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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47G |
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管理番号 | 1373412 |
審判番号 | 不服2020-7390 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-01 |
確定日 | 2021-05-11 |
事件の表示 | 特願2015-158176号「注文飲食物搬送装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月16日出願公開、特開2017- 35289号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年8月10日の出願であって、令和1年7月10日付けで拒絶理由が通知され、同年9月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年2月21日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年6月1日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1?3に記載された発明に基いて、本願の請求項3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1?4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 なお、本願の請求項4に係る発明ついては、拒絶理由が通知されておらず、原査定の対象外となっている。 <引用文献等一覧> 引用文献1:特開2011-234880号公報 引用文献2:実公昭47-7263号公報 引用文献3:特表2003-511225号公報 引用文献4:特開2012-3675号公報 第3 本願発明 本願の請求項1?4に係る発明(以下「本願発明1?4」という。)は、令和1年9月6日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 飲食店の厨房と客席エリアとの間で注文飲食物を搬送する注文飲食物搬送装置であって、 前記客席エリアの客からオーダーされた注文飲食物を載せた搬送トレーが各々走行する複数の搬送レーンであり、前記厨房から前記客席エリアにある少なくとも何れかの客席へ至るまでの経路が互いに平行に形成されている複数の搬送レーンと、 前記複数の搬送レーンにある前記各搬送トレーの走行を制御する制御装置と、を備え、 前記制御装置は、 一つの前記搬送トレーに載る大きさの注文飲食物の容器を搬送する場合に選択される非同期モードにおいては、搬送先の指定操作を搬送レーン毎に受け付けて前記複数の搬送レーンの各搬送トレーを互いに独立して走行させることで、各搬送レーンにおいて指定された搬送先への注文飲食物の搬送を各々行わせ、 前記複数の搬送レーン間に跨る大きさの注文飲食物の容器を搬送する場合に選択される同期モードにおいては、搬送先の指定操作を受け付けて前記複数の搬送レーンの各搬送トレーを並列に走行させる、 注文飲食物搬送装置。 【請求項2】 前記複数の搬送レーンは、前記搬送トレーの進路を案内するリブを、前記搬送レーンの中心線沿いに有しており、 前記各搬送トレーは、各々の中心部において前記リブを両側から挟み込む複数のローラを有する、 請求項1に記載の注文飲食物搬送装置。 【請求項3】 前記複数の搬送レーンは、互いに平行なままカーブする部分を有し、 前記制御装置は、前記同期モードにおいては、前記各搬送トレーが前記カーブする部分を走行中は前記各搬送トレーの並走状態が保たれるように、前記カーブする部分において内周側を走行する搬送トレーの速度を、前記カーブする部分において外周側を走行する搬送トレーの速度よりも減速する、 請求項1または2に記載の注文飲食物搬送装置。 