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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B60K |
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管理番号 | 1373764 |
審判番号 | 不服2020-6675 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-05-15 |
確定日 | 2021-05-06 |
事件の表示 | 特願2018-112563「電気自動車直接駆動システム」拒絶査定不服審判事件〔令和1年12月19日出願公開、特開2019-214302〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年6月13日の出願であって、令和元年6月5日付け(発送日:同年6月11日)で拒絶理由が通知され、令和元年9月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年2月20日付け(発送日:同年2月25日)で拒絶査定がされ、これに対して令和2年5月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。 第2 令和2年5月15日の手続補正についての補正の却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 令和2年5月15日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 1 本件補正による補正事項 本件補正による補正事項は以下のとおりである。 (1)補正事項1 特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前(令和元年9月10日の手続補正書)の請求項1に、 「【請求項1】 車体を有し、該車体の両側の前後にそれぞれ対応するホイールを設け、且つ各ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステム及びホイールの車軸を有し、また、車体と各駆動モータの出力軸は、それぞれ対応するホイールの車軸と自在に接続され、各駆動モータに独立して相対するホイールの回転を連動させ、 電気自動車の車体内にコンピュータ制御モジュールを有し、該コンピュータ制御モジュール内に、少なくとも1つのステアリング制御モジュール、スロットル制御モジュール及びブレーキ制御モジュールを有し、且つコンピュータ制御モジュールは、各駆動モータと接続し、各駆動モータにコンピュータ制御モジュールとの間で制御及び出力信号を伝達させ、 前記コンピュータ制御モジュール及び各ホイールの間に、車輪速度検出器を設け、各ホイールの車輪速度をそれぞれ伝達させ、更に、ブレーキ検出器を設け、各ホイールのブレーキ状態をそれぞれ伝達する電気自動車直接駆動システム。」 とあったものを、 「【請求項1】 車体を有し、該車体の両側の前後にそれぞれ対応するホイールを設け、且つ各ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステム及びホイールの車軸を有し、また、車体と各駆動モータの出力軸は、それぞれ対応するホイールの車軸と自在に直接接続され、各駆動モータに独立して相対するホイールの回転を連動させ、前記各駆動モータは各サスペンションシステムの下部アームであり、 電気自動車の車体内にコンピュータ制御モジュールを有し、該コンピュータ制御モジュール内に、少なくとも1つのステアリング制御モジュール、スロットル制御モジュール及びブレーキ制御モジュールを有し、且つコンピュータ制御モジュールは、各駆動モータと接続し、各駆動モータにコンピュータ制御モジュールとの間で制御及び出力信号を伝達させ、 前記コンピュータ制御モジュール及び各ホイールの間に、車輪速度検出器を設け、各ホイールの車輪速度をそれぞれ伝達させ、更に、ブレーキ検出器を設け、各ホイールのブレーキ状態をそれぞれ伝達する電気自動車直接駆動システム。」 と補正する(下線は補正箇所を示すために請求人が付与した。以下同様。)。 (2)補正事項2 願書に最初に添付された明細書(以下「当初明細書」という。また、願書に最初に添付された図面を「当初図面」といい、両者を合わせて「当初明細書等」という。)の段落【0009】に、 「【0009】 そこで、本発明は、以下の技術手段によって、上記各目的及び効果を具体的に実現し、それは、車体を有し、該車体の両側の前後にそれぞれ対応するホイールを設け、且つ各ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステム及び車軸を有し、また、車体と各ホイールの出力軸は、それぞれ対応するホイール車軸と自在に接続され、各駆動モータに独立して相対するホイールの回転を連動させる。」 