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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G05F |
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管理番号 | 1373516 |
審判番号 | 不服2020-14796 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-10-23 |
確定日 | 2021-05-11 |
事件の表示 | 特願2016-230319「太陽光発電制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月 7日出願公開、特開2018- 88073、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年11月28日の出願であって,令和2年6月1日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年7月8日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がされたが,令和2年8月17日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和2年10月23日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和2年8月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1に係る発明は,以下の引用文献1に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2014-199477号公報 第3 本願発明 本願請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,令和2年10月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりのものである。 「【請求項1】 太陽電池で発電される電力を、当該太陽電池の発電電力を入力してバッテリーに出力する昇降圧型のDC/DCコンバータを用いて制御する太陽光発電制御装置であって、 前記太陽電池の発電電力を監視する電力監視部と、 前記太陽電池の発電電力が所定の基準電力以上であるか否かを判断する電力判断部と、 前記太陽電池の発電電力が前記基準電力以上の場合には、最大電力点追従手法によって前記発電電力を制御し、前記太陽電池の発電電力が前記基準電力未満の場合には、前記DC/DCコンバータが行うスイッチング動作のデューティ比を固定し、前記太陽電池の出力電圧を前記DC/DCコンバータに接続される前記バッテリーの蓄電電圧に基づく所定の電圧に収束させる手法によって、前記発電電力を制御する電力制御部と、を備え、 前記電力制御部は、前記デューティ比を昇圧及び降圧のいずれも動作しないデューティ比に固定する、 太陽光発電制御装置。」 第4 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について ア 本願の出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2014-199477号公報(以下,これを「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。) a 「【背景技術】 【0002】 従来、太陽光パネル(PV(Photo Voltaic)パネル)を利用し、太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電が普及している。太陽光発電では、発電時に、例えば廃棄物、排水、騒音、又は振動が発生せず、非常用電源としても活用が期待されることから、近年特に注目されている。 【0003】 太陽光パネルによる発電量は、例えば、太陽放射照度、天候(例えば温度、雲量)に依存する。太陽光発電による発電電力を最大にするために、最大電力点追従制御(MPPT:Maximum Power Point Tracking)(以下、MPPT制御ともいう)が行われる。」 b 「【0023】 (実施形態) 図1は、本発明の実施形態における太陽光発電システム100の構成例を示す図である。太陽光発電システム100は、PVパネル10、MPPT子機20、MPPT親機30、接続箱40、及びパワーコンディショナ50を備える。MPPT子機20は発電制御装置の一例である。MPPT親機30は、制御装置の一例である。 【0024】 PVパネル10は、光電効果により、光エネルギーを電力に変換する太陽電池を含むパネルである。