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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1373750
審判番号 不服2019-14496  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-30 
確定日 2021-05-06 
事件の表示 特願2015-147261「データ読出し方法及び情報処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 2日出願公開、特開2017- 27479〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年7月24日の出願であって,平成31年1月22日付けで拒絶の理由が通知され,平成31年3月27日に意見書とともに手続補正書が提出され,令和1年7月24日付けで拒絶査定(謄本送達日同年7月30日)がなされ,これに対して同年10月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 令和1年10月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年10月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「第1物理メモリの第1アドレスを指定する第1読出しコマンド生成要求に基づき、第1読出しコマンドを生成し、
前記第1物理メモリの、前記第1アドレスとは異なる第2アドレスを指定し、データ先読みコマンドであることを示すデータ先読みコマンド識別子を含む第2読出しコマンドを生成し、
前記第2読出しコマンドを生成した後に、前記第1物理メモリの第3アドレスを指定する第2読出しコマンド生成要求に基づき、第3読出しコマンドを生成し、
前記データ先読みコマンド識別子に基づいて、前記第2読出しコマンドに基づく前記第1物理メモリの前記第2アドレスからの第2データの読出しよりも先に、前記第1読出しコマンド及び前記第3読出しコマンドに基づく前記第1物理メモリの前記第1アドレスからの第1データと前記第1物理メモリの前記第3アドレスからの第3データをそれぞれ読み出す処理を複数の前記第1物理メモリに対して並列に実行する
ことを特徴とするデータ読出し方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成31年3月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「第1メモリの第1アドレスを指定する第1読出しコマンド生成要求に基づき、第1読出しコマンドを生成する工程と、
前記第1メモリの、前記第1アドレスとは異なる第2アドレスを指定し、データ先読みコマンドであることを示すデータ先読みコマンド識別子を含む第2読出しコマンドを生成する工程と、
前記第2読出しコマンドを生成した後に、前記第1メモリの第3アドレスを指定する第2読出しコマンド生成要求に基づき、第3読出しコマンドを生成する工程と、
前記データ先読みコマンド識別子に基づいて、前記第2読出しコマンドに基づく前記第1メモリの前記第2アドレスからの第2データの読出しよりも先に、前記第1読出しコマンド及び前記第3読出しコマンドに基づく前記第1メモリの前記第1アドレスからの第1データと前記第1メモリの前記第3アドレスからの第3データをそれぞれ読み出す
ことを特徴とするデータ読出し方法。」

(3)補正事項
本件補正は,以下の補正事項を含むものである。

<補正事項1>
本件補正前の請求項1の「第1メモリ」を,本件補正後の請求項1の「第1物理メモリ」とする補正。

<補正事項2>
本件補正前の請求項1の「第1読出しコマンドを生成する工程と」を,本件補正後の請求項1の「第1読出しコマンドを生成し」とする補正。

<補正事項3>
本件補正前の請求項1の「第2読出しコマンドを生成する工程と」を,本件補正後の請求項1の「第2読出しコマンドを生成し」とする補正。

<補正事項4>
本件補正前の請求項1の「第3読出しコマンドを生成する工程と」を,本件補正後の請求項1の「第3読出しコマンドを生成し」とする補正。

<補正事項5>
本件補正前の請求項1の「それぞれ読み出す」を,本件補正後の請求項1の「それぞれ読み出す処理を複数の前記第1物理メモリに対して並列に実行する」とする補正。

2 補正の適否
上記補正事項2?4は,実質的な内容に変更はなく,明瞭でない記載の釈明を目的としたものであるといえる。また,上記補正事項1及び5は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1メモリ」,及び「それぞれ読み出す」ことについて上記のとおり限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項1及び5を含むものであるから,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記「1 本件補正について(補正の内容)」の「(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載」に記載したとおりのものである。

(2)引用文献等の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用され,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2004-295860号公報(平成16年10月21日出願公開。以下,「引用文献1」という。)には,関連する図面とともに,次の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A「【0035】
[ストレージシステム]
図1は、本発明の一実施の形態のストレージシステムの構成図であり、磁気デイスクを使用したRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disk)システムを示す。図1に示すように、ストレージシステムは、磁気デイスクコントローラ(以下、コントローラという)1と、このコントローラ1にFC_AL(Fiber Channel Arbitrated Loop)4で接続されたデバイスエンクロージャー2とからなる。」

