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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L
管理番号 1373761
審判番号 不服2020-4046  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-26 
確定日 2021-05-06 
事件の表示 特願2015-127179「自動走行床掃除機である移動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月 1日出願公開、特開2016- 16321〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月25日(パリ条約による優先権主張2014年7月10日、独国 2014年7月31日、独国)の出願であって、平成31年4月19日付けの拒絶理由通知に対し、令和元年7月10日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和元年12月5日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して令和2年3月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和2年3月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年3月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
移動装置(1)であって、シャーシ(2)と複数の車輪(3)とを有し、少なくとも1つの車輪(3)は駆動可能であり、駆動可能な前記車輪(3)は、その車輪に連結されかつ前記シャーシ(2)に対して可動なサスペンション部品(5)を介して前記シャーシ(2)と接続されている、前記移動装置(1)において、
前記車輪(3)は、前記移動装置(1)がその上で走行可能である床(6)上で、バネ力のかかるバネ(7)の作用の下で支持するように設けられるとともに、前記サスペンション部品(5)の補助により前記シャーシ(2)に対して後退又は突出が可能であり、
センサ(8)の検知信号に応じて前記床(6)との接触圧力を増大させるために、前記バネ力は、前記車輪(3)の後退又は突出により生じる該バネ力の増大又は減少とは無関係に変更可能であり、前記車輪(3)の突出が大きくなると共に増大するように変更可能であり、かつ、前記バネ力は、前記移動装置(1)の傾斜量とは無関係に変更可能であり、
前記バネ(7)が、シャーシ側の接続点(10)と車輪側の接続点(11)を有し、前記バネ力の変更のために前記接続点(10、11)間の距離(12)が調整可能であることを特徴とする移動装置。
【請求項2】
前記バネ力が自動的に変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
前記バネ力が、センサ(8)により検知されかつ前記車輪(3)の後退又は突出の程度に対応する距離(9)に応じて調整可能であり、かつ、前記シャーシ(2)と前記床(6)の間の距離(9)に応じて調整可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動装置。
【請求項4】
前記バネ(7)が、ガス圧式バネであることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の移動装置。
【請求項5】
前記バネ(7)が、弾性変形により作用するバネ部品として形成されていることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の移動装置。
【請求項6】
前記サスペンション部品(5)は揺動アームであって旋回軸(13)の周りで旋回可能に前記シャーシ(2)上に連結されており、かつ、前記車輪(3)の前記旋回軸(13)までの距離は一定であることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の移動装置。
【請求項7】
前記車輪側の接続点(11)が前記揺動アーム上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の移動装置。
【請求項8】
作用するバネ力により決定される前記接続点(10、11)間の距離(12)の変化を伴って、前記シャーシ(2)及び/又は前記サスペンション部品(5)に対するバネ力を変更するために、1つの前記接続点(10、11)が変位可能であることを特徴とする請求項6又は7に記載の移動装置。
【請求項9】
前記移動装置が自動走行床掃除機であることを特徴とする請求項1?8のいずれかに記載の移動装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和元年7月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
移動装置(1)であって、シャーシ(2)と複数の車輪(3)とを有し、少なくとも1つの車輪(3)は駆動可能であり、駆動可能な前記車輪(3)は、その車輪に連結されかつ前記シャーシ(2)に対して可動なサスペンション部品(5)を介して前記シャーシ(2)と接続されている、前記移動装置(1)において、
前記車輪は、前記移動装置がその上で走行可能である床(6)上で、バネ力のかかるバネ(7)の作用の下で支持するように設けられるとともに、前記サスペンション部品(5)の補助により前記シャーシ(2)に対して後退又は突出が可能であり、
前記バネ力は、前記車輪の後退又は突出により生じる該バネ力の増大又は減少とは無関係に変更可能であり、前記車輪の突出が大きくなると共に増大するように変更可能であり、かつ、前記バネ力は、前記移動装置の傾斜量とは無関係に変更可能であることを特徴とする移動装置。
【請求項2】
前記バネ力が自動的に変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
前記バネ力が、センサ(8)により検知されかつ前記車輪(3)の後退又は突出の程度に対応する距離(9)に応じて調整可能であり、かつ、前記シャーシ(2)と前記床(6)の間の距離(9)に応じて調整可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動装置。
【請求項4】
前記バネ(7)が、ガス圧式バネであることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の移動装置。
【請求項5】
前記バネ(7)が、弾性変形により作用するバネ部品として形成されていることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の移動装置。
【請求項6】
前記バネ(7)が、シャーシ側の接続点(10)と車輪側の接続点(11)を有し、それにより、前記バネ力に関連してこれらの接続点(10、11)間の距離が決定されることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の移動装置。
【請求項7】
前記バネ力の変更のために前記接続点(10、11)間の距離が調整可能であることを特徴とする請求項6に記載の移動装置。
【請求項8】
前記サスペンション部品(5)は揺動アームであって旋回軸(13)の周りで旋回可能に前記シャーシ(2)上に連結されており、かつ、前記車輪(3)の前記旋回軸(13)までの距離は一定であることを特徴とする請求項6又は7に記載の移動装置。
【請求項9】
前記車輪側の接続点(11)が前記揺動アーム上に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の移動装置。
【請求項10】
作用するバネ力により決定される前記接続点(10、11)間の距離(12)の変化を伴って、前記シャーシ(2)及び/又は前記サスペンション部品(5)に対するバネ力を変更するために、1つの前記接続点(10、11)が変位可能であることを特徴とする請求項6?9のいずれかに記載の移動装置。
【請求項11】
前記移動装置が自動走行床掃除機であることを特徴とする請求項1?10のいずれかに記載の移動装置。」

