルに基づいて上記判定結果に対応した改善内容データを選択することで、改善内容が作成される。
【0028】
今、改善内容作成手段4で、検出挙動データが「カーブ」に対応した設定挙動データと比較したときに、図4の判定テーブルのA判定(回転も軌跡も良好)に該当するときには改善内容データaが選択され、図4の判定テーブルのB判定(軌跡が駄目で回転が良好)に該当するときには改善内容データbが選択され、図4の判定テーブルのC判定(回転が駄目で軌跡が良好)に該当するときには改善内容データcが選択され、図4の判定テーブルのD判定(軌跡も回転も駄目)に該当するときには改善内容データdが選択される。このようにして改善内容作成手段4で作成された改善内容は、通知手段5(本例では捕手Bの横のディスプレイ装置16も含む)を経て、使用者Aにその投球ごとに通知される。挙動種類入力部6で他の球種を入力した場合も上記と同様の流れで、改善内容作成手段4で投球に対する改善内容を選定して通知手段5を経て使用者Aに通知することができる。
【0029】
なお、挙動検出手段3としての加速度センサ3aによると「球速」も検出できるから、改善内容作成手段4では、判定のパラメータとして球速も加えて球速を加味した改善内容を選定して通知手段5を経て使用者Aに通知することもできる。
【0030】
また、たとえば図5のように、挙動検出手段3でのボール2の挙動の検出は、投球動作中のスパンX、投球後でボール2の曲りが始まるまでのスパンY、ボール2の曲りが始まり捕手Bに捕られるまでのスパンZの3段階に分けて行うことで、ボール2の挙動の検出をより細かく正確に行うことができる。
【0031】
ここで、投球動作中のスパンXは、ボール2の位置変化を伴う投球動作が始まって、強い回転がかけられるボール2が使用者Aから離れる時点まで、と規定することができる。投球後でボール2の曲がりが始まるまでのスパンYは、上記強い回転がかけられた時点から、投球されたボール2が投球方向とは異なる方向に位置変化が生じた時点まで、と規定することができる。ボール2の曲りが始まり捕手Bに捕られるまでのスパンZは、上記投球されたボール2が投球方向とは異なる方向に位置変化が生じた時点から、捕手Bに捕られて、速度や位置変化が無くなった時点まで、と規定することができる。
【0032】
投球動作中のスパンXでは、挙動検出手段3にて使用者Aの投球フォームを検出できる。したがって、改善内容作成手段4で、この検出投球フォームデータと設定挙動データ記憶部10に記憶された設定投球フォームデータ(本例では基本投球フォームデータ)とを比較して良否を判定し、この判定結果に対応したたとえば「もっと大きく腕をふりましょう」等の改善内容データを選択して、改善内容を作成することができる。また、投球後でボールの曲りが始まるまでのスパンYでは、ボール2の曲りの始点位置や球速を比較的正確に推定することができる。また、ボール2の曲りが始まり捕手Bに捕られるまでのスパンZでは、ボール2の変化の様相(瞬間的なボール2の曲り変化(いわゆる「球のキレ」))を比較的正確に推定することができる。このようにボール2が投球される投手から捕手Bまでの間でスパンを複数に区切り、各スパンに適したボール2の挙動パラメータを選択して検出するようにすると、ボール2の挙動を正確に検出することができて、改善内容作成手段4、通知手段5により、的を得た改善内容を使用者Aに提示するようにできる。
【0033】
上記実施形態では野球の投球改善を目的とした球技改善支援システム1を例示したが、野球のみならず他の球技に対しても用いることができる。
【0034】
図6には、挙動検出手段3が内蔵されるボール2がサッカーボール2bであり、キック練習に用いる、キックの改善を目的とする球技改善支援システム1を例示する。この球技改善支援システム1も図1の基本構成を踏襲している。
【0035】
この球技改善支援システム1では、いわゆるキッカーである使用者Aは、操作ボタン15を操作して表示画面14に第1のメニュー画面(図7(a))を表示させて、第1のメニュー画面に表示されたボール2の挙動の違いで種別される各挙動種類(ここでは練習メニュー)のうち、使用者Aが行おうとする練習メニューを選択する。練習メニューを選択すると、表示画面14には第2のメニュー画面(図7(b))が表示される。第2のメニュー画面ではボール2の挙動の違いで種別される各挙動種類(ここでは蹴る球種)が表示され、使用者Aが蹴ろうとする球種を選択する。これら第1及び第2のメニューにて決定された挙動種類が挙動種類入力部6に入力される。その上でボール2を蹴るものである。
