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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A45D
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 取り消して特許、登録 A45D
管理番号 1373426
審判番号 不服2020-10330  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-22 
確定日 2021-05-11 
事件の表示 特願2018-226049「受皿容器」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月14日出願公開、特開2019- 37846、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成27年2月27日(優先権主張平成26年3月3日)に出願された特願2015-37978号の一部を平成30年11月30日に新たな特許出願としたものであって、平成30年12月26日に審査請求及び手続補正がされ、令和元年11月13日付け(発送日:同年11月19日)で拒絶の理由が通知され、令和2年1月17日に意見書の提出及び手続補正がされ、令和2年4月24日付け(発送日:同年4月28日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和2年7月22日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2.令和2年7月22日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年7月22日の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)を以下の理由により却下する。

[理由]
本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正前の請求項1ないし12に係る発明が対象としていた「受皿容器」という物を「受皿容器の開封構造」という物に変更する補正を含むところ、この補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当せず、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものとは認められない。
したがって、本件補正は、同法17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし13に係る発明は、令和2年1月17日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1ないし13に係る発明(以下、「本願発明1ないし13という。」)は、次のとおりである。

【請求項1】
受皿本体部に内容物を収容したシート成形品である受皿と、該受皿本体部の上面開口を覆って装着されるシート成形品である蓋とからなる受皿容器であって、
前記受皿は、前記受皿本体部の上面開口の開口周縁部から外側に張り出して設けられた受皿側張出し係止部を備えており、
前記蓋は、前記受皿本体部の上面開口を覆う蓋本体部から外側に張り出して設けられ、
前記受皿側張出し係止部を抱え込んだ状態で係止させる蓋側張出し係止部を備えると共に、該蓋側張出し係止部から下方に延設して設けられた延設載置部を備えており、
前記蓋側張出し係止部は、前記蓋の他の部分と比較して厚さが薄くなっていると共に、前記蓋本体部との接続角部から上方に立設する内壁部と、内壁部の上端縁部から外側に張り出す上壁部と、上壁部の外側縁部から下方に延設する外壁部とからなり、
前記蓋が前記受皿に装着された状態において、前記蓋の前記延設載置部の下端部は、前記受皿の前記受皿本体部の底壁部よりも下方に配置されており、
前記蓋側張出し係止部によって前記受皿側張出し係止部を係止した前記受皿の係止状態は、前記延設載置部を平坦な載置面に載置して、前記蓋を介して前記受皿を平坦な載置面に支持させた状態で、前記蓋に上方から押圧力を加えることによる、前記蓋側張出し係止部の変形によって、前記受皿側張出し係止部を押し出すことで、解除されるようになっており、係止状態が解除された前記受皿は、前記受皿本体部の上面開口の開口周縁部から外側に張り出して設けられた前記受皿側張出し係止部が、前記蓋側張出し係止部の下方に至るまで前記載置面に落とし込まれて、前記蓋から離間される受皿容器。
【請求項2】
前記受皿側張出し係止部は、底壁部と周壁部とからなる前記受皿本体部の上面開口の開口周縁部に隣接する周壁上方辺部と、該周壁上方辺部の上端縁部から外側に張り出す張出し辺部と、該張出し辺部の外側縁部から下方に延設する垂下辺部とを備えている請求項1記載の受皿容器。
【請求項3】
前記受皿本体部は、上面開口から底壁部に向けて内径を縮径させた、テーパー形状の周壁部を備えている請求項1又は2記載の受皿容器。
【請求項4】
前記受皿側張出し係止部は、底壁部と周壁部とからなる前記受皿本体部の上面開口の開口周縁部に隣接する周壁上方辺部を含んで形成されており、該周壁上方辺部は、前記蓋本体部と前記蓋側張出し係止部との接続角部又は前記蓋側張出し係止部の内壁部に当接して係止された状態となっている請求項1?3のいずれか1項記載の受皿容器。
【請求項5】
前記周壁上方辺部は、テーパー形状または垂直形状、もしくはこれらの両形状を含んだ形状を備えている請求項4記載の受皿容器。
【請求項6】
前記蓋は、前記受皿よりも厚さが薄くなっている請求項1?5のいずれか1項記載の受皿容器。
【請求項7】
前記蓋の前記蓋本体部に、上方向に盛り上がった押出誘導部が設けられている請求項1?6のいずれか1項記載の受皿容器。
【請求項8】
前記蓋に押圧力を加えるための位置を示す、文字、図等によるマーキングが施されている請求項1?7のいずれか1項記載の受皿容器。
【請求項9】
前記蓋本体部の周縁部分に、径方向外側に向けて上方に傾斜するテーパー状接続部が形成されており、前記蓋が前記受皿に装着された状態において、該テーパー状接続部と、前記受皿本体部の周壁部の上端部分との間に、空間が保持されている請求項1?8のいずれか1項記載の受皿容器。
【請求項10】
前記蓋の前記延設載置部の下端周縁部から外側に張り出して、周縁補強部が設けられている請求項1?9のいずれか1項記載の受皿容器。
【請求項11】
前記受皿側張出し係止部は、前記受皿本体部の上面開口の開口周縁部に隣接する周壁上方辺部と、該周壁上方辺部の上端縁部から外側に張り出す張出し辺部と、該張出し辺部の外側縁部から下方に垂下する垂下辺部とを有している請求項1?10のいずれか1項記載の受皿容器。
【請求項12】
前記受皿及び前記蓋は、円形状の平面形状を有している請求項1?11いずれか1項記載の受皿容器。
【請求項13】
受皿本体部に内容物が収容されるシート成形品である受皿と、該受皿本体部の上面開口を覆って装着されるシート成形品である蓋とからなる受皿容器であって、
前記受皿は、前記受皿本体部の上面開口の開口周縁部から外側に張り出して設けられた受皿側張出し係止部を備えており、
前記蓋は、前記受皿本体部の上面開口を覆う蓋本体部から外側に張り出して設けられ、前記受皿側張出し係止部を抱え込んだ状態で係止させる蓋側張出し係止部を備えると共に、該蓋側張出し係止部から下方に延設して設けられた延設載置部を備えており、
前記蓋側張出し係止部は、前記蓋の他の部分と比較して厚さが薄くなっていると共に、前記蓋本体部との接続角部から上方に立設する内壁部と、内壁部の上端縁部から外側に張り出す上壁部と、上壁部の外側縁部から下方に延設する外壁部とからなり、
前記蓋が前記受皿に装着された状態において、前記蓋の前記延設載置部の下端部は、前記受皿の前記受皿本体部の底壁部よりも下方に配置されており、
前記蓋側張出し係止部によって前記受皿側張出し係止部を係止した前記受皿の係止状態は、前記延設載置部を平坦な載置面に載置して、前記蓋を介して前記受皿を平坦な載置面に支持させた状態で、前記蓋に上方から押圧力を加えることによる、前記蓋側張出し係止部の変形によって、前記受皿側張出し係止部を押し出すことで、解除されるようになっており、係止状態が解除された前記受皿は、前記受皿本体部の上面開口の開口周縁部から外側に張り出して設けられた前記受皿側張出し係止部が、前記蓋側張出し係止部の下方に至るまで前記載置面に落とし込まれて、前記蓋から離間される受皿容器。