2.補正の適否
本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1のみを引用する請求項6を引用する請求項7に係る発明(以下、「補正前発明」とする。)に対応する。
そして、本件補正後の請求項1についての補正は、補正前発明を特定するために必要な事項である「前記バネ力は、前記車輪の後退又は突出により生じる該バネ力の増大又は減少とは無関係に変更可能であり、前記車輪の突出が大きくなると共に増大するように変更可能であり、かつ、前記バネ力は、前記移動装置の傾斜量とは無関係に変更可能であること」について、「センサ(8)の検知信号に応じて前記床(6)との接触圧力を増大させるために」との限定を付加するものであって、補正前発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、この補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(1)の請求項1に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載及び引用発明
ア.引用文献1の記載
原査定(令和元年12月5日付け拒絶査定)の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である、米国特許出願公開第2013/0340201号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付与した。以下、同様である。)。

(ア)「[0050] The robot cleaner according to the present invention is provided with a body 10 forming an external appearance of the robot cleaner, a main wheel 40 arranged at the body 10 to allow the body 10 to move back and forth or rotate, and an auxiliary front wheel 20 to support one side of the body 10 and assist the main wheels 40 in rotating the body 10.
[0051] Here, the main wheels 40 are independently provided at the left and right sides of the body 10, and thereby each of the main wheels 40 on the left and right sides of the body 10 may be independently driven.」
[当審仮訳:[0050] 本発明に係るロボット掃除機は、ロボット掃除機の外観を形成する本体10と、本体10に設けられて本体10の前後移動または回転を可能にする主輪40と、本体10の一側を支持し、本体10の回転時に主輪40を補助する補助前輪20とを備える。
[0051] ここで、主輪40は、本体10の左右に独立して設けられており、これにより、本体10の左右の各主輪40を独立して駆動することができる。]

(イ)「[0061] Each of the main wheels 40 is rotatably accommodated and arranged in a main wheel housing 42. The main wheel housing 42 is provided with a rotation shaft 46 arranged to protrude outside. Here, the rotation shaft 46 functions as the center of rotation about which the main wheel housing 42, i.e., a corresponding one of the main wheels 40, rotates with respect to the body 10. Rotation of the entire main wheel housing 42 allows the main wheel 40 to ascend or descend with respect to the body 10.
[0062] A first hook 44 is provided at one side of the main wheel housing 42, and thus one end of an elastic member, which will be described later, can be fixed thereto.
[0063] The driving unit 50 to vertically move the main wheel 40 includes a driving unit housing 52 in which components related to the driving unit 50 are accommodated. The driving unit housing 52 is fixed to the inside of the body 10.
[0064] The driving unit housing 52 is provided with a coupling portion 56 allowing the rotation shaft 46 to be inserted thereinto to be fixed. The rotation shaft 46 is rotatably coupled to the inside of the coupling portion 56.」
[当審仮訳:[0061] 各主輪40は、主輪ハウジング42内に回転可能に収容配置されている。主輪ハウジング42には、外側に突出するように配置された回転軸46が設けられている。ここで、回転軸46は、主輪ハウジング42の回転中心として機能する。すなわち、主輪40は、車体10に対して回転する。主輪ハウジング42全体の回転により、主輪40が本体10に対して昇降する。
[0062] 主輪ハウジング42の一側には第1フック44が設けられ、後述する弾性部材の一端が固定される。
[0063] 主輪40を上下動させる駆動部50は、駆動部50に関連する部品を収容する駆動部ハウジング52を備える。駆動部ハウジング52は、本体10の内部に固定される。
[0064] 駆動部ハウジング52には、回転軸46を挿入して固定するための連結部56が設けられている。回転軸46は、連結部56の内部に回転可能に連結されている。]

(ウ)「[0066] The driving unit 50 includes an elastic member 70 coupled to one end of the main wheel housing 42, i.e., to the first hook 44. The driving unit 50 also includes an actuator to pull the elastic member 70 to lower the main wheel 40 with respect to the body 10.
[0067] The actuator includes a rack 66 connected to the other end of the elastic member 70, a pinion 64 to move the rack 66 forward or backward, and a driving motor 60 to rotate the pinion 64.
[0068] The rack 66 includes a second hook 68 to which the other end of the elastic member 70 is fixed. That is, both ends of the elastic member 70 may be fixed by the first hook 44 and the second hook 68.」
[当審仮訳:[0066] 駆動ユニット50は、主輪ハウジング42の一端、すなわち第1フック44に結合された弾性部材70を含む。また、駆動部50は、弾性部材70を引っ張って本体10に対して主輪40を下降させるアクチュエータを含む。
[0067] アクチュエータは、弾性部材70の他端に連結されるラック66と、ラック66を前進または後進させるピニオン64と、ピニオン64を回転させる駆動モータ60とを含む。
[0068] ラック66は、弾性部材70の他端が固定される第2フック68を含む。すなわち、弾性部材70の両端は、第1フック44及び第2フック68によって固定される。」