【請求項4】 前記搬送レーンは、前記搬送トレーの中心部に設けられる被連結手段を、前記搬送レーンの中心線に沿って延在するベルトに取り付けられた連結手段と連結させた状態で前記ベルトを回転することにより、前記搬送トレーを走行させる駆動機構を有しており、 前記制御装置は、前記同期モードにおいては、前記カーブする部分において内周側を走行する搬送トレーを動かすベルトの速度を、前記カーブする部分における外周側の搬送路と内周側の搬送路とのカーブの半径の比率に応じた量だけ減速する、 請求項3に記載の注文飲食物搬送装置。」 第4 引用文献の記載事項、認定事項及び引用発明等 1 引用文献1について 1-1 記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様である。)。 (1a)「【請求項2】 飲食物を調理するための厨房と複数の客席とに亘って設けられた搬送路と、各前記客席に設けられ、前記飲食物の注文を受注する飲食物注文手段と、各前記客席と前記厨房との間で前記搬送路に沿って走行する走行体と、を備え、前記飲食物を載置した前記走行体を前記客席まで走行させる注文飲食物搬送装置であって、 前記走行体の走行を制御する制御手段を更に備え、 前記飲食物は、複数の種類に区分されているとともに、前記搬送路の前記厨房側には、前記走行体の走行方向に沿ってそれぞれ異なる種類毎に前記飲食物を前記走行体に対して載置するための複数の飲食物載置領域が設けられており、 前記制御手段は、前記飲食物注文手段で受注された前記飲食物の種類に応じた前記飲食物載置領域で前記走行体を停止させた後、前記飲食物を載置した前記走行体を前記飲食物を注文した前記客席まで走行させることを特徴とする注文飲食物搬送装置。」 (1b)「【0015】 実施例に係る注文飲食物搬送装置及びその方法につき、図1から図15を参照して説明する。以下、図5における紙面奥側を走行体の正面側(前方側)として説明する。図1の符号1は、寿司7等の飲食物を搬送する注文飲食物搬送装置である。図1に示すように注文飲食物搬送装置1は、例えば回転寿司店等の飲食店において、調理人Sが調理を行う厨房Cと飲食客が飲食を行う店内Kとに亘って平面視で略L字状に形成された2本の注文搬送路18,19と、これら注文搬送路18,19上を走行可能に配置された各2つの走行体3と、を備えている。 【0016】 このうち、注文搬送路18,19は、厨房Cから店内Kにかけて並行に設けられており、これら注文搬送路18,19の店内K側には、注文搬送路18,19を囲むように飲食テーブル4及び飲食カウンタ5と、飲食テーブル4及び飲食カウンタ5で飲食客が着座する飲食シート6とが配備されている。これら飲食テーブル4及び及び飲食カウンタ5と飲食シート6によって本実施例における客席が構成されている。」 (1c)「【0021】 尚、本実施例では、注文搬送路18上を走行する走行体3は、厨房C側から店内K側に向けて注文搬送路18上を走行することで、走行体3の走行方向から見て右側の飲食カウンタ5における各飲食シート6に寿司7を搬送することができるとともに、注文搬送路19上を走行する走行体3は、厨房C側から店内K側に向けて注文搬送路19上を走行することで、走行体3の走行方向から見て左側の飲食テーブル4に寿司7を搬送することができるようになっている。」 (1d)「【0024】 先ず、走行体3を走行させる注文搬送路18の構造を説明する。図1、図3、図4及び図7に示すように、注文搬送路18の搬送面3下における厨房C側の端部には、モータ13によって水平方向に回動する駆動部スプロケット14aが設けられているとともに、店内K側の端部には、テンション部スプロケット14bが設けられている。また、モータ13には、モータ13の回転数を計測するための本発明における測定手段としてのロータリーエンコーダ15が取り付けられている。 【0025】 これら両端部に配設される駆動部スプロケット14a及びテンション部スプロケット14bに、本発明の搬送駆動体としての環状に形成された駆動ベルト16が掛け渡されている。この駆動ベルト16の内周面には、駆動ベルト16の右側面の全長に渡って駆動部スプロケット14a及びテンション部スプロケット14bに係合可能なラック部16aが複数形成されており、ラック部16aは、駆動部スプロケット14a及びテンション部スプロケット14bとに係合しているため、駆動部スプロケット14aの回動により駆動ベルト16が駆動するようになっている。」 (1e)「【0047】 そして、本実施例の制御回路30は、注文搬送路18,19上を走行する走行体3,3を検知することで、モータ13の回転数をロータリーエンコーダ15によって測定可能となっており、このロータリーエンコーダ15で測定したモータ13の回転数から走行体3,3の走行距離を算出するようになっている。 【0048】 このため、寿司7を載置した寿司皿11を載置した走行体3,3は、正確に注文端末8で寿司7を注文した飲食テーブル4または飲食カウンタ5における各飲食シート6まで走行可能となっている。尚、寿司7が飲食テーブル4または飲食カウンタ5における各飲食シート6まで搬送された後は、図10に示すように、その飲食テーブル4または飲食カウンタ5における各飲食シート6の正面側に設置されている注文端末8のディスプレイ26に、寿司7の受領確認画面が表示されるようになっている。」 (1f)引用文献1には、以下の図が示されている。 【図1】 【図2】 【図3】 1-2 認定事項 ア 請求項2に、「飲食物を調理するための厨房と複数の客席とに亘って設けられた搬送路と、各前記客席に設けられ、前記飲食物の注文を受注する飲食物注文手段と、各前記客席と前記厨房との間で前記搬送路に沿って走行する走行体と、を備え、前記飲食物を載置した前記走行体を前記客席まで走行させる注文飲食物搬送装置」と記載され、段落【0015】に、「調理人Sが調理を行う厨房Cと飲食客が飲食を行う店内Kとに亘って平面視で略L字状に形成された2本の注文搬送路18,19と、これら注文搬送路18,19上を走行可能に配置された各2つの走行体3と、を備えている。」と記載され、さらに、段落【0016】に「注文搬送路18,19は、厨房Cから店内Kにかけて並行に設けられており」と記載されていることを踏まえて、図1をみると、請求項2記載の搬送路は、複数の客席の客から受注した飲食物を載置した走行体3が各々走行する2本の注文搬送路18,19であり、厨房から複数の客席へ至るまでの経路が互いに並行に設けられている2本の注文搬送路18,19を備えることが、理解できる。 イ 請求項2に、「前記走行体の走行を制御する制御手段を更に備え、」と記載され、段落【0047】?【0048】に、「制御回路30は、注文搬送路18,19上を走行する走行体3,3を検知することで、モータ13の回転数をロータリーエンコーダ15によって測定可能となっており、このロータリーエンコーダ15で測定したモータ13の回転数から走行体3,3の走行距離を算出するようになっている。」「このため、寿司7を載置した寿司皿11を載置した走行体3,3は、正確に注文端末8で寿司7を注文した飲食テーブル4または飲食カウンタ5における各飲食シート6まで走行可能となっている。」と記載されているから、引用文献1記載の注文飲食物搬送装置は、2本の注文搬送路18,19上を走行する走行体3,3の走行を制御する制御手段を備えているといえる。 ウ 請求項2に、「制御手段は、・・・、前記飲食物を載置した前記走行体を前記飲食物を注文した前記客席まで走行させる」と記載され、段落【0021】に、「注文搬送路18上を走行する走行体3は、・・・注文搬送路18上を走行することで、・・・飲食カウンタ5における各飲食シート6に寿司7を搬送することができるとともに、注文搬送路19上を走行する走行体3は、・・・注文搬送路19上を走行することで、・・・飲食テーブル4に寿司7を搬送することができるようになっている。」と記載されていることを踏まえると、制御手段は、飲食物を注文した飲食カウンタ5における各飲食シート6又は飲食テーブル4の指定操作を注文搬送路18,19毎に受け付けて前記注文搬送路18,19上の走行体3,3を互いに独立して走行させることで、注文搬送路18,19において指定された飲食物を注文した飲食カウンタ5における各飲食シート6又は飲食テーブル4への飲食物の搬送を各々行わせることは明らかである。 