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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1373618
審判番号 不服2020-9915  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-15 
確定日 2021-04-26 
事件の表示 特願2017- 71145「超音波内視鏡」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 8日出願公開、特開2018-171258〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成29年3月31日の出願であって、令和2年1月20日付けで拒絶理由が通知され、同年3月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年4月28日付けで拒絶査定されたところ、同年7月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?13に係る発明は、令和2年3月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
超音波振動子を有する超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサの基端側に連設された先端部本体と、
前記先端部本体に設けられた処置具導出部であって、処置具が導出される処置具導出口を有する処置具導出部と、
前記先端部本体の前記処置具導出部に隣接する位置に設けられ、前記先端部本体の軸線方向の先端側に向かう法線成分を有する観察手段形成面と、
前記観察手段形成面に配設され被検体を観察する観察窓と、
前記観察窓の周囲に前記観察手段形成面から突出し、かつ、一体的に形成され、前記観察窓への前記被検体の密着を防止する密着防止用突出部と、
を備える超音波内視鏡。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?13に係る発明は、本願出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、3及び4に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2005-323886号公報
引用文献3:特開平06-105847号公報
引用文献4:特開2007-215634号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている。

(引1a)「【0009】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる超音波内視鏡の構成を示す構成図である。図2は、本実施の形態に係わる内視鏡挿入部用の先端カバーを示す斜視図である。図3は、図2の先端カバーを内視鏡挿入部の先端に取り付ける様子を説明するための図である。図4は、先端カバーが超音波プローブに取り付けられて、処置具が突出した状態を示す斜視図である。
【0010】
図1に示すように、超音波内視鏡1は、細長の挿入部2の基端に操作部3を備えて構成され、この操作部3の側部からは図示しない光源装置に接続されるユニバーサルコード4が延出している。また、この操作部3の側部からは図示しない超音波観測装置に接続される超音波コード5が延出している。超音波観測装置内には、後述する内視鏡先端部である先端部本体6に配置されている超音波プローブの超音波振動子の駆動制御を行う制御装置が設けられている。本実施の形態の超音波内視鏡1は、超音波走査面が挿入部2のほぼ測方を走査する構成となっている。
【0011】
挿入部2は、先端側から順に先端部本体6と、湾曲部7と、可撓管部8とを連設して構成されている。この可撓管部8は可撓性を有し、湾曲部7の基端から操作部3の先端までを構成している。また、湾曲部7は、前記操作部3に設けられている湾曲ノブ9を操作することによって、所望の方向に湾曲するようになっている。
【0012】
操作部3の先端側には処置具挿入口10が形成されている。この処置具挿入口10から例えば穿刺針等の処置具を挿入することにより、この処置具挿入口10の内部で連通する処置具チャンネルを経て先端部本体6の処置具突出口から、挿入部2の挿入軸の先端方向に向かって斜め前方向に、処置具が突出されるようになっている。操作部3には、吸引操作を行うための吸引ボタン11が設けられている。処置具挿入口10には、吸引手段としての吸引装置12と、接続された吸引チューブ13とが接続可能となっている。先端カバー21が、挿入部2の先端部に着脱自在に取り付けられている。なお、先端カバー21は、挿入部2の先端部に固定されていてもよい。
【0013】
図2に示すように、本実施の形態に関わる先端カバー21は、超音波プローブである先端部本体6に装着するための開口部である装着口21aと、さらに処置対象の部位に触れる処置部位側開口部(以下、単に開口部という)22を有するキャップ形状をしている。開口部22は、先端カバー21を先端部本体6にはめ込むようにして装着したときに、図3に示すように、先端部本体6に設けられた超音波振動子の走査面23及び、処置具開口部である処置具突出口24を含む処置具突出面25を覆わない形状に形成されている。言い換えると、開口部22は、超音波振動子の超音波放射方向と処置具の突出方向に設けられている。処置具突出面25には、照明光学系の窓26と、観察光学系の窓27も、斜め前方に向けて設けられている。これは、走査面23から超音波信号が放射し、反射波が受信されるようにするためであり、処置具、例えば穿刺針28が処置対象の部位の方向に突出でき、さらに照明光学系によって照明された処置対象の部位を撮像光学系によって撮像できるようにするためである。そして、図4に示すように、先端カバー21が挿入部2に装着されたときに、先端カバー21において開口部22と処置具突出口24は連通した状態で、先端カバー21は挿入部2に取り付けられる。
【0014】
図4に示すように、処置具突出口24は、先端部本体6の基端側に斜め前方に傾いて超音波振動子の超音波走査範囲内に後述する処置具を突出させるように形成されている。従って、処置具突出口24の開口から突出された処置具は、超音波振動子による扇状の超音波走査範囲内を通過するようになっている。」

