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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1373408
審判番号 不服2020-11098  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-07 
確定日 2021-04-22 
事件の表示 特願2016-107781「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月 7日出願公開、特開2017-215069〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年 5月30日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 2月 6日付け:拒絶理由通知書
令和2年 4月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 5月13日付け:拒絶査定
令和2年 8月 7日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出

第2 令和2年 8月 7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年 8月 7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「チルド室と、
チルド室に前後方向に移動可能に配された容器と、
前記チルド室の天井板の前端部に配され、前記容器の少なくとも前上方を塞ぐ開閉式のカバーと、
を有し、
前記カバーは、枠部材と前記枠部材内に設けられたガラス板とを含む閉塞板を有し、
前記ガラス板の外縁部の全周にわたって前記枠部材の内縁部によって覆われ、前記ガラス板の前面が前記枠部材の前部より後方に凹んで配され、
前記枠部材の両側部から左右一対の腕部が後方に突出している、
冷蔵庫。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和2年 4月 3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「チルド室と、
チルド室に前後方向に移動可能に配された容器と、
前記チルド室の天井板の前端部に配され、前記容器の少なくとも前上方を塞ぐカバーと、
を有し、
前記カバーは、枠部材と前記枠部材内に設けられたガラス板とを含む閉塞板を有し、
前記ガラス板の外縁部の全周にわたって前記枠部材の内縁部によって覆われ、前記ガラス板の前面が前記枠部材の前部より後方に凹んで配されている、
冷蔵庫。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「カバー」に関して、「カバー」が「開閉式」である点、および、「カバー」を構成する「枠部材の両側部から左右一対の腕部が後方に突出している」点で限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平10-122738号公報(平成10年 5月15日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷蔵室内の下部に、チルド室,パーシャル室等の区画室を設けるようにした冷蔵庫に関する。」

「【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例(請求項1,2,3に対応)について、図1ないし図10を参照しながら説明する。まず、図10は、本実施例に係る冷蔵庫のほぼ上半部を示しており、ここで、断熱箱体からなる冷蔵庫本体11には、上段に位置して冷蔵室12が形成され、更にその下部に位置して引出し式の冷凍室13(一部のみ図示)や図示しない野菜室等が設けられている。また、前記冷蔵室12の前面には断熱扉14が開閉可能に設けられている。
【0014】そして、この冷蔵室12の下部には、区画板たる天井板15が該冷蔵室12の左右の内側壁間に掛渡されるように設けられ、もって冷蔵室12の一部が上下に仕切られて区画室としてのチルド室16が構成される。このチルド室16は、内部が、チーズやヨーグルト等の保存に適する約0℃に維持されるようになっている。尚、この場合、天井板15により仕切られた空間のうのち左端部分は、後述する側板(仕切壁)によって左右に仕切られて自動製氷装置用の水タンク室とされている。また、使用者のスイッチ操作により、このチルド室16を、肉や魚の保存に適する温度(-3℃)のパーシャル室に切換えることも可能とされている。このチルド室16の詳細については後述する。」

「【0018】さて、前記チルド室16の構成について、図1ないし図7も参照して以下詳述する。このチルド室16は、前記天井板15と、冷蔵室12の床部と、冷蔵室12の背壁部(前記シェード20の一部を含む)と、冷蔵室12の右側の内側壁部に沿うように設けられた側板21と、チルド室16と水タンク室とを仕切る側板21とによって、上下、背面及び左右が囲まれることにより、前面が開口した形態に構成されている。このうち前記天井板15は、後述するように取付けられるようになっている。
【0019】そして、このチルド室16内には、図4及び図10に示すように、貯蔵物を収容する肉皿22が、スライドにより出入自在に収容されるようになっている。この肉皿22は、全体としてチルド室16内のほぼ一杯の幅寸法及び奥行き寸法を有する矩形容器状をなし、その前壁部は、立上り寸法が低く形成されると共に引出し用の手掛部22aを有して構成されている。また、左右両側壁部のうち前半部が、その前壁部の両端から奥方に向けて上方へ傾斜しながら緩やかに湾曲する傾斜壁部22bとされている。
【0020】また、チルド室16の前面部分には、チルド室16の前面開口部(肉皿22の前壁部の手掛部22aの上方部分)を開閉するための内扉23が、前記左右の側板21,21に支持されて設けられる。図4及び図10に示すように、この内扉23は、例えば透明プラスチックより矩形板状に構成され、その左右両側縁部には、下部部分に位置して後方へ凸となる舌片部24が一体に設けられると共に、その舌片部24の先端に位置して側方に突出する第1の軸部25が一体に設けられている。更に、内扉23の左右両側縁部の上端部分には、側方に突出する第2の軸部26が一体に設けられている。」

