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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1373521
審判番号 不服2020-10347  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-25 
確定日 2021-05-11 
事件の表示 特願2016-513019「最小限のクロストークで熱的に分離されたゾーンを有する静電チャック」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月13日国際公開,WO2014/182711,平成28年 9月 1日国内公表,特表2016-526289,請求項の数(16)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年(2014年) 5月 6日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 2013年 5月 7日(以下,「本願優先日」という。)米国,2014年 5月 2日 米国)とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年11月 7日付け:拒絶理由通知
平成30年 5月 8日 :意見書,手続補正書の提出
平成30年10月26日付け:拒絶理由通知
平成31年 4月30日 :意見書,手続補正書の提出
令和 1年 9月 3日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知
令和 2年 3月 9日 :意見書,手続補正書の提出
令和 2年 3月16日付け:令和 2年 3月 9日の手続補正についての補正却下の決定,拒絶査定(原査定)
令和 2年 7月25日 :審判請求書,手続補正書の提出

第2 原査定の概要
1 原査定(令和 2年 3月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1 平成31年 4月30日付け手続補正書でした請求項1-16についての補正は,国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面の翻訳文,国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(以下,翻訳文等という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。
理由2 この出願は,特許請求の範囲の請求項1-16の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由3 この出願の請求項1-16に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された引用文献1-3に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特表2012-508991号公報
引用文献2 特表2009-536461号公報
引用文献3 特表2009-512193号公報

第3 本願発明
本願請求項1-16に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明16」という。)は,令和 2年 7月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-16に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
セラミックスパックと,
セラミックスパックの下面に接合された上部を有する熱伝導性ベースであって,
複数の熱ゾーンを含む本体部と,
上部に含まれ,熱伝導性ベースの本体部の上面に接合された熱的に管理された材料であって,半径方向に第1熱伝導率と,熱伝導性ベースの本体部の上面に垂直な垂直方向に第1熱伝導率よりも高い第2熱伝導率とを有する熱的に管理された材料と,
複数の熱ゾーンのうちの2つ以上の熱ゾーンの間で熱伝導性ベースの本体部の上面から熱伝導性ベースの下面に向かって,熱伝導性ベースの下面に接触することなく延びる複数の熱絶縁体であって,複数の熱絶縁体の各々は,熱伝導性ベースの本体部の上面で複数の熱ゾーンのうちの2つ以上の間である程度の熱的分離を提供する複数の熱絶縁体を含む熱伝導性ベースを含み,
熱伝導性ベースの本体部の上面から熱伝導性ベースの下面に向かって延びる複数の熱絶縁体のうちの少なくとも1つの熱絶縁体は,熱伝導性ベースの全厚さの約60?90%の深さを有する基板支持アセンブリ。」

なお,本願発明2-13は,概略,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明14は,本願発明1の製造方法に対応する発明,本願発明15-16は,本願発明14を限縮した発明である。

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)

