• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1373405
審判番号 不服2020-8887  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-26 
確定日 2021-04-22 
事件の表示 特願2018-537931「制御装置、制御方法、プログラム、制御システム、及び、電気機器」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月15日国際公開、WO2018/047269〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)9月8日を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

平成30年11月 5日 :手続補正書
令和 1年10月31日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 4月24日付け:拒絶査定
令和 2年 6月26日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、令和2年6月26日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
単方向通信により電気機器にデータを送信可能な制御装置であって、
前記電気機器の消費電力の削減を要求する削減要求を前記電気機器に送信する送信手段と、
前記送信手段により送信された前記削減要求に応じて消費電力を制御する前記電気機器の消費電力を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記消費電力に基づいて、前記電気機器の消費電力の制御の状態を表す制御状態を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された前記制御状態を報知する報知手段と、
を備え、
前記判定手段は、前記制御状態として、前記電気機器の消費電力の制御の成功および失敗を表す制御結果を判定し、
前記報知手段は、前記判定手段により判定された前記制御結果を報知し、
前記送信手段は、前記取得手段により取得された前記消費電力が、予め定められた上限値を超えたとき、前記電気機器に前記削減要求を送信し、
前記判定手段は、前記送信手段が前記電気機器に前記削減要求を予め定められた回数だけ送信した後に、前記取得手段により取得された前記消費電力が、前記上限値を超えたとき、前記制御状態として、前記電気機器の消費電力の制御が失敗したと判定する、
制御装置。」

なお、令和2年6月26日提出の手続補正により請求項1は補正されていない。

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1:特表2015-530070号公報
引用文献2:国際公開第2013/065394号(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2014-131447号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2013-106380号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献1の記載及び引用発明

引用文献1には、図面と共に、次の記載がある。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0009】
従って、(最も高い消費量レベルにある負荷がまず削減されるという意味において)「公平な分配」を備え、「シーソー」効果のない、段階的で、迅速な収束方法で、(たとえどんな精度が必要とされようとも目標に近づくという意味において)正確に目標消費量レベルに到達するよう制御するために、電力制御装置と負荷装置(例えば、機器)との間のブロードキャスト媒体、及びシステム(即ち、全負荷装置)の現在の総電力消費量についての情報しか必要としない、制御システムのための自動負荷制限方法を提案する。」

イ.「【0010】
前記電力制御装置は、現在の電力消費量及び目標電力消費量を知ると、電力変更情報(例えば、パーセンテージ(又は類似の)値又は比率又は(符号化)レベルなど)を含む「トリム」コマンドを全ての負荷装置にブロードキャストする。前記負荷装置は、前記電力トリムコマンドを受信すると、前記負荷装置の所望の電力レベル、例えば、エンドユーザによって設定された電力レベル、及び前記電力変更情報に従って削減される前記負荷装置の最大電力消費量のうちの最低値に等しい電力レベルに進む。トリムレベルコマンドの受信時の上記の反応は、例えば、IEC62386-102, Digital addessable lighting interface - Part 102: General requirements - control gear. Page 19-20, Section 9.4に記載されている。
【0011】
前記電力制御装置は、前記現在の消費量が(たとえどんな精度が必要とされようとも満たす)前記目標消費量又は目標値に十分に近くなるまで「トリムステップ」を繰り返し得る。前記電力制御装置は、前記総電力消費量レベルが、前記目標レベルに向けて(常に減少する)一方向に、迅速に収束するようにして、前記トリム値を計算し得る。他の例においては、前記電力制御装置は、前記総電力消費量レベルが、最初のステップにおいて、直ちに、前記目標値未満に下がり、その後、前記目標レベルに向けて(常に増加する)一方向に、迅速に収束するようにして、前記電力トリムコマンドを計算し得る。」

