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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D
管理番号 1373738
審判番号 不服2019-2267  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-19 
確定日 2021-05-06 
事件の表示 特願2016-566953「抗菌洗浄組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日国際公開、WO2015/172284、平成29年 6月 8日国内公表、特表2017-514967〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年5月12日を国際出願日とする出願であって、
平成29年11月13日付けの拒絶理由通知に対して、平成30年2月15日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、
平成30年4月2日付けの拒絶理由通知に対して、平成30年10月1日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、
平成30年10月23日付けの拒絶査定に対して、平成31年2月19日付けで審判請求がなされ、
令和元年11月12日付けの審判合議体による拒絶理由通知に対して、令和2年4月6日付けで意見書の提出とともに誤訳訂正書を提出してする手続補正がなされ、
令和2年7月22日付けの審尋に対して、指定期間内に回答書の提出がなされなかったものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?2に係る発明は、令和2年4月6日付けの誤訳訂正書を提出してする手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
抗菌洗浄組成物であって、
a)洗浄組成物の重量に対して、0.03%?0.5%の、4-4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテルである非イオン性抗菌剤と、
b)前記洗浄組成物の重量に対して、0.2%?1.5%の、アルキレンアミン主鎖及びアルキレンアミン主鎖の窒素原子に結合した側鎖を含む、汚れ分散剤であって、主鎖であるPEI及び前記PEI主鎖の窒素原子に結合した式(I):
-(EO)_(b)(PO)_(c) (I)
の側鎖を有するポリエチレンイミンエトキシレート(ここで、前記ポリエチレンイミンエトキシレートは、300?3,000の範囲の数平均分子量(MWn)を有するPEI主鎖を有し、bは、15?35の範囲であり、cは0である)である、汚れ分散剤と、
c)前記組成物の重量に対して、3%?40%の、アルキルエトキシサルフェート(AES)及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)を含むアニオン性界面活性剤系と、
d)前記組成物の重量に対して、0.5%?10%の、平均5?9モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたC_(12)?C_(16)アルコールである、非イオン性界面活性剤とを含むことを特徴とする、抗菌洗浄組成物。
【請求項2】
水溶性フィルム内に収容される、請求項1に記載の組成物。」

第3 令和元年11月12日付けの拒絶理由通知の概要
令和元年11月12日付けの拒絶理由通知には、理由1?3の拒絶の理由が示されているところ、そのうちの「理由1」の概要は、次のとおりのものである。
「理由1:本願の請求項1?2に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
そして、その「刊行物1?5」として、次の刊行物が提示されている。
刊行物1:特表2011-511124号公報
刊行物2:特公平4-54719号公報
刊行物3:国際公開第2013/124784号(原査定の文献1)
刊行物4:特表2004-515642号公報
刊行物5:国際公開第2013/156371号

第4 当審の判断
1.理由1(進歩性)について
(1)刊行物1?5の記載事項
上記刊行物1には、次の記載がある。
摘記1a:請求項5
「【請求項5】前記洗剤組成物が脂肪酸結晶変性剤を更に含み、好ましくは前記脂肪酸結晶変性剤が…c)前記組成物の約0.1重量%?約5重量%の、約300?約6000の分子量を有し、平均アルコキシル化度が窒素1個当たり約3?約30モルのアルキレンオキシドであるアルコキシル化ポリエチレンイミン類、…h)約1%?約10%の非イオン性アルキルポリエトキシレート、及びi)これらの混合物、から選択される…洗濯洗剤組成物。」