B「【0037】
コントローラ1は、直接又はネットワーク機器を介し、クライアントやサーバー等のホスト3に接続され、ホスト3の大量のデータを、RAIDデイスクドライブ(磁気デイスク装置)へ高速かつ、ランダムに読み書きが出来るシステムである。
【0038】
コントローラ1は、CA(Channel Adapter)10と、CM(Centralized Module)12,14と、DA(Device Adapter)16のファンクションモジュールによって構成されている。
【0039】
CA(Channel Adapter)10は、ホストを結ぶホスト・インタフェースの制御をつかさどる回路であり、例えば、ファイバーチャネル回路(FC)やDMA(Direct Memory Access)回路等で構成される。DA(Device Adapter)16は、デイスクデバイス(磁気デイスク装置)20?2Pを制御するため、デイスクデバイスとコマンド、データのやり取りを行う回路であり、例えば、ファイバーチャネル回路(FC)やDMA回路等で構成される。
【0040】
CM(Centralized Module)は、CPU12と、メモリー(RAM)14と、図示しないプログラムメモリとを有する。メモリー14は、バッテリーでバックアップされ、その一部が、キャッシュメモリ18として使用される。
【0041】
CPU12が実行する制御モジュールは、CA10をドライブするCM-CAドライバ30と、ストレージ装置へのアクセスが必要かを判定するフロントエンド処理モジュール32と、ストレージ装置へのアクセスの処理を行うバックエンド処理モジュール36と、DA40をドライブするCM-DAドライバ40と、システム制御を行うシステム制御モジュール38とからなる。」

C「【0043】
バックエンド処理モジュール36に対する負荷は、ホストI/Oによるものと、ホストI/Oに付随する内部I/Oと、ホストI/Oに付随しない内部I/Oとがある。ホスト3からのI/Oコマンドに付随するものとしては、ライトコマンド実行後のライトバック(キャッシュからのライトバック)のコマンド、プリフェッチ(リードされたデータの近辺のデータを前もってステージングする)のコマンドである。ホストI/Oに付随しない内部コマンドとしては、システム制御モジュール38からの再構築やコピーバックによるコマンドがある。」

D「【0045】
この構成の基本的動作を説明する。キャッシュメモリ18は、各々、担当するデイスク装置(RLU単位)のデータの一部を格納し、ホストからのライトデータや、プリフェッチされたデータを格納する。CPU12は、CA10を介しホストからのリード要求を受けて、キャッシュメモリ18を参照し、物理デイスクへのアクセスが必要かを判定し、必要であれば、デイスクアクセス要求をDA16に要求する。又、CPU12は、ホストからのライト要求を受けて、ライトデータをキャッシュメモリ18に書込み、且つ内部でスケジュールされるライトバック等をDA16に要求する。」

E「【0047】
図5に示すように、本発明では、バックエンドモジュール36に要求するI/O種別を、ホストI/Oと、内部I/Oに分類する。ホストI/Oは、ホストI/Oと同期するバックエンド処理であり、ホストのリード要求、ライトスルーモード時のライト要求が相当する。内部I/Oは、内部スケジュールのバックエンド処理であり、プリフェッチ、ライトバック等が相当する。」

F「【0051】
この資源獲得後、DTC(動的負荷制御)処理54で、負荷制御をRLU単位で行う。DTC54は、ホストI/Oの待ちキュー63と、内部I/Oの待ちキュー64と、ホストI/Oの仕掛りリスト65と、そのリストの仕掛りI/O数をカウントするホストI/Oカウンタ67と、内部I/Oの仕掛りリスト66と、その仕掛りI/O数をカウントする内部I/Oカウンタ68とを有する。
【0052】
待ちキュー63、64は、デイスク装置(RLU単位)へのI/O要求を待たせるためのキューであり、仕掛りリスト65、66は、デイスク装置(RLU単位)へ発行し、処理が完了していないI/O要求のリストであり、カウンタ67、68は、デイスク装置(RLU単位)へ発行し、処理が完了していないI/O要求数である。本発明では、図4に示すように、これらを、ホストI/Oと、内部I/Oとに個別に持ち、各々の発行個数を個別に管理する。」