PVパネル10は、複数の太陽電池セルが組み合わされた太陽電池モジュールである。PVパネル10は、電力線PLに対して直列又は並列に接続される。各PVパネル10は、各MPPT子機20と1対1で対応している。 【0025】 図1の例では、各PVパネル10が電力線PLを介して直列に接続された太陽電池ストリング(PVストリング)として構成されている。また、各太陽電池ストリングが電力線PLを介して接続箱40において並列に接続され、太陽電池アレイ(PVアレイ)として構成されている。なお、PVパネル10が6個直列に接続されてPVストリングが構成され、PVストリングが4個並列に接続されてPVアレイが構成されているが、この数はこれに限られない。 【0026】 MPPT子機20は、自装置に接続されたPVパネル10の発電電力を制御する。つまり、MPPT子機20は、自装置に接続されたPVパネル10の発電電力を入力し、この発電電力が所望の電力となるように制御する。所望の電力は、例えば、PVパネル10の向き、PVパネル10の設置場所、又は日照条件によって、MPPT子機20毎に異なることがある。 【0027】 例えば、MPPT子機20は、自装置に接続されたPVパネル10に対してMPPT制御する。MPPT子機20のMPPT制御とは、接続されたPVパネルの発電量を最大とするための制御である。このMPPT制御は、公知の方法により実現可能であり、例えば山登り法が採用される。また、MPPT子機20は、MPPT親機30の子機として動作する。 【0028】 MPPT親機30は、複数のMPPT子機20の親機として動作する。また、MPPT親機30は、例えば、MPPT子機20による測定値(例えば、電流、電圧、又は電力の測定値)をMPPT子機20から受信し、PVパネル10の発電量を常時監視する。 【0029】 MPPT親機30の設置場所は、特に限定しない。例えば、単独の装置としてMPPT子機20との通信が可能な場所に設置されてもよいし、パワーコンディショナ50内に設置されてもよいし、接続箱40内に設置されてもよい。図1では、単独の装置として設置された場合を例示している。 【0030】 ? 接続箱40は、複数のPVパネル10が直列に接続されて構成されるPVストリング単位で配線としての電力線PLをまとめて(集線し)、パワーコンディショナ50に接続する。接続箱40は、例えば、電力線PLを接続するための端子、点検や保守の際に使用されるスイッチ、避雷素子、及び電気の逆流を防止するための逆流防止ダイオードを含む。 【0031】 ? また、接続箱40は、パワーコンディショナ50と一体化されてもよい。また、接続箱40は、省略されてもよい。 【0032】 パワーコンディショナ50は、接続箱40から出力された直流電力を変換(DCDC変換)し、さらに交流電力に変換(DCAC変換)する。パワーコンディショナ50は、例えば分電盤(不図示)に接続される。 【0033】 また、パワーコンディショナ50は、DCDC変換では、パワーコンディショナ50に入力された電力について、MPPT制御する。パワーコンディショナ50のMPPT制御とは、太陽光発電システム100に含まれるPVパネル10の総発電量を最大とするための制御である。このMPPT制御は、公知の方法により実現可能であり、例えば山登り法が採用される。 【0034】 次に、MPPT子機20の構成例について説明する。 図2はMPPT子機20の構成例を示す図である。図3はMPPT子機20の詳細な構成例の一部を示す図である。MPPT子機20は、スイッチ部21、電源部22、電流電圧検出部23,24、DCDC部25、制御部26、通信部27、入力端子28、及び出力端子29を備える。 【0035】 スイッチ部21は、MPPT子機20の入力端子28側と出力端子29側とを電気的に接続又は遮断させる。スイッチ部21は、制御部26からの切り替え信号に応じて、オンオフ制御される。 【0036】 入力端子28側と出力端子29側とを電気的に接続させた場合(ON)、MPPT子機20に接続されたPVパネル10からの電力を、出力端子29側へそのまま通過させる。これにより、PVパネル10の出力をモニタリングできる。例えば、MPPT制御の実行中には、スイッチ部21はオフにされる。 【0037】 入力端子28側と出力端子29側とを電気的に遮断させた場合(OFF)、MPPT子機20に接続されたPVパネル10からの電力は、スイッチ部21を介した経路では出力されない。例えば、MPPT制御の停止中には、スイッチ部21はオンにされる。 【0038】 電源部22は、PVパネル10からの電力供給を受けて、MPPT子機20内の各部へ電力を供給する。 【0039】 電流電圧検出部23は、PVパネル10の出力電流及び出力電圧を検出する。つまり、DCDC部25による電圧変換前の電流値及び電圧値を検出する。なお、電流電圧検出部23により検出される電流を入力側検出電流、電流電圧検出部23により検出される電圧を入力側検出電圧、とも称する。 