摘記1b:段落0066、0074?0075、0077及び0080
「【0066】アニオン性界面活性剤の非限定例としては、C_(11)?C_(18)アルキルベンゼンスルホネート(LAS)又はC_(10)?C_(20)分枝鎖及びランダムアルキルスルフェート(AS)などのアルキルスルホネート類、C_(10)?C_(18)アルキルエトキシスルフェート類(AExS)(式中、xは1?30である)…が挙げられる。…
【0074】…本明細書の洗濯組成物は、1つ又はそれ以上の布地ケア活性物質を含有するマイクロカプセル類又はマイクロエンキャプシュレート類を含有してもよい。…
【0075】…このようなマイクロカプセル類は、例えば染料及び/又は顔料の使用により、着色又は非着色であることができ、更に、香料、抗真菌剤、臭気抑制剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、抗菌活性物質、皮膚軟化剤、UV保護剤、難燃剤、光沢剤、酵素等を包含する有用な適合性のある洗剤補助剤を、マイクロカプセルのコアに封入して含有することができる。…
【0077】…本発明の洗剤組成物は、任意の数の更なる任意成分を含んでもよい。これらには洗浄性ビルダー、酵素、酵素安定剤(プロピレングリコール、ホウ酸及び/又はホウ砂など)、泡抑泡剤、土壌懸濁剤、防れ放出剤、他の布地ケア有益剤、pH調整剤、スメクタイト粘土、溶媒、ハイドロトープ剤及び相安定剤、構造剤、転染抑止剤、蛍光増白剤、香料、及び着色剤等の従来の洗濯洗剤組成物成分が挙げられる。…
【0080】…本発明の組成物は水溶性フィルムの中にカプセル化されてよい。」

摘記1c:段落0117
「【0117】実施例VII
本発明による追加の洗濯洗剤組成物の例を下に組成物7A?7Fとして示す。これらの処方は、従来の家庭用洗濯機に使用したとき、良好な清浄化、柔軟性及び許容可能に少ない布地上の目に見える残留物を提供すると予想される。
【表12】



上記刊行物2には、次の記載がある。
摘記2a:第5欄第4?6行
「本発明は、洗剤組成物内に使用した場合に粘土汚れ除去性/再付着防止性を有するエトキシ化アミンに関する。」

摘記2b:第17欄第30行?第18欄第31行
「包含される非イオン界面活性剤の種類は、次の通りである。…脂肪族アルコールとエチレンオキシド約1?約25モルとの縮合物。…この種の商業上入手可能な非イオン界面活性剤の例は、…シエル・ケミカル・カンパニーによつて市販されているネオドール(Neodol)45-9、ネオドール23-6.5…である。」

摘記2c:第28欄第15?20行
「配合できる他の成分は、例えば…殺菌剤…等である。」

摘記2d:第33欄第41行?第34欄第13行
「具体例 I
粒状洗浄剤組成物は、次の通りである。
成 分 重量%
PEI_(600)E_(24)^(*) 1.0
C14?C15アルキルエトキシ硫酸ナトリウム 10.7
C13線状アルキルベンゼンスルホン酸 4.3
C12?C14アルキルポリエトキシレート(6) 0.5
トルエンスルホン酸ナトリウム 1.0
トリポリリン酸ナトリウム 32.9
炭酸ナトリウム 20.3
ケイ酸ナトリウム 5.8
微量成分および水 残 部
* 分子量600およびエトキシ化度24を有するPEI
諸成分は、連続的混合下で一緒に添加されて水性スラリーを調製し、次いでこのスラリーは噴霧乾燥されて組成物を調製する。」

上記刊行物3には、和訳にして、次の記載がある。
摘記3a:第2頁第15?16行及び第3頁第26行?第4頁第3行
「ここで、一般的な殺生物剤の抗微生物作用は、ポリアミンの添加によって大きく増強されることが見出された。…
(I)pH4.5で決定される約分子量800(GPC)及び乾燥物質の電荷密度16meq/g、並びに第一級/第二級/第三級アミノ比(^(13)C-NMRによって決定される場合)=1/0.9/0.5の分岐ポリエチレンイミン(Lupasol(登録商標)FGとして市販されている生成物)。…
(IV)分子量600?800(GPC)の分岐ポリエチレンイミンコア5重量部及び式-CH_(2)-CH_(2)-O-の部分95重量部を含むエトキシ化ポリエチレンイミン;後文でPEI(IV)と称される。」