第4.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

本願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項 1
・引用文献等 1、2、4ないし6

・請求項 2ないし7
・引用文献等 1、2、4ないし7

・請求項 8ないし13
・引用文献等 1ないし7

<引用文献等一覧>
1.特開平11-115955号公報
2.特開2002-119326号公報
3.実願昭61-83501号(実開昭62-194556号)のマイクロフィルム
4.実願昭51-25291号(実開昭52-118735号)のマイクロフィルム
5.実公昭47-3068号公報(周知技術を示す文献)
6.実願昭62-35653号(実開昭63-144454号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
7.特開2010-1057号公報(周知技術を示す文献)

第5.引用文献、引用発明
1.原査定の拒絶の理由に引用した特開平11-115955号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「押圧開封構造を有した包装用容器」の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与。2.ないし7.についても同様。)。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、容器本体とこれに嵌合される蓋体とからなる包装用容器に関し、特に、蓋体の開封を簡単に行えるようにした包装用容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】容器本体と、これに嵌合される蓋体とからなる包装用容器は、その各部を、合成樹脂シートを型成形することにより製造されるものであり、両者の嵌合は、例えば蓋体側に形成したアンダーカット部である係止部を、容器本体側の上縁フランジの外縁のスカート部に係止させて行うようにしている。このスカート部と係止部との係合によって、容器本体に対して蓋体を強固に嵌合させることができるため、非常に便利なものではある。
【0003】このような容器本体に嵌合された蓋体は、容器本体内の収納物を取り出す場合には、開封、つまり取り外しを行わなければならないが、その開封を行い易くするために、一般的には図1にも示すような指掛部が、容器本体側か蓋体側かのいずれかに形成してある。・・・
【0004】・・・
【0005】そこで、本発明者は、この種の合成樹脂シートによって製造される包装用容器の利便性はそのままにして、蓋の開封を簡単に行えるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。」
(2)「【0008】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するために、本発明の採った手段は、後述する実施の形態中において使用する符号を付して説明すると、「収納部を有する容器本体10と、この容器本体10のスカート部15と係止する係止部21を形成した蓋体20とからなる包装用容器100であって、蓋体20を、容器本体10に対する嵌合時に上縁フランジ11上に位置することになる蓋フランジ22と、この蓋フランジ22の内方に延在してその下方に押下空間12を形成する押下部23と、この押下部23の内端に位置する境界線部24を介して蓋上面26に向けて立ち上がる傾斜側壁25とを備えたものとして蓋上面26を押圧したとき、その押圧力が傾斜側壁25及び境界線部24を介して押下部23に伝えられ、この押下部23の押下によって蓋フランジ22を上縁フランジ11から浮き上がらせ、これにより、係止部21による係止を解除して蓋開封を行えるようにしたことを特徴とする押圧開封構造を有した包装用容器100」である。
【0009】すなわち、本発明に係る包装用容器100においては、図1に示すように、蓋体20における蓋上面26の一部を押圧することにより、図4中の点線にて示すように、蓋フランジ22の内側に位置している押下部23を押し下げ得るようにして、これにより、蓋体20側の蓋フランジ22の外縁に形成してある係止部21が、容器本体10側のスカート部15から外れるようにしたものである。」
(3)「【0012】以上のことにより、図4中の点線にて示したように、容器本体10側のスカート部15と蓋体20側の蓋フランジ22との間には両者を大きく分ける空間が形成されることになるから、使用者はこの空間内に指を入れるか、指掛部28に指を掛けて蓋体20の開封を行うのである。この開封は、図1に示した蓋上面26の一部を押圧するという簡単な操作によって行えるのであるから、老人や幼児のような力の弱い人や、あるいは視力の衰えた人でも容易かつ確実に行うことができるのである。」