(引1b)「【0020】

この固定された状態において、術者は、図4及び図7に示すように、処置具突出口24から穿刺針28の先端側を外部に突出させる。すると、穿刺針28は、胃壁31から目的部位である病変部32に刺入される。そして、穿刺針28に対して基端側から吸引を行うことで目的部位の生体組織である細胞の採取を行うことができる。吸引動作を解除すれば、開口部22と胃壁33の吸着による固定状態は解除される。」

(引1c)「【0025】
さらに、上述した例では、先端カバーは着脱自在であるが、先端部本体と一体に形成してもよい。その場合は、先端部本体と同じ材質、例えば、エンジニアリングプラスティック、ステンレス等で形成される。」

(引1d)「【0026】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構成
要素については同じ符号を付して、説明は省略する。
図10は、本実施の形態に係る先端カバーを超音波プローブに取り付け状態を示す斜視図である。
【0027】
図10に示すように、本実施の形態に関わる超音波内視鏡の先端部本体60の先端面には、挿入部2の挿入軸の先端側に突出した曲面形状の走査部61と、処置具突出口62を含む処置具突出面63を有する。さらに、処置具突出面63には、照明光学系の窓64と、観察光学系の窓65も、挿入部2の挿入軸方向の前方に向けて設けられている。
【0028】
先端部本体60の先端側には、先端カバー66がはめ込むように装着されている。先端カバー66が、挿入部2の先端部に着脱自在に取り付けられている。なお、先端カバー66は、挿入部2の先端部に固定されていてもよい。先端カバー66の形状は、筒の一端を所定の角度を付けて切り落とした筒状である。所定の角度を付けて切り落とした部分は、先端カバー66の先端部側である。従って、先端カバー66の先端側の開口部67の開口面は、ほぼ楕円形状である。さらに、先端カバー55の内側に走査部61と処置具突出口62が設けられているが、開口部67の開口面は、走査部61の超音波振動子の超音波放射方向と、照明光学系の窓64及び観察光学系の窓65のそれぞれの光軸方向と、処置具である穿刺針28の突出方向に設けられている。これは、走査部62の走査面から超音波が放射し、その反射波が受信されるようにするためであり、処置具、例えば穿刺針28が処置対象の部位の方向に突出でき、さらに照明光学系によって照明された処置対象の部位を撮像光学系によって撮像できるようにするためである。」

(引1e)「【0030】
図11は、本実施の形態に係わる超音波内視鏡1に先端カバー66を取り付けて、処置を行う様子を説明するための図である。図11は、対象部位である胃壁31を先端カバーに吸着させて、穿刺針28を病変部32に刺入した状態を示す。」

(引1f)「【0033】
さらに、上述した例では、先端カバーは着脱自在であるが、先端部本体と一体に形成してもよい。その場合は、先端部本体と同じ材質、例えば、エンジニアリングプラスティック、ステンレス等で形成される。」

(引1g)「【図3】



(引1h)「【図4】



(引1i)「【図7】



(引1j)「【図10】



(引1k)「【図11】



2 引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1の第1の実施形態として記載された発明について
ア 上記(引1h)より、引用文献1の「先端カバー21」の一部は、「観察光学系の窓27」の周囲に「処置具突出面25」から突出した突出部となっている点が見て取れる。そうすると、「先端カバー21」が固定された「超音波内視鏡1」は、「観察光学系の窓27」の周囲に「処置具突出面25」から突出した突出部を備えているといえる。

イ 上記(引1g)より、引用文献1の「走査面23」は、「先端部本体6」の先端部に形成されている点が見て取れる。

ウ ア及びイを踏まえると、上記(引1a)より、引用文献1には第1の実施形態として、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「細長の挿入部2の基端に操作部3を備えた超音波内視鏡1において、
挿入部2は、先端側から順に先端部本体6と、湾曲部7と、可撓管部8とを連設して構成され、
先端カバー21は、挿入部2の先端部に固定され、
先端部本体6には、超音波振動子の走査面23及び、処置具開口部である処置具突出口24を含む処置具突出面25が設けられ、
処置具突出面25には、観察光学系の窓27が、斜め前方に向けて設けられ、
先端カバー21において開口部22と処置具突出口24は連通した状態で、先端カバー21は挿入部2に取り付けられ、
処置具突出口24は、先端部本体6の基端側に斜め前方に傾いて超音波振動子の超音波走査範囲内に処置具を突出させるように形成され、
観察光学系の窓27の周囲に処置具突出面25から突出した突出部を備え、
走査面23が、先端部本体6の先端部に形成された
超音波内視鏡1。」