(エ)[0074] That is, the rack 66, the elastic member 70, the driving motor 60 and the pinion 64 may be fixed to the body 10, while being accommodated in the driving unit housing 52.
[0075] FIG. 3 is a view showing the main wheel in a raised position, and FIG. 4 is a view showing the main wheel in a lowered position. Hereinafter, a description will be given with reference to FIGS. 3 and 4.
[0076] When the main wheel 40 is raised as exemplarily shown in FIG. 3, the rack 66 is positioned relatively forward.
[0077] Accordingly, the elastic member 70 is extended to a relatively short distance, and thus the main wheel 40 is disposed close to the body 10.
[0078] On the other hand, when the rack 66 is moved backward as shown in FIG. 4, the elastic member 70 is extended by a relatively long distance. That is, as one end of the elastic member 70 is pulled by the rack 66, the one end of the elastic member 70 is moved backward, and the main wheel 40 is lowered by the elastic member 70. At this time, the main wheel housing 42 rotates counterclockwise about the rotation shaft 46, and thereby the main wheel 40 is further lowered than when it is arranged as in FIG. 3.」
「当審仮訳:[0074] すなわち、ラック66、弾性部材70、駆動モータ60及びピニオン64は、駆動部ハウジング52に収容された状態で本体10に固定される。
[0075] 図3は、上昇位置にある主輪を示す図であり、図4は、下降位置にある主輪を示す図である。以下、図3及び図4を参照して説明する。
[0076] 図3に例示するように、主輪40が上昇しているとき、ラック66は、比較的前方に位置している。
[0077] これにより、弾性部材70が相対的に短い距離だけ伸長され、主輪40が本体10に近接して配置される。
[0078] 一方、図4に示すように、ラック66を後方に移動させると、弾性部材70は、相対的に長い距離だけ伸長される。すなわち、弾性部材70の一端がラック66によって引っ張られることにより、弾性部材70の一端が後方に移動し、弾性部材70によって主輪40が下降する。このとき、主輪ハウジング42が回転軸46を中心に反時計回りに回転することにより、主輪40は、図3のように配置されている場合よりもさらに下降する。]

(オ)「[0087] The robot cleaner is provided with various sensors 90.
[0088] The sensors 90 may include an obstacle detection sensor to sense an obstacle present at the front side or rear side of the robot cleaner, a sensor to determine if the robot cleaner is inclined, a sensor to sense variation of load applied to the main wheel 40, and a sensor to sense change in rotational force applied to or used in the main wheel 40.
[0089] The sensors 90 may provide information used to determine if the body is inclined. In this case, when the body is not disposed parallel with a level surface but is inclined to one side, the sensors 90 may obtain information on an extent of inclination of the body.
[0090] In addition, the sensors 90 may provide information on variation of load applied to the main wheel 40 or rotational force applied to the main wheel 40. In this case, the sensors 90 may be disposed adjacent to main wheel to measure load applied to the main wheel 40 or the amount of current supplied to the motor supplying rotational force to the main wheel 40 to obtain the information.
[0091] The information obtained by the sensors 90 is transmitted to the controller 100. Then, the controller 100 may control movement and suction force of the robot cleaner according to signals transmitted from the sensors 90.
[0092] Particularly, the controller 100 may control the driving unit 50 according to signals transmitted from the sensors 90. That is, when the controller 100 determines that the robot cleaner needs to climb up a stepped portion, it may drive the driving unit 50 to lower the main wheel 40. On the other hand, when the controller 100 determines that the robot cleaner has climbed up the stepped portion, it may drive the driving unit 50 to raise the main wheel 40 to return the main wheel 40 to an original position thereof.」
[当審仮訳:[0087] ロボット掃除機には各種センサ90が設けられている。
[0088] センサ90は、ロボット掃除機の前方または後方に存在する障害物を感知する障害物感知センサ、ロボット掃除機が傾いているか否かを判断するセンサ、主輪40に加えられる荷重の変化を感知するセンサ、主輪40に加えられる回転力の変化を感知するセンサなどを含むことができる。
[0089] センサ90は、本体が傾斜しているかどうかを判定するために使用される情報を提供することができる。この場合、前記センサ90は、前記本体が水平面と平行に配置されず、一方側に傾いた場合、前記本体の傾きの程度に関する情報を獲得することができる。
[0090] また、センサ90は、主輪40に加えられる荷重または主輪40に加えられる回転力の変化に関する情報を提供することができる。この場合、センサ90は、主輪に隣接して配置され、主輪40に加えられる荷重または主輪40に回転力を供給するモータに供給される電流量を測定して情報を得ることができる。
[0091] センサ90によって得られた情報は、制御部100に送信される。そして、制御部100は、センサ90から伝達される信号に応じてロボット掃除機の移動及び吸引力を制御することができる。
[0092] 特に、制御部100は、センサ90から伝達される信号によって駆動部50を制御することができる。すなわち、制御部100は、段差部を登る必要があると判断すると、駆動部50を駆動して主輪40を下降させる。一方、制御部100は、ロボット掃除機が段差部を登ったと判断すると、駆動部50を駆動して主輪40を上昇させ、主輪40を元の位置に復帰させることができる。]

