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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1373753
審判番号 不服2019-16632  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-09 
確定日 2021-05-06 
事件の表示 特願2017-235011号「形状記憶ステープルを送出するための装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年4月12日出願公開、特開2018-57910号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)3月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年3月23日,米国(US))を国際出願日とする特願2012-501080号の一部を、平成26年10月9日に新たな特許出願とした特願2014-207929号の一部を、平成28年7月7日に新たな特許出願とした特願2016-134869号の一部を、さらに平成29年12月7日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は概ね以下のとおりである。
平成30年 9月14日付け:拒絶理由通知
平成30年12月25日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 1月10日付け:拒絶理由通知(最後)
令和 元年 6月17日 :意見書の提出
令和 元年 7月29日付け:拒絶査定
令和 元年12月 9日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出

第2 令和元年12月9日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和元年12月9日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所を示す。)。

「形状記憶ステープルを送出するための装置において、前記装置が、
把持可能部分、
前記把持可能部分に結合された送出部分であって、前記ステープルを弾性変形形状で前記送出部分内に保持するための保持壁及び前記ステープルを放出して前記ステープルの形状記憶に基づく配置形状をとらせるための放出開口を有し、前記送出部分は第1のアクチュエータの作動に応答して前記送出部分から前記ステープルのそれぞれの一端を突き出させるように構成される送出部分、
及び
前記送出部分の先端に配置されたヘッド部分であって、前記先端を外向きに開傘させるため近位方向に引込み可能であり、前記送出部分からの前記ステープルの突出しを受け入れるステープル突出しスロットを含む、ヘッド部分、
を備え、前記ステープル突出しスロットが、前記送出部分の前記先端から径方向に外側にある前記ステープルの突出しを受け入れるために概ね軸方向で外向きの方向に延びていることを特徴とする装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の平成30年12月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「形状記憶ステープルを送出するための装置において、前記装置が、
把持可能部分、
前記把持可能部分に結合された送出部分であって、前記ステープルを弾性変形形状で前記送出部分内に保持するための保持壁及び前記ステープルを放出して前記ステープルの形状記憶に基づく配置形状をとらせるための放出開口を有し、前記送出部分は第1のアクチュエータの作動に応答して前記送出部分から前記ステープルのそれぞれの一端を突き出させるように構成される送出部分、
及び
前記送出部分の先端に配置されたヘッド部分であって、前記先端を外向きに開傘させるため近位方向に引込み可能であり、前記送出部分からの前記ステープルの突出しを受け入れるステープル突出しスロットを含む、ヘッド部分、
を備えることを特徴とする装置。」

2.補正の適否
本件補正は、請求項1に記載された発明の構成要件である、ヘッド部分のステープル突出しスロットについて、「前記ステープル突出しスロットが、前記送出部分の前記先端から径方向に外側にある前記ステープルの突出しを受け入れるために概ね軸方向で外向きの方向に延びている」と限定を加えるものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、以下、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際、独立して特許を受けることができたものであるか)について検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される、上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項及び引用発明
ア.引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2008/134812号(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、訳はファミリーである特表2010-524597号公報による。)。

(ア)「A fastening apparatus 1 , which is in the form of a stapler,is shown in Figure 1 as including a hand piece 2 with a trigger 3 coupled to a drive mechanism 4 which is in turn connected to an internal staple carrier located within an elongate sleeve 5 that terminates at a dispensing tip 6.
The drive mechanism 4 is housed in a barrel 7 of the hand piece 2 and includes a shuttle piece 8 which is coupled to a trigger 3 and travels lengthwise of the barrel 7, in response to the positioning of the trigger 3. The shuttle piece 8 is connected to a rotary member 9 which has a lateral lever 10 that extends externally of the barrel 7.The lever 10 allows the rotary member 9 and thereby the entire drive mechanism 4 to be rotated, such as by hand actuation, after the trigger 3 has initially been squeezed, so as to rotate the carrier relative to the sleeve at the dispensing tip 6. Accordingly, when the trigger 3 is activated, the drive mechanism 4 moves to the right, as shown, and is then rotated using lever 10.」(3頁23行?4頁2行)
(訳:図1には、ステープラの形態の固定装置1が示されている。装置1は、駆動機構4に接続されたトリガ3を有するハンドピース2を有し、駆動機構4は、送出先端部6で終端する細長いスリーブ5内に配置された内部ステープルキャリアに接続されている。
駆動機構4はハンドピース2のバレル7内に収容されており、シャトルピース8を有する。シャトルピース8はトリガ3に接続されており、トリガ3の位置に応答してバレル7の長さ方向に移動する。シャトルピース8は回転部材9に接続されており、回転部材9はバレル7の外に延出する側方レバー10を有する。まずトリガ3が握り締められた後、レバー10が例えば手によって作動されると、回転部材9及びそれによって駆動機構4全体が回転し、キャリアが送出先端部6のスリーブに対して相対的に回転する。従って、トリガ3が作動されると、駆動機構4は図面上の右側に移動し、次に、レバー10を用いて回転させられる。)