(4)「【0017】図1には、合成樹脂シートを使用して真空または圧空成形した容器本体10及び蓋体20からなる包装用容器100の平面図が示してあり、この包装用容器100は全体を略長方形状のものとしたものである。勿論、本発明は、このような長方形状のものに限らず、例えば円形等の、この種の包装用容器に適用されている形状であれば、他の形状のものについても適用できることは言うまでもない。
【0018】さて、このような包装用容器100を構成している容器本体10及び蓋体20は、図2に示したように、容器本体10のスカート部15に、蓋体20の蓋フランジ22の外縁側にアンダーカット部として形成した係止部21を係止させることにより一体化されるものであり、容器本体10が収納空間を有することは当然として、蓋体20に後述の傾斜側壁25を形成することにより、当該蓋体20内にも収納空間を形成したものである。本実施形態においては、容器本体10側の上縁フランジ11、蓋体20側の蓋フランジ22がそれぞれ全周にわたって形成してあり、容器本体10側の上縁フランジ11の一部には、図1にも示したように、指掛部28が形成してあるが、この指掛部28はなくてもよい。
【0019】・・・
【0020】一方、蓋体20についてみてみると、図3及び図4に示したように、その少なくとも係止部21に近接する部分に、容器本体10に対する嵌合時に上縁フランジ11上に位置することになる蓋フランジ22と、この蓋フランジ22の内方に延在してその下方に押下空間12を形成する押下部23と、この押下部23の内端に位置する境界線部24を介して蓋上面26に向けて立ち上がる傾斜側壁25とが形成してある。そして、押下部23は、前述したように、容器本体10側の押下空間12上に位置することになるものである。」
(5)「【0023】また、図6には、さらに他の実施例に係る包装用容器100が示してある。この包装用容器100においては、蓋体20側の押下部23と傾斜側壁25とを下方に折り曲げたものであり、これにより、境界線部24がより一層下方に位置するようにしてある。従って、蓋上面26を押圧したときの力によって、押下部23の内端側を押下空間12内に引きずり込みし易くなっており、蓋体20の開封をより確実に行えるようにしたものである。」

前記(1)ないし(5)に摘記した事項及び【図1】ないし【図4】、【図6】の図示内容から、「容器本体10は、その上面開口の開口周縁部から外側に張り出して設けられた上縁フランジ11と、該上縁フランジ11の下方に延設して設けられたスカート部15とを備えていること」、「蓋体20は、前記容器本体10の上面開口を覆う押下部23と、この押下部23の内端に位置する境界線部24を介して蓋上面26に向けて立ち上がる傾斜側壁25とを備えるとともに、前記押下部23から外側に張り出して設けられ、前記蓋体20と前記容器本体10の嵌合時に、前記容器本体10の上縁フランジ11上に位置することになる蓋フランジ22と、前記上縁フランジ11及び前記スカート部15を抱え込んだ状態で係止する係止部21を備えると共に、該係止部21から下方に延設して設けられた指掛部28を備えていること」が把握されることを踏まえると、引用文献1には、次の発明及び事項(以下、「引用発明」及び「引用文献1事項」という。)が記載されているといえる。

《引用発明》
合成樹脂シートを使用して真空または圧空成形したものであって、収納物を収容した収納部を有する容器本体10と、合成樹脂シートを使用して真空または圧空成形したものである蓋体20と、からなる包装用容器100において、
前記容器本体10は、その上面開口の開口周縁部から外側に張り出して設けられた上縁フランジ11と、該上縁フランジ11の下方に延設して設けられたスカート部15とを備えており、
前記蓋体20は、前記容器本体10の上面開口を覆う押下部23と、この押下部23の内端に位置する境界線部24を介して蓋上面26に向けて立ち上がる傾斜側壁25とを備えるとともに、前記押下部23から外側に張り出して設けられ、前記蓋体20と前記容器本体10の嵌合時に、前記容器本体10の上縁フランジ11上に位置することになる蓋フランジ22と、前記上縁フランジ11及び前記スカート部15を抱え込んだ状態で係止する係止部21を備えると共に、該係止部21から下方に延設して設けられた指掛部28を備えており、
前記蓋上面26を押圧したとき、その押圧力が前記傾斜側壁25及び境界線部24を介して前記押下部23に伝えられ、この押下部23の押下によって前記蓋フランジ22を前記上縁フランジ11から浮き上がらせ、これにより、前記係止部21による係止を解除して蓋開封を行えるようにした、包装用容器100。