(カ)「[0098] Then, the controller 100 determines if the auxiliary front wheel 20 has entered the stepped portion 80 according to information received from the sensors 90 (S10).
[0099] For example, whether the auxiliary front wheel 20 has entered the stepped portion 80 may be determined by occurrence of inclination of the body 10 with the front side thereof positioned higher than the rear side thereof for a predetermined time. Once the auxiliary front wheel 20 moves to the top of the stepped portion 80, the front side of the stepped portion 80 remains disposed higher than the rear side of the stepped portion 80 for a predetermined time. In the case that the body 10 passes over an uneven portion having a height less than the height of a usual stepped portion 80, inclination of the body 10 is sensed for a time shorter than the predetermined time, and the inclination is removed in a short time. Accordingly, the body 10 may remain in the horizontal position. In the case of encountering such an uneven portion, the robot cleaner is allowed to travel according to the rotational force of the main wheel 40, and therefore the main wheel 40 is not lowered. Here, the predetermined time may be set to a proper time determined by a manufacturer of the robot cleaner.
[0100] Further, whether the auxiliary front wheel 20 has entered the stepped portion 80 may be determined by increase in load applied to the main wheels 40. When the auxiliary front wheel 20 is moved to the top of the stepped portion 80, the front side of the body 10 is higher than the rear side thereof, and therefore a smaller portion of the weight of the body 10 is supported by the auxiliary front wheel 20. On the other hand, a larger portion of the weight of the body 10 is supported by the main wheels 40. In addition, as the auxiliary front wheel 20 is moved to the top of the stepped portion 80, greater rotational power needs to be transferred to the main wheels 40 than when on a level surface to maintain the same traveling speed as the speed at which the body 10 travels on the level surface. Accordingly, by combining various types of information, whether the auxiliary front wheel 20 has entered the stepped portion 80 may be determined.」
[当審仮訳:[0098] そして、制御部100は、センサ90から受信した情報に基づいて、補助前輪20が段差部80に進入したか否かを判定する(S10)。
[0099] 例えば、補助前輪20が段差部80に入り込んだか否かは、車体10の前方側が後方側よりも上方に位置する状態で所定時間傾斜が生じたか否かで判定してもよい。補助前輪20が段差部80の上側に移動すると、段差部80の前側が段差部80の後側よりも上方に所定時間配置される。本体10が通常の段差部80の高さよりも低い凹凸部を通過する場合には、所定時間よりも短い時間で本体10の傾きを検知し、短時間で傾きが除去される。したがって、本体10は水平位置に留まることができる。このような凹凸部に遭遇した場合、ロボット掃除機は主輪40の回転力に従って走行することができるので、主輪40は下降しない。ここで、所定時間は、ロボット掃除機の製造者によって定められた適切な時間に設定されてもよい。
[0100] また、補助前輪20が段差部80に入り込んだか否かは、主輪40にかかる荷重の増加によって判定してもよい。補助前輪20が段差部80の上部に移動すると、車体10の前側が後側よりも高くなるため、車体10の重量のうち補助前輪20によって支持される部分が少なくなる。一方、車体10の重量の大部分は、主輪40によって支持される。また、補助前輪20が段差部80の上部に移動することにより、車体10が水平面を走行する速度と同一の走行速度を維持するためには、水平面を走行する場合よりも大きな回転力を主輪40に伝達する必要がある。したがって、種々の情報を組み合わせることにより、段差部80に補助前輪20が進入したか否かを判定することができる。]

(キ)「[0102] When it is determined that the auxiliary front wheel 20 has entered the stepped portion 80, the main wheel is lowered as exemplarily shown in FIG. 9 (S20).
[0103]?At this time, the driving motor 60 is driven to lower the main wheel 40. Rotation of the driving motor 60 is transferred to the worm gear 62, and thereby the worm gear 62, engaged with the worm wheel gear 64a, rotates.
[0104] Since the worm wheel gear 64a rotates together with the pinion gear 64b, the pinion 64 may move the rack 66 backward.
[0105] Since the rack 66 is moved backward from the original position thereof, the elastic member 70 is extended. By tension of the elastic member 70, which resists the force extending the elastic member, the main wheel housing 42 may rotate about the rotation shaft 46, allowing the main wheels 40 to be lowered.
[0106] At this time, the main wheel 40 may be lowered until the body 10 is horizontally positioned. In the case that the main wheel 40 is lowered, the sensors 90 may allow the driving motor 60 to rotate until it is determined that the body 10 is no longer inclined, i.e., until the body 10 is level, and may stop rotation of the driving motor 60 when the body 10 is level.
[0107] As the main wheel 40 is lowered, the body 10 is raised with respect to the main wheel 40, and thereby the body 10 may become level.」
[当審仮訳:[0102] 補助前輪20が段差部80に進入したと判定された場合には、例えば図9に示すように、主輪を下降させる(S20)。
[0103] このとき、駆動モータ60を駆動して主輪40を下降させる。駆動モータ60の回転がウォームギア62に伝達されることにより、ウォームホイールギア64aに噛み合うウォームギア62が回転する。
[0104] ウォームホイールギア64aはピニオンギア64bと共に回転するので、ピニオン64はラック66を後方に移動させることができる。
[0105] ラック66が元の位置から後方に移動することにより、弾性部材70が伸長する。弾性部材70の張力が弾性部材を伸長させる力に抵抗することにより、主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転し、主輪40を下降させることができる。
[0106] このとき、本体10が水平に位置するまで主輪40を下降させてもよい。主輪40が下げられた場合、センサ90は、本体10がもはや傾斜していないと判定されるまで、すなわち、本体10が水平になるまで駆動モータ60を回転させることができ、本体10が水平になると駆動モータ30の回転を停止させることができる。
[0107] 主輪40が下降すると、本体10が主輪40に対して上昇し、本体10が水平になる。]