摘記3b:第8頁第4行
「xi)次式の4,4’-ジクロロ2’-ヒドロキシジフェニルエーテル



摘記3c:第8頁第18行?第9頁第42行
「本発明において見出される効果を要約し、以下を注記する。
1.PEIなどのポリアミンは、抗微生物性、保存性及び/又は微生物体付着阻害の効果を示し得る。…
4.驚くべきことに、特には、上に記載されている通りのPEI(1ページ22行から3ページ37行を範囲とする一節を参照されたい)、及びこれらのPEIの組合せは、抗微生物活性若しくは保存活性を通常示さないか又は非常に弱い抗微生物活性しか示さないPEIの濃度で、殺生物剤の抗微生物効力を増加させる。…
21.本発明によると、1から5の下に記載されている通りの組合せは、相乗的混合物を含む抗微生物組成物であり、この第1構成成分は上に記載されている通りのPEIであり(1ページ22行から3ページ37行を範囲とする一節を参照されたい)、この第2構成成分は上に記載されている通りの市販の殺生物剤、特には、ハロゲン(特には、Cl又はBr)原子を含有する及び/又はTinosan HP 100、ブロノポール、フェノキシエタノールのようなフェノール部分を含有するクラスから選択され、ここで、第1構成成分対第2構成成分の比は1/0.001から1/1000であり、組成物は、存在する殺生物剤を0.001%から最大5%まで有する。」

摘記3d:第54頁




摘記3e:第65頁第3?9行
「上記処方物(I)から(XXIV)の各々中に使用される殺生物剤は、ブロノポール、フェノキシエタノール、グルタルアルデヒド、ギ酸、グリオキサール、2,4-ジクロロベンジルアルコール、ダゾメット(3,5-ジメチル-1,3-5-チアジアジナン-2-チオン)、1,3,5-トリス-(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-ヘキサヒドロトリアジン、シブトリン(2-メチルチオ-4-tert-ブチルアミノシクロプロピルアミノ-6-(1,3,5-トリアジン))、Irgaguard(登録商標)B5000、Irgaguard(登録商標)B6000、Irgaguard(登録商標)B7000、トリクロサン、4,4’-ジクロロ2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(ジクロサン、Tinosan(登録商標) HP 100、活性成分)である。」

摘記3f:第67頁第1?7行


非依存性研究(対照)は、1000ppm(活性成分)Lupasol(登録商標)FGは単独で、S.aureus ATCC 6538に対して、5分の接触時間で殺細菌活性を有しない(<1 対数低減)ことを示す。」

上記刊行物4には、次の記載がある。
摘記4a:請求項5
「【請求項5】式:【化3】

で示される2-ヒドロキシ-ジフェニルエーテルを用いる、請求項1?4のいずれか一項記載の組成物。」

摘記4b:段落0002及び0086
「【0002】抗微生物活性成分を含む洗浄および消毒用組成物、たとえばパーソナルケア用調製物、手および機械食器洗浄用配合物、硬質表面のための洗浄および消毒用配合物、ならびに液状および固形の織物洗浄用配合物は、ますます広く使用されるようになっている。フェノール誘導体およびジフェニルエーテル化合物は、抗菌活性成分として周知のものである。…
【0086】本発明の組成物を使用すると、洗浄処理の間に、希釈液の中で被洗浄材料上に存在する細菌を破壊することが可能である。同時に、抗微生物特性が被洗浄織物材料に付与され、すなわち織物材料を着用している間に付着する細菌が破壊されることになる。」

摘記4c:段落0088?0089
「【0088】例1:液状洗浄用配合物(1)?(5)の調製
下記の組成を有する液状配合物を調製した。
【0089】【表1】



上記刊行物5には、和訳にして、次の記載がある。
摘記5a:第1頁第13?22行
「塩素化フェニルエーテル、および特に「ジクロサン(Diclosan)」(4-4’ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル)は高い温度および従って生存機械乾燥への暴露に抵抗する持続的な抗菌効果を与えるための洗濯用製品における使用が知られている。抗菌剤は、いくつかの微生物の経路を介しての悪臭の予防において二次的な効果を有することが知られている。これらは、表皮ブドウ球菌のような細菌によって発生する(とりわけ)臭気、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)などの病原性細菌の尿または成長の分解、およびミクロコッカス(Micrococcus)、皮膚糸状菌による足の臭いの形成を含むことができる。多くの抗微生物物質は、既知であるか、又は洗濯用製品に使用するために提案されている。」

摘記5b:第8頁第1?8行
「非イオン性抗菌性活性は、0.001?2重量%の量で存在し、全組成物の重量%である。非イオン性抗菌性活性成分の好ましい含有範囲は0.001?2重量%、より好ましくは0.002?0.4重量%、最も好ましくは0.025?0.1重量%であり、組成物全体の重量%である。
適当な材料は、市場において「ジクロサン(Diclosan)」として知られ、そしてTinosan(登録商標)HP-100(BASFから)などの製品として入手可能である。」