1-3 引用発明 上記1-1、1-2から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「例えば回転寿司店等の飲食店において、飲食物を調理するための厨房と複数の客席とに亘って設けられた搬送路と、各前記客席に設けられ、前記飲食物の注文を受注する飲食物注文手段と、各前記客席と前記厨房との間で前記搬送路に沿って走行する走行体と、を備え、前記飲食物を載置した前記走行体を前記客席まで走行させる注文飲食物搬送装置であって、 前記搬送路は、複数の客席の客から受注した飲食物を載置した走行体3が各々走行する2本の注文搬送路18,19であり、厨房から複数の客席へ至るまでの経路が互いに並行に設けられている2本の注文搬送路18,19であり、 2本の注文搬送路18,19上を走行する走行体3,3の走行を制御する制御手段と、を備え、 前記制御手段は、 飲食物を注文した飲食カウンタ5における各飲食シート6又は飲食テーブル4の指定操作を注文搬送路18,19毎に受け付けて前記注文搬送路18,19上の走行体3,3を互いに独立して走行させることで、注文搬送路18,19において指定された飲食物を注文した飲食カウンタ5における各飲食シート6又は飲食テーブル4への飲食物の搬送を各々行わせる、注文飲食物搬送装置。」 2 引用文献2について 2-1 記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (2a)第2欄第5?14行 「 6は前記ベルト車2と駆動軸5に同時に接当して駆動軸5とベルト1間の動力伝達を行う中間摩摺車であり、各コンべア単位体3に夫々各別に設け、是等中間摩擦車6は夫々略中間部をピン7により固定機枠に枢着した腕杆8の端部に軸承されていて、この腕杆8の前記枢支ピン7周りに揺動自在となしてある。前記腕杆8は前記ピン7より下方位置を油圧シリンダー9、ピストンロツド10に連結してある。この油圧シリンダー9は適宜油圧回路に連結してある。」 (2b)第2欄第24?31行 「 コンべア装置の全幅に亙つて駆動する時には、各コンべア単位体3の油圧シリンダー9を全て作動させて各コンべア単位体3を全部駆動させる。又、小なる移送幅のコンべア装置として使用する時には、適当幅部分間の適当量の各コンべア単位体3・・・を、各油圧シリンダーを操作してこの適当幅部分間のコンべア単位体3・・・のみを回動さる。」 (2c)第3欄第2?11行 「 即ち、前記並列方向所定幅部分内の前記移送装置と、その他の移送装置とを夫々各別にクラツチを介して原動機に連動連結させるものであるから移送物品の大小形状に応じて、前記各移送装置を同時に駆動して幅広のコンべア装置として使用したり、若しくは適当幅部分の一群の移送装置を駆動して小幅のコンべア装置として使用したりすることが出来、移送物品の大小形状に応したコンべア装置と成すことによつて負荷に応じた駆動をさせ得る。」 (2d)引用文献2には、以下の図が示されている。 第1図 第2図 2-2 引用文献2に記載された技術的事項 上記摘示(2b)、(2c)より、引用文献2には以下の技術的事項(以下「引用文献2技術」という。)が示されているといえる。 「移送物品の大小形状に応じて、前記各コンベア単位体3を同時に駆動して幅広のコンベア装置として使用したり、若しくは適当幅部分の一群の各コンベア単位体3を駆動して小幅のコンべア装置として使用したりすること。」 3 引用文献3について 3-1 記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 (3a)「 【0015】 ・・・以下に詳細に示すように、各駆動モータ24aおよび24b、および故に各搬送ベルト22aおよび22bは独立して動作可能であるため、搬送ユニット18は各ベルトから搬送路16の対応する側に同時に荷物を送出することが可能であり、また各側から荷物を導入しかつ/または搬送ユニットの他のベルト上に1つの荷物を搬送するようにさらに動作可能である。好適には、搬送路16に沿って1つまたは複数の列車(train)のように同時に移動するために搬送ユニット18は連結手段26によって連結されている。・・・」 (3b)「 【0019】 図4に示すように、単一の搬送ユニット18’は近接する1対のユニットから構成されており、それぞれユニット上に並列式の搬送ベルトを有している。このように、4区画(quad)ベルトの搬送ユニット18’は4個のセルまたは搬送ベルト22から構成されており、その各々は独立モードまたは同期モードのいずれかで動作してよい。」 (3c)「 【0026】 1つのセルだけでは大き過ぎかつ故に1つの搬送ユニットの両方の搬送を必要とする、より大きな荷物または小包がこの搬送ユニットに積み込まれる場合(図6)、両搬送ベルト22aおよび22bはともに、米国特許第5,588,520号に開示された原理を用いるような方法で、1つの搬送ユニット18の両方の搬送ベルト上により大きな荷物を積み込むように操作される。・・・」 (3d)引用文献3には、以下の図が示されている。 【図3】 【図5】 【図6】 3-2 引用文献3に記載された技術的事項 上記摘示(3a)、(3c)より、引用文献3には以下の技術的事項(以下「引用文献3技術」という。)が示されているといえる。 「各搬送ベルト22aおよび22bから搬送路16の対応する側に同時に荷物を送出することが可能であり、また各側から荷物を導入しかつ/または搬送ユニットの他のベルト上に1つの荷物を搬送するようにさらに動作可能な搬送ユニット18であって、好適には、搬送路16に沿って1つまたは複数の列車(train)のように同時に移動するために搬送ユニット18は連結手段26によって連結されており、より大きな荷物がこの搬送ユニット18に積み込まれる場合、両方の搬送ベルト22aおよび22bはともに、1つの搬送ユニット18の両方の搬送ベルト22aおよび22b上により大きな荷物を積み込むように操作されること。」 4 引用文献4について 4-1 記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、次の事項が記載されている。 「【0049】 搬送車3が曲線部203を走行する際の制御動作について説明する。曲線部203を走行する際には、一般的に、左右のモータが完全な同期を取れないことに起因して、走行軌跡が実際のカーブレールとは一致せず、走行車輪がガイドレールに衝突するなどの挙動不安定になる問題が考えられる。本発明はその問題を解決するための以下のような手段を用いている。 【0050】 光電センサ47からの検出結果ならびに第1エンコーダ27および第2エンコーダ30からの検出結果を照合して、速度パターン発生部62は、搬送車3の現在位置を確認する速度パターン発生部62は、現在位置情報および速度比率テーブル300(後述)を使用することで、適切な左右速度差が生じるように目標速度信号を第1誤差増幅部65Aおよび第2誤差増幅部65Bに送信する。 【0051】 速度パターン発生部62は、曲線部203に進入すると、内輪を減速して外輪を加速することで、搬送車3の中心速度を規定速度(例えば、60m/分)に合わせて走行させる。速度パターン発生部62は、予め算出した速度比率テーブル300を使用することで、演算効率を向上させており、処理負荷を軽減している。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「例えば回転寿司店等の飲食店において、飲食物を調理するための厨房」は、本願発明1の「飲食店の厨房」に相当し、以下同様に、「複数の客席」は、複数の客席をまとめたものは客席エリアといえるから、「客席エリア」に、「とに亘って」は、「との間で」に、「飲食物」は、「飲食物注文手段」が「飲食物の注文を受注」したものであるから、「注文飲食物」に、「前記飲食物を載置した前記走行体を前記客席まで走行させる」ことは、「注文飲食物を搬送する」ことに、それぞれ相当する。 イ 上記アの相当関係を踏まえると、引用発明の「例えば回転寿司店等の飲食店において、飲食物を調理するための厨房と複数の客席とに亘って設けられた搬送路と、各前記客席に設けられ、前記飲食物の注文を受注する飲食物注文手段と、各前記客席と前記厨房との間で前記搬送路に沿って走行する走行体と、を備え、前記飲食物を載置した前記走行体を前記客席まで走行させる注文飲食物搬送装置」は、本願発明1の「飲食店の厨房と客席エリアとの間で注文飲食物を搬送する注文飲食物搬送装置」に相当する。 ウ 引用発明の「受注した」ことは、本願発明1の「オーダーされた」ことに相当し、以下同様に、「載置した」ことは、「載せた」ことに、「走行体3」は、その上に寿司皿11を載置するものであるから(摘示(1e)段落【0048】)、「搬送トレー」に、「2本の注文搬送路18,19」は「複数の搬送レーン」に、それぞれ相当する。 よって、上記アの相当関係も踏まえると、引用発明の「前記搬送路は、複数の客席の客から受注した飲食物を載置した走行体3が各々走行する2本の注文搬送路18,19であり、」は、本願発明1の「前記客席エリアの客からオーダーされた注文飲食物を載せた搬送トレーが各々走行する複数の搬送レーンであり、」に相当する。 