(ク)記載事項(イ)及び図1-4の図示内容によると、各主輪40は主輪ハウジング42内に回転可能に収容配置され、主輪ハウジング42は回転軸46を介して回転可能に駆動部ハウジング52に連結されて、駆動部ハウジング52は本体10の内部に固定されているから、各主輪40は、主輪40を収容配置しかつ本体10に対して回転軸46で回転可能な主輪ハウジング42を介して本体10に接続されているといえる。

(ケ)記載事項(イ)?(エ)及び図1-4の図示内容によると、主輪ハウジング42の第1フック44に弾性部材70の一端が結合され、前進又は後進が可能なラック66の第2フック68に弾性部材70の他端が結合されて、ラック66を前方に移動させると弾性部材70が相対的に短い距離だけ伸長されて主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転することにより主輪40が本体10に近接するように上昇し、ラック66を後方に移動させると弾性部材70が相対的に長い距離だけ伸長されて主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転することにより主輪40が下降するといえる。

(コ)記載事項(オ)?(キ)及び図1-4の図示内容によると、センサ90から受信した情報に基づいて、補助前輪20が段差部80に進入したことを判断すると、ラック66を後方に移動させることにより弾性部材70が伸長されて、弾性部材70の張力が弾性部材を伸長させる力に抵抗することにより、主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転して主輪40を下降させることが可能であるといえる。

(サ)記載事項(イ)?(エ)及び図1-4の図示内容によると、弾性部材70が、主輪ハウジング42の第1フック44に結合された一端と、駆動部ハウジング52に収容された状態で本体10に固定されたラック66の第2フック68に結合された他端とを有し、ラック66を前進又は後進させることにより弾性部材70の他端を移動させることで弾性部材70の両端の間の距離が調整可能であるといえる。

イ.引用発明
上記引用文献1の記載事項(ア)?(サ)及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ロボット掃除機であって、本体10と、左右の各主輪40とを有し、各主輪40は独立して駆動することができ、各主輪40は、主輪40を収容配置しかつ本体10に対して回転軸46で回転可能な主輪ハウジング42を介して本体10に接続されている、ロボット掃除機において、
主輪ハウジング42の第1フック44に弾性部材70の一端が結合され、前進又は後進が可能なラック66の第2フック68に弾性部材70の他端が結合されて、ラック66を前方に移動させると弾性部材70が相対的に短い距離だけ伸長されて主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転することにより主輪40が本体10に近接するように上昇し、ラック66を後方に移動させると弾性部材70が相対的に長い距離だけ伸長されて主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転することにより主輪40が下降し、
センサ90から受信した情報に基づいて、主輪40を補助する補助前輪20が段差部80に進入したことを判断すると、ラック66を後方に移動させることにより弾性部材70が伸長されて、弾性部材70の張力が弾性部材を伸長させる力に抵抗することにより、主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転して主輪40を下降させることが可能であり、
弾性部材70が、駆動部ハウジング52に収容された状態で本体10に固定されたラック66の第2フック68に結合された他端と、主輪ハウジング42の第1フック44に結合された一端とを有し、ラック66を前進又は後進させることにより弾性部材70の他端を移動させることで弾性部材70の両端の間の距離が調整可能である、
ロボット掃除機。」