G「【0054】
バックエンドモジュール36は、更に、ストライプ/冗長制御モジュール56を有し、このモジュール56は、RLU単位のI/O要求を,デイスク単位のコマンドに分割し、Disk(デイスク)ドライバ40-1/FC(ファイバーチャネル)ドライバ40-2にデイスクコマンドを発行する。ドライバ40からDA16に、デイスクコマンドが送信され、更に、FC_AL4を通して、磁気デイスク装置2(20?2P)にデイスクコマンドが伝達される。これにより、磁気デイスク装置2(20?2P)は、このデイスクコマンドを実行する。このDA16は、磁気デイスク装置2にデイスクコマンドを発行する際に、DTC54で指定されたタグ(Head of QueueやSimple Queue)を用いる。尚、Head of Queueは、デイスクでのリオーダリング対象とせずに、キューにつなぐ意味を持ち、Simple Queueは、デイスクでのリオーダリングの対象となる。」

H「【0115】
前述の図2乃至図8の動的負荷制御は、RLU単位に行うことを説明した。図17に示すように、2つの仮想デイスク(RLU)2-1、2-2を、1つのコントローラ1(図1参照)が担当する場合には、DTC60が、各RLU2-1、2-1に、ホストI/O(ホストリード)と、内部I/O(プリフェッチ、ライトバック)とを個別に負荷管理する。即ち、仮想デイスク(RLU)2-1、2-2への処理要求の発行数を個別に制限する。
【0116】
具体的には、ホストI/Oは、最優先度が付されるため、ホストI/Oは、仮想デイスク2-1、2-2で優先的に処理され、且つホストI/Oは、仕掛り数を制限され、仮想デイスク2-1、2-2に発行される。一方、待ちキュー63-1、63-2のホストI/Oの待ちがなくなると、内部I/Oの待ちキュー64-1、64-2から内部I/Oが、仕掛り数を制限され、仮想デイスク2-1、2-2に各々、発行される。」

J「【0119】
この場合に、実際のキャッシュ領域は、仮想デイスク(RLU)上のあるLBA(論理ブロックアドレス)の範囲を割り当てて運用される。ライトバックによってダーテイデータ(必要性の低い、例えば、最も古く使用されたデータ)をデイスクに書き戻すことで、キャッシュ領域の割り当てを開放して、別な仮想デイスク(RLU)上のLBAの範囲に対して割り当てることが可能となる。」

K「【0125】
この資源獲得後、DTC(動的負荷制御)処理54で、負荷制御をRLU単位で行う。図17で示したように、DTC54は、RLU毎に、ホストI/Oの待ちキュー63と、内部I/Oの待ちキュー64と、ホストI/Oの仕掛りリスト65と、そのリストの仕掛りI/O数をカウントするホストI/Oカウンタ67と、内部I/Oの仕掛りリスト66と、その仕掛りI/O数をカウントする内部I/Oカウンタ68とを有する。」

L「【図17】




図17から,「Host ReadをHost Queue 63-1,63-2にエンキューし,PrefetchをInternal Queue 64-1,64-2にエンキューする」態様が読み取れる。

(イ)上記A?Lの(特に下線部の)記載から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「RAIDシステムであって,
コントローラ1は,クライアントやサーバー等のホストの大量のデータを,RAIDデイスクドライブ(磁気デイスク装置)へランダムに読み書きが出来るものであり,コントローラ1は,CM(Centralized Module)によって構成されるものであり,CM(Centralized Module)は,CPUを有するものであり,CPUが実行するバックエンド処理モジュールに対する負荷は,ホストI/Oによるものと,ホストI/Oに付随する内部I/Oと,ホストI/Oに付随しない内部I/Oとがあり,ホストからのI/Oコマンドに付随するものとしては,プリフェッチ(リードされたデータの近辺のデータを前もってステージングする)のコマンドであり,
キャッシュメモリは,デイスク装置(RLU単位)のデータの一部を格納するものであり,
ホストI/Oは,ホストのリード要求が相当し,内部I/Oは,プリフェッチ等が相当するものであり,ホストI/Oの待ちキュー63,内部I/Oの待ちキュー64は,デイスク装置(RLU単位)へのI/O要求を待たせるためのキューであり,ストライプ/冗長制御モジュールは,RLU単位のI/O要求を分割しデイスクコマンドを発行し,磁気デイスク装置20?2Pは,このデイスクコマンドを実行するものであり,
2つの仮想デイスク(RLU)2-1,2-2を,1つのコントローラ1が担当する場合には,ホストI/O(ホストリード)と,内部I/O(プリフェッチ)とを個別に負荷管理するものであり,ホストI/Oは,優先的に処理され,仮想デイスク2-1,2-2に発行される一方,待ちキュー63-1,63-2のホストI/Oの待ちがなくなると,内部I/Oの待ちキュー64-1,64-2から内部I/Oが,仮想デイスク2-1,2-2に各々,発行されるものであり,キャッシュ領域は,RLU上のあるLBA(論理ブロックアドレス)の範囲を割り当てて運用されるものであり,
RLU毎に,ホストI/Oの待ちキュー63と,内部I/Oの待ちキュー64と,を有するものであり,Host ReadをHost Queue 63-1,63-2にエンキューし,PrefetchをInternal Queue 64-1,64-2にエンキューするものである,
RAIDシステム。」