《引用文献1事項》
上記引用発明において、蓋体20側の押下部23と傾斜側壁25とを下方に折り曲げて、境界線部24がより一層下方に位置するようにすること。

2.原査定の拒絶の理由に引用した特開2002-119326号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「レフィル容器」の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】 化粧料が装填された中皿を収納するレフィル容器において、
前記化粧料が露出した露出面を覆うよう前記中皿に装着される構成とされており、装着状態において前記露出面と対向しこれを保護する蓋部と、前記装着状態において前記中皿の底面が露出された状態で該中皿を保持する保持部とを有する装着部と前記中皿が前記装着部に装着された状態において前記中皿と係合し、前記装着部からの前記中皿の離脱を防止する係合部と、を具備することを特徴とするレフィル容器。
【請求項2】 請求項1記載のレフィル容器において、
前記装着部の外周縁に折り返し部を形成すると共に、前記中皿が前記装着部に装着された状態において前記折り返し部の折り返し端部が前記中皿の底面から突出する構成としたことを特徴とするレフィル容器」
(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はレフィル容器に係り、特に化粧料が装填された中皿を収納し保護するレフィル容器に関する。」
(3)「【0029】このレフィル容器10Aは、例えば真空成型法或いはインジェクション(射出成型)法等を用いることにより樹脂を一体成型したものであり、また本実施例ではその材質として再生A-PET(アモルファス-ポリエチレンテレフタレート)を用いている。再生A-PETは再生品でない新規な樹脂に比べて低コストであるため、再生A-PETを用いることによりレフィル容器10Aのコスト低減を図ることができる。また、リサイクルの推進及びごみ減量等の環境面にも対応することができる。」
(4)「【0032】装着部20Aは、化粧料12が装填された中皿11Aを装着する部位であり、概略的に見て有底形状とされている。この装着部20Aは、保持部23A,蓋部24,段部25等を有した構造とされている。」
(5)「【0041】また、折り返し部22の折り返し部分となる図中下方の端部27は、装着状態にある中皿11Aの中皿底面13に対し下方に所定量(図3に矢印H2で示す)だけ突出するよう構成されている。更に、折り返し部22の所定位置には、窪み形状とされた指掛け部28Aが形成されている。
【0042】前記したように、装着状態において中皿11Aの係合溝14は係合部21Aに係合されているが、中皿11Aをレフィル容器10Aから取り出す時には、この指掛け部28Aを介して直接中皿11Aを把持し、中皿11Aをレフィル容器10Aから引き抜く。よって、保持部23Aの外周に折り返し部22が形成されていても、指掛け部28Aを設けることにより、中皿11Aをレフィル容器10Aからと取り出す作業を容易に行なうことができる。」
(6)「【0092】また、図25に示すレフィル容器10Hのように、一般にエマルジョンパクトタイプの中皿11Cは開口部の外周縁に鍔部16を形成した構成とされている。このような鍔部16を有する中皿11Cであっても、係合部21Cを上部に位置させることにより、確実に装着部20Hに装着することができる。」

前記(1)ないし(5)に摘記した事項及び【図1】ないし【図3】の図示内容を踏まえると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2事項1」という。)が記載されているといえる。

《引用文献2事項1》
真空成型法或いはインジェクション(射出成型)法等を用いることにより樹脂を一体成型したものであって、化粧料12が装填された中皿11Aを収納するレフィル容器10Aにおいて、
前記化粧料12が露出した露出面を覆うよう前記中皿11Aに装着される構成とされており、装着状態において前記露出面と対向しこれを保護する蓋部24と段部25とを有し、前記装着状態において前記中皿11Aの中皿底面13が露出された状態で該中皿11Aを保持する装着部20Aと、
前記中皿11Aが前記装着部20Aに装着された状態において前記中皿11Aと係合し、前記装着部20Aからの前記中皿11Aの離脱を防止する係合部21Aと、を具備し、
前記装着部20Aの外周縁に折り返し部22を形成すると共に、前記折り返し部22の所定位置に窪み形状とされた指掛け部28Aを形成し、
前記中皿11Aが前記装着部20Aに装着された状態において前記折り返し部22の折り返し端部27が前記中皿11Aの中皿底面13に対し下方に所定量H2だけ突出するよう構成し、
前記中皿11Aをレフィル容器10Aから取り出す時には、この指掛け部28Aを介して直接中皿11Aを把持し、中皿11Aをレフィル容器10Aから引き抜くこと。

さらに、前記(6)に摘記した事項及び【図25】の図示内容を踏まえると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2事項2」という。)が記載されているといえる。

《引用文献2事項2》
引用文献2事項1において、中皿を、鍔部16を有する中皿11Cとした場合であっても、係合部21Cを上部に位置させることにより、確実に装着部20Hに装着すること。