(3)対比
以下、本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ロボット掃除機」は、本件補正発明の「移動装置(1)」に相当する。
引用発明の「本体10」は、本件補正発明の「シャーシ(2)」に相当する。
引用発明の「主輪40」は、本件補正発明の「車輪(3)」に相当する。すると、引用発明の「左右の各主輪40」は、本件補正発明の「複数の車輪(3)」に相当し、引用発明の「各主輪40は独立して駆動することができ」るという事項は、本件補正発明の「少なくとも1つの車輪(3)は駆動可能であ」るという事項に相当する。
引用発明の「主輪40を収容配置しかつ本体10に対して回転軸46で回転可能な主輪ハウジング42」という事項において、引用発明の「主輪ハウジング42」は、弾性部材70の一端に結合されることにより、主輪40の上昇時及び下降時に、主輪40に対して弾性部材70のバネ力を作用させており、サスペンション機能に寄与しているといえるから、本件補正発明の「サスペンション部品(5)」に相当する。また、引用発明の主輪ハウジング42が「主輪40を収容配置」するという事項は、本件補正発明のサスペンション部品(5)が「その車輪に連結され」るという事項に相当する。さらに、引用発明の主輪ハウジング42が「本体10に対して回転軸46で回転可能」であるという事項は、本件補正発明のサスペンション部品(5)が「シャーシ(2)に対して可動」であるという事項に相当する。すると、引用発明の「主輪40を収容配置しかつ本体10に対して回転軸46で回転可能な主輪ハウジング42」は、本件補正発明の「その車輪に連結されかつ前記シャーシ(2)に対して可動なサスペンション部品(5)」に相当する。
引用発明の「弾性部材70」は、本件補正発明の「バネ(7)」に相当する。
引用発明の「主輪ハウジング42の第1フック44に弾性部材70の一端が結合され、前進又は後進が可能なラック66の第2フック68に弾性部材70の他端が結合されて、ラック66を前方に移動させると弾性部材70が相対的に短い距離だけ伸長されて主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転することにより主輪40が本体10に近接するように上昇し、ラック66を後方に移動させると弾性部材70が相対的に長い距離だけ伸長されて主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転することにより主輪40が下降」するという事項において、主輪40を収容配置する主輪ハウジング42は弾性部材70の一端に結合されているから、主輪40はロボット掃除機がその上で走行可能である床上で弾性部材70の作用の下で支持されているといえる。また、主輪ハウジング42が回転軸46を中心に本体10に対して回転することにより、主輪40が本体10に対して上昇又は下降することができるから、主輪40は主輪ハウジング42の補助により本体10に対して上昇又は下降が可能であるといえる。そして、引用発明の主輪40の「上昇」及び「下降」は、それぞれ本件補正発明の車輪(3)の「後退」及び「突出」に相当するから、引用発明の「主輪ハウジング42の第1フック44に弾性部材70の一端が結合され、前進又は後進が可能なラック66の第2フック68に弾性部材70の他端が結合されて、ラック66を前方に移動させると弾性部材70が相対的に短い距離だけ伸長されて主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転することにより主輪40が本体10に近接するように上昇し、ラック66を後方に移動させると弾性部材70が相対的に長い距離だけ伸長されて主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転することにより主輪40が下降」するという事項は、本件補正発明の「前記車輪(3)は、前記移動装置(1)がその上で走行可能である床(6)上で、バネ力のかかるバネ(7)の作用の下で支持するように設けられるとともに、前記サスペンション部品(5)の補助により前記シャーシ(2)に対して後退又は突出が可能で」あるという事項に相当する。
引用発明の「センサ90から受信した情報に基づいて、主輪40を補助する補助前輪20が段差部80に進入したことを判断すると、ラック66を後方に移動させることにより弾性部材70が伸長されて、弾性部材70の張力が弾性部材を伸長させる力に抵抗することにより、主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転して主輪40を下降させることが可能であ」るという事項において、引用発明の「センサ90から受信した情報」は、本件補正発明の「センサ(8)の検知信号」に相当する。引用発明の「ラック66を後方に移動させることにより弾性部材70が伸長されて、弾性部材70の張力が弾性部材を伸長させる力に抵抗することにより、主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転して主輪40を下降させることが可能であ」るという事項は、床面の凹凸等の要因により主輪40の上昇又は下降が生じて弾性部材70の張力が増減したとしても、ラック66を後方に移動させることにより弾性部材70の張力を増大させつつ主輪40を下降させることができるということであるから、本件補正発明の「前記バネ力は、前記車輪(3)の後退又は突出により生じる該バネ力の増大又は減少とは無関係に変更可能であり、前記車輪(3)の突出が大きくなると共に増大するように変更可能であ」るという事項に相当する。すると、引用発明の「センサ90から受信した情報に基づいて、主輪40を補助する補助前輪20が段差部80に進入したことを判断すると、ラック66を後方に移動させることにより弾性部材70が伸長されて、弾性部材70の張力が弾性部材を伸長させる力に抵抗することにより、主輪ハウジング42が回転軸46を中心に回転して主輪40を下降させることが可能であ」るという事項と、本件補正発明の「センサ(8)の検知信号に応じて前記床(6)との接触圧力を増大させるために、前記バネ力は、前記車輪(3)の後退又は突出により生じる該バネ力の増大又は減少とは無関係に変更可能であり、前記車輪(3)の突出が大きくなると共に増大するように変更可能であり、かつ、前記バネ力は、前記移動装置(1)の傾斜量とは無関係に変更可能であ」るという事項とは、「センサの検知信号に応じて、前記バネ力は、前記車輪の後退又は突出により生じる該バネ力の増大又は減少とは無関係に変更可能であり、前記車輪の突出が大きくなると共に増大するように変更可能であ」るという点において共通する。
引用発明の弾性部材70の「他端」は、駆動部ハウジング52に収容された状態で本体10に固定されたラック66の第2フック68に結合されているから、本件補正発明の「シャーシ側の接続点(10)」に相当する。また、引用発明の弾性部材70の「一端」は、主輪40を収容配置する主輪ハウジング42の第1フック44に結合されるから、本件補正発明の「車輪側の接続点(11)」に相当する。すると、引用発明の「弾性部材70が、駆動部ハウジング52に収容された状態で本体10に固定されたラック66の第2フック68に結合された他端と、主輪ハウジング42の第1フック44に結合された一端とを有し、ラック66を前進又は後進させることにより弾性部材70の一端を移動させることで弾性部材70の両端の間の距離が調整可能である」という事項は、本件補正発明の「前記バネ(7)が、シャーシ側の接続点(10)と車輪側の接続点(11)を有し、前記バネ力の変更のために前記接続点(10、11)間の距離(12)が調整可能である」という事項に相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明とは、
「移動装置であって、シャーシと複数の車輪とを有し、少なくとも1つの車輪は駆動可能であり、駆動可能な前記車輪は、その車輪に連結されかつ前記シャーシに対して可動なサスペンション部品を介して前記シャーシと接続されている、前記移動装置において、
前記車輪は、前記移動装置がその上で走行可能である床上で、バネ力のかかるバネの作用の下で支持するように設けられるとともに、前記サスペンション部品の補助により前記シャーシに対して後退又は突出が可能であり、
センサの検知信号に応じて、前記バネ力は、前記車輪の後退又は突出により生じる該バネ力の増大又は減少とは無関係に変更可能であり、前記車輪の突出が大きくなると共に増大するように変更可能であり、
前記バネが、シャーシ側の接続点と車輪側の接続点を有し、前記バネ力の変更のために前記接続点間の距離が調整可能である、
移動装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
バネ力を変更可能とすることについて、本件補正発明は、「床との接触圧力を増大させるため」とされているのに対し、引用発明は、補助前輪20が段差部80に進入したことを判断すると、弾性部材70が伸長され、主輪70を下降させることが可能になるものの、床との接触圧力を増大させるためとはされていない点。