【0040】 電流電圧検出部24は、スイッチ部21又はDCDC部25の出力電流又は出力電圧を検出する。つまり、スイッチ部21を通過された電流値及び電圧値、又は、DCDC部25による電圧変換後の電流値及び電圧値を検出する。なお、電流電圧検出部24により検出される電流を出力側検出電流、電流電圧検出部24により検出される電圧を出力側検出電圧、とも称する。また、出力側とは、スイッチ部21、DCDC部25、又は制御部26よりも出力端子29側であることを示す。 【0041】 DCDC部25は、DC/DCコンバータであり、電力変換用のスイッチング素子を有するスイッチ部25Sを備える。スイッチ部25Sは、オンとオフを適時切り替えることにより、電力線PLを介してPVパネル10から供給される供給電力を制御する。 【0042】 DCDC部25は、PVパネル10の出力電圧を入力し、スイッチ部25Sを用いて、入力された電圧を変圧する。スイッチ部25Sは、制御部26からのPWM(Pulse Width Modulation)信号に応じて、オンオフ制御される。 【0043】 制御部26は、例えば、不図示のROMに格納されたプログラムをマイクロコンピュータが実行することで、各種処理を行う。 【0044】 制御部26は、MPPT制御する場合には、出力側検出電圧が所定の電圧となるよう、DCDC部25のスイッチ部25Sのオン時間とオフ時間との比を示すデューティ比(PWM値)を決定し、スイッチ部25Sをオンオフ制御する。例えば、所定の電圧とは、MPPT制御により決定される、最大電力点の電圧である。MPPT制御では、デューティ比は可変である。 【0045】 PVパネル10の出力電圧は、MPPT子機20の入力側検出電圧として検出される。PVパネル10の出力電流は、MPPT子機20の入力側検出電流として検出される。また、PVパネル10の出力電力は、例えば制御部26により、MPPT子機20により検出された入力側検出電圧と入力側検出電流との積として導出(例えば算出)される。つまり制御部26は、電力導出部としての機能を有する。なお、MPPT子機20が、入力側の電力を検出する電力検出器を備えてもよい。導出された入力側の電力を入力側電力とも称する。また、入力側とは、スイッチ部21、DCDC部25、又は制御部26よりも入力端子28側であることを示す。」 c 「【0057】 MPPT子機20の出力側の動作点は、上述したパワーコンディショナ50によって制御される。パワーコンディショナ50は複数のPVパネル10を含むPVストリングの発電量が最大となるように制御する。例えば、山登り法などによって、PVストリング上の電力が最大となるように、PVストリング上の電流、電圧を制御する。PVストリング上の電圧は、複数のMPPT子機20が出力した電圧の和になる。一方、PVストリング上の電流は、PVストリングは直列接続であるため、各MPPT子機20が出力する電流となる。 【0058】 上記パワーコンディショナ50の制御により、各MPPT子機20の出力側の動作点(電圧、電流)は決定される。パワーコンディショナ50は、一般的にPVストリングの電流を固定し、電圧を変化させることで、PVストリングに最大電力を出力させるよう制御する。この固定された電流の値が小さいときにMPPT子機20がMPPT制御を開始すると、MPPT子機20の出力側の動作点は範囲A2付近となる。」 d 「【0158】 (第6動作例) 図16はMPPT子機20の第6動作例を説明するためのIV特性例を示す図である。 ・・・中略・・・ 【0162】 図17はMPPT子機20の第6動作例を示すフローチャートである。 【0163】 まず、電流電圧検出部23は、PVパネル10の出力電圧を入力側検出電圧Vinとして逐次検出し、PVパネル10の出力電流を入力側検出電流Iinとして逐次検出する(S601)。 【0164】 続いて、制御部26は、入力側検出電圧Vinと入力側検出電流Iinとを乗じて、入力側電力Winを算出する(S602)。 【0165】 続いて、制御部26は、入力側電力Winと比較される比較値Win_compが0であるか否かを判定する(S603)。比較値Win_compの初期値は0である。 【0166】 Win_compが0である場合、制御部26は、入力側電力Winの値を比較値Win_compに設定する(S605)。S605の処理後、電流電圧検出部23は、次のサンプリング値を取得する(S601)。 【0167】 一方、Win_compが0でない場合、制御部26は、比較値Win_compが入力側電力Win未満であるか否かを判定する(S604)。 【0168】 比較値Win_compが入力側電力Win未満である場合、制御部26は、入力側電力Winの値を比較値Win_compに設定する(S605)。S605の処理後、電流電圧検出部23は、次のサンプリング値を取得する(S601)。 