ウ.「【0021】
図1は、以下の実施例が実施され得る電力制御システムのネットワークアーキテクチャの概略的なブロック図を示している。システムは、制御装置30と、複数の機器20-1乃至20-nと、制御装置30及び機器20-1乃至20-nを、制御装置が電力変更情報(例えば、パーセンテージ、比率又は(符号化)レベル)を含む電力トリムコマンドtを全ての機器20-1乃至20-nにブロードキャストすることができるように、接続する通信媒体又はネットワーク10とを有する。更に、制御装置30は、例えば、関連電力メーターとの接続、又は(通信ネットワーク10から制御装置30へのフィードバック矢印によって示されている)関連電力情報へのアクセスに基づいて、システムの(即ち、全ての機器の)現在の総電力消費量を決定することが可能である。従って、制御装置30は、システムの現在の(総)電力消費量値を決定することができる、又はシステムの現在の(総)電力消費量値についての知識を有する。」

エ.「【0022】
電力制御目的のため、制御装置30は、パーセンテージ値(又は比率若しくはレベルなどの他の種類の電力変更情報)を含む電力トリムコマンドtを全ての機器20-1乃至20-nにブロードキャストする。各機器20-1乃至20-nは、「所望の電力消費量レベル」(例えば、エンドユーザによって設定された電力消費量レベル)を維持し、トリムコマンドを受信すると、機器は、その所望の電力レベル、及び(トリムコマンドの)前記パーセンテージ値と機器の最大電力消費量の積のうちの最低値に等しい電力レベルに進む又は設定する。」

オ.「【0025】
図2は、以下においてプロシージャ1と呼ばれる電力制御プロシージャのフローチャートを示している。それは、現在のシステム電力消費量Pc及び(システムが進むよう要求される)目標システム電力消費量Ptを持つシステムを、以下の方法で新しいシステム電力消費量Pnに導くのに適している。
【0026】
制御装置30は、Pc及びPtの値、並びにシステム内の全てのランプの最大電力消費量の合計以上である値Pbを知っていると仮定する。ステップS201において、制御装置30は、システムに適用された最後のトリム値、又はとトリムされてないシステムの場合には値「1」に対応する「現在のトリム値」を決定し、それは、現在のシステム電力消費量Pcを決定する。ステップS202において、制御装置は、(例えば、|Pc-Pt|<Tである場合には精度要件が満たされるようなしきい値Tによって規定される)現在の電力消費量Pcが目標消費量に十分に近いかどうかをチェックする。そうである場合には、プロシージャは停止する。そうでない場合には、ステップS203において、制御装置30は、tn=tc-(Pc-Pt)/Pbによって「新しいトリムレベル」tnを計算する。次のステップS204において、制御装置30は、「新しいトリムレベル」tnを備えるトリムコマンドを全ての機器20-1乃至20-nにブロードキャストする。」

カ.「【0027】
機器は、規定された方法でトリムコマンドに反応し、これは、新しいシステム電力消費量Pnをもたらす。既述のように、ステップS201乃至S203は、プロシージャ1と呼ばれる。プロシージャ1は、以下の2つのケースが組み合され得る又は別々に実施され得る以下の2つの実施例において、即ち、1)Pc>Ptの場合に単調なようにして下げる実施例、及び2)Pc<Ptの場合に単調なようにして上げる実施例において用いられる。第1実施例においては、a)ステップ202に記載されている基準、b)プロシージャ1が用いられた回数が或るしきい値に達した、又はc)プロシージャ1の2回の最近の適用において、結果として生じるシステム電力消費量が、等しいが、目標値Pt未満である、という停止基準のうちの1つ以上が満たされるまで、プロシージャ1が繰り返し用いられる。」(当審注:【0027】には、「a)ステップ201に記載されている基準」と記載されているが、ステップ201について記載のある【0026】には、当該ステップ201においてプロシージャを停止する基準についての記載がなく、一方でステップS202にプロシージャを停止する基準が示されていることから、当該記載は誤記と認められる。よって、【0027】の「a)ステップ201に記載されている基準」を、「a)ステップ202に記載されている基準」の誤記であると認め、上記のように訂正した上で引用する。)

・上記イ及びウには、電力変更情報を含む電力トリムコマンドtを全ての機器20-1乃至20-nにブロードキャストすることができる制御装置30について記載されている。

・上記ウには、制御装置30が、関連電力メータとの接続、又は関連電力情報へのアクセスに基づいて、全ての機器20-1乃至20-nの現在の総電力消費量を決定することができる旨が記載されている。
また、上記イ、エ及びカによれば、機器20-1乃至20-nがトリムコマンドに応じて電力レベルを設定することが示されている。