(2)引用文献1の第2の実施形態として記載された発明について
ア 上記(引1d)の「挿入部2」は、上記(引1a)の「挿入部2」と同じものを指しているから、(引1d)の「挿入部2」は、「超音波内視鏡1」に備えられたものであるといえる。

イ 上記(引1j)(引1k)より、引用文献1の「先端カバー66」の「開口部67の開口面」を形成している部分は、「観察光学系の窓65」の周囲に「処置具突出面63」から突出した突出部となっている点及び「処置具突出面63」は「挿入部2の挿入軸方向の前方に向けて」法線成分を有する点が見て取れる。そうすると、「先端カバー66」が固定された「超音波内視鏡」は、「観察光学系の窓65」の周囲に「処置具突出面63」から突出した突出部を備えており、「処置具突出面63」は「挿入部2の挿入軸方向の前方に向けて」法線成分を有する面であるといえる。

ウ 上記ア及びイを踏まえると、上記(引1d)より、引用文献1には第2の実施形態として、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

「挿入部2を備えた超音波内視鏡1において、
先端部本体60の先端面には、挿入部2の挿入軸の先端側に突出した曲面形状の走査部61と、処置具突出口62を含む処置具突出面63を有し、
処置具突出面63には、観察光学系の窓65も、挿入部2の挿入軸方向の前方に向けて法線成分を有するように設け、
先端部本体60の先端側には、先端カバー66が挿入部2の先端部に固定され、
先端カバー55の内側に走査部61と処置具突出口62が設けられ、
観察光学系の窓65の周囲に処置具突出面63から突出した突出部を備え、
走査部61は、先端部本体60の先端部に形成された
超音波内視鏡1。」

第5 対比・判断
1 引用発明1との対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明1と対比する。

ア 引用発明1の「超音波内視鏡1」及び「先端部本体6」は、それぞれ、本願発明の「超音波内視鏡」及びに相当する。

イ 引用発明1の「超音波振動子の走査面23」は、通常、内部に「超音波振動子」を有する超音波トランスデューサを有しており、「走査面23が、先端部本体6の先端部に形成され」ていることから、「先端部本体6」は、「走査面23」の内部にある「超音波振動子」を有する超音波トランスデューサの基端部に連接されていることは明らかである。
そうすると、引用発明1の「先端部」に「超音波振動子の走査面23」を有する「先端部本体6」は、本願発明の「超音波振動子を有する超音波トランスデューサと、前記超音波トランスデューサの基端側に連設された先端部本体」に相当する。

ウ 引用発明1の「処置具突出口24」は、本願発明の「処置具導出口」に相当する。そして、引用発明1の「処置具突出口24」は、「先端部本体6」に設けられた、「処置具開口部であ」って、「処置具を突出させるように形成され」たものであるから、引用発明1は、「処置具を突出させる」「処置具突出口24」を有する、「先端部本体6」に設けられた処置具導出部を有しているといえる。
そうすると、引用発明1の、「処置具を突出させる」「処置具突出口24」を有する処置具導出部は、本願発明の「前記先端部本体に設けられた処置具導出部であって、処置具が導出される処置具導出口を有する処置具導出部」に相当する。

エ 引用発明1の「処置具突出面25には、観察光学系の窓27が、斜め前方に向けて設けられ」ているから、「観察光学系の窓27が」「設けられ」た「処置具突出面25」も斜め前方に向けて設けられているといえる。そうすると引用発明1の「先端部本体6に」斜め前方に向けて「設けられ」た、「処置具開口部である処置具突出口24を含む」「観察光学系の窓27」が「設けられ」た「処置具突出面25」は、本願発明の「前記先端部本体の前記処置具導出部に隣接する位置に設けられ、前記先端部本体の軸線方向の先端側に向かう法線成分を有する観察手段形成面」に相当し、引用発明1の「処置具突出面25」に設けられた「観察光学系の窓27」は、本願発明の「前記観察手段形成面に配設され被検体を観察する観察窓」に相当する。