【0169】 一方、比較値Win_compが入力側電力Winよりも大きい場合、制御部26は、MPPT制御を開始する(S606)。 ・・・中略・・・ 【0175】 上記実施形態では、制御部26は、入力側検出電圧Vin、入力側検出電流Iin、又は入力側電力Winが所定値以下である場合、実行中のMPPT制御を停止してもよい。MPPT制御を停止する場合には、例えば、制御部26は、DCDC部25のPWM値を固定し、又はスイッチ部21がオンになるよう制御する。電圧に関する所定値は、例えば8Vである。電流に関する所定値は、例えば0.8Aである。 【0176】 これにより、精度の低いMPPT制御が実行されることを回避できる。」 e 「図1 」 f 「図2 」 g 「図3 」 h 「図17 」 i 上記bの段落【0023】には,“PVパネル10,MPPT子機20,MPPT親機30,接続箱40,及びパワーコンディショナ50を備える太陽光発電システム100におけるMPPT子機20”が記載されている。また,上記aの段落【0002】には,“PVパネルは太陽光パネルである”ことが記載されている。 してみると,引用文献1には,“PVパネル(太陽光パネル)10,MPPT子機20,MPPT親機30,接続箱40,及びパワーコンディショナ50を備える太陽光発電システム100におけるMPPT子機20”が記載されているといえる。 j 上記bの段落【0025】には,“各PVパネル10が電力線PLを介して直列に接続された太陽電池ストリング(PVストリング)として構成され,また,各太陽電池ストリングが電力線PLを介して接続箱40において並列に接続され,太陽電池アレイ(PVアレイ)として構成されて”いることが記載されている。 k 上記bの段落【0030】には,「接続箱40は、複数のPVパネル10が直列に接続されて構成されるPVストリング単位で配線としての電力線PLをまとめて(集線し)、パワーコンディショナ50に接続」されることが記載されている。 m 上記bの段落【0033】には,“パワーコンディショナ50は,DCDC変換では,パワーコンディショナ50に入力される太陽光発電システム100に含まれるPVパネル10の総発電量を最大とするための制御であるMPPT制御を行うものである”ことが,さらに,上記cには,“パワーコンディショナ50は,複数のPVパネル10を含むPVストリングの発電量が最大となるように,山登り法などによって,PVストリング上の電力が最大となるように,PVストリング上の電流,電圧を制御するものであって,PVストリング上の電圧は,複数のMPPT子機20が出力した電圧の和であり,一方,PVストリング上の電流は,PVストリングは直列接続であるため,各MPPT子機20が出力する電流であり,パワーコンディショナ50の制御により,各MPPT子機20の出力側の動作点(電圧,電流)は決定される”ことが記載されている。 また,上記aの段落【0003】には,“MPPT制御は最大電力点追従制御(MPPT:Maximum Power Point Tracking)である”ことが記載されている。 してみると,引用文献1には,“パワーコンディショナ50は,DCDC変換では,パワーコンディショナ50に入力される太陽光発電システム100に含まれるPVパネル10の総発電量を最大とするための制御であるMPPT制御(最大電力点追従制御)を行うものであって,複数のPVパネル10を含むPVストリングの発電量が最大となるように,山登り法などによって,PVストリング上の電力が最大となるように,PVストリング上の電流,電圧を制御するものであって,PVストリング上の電圧は,複数のMPPT子機20が出力した電圧の和であり,一方,PVストリング上の電流は,PVストリングは直列接続であるため,各MPPT子機20が出力する電流であり,パワーコンディショナ50の制御により,各MPPT子機20の出力側の動作点(電圧,電流)は決定される”ことが記載されているといえる。 n 上記bの段落【0024】及び【0027】には,“各MPPT子機20は,各PVパネル10に1対1で接続されており,また, MPPT子機20は,自装置に接続されたPVパネル10に対してMPPT制御するものであ”ることが記載されている。 o 上記bの段落【0034】には,「MPPT子機20は、スイッチ部21、電源部22、電流電圧検出部23,24、DCDC部25、制御部26、通信部27、入力端子28、及び出力端子29を備え」ることが記載されている。 p 上記bの段落【0035】には,“スイッチ部21は,MPPT子機20の入力端子28側と出力端子29側とを電気的に接続又は遮断するものであって,スイッチ部21は,制御部26からの切り替え信号に応じて,オンオフ制御されるものであ”ることが記載されている。 q 上記bの段落【0039】には“電流電圧検出部23は,PVパネル10の出力電流及び出力電圧を検出するものであって,DCDC部25による電圧変換前の電流値及び電圧値を検出するものであ”ることが記載されている。 