イ 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用され,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,米国特許出願公開第2005/0125608号明細書(2005年6月9日公開。以下,「引用文献2」という。)には,関連する図面とともに,次の記載がある。(下線は,当審で付した。)

M「[0010] Software (device driver) 15 executing in host processing device 11 receives requests from applications or other computer program(s) (not shown) executing on host processing device 11.
[0011] In FIG. 2, a process 19 is shown for reading data from hard disk 12. Device driver 15 receives (201) a request from software (a computer program) on host processing device 11 . The request identifies an amount of demand data (the “demand request”) at addresses of hard disk 12, and instructs device driver 15 to read the demand data from hard disk 12. Device driver determines the location and amount of prefetch data to be read from hard disk 12 based on the location and/or amount of demand data and adds this information (the “prefetch request”) to the original request.」
(当審訳:[0010] ホスト処理装置11において実行するソフトウェア(デバイスドライバ)15は,ホスト処理装置11上で実行するアプリケーションまたは他のコンピュータプログラム(図示せず)からのリクエストを受信する。
[0011] 図2では,ハードディスク12からデータを読み出すためのプロセス19が示される。デバイスドライバ15はホスト処理装置11上のソフトウェア(コンピュータプログラム)からのリクエストを受信する(201)。このリクエストは,ハードディスク12のアドレスでデマンドデータ(“デマンドリクエスト”)の量を特定し,そしてデバイスドライバ15にハードディスク12からデマンドデータを読み出すように指示する。デバイスドライバは,デマンドデータの位置および/または量に基づいて,ハードディスク12から読み出されるプリフェッチデータの位置及び量を決定し,そしてこの情報(“プリフェッチリクエスト”)を本来のリクエストに付加する。)

N「[0013] Returning to FIG. 2, in response to the request received in 201, device driver 15 issuing read instructions (202) for demand data 24 and prefetch data 25 from hard disk 12.」
(当審訳:[0013] 図2に戻ると,201において受信されたリクエストに応答して,デバイスドライバ15がハードディスク12からのデマンドデータ24及びプリフェッチデータ25のための読み出し命令を発行する(202)。)

ウ 参考文献1
(ア)原査定において周知技術を示す文献として引用され,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,米国特許出願公開第2013/0246691号明細書(2013年9月19日公開。以下,「参考文献1」という。)には,関連する図面とともに,次の記載がある。

P「[0010] Another prestaging technique includes specifying a block of contiguous data records to prestage into cache in anticipation of a sequential data request. For instance, the Small Computer System Interface (SCSI) provides a prestage or prefetch command, PRE-FETCH, that specifies a logical block address where the prestaging operation begins and a transfer length of contiguous logical blocks of data to transfer to cache. The SCSI PRE-FETCH command is described in the publication “Information Technology-Small Computer System Interface-2,” published by ANSI on Apr. 19, 1996, reference no. X3.131-199x, Revision 10L, which publication is incorporated herein by reference in its entirety. 」
(当審訳:[0010] 別のプリステージングの技術はシーケンシャルなデータリクエストを予測してキャッシュ内にプリステージする連続したデータレコードのブロックを指定することを含む。例えば,Small Computer System Interface (SCSI)は,プリステージ動作が始まる論理ブロックアドレス及びキャッシュに転送するべきデータの連続する論理ブロックの転送長を指定するプリステージまたはプリフェッチのコマンド,PRE-FETCH,を提供する。SCSI PRE-FETCHコマンドは,1996年4月19日にANSIによって発行された出版物“Information Technology-Small Computer System Interface-2,”参照番号X3.131-199x,改訂版10Lに記載されており,この出版物は、参照によりその全体がここに組み込まれる。)

エ 参考文献2
(ア)原査定において周知技術を示す文献として引用され,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,米国特許出願公開第2007/0260846号明細書(2007年11月8日公開。以下,「参考文献2」という。)には,関連する図面とともに,次の記載がある。

Q「FIGURE 17


図17から,「Prefetch Commandにおいて,Byte 0にPrefetchであることを示すOperation Codeがセットされている」態様が読み取れる。