3.原査定の拒絶の理由に引用した実願昭61-83501号(実開昭62-194556号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献3」という。)には、「ワンタッチキャップ」の考案に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「本考案のワンタッチキャップは、キャップ本体1と、このキャップ本体1上面部に配設された操作部材2との2部品からなる。
キャップ本体1は、延長周壁3aの後部側をカットして低くし、押ボタン8の押下げ動作を容易にしており、このカット部の延長周壁3a上端内側に係合突条13を突設し、容器体12の口頭部14にねじ込みで装着されている。
操作部材2のノズル筒10は、常時は第1図のように連通筒6の上部により内部通路、つまりノズル孔がしゃ断され閉栓状態にあるが、この場合頂板裏面から垂設した環栓15が連通筒6に内嵌して更に閉栓状態を確実にしており、また押ボタン8の後部垂下壁下端外面に前記係合突条13に係合する係合突条16を突設して上方への抜け出しを防いでいる。17はノズル筒10の上部開口端から垂下した案内片であるが、これは必ずしも設けずともよい。また押ボタン8、注出部9上面にはそれぞれ開、閉の文字表示をし、さらに注出部9には開口部を矢示表示している。」(明細書4頁13行ないし5頁12行)

前記(1)に摘記した事項及び第2図、第3図の図示内容を踏まえると、引用文献3には、次の事項(以下、「引用文献3事項」という。)が記載されているといえる。

《引用文献3事項》
押下げ動作する押ボタン8上面及び注出部9上面に、それぞれ開、閉の文字表示をすること。

4.原査定の拒絶の理由に引用した実願昭51-25291号(実開昭52-118735号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献4」という。)には、「カツプ容器に装着及び脱着の容易にできる密封蓋体」の考案に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「第1図は、カツプ容器1の口縁部2が角丸の形状である場合におけるこの考案の蓋体構造を示す。
3は、プラスチツク板等の可撓体で形成した蓋体であつて、蓋体3の中央には平坦部4を形成し、該平坦部4の外周には額出しを設け、その外周面が口縁部2の内周面に密着するような立上り部5を形成し、また立上り部5の上端部からは、その下面が口縁部2の上面に密着するような鍔部6を延設する。
更に、鍔部6の下面には、内壁7と外壁8とからなる係止部9を鍔部6の周縁に沿つて適宜間隔に形成する。
係止部9の内壁7は、その壁面が口縁部2の外周面に密着するように垂下させ、その下端には上記口縁部2の下面に係止する爪10を形成するとともに、折返し状にして後壁8を形成し、その上端は上記鍔部6の外周部11に一体状に固定する。
そして、蓋体3を容器1の開口部に冠着する場合には、立上り部5の外周面と係止部9の前壁面の間隔12に口縁部2を押込むことによつて行われるが、この場合、内壁7は外方に押開かれて口縁部2を上記間隔12に挿入され、同時にこれと一体にして折返し状に形成された外壁8の付勢力により復元し、口縁部2の外周面に密着するとともに、その下端に形成された爪10が口縁部2の下面に係合する。」(明細書4頁12行ないし5頁19行)

前記(1)に摘記した事項及び第1図の図示内容を踏まえると、引用文献4には、次の事項(以下、「引用文献4事項」という。)が記載されているといえる。

《引用文献4事項》
プラスチツク板等の可撓体で形成した蓋体3において、その中央には平坦部4を形成し、該平坦部4の外周には額出しを設け、その外周面が口縁部2の内周面に密着するような立上り部5を形成し、また立上り部5の上端部からは、その下面が口縁部2の上面に密着するような鍔部6を延設し、更に、鍔部6の下面には、内壁7と外壁8とからなる係止部9を鍔部6の周縁に沿つて適宜間隔に形成し、係止部9の内壁7は、その壁面が口縁部2の外周面に密着するように垂下させて形成すること。

5.原査定の拒絶の理由に引用した実公昭47-3068号公報(以下、「引用文献5」という。)には、「プラスチツク容器」の考案に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「蓋1の角部2を構成する2辺の側体3,4の内面に角部に接近して小突起5を突設し、本体6の側壁8,9の上部嵌合部10,11の外面と前記小突起5とを接触するようにしたプラスチツク容器。」(1頁2欄23ないし27行)

前記(1)に摘記した事項及び第2図、第3図の図示内容から本体6の側壁8,9の上部嵌合部10,11が前記側壁8,9よりも薄く形成されていることが看取されることを踏まえると、引用文献5には、次の事項(以下、「引用文献5事項」という。)が記載されているといえる。

《引用文献5事項》
蓋1の角部2を構成する2辺の側体3,4の内面に角部に接近して小突起5と接触するようにされた、本体6の側壁8,9の上部嵌合部10,11を前記側壁8,9よりも薄く形成すること。

6.原査定の拒絶の理由に引用した実願昭62-35653号(実開昭63-144454号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献6」という。)には、「気密容器」の考案に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「第2図の気密係合部5は、容器本体1側の突条3を容器本体1口縁の内側に位置して設け、蓋体2の突条4を蓋体2の周縁外側に位置して設けるとともに、両突条3,4が嵌合するとき互いに密嵌可能なように容器本体1側の突条3外面には膨出部6を、又蓋体2の突条4内面には前記膨出部6を受け入れる為の凹部7を形成してなる。」(明細書5頁9ないし16行)
(2)「・・・第4図のものは第2図の容器本体1口縁の内面に形成した突条3の膨出部62を変化せしめた他の実施例であり、・・・」(明細書6頁6ないし8行)