(イ)「Referring now to Figure 2, the dispensing tip 6 of the apparatus 1 is described in more detail. The tip 6 is formed of a co-axial arrangement of the sleeve 5, staple carrier 20 and a central rod 21, which are all coupled back to the hand piece 2.
The sleeve has a plurality of axially extending elongate openings 22which serve as entry points for staples to be loaded into the carrier 20. Elongate exit grooves 23 communicate with an open end 24 of the sleeve 5. The grooves 23 are radially offset from the openings 22.
The carrier 20 has a plurality of chambers 25 which are arranged to initially align with the openings 22, for loading the staples into the carrier and to subsequently align with the grooves 23 when the sleeve is rotated relative to the carrier 20 for discharge of the staples. Each chamber 27 includes a small detent 26 into which the associated staple is free to deform, as a means of restricting the staplefrom premature discharge.
The rod 21 is adapted for limited relative axial movement through the sleeve 6 and is fitted with a cap 30 which has an outwardly flaredneck 31 to initially deform the staple, if necessary, and encourage the staple into a curved configuration as the staple is deployed.
In use of the apparatus 1, staples are firstly inserted into the carrier 20 so that each chamber 25 is loaded with a staple. A graft 40,such as a stent or the like, is then fitted over the tip 6 so as to be carried by the cap 30. The trigger 3 is then activated to move the carrier 20 slightly forward to allow the leading ends 42 of the staples 50 to project out from underneath the sleeve 5 and start curling backward. At the same time, the staples puncture the graft 40 andthereby serve to anchor the graft 40 to the tip 6.
The apparatus is then manipulated to place the graft 40 at an appropriate suturing site, at which time the trigger 3 is depressed further so that the grooves 23 align with the chambers 25 to allow the staples to discharge from the tip 6. The apparatus is then removed.」(4頁4行?最終行)
(訳:次に図2を参照し、装置1の送出先端部6をより詳細に説明する。先端部6はスリーブ5、ステープルキャリア20及び中心ロッド21と同軸に構成されており、これらは全てハンドピース2に接続されている。
スリーブは、キャリア20に充填されるステープルの入口となる軸方向に延びる複数の細長い開口部22を有する。複数の細長い出口溝23が、スリーブ5の開口端24と連通している。溝23の位置は、開口部22から径方向にオフセットされている。
キャリア20は複数のチャンバ25を有する。チャンバ25は、初期状態ではステープルをキャリアに充填するために開口部22と位置決めされ、次に、スリーブがキャリア20に対して相対的に回転されると、ステープルを放出するために溝23と位置決めされるよう構成されている。各チャンバ25は小さい戻り止め27を有し、ステープルの早すぎる放出を制限する手段として、関連付けられたステープルが自由状態で変形して戻り止め27に入り込むようになっている。
ロッド21は、スリーブ6を通る軸方向の相対移動が制限されるよう構成されている。ロッド21にはキャップ30が嵌められており、キャップ30は、初期状態で必要に応じてステープルを変形させ、ステープルが配備される際にはステープルが曲がった構成をとることを促すために、外側に張り出したネック31を有する。
装置1が使用される際には、まず、キャリア20にステープルが挿入され、各チャンバ25にステープルが充填される。次に、ステント等の移植片40が、キャップ30に支持されるようにして先端部6に嵌められる。次に、トリガ3が作動され、キャリア20が僅かに前方に移動して、ステープル50の先端42がスリーブ5の下から突出し、後方に曲がり始める。同時に、ステープルが移植片40を突き通すことにより、移植片40を先端部6に係止する。
次に、移植片40を適切な縫合部位に配置するよう装置が操作され、その時、トリガ3が更に押されると、溝23がチャンバ25と位置決めされ、ステープルが先端部6から放出される。その後、装置は除去される。)

(ウ)「The staples are preferably formed of suitable memory-shape material, such as Nitinol or any other memory-shape material, and preferably also are at least partially thermally active to further constrict and effect a tight suture, once the staples are warmed to bodytemperature. In order for the staple to form the circular shape - the memory-shape material should be pre-manufactured ("trained") in form of a ring of different diameter depending on the thickness of thejoining tissues.」(5頁1?6行)
(訳:ステープルは、例えばニチノールや他の任意の形状記憶材料等の適切な形状記憶材料で形成されるのが好ましく、また、ステープルが体温まで温められると更に収縮して堅い縫合を達成するために、少なくとも部分的に熱活性を有するのが好ましい。ステープルが円形を構成するよう、形状記憶材料は、接合される組織の厚さに応じて異なる直径を有するリング状に予備加工される(トレーニングされる)べきである。)