・上記オ及びカによれば、電力制御装置30が、プロシージャ1と呼ばれる電力制御プロシージャを繰り返し用いることが記載されている。
また、当該プロシージャ1は、ステップS201において、現在のシステム電力消費量Pcを決定し、ステップS202において、現在のシステム電力消費量Pc、目標システム電力消費量Pt及びしきい値Tに基づく|Pc-Pt|<Tとの基準を用いて、電力消費量Pcが目標消費量に十分近いかどうかをチェックし、そうである場合には、プロシージャは停止し、そうでない場合には、ステップS203において、新しいトリムレベルtnを計算し、次のステップS204において、新しいトリムレベルtnを備えるトリムコマンドtを全ての機器20-1乃至20nにブロードキャストする処理を含む制御であることが示されている。

・上記カによれば、プロシージャ1は、Pc>Ptの場合に単調なようにして下げられる実施例が用いられることが記載されている。
また、上記カには、さらに、a)ステップS202に記載されている基準、b)プロシージャ1が用いられた回数があるしきい値に達した、又はc)プロシージャ1の2回の最近の適用において、結果として生じるシステム電力消費量が、等しいが、目標値Pt未満である、という停止基準の1つ以上が満たされるまでプロシージャ1が繰り返し用いられることが記載されている。

上記アないしカの記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「電力変更情報を含む電力トリムコマンドtを全ての機器20-1乃至20-nにブロードキャストする制御装置30であって、
関連電力メータとの接続、又は、関連電力情報へのアクセスに基づいて、機器20-1乃至20-nの現在の総電力消費量を決定することが可能であり、ここにおいて、機器20-1乃至20-nは、トリムコマンドに応じて電力レベルを設定するものであり、
プロシージャ1と呼ばれる電力制御プロシージャを繰り返し用いるものであり、
当該プロシージャ1は、
ステップS201において、現在のシステム電力消費量Pcを決定し、
ステップS202において、現在のシステム電力消費量Pc、目標システム電力消費量Pt及びしきい値Tに基づく|Pc-Pt|<Tとの基準を用いて、現在のシステム電力消費量Pcが目標システム電力消費量Ptに十分近いかどうかをチェックし、そうである場合には、プロシージャ1を停止し、
そうでない場合には、ステップS203において、新しいトリムレベルtnを計算し、
次のステップS204において、新しいトリムレベルtnを備えるトリムコマンドtを全ての機器20-1乃至20nにブロードキャストするものであり、
Pc>Ptの場合に単調なようにして下げられる実施例が用いられ、
さらに、a)ステップS202に記載されている基準、b)プロシージャ1が用いられた回数があるしきい値に達した、又はc)プロシージャ1の2回の最近の適用において、結果として生じるシステム電力消費量が、等しいが、目標値Pt未満である、という停止基準の1つ以上が満たされるまでプロシージャ1が繰り返し用いられる、
制御装置30。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「機器20-1乃至20-n」は、電力を消費する機器であるから、本願発明の「電気機器」に相当する。
また、引用発明の「制御装置30」は、「電力変更情報を含む電力トリムコマンドtを全ての機器20-1乃至20-nにブロードキャスト」するから、機器20-1乃至20-nにデータを送信可能な制御装置である。よって、引用発明の「制御装置30」は、本願発明の「制御装置」に相当する。
次に、引用発明の「ブロードキャスト」について検討する。
通常「ブロードキャスト」は、1対多の通信を行う通信方式であり、単方向通信に利用される通信方式である。また、引用文献1の【0004】には、「一般的な制約は、個々の機器の状態がわからないこと」と記載され、【0009】には「システム(即ち、全負荷装置)の現在の総電力消費量についての情報しか必要としない」と記載されているので、引用発明は、機器20-1乃至20-nから制御装置30への通信を必要としないシステム、即ち「単方向通信」を用いるシステムを前提とするものと認められる。
よって、引用発明の「ブロードキャスト」は、本願発明の「単方向通信」に相当する。また、引用発明の制御装置30が、ブロードキャストを行うための「送信手段」を備えていることも明らかである。
さらに、引用発明の「トリムコマンドt」は、現在のシステム電力消費量Pc>目標システム電力消費量Ptの場合に、機器20-1乃至20-nの消費電力を単調なようにして下げるために用いられるコマンドであるから、本件補正発明の「削減要求」に相当する。
したがって、引用発明の「電力変更情報を含む電力トリムコマンドtを全ての機器20-1乃至20-nにブロードキャストする制御装置30」は、本願発明の「単方向通信により電気機器にデータを送信可能な制御装置であって、前記電気機器の消費電力の削減を要求する削減要求を前記電気機器に送信する送信手段と」、「を備え」る「制御装置」に相当する。