前記(1)及び(2)に摘記した事項及び第2図、第3図の図示内容から蓋体2の突条4の凹部7が形成されている箇所は前記突条4の他の箇所よりも薄く形成されていることが看取されることを踏まえると、引用文献6には、次の事項(以下、「引用文献6事項」という。)が記載されているといえる。

《引用文献6事項》
容器本体1側の突条3の膨出部6と密嵌可能な蓋体2の突条4の凹部7が形成されている箇所を前記突条4の他の箇所よりも薄く形成すること。

7.原査定の拒絶の理由に引用した特開2010-1057号公報(以下、「引用文献7」という。)には、「包装用容器及び包装食品」の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0016】
本実施形態に係る容器本体10は、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂を単独又は2種以上混合したものを発泡状態又は非発泡状態となるようにシート化した合成樹脂シートが用いられて形成されており、該合成樹脂シートを用いた熱成形法によって成形されたものである。・・・」
(2)「【0018】
・・・本実施形態に係る容器本体10の周壁102は、上下方向に延びる中心線(図示しない)に対して外側に所定角度で傾斜し、下端から上方に向けて内部空間を拡大させる第一拡大部102aと、第一拡大部102aの上端縁よりもわずかに外側に延出した後に、その地点から垂直(前記中心線に対して平行)に起立する第二拡大部102bとで構成されており、第一拡大部102aと第二拡大部102bとが連続するように形成されている。
そして、第一拡大部102aが角部に切欠が設けられた長方形であったのに対して、この第二拡大部102bの上面視における形状は、角部に丸みが設けられた長方形となっており、この第二拡大部102bの上端縁によって略矩形状に前記開口100が画定されている。
・・・
【0019】
本実施形態に係る鍔部103は、周壁102の上端全周に亘って連続的に形成されている。これにより、鍔部103は、上面視環形状に形成されている。また、この鍔部13が、角部に丸みが設けられた長方形の開口100を囲む状態に形成されることによって本実施形態に係る容器本体10は、開口100の四つの角部に相当する箇所(Ca1,Ca2,Ca3,Ca4)が丸みをもって形成されており、開口100の四辺中央部に相当する箇所(La1,La2,La3,La4)が直線的に形成されている。
・・・
【0020】
前記鍔垂下部105は、開口縁部104の外縁から周壁102の第一拡大部102aの上端よりもわずかに上側となる位置まで垂下する第一鍔垂下部105aと、該第一鍔垂下部105aの下端縁からわずかに外側の地点から第一拡大部102aの上端と底部101からの高さが略同等となる位置まで垂下する第二鍔垂下部105bと、該第二鍔垂下部105bの下端部から外方に延出し、その延出方向先端部が鍔部103の外周縁を画成する鍔外縁部106とを備えており、本実施形態に係る鍔部103は、第一鍔垂下部105a
と、その下端縁から第二鍔垂下部105bの上端縁まで外側に延出する部分と、第二鍔垂下部105bと、鍔外縁部106とが連続するように形成されている。」

前記(1)及び(2)に摘記した事項及び【図4】、【図5】の図示内容から、容器本体10は、合成樹脂シートを用いた熱成形法によって成形されたものであること、容器本体10の周壁102の第二拡大部102bと連続して形成された鍔部103は、周壁102の上端全周に亘って連続的に、開口100を囲む状態に形成されること、鍔部103の開口縁部104は、第二拡大部102bから外側に張りして形成されること、鍔部103の鍔垂下部105は、開口縁部104の外縁から垂下するよう形成されるものであること、が看取されること、を踏まえると、引用文献7には、次の事項(以下、「引用文献7事項」という。)が記載されているといえる。

《引用文献7事項》
合成樹脂シートを用いた熱成形法によって成形された容器本体10において、前記容器本体10の周壁102の第二拡大部102bと連続して、前記周壁102の上端全周に亘って連続的に開口100を囲む状態形成された鍔部103を備え、前記鍔部103の開口縁部104を、前記第二拡大部102bから外側に張りして形成し、前記鍔部103の鍔垂下部105を、前記開口縁部104の外縁から垂下するよう形成すること。

第6.対比、判断
1.本願発明1について
(1)対比
引用発明の「合成樹脂シートを使用して真空または圧空成形したもの」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願発明1の「シート成形品」に相当し、同様に、「収納物」は「内容物」に、「容器本体100」は「受皿」に、「蓋体20」は「蓋」に、それぞれ相当する。

