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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1373760
審判番号 不服2020-3165  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-06 
確定日 2021-05-06 
事件の表示 特願2017-222188「レンズ装置、撮像装置、及び移動体」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月20日出願公開、特開2019- 95487〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年11月17日の出願であって、平成30年11月2日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成31年1月17日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年6月12日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、令和元年8月22日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、令和2年1月7日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は令和2年1月14日に請求人に送達された。これに対して、令和2年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正書が提出され、令和2年6月3日に上申書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、令和2年3月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。(下線は補正箇所を示す。)

「第1電動機及び第2電動機と、
レンズと、
前記レンズの光軸の方向に前記レンズを駆動させるカム環と、
前記第1電動機及び前記第2電動機の動力を前記カム環に伝達するギア部と、
前記第1電動機及び前記第2電動機の一方の回転数を検出する検出部と、
前記回転数に基づいて前記第1電動機及び前記第2電動機に供給する電力を制御する制御部と
を備え、
前記第1電動機の一組の入力端子及び前記第2電動機の一組の入力端子は、一組のリード線を介して電源の一組の出力端子に対して並列に接続され、
前記電源からの電力は、前記一組のリード線を介して前記第1電動機及び前記第2電動機に供給され、
前記ギア部は、
前記第1電動機の第1駆動軸に連結された第1ギアと、
前記第2電動機の第2駆動軸に連結された第2ギアと、
前記第1ギア及び前記第2ギアにかみ合う第3ギアと
を含み、
前記第3ギアは、前記第1ギア及び前記第2ギアとかみ合う第4ギアと、前記第4ギアより歯数が少ない第5ギアとを有する2段ギアであり、
前記ギア部は、
前記第5ギアにかみ合う第6ギアをさらに含み、
前記第1電動機及び前記第2電動機の動力が、前記第3ギア及び前記第6ギアを介して前記カム環に伝達される、レンズ装置。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
本願発明は、出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1、3、4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものを含んでいる。

引用文献1 特開2017-151458号公報
引用文献3 特開平8-9602号公報
引用文献4 特開昭59-165977号公報

第4 引用文献に記載された事項
1 引用文献1
(1)引用文献1に記載の事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審にて付与。以下同様。)。

ア 「【0001】
本発明は、撮像装置に関する。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ1を示す要部構成図である。本実施形態のデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラ本体2とレンズ鏡筒3から構成され、これらカメラ本体2とレンズ鏡筒3はマウント部4により着脱可能に結合されている。
【0016】
レンズ鏡筒3は、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズである。図1に示すように、レンズ鏡筒3には、レンズ31,32,33,34、および絞り35を含む撮影光学系が内蔵されている。
【0017】
レンズ32は、フォーカスレンズであり、光軸L1方向に移動することで、撮影光学系の焦点距離を調節可能となっている。フォーカスレンズ32は、レンズ鏡筒3の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、フォーカスレンズ用エンコーダ321によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ322によってその位置が調節される。
【0018】
このフォーカスレンズ32の光軸L1に沿う移動機構の具体的構成は特に限定されない。一例を挙げれば、レンズ鏡筒3に固定された固定筒に回転可能に回転筒を挿入し、この回転筒の内周面にヘリコイド溝(螺旋溝)を形成するとともに、フォーカスレンズ32を固定するレンズ枠の端部をヘリコイド溝に嵌合させる。そして、フォーカスレンズ駆動モータ322によって回転筒を回転させることで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1に沿って直進移動することになる。
【0019】
上述したようにレンズ鏡筒3に対して回転筒を回転させることによりレンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32は光軸L1方向に直進移動するが、その駆動源としてのフォーカスレンズ駆動モータ322がレンズ鏡筒3に設けられている。フォーカスレンズ駆動モータ322と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、フォーカスレンズ駆動モータ322の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され、そして、回転筒が何れか一方向へ回転することで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1の何れかの方向へ直進移動することになる。なお、フォーカスレンズ駆動モータ322の駆動軸が逆方向に回転駆動すると、変速機を構成する複数の歯車も逆方向に回転し、フォーカスレンズ32は光軸L1の逆方向へ直進移動することになる。
【0020】
フォーカスレンズ32の位置はフォーカスレンズ用エンコーダ321によって検出される。既述したとおり、フォーカスレンズ32の光軸L1方向の位置は回転筒の回転角に相関するので、たとえばレンズ鏡筒3に対する回転筒の相対的な回転角を検出すれば求めることができる。
【0021】
本実施形態のフォーカスレンズ用エンコーダ321としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して、回転数に応じたパルス信号を出力するものや、固定筒と回転筒の何れか一方に設けられたフレキシブルプリント配線板の表面のエンコーダパターンに、何れか他方に設けられたブラシ接点を接触させ、回転筒の移動量(回転方向でも光軸方向の何れでもよい)に応じた接触位置の変化を検出回路で検出するものなどを用いることができる。
【0022】
フォーカスレンズ32は、上述した回転筒の回転によってカメラボディ側の端部(至近端ともいう)から被写体側の端部(無限端ともいう)までの間を光軸L1方向に移動することができる。ちなみに、フォーカスレンズ用エンコーダ321で検出されたフォーカスレンズ32の現在位置情報は、レンズ制御部36を介して後述するカメラ制御部21へ送出され、フォーカスレンズ駆動モータ322は、この情報に基づいて演算されたフォーカスレンズ32の駆動位置が、カメラ制御部21からレンズ制御部36を介して送出されることにより駆動する。」