(2)引用発明の「制御装置30」は、「関連電力メータとの接続、又は、関連電力情報へのアクセスに基づいて、機器20-1乃至20-nの現在の総電力消費量を決定することが可能であ」るから、本願発明の「前記電気機器の消費電力を取得する取得手段」を備えているといえる。
また、引用発明の「機器20-1乃至20-n」は、「トリムコマンドに応じて電力レベルを設定するもの」であるから、本願発明の「前記送信手段により送信された前記削減要求に応じて消費電力を制御する前記電気機器」に相当する。
よって、引用発明の「関連電力メータとの接続、又は、関連電力情報へのアクセスに基づいて、機器20-1乃至20-nの現在の総電力消費量を決定することが可能であり、ここにおいて、機器20-1乃至20-nは、トリムコマンドに応じて電力レベルを設定するもの」であることは、本願発明の「前記送信手段により送信された前記削減要求に応じて消費電力を制御する前記電気機器の消費電力を取得する取得手段」を備えることに相当する。

(3)引用発明の「制御装置30」は、プロシージャ1と呼ばれる電力制御プロシージャを繰り返し用いるものであり、当該プロシージャ1のステップS202において、現在のシステム電力消費量Pc、目標システム電力消費量Pt及びしきい値Tに基づく|Pc-Pt|<Tとの基準を用いて、現在のシステム電力消費量Pcが目標システム電力消費量Ptに十分近いかどうかをチェックするものである。
そして、引用発明の「制御装置30」は、上記のチェックを行う手段を備えるものと認められるところ、この「手段」は、取得した現在のシステム電力消費量Pcに基づいて、当該現在のシステム電力消費量Pcが目標システム電力消費量Ptに十分近いかという、プロシージャ1による電力制御の状態を判定しているといえるから、本願発明の「前記取得手段により取得された前記消費電力に基づいて、前記電気機器の消費電力の制御の状態を表す制御状態を判定する判定手段」に相当する。
ただし、本願発明の「判定手段」は、「前記制御状態として、前記電気機器の消費電力の制御の成功および失敗を表す制御結果を判定」し、また、「前記送信手段が前記電気機器に前記削減要求を予め定められた回数だけ送信した後に、前記取得手段により取得された前記消費電力が、前記上限値を超えたとき、前記制御状態として、前記電気機器の消費電力の制御が失敗したと判定する」のに対し、引用発明ではその旨の特定がなされていない点で相違する。

(4)引用発明の制御装置が実行する「プロシージャ1」は、「ステップS202において、現在のシステム電力消費量Pc、目標システム電力消費量Pt及びしきい値Tに基づく|Pc-Pt|<Tとの基準を用いて、電力消費量Pcが目標消費量に十分近いかどうかをチェックし」、「そうでない場合には、ステップS203において、新しいトリムレベルtnを計算し、次のステップS204において、新しいトリムレベルtnを備えるトリムコマンドtを全ての機器20-1乃至20nにブロードキャストする」という処理を行うものである。
ここで、上記|Pc-Pt|<Tとの基準は、Pt-T<Pc<Pt+Tを意味することから、当該プロシージャ1が行う処理は、「Pt+T」を上限値として、現在のシステム電力消費量Pcがこの上限値「Pt+T」を超える場合に、新しいトリムコマンドtを全ての機器20-1乃至20-nにブロードキャストするものといえる。
そうすると、引用発明の制御装置30が備える「送信手段」と、本願発明の「送信手段」は、共に「前記取得手段により取得された前記消費電力が、予め定められた上限値を超えたとき、前記電気機器に前記削減要求を送信」する点で一致する。