【0036】
使用者Aがボール2を蹴ると、挙動検出手段3としての加速度センサ3aとジャイロセンサ3bとで、「球速」、「回転の具合」が検出されて、検出挙動データとして機器本体7側に送られる。すると、改善内容作成手段4にて、挙動種類入力部6で入力された挙動種類に対応する設定挙動データが上記送られて来た検出挙動データと比較されて判定され、挙動種類入力部6で入力された挙動種類に対応する改善内容データのうち、判定結果に応じた改善内容データが選択され、改善内容が作成される。つまり、設定挙動データ記憶部10や改善内容データ記憶部12には、それぞれ挙動種類に応じた複数の設定挙動データや改善内容データが予め記憶されており、改善内容作成手段4にて検出挙動データに対して適当な改善内容が作成されるようになっている。そして、この改善内容が通知手段5を介して使用者Aに通知されるようになっている。
【0037】
具体的には、たとえば挙動種類入力部6に、第1のメニューで「シュート」が、第2のメニューで「左回転」が入力された場合、改善内容作成手段4の判定部11では、「シュート」の項目で「左回転」に対応した設定挙動データ(本例では「シュート-左回転」基本挙動データ)を設定挙動データ記憶部10から読み出して検出挙動データと比較し、たとえば球速やボール2の回転具合などの判定項目毎に良否の判定を行う。
【0038】
この場合、改善内容データ記憶部12には「シュート-左回転」改善内容データとして4種類の改善内容データ(たとえば、改善内容データa:「速度も回転も良好ですので特に改善点はありません」、改善内容データb:「回転は良好ですが速度がいまひとつなので力を入れて蹴りましょう」、改善内容データc:「速度は良好ですが回転はいまひとつなのでボールの右端付近を蹴りましょう」、改善内容データd:「速度も回転もいまひとつなのでボールの右端付近を力を入れて蹴りましょう」)が記憶されており、図8の判定テーブルに基づいて上記判定結果に対応した改善内容データを選択することで、改善内容が作成される。
【0039】
今、改善内容作成手段4で、検出挙動データが「シュート-左回転」に対応した設定挙動データ(本例では「シュート-左回転」基本挙動データ)と比較したときに、図8の判定テーブルのA判定(速度も回転も良好)に該当するときには改善内容データaが選択され、図8の判定テーブルのB判定(速度が駄目で回転が良好)に該当するときには改善内容データbが選択され、図8の判定テーブルのC判定(回転が駄目で速度が良好)に該当するときには改善内容データcが選択され、図8の判定テーブルのD判定(速度も回転も駄目)に該当するときには改善内容データdが選択される。このようにして改善内容作成手段4で作成された改善内容は、通知手段5を経て使用者Aにボール2のキックごとに通知される。
【0040】
挙動種類入力部6で他の挙動種類を入力した場合も上記と同様の流れで、キックに対する改善内容を通知手段5を経て使用者Aに通知することができる。なお、挙動種類入力部6で選択する練習メニューにおいては「ドリブル」や「パス」など球種選択を必要としないまたは球種選択数を減らすことのできる項目もあり、練習メニューに応じて球種選択の有無または選択可能数を設定することができる。
【0041】
また、図9のように、挙動検出手段3では、上記の「球速」や「回転の具合」に加えて、加速度センサ3aによると「ボール2の軌跡」が、ジャイロセンサ3bによると「地面からの蹴り出し角度」がそれぞれ検出できるから、改善内容作成手段4では、判定のパラメータとしてボール2の軌跡や地面からの蹴り出し角度を加え、ボール2の軌跡や地面からの蹴り出し角度を加味した改善内容を選定して通知手段5を経て使用者Aに通知することもできる。無論、練習メニューに応じて、判定のパラメータを適宜変えることもできる。
【0042】
また、図示はしないが球技改善支援システム1としては、挙動検出手段3をゴルフボールに内蔵して、ゴルフのショット練習に用いる、ショットの改善を目的とするシステムに応用することもできる。