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)RAIDの技術分野において,RLU(Raid Logical Unit)が複数台のディスクを備えるものであることは技術常識であるから,引用発明の「RAIDシステム」において,「デイスク装置(RLU単位)への」「I/O要求」を「分割し」た「コマンドを実行する」「磁気デイスク装置20?2P」は,「デイスク装置(RLU単位)」が備える複数台のディスクであると認められ,また,磁気デイスクが物理的なメモリの一種であることは明らかであるから,引用発明の「デイスク装置(RLU単位)」は,「磁気デイスク装置20?2P」を備えた物理的なメモリであるといえる。
してみると,引用発明の「デイスク装置(RLU単位)」は,本件補正発明の“第1物理メモリ”に相当する。

(イ)引用発明は,「ホストI/Oの待ちキュー63,内部I/Oの待ちキュー64は,デイスク装置(RLU単位)へのI/O要求を待たせるためのキューであり」,「内部I/Oは,プリフェッチ等が相当」し,「ホストI/Oは,ホストのリード要求が相当」するものであるから,引用発明の「ホストI/O(ホストリード)」及び「内部I/O(プリフェッチ)」は,いずれも,「デイスク装置(RLU単位)」からデータを読出すための読出コマンドであるといえる。
さらに,引用発明では,「ホストの」「データを,RAIDデイスクドライブ(磁気デイスク装置)へランダムに読み書きが出来る」ことから,引用発明の「ホストI/O(ホストリード)」は,デイスク装置(RLU単位)から読出すデータをランダムに指定可能なものであるといえ,また,引用発明において,「キャッシュメモリは,デイスク装置(RLU単位)のデータの一部を格納」し,「キャッシュ領域は,RLU上のあるLBA(論理ブロックアドレス)の範囲を割り当てて運用される」ものであり,このことから,引用発明の「デイスク装置(RLU単位)」上に,LBA(論理ブロックアドレス)が定義されていることは明らかであることから,引用発明の「ホストI/O(ホストリード)」は,デイスク装置(RLU単位)から読出すデータをランダムに指定するために,デイスク装置(RLU単位)のLBA(論理ブロックアドレス)を指定するものであるといえる。
加えて,引用発明は,「クライアントやサーバー等のホストの大量のデータを,RAIDデイスクドライブ(磁気デイスク装置)へランダムに読み書き」するものであるから,「クライアントやサーバ等のホスト」が,「ホストI/O(ホストリード)」を多数生成するものであるといえる。
してみると,上記(ア)の検討も踏まえると,引用発明における,「デイスク装置(RLU単位)」の「LBA(論理ブロックアドレス)」を指定する「ホストI/O(ホストリード)」のうち,一の「ホストI/O(ホストリード)」を,「クライアントやサーバ等のホスト」が生成することと,本件補正発明の「第1物理メモリの第1アドレスを指定する第1読出しコマンド生成要求に基づき、第1読出しコマンドを生成」することとは,後記する点で相違するものの,“第1物理メモリの第1アドレスを指定する第1読出しコマンドを生成する”ものである点において一致する。

(ウ)引用発明の「内部I/O(プリフェッチ)」は,上記(イ)での検討を踏まえると,「デイスク装置(RLU単位)」からデータを読出すための読出コマンドであるといえ,また,引用発明において,「内部I/O」のうち,「ホストからのI/Oコマンドに付随する」「プリフェッチ」「のコマンド」は,「リードされたデータの近辺のデータを前もってステージングする」ためのものであるから,引用発明の「内部I/O(プリフェッチ)」は,ホストからのI/Oコマンドに付随して内部的に生成されるものであって,かつ,ホストI/O(ホストリード)が指定するものとは異なるLBA(論理ブロックアドレス)を指定するものであるといえる。
してみると,上記(ア)の検討も踏まえると,引用発明における,「ホストI/O(ホストリード)」が指定するものとは異なるアドレスを「デイスク装置(RLU単位)」の「LBA(論理ブロックアドレス)」として指定する「内部I/O(プリフェッチ)」を内部的に生成することと,本件補正発明の「前記第1物理メモリの、前記第1アドレスとは異なる第2アドレスを指定し、データ先読みコマンドであることを示すデータ先読みコマンド識別子を含む第2読出しコマンドを生成」することとは,後記する点で相違するものの,“前記第1物理メモリの,前記第1アドレスとは異なる第2アドレスを指定する第2読出しコマンドを生成する”ものである点において一致する。