「【0028】
図3は,基板支持体300の一実施形態を示す断面図である。基板326は,中央部から縁部までの温度プロファイルをより効果的に制御する能力を提供し,温度プロファイルは,≦1℃の方位角方向の温度均一性を維持しつつ,最大40℃までの中央部-縁部の温度プロファイルに対して段階的に変更可能である。基板支持体300は,ベース部材310と,ベース部材310の上に位置する熱伝導部材320と,熱伝導部材320の上に位置する静電チャック322とを備える。静電チャック322は,基板326を支持するための支持面324を備える。かかる静電チャックは,例えば,本願の権利者が所有する米国特許第5,838,529号にも記載されており,これは,参照によって全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
熱伝導部材320は,さらに,同心の複数領域328A?328Eに分割されている。各領域は,1または複数の流路330A?330Eを含んでおり,熱伝導部材320の各領域328A?328Eを個別に加熱および冷却するために,流路を通して液体を循環させることができる。基板支持体300の加熱は,流路330A?330Eを通して液体を循環させることによって達成されるため,加熱素子(例えば,抵抗ヒータまたは加熱テープ)を熱伝導部材320に埋め込む必要がない。液体は,水(例えば,脱イオン水),エチレングリコール,シリコン油,水/エチレングリコール混合物,FLUOROINERT(登録商標)冷却剤(すなわち,Minnesota Mining and Manufacturing(3M)社から入手可能なペルフルオロカーボン冷却流体),GALDEN(登録商標)流体(すなわち,Solvay Solexis社から入手可能な低分子量ペルフルオロポリエーテル熱伝導流体)などであってよい。図3には,5つの領域を示しているが,領域の数は,所望の温度制御の程度に応じた2以上の数であってよいことを理解されたい。
【0030】
図3の実施形態では,熱伝導部材320は,熱伝導材料(アルミニウムまたは窒化アルミニウム)で構成されてよい。半径方向の熱伝導(すなわち,個々の領域の間の熱伝導)の制御を改善すると共に,基板にわたって所望の温度プロファイルを実現するために,熱バリア332が,各領域328A?328Eを隔てている。熱バリア332は,(図3に示すように)熱伝導部材320の厚さ全体を通して伸びていてもよいし,図4に示すように,熱伝導部材320の厚さの一部を通して伸びていてもよい。熱バリア332は,何も満たされなくてもよいし(すなわち,空隙),約0.1W/m-Kから約4.0W/m-Kまでの熱伝導率を実現するために充填材を含んでもよい。充填材の例としては,エポキシまたはシリコーンが挙げられる。充填材の熱伝導率は,窒化ホウ素,窒化アルミニウム,酸化アルミニウム,酸化シリコン,および,シリコンなど,添加剤を用いて調整されてよい。
【0031】
別の実施形態では,図5に示すように,半径方向の熱伝導は,熱伝導部材320を断熱材料で構成することによって制御される。断熱材料の例としては,酸化アルミニウムまたは酸化イットリウムなどのセラミック,もしくは,ステンレス鋼など,熱伝導率の低い金属合金が挙げられる。
【0032】
図3に示すように,結合材334が,熱伝導部材320とベース部材310との間に挿入されてよい。結合材334は,エポキシまたはシリコーンで構成されてよく,拡大領域Aに示すように,1または複数の充填材334Aで満たされてよい。充填材334Aの例としては,酸化アルミニウム,窒化ホウ素,酸化シリコン,アルミニウム,または,シリコンが挙げられる。別の実施形態では,拡大領域Bに示すように,結合材は,金属ろう材334Bであってもよい。結合材334は,約0.1W/m-Kから約4W/m-Kまでの熱伝導率を提供するよう選択され,約1ミルから約200ミルまでの厚さを有してよい。
【0033】
図6は,図3の線C-C’に沿って切り取った円板状の熱伝導部材320を示す断平面図である。図6からわかるように,領域328A?328Eは,円板の中心に対して異なる距離に同心円状に配置されており,流路330A?330Eは,らせん状のパターンを有する。熱バリア332は,各領域を隔てる環状のチャネルである。」

「【図3】



「【図4】



「【図6】



(2)上記(1)から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 基板支持体300は,ベース部材310と,ベース部材310の上に位置する熱伝導部材320と,熱伝導部材320の上に位置する静電チャック322とを備え,
静電チャック322は,基板326を支持するための支持面324を備え,
熱伝導部材320は,さらに,同心の複数領域328A?328Eに分割されており,
各領域は,1または複数の流路330A?330Eを含んでおり,熱伝導部材320の各領域328A?328Eを個別に加熱および冷却するために,流路を通して液体を循環させることができ,
半径方向の熱伝導の制御を改善すると共に,基板にわたって所望の温度プロファイルを実現するために,熱バリア332が,各領域328A?328Eを隔てており,
熱バリア332は,熱伝導部材320の厚さ全体を通して伸びていてもよいし,熱伝導部材320の厚さの一部を通して伸びていてもよいこと。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶理由に引用された引用文献2には,以下の点が記載されている。

「【0055】
[0080]ベース164又はチャック166の少なくとも1つは,支持アセンブリ148の横方向温度プロフィールを制御するために,少なくとも1つの任意の埋設ヒータ176,少なくとも1つの任意の埋設アイソレータ174,及び複数のコンジットを含んでもよい。図1に示す実施形態では,1つの環状アイソレータ174及び2つのコンジット168,170がベース164に配置され,一方,抵抗性ヒータ176がチャック166に配置される。これらコンジットは,温度調整流体を循環させる流体源172へ流体結合される。ヒータ176は,電源178により調整される。コンジット168,170及びヒータ176は,ベース164の温度を制御するのに使用され,これにより,静電チャック166を加熱及び/又は冷却して,静電チャック166に配置された基板144の温度を少なくとも部分的に制御する。
【0056】
[0081]ベース164に形成された2つの個別の冷却通路168,170は,少なくとも2つの独立制御可能な温度ゾーンを画成する。付加的な冷却通路,及び/又はそれら通路のレイアウトは,付加的な温度制御ゾーンを画成するよう配列されてもよいことが意図される。一実施形態において,第1の冷却通路168が,第2の冷却通路170の半径方向内方に配列され,温度制御ゾーンが同心的になるようにする。通路168,170は,半径方向に配向されてもよいし,又は他の幾何学的構成を有してもよいことが意図される。冷却通路168,170は,温度制御される熱伝達流体の単一供給源172に結合されてもよいし,又は個別の熱伝達流体源に各々結合されてもよい。
【0057】
[0082]アイソレータ174は,ベース164の隣接領域の材料とは異なる熱伝導率係数を有する材料で形成される。一実施形態において,アイソレータ174は,ベース164より小さな熱伝導率係数を有する。更に別の実施形態では,アイソレータ174は,非等方性(即ち方向依存性)の熱伝導率係数を有する材料から形成されてもよい。アイソレータ174は,支持アセンブリ148との間でベース164を経てコンジット168,170へ至る熱伝達の率を,熱伝達経路にアイソレータをもたないベース164の隣接部分を通る熱伝達の率に対して局所的に変更するように機能する。アイソレータ174は,基板支持アセンブリ148を通して画成された温度制御ゾーン間に改善された熱的分離を与えるように,第1と第2の冷却通路168,170間に横方向に配置される。
【0058】
[0083]図1に示す実施形態では,アイソレータ174は,コンジット168,170間に配置され,これにより,横方向の熱伝達を妨げると共に,基板支持アセンブリ148にわたる横方向の温度制御ゾーンを促進する。従って,インサートの数,形状,サイズ,位置及び熱伝達係数を制御することで,静電チャック166及びそこにのせられる基板144の温度プロフィールを制御することができる。アイソレータ174は,図1では,環状リングの形状で示されているが,アイソレータ174の形状は,多数の形態をとり得る。」