ウ 図1は以下のとおりである。


(2)引用文献1に記載の発明の認定
上 記(1)に記載された事項からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(括弧書きは認定の根拠とした段落番号である。)

引用発明
「レンズ鏡筒3は、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズであり、(【0016】)
レンズ鏡筒3には、レンズ31,32,33,34、および絞り35を含む撮影光学系が内蔵されており、(【0016】)
レンズ32は、フォーカスレンズであり、光軸L1方向に移動することで、撮影光学系の焦点距離を調節可能となっており、フォーカスレンズ32は、レンズ鏡筒3の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、フォーカスレンズ用エンコーダ321によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ322によってその位置が調節され、(【0017】)
このフォーカスレンズ32の光軸L1に沿う移動機構の具体的構成は特に限定されず、一例を挙げれば、レンズ鏡筒3に固定された固定筒に回転可能に回転筒を挿入し、この回転筒の内周面にヘリコイド溝(螺旋溝)を形成するとともに、フォーカスレンズ32を固定するレンズ枠の端部をヘリコイド溝に嵌合させ、フォーカスレンズ駆動モータ322によって回転筒を回転させることで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1に沿って直進移動することになり、(【0018】)
フォーカスレンズ駆動モータ322がレンズ鏡筒3に設けられ、フォーカスレンズ駆動モータ322と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、フォーカスレンズ駆動モータ322の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され、そして、回転筒が何れか一方向へ回転することで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1の何れかの方向へ直進移動することになり、(【0019】)
フォーカスレンズ32の位置はフォーカスレンズ用エンコーダ321によって検出され、フォーカスレンズ用エンコーダ321としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して、回転数に応じたパルス信号を出力するものなどを用いることができ、(【0020】、【0021】)
フォーカスレンズ用エンコーダ321で検出されたフォーカスレンズ32の現在位置情報は、レンズ制御部36を介してカメラ制御部21へ送出され、フォーカスレンズ駆動モータ322は、この情報に基づいて演算されたフォーカスレンズ32の駆動位置が、カメラ制御部21からレンズ制御部36を介して送出されることにより駆動する、(【0022】)
レンズ鏡筒。」

2 引用文献3
(1)引用文献3に記載の事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は複数のモータを備え、これらモータが同時に回転することにより、被駆動体を駆動する複合型モータに関する。」

イ 「【0005】従って、ディスクを回転駆動するスピンドルモータをトルクの大きいものとすることにより、より短時間で回転速度が変化するよう構成することが考えられるが、かかるモータは大型かつ高価である。特に図8に示されるごとく、パーソナルコンピュータ71にドラ
イブ装置70が組み込まれる場合、ドライブ装置70を収納するスペースがフォームファクタと呼ばれる規格で定められており、その大きさは幅(W)=146mm(5.75インチ)、高さ(H)=82mm(3.25インチ)、奥行き(D)=203mm(8.0インチ)とされている。
【0006】従って、ドライブ装置70はこの寸法内に入るよう構成する必要があるため、モータの大型化はかかる寸法内に入るようドライブ装置70を設計する際の大きな障害となる。特に、光学ピックアップはターンテーブルに近接した位置まで移動するため、例えば米国特許第4394594号公報に開示される、コイルと磁石をそれぞれ同一平面内に配置したトルクの大きい偏平型モータは、その径が大きいため使用することができない。
【0007】また、モータを大型化することなく、大きなトルクを得ようとする場合、必然的にモータが極めて高価となり、コスト低減が図れない。更に、トルクの大きなモータは、一般にトルクリップルが大きいため、スムースな回転が要求されるディスクの回転用として用いる場合に、何らかの対策が必要となる。」