r 上記bの段落【0041】及び【0042】には,“DCDC部25は,DC/DCコンバータであり,電力変換用のスイッチング素子を有するスイッチ部25Sを備え,PVパネル10の出力電圧を入力し,このスイッチ部25Sを用いて,入力された電圧を変圧するものであり,スイッチ部25Sは,制御部26からのPWM(Pulse Width Modulation)信号に応じて,オンオフ制御されるものであ”ることが記載されている。また,上記g(図3)によれば,“DCDC部25のDC/DCコンバータは昇降圧型である”ことが読み取れる。 してみると,引用文献1には,“DCDC部25は,昇降圧型であるDC/DCコンバータであり,電力変換用のスイッチング素子を有するスイッチ部25Sを備え,PVパネル10の出力電圧を入力し,このスイッチ部25Sを用いて,入力された電圧を変圧するものであり,スイッチ部25Sは,制御部26からのPWM(Pulse Width Modulation)信号に応じて,オンオフ制御されるものであ”ることが記載されているといえる。 s 上記dには「MPPT子機20」の動作として,“電流電圧検出部23は,PVパネル10の出力電圧を入力側検出電圧Vinとして逐次検出し,PVパネル10の出力電流を入力側検出電流Iinとして逐次検出し,続いて,制御部26は,入力側検出電圧Vinと入力側検出電流Iinとを乗じて,入力側電力Winを算出し,続いて,制御部26は,比較値Win_compが入力側電力Win未満であるか否かを判定し,比較値Win_compが入力側電力Win未満である場合,制御部26は,入力側電力Winの値を比較値Win_compに設定し,その処理後,電流電圧検出部23は,次のサンプリング値を取得し,一方,比較値Win_compが入力側電力Winよりも大きい場合,制御部26は,MPPT制御を開始し,また,制御部26は,入力側電力Winが所定値以下である場合には,実行中のMPPT制御を停止して,DCDC部25のPWM値を固定するか,又はスイッチ部21がオンになるよう制御する”ことが記載されている。 イ 上記aないしsの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。 「PVパネル(太陽光パネル)10,MPPT子機20,MPPT親機30,接続箱40,及びパワーコンディショナ50を備える太陽光発電システム100におけるMPPT子機20において, 各PVパネル10が電力線PLを介して直列に接続された太陽電池ストリング(PVストリング)として構成され,また,各太陽電池ストリングが電力線PLを介して接続箱40において並列に接続され,太陽電池アレイ(PVアレイ)として構成されており, 接続箱40は,複数のPVパネル10が直列に接続されて構成されるPVストリング単位で配線としての電力線PLをまとめて(集線し),パワーコンディショナ50に接続されるものであり, パワーコンディショナ50は,DCDC変換では,パワーコンディショナ50に入力される太陽光発電システム100に含まれるPVパネル10の総発電量を最大とするための制御であるMPPT制御(最大電力点追従制御)を行うものであって,複数のPVパネル10を含むPVストリングの発電量が最大となるように,山登り法などによって,PVストリング上の電力が最大となるように,PVストリング上の電流,電圧を制御するものであって,PVストリング上の電圧は,複数のMPPT子機20が出力した電圧の和であり,一方,PVストリング上の電流は,PVストリングは直列接続であるため,各MPPT子機20が出力する電流であり,パワーコンディショナ50の制御により,各MPPT子機20の出力側の動作点(電圧、電流)が決定されるものであり, 各MPPT子機20は,各PVパネル10に1対1で接続されており,また,MPPT子機20は,自装置に接続されたPVパネル10に対してMPPT制御するものであり, MPPT子機20は,スイッチ部21,電源部22,電流電圧検出部23,24,DCDC部25,制御部26,通信部27,入力端子28,及び出力端子29を備えており, スイッチ部21は,MPPT子機20の入力端子28側と出力端子29側とを電気的に接続又は遮断するものであって,スイッチ部21は,制御部26からの切り替え信号に応じて,オンオフ制御されるものであり, 電流電圧検出部23は,PVパネル10の出力電流及び出力電圧を検出するものであって,DCDC部25による電圧変換前の電流値及び電圧値を検出するものであり, DCDC部25は,昇降圧型であるDC/DCコンバータであり,電力変換用のスイッチング素子を有するスイッチ部25Sを備え,PVパネル10の出力電圧を入力し,このスイッチ部25Sを用いて,入力された電圧を変圧するものであり,スイッチ部25Sは,制御部26からのPWM(Pulse Width