(2)刊行物1に記載された発明
摘記1bの「C_(11)?C_(18)アルキルベンゼンスルホネート(LAS)…C_(10)?C_(18)アルキルエトキシスルフェート類(AExS)」との記載、及び
摘記1cの「実施例VII」の組成物7Bの記載からみて、刊行物1には、
『C_(10)?C_(18)アルキルエトキシスルフェート類(AExS)12.6重量%、C_(11)?C_(18)アルキルベンゼンスルホネート(LAS)1.7重量%、NI 23-9 0.4重量%、PEI 600 EO_(20) 0.8重量%、及びその他の任意剤を含む洗濯洗剤組成物。』についての発明(以下「刊1発明」という。)が記載されているといえる。

(3)対比
本願請求項1に係る発明(以下「本1発明」ともいう。)と刊1発明とを対比する。
刊1発明の「C_(10)?C_(18)アルキルエトキシスルフェート類(AExS)12.6重量%」と「C_(11)?C_(18)アルキルベンゼンスルホネート(LAS)1.7重量%」の合計14.3重量%のアニオン性界面活性剤は、本1発明の「c)前記組成物の重量に対して、3%?40%の、アルキルエトキシサルフェート(AES)及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)を含むアニオン性界面活性剤系」に相当する。
刊1発明の「NI 23-9 0.4重量%」は、特表2008-537974号公報(参考例B)の段落0082の「NI23-9^(3)…^(3)C_(12)?C_(13)エトキシル化(EO_(9))アルコール」との記載、及び摘記1aの「h)…非イオン性アルキルポリエトキシレート」との記載、並びに本願明細書の誤訳訂正後の段落0075の「a Neodol(登録商標)25-7は、…平均7モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたC12?C15アルコール」との記載を参酌するに、当該「NI 23-9」と称される成分が「9モルのエチレンオキシド(EO)でエトキシル化されたC_(12)?C_(13)アルコール」を意味することが明らかであるから、本1発明の「d)前記組成物の重量に対して、0.5%?10%の、平均5?9モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたC_(12)?C_(16)アルコールである、非イオン性界面活性剤」に相当する。
刊1発明の「PEI 600 EO_(20) 0.8重量%」は、摘記2dの「PEI_(600)E_(24)^(*) …* 分子量600およびエトキシ化度24を有するPEI」との記載、及び摘記1aの「c)…約300?約6000の分子量を有し、平均アルコキシル化度が窒素1個当たり約3?約30モルのアルキレンオキシドであるアルコキシル化ポリエチレンイミン類」との記載、並びに誤訳訂正後の段落0075の「b 数平均分子量(MWn)約600のPEI主鎖及び(EO)_(20)の側鎖を有するポリエチレンイミンエトキシレート」との記載を参酌するに、当該「PEI 600 EO_(20)」と称される成分が「分子量600のエトキシ化度20を有するPEI」を意味し、本願請求項1の式(I)において、bが20、cが0のポリエチレンイミンエトキシレートに該当することが明らかであるから、本1発明の「b)前記洗浄組成物の重量に対して、0.2%?1.5%の、アルキレンアミン主鎖及びアルキレンアミン主鎖の窒素原子に結合した側鎖を含む、汚れ分散剤であって、主鎖であるPEI及び前記PEI主鎖の窒素原子に結合した式(I):
-(EO)_(b)(PO)_(c) (I)
の側鎖を有するポリエチレンイミンエトキシレート(ここで、前記ポリエチレンイミンエトキシレートは、300?3,000の範囲の数平均分子量(MWn)を有するPEI主鎖を有し、bは、15?35の範囲であり、cは0である)である、汚れ分散剤」に相当する。
刊1発明の「その他の任意剤を含む洗濯洗剤組成物」は、摘記1bの「本明細書の洗濯組成物は、…抗真菌剤、…抗菌活性物質…等を包含する有用な適合性のある洗剤補助剤を…含有することができる。」との記載にあるような「抗菌活性物質」などの任意剤を含み得る「洗濯洗剤組成物」であって、本1発明の「抗菌洗浄組成物」とは「洗浄組成物」という点で共通する。
してみると、本1発明と刊1発明は『洗浄組成物であって、b)前記洗浄組成物の重量に対して、0.2%?1.5%の、アルキレンアミン主鎖及びアルキレンアミン主鎖の窒素原子に結合した側鎖を含む、汚れ分散剤であって、主鎖であるPEI及び前記PEI主鎖の窒素原子に結合した式(I):
-(EO)_(b)(PO)_(c) (I)
の側鎖を有するポリエチレンイミンエトキシレート(ここで、前記ポリエチレンイミンエトキシレートは、300?3,000の範囲の数平均分子量(MWn)を有するPEI主鎖を有し、bは、15?35の範囲であり、cは0である)である、汚れ分散剤と、
c)前記組成物の重量に対して、3%?40%の、アルキルエトキシサルフェート(AES)及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)を含むアニオン性界面活性剤系と、
d)前記組成物の重量に対して、0.5%?10%の、平均5?9モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたC_(12)?C_(16)アルコールである、非イオン性界面活性剤とを含む、洗浄組成物。』という点において一致し、次の(α)の点で相違する。