ウ 「【0015】
【課題を解決するための手段】回転軸が互いに平行となるよう配置されると共に、そのトルクリップルが相互に打ち消されるよう配置された略同一特性の複数のモータと、複数のモータのそれぞれの回転軸を連結する連結手段とからなる。
【0016】
【作用】必要なトルクを十分得た上で、トルクリップルのないスムースな回転が得られる。」

エ 「【0025】以下に本発明の第2実施例をその斜視図である図5をもって説明する。上述の第1実施例において、直流ブラシモータ20、30はタイミングベルト10により連結されていたが、第2実施例においては、両モータを歯車で連結するものである。第2実施例の複合型モータ40は、直流ブラシモータ50、60の回転軸51、61に平歯車52、62が取り付けられており、この平歯車52、62はモータシャシ41に軸支された連結歯車42によって連結されている。従って、複合型モータ40の回転出力は、直流ブラシモータ50、60の回転出力の合成出力として直流ブラシモータ50の回転軸51から取り出される。」

オ 「【0040】更に、上述の実施例においては、本発明をCD-ROMドライブ装置における、ディスクの回転駆動用のスピンドルモータ及び光学ピックアップを移動するスレッドモータに適用して説明したが、本発明はこれに限定されることなく、他の被駆動体を駆動するためのモータに適用可能であることはもちろんである。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、モータを複数設け、これらモータのトルクリップルを相殺する配置関係となるよう連結部材により複数のモータ軸を連結したので、必要なトルクを複数の安価なモータで得ることが可能となり、少ないコスト上昇で性能の良いモータを提供できるものである。」

カ 図5は以下のとおりである。



(2)引用文献3に記載された事項の認定
上記(1)に記載された事項からみて、引用文献3には、次の事項が記載されていると認められる。

「モータを大型化することなく、必要なトルクを得るために、略同一性の2つのモータを用いて、両モータを歯車で連結し、合成出力を取り出すこと」

3 周知文献1
周知文献1である特開2016-27376号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像収集装置、及び画像収集装置の位置を調整するための調整装置を備える、固定されたモニタリング装置に関する。本発明はまた、固定されたモニタリング装置を調整する方法に関する。」

イ 「【0043】
図5の中における調整装置206は、メインギア207、第1のモータ208、及び第2のモータ209を有する。第1の歯車装置210は、メインギア207に対して第1のモータ208を作動可能に接続し、かつ第2の歯車装置211は、メインギア207に対して第2のモータ209を作動可能に接続する。第1の歯車装置210は、第1のウォーム212、第1のウォームギア213、第1の中間ギア220、及び第1のインナーギア221から作り上げられている。同様に、第2の歯車装置211は、第2のウォーム214、第2のウォームギア215、第2の中間ギア222、及び第2のインナーギア223から作り上げられている。上述の実施形態に対するのと同じやり方において、それぞれの歯車装置210、211のウォームギア213、215は、セルフロック式である。ギア213、215、220、221、222、及び223は、この図面において示されているように、各々が異なる直径の2つの部分を有し、ここで各々のギアは、より大きい直径の部分上で駆動され、かつそのより小さい直径の部分は、歯車装置の中の次のギアを駆動する。」

ウ 図5は以下のとおりである。


4 周知文献2
周知文献2である特開2003-202486号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は沈胴レンズを駆動するレンズ駆動制御装置に関するものである。」

イ 「【0014】127は撮影像の短辺方向に配置され、第4の移動レンズ105を光軸方向に移動させるためのステッピングモーター、130は本体101に取り付けられた減速機付きのステッピングモーター、131は本体101に回転可能に取り付けられ、ステッピングモーター130の出力ギヤとかみ合ったギヤ、132はギヤ131と大ギヤ部132aで噛み合い、カム環107の外周ギヤ部107iと小ギヤ部132bで噛み合った段ギヤである。」