【0043】
なお、上記実施形態ではボール2に内蔵する挙動検出手段3には加速度センサ3aとジャイロセンサ3bの両方を内蔵したものを例示したが、挙動検出手段3には加速度センサ3aとジャイロセンサ3bのいずれか一方を採用してシステムの簡易化を図ることもできる。加速度センサ3aによると球速やボール2の軌跡を検出できてこの検出データに基づき判定して改善内容の提示をすることができ、ジャイロセンサ3bによるとボール2の回転速度や回転軸の傾きを検出できてこの検出データに基づき判定して改善内容の提示をすることができるのである。
【0044】
また、上記実施形態では、改善内容作成手段4で作成した改善内容をのみ通知手段5で使用者Aに通知することを例示したが、改善内容に加えて改善内容作成手段4で判定した判定結果(良否の判定)をも通知手段5で使用者Aに通知してもよく、また、球技改善支援システム1としては、構成の簡略化を期して、通知手段5として音声通知手段5aまたは表示通知手段5bのいずれか一方を備えるようにしてもよいのは、言うまでもない。」

そうすると、上記ア乃至ウの記載事項から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「球技改善支援システム1における、投げたり蹴ったり打ったりして移動されるボール2の挙動を検出するための挙動を検出する挙動検出手段3を内蔵したボール2とは別体の機器本体7であって、
上記挙動検出手段3にて検出した検出挙動データに基づいて球技動作の改善内容を作成する改善内容作成手段4と、改善内容作成手段4にて作成した改善内容を通知するための通知手段5とを備え、
使用者Aがボール2を投げると、挙動検出手段3としての加速度センサ3aとジャイロセンサ3bとで、ボール2の軌跡、回転の具合が検出されて、検出挙動データとして機器本体7側に送られ、改善内容作成手段4にて、挙動種類入力部6で入力された挙動種類に対応する設定挙動データが上記送られて来た検出挙動データと比較されて判定され、挙動種類入力部6で入力された挙動種類に対応する改善内容データのうち、判定結果に応じた改善内容データが選択され、改善内容が作成され、この改善内容が通知手段5を介して使用者Aに通知されるようになっており、
挙動検出手段3でのボール2の挙動の検出は、投球動作中のスパンX、投球後でボール2の曲りが始まるまでのスパンY、ボール2の曲りが始まり捕手Bに捕られるまでのスパンZの3段階に分けて行うことで、ボール2の挙動の検出をより細かく正確に行うことができ、
投球動作中のスパンXでは、挙動検出手段3にて使用者Aの投球フォームを検出でき、
挙動種類入力部6に入力がされた場合、改善内容作成手段4の判定部11では、挙動種類に対応した設定挙動データを設定挙動データ記憶部10から読み出して検出挙動データと比較し、ボール2の軌跡(曲り具合)やボール2の回転具合などの判定項目毎に良否の判定を行い、
改善内容データ記憶部12には、挙動種類に対応した複数種類の改善内容データが記憶されており、改善内容作成手段4で投球に対する判定テーブルに基づいて上記判定結果に対応した改善内容データを選択することで、改善内容が作成され、通知手段5を経て使用者Aに通知する、機器本体7。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア 後者の「ボール2の挙動を検出するための挙動を検出する挙動検出手段3」、「検出挙動データ」及び「機器本体7」は、それぞれ、前者の「センサ」、「出力情報」及び「コンピュータ」に相当する。
イ 後者の「検出挙動データ」は、「挙動検出手段3」に基づくものであって、そのうち、スパンXのデータは、投球動作中のデータであって、使用者Aがボール2を握っている時のデータであるから、後者の「スパンXのデータ」は、使用者Aの動作である投球フォームを示す動作情報と言い得る。してみると、後者の「スパンXのデータ」は、前者の「ユーザの動作を示す動作情報」に相当する。
ウ 後者の「検出挙動データ」のうち、スパンY及びスパンZのデータは、「ボール2の軌跡」及び「回転の具合」を検出したものであるところ、後者の「ボール2の軌跡」及び「回転の具合」は、スパンXでの使用者Aの動作である投球フォームによって生じる投球結果を示す結果情報と言い得るものであるから、後者の「『スパンY』及び『スパンZ』の『検出挙動データ』」は、前者の「ユーザの動作によって生じる結果を示す結果情報」に相当する。