オ 引用発明1の「観察光学系の窓27の周囲に処置具突出面25から突出した突出部」と、本願発明の「前記観察窓の周囲に前記観察手段形成面から突出し、かつ、一体的に形成され、前記観察窓への前記被検体の密着を防止する密着防止用突出部」とは、「前記観察窓の周囲に前記観察手段形成面から突出した突出部」である点で共通する。

カ 以上ア?オより、本願発明と引用発明1との間には、以下の一致点及び相違点が有る。

(一致点)「超音波振動子を有する超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサの基端側に連設された先端部本体と、
前記先端部本体に設けられた処置具導出部であって、処置具が導出される処置具導出口を有する処置具導出部と、
前記先端部本体の前記処置具導出部に隣接する位置に設けられ、前記先端部本体の軸線方向の先端側に向かう法線成分を有する観察手段形成面と、
前記観察手段形成面に配設され被検体を観察する観察窓と、
前記観察窓の周囲に前記観察手段形成面から突出した突出部と、
を備える超音波内視鏡。」

(相違点1)突出部が、本願発明は、「一体的に形成され」たものであるのに対し、引用発明1は、単に「固定された」ものであって一体的に形成されたとの特定はない点。

(相違点2)突出部が、本願発明は、「前記観察窓への前記被検体の密着を防止する密着防止用突出部」であるのに対し、引用発明1は、そのような特定がない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。

ア 相違点1について
引用文献1には、「先端カバーは着脱自在であるが、先端部本体と一体に形成してもよい。」と「先端カバー21」を「先端部本体6」と一体に形成することができる旨記載されていることから(上記(引1b)参照)、上記相違点1に係る構成は、引用発明1及び引用文献1に記載された技術事項から、当業者が容易に想到できたことであるといえる。

イ 相違点2について
本願の明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に、発明が解決しようとする課題として
「【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、超音波トランスデューサに体壁を密着させた際に、観察窓と体壁が密着することを防止し、観察窓を用いた光学画像による観察を確実に行うことができる超音波内視鏡を提供することを目的とする。」
旨記載されているとおり、本願発明は「観察窓を用いた光学画像による観察を確実に行う」ために「観察窓と体壁が密着することを防止し」なければならないという課題を解決するためのものである。そして、該課題は、引用発明1の「超音波内視鏡1」においても、通常、有しているものである。
また、引用発明1の「先端カバー21」の「開口部22と処置具突出口24は連通した状態で」あって、「観察光学系の窓27」は、「処置具突出口24を含む処置具突出面25」に形成されており、上記(引1g)より、被検体である「胃壁31」を吸着した状態においても「胃壁31」が「処置具突出面25」に密着していない点が見て取れることから、引用発明1の「観察光学系の窓27の周囲に処置具突出面25から突出した突出部」が、「観察光学系の窓27」への「胃壁31」の密着を防止する役割を果たしているといえるから、引用発明1の「観察光学系の窓27の周囲に処置具突出面25から突出した突出部」は、「前記観察窓への前記被検体の密着を防止する密着防止用」であるといえる。
また、引用文献1の第2の実施形態において、(引1j)(図10)及び(引1k)(図11)より「先端カバー66」の「開口部67」により形成される突出部により、「胃壁31」が「観察光学系の窓65」への密着を防止している点が見て取れることからも、引用発明1の「観察光学系の窓27の周囲に処置具突出面25から突出した突出部」は、「前記観察窓への前記被検体の密着を防止する密着防止用突出部」であることを裏付けているといえる。
そうすると、上記相違点2は、実質的な相違点であるとはいえない。

ウ 小括
上記ア及びイより、本願発明は、引用発明1及び引用文献1に記載された技術事項から、当業者が容易に想到できたものであるといえる。

2 引用発明2との対比・判断
上記1で検討したとおり、本願発明は引用発明1及び引用文献1に記載された技術事項から、当業者が容易に想到できたものであるといえるが、念のため、引用発明2との対比・判断についても検討する。
(1)対比
本願発明と引用発明2と対比する。

ア 引用発明2の「超音波内視鏡1」及び「先端部本体60」は、それぞれ、本願発明の「超音波内視鏡」及びに相当する。

イ 引用発明2の「曲面形状の走査部61」は、通常、内部に「超音波振動子」を有する超音波トランスデューサを有しており、「走査部61」は、「先端部本体60の先端面に」有ることから、「先端部本体60」は、「曲面形状の走査部61」の内部にある「超音波振動子」を有する超音波トランスデューサの基端部に連接されていることは明らかである。
そうすると、引用発明2の「先端面」に「曲面形状の走査部61」を有する「先端部本体60」は、本願発明の「超音波振動子を有する超音波トランスデューサと、前記超音波トランスデューサの基端側に連設された先端部本体」に相当する。