第5 対比、判断
1 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「フォーカスレンズ」は、本願発明の「レンズ」に相当する。

(2)引用発明において「フォーカスレンズ駆動モータ322がレンズ鏡筒3に設けられ、フォーカスレンズ駆動モータ322と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、フォーカスレンズ駆動モータ322の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され、そして、回転筒が何れか一方向へ回転することで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1の何れかの方向へ直進移動することにな」るから、引用発明の「回転筒」は、本願発明の「前記レンズの光軸の方向に前記レンズを駆動させるカム環」に相当し、引用発明の「フォーカスレンズ駆動モータ」は、本願発明の「第1電動機及び第2電動機」と「電動機」の点で一致すると共に、上記引用発明の構成は、本願発明の「前記第1電動機及び前記第2電動機の動力を前記カム環に伝達するギア部」と、「電動機の動力を前記カム環に伝達するギア部」の点で一致する。

(3)引用発明において「フォーカスレンズ32の位置はフォーカスレンズ用エンコーダ321によって検出され、フォーカスレンズ用エンコーダ321としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して、回転数に応じたパルス信号を出力するものなどを用いることができ」るから、当該構成は、本願発明の「前記第1電動機及び前記第2電動機の一方の回転数を検出する検出部」と、「回転数を検出する検出部」の点で一致する。

(4)引用発明において「フォーカスレンズ用エンコーダ321で検出されたフォーカスレンズ32の現在位置情報は、レンズ制御部36を介してカメラ制御部21へ送出され、フォーカスレンズ駆動モータ322は、この情報に基づいて演算されたフォーカスレンズ32の駆動位置が、カメラ制御部21からレンズ制御部36を介して送出されることにより駆動する」ので、当該構成は、本願発明の「前記回転数に基づいて前記第1電動機及び前記第2電動機に供給する電力を制御する制御部」と、「前記回転数に基づいて電動機に供給する電力を制御する制御部」の点で一致する。

(5)引用発明の「レンズ鏡筒」は、レンズを備えた装置ということができるから、本願発明の「レンズ装置」に相当する。

(6)上記(1)?(5)から、本願発明と引用発明とは、 以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「電動機と、
レンズと、
前記レンズの光軸の方向に前記レンズを駆動させるカム環と、
電動機の動力を前記カム環に伝達するギア部と、
回転数を検出する検出部と、
前記回転数に基づいて電動機に供給する電力を制御する制御部と
を備える、
レンズ装置。」

(相違点1)
電動機について、本願発明が「第1電動機及び第2電動機」を有するのに対し、引用発明は「フォーカスレンズ駆動モータ」を有する点。

(相違点2)
検出部について、本願発明が「前記第1電動機及び前記第2電動機の一方の回転数を検出する」のに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。

(相違点3)
本願発明が「前記第1電動機の一組の入力端子及び前記第2電動機の一組の入力端子は、一組のリード線を介して電源の一組の出力端子に対して並列に接続され、前記電源からの電力は、前記一組のリード線を介して前記第1電動機及び前記第2電動機に供給され」るのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。

(相違点4)
ギア部について、本願発明が、
「前記第1電動機の第1駆動軸に連結された第1ギアと、
前記第2電動機の第2駆動軸に連結された第2ギアと、
前記第1ギア及び前記第2ギアにかみ合う第3ギアと
を含み、
前記第3ギアは、前記第1ギア及び前記第2ギアとかみ合う第4ギアと、 前記第4ギアより歯数が少ない第5ギアとを有する2段ギアであり、」
「前記第5ギアにかみ合う第6ギアをさらに含み、
前記第1電動機及び前記第2電動機の動力が、前記第3ギア及び前記第6 ギアを介して前記カム環に伝達される」のに対し、
引用発明は、「フォーカスレンズ駆動モータ322がレンズ鏡筒3に設けられ、フォーカスレンズ駆動モータ322と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、フォーカスレンズ駆動モータ322の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され」る点。

2 判断
(1)相違点1について
引用文献3には、モータを大型化することなく、必要なトルクを得るために、略同一性の2つのモータを用いて、両モータを歯車で連結し、合成出力を取り出すことが記載されている。
また、引用発明のようなデジタルカメラの技術分野において、カメラ内部の電動機などの部品を小型化することは周知の課題であり、引用発明及び引用文献3に記載されたものは、比較的小型の電子機器に用いられる電動機(モータ)に係る技術分野である点で共通するから、引用発明において、上記周知の課題に基づいて、引用文献3に記載されたものを採用して、相違点1に係る本願発明の構成のようにすることは当業者が容易に想到しうる事項にすぎない。