「【図1】



(2)以上から,引用文献2には,以下の事項が記載されていると認められる。
「 ベース164又はチャック166の少なくとも1つは,支持アセンブリ148の横方向温度プロフィールを制御するために,少なくとも1つの任意の埋設アイソレータ174を含んでもよく,
アイソレータ174は,ベース164の隣接領域の材料とは異なる熱伝導率係数を有する材料で形成され,非等方性(即ち方向依存性)の熱伝導率係数を有する材料から形成されてもよく,
アイソレータ174は,コンジット168,170間に配置され,これにより,横方向の熱伝達を妨げると共に,基板支持アセンブリ148にわたる横方向の温度制御ゾーンを促進すること。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明の「基板支持体300」が,本願発明1の「熱伝導性ベース」,「基板支持アセンブリ」に対応する。
また,引用発明の「静電チャック322」は,その下面に「熱伝導性部材320」の上部が接合されていることは明らかであるから,何らかの「パック」である点で一致する。
そして,引用発明の「基板支持体300」が,本願発明1の「基板支持アセンブリ」に対応する。

イ 引用発明の「熱伝導性部材320」は,「同心の複数領域328A?328Eに分割されており」,「各領域は,1または複数の流路330A?330Eを含んでおり,熱伝導部材320の各領域328A?328Eを個別に加熱および冷却する」ことができるから,本願発明1の「複数の熱ゾーンを含む本体部」であるといえる。

ウ 引用発明の「熱バリア332」は,「半径方向の熱伝導の制御を改善すると共に,基板にわたって所望の温度プロファイルを実現するために」「各領域328A?328Eを隔てて」いるから,本願発明1の「複数の熱ゾーンのうちの2つ以上の熱ゾーンの間で」「延びる複数の熱絶縁体」であり,かつ,「複数の熱絶縁体の各々は,熱伝導性ベースの本体部の上面で複数の熱ゾーンのうちの2つ以上の間である程度の熱的分離を提供する複数の熱絶縁体」であるといえる。

(2)一致点・相違点
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点と,相違点があるといえる。
<一致点>
「 パックと,
パックの下面に接合された上部を有する熱伝導性ベースであって,
複数の熱ゾーンを含む本体部と,
複数の熱ゾーンのうちの2つ以上の熱ゾーンの間で延びる複数の熱絶縁体であって,複数の熱絶縁体の各々は,熱伝導性ベースの本体部の上面で複数の熱ゾーンのうちの2つ以上の間である程度の熱的分離を提供する複数の熱絶縁体を含む熱伝導性ベースを含む
基板支持アセンブリ。」

<相違点>
(相違点1)
「パック」に関して,本願発明1は,「セラミックスパック」と特定されているのに対して,引用発明はこの点について特定されていない点。

(相違点2)
「熱伝導性ベース」に関して,本願発明1は,「上部に含まれ,熱伝導性ベースの本体部の上面に接合された熱的に管理された材料であって,半径方向に第1熱伝導率と,熱伝導性ベースの本体部の上面に垂直な垂直方向に第1熱伝導率よりも高い第2熱伝導率とを有する熱的に管理された材料」を含むのに対して,引用発明はこの点について特定されていない点。