「【0024】これにて、通常時つまり肉皿22の収容時においては、図4に実線で示すように、内扉23は、自重により垂れ下がった形態となり、第2の軸部26が、第2の案内溝28の案内部28aの前端に位置し、且つ第1の軸部25が第1の案内溝27の案内部27aの下端に位置し、もってチルド室16の前面を閉塞している。
【0025】これに対し、使用者が、肉皿22を前方に引出す操作を行うと、肉皿22の側壁部の傾斜部22bが、内扉23の舌片部24の外周部に当接して相対的に摺動しながら押圧し、もって内扉23は、第2の軸部26が第2の案内溝28の案内部28aを後方に移動することにより上端部が後方に移動しながら、第1の軸部25が第1の案内溝27の案内部27aを上昇することにより下部が上昇し、もって、内扉23は水平近くまで回動しつつ奥側に後退してチルド室16の前面を開放するようになっている。
【0026】そして、この状態から肉皿22を後方に押込むようにすると、内扉23は自重により閉塞状態に戻るようになっている。このように、内扉23は肉皿22の出し入れに応動して開閉するのである。尚、このとき、肉皿22の出し入れだけでは、第1の軸部25が第1の案内溝27の突起部27dを乗越えるまでに上昇することはなく、第1の軸部25が後方延長部27bに侵入することがないようになっている。」



」(図4)



」(図5)



」(図10)


(イ)上記(ア)の各記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a
引用文献1に記載された冷蔵庫は、チルド室16を有している(段落【0001】、【0013】、【0014】、図10参照)。

b
チルド室16内には、貯蔵物を収容する肉皿22が、スライドにより出入自在に収容されるようになっており(段落【0019】参照)、肉皿22の出入は使用者の前方に引出す操作、後方に押込む操作によってなされる(段落【0025】、【0026】参照)。

c
チルド室16の前面部分には、チルド室16の前面開口部(肉皿22の前壁部の手掛部22aの上方部分)を開閉するための内扉23が設けられ(段落【0020】、図4参照)、肉皿22の収容時においては、内扉23はチルド室16の前面を閉塞している(段落【0024】、図4参照)。

d
内扉23がチルド室16の前面を閉塞する際、内扉23はチルド室16の天井板15の前端の近傍に位置している(段落【0018】、【0024】、図4参照)。

e
内扉23は、透明プラスチックにより矩形板状に構成され、その左右両側縁部に後方へ凸となる舌片部24が設けられている(段落【0020】、図4、図5参照)。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「チルド室16と、
チルド室16に収容された、使用者の前方に引出す操作、後方に押込む操作によってスライドにより出入自在な肉皿22と、
チルド室16の天井板15の前端の近傍に位置し、肉皿22の前壁部の手掛部22aの上方部分を閉塞する、チルド室16を開閉するための内扉23と、
を有し、
内扉23は、透明プラスチックにより矩形板状に構成され、その左右両側縁部に後方へ凸となる舌片部24が設けられている、
冷蔵庫。」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2005-299936号公報(平成17年10月27日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