Modulation)信号に応じて,オンオフ制御されるものであって, 電流電圧検出部23は,PVパネル10の出力電圧を入力側検出電圧Vinとして逐次検出し,PVパネル10の出力電流を入力側検出電流Iinとして逐次検出し,続いて,制御部26は,入力側検出電圧Vinと入力側検出電流Iinとを乗じて,入力側電力Winを算出し,続いて,制御部26は,比較値Win_compが入力側電力Win未満であるか否かを判定し, 比較値Win_compが入力側電力Win未満である場合,制御部26は,入力側電力Winの値を比較値Win_compに設定し,その処理後,電流電圧検出部23は,次のサンプリング値を取得し,一方,比較値Win_compが入力側電力Winよりも大きい場合,制御部26は,MPPT制御を開始し,また,制御部26は,入力側電力Winが所定値以下である場合には,実行中のMPPT制御を停止して,DCDC部25のPWM値を固定するか,又はスイッチ部21がオンになるよう制御する, MPPT子機20。」 第5 対比・判断 1 本願発明について (1)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「PV(太陽光パネル)パネル10」は,本願発明の「太陽電池」に相当する。 また,引用発明の「MPPT子機20」は,「PVパネル10に1対1で接続され」,また,「昇降圧型であるDC/DCコンバータであ」って,「入力された電圧を変圧する」「DCDC部25」を「備え」るものであって,「MPPT子機20」は,「PVパネル10」の発電電力を「DCDC部25」を用いて制御しているといえる。 してみると,引用発明の「DCDC部25」と,本願発明の「太陽電池の発電電力を入力してバッテリーに出力する昇降圧型のDC/DCコンバータ」は,後記の点で相違するものの,“太陽電池の発電電力を入力する昇降圧型のDC/DCコンバータ”の点では共通する。 そして,引用発明の「MPPT子機20」と,本願発明の「太陽電池で発電される電力を、当該太陽電池の発電電力を入力してバッテリーに出力する昇降圧型のDC/DCコンバータを用いて制御する太陽光発電制御装置」とは,“太陽電池で発電される電力を,当該太陽電池の発電電力を入力する昇降圧型のDC/DCコンバータを用いて制御する太陽光発電制御装置”の点で共通する。 イ 引用発明の「入力側電力Win」は,「PVパネル10の出力電圧」である「入力側検出電圧Vin」と「PVパネル10の出力電流」である「入力側検出電流Iin」を「乗じ」たものであるから,本願発明の「太陽電池の発電電力」に相当する。 そして,引用発明の「制御部26」は,「入力側検出電圧Vinと入力側検出電流Iinとを乗じて,入力側電力Winを算出し,続いて,制御部26は,比較値Win_compが入力側電力Win未満であるか否かを判定」するものであり,「入力側電力Win」を監視しているといえる。 したがって,引用発明の「制御部26」は,本願発明の「前記太陽電池の発電電力を監視する電力監視部」に相当する機能を備えているといえる。 ウ また,引用発明の「MPPT子機20」の「制御部26」は,「入力側電力Winが所定値以下である場合に,実行中のMPPT制御を停止」するものであって,「制御部26」は,「入力側電力Winが所定値以下である」か否か判断しているといえる。 してみると,引用発明の「所定値」は,本願発明の「所定の基準電力」に相当し,そして,引用発明の「制御部26」は,本願発明の「前記太陽電池の発電電力が所定の基準電力以上であるか否かを判断する電力判断部」に相当する機能を備えているといえる。 エ 引用発明の「MPPT制御(最大電力点追従制御)」は,本願発明の「最大電力点追従手法」に相当する。 そして,引用発明の「MPPT子機20」の「制御部26」は,「入力側電力Winが所定値以下である場合に,実行中のMPPT制御を停止して,DCDC部25のPWM値を固定する」ものであって,当然,「入力側電力Winが所定値」以上では「MPPT制御」が行われるものと認められる。また,引用文献1の上記bの段落【0044】の「DCDC部25のスイッチ部25Sの・・・(中略)・・・デューティ比(PWM値)」との記載から,「PWM値」は,「DCDC部25」の「スイッチ部25S」のデューティ比といえる。 してみると,引用発明の「制御部26」と,本願発明の「前記太陽電池の発電電力が前記基準電力以上の場合には、最大電力点追従手法によって前記発電電力を制御し、前記太陽電池の発電電力が前記基準電力未満の場合には、前記DC/DCコンバータが行うスイッチング動作のデューティ比を固定し、前記太陽電池の出力電圧を前記DC/DCコンバータに接続される前記バッテリーの蓄電電圧に基づく所定の電圧に収束させる手法によって、前記発電電力を制御する電力制御部」とは,後記の点で相違するものの,“前記太陽電池の発電電力が前記基準電力以上の場合には,最大電力点追従手法によって前記発電電力を制御し,前記太陽電池の発電電力が前記基準電力未満の場合には,前記DC/DCコンバータが行うスイッチング動作のデューティ比を固定し,前記発電電力を制御する電力制御部”の点では共通する。 