ウ 引用発明2の「処置具突出口62」は、本願発明の「処置具導出口」に相当する。そして、引用発明2の「処置具突出口62」は、「先端部本体60」に有る「処置具突出面63」に含まれるものであって、処置具を突出させるように形成されたものであるから、引用発明2は、処置具を突出させる「処置具突出口62」を有する、「先端部本体60」に設けられた処置具導出部を有しているといえる。
そうすると、引用発明2の、処置具を突出させる「処置具突出口62」を有する処置具導出部は、本願発明の「前記先端部本体に設けられた処置具導出部であって、処置具が導出される処置具導出口を有する処置具導出部」に相当する。

エ 引用発明2の「処置具突出面63には、観察光学系の窓65が、挿入部2の挿入軸方向の前方に向けて法線成分を有するように設け」られているから、引用発明2の「処置具突出口62を含み」「先端部本体60に」「挿入部2の挿入軸方向の前方に向けて法線成分を有するように設け」た、「観察光学系の窓65」が「設け」られた「処置具突出面63」は、本願発明の「前記先端部本体の前記処置具導出部に隣接する位置に設けられ、前記先端部本体の軸線方向の先端側に向かう法線成分を有する観察手段形成面」に相当し、引用発明2の「処置具突出面63」に設けられた「観察光学系の窓65」は、本願発明の「前記観察手段形成面に配設され被検体を観察する観察窓」に相当する。

オ 引用発明2の「観察光学系の窓65の周囲に処置具突出面63から突出した突出部」と、本願発明の「前記観察窓の周囲に前記観察手段形成面から突出し、かつ、一体的に形成され、前記観察窓への前記被検体の密着を防止する密着防止用突出部」とは、「前記観察窓の周囲に前記観察手段形成面から突出した突出部」である点で共通する。

カ 以上ア?オより、本願発明と引用発明2との間には、以下の一致点及び相違点が有る。

(一致点)「超音波振動子を有する超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサの基端側に連設された先端部本体と、
前記先端部本体に設けられた処置具導出部であって、処置具が導出される処置具導出口を有する処置具導出部と、
前記先端部本体の前記処置具導出部に隣接する位置に設けられ、前記先端部本体の軸線方向の先端側に向かう法線成分を有する観察手段形成面と、
前記観察手段形成面に配設され被検体を観察する観察窓と、
前記観察窓の周囲に前記観察手段形成面から突出した突出部と、
を備える超音波内視鏡。」

(相違点3)突出部が、本願発明は、「一体的に形成され」たものであるのに対し、引用発明2は、単に「固定された」ものであって一体的に形成されたとの特定はない点。

(相違点4)突出部が、本願発明は、「前記観察窓への前記被検体の密着を防止する密着防止用突出部」であるのに対し、引用発明2は、そのような特定がない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。

ア 相違点3について
上記1(2)アで検討したとおり、引用文献1には、「先端カバーは着脱自在であるが、先端部本体と一体に形成してもよい。」と「先端カバー21」を「先端部本体6」と一体に形成することができる旨記載されていることから(上記(引1b)参照)、上記相違点3に係る構成は、引用発明2及び引用文献1に記載された技術事項から、当業者が容易に想到できたことであるといえる。

イ 相違点4について
上記1(2)イで検討したとおり、本願発明は「観察窓を用いた光学画像による観察を確実に行う」ために「観察窓と体壁が密着することを防止し」なければならないという課題を解決するためのものであって、該課題は、引用発明1の「超音波内視鏡1」においても、通常、有しているものである。そして、(引1j)(図10)及び(引1k)(図11)より「先端カバー66」の「開口部67」により形成される突出部により、「胃壁31」が「観察光学系の窓65」への密着を防止する点が見て取れることから、引用発明2の「観察光学系の窓65の周囲に処置具突出面63から突出した突出部」は、「前記観察窓への前記被検体の密着を防止する密着防止用突出部」であるといえる。
そうすると、上記相違点4は、実質的な相違点であるとはいえない。