「【0017】
以下、本発明の第1実施形態を図1、2に基づき説明する。図1は冷蔵庫の垂直断面図、図2は断熱区画部分の拡大垂直断面図である。
【0018】
冷蔵庫1は、断熱構造の筐体10の内部を上下に2分し、上方の区画を冷蔵室20、下方の区画を冷凍室30としている。冷蔵室20と冷凍室30の前面開口は断熱構造の本体扉21、31によってそれぞれ閉ざされる。本体扉21は下縁に窪み状の手掛け部22を有し、本体扉31は上縁に窪み状の手掛け部32を有する。これらの手掛け部に手を掛けることにより、本体扉を開くことができる。」

「【0023】
冷蔵室20の中で最も下の部分には独立の断熱区画40が設けられる。断熱区画40はそれ以外の冷蔵室空間と異なる温度帯で使用することが可能であり、断熱構造の筐体41を備える。本実施形態の場合、断熱区画40は内部温度を冷蔵温度帯と冷凍温度帯に切り替えて使用される。筐体41の内部にはダクト13よりダンパ部42を通じて所要量の冷気が吹き込まれる。
【0024】
筐体41は前面の壁面が開口部となっており、この前面開口43からスライド式のトレイ44が挿入される。前面開口43は横開き式の前面扉45で閉ざされる。すなわち前面扉45は断熱区画40の壁面の一部をなす。前面扉45は合成樹脂製のフレーム46及びこれにはめ込まれる透明な断熱ガラス47からなる。断熱ガラス47としては真空合わせガラスのような複層タイプで断熱性能の高いものを使用する。前面扉45の裏面には、筐体41の前面開口43をぐるりと取り囲む形で筐体41に密着する冷気シール48が装着されている。図示しないばねが前面扉45を閉じ方向に付勢する。」

「【0028】
続いて図3、4に基づき本発明の第2実施形態を説明する。図3は断熱区画の前面扉の垂直断面図、図4は前面扉の正面図である。なお第2実施形態において、第1実施形態と共通の構成要素には第1実施形態のときの符号をそのまま付し、説明は省略する。第3実施形態についても同様とする。」




」(図1)




」(図2)




」(図3)




」(図4)

(イ)上記(ア)の各記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a
冷蔵庫1は、断熱構造の筐体10の内部に冷蔵室20を有しており、冷蔵室20内にそれ以外の冷蔵室空間とは異なる温度帯で使用する断熱区画40が設けられている(段落【0018】、【0023】、図1)。

b
断熱区画40の前面開口43は、ばねにより閉じ方向に付勢される横開き式の前面扉45で閉ざされる(段落【0023】、【0024】、図1、図2)。
なお、前面扉45が横開き式であることやばねにより閉じ方向に付勢されていることから、前面扉45は断熱区画40の前面開口43を開くことが可能に構成されていると認められる。

c
前面扉45は、フレーム46とフレーム46にはめ込まれる透明な耐熱ガラス47とからなる板状部材である(段落【0024】、図2、図3参照)。

d
図4の記載内容から、前面扉45の全外周がフレーム46により構成されている点を看取することができるから、耐熱ガラス47の外縁部の全周にわたってフレーム46の内縁部によって覆われていると認められる。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「冷蔵室20内にそれ以外の冷蔵室空間とは異なる温度帯で使用する断熱区画40が設けられた冷蔵庫1において、
断熱区画40の前面開口43を開閉する前面扉45を有し、
前面扉45は、フレーム46とフレーム46にはめ込まれる透明な耐熱ガラス47とからなる板状部材であり、
耐熱ガラス47の外縁部の全周にわたってフレーム46の内縁部によって覆われている点」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造または技術的意義を考慮して対比する。
引用発明の「チルド室16」は、本件補正発明の「チルド室」に、
引用発明の「肉皿22」は、肉をいれるものであるから、本件補正発明の「容器」に、
引用発明の「肉皿22」が「使用者の前方に引出す操作、後方に押込む操作によってスライドにより出入自在」であることは、本件補正発明の「容器」が「前後方向に移動可能」であることに、
引用発明の「内扉23」は、肉皿22の前壁部の手掛部22aの上方部分を閉塞するものであるから、本件補正発明の「カバー」に、
引用発明の「内扉23」が「チルド室16の天井板15の前端の近傍に位置し、肉皿22の前壁部の手掛部22aの上方部分を閉塞する」ことは、本件補正発明の「カバー」が「前記チルド室の天井板の前端部に配され、前記容器の少なくとも前上方を塞ぐ」ことに、それぞれ相当する。
また、引用発明の「内扉23」は、チルド室16を開閉するものであることは明らかであり、本件補正発明の「開閉式のカバー」であるといえる。
また、引用発明の「内扉23」は、肉皿22の前壁部の手掛部22aの上方部分を閉塞するものであり、矩形板状に構成されていることから、本件補正発明の「閉塞板」を有しているといえる。
そして、引用発明の「内扉23」の「左右両側縁部」に設けられた「後方へ凸となる舌片部24」は、本件補正発明の「カバー」の「両側部」から「後方に突出している」「左右一対の腕部」であるといえる。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「チルド室と、
チルド室に前後方向に移動可能に配された容器と、
チルド室の天井板の前端部に配され、前記容器の少なくとも前上方を塞ぐ開閉式のカバーと、
を有し、
カバーは閉塞板を有し、
カバーの両側部から左右一対の腕部が後方に突出している、
冷蔵庫。」