エ 後者の「検出挙動データ」を構成するスパンX、スパンY及びスパンZの3段階のデータは、使用者Aの一つの投球動作に基づくものであり、「検出挙動手段3」から「機器本体7」に送られ、「設定挙動データ」と比較されることからすれば、後者の「検出挙動データ」を構成するスパンX、スパンY及びスパンZの3段階のデータは、投球動作毎に「機器本体7」に少なくとも対応付けられて一時的に記憶されていることは明らかである。
してみると、後者の「機器本体7」には、明記はないものの、実質的に、「検出挙動データ」を構成するスパンX、スパンY及びスパンZの3段階のデータを一つの投球動作毎にそれぞれを対応付ける機能を備えるといえる。
カ 後者の「判定部11」は、挙動種類に対応した設定挙動データを設定挙動データ記憶部10から読み出して、スパンXでの使用者Aの動作である投球フォームによって生じる投球結果を示す結果情報と言い得るスパンY及びスパンZの検出挙動データと比較し、ボール2の軌跡(曲り具合)やボール2の回転具合などの判定項目毎に良否の判定を行い、判定結果に対応した改善内容データを選択することで、改善内容が作成されるところ、上記(2)ウ【0027】によれば、前記改善内容とは、「特に改善点はありません」(改善内容データa)、「縫い目に注意してボールを握りましょう」(改善内容データb)、「ボール2に回転をつければより変化が増します」(改善内容データc)、及び「縫い目に注意してボールにより回転をつけましょう」(改善提案d)、という具合に、使用者Aの動作である投球フォームにおける握り方やボール2への回転の与え方に対する改善提案であることから、後者の「判定部11」は、前者の「結果情報に基づいてユーザの動作を評価する機能」を有するといえる。
オ 上記エのとおり、後者の「機器本体7」は、前者の「対応付ける機能」及び「評価する機能」を有するのであるから、後者の「機器本体7」には、前記各機能を「機器本体7」に実現させるためのプログラムを実質的に備えるといえる。

したがって、両者は、
「センサの出力情報に基づいて生成される、ユーザの動作を示す動作情報と、前記ユーザの動作によって生じる結果を示す結果情報とを対応付ける機能と、
前記結果情報に基づいて前記ユーザの動作を評価する機能と、を、コンピュータに実現させるためのプログラム。」
の点で一致し、本願補正発明の発明特定事項は、すべて引用発明が備えているから、本願補正発明と、引用発明とに差異はない。

請求人は、「引用文献1は、一連の検出挙動データの各区分のデータの良否を設定挙動データと比較して判断しています。特に、投球フォームの評価は、設定挙動データに含まれる設定投球フォームデータに基づいて良否が判断されています。すなわち、本願発明は、ユーザの動作を結果情報に基づいて評価を行うものであり、ユーザの動作を示す動作情報自体を比較等して良否を判断するものではありません。」と主張する。
しかし、引用発明の検出挙動データと設定挙動データとが比較されて判定されて作成される「改善内容データ」は、「曲り具合も回転も良好ですので」(改善内容データa)、「回転は良好ですが曲がり具合がいまひとつなので」(改善内容データb)、「曲がり具合は良好ですが回転はいまひとつなので」(改善内容データc)、「曲がり具合も回転もいまひとつなので」(改善内容データd)というように、「ボール2の軌跡」及び「回転の具合」を評価していることは明らかである。
そして、引用発明の「ボール2の軌跡」及び「回転の具合」は、使用者Aの動作(投球フォーム)の結果であるのだから、引用発明が判定、すなわち評価している対象は、ユーザの動作によって生じる結果を示す結果情報といえる。
よって、上記請求人の主張は採用できない。