(5)引用発明の制御装置が実行する「プロシージャ1」は、「a)ステップS202に記載されている基準、b)プロシージャ1が用いられた回数があるしきい値に達した、又はc)プロシージャ1の2回の最近の適用において、結果として生じるシステム電力消費量が、等しいが、目標値Pt未満である、という停止基準の1つ以上が満たされるまで繰り返し用いられる」ものである。
そして、「プロシージャ1」の実行により、「ステップS204において、新しいトリムレベルtnを備えるトリムコマンドtを全ての機器20-1乃至20nにブロードキャストする」ことから、引用発明においてトリムコマンドtを機器20-1乃至20nにブロードキャスト処理は、ブロードキャストを行う回数があるしきい値に達するまで行うことが可能ななものである。
よって、引用発明の制御装置30が備える「送信手段」と、本願発明の「送信手段」は、共に「前記送信手段が前記電気機器に前記削減要求を予め定められた回数だけ送信」する点で一致する。

(6)本願発明では、制御装置が「前記判定手段により判定された前記制御状態を報知する報知手段」を「備え」、「前記報知手段は、前記判定手段により判定された前記制御結果を報知」するのに対し、引用発明にはその旨の特定がなされていない点で相違する。

上記(1)ないし(6)によれば、本願発明と引用発明とは、次の(一致点)及び(相違点)を有する。

(一致点)
「単方向通信により電気機器にデータを送信可能な制御装置であって、
前記電気機器の消費電力の削減を要求する削減要求を前記電気機器に送信する送信手段と、
前記送信手段により送信された前記削減要求に応じて消費電力を制御する前記電気機器の消費電力を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記消費電力に基づいて、前記電気機器の消費電力の制御の状態を表す制御状態を判定する判定手段と、
を備え、
前記送信手段は、前記取得手段により取得された前記消費電力が、予め定められた上限値を超えたとき、前記電気機器に前記削減要求を送信し、
前記送信手段が前記電気機器に前記削減要求を予め定められた回数だけ送信する、
制御装置。」

(相違点1)
本件補正発明の「判定手段」は、「前記制御状態として、前記電気機器の消費電力の制御の成功および失敗を表す制御結果を判定」し、また、「前記送信手段が前記電気機器に前記削減要求を予め定められた回数だけ送信した後に、前記取得手段により取得された前記消費電力が、前記上限値を超えたとき、前記制御状態として、前記電気機器の消費電力の制御が失敗したと判定する」のに対し、引用発明には、その旨の特定がなされていない点。

(相違点2)
本願発明では、制御装置が「前記判定手段により判定された前記制御状態を報知する報知手段」を「備え」、「前記報知手段は、前記判定手段により判定された前記制御結果を報知」するのに対し、引用発明にはその旨の特定がなされていない点。

第6 判断
(1)相違点1について
ア.引用発明のプロシージャ1のステップS202について検討する。
ステップS202は、現在のシステム電力消費量Pc、目標システム電力消費量Pt及びしきい値Tに基づく|Pc-Pt|<Tとの基準を用いて、現在のシステム電力消費量Pcが目標システム電力消費量Ptに十分近いかどうかをチェックし、プロシージャを停止させるというものである。
そして、引用発明のプロシージャ1は、現在のシステム電力消費量Pcを目標システム電力消費量Ptに近づけることを目的とする電力制御であるから、ステップS202において、現在のシステム電力消費量Pcが目標システム電力消費量Ptに十分近いかどうかをチェックする処理は、プロシージャ1が目的とする電力制御が成功したか否かを判定する処理といえる。
よって、引用発明のステップS202において、現在のシステム電力消費量Pcが目標システム電力消費量Ptに十分近いと判定することは、本願発明の「消費電力の制御の成功を表す制御結果を判定」することに相当する。