<相違点>
「チルド室の天井板の前端部に配され、容器の前上方を塞ぐ開閉式のカバー」の構成に関して、本件補正発明の「カバー」では、「閉塞板」は「枠部材と前記枠部材内に設けられたガラス板とを含」んで構成され、「前記ガラス板の外縁部の全周にわたって前記枠部材の内縁部によって覆われ、前記ガラス板の前面が前記枠部材の前部より後方に凹んで配され、前記枠部材の両側部から左右一対の腕部が後方に突出している」のに対し、引用発明の「内扉23」の「閉塞板」は、「透明プラスチックにより矩形板状に構成され、その左右両側縁部に後方へ凸となる舌片部24が設けられている」点。

(4)判断
ア 上記相違点について検討する。
引用発明の内扉23は、冷蔵庫の冷蔵室とは異なる温度帯であるチルド室を開閉するものであり、引用文献2の前面扉は、冷蔵室20内にそれ以外の冷蔵室空間とは異なる温度帯で使用する断熱区画40の前面開口43を開閉するもので、作用・機能が共通している。
また、引用文献2の「前面扉45」の「フレーム46」と「フレーム46にはめ込まれる透明な耐熱ガラス47」は、本件補正発明の「カバー」の「枠部材」と「枠部材内に設けられたガラス板」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用して、引用発明の内扉23において、透明プラスチックにより矩形板状に構成することに代えて、引用文献2に記載された発明の「前面扉45」のように、枠部材と枠部材内に設けられたガラス部材とを含む板状部材で構成し、ガラス部材の外縁部の全周にわたって枠部材の内縁部によって覆われるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、枠部材と枠部材内に設けられたガラス板とを含む板状部材において、ガラス板の両面が枠部材の両面より凹んで配されているように構成することは、特開2015-206472号公報(原査定の引用文献3)の段落【0073】、図11?12に記載された、仕切り枠74bと仕切り枠74b内に設けられたガラス板74aとを含む野菜室仕切り74や、特開2010-223441号公報(原査定の引用文献4)の段落【0018】、図4に記載された、外枠13と外枠13内に設けられたガラス板12とを含む載置棚11、特開2009-68748号公報(原査定の引用文献5)の段落【0172】、図12?14等に記載された、枠体106と枠体106内に設けられたガラス部105とを含む前方棚板103及び枠体109と枠体109内に設けられたガラス部108とを含む後方棚板104に示されるように、本願出願前に既に広く知られていた周知技術(以下「周知技術」という。)であるから、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用するにあたって、上記周知技術を踏まえて、ガラス板の前面が枠部材の前部より後方に凹んで配されるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、引用発明の内扉23を枠部材と枠部材内に設けられたガラス部材とを含む板状部材で構成すれば、内扉23の左右両側縁部は枠部材で構成されることとなるから、舌片部24が枠部材に設けられるようになることは明らかである。

したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

イ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
「本願発明のように開閉式のカバーに関して、ガラス板と枠部材とよりなる構成については、引用文献1と引用文献2には記載されていません。すなわち、引用文献1は開閉式の扉ではありますが、枠部材とガラス板より構成されておらず、引用文献2については開閉式の扉ではありません。そして引用文献2のようにほぼ固定された状態で配される前面扉45であると、フレーム46内に耐熱ガラス47を設けても、強度的には問題となりませんが、開閉式のカバーにおいて、枠部材内部にガラス板を設ける構造であると、開閉するために強度を強くする必要があります。そこで、本願発明においては、枠部材から左右一対の腕部材を後方に突出させ、この腕部材が開閉に伴う作用をするだけでなく、枠部材に設けることにより腕部材が枠部材の補強部材となり、ガラス板を有した状態でカバーを開閉することができます。そして、この構成については引用文献1、2に開示されておらず、また、引用文献3?5には開示されていません。
ところで引用文献1の内扉23は、透明プラスチックより矩形状板に形成され、その左右両側縁部には、後方へ向かって舌片部24が一体に設けられています。この舌片部24は、案内溝に沿って舌片部24の先端に位置している第1の軸部25が移動できるように設けられたものであり、補強の役割は果たしていません。」
と主張する。
しかし、上記主張については、上記アで記載したとおりであり、また、引用発明の舌片部24は、本件補正発明の腕部と同様、内扉23の左右両側部から後方に突出するものであり、内扉23の補強部材として機能することは自明であるから、枠部材から左右一対の腕部材を後方に突出させることで腕部材が枠部材の補強部材となるとの効果は当業者が予測し得るものである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

また、請求人は、審判請求書において、
「引用文献4?引用文献5については、水平な棚板に関してガラス板を設ける構造であり、本願発明のようにほぼ縦方向のカバーにガラス板を設ける構造は記載されていません。また、引用文献4の図14には、縦方向に配された野菜室仕切り74のガラス板74aが仕切枠74bの前部より後方に凹んでいますが、この仕切枠74bの左右の前部は仕切ガイド76にほとんど覆われ、この仕切枠74bで、食品やその他の物が当たってもガラス板74aを汚れ難くするという思想はありません。
なお、引用文献2の前扉45についても、引用文献2の図3に示すようにフレーム46は断熱ガラス47の外縁部の後方から嵌め込んだものであり、断熱ガラス47の前方にはフレーム46は突出していません。
以上により、本願発明における、食品やその他の物が当たってもガラス板を汚れ難くするために、ガラス板の前面が枠部材の前部より後方に凹んで配されている構造に関しては、どの引用文献にも開示されていません。」
と主張する。
しかし、請求人が主張する、枠部材より凹んでいるだけでガラス板が汚れ難くなるという作用機序が明確でないが、ガラス板の前面が枠部材の前部より後方に凹んで配されていることで食品やその他の物が枠材に当たってもガラス板には当たらないので、ガラス板が汚れ難くするとの効果は、上記周知技術の構成におけるガラス板の前面と板部材の前部との相対位置に照らせば、当業者が予測し得るものである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年 8月 7日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年 4月 3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし9に係る発明は、本願出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3ないし5に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開平10-122738号公報
引用文献2:特開2005-299936号公報
引用文献3:特開2015-206472号公報
引用文献4:特開2010-223441号公報
引用文献5:特開2009-68748号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
また、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3ないし5に示される周知技術は、前記第2の[理由]2(4)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「カバー」が「開閉式」である点、および、「カバー」を構成する「枠部材の両側部から左右一対の腕部が後方に突出している」点の限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3ないし5に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3ないし5に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-02-12 
結審通知日 2021-02-16 
審決日 2021-03-05 
出願番号 特願2016-107781(P2016-107781)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 笹木 俊男  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 山崎 勝司
後藤 健志
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 水鳥 正裕  
代理人 富田 克幸  
代理人 中村 哲士  
代理人 前澤 龍  
代理人 蔦田 正人  
代理人 有近 康臣  
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