(エ)引用発明は,「Host ReadをHost Queue 63-1,63-2にエンキューし,PrefetchをInternal Queue 64-1,64-2にエンキューする」ものであり,また,上記(イ)で検討したように,引用発明の「ホスト」は,一の「ホストI/O(ホストリード)」を含む多数の「ホストI/O(ホストリード)」を生成するものであるといえ,このことから,引用発明においては,一の「ホストI/O(ホストリード)」が「待ちキュー63」にエンキューされ,これに付随する「内部I/O(プリフェッチ)」が「待ちキュー64」にエンキューされている状況において,さらに別の「ホストI/O(ホストリード)」が「ホスト」で生成されて「待ちキュー63」にエンキューされ得るものであるといえるところ,このような形でエンキューされる当該別の「ホストI/O(ホストリード)」が,本件補正発明の「第3読出しコマンド」に相当する。
してみると,上記(ア)及び(ウ)の検討も踏まえると,引用発明における,「デイスク装置(RLU単位)」の「LBA(論理ブロックアドレス)」を指定する「ホストI/O(ホストリード)」のうち,当該別の「ホストI/O(ホストリード)」を,「待ちキュー64」に「内部I/O(プリフェッチ)」がエンキューされている状況において「ホスト」が生成することと,本件補正発明の「前記第2読出しコマンドを生成した後に、前記第1物理メモリの第3アドレスを指定する第2読出しコマンド生成要求に基づき、第3読出しコマンドを生成」することとは,後記する点で相違するものの,“前記第2読出しコマンドを生成した後に,前記第1物理メモリの第3アドレスを指定する第3読出しコマンドを生成”するものである点において一致する。

(オ)上記(エ)で検討したように,引用発明においては,一の「ホストI/O(ホストリード)」が「待ちキュー63」にエンキューされ,これに付随する「内部I/O(プリフェッチ)」が「待ちキュー64」にエンキューされた状況で,別の「ホストI/O(ホストリード)」が「待ちキュー63」にエンキューされるものであるといえ,また,引用発明においては,「ホストI/Oは,優先的に処理され,仮想デイスク」「(RLU)」「2-1,2-2に発行される一方,待ちキュー63-1,63-2のホストI/Oの待ちがなくなると,内部I/Oの待ちキュー64-1,64-2から内部I/Oが,仮想デイスク」「(RLU)」「2-1,2-2に各々,発行される」ものであることから,引用発明においては,「内部I/O(プリフェッチ)」が「待ちキュー64-1,64-2」からRLU2-1,2-2に「発行され」て「デイスク装置(RLU単位)」から対応するデータを読出すよりも先に,一の「ホストI/O(ホストリード)」及び別の「ホストI/O(ホストリード)」が「待ちキュー63-1,63-2」からRLU2-1,2-2に「発行され」て「デイスク装置(RLU単位)」から対応するデータをそれぞれ読出すものであるといえる。加えて,引用発明は,「2つの」「RLU」「2-1,2-2を,1つのコントローラ1が担当する」ことができるものであり,「RLU毎に,ホストI/Oの待ちキュー63と,内部I/Oの待ちキュー64と,を有」しているものであるから,上記の読出しを,複数のRLUに対して並列に実行するものであるといえる。
してみると,上記(ア)の検討も踏まえると,引用発明における,「内部I/O(プリフェッチ)」が「待ちキュー64-1,64-2」から「発行され」て当該「内部I/O(プリフェッチ)」に基づくRLU2-1,2-2の「LBA(論理ブロックアドレス)」からのデータの読出しが行われるよりも先に,一の「ホストI/O(ホストリード)」及び別の「ホストI/O(ホストリード)」が「発行され」て,当該一の「ホストI/O(ホストリード)」に基づくRLU2-1,2-2の「LBA(論理ブロックアドレス)」からのデータと当該別の「ホストI/O(ホストリード)」に基づくRLU2-1,2-2の「LBA(論理ブロックアドレス)」からのデータとをそれぞれ読出すことを,複数のRLUに対して並列に実行することと,本件補正発明の「前記データ先読みコマンド識別子に基づいて、前記第2読出しコマンドに基づく前記第1物理メモリの前記第2アドレスからの第2データの読出しよりも先に、前記第1読出しコマンド及び前記第3読出しコマンドに基づく前記第1物理メモリの前記第1アドレスからの第1データと前記第1物理メモリの前記第3アドレスからの第3データをそれぞれ読み出す処理を複数の前記第1物理メモリに対して並列に実行する」こととは,後記する点で相違するものの,“前記第2読出しコマンドに基づく前記第1物理メモリの前記第2アドレスからの第2データの読出しよりも先に,前記第1読出しコマンド及び前記第3読出しコマンドに基づく前記第1物理メモリの前記第1アドレスからの第1データと前記第1物理メモリの前記第3アドレスからの第3データをそれぞれ読み出す処理を複数の前記第1物理メモリに対して並列に実行する”ものである点において一致する。