(α)本1発明は「a)洗浄組成物の重量に対して、0.03%?0.5%の、4-4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテルである非イオン性抗菌剤」を含む「抗菌洗浄組成物」であるのに対して、刊1発明は当該「4-4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル」という特定の抗菌剤を「洗浄組成物の重量に対して、0.03%?0.5%」という特定の量で含む「抗菌洗浄組成物」ではない点。

(4)判断
上記(α)の相違点について検討する。
刊行物3の第9頁(摘記3c)の「市販の殺生物剤、特には、…Tinosan HP 100、…組成物は、存在する殺生物剤を0.001%から最大5%まで有する。」との記載、及び同第54頁の「Tinosan(登録商標)HP100」を「0.30%w/w」の量で使用した具体例の記載、
刊行物4の請求項5(摘記4a)の式(3)で示される2-ヒドロキシ-ジフェニルエーテルの記載、及び同段落0089(摘記4c)の液状洗浄用配合物1?3において式(3)の化合物を0.6×30%=0.18重量パーセントの量で用いた具体例の記載、及び
刊行物5の第1頁(摘記5a)及び第8頁(摘記5b)のジクロサン(4-4’ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル)が「Tinosan(登録商標)HP-100」として入手可能で、組成物全体の重量%で「最も好ましくは0.025?0.1重量%」の含有範囲で洗濯用製品に使用されることの記載にあるように、
本1発明の「a)洗浄組成物の重量に対して、0.03%?0.5%の、4-4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテルである非イオン性抗菌剤」という抗菌剤の種類と含有量の範囲は、本願出願日前の技術水準において普通に知られた周知の技術事項になっていたものと認められる。
そして、刊行物1の段落0075(摘記1b)の「抗菌活性物質」との記載からみて、刊1発明の「その他の任意剤を含む洗濯洗剤組成物」における「その他の任意剤」に「抗菌活性物質」が含まれ、刊1発明の「洗濯洗剤組成物」の具体的な態様に「抗菌洗剤組成物」の態様が含まれることは明らかである。
してみると、当該「抗菌活性物質」の種類と含有量の範囲を刊行物3?5に記載されるとおりのものとして、刊1発明の「洗濯洗剤組成物」の態様を「抗菌洗剤組成物」にすることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲である。

次に、本1発明の効果について検討する。
本願明細書の段落0078?0079の表3?表4には、本1発明の要件を満たす実施例2Aのものが、d成分が多過ぎる2Bやb成分が多過ぎる2C及び2Dのものに比して「静菌活性値」が高いという本1発明の効果が示されている。
しかしながら、これら2B?2Dにおけるb成分(一般に“Lupasol”等の製品名で常用される汚れ分散剤)やd成分(一般に“Neodol”等の製品名で常用される非イオン界面活性剤)の配合量は、刊行物1の実施例7B、7D、7F及び8Bや、刊行物2の具体例Iや、刊行物3の第56頁の(VII)の具体例や、刊行物4の配合物1?5や、参考例Bの表3の配合例のものに比べて、著しく多量のものが使われており、このような通常の使用量から逸脱した比較例との対比で示された効果について、格別の効果があると認めるに至らない。
また、刊行物3の第54頁(摘記3d)には「Tinosan(登録商標)HP100」の0.30%w/wに対して、PEI(I)?(IV)を1%w/wの量で配合した具体例が記載され、同第67頁(摘記3f)には「Tinosan(登録商標)HP100」の250ppm a.i.(0.025%活性量)という殺生物剤の濃度に対して「Lupasol(登録商標)FG」を1000ppm a.i.(0.1%活性量)というPEIの濃度で、優れた殺細菌活性が得られることが記載されているので、本願明細書の段落0075の「Tinosan(登録商標)HP100」の0.09重量%という殺生物剤の濃度に対して「PEI600 EO20」を0.2重量%というPEIの濃度で、同段落0078?0079に示されるとおりの「静菌活性値」が得られたという効果が、当業者にとって容易に予測し得ない効果であるとも認められない。