(2)相違点2について
連携して回転する複数の部材の回転数を検出するに際して、どの部材の回転数を基準として検出するようにするかは、当業者が各部材の配置やサイズ等を考慮して適宜選択できる事項であるところ、引用発明において「フォーカスレンズ32の位置はフォーカスレンズ用エンコーダ321によって検出され、フォーカスレンズ用エンコーダ321としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して」いることに代えて、電動機(モータ)の回転数を検出するようにすることは、当業者が適宜選択し得る事項にすぎない。
そして、引用発明において、上記(1)で説示したように相違点1に係る本願発明の構成を採用するに際して、相違点2に係る「前記第1電動機及び前記第2電動機の一方の回転数を検出する」ことは、両電動機が連携していることからすれば、一方の回転数を検出すれば足りることは明らかであるから、当業者が必要に応じて適宜選択しうる設計事項である。

(3)相違点3について
引用発明において、「フォーカスレンズ駆動モータ」には電源から電力が供給されていることは、技術常識から見て明らかである。
また、電源から電力を供給するに際して、リード線を介することも文献を示すまでもなく周知技術である。
したがって、引用発明において、上記(1)で説示したように相違点1に係る本願発明の構成を採用するに際して、それぞれの電動機に一組のリード線を介して電源から電力を供給するようにすることは、当業者が適宜選択しうる設計事項にすぎない。

(4)相違点4について
引用発明において「フォーカスレンズ駆動モータ322と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、フォーカスレンズ駆動モータ322の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され」ていることから、引用発明においても、複数の歯車を所定のギヤ比で連結させて、「フォーカスレンズ駆動モータ」の動力を「回転筒」に伝達させているといえる。
そして、周知文献1、2に記載されているように、2段ギアを用いて、複数のギアをかみ合わせて動力を伝達させることは周知技術にすぎないから、引用発明において、上記(1)で説示したように相違点1に係る本願発明の構成を採用するに際して、ギア(歯車)、電動機(モータ)、カム環(回転筒)の位置関係等を勘案して、相違点4に係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が適宜選択しうる設計事項にすぎない。

(5)作用効果について
本願発明の作用効果について、引用発明、引用文献3に記載された事項および周知技術から、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。

(6)したがって、本願発明は、引用発明、引用文献3に記載された事項および周知技術から当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。

3 請求人の主張について
請求人は、令和2年3月6日付け請求書、令和2年6月3日付け上申書において、
「引用文献1及び3には、鏡筒のサイズの大型化を抑制しつつ、大型のレンズを効率的に駆動させ、レンズの駆動速度の低下を抑制する課題は開示も示唆もされておらず、引用文献1に引用文献3を組み合わせる動機付けがない。また、いずれの引用文献にも本願発明の上記構成は開示も示唆もされておらず、仮に引用文献1の構成に引用文献3の構成を組み合わせたとしても、本願発明を実現することはできない。よって、本願発明のように、接線力を有効に使用して、大型のレンズを2つの電動機を用いて効率的に駆動させることはできない。」(請求書7頁15行?21行、上申書2頁17行?23行)
と主張している。

当該主張について検討するに、引用文献1と引用文献3を組み合わせるにあたっては、必ずしも本願発明の課題に基づく必要はなく、上記2(1)で説示したように、引用発明のようなデジタルカメラの技術分野において、カメラ内部の電動機などの部品を小型化することは周知の課題であり、引用発明及び引用文献3に記載されたものは、比較的小型の電子機器に用いられる電動機(モータ)に係る技術分野である点で共通するから、引用発明において、引用文献3に記載されたものを採用する動機付けはあるといえる。
また、本願発明に係るギア部の構成(上記主張の「上記構成」に相当)の容易想到性については、上記2(4)で説示したとおりである。
よって、請求人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献3に記載された事項および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-11-18 
結審通知日 2020-11-24 
審決日 2020-12-08 
出願番号 特願2017-222188(P2017-222188)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 勇井亀 諭三宅 克馬  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 井上 博之
佐藤 洋允
発明の名称 レンズ装置、撮像装置、及び移動体  
代理人 龍華国際特許業務法人  
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