オ また,引用発明の「MPPT子機20」の「制御部26」が「DCDC部25のPWM値を固定する」ことと,本願発明の「電力制御部は、前記デューティ比を昇圧及び降圧のいずれも動作しないデューティ比に固定する」ことは,後記の点で相違するものの,“電力制御部は,前記デューティ比を固定する”点では共通する。 したがって,本願発明と引用発明との間には,以下の一致点と相違点とがある。 〈一致点〉 「太陽電池で発電される電力を,当該太陽電池の発電電力を入力する昇降圧型のDC/DCコンバータを用いて制御する太陽光発電制御装置であって, 前記太陽電池の発電電力を監視する電力監視部と, 前記太陽電池の発電電力が所定の基準電力以上であるか否かを判断する電力判断部と, 前記太陽電池の発電電力が前記基準電力以上の場合には,最大電力点追従手法によって前記発電電力を制御し,前記太陽電池の発電電力が前記基準電力未満の場合には,前記DC/DCコンバータが行うスイッチング動作のデューティ比を固定し,前記発電電力を制御する電力制御部と,を備え, 前記電力制御部は,前記デューティ比を固定する, 太陽光発電制御装置。」 〈相違点1〉 「DC/DCコンバータ」の「出力」が,本願発明では,「バッテリーに出力する」ものであるのに対して,引用発明では,接続箱40を介してパワーコンディショナ50に出力されている点。 〈相違点2〉 「電力制御部」が「デューティ比を固定し」制御することが,本願発明では,「前記太陽電池の出力電圧を前記DC/DCコンバータに接続される前記バッテリーの蓄電電圧に基づく所定の電圧に収束させる手法によ」るものであって,さらに,「前記デューティ比を昇圧及び降圧のいずれも動作しないデューティ比に固定する」ものであるのに対して,引用発明では,そのような手法によるものではなく,さらに,デューティ比にそのような特定がされていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み,相違点2について先に検討する。 引用発明では「MPPT子機20」は,「DCDC部25」以外に「スイッチ部21」を備えており,「入力側電力Winが所定値以下である場合に,実行中のMPPT制御を停止し」た際には,「スイッチ部21がオンになるよう制御する」こともできるものであって,その際には,「MPPT子機20の入力端子28側と出力端子29側とを電気的に接続」することから,入力電圧と出力電圧は等しく昇圧及び降圧のいずれもされていない状態といえる。 してみると,引用発明においては,「入力側電力Winが所定値以下である場合」には,「スイッチ部21」を閉じて昇圧及び降圧のいずれもされていない状態とする制御か,あるいは,「DCDC部25」の「PWM値」を固定し昇圧及び降圧のいずれかを行う制御を行うものと認められる。 そして,昇圧及び降圧のいずれもされていない状態とするためには「スイッチ部21」を閉じれば足り,さらに,「DCDC部25」においても「PWM値」を「昇圧及び降圧のいずれも動作しないデューティ比に固定する」理由が存在しない。 また,太陽電池の発電電力が基準電力未満の場合に,DC/DCコンバータが行うスイッチング動作のデューティ比を昇圧及び降圧のいずれも動作しない値に固定することが,本願の出願前に周知の技術であったとも認められない。 したがって,本願発明の相違点2に係る構成が,引用発明に記載の技術事項に基づき当業者が容易に構成し得たものであるとはいえない。 以上のとおりであるから,他の相違点については検討するまでもなく,本願発明が引用発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 原査定について <特許法29条2項について> 審判請求時の補正により,本願発明は上記第3に示したとおりのものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用発明(上記第4の引用文献1)に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-04-15 |
出願番号 | 特願2016-230319(P2016-230319) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G05F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山崎 雄司 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
山澤 宏 小林 秀和 |
発明の名称 | 太陽光発電制御装置 |
代理人 | 特許業務法人 小笠原特許事務所 |