(エ)「In another embodiment (not shown) the cap 30 can be pulled inside of the carrier 20, with the help of rod 21 to increase the diameter of the dispensing tip 1 for a better adaptation of the staplertip (dispenser) toward surrounding body tissues. The cap 30 can alsobe provided with a cutter which makes a hole (punch) in the tubular organ (vessel) where suturing is required.」(5頁30行?6頁3行)
(訳:別の実施形態(図示せず)では、ステープラ先端部(送出器)を周囲の身体組織に向かってより良好に適合させるために送出先端部1(審決注:6の誤記と思われる。以下、「6」とする。)の直径を大きくするよう、ロッド21を用いてキャップ30をキャリア20内に引き込むことができる。キャップ30に、縫合が必要な管状の組織(血管)に穴を開ける(パンチする)カッターを設けることもできる。)

(オ)「




(カ)図1には、ハンドピース2を手で把持する部分(把持部)がバレル7を介してスリーブ5に接続される点が図示されている。

(キ)「




(ク)上記(エ)の記載及び図2A?Cの記載からすれば、ロッド21を用いてキャップ30をキャリア20内に引き込むとスリーブ5の先端部の直径が大きくなることが記載されている。

上記(ア)?(エ)の特に下線部の記載、(オ),(キ)の図面の記載及び(カ),(ク)の認定事項からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「形状記憶材料で形成されるステープルを放出する装置1において、前記装置1が、
トリガ3を有する把持部、
前記把持部に接続されている細長いスリーブ5であって、複数のチャンバ25を有するステープルキャリア20と同軸に配置された先端部6及び前記スリーブ5の開口端24と連通している複数の細長い出口溝23を有し、前記トリガ3が作動されるとステープル50の先端42が前記スリーブ5の下から突出する細長いスリーブ5、
及び
スリーブ5の先端部に配置されたキャップ30であって、スリーブ5の先端部の直径を大きくするよう、ロッド21を用いてキャリア20内に引き込むことができる、外側に張り出したネック31を有するキャップ30、
を備える装置。」

イ.引用文献2について
原査定の拒絶理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許第5951576号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある(なお、訳は当審で付与した。)。

(ア)「Anvil slots 22b to 29b are defined along a central axis of each anvil to engage the side portions 47 of the staples 45, while the staple ends 49 project from the anvil slot ends.」(4欄22?25行)
(訳:アンビルのスロット22b?29bは、アンビルの中心軸に沿って画定され、ステープル45の側部47に係合する。一方、ステープル端部49は、アンビルのスロットの端部からそれぞれ突出している。)

(イ)「The device is then retracted against the inner wall of the aorta, shown in FIG. 9, and the staples are fired to anastomose the end of the prosthesis 60 with the sidewall of the artery 61, as shown in FIGS. 10, 19 and 20. The firing procedure changes the shape of a staple from the linear configuration shown in FIGS. 4 and 21b, to the curved shape shown in FIGS. 21c and 21d, as the staple is bent into and anastomose the prosthesis with the artery.」(4欄51?58行)
(訳:デバイスは、次いで図9に示すように、大動脈の内壁に向かって後退され、ステープルは図10、図19および図20に示すように、動脈61の側壁で、人工器官60の端を吻合するために発射される。射出手順は、ステープルを動脈と人工器官と吻合屈曲させるため、ステープルの形状を、図4及び図21(b)に示した直線状の形状から、図21cおよび21dに示すような湾曲した形状に変化させる。)