ウ 小括
上記ア及びイより、本願発明は、引用発明2及び引用文献1に記載された技術事項から、当業者が容易に想到できたものであるといえる。

第6 請求人の主張について
請求人は、本願発明に対し審判請求書において、以下の通り主張している。

「(ア)本願発明1は、引用文献1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)に対して少なくとも以下の点で相違している。
[相違点]
本願発明1は、「前記観察窓の周囲に前記観察手段形成面から突出し、かつ、一体的に形成され、前記観察窓への前記被検体の密着を防止する密着防止用突出部」を有しているのに対して、引用発明は、そのような構成を有さない点。

(イ)かかる相違点に関して、拒絶査定において審査官は、「また、引用文献1の図4?図7からは、(1d)先端部本体6の窓27(本願発明の「観察窓」に相当)の周囲において、先端カバー21は、処置具突出面22(本願発明の「検察手段形成面」に相当。)から庇状に突出していることがみてとれる。」と述べた上で、さらに、「次に、引用文献1に接した当業者にとって、図4?図7に示したように上記先端カバー21が処置具突出面から突出していることにより、窓27が被検体に密着することを防止する機能を、一定程度有することは明らかである。」と述べている。

(ウ)しかしながら、引用文献1においては、先端カバー21の開口部22が、処置対象の表面に密着し易い周縁部形状を有していることが記載されているだけであり、拒絶査定における審査官の判断は推測に基づくものにすぎないものである。すなわち、引用文献1には、先端カバー21を、先端部本体21の窓27(観察窓)が被検体に密着しないような構成とすることについての記載はなく、また、そのような構成を示唆する記載は何ら存在しないことから、審査官の判断は、根拠もなしに仮定に仮定を積み重ねて、引用発明から本願発明1を導き出そうというものであり、妥当ではない。

(エ)また、引用発明においては、先端カバー21の開口部22と処置具導出口 24が連通した先端カバー21の内部空間は、先端部本体21に対して胃壁を固定するために胃壁を吸着するための空間部であり、その空間部を形成するために(窓25や処置具突出口24を含む)処置具突出面25の周囲を覆う形状が採用されているものと解釈するのが自然であり、先端カバー21の形状が、先端部本体21の窓27(観察窓)が被検体に密着しないようにすることを意図して形成されたものではないことは明らかである。

(オ)むしろ、拒絶査定における審査官の判断は、本願発明1を知った上で進歩性を否定するのに都合のよい方向に解釈したものであり、いわゆる後知恵であり、許されない。

(カ)よって、当業者が、引用発明から本願発明1の構成に容易に想到するとはいえないものである。

(キ)なお、拒絶査定において引用された引用文献3、4には、当業者が本願発明1の構成を容易に想到し得ることの根拠となる記載はない。

(ク)そして、本願発明1は、上記相違点に係る構成を採用したことにより、超音波内視鏡用フードを装着する構成に比べて内視鏡の挿入部の径の小型化が可能となると共に、超音波トランスデューサを体壁に密着させた際などに観察窓に体壁が密着することを防止することができるという格別の効果を奏するものである(本願明細書の段落[0008]、[0011]等を参照)。

(ケ)以上のとおり、拒絶査定における進歩性判断には誤りがあり、本願発明1は、引用発明から当業者が容易に想到することができたものとはいえないことから、本願発明1の進歩性は認められるべきものである。」

上記主張において請求人が主張するとおり、確かに引用文献1には、「先端部本体21の窓27」や、「観察光学系の窓65」が被検体に密着しないようにする旨の記載はないが、上記第5の1(2)イ及び第5の2(2)イで検討したとおり、本願発明の「観察窓を用いた光学画像による観察を確実に行う」ために「観察窓と体壁が密着することを防止し」なければならないという課題は、引用発明1の「超音波内視鏡1」においても、通常有している課題であって、上記(引1j)(図10)及び(引1k)(図11)より「先端カバー66」の「開口部67」により形成される突出部により、「胃壁31」が「観察光学系の窓65」への密着を防止している点が見て取れることから、引用文献1の「先端部本体21の窓27」及び「観察光学系の窓65」が被検体に密着させないための役割を果たすことは十分理解できる。
そうすると、引用発明1の「観察光学系の窓27の周囲に処置具突出面25から突出した突出部」及び引用発明2の「観察光学系の窓65の周囲に処置具突出面63から突出した突出部」は、「前記観察窓への前記被検体の密着を防止する密着防止用」であるといえるから、上記請求人の主張は、認められない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-02-24 
結審通知日 2021-02-25 
審決日 2021-03-10 
出願番号 特願2017-71145(P2017-71145)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 順也  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 磯野 光司
福島 浩司
発明の名称 超音波内視鏡  
代理人 松浦 憲三  

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