(相違点3)
「熱絶縁体」に関して,本願発明1は,「熱伝導性ベースの本体部の上面から熱伝導性ベースの下面に向かって,熱伝導性ベースの下面に接触することなく延び」,「熱伝導性ベースの本体部の上面から熱伝導性ベースの下面に向かって延びる複数の熱絶縁体のうちの少なくとも1つの熱絶縁体は,熱伝導性ベースの全厚さの約60?90%の深さを有する」と特定されているのに対し,引用発明は,「熱伝導部材320の厚さ全体を通して伸びていてもよいし,熱伝導部材320の厚さの一部を通して伸びていてもよい」と特定されている点。

(3)相違点についての判断
ア 相違点2について
事案に鑑みて上記相違点2について先に検討する。
引用文献2には,「ベース164」に,「非等方性(即ち方向依存性)の熱伝導率係数を有する材料から形成され」る「アイソレータ174」を含む点が記載されている。
しかしながら,「アイソレータ174」は,「ベース164」の「上部に接合された」ものではなく,また,その熱伝導係数が「半径方向に第1熱伝導率と,熱伝導性ベースの本体部の上面に垂直な垂直方向に第1熱伝導率よりも高い第2熱伝導率とを有する」と特定されてもいない。

そして,相違点2についての構成は,引用文献3にも記載されておらず,また,周知技術であるともいえない。
すると,引用発明において,相違点2に係る本願発明1の構成を想到することが,当業者であれば容易になし得たものであるとはいえない。

イ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用文献1及び引用文献2-3に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-16について
本願発明2-13は,本願発明1の全ての構成要素を備える従属請求項であり,本願発明14は,本願発明1に対応した製造方法に係る発明,本願発明15-16は,本願発明14の全ての構成要素を備える従属請求項であり,上記相違点2に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用文献1及び引用文献2-3に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1 理由1について
翻訳文等の段落0026には,「一実施形態では,熱伝導性ベース164は,(例えば,熱伝導性ベースが接着剤212及び/又は静電パック166と界面結合する)上面近傍又は上面に,カプセル化された材料を含む。カプセル化された材料は,異方性熱伝導率を有する可能性がある。材料は,熱伝導性のベース内に埋設された熱的に管理された材料とすることができ,熱的に管理された材料は,第1方向及び第2方向に沿って異なる熱伝導特性を有する。熱的に管理された材料を接合するために,様々な接合技術(例えば,拡散接合,フラッシュ接合,ラミネート加工,はんだ付け,及びろう付け)を使用することができる。」と,すなわち,「熱伝導性ベース164」の上面近傍又は上面に,異方性熱伝導率を有する「カプセル化された材料」を含む点,「カプセル化された材料」を「熱的に管理された材料」とすることができる点,「熱的に管理された材料」を接合する点が記載されている。
また,翻訳文等の段落0027には,「カプセル化させる又は埋設される材料は,材料が,熱伝導性ベースの周囲に沿って良好な熱伝導率(例えば,約1500ワット/m・K)を有するように,及び垂直方向(熱伝導性ベースの表面に垂直)に良好な熱伝導率を有し,しかしながら静電チャックの半径方向には低い熱伝導率(例えば,約20ワット/m・K未満)を有するように配向させることができる。このような埋設された材料は,熱ゾーン間の半径方向のクロストークを低減させることができる。」と,すなわち,「カプセル化された材料」は,「垂直方向に良好な熱伝導率を有し,しかしながら静電チャックの半径方向には低い熱伝導率を有するように配向させることができる」点が記載されている。
すると,本願発明1の「上部に含まれ,熱伝導性ベースの本体部の上面に接合された熱的に管理された材料であって,半径方向に第1熱伝導率と,熱伝導性ベースの本体部の上面に垂直な垂直方向に第1熱伝導率よりも高い第2熱伝導率とを有する熱的に管理された材料」は,翻訳文等に記載した事項の範囲内であると認められる。
したがって,原査定の理由1を維持することはできない。

2 理由2について
平成31年 4月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1の「第1方向及び第2方向に沿って異なる熱伝導特性を有する」という記載は,令和 2年 7月25日付けの手続補正で,「半径方向に第1熱伝導率と,熱伝導性ベースの本体部の上面に垂直な垂直方向に第1熱伝導率よりも高い第2熱伝導率とを有する」と補正され,明確になった。
た。
したがって,原査定の理由2を維持することはできない。

3 理由3について
本願発明1-16は,上記「第5 対比・判断」における相違点2に係る構成を有するものとなった。
そして,当該相違点2に係る構成は,原査定における引用文献1-3には記載されていない。
よって,上記「第5 対比・判断」で検討したように,本願発明1-16は,当業者であっても,原査定における引用文献1-3に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由3を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-04-21 
出願番号 特願2016-513019(P2016-513019)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 561- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高橋 宣博綿引 隆宮久保 博幸  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 井上 和俊
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 最小限のクロストークで熱的に分離されたゾーンを有する静電チャック  
代理人 安齋 嘉章  

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