イ.次に、引用発明の「a)ステップ202に記載されている基準、b)プロシージャ1が用いられた回数があるしきい値に達した、又はc)プロシージャ1の2回の最近の適用において、結果として生じるシステム電力消費量が、等しいが、目標値Pt未満である、という停止基準の1つ以上が満たされるまでプロシージャ1が繰り返し用いられる」点について検討する。
引用発明は、ステップS202において、現在のシステム電力消費量Pcが目標システム電力消費量Ptに十分近いかどうかをチェックしてプロシージャ1を停止することから、b)の停止基準が満たされるためには、少なくともプロシージャ1が用いられた回数があるしきい値に達するまでの間、「a)ステップ202に記載されている基準」が満たされないことが必要である。
そうすると、b)の停止基準は、a)の現在のシステム電力消費量Pcが目標システム消費量Ptに十分近いという基準が満たされることなく、プロシージャ1が適用された回数がしきい値に達した状態を判定するものといえる。
そして、上記の状態は、プロシージャ1が目的とする電力制御を達成することができない状態に他ならないから、引用発明において、b)の停止基準を用いた判定は、本願発明の「消費電力の制御の失敗を表す制御結果を判定」するものである。

ウ.また、引用文献1には、第3実施例として、「ステップS307において、制御装置30は、PcがPtに十分に近いかどうか、又はPpがPcと等しいかどうかをチェックする。この基準の一方又は両方が満たされる場合、プロシージャは停止する。」「停止基準のいずれも満たされない場合には、ステップS308において、制御装置30は、」「この新しいトリムレベルを機器20-1乃至20-nにブロードキャストする。」「その後、制御装置30は、ステップS304に戻る。」と記載され(【0032】)、また、「ステップS307において、制御装置は、更に、jの値が或るしきい値未満であるかどうかをチェックし、そうでない場合には、プロシージャは停止する。」と記載されている(【0033】)。
そうすると、引用文献1には、トリムレベルをブロードキャストした後で、ステップS307において、現在のシステム電力消費量Pcが目標システム電力消費量Ptに十分に近いかどうかという基準をチェックし、この基準が満たされない場合に、更に、プロシージャを実行した回数j、即ちトリムコマンドtをブロードキャストした回数が或るしきい値未満であるかどうかをチェックし、しきい値に達した場合にプロシージャを停止することについても記載されている。
そうすると、引用発明のb)プロシージャ1が用いられた回数があるしきい値に達したとの停止基準についても同様に、トリムコマンドtのブロードキャストを実行した後に、a)の現在のシステム電力消費量Pcが目標システム電力消費量Ptに十分近いという基準を満たさず、更に、プロシージャ1が用いられた回数があるしきい値に達した場合に適用されると解するのが相当である。
そして、上記イにおいても説示したとおり、a)の現在のシステム電力消費量Pcが目標システム電力消費量Ptに十分近いという基準を満たさず、更に、プロシージャ1が用いられた回数があるしきい値に達した場合とは、プロシージャ1が目的とする電力制御を達成することができない状態に他ならない。
よって、引用発明の「b)の停止基準を用いた判定」は、本願発明の「前記送信手段が前記電気機器に前記削減要求を予め定められた回数だけ送信した後に、前記取得手段により取得された前記消費電力が、前記上限値を超えたとき、前記制御状態として、前記電気機器の消費電力の制御が失敗した」ことを「判定」することに相当する。

エ.したがって、上記アないしウによれば、相違点1は実質的な相違ではない。

オ.仮に、引用発明の制御装置が、プロシージャ1による電力制御の成功および失敗を表す制御結果を判定するものでないとしても、ある目的の状態とするために所定の制御を行った場合において、当該目的の状態を達成できたか否かを判定することにより、当該制御が成功したか失敗したかを判定することは当業者が当然に為し得る事項である。
よって、引用発明のステップ202において現在のシステム電力消費量Pcが目標システム消費量Ptに十分近いと判断した場合に成功したと判定し、b)プロシージャ1が用いられた回数があるしきい値に達したという停止基準を満たす場合に失敗したと判定することは、当業者が容易になし得たことである。
また、引用発明は、現在のシステム電力消費量Pcを目標システム消費量Ptに近づけることを目的としていることから、a)の現在のシステム電力消費量Pcが目標システム電力消費量Ptに十分近いかどうかという停止基準による判定を先に行い、a)の停止基準を満たさない場合に、b)の停止基準による判定を行うことも当業者が容易になし得たことである。
よって、引用発明に基づいて、相違点1に係る構成をなすことは当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
電気機器の消費電力を制御する装置に、制御状態や制御結果を報知する報知手段を設ける技術は、例えば原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(国際公開第2013/065394号;[0098]、[0099]及び図18(a)、(b)を参照。)、引用文献3(特開2014-131447号公報;【0002】、図4-9を参照。)及び引用文献4(特開2013-106380号公報;【0094】、【0095】及び図10、11を参照。【0095】及び図11によれば、消費電力制御の成否を表示することについても示されている。)に記載されているように周知技術である。
そうすると、引用発明に上記周知技術を採用して相違点2の構成をなすことは、当業者が容易になし得たことである。