[相違点2]
本件補正発明は、バネ力が「移動装置(1)の傾斜量とは無関係に変更可能であ」るのに対し、引用発明は、ロボット掃除機の傾斜量と無関係に弾性部材70の張力が変更可能であるのか明らかでない点。

(4)判断
ア.相違点について
以下、上記相違点について検討する。
[相違点1]について
本件補正発明と引用発明とは、引用発明が「床との接触圧力を増大させるため」に弾性部材70を伸長するものなのか明らかでない点で一応相違しているが、本件補正発明の「床との接触圧力を増大させるため」にバネ力を変更可能とするという発明特定事項は、バネ力を変更可能とすることの目的を特定するものであり、本件補正発明の『移動装置』の構造や機能を何ら特定するものではないから、上記相違点1は実質的な相違点であるとはいえない。
仮に、本件補正発明の「床との接触圧力を増大させるために」という事項が、『移動装置』の構造や機能を特定するものであるとしても、引用発明は、主輪40を下降させてロボット掃除機が段差部80を乗り越えることを可能にするために、補助前輪20が段差部80に進入したことを判断すると弾性部材70を伸長させて、その張力を増大させるものである。すなわち、引用発明において、補助前輪20のみが段差部に乗り上げた状態で、駆動輪である主輪40の床に対する接触圧力が小さい場合、ロボット掃除機を前進させることが困難になる(例えば、主輪40が床に接触しない場合は主輪40が空転してしまい、ロボット掃除機を前進させることができない。)から、弾性部材70の張力を増大させることにより、主輪40の床に対する接触圧力を増大させていることは、当業者であれば理解できることである。そうすると、引用発明において、「主輪40を補助する補助前輪20が段差部80に進入したことを判断すると、・・・弾性部材70が伸長されて、・・・主輪40を下降させる」ことは、結果として、主輪40の床に対する接触圧力を増大させており、この点からも上記相違点1は実質的な相違点であるとはいえない。そうでないとしても、上記した当業者が理解できる事項を考慮すれば、引用発明において、「主輪40を補助する補助前輪20が段差部80に進入したことを判断」し、「主輪40を下降させる」際、主輪40の床に対する接触圧力を増大させることは、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]について
引用発明は、ラック66を後方に移動させることにより弾性部材70を伸長させ、弾性部材70の張力が弾性部材70を伸長させる力に抵抗することにより、主輪ハウジング42を回転させて主輪40を下降させるものである。これによれば、引用発明のものも、ロボット掃除機の傾斜の有無に関係なく、ラック66の移動によって弾性部材70の張力を変更することができるといえる。そうすると、引用発明もロボット掃除機の傾斜量と無関係に弾性部材70の張力が変更可能であるといえるから、上記相違点2は形式的な相違点であって、実質的な相違点であるとはいえない。
なお、上記相違点2についてさらに検討すると、引用発明のセンサ90は、傾斜センサの他に、「主輪40に加えられる荷重の変化を感知するセンサ」や「主輪40に加えられる回転力の変化を感知するセンサ」を含み(段落[0088])、主輪40にかかる荷重の増加や主輪40に伝達される大きな回転力によって、補助前輪20が段差部80に進入したことを判定するものである(段落[0100])。そうすると、傾斜センサを使わずに(傾斜量を用いずに)バネ力を変更可能にするという意味においても、本件補正発明と引用発明とは実質的に相違するものではない。