したがって、本1発明は、刊行物1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)審判請求人の主張について
ア.補強データの提出について
平成31年2月19日付けの審判請求書の第11頁第1?3行において、審判請求人は『現在、さらに詳細な追加の比較実験を実施中であり、本審判請求書の提出から約1か月前後で補強データが採れ次第提出させていただく用意がございます。(追って、上申書に提出させていただく予定であります。)』と主張する。
しかしながら、令和2年7月22日付けの審尋における『当該「補強データ」に基づく「詳細な追加の比較実験」の結果を示してください。』との求めに対して、当該「補強データ」の提出はなされなかったので、審判請求人の「補強データ」に関する主張は採用できない。

イ.抗菌剤の性能低下について
令和2年4月6日付けの意見書の第6頁第9?11行において、審判請求人は『汚れ分散剤(再付着防止剤)と抗菌剤の双方を含有する洗浄組成物にあっては、含有成分である汚れ分散剤の作用によって、洗浄プロセス中において、逆に抗菌剤の布地への付着性能が低下してしまうという新たな問題が生じます。』と主張する。
しかしながら、刊行物3の第2頁第15?16行(摘記3a)の「ここで、一般的な殺生物剤の抗微生物作用は、ポリアミンの添加によって大きく増強されることが見出された。」との記載にあるように、ポリアミン(汚れ分散剤)と抗菌剤の双方を含有する洗浄組成物にあっては、抗微生物作用が大きく増強されることが普通に知られているので、審判請求人の「抗菌剤の性能低下」に関する主張は採用できない。

ウ.洗濯洗浄プロセス後の抗菌効果について
令和2年4月6日付けの意見書の第7頁第25?27行において、審判請求人は『本願発明においては、抗菌剤を含有する洗剤組成物による洗濯洗浄プロセスを経た布地について抗菌効果試験を行っており、このことが上記本願発明の技術的課題が解決されるか否かの判断において極めて重要であります。』と主張する。
しかしながら、刊行物3の第11頁第14?16行の和訳にして『しかし、抗微生物効果は、処理された表面上で適用後に起こり続ける、より長く続く効果でもあり得る。下記で我々は、「抗微生物効果」という成句を使用することで、この段落で既述されている全ての効果を指す。』と記載にあるように、刊行物3の「抗微生物効果」は、洗濯後の布地の表面上で長く続く抗菌効果をも指すものであり、また、刊行物4の段落0086(摘記4b)の「本発明の組成物を使用すると、…抗微生物特性が被洗浄織物材料に付与され、すなわち織物材料を着用している間に付着する細菌が破壊されることになる。」との記載にあるように、刊行物4の請求項5の式(3)で示されるジフェニルエーテル化合物を配合した組成物を使用すると、洗濯後の布地を着用している間に付着する細菌に対して抗菌効果を発揮できることは普通に知られているので、審判請求人の「洗濯洗浄プロセス後の抗菌効果」に関する主張は採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、本1発明は、刊行物1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、その余の理由及び請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-11-25 
結審通知日 2020-11-27 
審決日 2020-12-08 
出願番号 特願2016-566953(P2016-566953)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C11D)
P 1 8・ 121- WZ (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 建二  
特許庁審判長 天野 斉
特許庁審判官 古妻 泰一
木村 敏康
発明の名称 抗菌洗浄組成物  
代理人 末盛 崇明  
代理人 村田 卓久  
代理人 中村 行孝  
代理人 小島 一真  
代理人 出口 智也  
代理人 朝倉 悟  
代理人 永井 浩之  
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