(カ)上記(イ)?(オ)の検討を踏まえると,引用発明は,全体としてデータ読み出しのための工程を含む一連の処理,すなわち方法を特定するものであるといえるから,“データ読出し方法”である点において本件補正発明と一致する。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

【一致点】
第1物理メモリの第1アドレスを指定する第1読出しコマンドを生成し,
前記第1物理メモリの,前記第1アドレスとは異なる第2アドレスを指定する第2読出しコマンドを生成し,
前記第2読出しコマンドを生成した後に,前記第1物理メモリの第3アドレスを指定する第3読出しコマンドを生成し,
前記第2読出しコマンドに基づく前記第1物理メモリの前記第2アドレスからの第2データの読出しよりも先に,前記第1読出しコマンド及び前記第3読出しコマンドに基づく前記第1物理メモリの前記第1アドレスからの第1データと前記第1物理メモリの前記第3アドレスからの第3データをそれぞれ読み出す処理を複数の前記第1物理メモリに対して並列に実行する
ことを特徴とするデータ読出し方法。

【相違点1】
本件補正発明は,「第1物理メモリの第1アドレスを指定する第1読出しコマンド生成要求に基づき、第1読出しコマンドを生成し」,また,「前記第1物理メモリの第3アドレスを指定する第2読出しコマンド生成要求に基づき、第3読出しコマンドを生成」するものであるのに対し,引用発明では,ホストI/O(ホストリード)の生成を,「第1物理メモリの第1アドレスを指定する第1読出しコマンド生成要求に基づき」行うことや,「前記第1物理メモリの第3アドレスを指定する第2読出しコマンド生成要求に基づき」行うことについて特定されていない点。

【相違点2】
本件補正発明は,「第2読出しコマンド」が「データ先読みコマンドであることを示すデータ先読みコマンド識別子を含む」ものであるのに対し,引用発明では,内部I/O(プリフェッチ)が「データ先読みコマンドであることを示すデータ先読みコマンド識別子を含む」ことについて特定されていない点。

【相違点3】
本件補正発明は,「前記データ先読みコマンド識別子に基づいて」,「前記第2読出しコマンドに基づく前記第1物理メモリの前記第2アドレスからの第2データの読出しよりも先に、前記第1読出しコマンド及び前記第3読出しコマンドに基づく前記第1物理メモリの前記第1アドレスからの第1データと前記第1物理メモリの前記第3アドレスからの第3データをそれぞれ読み出す処理を複数の前記第1物理メモリに対して並列に実行する」ものであるのに対し,引用発明では,内部I/O(プリフェッチ)に基づくRLU2-1,2-2のLBA(論理ブロックアドレス)からのデータの読出しが行われるよりも先に,ホストI/O(ホストリード)に基づくRLU2-1、2-2のLBA(論理ブロックアドレス)からのデータを読出すことを,「前記データ先読みコマンド識別子に基づいて」行うことについて特定されていない点。

(4)判断
以下,相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用文献2の上記Mの「ホスト処理装置」「において実行する」「デバイスドライバ」との記載,上記Nの「受信されたリクエストに応答して,デバイスドライバ」「がハードディスク」「からのデマンドデータ」「のための読み出し命令を発行する」との記載,及び上記Mの「このリクエストは,ハードディスク」「のアドレスでデマンドデータ」「の量を特定し」との記載から,「ホスト処理装置において実行するデバイスドライバであって,ハードディスクのアドレスでデマンドデータの量を特定するリクエストに応答して,読み出し命令を発行するデバイスドライバ」は,本願の出願日前において公知の技術であった。
ここで,引用文献2に記載された技術では,「デバイスドライバ」が「リクエストに応答して」「読み出し命令を発行する」のであるから,この「リクエスト」は,実質的に読み出し命令の生成をデバイスドライバに要求するためのものであるといえ,また,この「リクエスト」は,「ハードディスクのアドレス」で「デマンドデータ」についての特定を行うのであるから,ハードディスクのアドレスを指定するものであるといえる。してみると,上記の技術は,ハードディスクのアドレスを指定する命令生成要求に基づき,読み出し命令を生成するものであるといえる。
引用発明においては,「ホストI/O(ホストリード)」を「ホスト」で生成するための手法については明記されていないものの,これを公知の手法で具体化することは,当業者の通常の創作能力の発揮であるといえる。また,引用文献1に記載された発明と引用文献2に記載された技術的事項とは,どちらも,ディスクからのデータの読み出しをホストからの命令に基づいて行うものである点で技術的に共通している。そのため,引用発明においても,引用文献2に記載された技術的事項を適用し,一の「ホストI/O(ホストリード)」の生成,及び別の「ホストI/O(ホストリード)」の生成について,「デイスク装置(RLU単位)」の各「LBA(論理ブロックアドレス)」を指定する各リクエストによる命令生成要求に基づき行うよう構成すること,すなわち上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