したがって、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明であって、特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ないものであるから、本件補正は,特許法第17条の2第第6項の規定に違反してされたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項29に係る発明は、令和1年9月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項29に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項29】
センサの出力情報に基づいて生成される、ユーザの動作を示す動作情報と、前記動作によって生じる結果を示す結果情報とを対応付ける機能を、コンピュータに実現させるためのプログラム。」(以下「本願発明」という。)

2 引用例
令和1年7月31日付けの拒絶理由通知に引用された引用例、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
ア 後者の「ボール2の挙動を検出するための挙動を検出する挙動検出手段3」、「検出挙動データ」及び「機器本体7」は、それぞれ、前者の「センサ」、「出力情報」及び「コンピュータ」に相当する。
イ 後者の「検出挙動データ」は、「挙動検出手段3」に基づくものであって、そのうち、スパンXのデータは、投球動作中のデータであって、使用者Aがボールを握っている時のデータであるから、後者の「スパンXのデータ」は、使用者Aの動作である投球フォームを示す動作情報と言い得る。してみると、後者の「スパンXのデータ」は、、前者の「ユーザの動作を示す動作情報」に相当する。
ウ 後者の「検出挙動データ」のうち、スパンY及びスパンZのデータは、「ボール2の軌跡」及び「回転の具合」を検出したものであるところ、後者の「ボール2の軌跡」及び「回転の具合」は、スパンXでの使用者Aの動作である投球フォームによって生じる投球結果を示す結果情報と言い得るものであるから、後者の「『スパンY』及び『スパンZ』の『検出挙動データ』」は、前者の「ユーザの動作によって生じる結果を示す結果情報」に相当する。
エ 後者の「検出挙動データ」を構成するスパンX、スパンY及びスパンZの3段階のデータは、使用者Aの一つの投球動作に基づくものであり、「検出挙動手段3」から「機器本体7」に送られ、「設定挙動データ」と比較されることからすれば、後者の「検出挙動データ」を構成するスパンX、スパンY及びスパンZの3段階のデータは、「機器本体7」に少なくとも対応付けられて一時的に記憶されていることは明らかである。
してみると、後者の「機器本体7」には、明記はないものの、実質的に、「検出挙動データ」を構成するスパンX、スパンY及びスパンZの3段階のデータを一つの投球動作毎にそれぞれを対応付ける対応付ける機能を備えるといえる。
オ 上記エのとおり、後者の「機器本体7」は、前者の「対応付ける機能」を有するのであるから、後者の「機器本体7」には、前記機能を「機器本体7」に実現させるためのプログラムを実質的に備えるといえる。

よって、両者は、
「センサの出力情報に基づいて生成される、ユーザの動作を示す動作情報と、前記ユーザの動作によって生じる結果を示す結果情報とを対応付ける機能を、コンピュータに実現させるためのプログラム。」
の点で一致し、本願発明の発明特定事項は、すべて引用発明が備えているから、本願発明と、引用発明とに差異はない。
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-02-02 
結審通知日 2021-02-09 
審決日 2021-03-02 
出願番号 特願2015-191437(P2015-191437)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A63B)
P 1 8・ 57- Z (A63B)
P 1 8・ 575- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 槙 俊秋  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤本 義仁
藤田 年彦
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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