エ 上記アの相当関係を踏まえると、引用発明の「厨房から複数の客席へ至るまでの経路」は、本願発明の「前記厨房から前記客席エリアにある少なくとも何れかの客席へ至るまでの経路」に相当するといえる。また、引用発明の「並行に」は、本願発明1の「平行に」に相当し、同様に、「設けられている」ことは、「形成されている」ことに相当する。 そうすると、上記ウの相当関係も踏まえると、引用発明の「厨房から複数の客席へ至るまでの経路が互いに並行に設けられている2本の注文搬送路18,19」は、本願発明1の「前記厨房から前記客席エリアにある少なくとも何れかの客席へ至るまでの経路が互いに平行に形成されている複数の搬送レーン」に相当する。 オ 引用発明の「制御手段」は、本願発明1の「制御装置」に相当し、同様に、「走行体3,3」は「各搬送トレー」に相当する。 よって、上記ウの相当関係も踏まえると、引用発明の「2本の注文搬送路18,19上を走行する走行体3,3の走行を制御する制御手段」は、本願発明1の「前記複数の搬送レーンにある前記各搬送トレーの走行を制御する制御装置」に相当する。 カ 引用発明の「飲食物を注文した飲食カウンタ5における飲食シート6又は飲食テーブル4」は、飲食物を注文し、そこに飲食物が搬送されることは明らかであるから、本願発明1の「搬送先」に相当する。また、引用発明の「注文搬送路18,19」は、本願発明1の「搬送レーン」、「複数の搬送レーン」及び「各搬送レーン」に相当する。 そうすると、上記イ、ウ、オの相当関係も踏まえると、 引用発明の「前記制御手段は、飲食物を注文した飲食カウンタ5における飲食シート6又は飲食テーブル4の指定操作を注文搬送路18,19毎に受け付けて前記注文搬送路18,19上の走行体3,3を互いに独立して走行させることで、注文搬送路18,19において指定された飲食物を注文した飲食カウンタ5における飲食シート6又は飲食テーブル4への飲食物の搬送を各々行わせる」ことと、 本願発明1の「前記制御装置は、一つの前記搬送トレーに載る大きさの注文飲食物の容器を搬送する場合に選択される非同期モードにおいては、搬送先の指定操作を搬送レーン毎に受け付けて前記複数の搬送レーンの各搬送トレーを互いに独立して走行させることで、各搬送レーンにおいて指定された搬送先への注文飲食物の搬送を各々行わせ」ることとは、 「前記制御装置は、搬送先の指定操作を搬送レーン毎に受け付けて前記複数の搬送レーンの各搬送トレーを互いに独立して走行させることで、各搬送レーンにおいて指定された搬送先への注文飲食物の搬送を各々行わせ」ることである点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があると認める。 〔一致点〕 「飲食店の厨房と客席エリアとの間で注文飲食物を搬送する注文飲食物搬送装置であって、 前記客席エリアの客からオーダーされた注文飲食物を載せた搬送トレーが各々走行する複数の搬送レーンであり、前記厨房から前記客席エリアにある少なくとも何れかの客席へ至るまでの経路が互いに平行に形成されている複数の搬送レーンと、 前記複数の搬送レーンにある前記各搬送トレーの走行を制御する制御装置と、を備え、 前記制御装置は、 搬送先の指定操作を搬送レーン毎に受け付けて前記複数の搬送レーンの各搬送トレーを互いに独立して走行させることで、各搬送レーンにおいて指定された搬送先への注文飲食物の搬送を各々行わせる、 注文飲食物搬送装置。」 〔相違点〕 本願発明1は、「一つの前記搬送トレーに載る大きさの注文飲食物の容器を搬送する場合に選択される非同期モードにおいては、搬送先の指定操作を搬送レーン毎に受け付けて前記複数の搬送レーンの各搬送トレーを互いに独立して走行させることで、各搬送レーンにおいて指定された搬送先への注文飲食物の搬送を各々行わせ、前記複数の搬送レーン間に跨る大きさの注文飲食物の容器を搬送する場合に選択される同期モードにおいては、搬送先の指定操作を受け付けて前記複数の搬送レーンの各搬送トレーを並列に走行させる」のに対し、引用発明は、常に「飲食物を注文した飲食カウンタ5における飲食シート6又は飲食テーブル4の指定操作を注文搬送路18,19毎に受け付けて前記注文搬送路18,19上の走行体3,3を互いに独立して走行させることで、注文搬送路18,19において指定された飲食物を注文した飲食カウンタ5における飲食シート6又は飲食テーブル4への飲食物の搬送を各々行わせる」(搬送先の指定操作を搬送レーン毎に受け付けて前記複数の搬送レーンの各搬送トレーを互いに独立して走行させることで、各搬送レーンにおいて指定された搬送先への注文飲食物の搬送を各々行わせる)ものであって、「非同期モード」及び「同期モード」に係る特定事項を有していない点。 (2)相違点についての判断 ア 上記相違点について検討すると、第4、2、2-2に引用文献2技術として示したとおり、引用文献2には、「移送物品の大小形状に応じて、前記各コンベア単位体3を同時に駆動して幅広のコンベア装置として使用したり、若しくは適当幅部分の一群の各コンベア単位体3を駆動して小幅のコンベア装置として使用したりすること。」が記載されている。 イ しかしながら、上記引用文献2技術は、各コンベア単位体3を同時に駆動するか、あるいは、適当幅部分の一群のみを駆動するかによって、コンベア装置の幅を変更するものであって、上記相違点に係る本願発明1のごとく「非同期モードにおいては、搬送先の指定操作を搬送レーン毎に受け付けて前記複数の搬送レーンの各搬送トレーを互いに独立して走行させる」ものではなく、上記相違点に係る「非同期モード」及び「同期モード」を備えたものとはいえない。 よって、引用発明に、引用文献2技術を採用したとしても、上記相違点に係る本願発明1の「非同期モード」及び「同期モード」を備えた構成には至らない。 ウ 同様に、第4、3、3-2に引用文献3技術として示したとおり、引用文献3には、「各搬送ベルト22aおよび22bから搬送路16の対応する側に同時に荷物を送出することが可能であり、また各側から荷物を導入しかつ/または搬送ユニットの他のベルト上に1つの荷物を搬送するようにさらに動作可能な搬送ユニット18であって、好適には、搬送路16に沿って1つまたは複数の列車(train)のように同時に移動するために搬送ユニット18は連結手段26によって連結されており、より大きな荷物がこの搬送ユニット18に積み込まれる場合、両方の搬送ベルト22aおよび22bはともに、1つの搬送ユニット18の両方の搬送ベルト22aおよび22b上により大きな荷物を積み込むように操作されること。」が記載されている。 エ しかしながら、上記引用文献3技術の、「各搬送ベルト22aおよび22b」は「搬送路16」に沿って移動する「搬送ユニット18」上に設けられたものであって、搬送路16に対して常に同じ位置を走行するものといえるから、上記相違点に係る本願発明1の「非同期モードにおいては、搬送先の指定操作を搬送レーン毎に受け付けて前記複数の搬送レーンの各搬送トレーを互いに独立して走行させることで、各搬送レーンにおいて指定された搬送先への注文飲食物の搬送を各々行わせ」るものではなく、上記相違点に係る「非同期モード」及び「同期モード」を備えたものとはいえない。 よって、引用発明に、引用文献3技術を採用したとしても、上記相違点に係る本願発明1の「非同期モード」及び「同期モード」を備えた構成には至らない。 オ さらに、引用文献4は、原査定において請求項3に係る発明に対して引用された文献であるところ、上記相違点に係る本願発明1の「非同期モード」及び「同期モード」を備えた構成については何ら開示されていない。 カ したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2?3について 本願発明2?3は、本願発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-04-13 |
出願番号 | 特願2015-158176(P2015-158176) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A47G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 新井 浩士 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 佐々木 一浩 |
発明の名称 | 注文飲食物搬送装置 |
代理人 | 大竹 裕明 |
代理人 | 関根 武彦 |