引用発明の「上縁フランジ11」及び前記「スカート部15」は、蓋体20と容器本体10の嵌合時に、前記容器本体10の上縁フランジ11上に位置することになる「蓋フランジ22」と「係止部21」とに、抱え込まれた状態で係止されるものであるから、前記「上縁フランジ11」及び前記「スカート部15」は、本願発明1の「受皿側張出し係止部」に相当し、引用発明の「蓋フランジ22」及び「係止部21」は、本願発明1の「蓋側張出し係止部」に相当する。
そして、引用発明の「指掛部28」は、係止部21から下方に延設して設けられたものという点で、本願発明1の「延設載置部」に対応するものであることを踏まえると、
引用発明の「前記蓋体20は、前記容器本体10の上面開口を覆う押下部23と、この押下部23の内端に位置する境界線部24を介して蓋上面26に向けて立ち上がる傾斜側壁25とを備えるとともに、前記押下部23から外側に張り出して設けられ、前記蓋体20と前記容器本体10の嵌合時に、前記容器本体10の上縁フランジ11上に位置することになる蓋フランジ22と、前記上縁フランジ11及び前記スカート部15を抱え込んだ状態で係止する係止部21を備えると共に、該係止部21から下方に延設して設けられた指掛部28を備えており」と、
本願発明1の「前記蓋は、前記受皿本体部の上面開口を覆う蓋本体部から外側に張り出して設けられ、前記受皿側張出し係止部を抱え込んだ状態で係止させる蓋側張出し係止部を備えると共に、該蓋側張出し係止部から下方に延設して設けられた延設載置部を備えており」とは、
「前記蓋は、前記受皿本体部の上面開口を覆う蓋本体部から外側に張り出して設けられ、前記受皿側張出し係止部を抱え込んだ状態で係止させる蓋側張出し係止部を備えると共に、該蓋側張出し係止部から下方に延設して設けられた部分を備えており」という限りにおいて一致する。

そして、引用発明における「蓋上面26を押圧したとき、その押圧力が前記傾斜側壁25及び境界線部24を介して前記押下部23に伝えられ、この押下部23の押下によって前記蓋フランジ22を前記上縁フランジ11から浮き上がらせ、これにより、前記係止部21による係止を解除して蓋開封を行えるようにした」ことは、「蓋フランジ22」及び「係止部21」によって「上縁フランジ11」及び「スカート部15」を係止した係止状態が、「蓋上面26」に上方から押圧力を加えることによって、「蓋フランジ22」が「上縁フランジ11から浮き上がる」という変形をおこすことによって解除されることを意味するものと解されることを踏まえると、
引用発明の「前記蓋上面26を押圧したとき、その押圧力が前記傾斜側壁25及び境界線部24を介して前記押下部23に伝えられ、この押下部23の押下によって前記蓋フランジ22を前記上縁フランジ11から浮き上がらせ、これにより、前記係止部21による係止を解除して蓋開封を行えるようにした」と、
本願発明1の「前記蓋側張出し係止部によって前記受皿側張出し係止部を係止した前記受皿の係止状態は、前記延設載置部を平坦な載置面に載置して、前記蓋を介して前記受皿を平坦な載置面に支持させた状態で、前記蓋に上方から押圧力を加えることによる、前記蓋側張出し係止部の変形によって、前記受皿側張出し係止部を押し出すことで、解除されるようになっており、係止状態が解除された前記受皿は、前記受皿本体部の上面開口の開口周縁部から外側に張り出して設けられた前記受皿側張出し係止部が、前記蓋側張出し係止部の下方に至るまで前記載置面に落とし込まれて、前記蓋から離間される」とは、
「前記蓋側張出し係止部によって前記受皿側張出し係止部を係止した前記受皿の係止状態は、前記蓋に上方から押圧力を加えることによる、前記蓋側張出し係止部の変形によって、解除されるようになっている」という限りにおいて一致する。

以上を踏まえると、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
《一致点》
受皿本体部に内容物を収容したシート成形品である受皿と、該受皿本体部の上面開口を覆って装着されるシート成形品である蓋とからなる受皿容器であって、
前記受皿は、前記受皿本体部の上面開口の開口周縁部から外側に張り出して設けられた受皿側張出し係止部を備えており、
前記蓋は、前記受皿本体部の上面開口を覆う蓋本体部から外側に張り出して設けられ、前記受皿側張出し係止部を抱え込んだ状態で係止させる蓋側張出し係止部を備えると共に、該蓋側張出し係止部から下方に延設して設けられた部分を備えており、
前記蓋側張出し係止部によって前記受皿側張出し係止部を係止した前記受皿の係止状態は、前記蓋に上方から押圧力を加えることによる、前記蓋側張出し係止部の変形によって、解除されるようになっている、受皿容器。

《相違点1》
本願発明1では、「蓋側張出し係止部から下方に延設して設けられた部分」が、「延設載置部」であって、該「延設載置部」の下端は、「前記蓋が前記受皿に装着された状態において」、「前記受皿の前記受皿本体部の底壁部よりも下方に配置され」たものであり、「前記蓋側張出し係止部によって前記受皿側張出し係止部を係止した前記受皿の係止状態は、前記蓋に上方から押圧力を加えることによる、前記蓋側張出し係止部の変形によって、解除されるようになっている」ことが、「前記延設載置部を平坦な載置面に載置して、前記蓋を介して前記受皿を平坦な載置面に支持させた状態で、前記蓋に上方から押圧力を加えることによる、前記蓋側張出し係止部の変形によって、前記受皿側張出し係止部を押し出すことで、解除されるようになっており、係止状態が解除された前記受皿は、前記受皿本体部の上面開口の開口周縁部から外側に張り出して設けられた前記受皿側張出し係止部が、前記蓋側張出し係止部の下方に至るまで前記載置面に落とし込まれて、前記蓋から離間される」ことであるのに対し、
引用発明では、「蓋側張出し係止部から下方に延設して設けられた部分」が、「指掛部28」であり、「蓋体20」が「容器本体10」に装着された状態において、前記「指掛部28」の下端が前記「容器本体10」の底壁よりも下方に配置されるとは規定されておらず、「前記蓋側張出し係止部によって前記受皿側張出し係止部を係止した前記受皿の係止状態は、前記蓋に上方から押圧力を加えることによる、前記蓋側張出し係止部の変形によって、解除されるようになっている」ことが、前記「指掛部28」を平坦な載置面に載置して、前記「蓋体20」を介して前記「容器本体10」を平坦な載置面に支持させた状態で行われ、係止状態が解除された前記「容器本体10」は、「上縁フランジ11」及び「スカート部15」が、「蓋フランジ22」及び「係止部21」の下方に至るまで前記載置面に落とし込まれて、前記「蓋体20」から離間されるとは、規定されていない点。