イ.請求人の主張について

(ア)審判請求人は、令和2年3月26日に提出された審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由 (3-d)本願発明1と引用発明との対比」において、「引用文献1[0088]には、センサ90として、障害物検知センサ、傾きセンサ、主輪荷重変動センサ、主輪回転力センサの4種が記載されていますが、障害物検知センサを除いていずれも段差部における移動装置の傾きを検知するセンサであり、その検知信号に応じてコントローラがバネ力の変更による主輪40の突出/後退制御を行います([0098]、[0099]、[0100]、claim 9,10,11,12,14,16も参照)。」、「そして引用発明1では、傾きセンサ90により移動装置が傾いたことを検知したときにのみ、それに応じてバネ力の変更による主輪の突出/後退制御が行われます。したがって、引用発明1では、移動装置が水平ではなくなったときすなわち傾いたときにのみバネ力の変更による主輪の突出/後退の制御が開始され、それは移動装置が水平になるまで行われ、水平になると制御が終了します。」、「引用発明1におけるバネ力は、移動装置の傾斜量のみに依存して変更されます。」と主張している(下線は、当審で付与した。)。
しかしながら、本件補正後の請求項1には、「センサ(8)の検知信号に応じて」との記載はあるものの、どのような種別のセンサを用いてどのような物理量を検知するのかが特定されておらず、傾きセンサで検知された移動装置の傾斜量を利用してバネ力を調整する点において、引用発明が本件補正発明とは異なるという請求人の上記主張は、本件補正後の請求項1の記載に基づくものではない。
また、本願の発明の詳細な説明によれば、本件補正発明の「センサ(8)」はシャーシ(2)と床(6)との間の距離(9)を計測するものであり(段落【0029】)、計測した距離(9)に基づいてバネ力を制御するものであるが、当該距離(9)は移動装置(1)の傾きにも依存して変化するものであるから(段落【0036】、図8)、本件補正発明も引用発明と同様に、最終的には移動装置(1)の傾きにも依存してバネ力が変更されているといえる。
さらに、引用文献1には、補助前輪20が段差部80に進入したことを判断するためのセンサ90として傾きセンサが記載されているものの、主輪荷重変動センサや主輪回転力センサも例示されており、引用文献1には、傾きセンサの他にも、主輪荷重変動センサや主輪回転力センサによって検知された傾斜量以外の情報に基づいて、補助前輪20が段差部80に進入したことを判断し、弾性部材70の張力を変更する点が記載されている(段落[0100])。
仮に、請求人が主張するように、本件補正発明の「センサ(8)」が傾斜量以外の情報を検知するものであるとしても、原査定で引用されている実願平3-68011号(実開平6-17652号)のCD-ROM(段落【0004】、【0008】、【0012】、【0016】-【0021】及び図1-8)で示されるように、段差部の高さを検知するセンサは本願の優先権主張の日前において周知の技術であるといえるから、引用発明において、段差部80に進入したことを判断するためのセンサ90に代えて、段差部の高さを検知するセンサを用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)審判請求人は、同じく審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由 (3-d)本願発明1と引用発明との対比」において、「例えば、本願発明1では、本願明細書0010、0011に記載するように、移動装置が比較的深い毛足のカーペットを水平走行するとき、カーペットの毛によりシャーシが支持されることで実質的に重量が軽くなるためにバネ力が車輪を突出させて接触圧力も小さくなりますが、そのときにバネ力を増大させて接触圧力を大きくすることでカーペット上を円滑に進むことができます。」と主張しているが、本件補正後の請求項1には、接触圧力を検出してその値が小さくなったときにバネ力を増大させる等の記載がなく、請求人の上記主張は本件補正後の請求項1の記載に基づくものではない。

(ウ)審判請求人は、同じく審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由 (3-d)本願発明1と引用発明との対比」において、「本願発明1では、センサ(8)の検知信号に応じて(例えば障害物を前方に検知したとき)、床との接触圧力を増大させるために予め車輪(3)を突出させる(移動装置が傾斜状態となる)ことも可能です(本願明細書0015参照)。」と主張しているが、本件補正後の請求項1には、障害物を前方に検知したときに予め車輪を突出させる等の記載がなく、請求人の上記主張は本件補正後の請求項1の記載に基づくものではない。

すると、審判請求人のこれらの主張を採用することができない。

ウ.本件補正発明の作用効果について
本件補正発明の作用効果については、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、又は本件補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
令和2年3月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、この出願の各請求項に係る発明は、令和元年7月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみてその請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2[理由]1.(2)」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-2、5-11に係る発明は、この出願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、また、この出願の請求項1-11に係る発明は、この出願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明、及び引用文献3-4に記載されたような周知技術に基いて、その出願の優先権主張の日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:米国特許出願公開第2013/0340201号明細書
引用文献2:実願平3-68011号(実開平6-17652号)のCD-ROM
引用文献3:特開2006-155274号公報
引用文献4:特開平11-109045号公報

3.引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記「第2[理由]2.(2)」に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]2.」で検討した本件補正発明から、「センサ(8)の検知信号に応じて前記床(6)との接触圧力を増大させるために」という限定、及び「前記バネ(7)が、シャーシ側の接続点(10)と車輪側の接続点(11)を有し、前記バネ力の変更のために前記接続点(10、11)間の距離(12)が調整可能である」という限定を削除したものであり、その余の発明特定事項は本件補正発明と同じである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]2.(5)」に記載したとおり、引用文献1に記載された発明であり、又は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明であり、又は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含するこの出願は、この出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-11-30 
結審通知日 2020-12-01 
審決日 2020-12-16 
出願番号 特願2015-127179(P2015-127179)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A47L)
P 1 8・ 575- Z (A47L)
P 1 8・ 121- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長清 吉範永石 哲也  
特許庁審判長 柿崎 拓
特許庁審判官 佐々木 芳枝
神山 貴行
発明の名称 自動走行床掃除機である移動装置  
代理人 小島 高城郎  
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