(3)そして、本願発明の効果も、引用発明と周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

第7 請求人の主張について
(1)請求人は、審判請求書において、「しかしながら、段落[0027]には「停止基準のうちの1つ以上が満たされるまで、プロシージャ1が繰り返し用いられる。」と記載されていることからも明らかなように、引用文献1に記載された発明では、a)?c)のどの基準が満たされてもプロシージャは停止します。そのため、引用文献1に記載された発明では、回数がしきい値に達したことによりプロシージャが停止しても、ユーザはプロシージャの停止を認識できるだけであり、この停止から回数がしきい値に達したことを認識することは困難です。」と主張している。
しかしながら、上記「第6(1)ア」において説示したとおり、引用発明のa)の現在のシステム電力消費量Pcが目標システム電力消費量Ptに十分近いという停止基準を用いた判定は、本願発明の「消費電力の制御の成功を表す制御結果を判定」するものであり、上記「第6(1)イ及びウ」において説示したとおり、引用発明のb)プロシージャ1が用いられた回数があるしきい値に達したとの停止基準を用いた判定は、本願発明の「消費電力の制御の失敗を表す制御結果を判定」するものである。
また、上記「第6(2)」において説示したとおり、制御状態や制御結果を報知する報知手段を設ける技術は周知技術であり、引用発明に周知技術を採用して制御結果を報知する報知手段を設けることは当業者が容易になし得たことである。
よって、引用発明及び周知技術に基づけば、プロシージャ1が用いられた回数があるしきい値に達したことにより停止した場合には、「消費電力の制御の失敗を表す制御結果を判定」し、この「制御結果を報知する」こととなるから、この報知を確認したユーザが、プロシージャ1が用いられた回数があるしきい値に達したことにより消費電力の制御に失敗したことを認識できることは明らかである。
よって上記主張を採用することはできない。

(2)請求人は、審判請求書において、「さらに、引用文献1に記載された発明では、しきい値に達した回で消費電力の目標を達成した場合(即ち、制御に成功した場合)も、b)の基準によりプロシージャは停止します。そのため、たとえ回数がしきい値に達したことによるプロシージャの停止をユーザが認識できたとしても、そのことをもって消費電力の制御に失敗したと判断することはできません。このように、引用文献1に記載された発明は、削減要求を予め定められた回数だけ送信した後に取得された消費電力が上限値を超えたときに、電気機器の消費電力の制御が失敗したと判定して制御結果を報知するという請求項1に係る発明の特徴を有しておらず、ユーザに対して動作を停止可能な電気機器の動作を停止させるように促すことが期待できるという効果を奏し得ないことは明らかです。」と主張している。
しかしながら、上記「第6(1)ウ」において説示したとおり、引用発明の「b)の停止基準を用いた判定」は、本願発明の「前記送信手段が前記電気機器に前記削減要求を予め定められた回数だけ送信した後に、前記取得手段により取得された前記消費電力が、前記上限値を超えたとき、前記制御状態として、前記電気機器の消費電力の制御が失敗した」ことを「判定」することに相当するから、上記主張を採用することはできない。

(3)したがって、請求人の審判請求書における主張はいずれも採用することができない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論の通り審決する。

 
審理終結日 2021-01-27 
結審通知日 2021-02-02 
審決日 2021-03-03 
出願番号 特願2018-537931(P2018-537931)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻丸 詔  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 山本 章裕
永井 啓司
発明の名称 制御装置、制御方法、プログラム、制御システム、及び、電気機器  
代理人 木村 満  
代理人 八島 耕司  
代理人 美恵 英樹  
代理人 龍竹 史朗  
代理人 宮脇 良平  
代理人 渡邉 幸男  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