《相違点2》
本願発明1の「蓋側張出し係止部は、「前記蓋の他の部分と比較して厚さが薄くなっていると共に、前記蓋本体部との接続角部から上方に立設する内壁部と、内壁部の上端縁部から外側に張り出す上壁部と、上壁部の外側縁部から下方に延設する外壁部とからな」るものであるのに対し、引用発明の「蓋フランジ22」及び「係止部21」は、そのような規定がされたものではない点。

(2)判断
相違点1について検討する。
引用文献1事項ないし引用文献7事項は、上記第5.1.ないし7.に示したとおりであるところ、引用文献2事項1の「化粧料12」は、本願発明1の「内容物」に対応するものであり、同様に「中皿11A」は「受皿」に、「装着部20A」は「蓋」に、「レフィル容器10A」は「受皿容器」に、「係合部21A」は「蓋側張出し係止部」に、「折り返し端部27」は「延設載置部」に、「記中皿11Aが前記装着部20Aに装着された状態において前記折り返し部22の折り返し端部27が前記中皿11Aの中皿底面13に対し下方に所定量H2だけ突出するよう構成し」は「前記蓋が前記受皿に装着された状態において、前記蓋の前記延設載置部の下端部は、前記受皿の前記受皿本体部の底壁部よりも下方に配置されており」に、対応するものである。
しかし、引用文献2事項1の「レフィル容器10A」は、「真空成型法或いはインジェクション(射出成型)法等を用いることにより樹脂を一体成型したもの」である点で、「シート成形品」である「受皿」と、「蓋」とからなる「受皿容器」である本願発明1とは、異なるものであるし、また、上記「レフィル容器10A」は、「指掛け部28Aを介して直接中皿11Aを把持し、中皿11Aをレフィル容器10Aから引き抜くこと」により、「中皿11A」が、「装着部20A」から離間されるものであって、「折り返し端部27」を平坦な載置面に載置して、この状態で、「装着部20A」に上方から押圧力を加えることにより「係合部21A」の係合を解くものはない点においても、本願発明1とは異なるものである。
そして、引用発明の「指掛部28」は、上記第5.1.(3)に示したように、「指を掛けて蓋体20の開封を行う」ものであるところ、この「指掛部28」を平坦な載置面に載置し得るように、下方に延長して「延設載置部」に変更することは、前記「指を掛けて蓋体20の開封を行う」ことを妨げることというべきである。
ゆえに、たとえ、上記引用文献2事項1に接した当業者であっても、引用発明における「指掛部28」を平坦な載置面に載置し得るように、下方に延長して「延設載置部」に変更し、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項の如くその構成を変更することは、容易になし得たこととはいえない。
さらに、上記引用文献1事項ないし引用文献7事項も、引用発明の構成を、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項の如く、変更することを開示するものではないし、引用文献1ないし引用文献7のその余の記載も、上記のような変更を示唆するものではない。

そして、本願発明1は、上記相違点1に係る発明特定事項を備えることにより、本願明細書の段落【0011】及び【0064】等に記載された「簡易な構成及び簡易な操作によって、内容物を飛散させたり漏れ出させたりすることなく、内容物を封入した容器を容易に開封することができると共に、詰め替え用の容器として好適に用いることができる」という格別な作用効果を奏するものである。

(3)小括
したがって、本願発明1は、上記相違点2について検討するまでもなく、引用発明及び引用文献1事項ないし引用文献7事項に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし12について
本願発明2ないし12は、本願発明1の発明特定事項の全てを発明特定事項とし、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えるものであるから、上記本願発明1についての判断と同様の理由により、引用発明及び引用文献1事項ないし引用文献7事項に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

3.本願発明13について
本願発明13は、「受皿」が「内容物が収容される」点で、「内容物を収容した」本願発明1の「受皿」とは異なるのみであり、その余については、本願発明1と同様の事項をその発明特定事項とするものであるから、上記本願発明1についての判断と同様の理由により、引用発及び、引用文献1事項ないし引用文献7事項に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

第7.むすび
以上のとおり、本願発明1ないし13は、引用発明及び引用文献1事項ないし引用文献7事項に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-04-15 
出願番号 特願2018-226049(P2018-226049)
審決分類 P 1 8・ 57- WY (A45D)
P 1 8・ 121- WY (A45D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 高島 壮基
渡邊 豊英
発明の名称 受皿容器  
代理人 特許業務法人翔和国際特許事務所  

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