(ウ)「






(エ)「



上記(ア),(イ)の記載及び(ウ),(エ)の図面の記載からすれば、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2に記載の技術」という。)が記載されている。
「射出したステープルを直線状の形状から湾曲した形状に変形させるべく、当該ステープルを案内するよう、アンビルにスロットを設ける技術。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア.引用発明の「形状記憶材料で形成されるステープルを放出させる装置1」は、機能、構成上、本件補正発明の「形状記憶ステープルを送出するための装置」に相当する。
イ.引用発明の「トリガを有する把持部」は、機能、構成上、本件補正発明の「把持可能部分」に相当する。
ウ.引用発明の「細長いスリーブ5」、「開口端24と連通している複数の細長い出口溝23」及び「トリガ3」は、それぞれ本件補正発明の「送出部分」、「放出開口」及び「第1のアクチュエータ」に相当する。
そして、引用発明において、細長いスリーブ5が「把持部に接続されている」ことは、本件補正発明において、送出部分が「把持可能部分に結合された」ことに相当する。
また、引用発明の「細長いスリーブ5」は、「複数のチャンバ25を有するステープルキャリア20と同軸に配置され」ることにより、当該チャンバ25内のステープルは弾性変形形状で当該スリーブ5内に保持されるから、本件補正発明の「ステープルを弾性変形形状で送出部分内に保持する保持壁」を有しているといえる。
また、引用発明の「スリーブ5の開口端24と連通している複数の細長い出口溝23」は、当該複数の細長い出口溝23から放出されたステープルは、形状記憶に基づく配置形状をとるから、本件補正発明の「ステープルを放出してステープルの形状記憶に基づく配置形状をとらせるための放出開口」に相当する。
さらに、引用発明の細長いスリーブ5が「トリガ3が作動されるとステープルの先端42が前記スリーブ5の下から突出する」ことは、その機能からみて、本件補正発明の送出部分が「第1のアクチュエータの作動に応答して送出部分からステープルのそれぞれの一端を突き出させる」ことに相当する。
エ.引用発明の「スリーブ5の先端部に配置されたキャップ30であって、スリーブ5の先端部の直径を大きくするよう、ロッド21を用いてキャリア20内に引き込むことができる、外側に張り出したネック31を有するキャップ30」は、その機能及び構成からみて、本件補正発明の「送出部分の先端に配置されたヘッド部分であって、前記先端を外向きに開傘させるため近位方向に引込み可能であ」る、「ヘッド部分」に相当する。

以上のことからすると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「形状記憶ステープルを送出するための装置において、前記装置が、
把持可能部分、
前記把持可能部分に結合された送出部分であって、前記ステープルを弾性変形形状で前記送出部分内に保持するための保持壁及び前記ステープルを放出して前記ステープルの形状記憶に基づく配置形状をとらせるための放出開口を有し、前記送出部分は第1のアクチュエータの作動に応答して前記送出部分から前記ステープルのそれぞれの一端を突き出させるように構成される送出部分、
及び
前記送出部分の先端に配置されたヘッド部分であって、前記先端を外向きに開傘させるため近位方向に引込み可能である、ヘッド部分、
を備える装置。」

【相違点】
ヘッド部分について、本件補正発明は、送出部分からのステープルの突出しを受け入れるステープル突出しスロットを含み、前記ステープル突出しスロットが、前記送出部分の前記先端から径方向に外側にある前記ステープルの突出しを受け入れるために概ね軸方向で外向きの方向に延びているのに対し、引用発明は、そのようなステープル突出しスロットを含まない点。

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。
上記(2)イ.で検討したように、引用文献2には「射出したステープルを直線状の形状から湾曲した形状に変形させるべく、当該ステープルを案内するよう、アンビルにスロットを設ける技術。」が記載されており、ステープルを直線状の形状から湾曲した形状に変形させる構成である引用発明のヘッド部分に、同じようにステープルを案内するためのスロットを設けることは当業者にとって容易であることと認められ、その際に、引用発明のヘッド部分は図2A?Cに記載されているようにステープルと接する部分が概ね軸方向で外向きの形状になっているから、当該ヘッド部分にステープルを案内するためのスロットを設ければ、当該スロットが概ね軸方向で外向きの方向に延びるような構成になることは明らかである。
また、引用発明は、「スリーブ5の先端部の直径を大きくするよう、ロッド21を用いてキャリア20内に引き込むことができる、外側に張り出したネック31を有するキャップ30」を有することから、ロッド21を用いてキャリア20内にキャップ30を引き込んだ場合にもキャップ30と開口端24の間からステープルが突出できるように、キャップ30とスリーブ5の間にステープルが突出できるだけの出口を設けておかなければならないことは技術的にみて明らかである。そして、上記(2)ア.(イ)に記載されているように、ステープルはキャリア20のチャンバ25内に充填されており、スリーブ5はキャリア20に対して回転するものであるが、ステープルはスリーブ5と共に回転するものではないことから、スリーブ5に当該出口を設けた場合には、スリーブ5の回転を阻害することになってしまい不適切であるため、当業者であれば、当該出口としてのスロットをキャップ30側に設けられなければならないことは当然に想到できると認められる。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
令和元年12月9日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年12月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定は、拒絶の理由として次の理由を含むものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:国際公開第2008/134812号
引用文献2:米国特許第5951576号明細書

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2並びにその記載事項は、上記第2[理由]2.(2)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2.で検討した本件補正発明から、「前記ステープル突出しスロットが、前記送出部分の前記先端から径方向に外側にある前記ステープルの突出しを受け入れるために概ね軸方向で外向きの方向に延びている」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2[理由]2.(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-11-30 
結審通知日 2020-12-02 
審決日 2020-12-15 
出願番号 特願2017-235011(P2017-235011)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 立人  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 栗山 卓也
井上 哲男
発明の名称 形状記憶ステープルを送出するための装置及び方法  
代理人 柳田 征史  
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