イ 相違点2及び相違点3について
参考文献1の上記Pの「Small Computer System Interface (SCSI)は,プリステージ動作が始まる論理ブロックアドレス」「を指定する」「プリフェッチのコマンド,PRE-FETCH,を提供する」との記載,及び参考文献2の上記Qの「Prefetch Commandにおいて,Byte 0にPrefetchであることを示すOperation Codeがセットされている」態様から,プリフェッチのコマンドとして,データ先読みコマンドであることを示すデータ先読みコマンド識別子を含むものは,本願の出願日前において当業者において周知のものであった。
引用発明は,「Host ReadをHost Queue 63-1,63-2にエンキューし,PrefetchをInternal Queue 64-1,64-2にエンキュー」するものであるから,I/O要求が「ホストI/O(ホストリード)」であるか「内部I/O(プリフェッチ)」であるのかをエンキュー時に区別することが必要であるといえる。また,引用文献1に記載された発明と参考文献1及び2に記載された周知技術とは,どちらも,プリフェッチのためのコマンドを用いるものである点で技術的に共通している。そして,引用発明において,上記参考文献1及び2に記載された周知技術を適用して,「内部I/O(プリフェッチ)」をデータ先読みコマンドであることを示すデータ先読みコマンド識別子を含むものとして構成するとともに,「内部I/O(プリフェッチ)」に基づくデータの読出しよりも先に「ホストI/O(ホストリード)」に基づくデータの読出しを行うために必要な,「内部I/O(プリフェッチ)」の「待ちキュー64-1,64-2」へのエンキューについて,この識別子に基づいてI/O要求を区別することにより行うよう構成すること,すなわち上記相違点2及び相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

ウ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項,並びに参考文献1及び2に記載された周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

エ したがって,本件補正発明は,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項,並びに参考文献1及び2に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和1年10月30日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成31年3月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の1?8に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記「第2 令和1年10月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定」「1 本件補正について(補正の内容)」「(2)本件補正前の特許請求の範囲」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1?8に係る発明は,本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明,引用文献2に記載された技術的事項,並びに参考文献1及び2に記載された周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:特開2004-295860号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2005/0125608号明細書
参考文献1:米国特許出願公開第2013/0246691号明細書
参考文献2:米国特許出願公開第2007/0260846号明細書

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2,原査定において周知技術を示す文献として引用された参考文献1及び2,並びにその記載事項は,前記「第2 令和1年10月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定」「2 補正の適否」「(2)引用文献等の記載事項」に記載したとおりの事項が記載されている。

4 対比・判断
(1)本願発明
本願発明は,前記「第2 令和1年10月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定」「1 本件補正について(補正の内容)」「(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載」で検討した本件補正発明から,補正事項1及び5に対応する限定事項を省き,さらに,明瞭でない記載の釈明を目的とした補正事項2?4に係る記載を本件補正前の記載に戻したものに相当する。

(2)引用発明との対比・判断
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加し,また,明瞭でない記載の釈明をしたものに相当する本件補正発明が,上記「第2 令和1年10月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定」「2 補正の適否」の「(3)引用発明との対比」及び「(4)判断」に記載したとおり,引用文献1に記載された発明,引用文献2に記載された技術的事項,並びに参考文献1及び2に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用文献1に記載された発明,引用文献2に記載された技術的事項,並びに参考文献1及び2に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-02-19 
結審通知日 2021-03-02 
審決日 2021-03-19 
出願番号 特願2015-147261(P2015-147261)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田名網 忠雄  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 石井 茂和
小林 秀和
発明の名称 データ読出し方法及び情報処理システム  
代理人 向山 直樹  

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