とあったものを 「【0009】 そこで、本発明は、以下の技術手段によって、上記各目的及び効果を具体的に実現し、それは、車体を有し、該車体の両側の前後にそれぞれ対応するホイールを設け、且つ各ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステム及び車軸を有し、また、車体と各ホイールの出力軸は、それぞれ対応するホイールの車軸と自在に直接接続され、各駆動モータに独立して相対するホイールの回転を連動させ、前記各駆動モータは各サスペンションシステムの下部アームである。」 と補正する。 (3)補正事項3 当初明細書の段落【0011】に、 「【0011】 これにより、前記技術手段の具体実現によって、本発明の電気自動車を応用してコンピュータ制御モジュールによって各駆動モータが独立して相対するホイールを連動するように制御でき、間接的な伝送がもたらす動力損失を減少させ、同時に電気エネルギーの消耗を低減し、電気自動車の持久力を高めることができ、各ホイールが独立して駆動されることができることによってその操作性を大幅に向上させ、且つ単一の駆動モータの故障発生時に、電気自動車が依然して駆動されることができ、走行の安全性を高め、電気自動車に「操作性、省エネルギー及び持久力」等の方面において、現有のものよりも効果を増進させ、付加価値を増加させ、その経済効果を高めることができる。」 とあったものを 「【0011】 これにより、前記技術手段の具体実現によって、本発明の電気自動車を応用してコンピュータ制御モジュールによって各駆動モータが独立して相対するホイールを連動するように制御でき、間接的な伝送がもたらす動力損失を減少させ、同時に電気エネルギーの消耗を低減し、電気自動車の持久力を高めることができ、各ホイールが独立して駆動されることができることによってその操作性を大幅に向上させ、且つ単一の駆動モータの故障発生時に、電気自動車が依然として駆動されることができ、走行の安全性を高め、電気自動車に「操作性、省エネルギー及び持久力」等の方面において、現有のものよりも効果を増進させ、付加価値を増加させ、その経済効果を高めることができる。 さらに、電気自動車直接駆動システムは、各駆動モータは各サスペンションシステムの下部アームである構成であるので、車体重心がより低くなり、電気自動車直接駆動システムがコンパクトになる。」 と補正する。 (4)補正事項4 当初明細書の段落【0015】に、 「【0015】 本発明の電気自動車直接駆動システムの主要構成は、図1、図2及び図3に示すとおりであり、該電気自動車は、典型の車体10を有し、且つ車体10は、4つのホイール11?14を有し、車体10の各ホイール11?14は、それぞれ独立したサスペンションシステム111?141及び独立した車軸112?142を有し、また車体10及び各ホイール11?14のサスペンションシステム111?141の間は、それぞれ駆動モータ31?34を軸回転可能に設け(図4、図5参照)、各駆動モータ31?34を各ホイール11?14の車体10に対する進行落差に合わせることができようにさせ、各駆動モータ31?34の出力軸311?341は、それぞれ相対するホイール11?14の車軸112?142に対して自在な接続を呈させ(図4参照)、各駆動モータ31?34を独立して相対するホイール11?14の回転を連動し、且つ進行間のホイール11?14及び車体10の落差を克服する。」 とあったものを、 「【0015】 本発明の電気自動車直接駆動システムの主要構成は、図1、図2及び図3に示すとおりであり、該電気自動車は、典型の車体10を有し、且つ車体10は、4つのホイール11?14を有し、車体10の各ホイール11?14は、それぞれ独立したサスペンションシステム111?141及び独立した車軸112?142を有し、また車体10及び各ホイール11?14のサスペンションシステム111?141の間は、それぞれ駆動モータ31?34を軸回転可能に設け(図4、図5参照)、各駆動モータ31?34を各ホイール11?14の車体10に対する進行落差に合わせることができるようにさせ、各駆動モータ31?34の出力軸311?341は、それぞれ相対するホイール11?14の車軸112?142に対して自在な接続を呈させ(図4参照)、各駆動モータ31?34を独立して相対するホイール11?14の回転を連動し、且つ進行間のホイール11?14及び車体10の落差を克服する。 すなわち、図2、図4、図5から明らかなように、前記各駆動モータ31?34は各サスペンションシステム111?141の下方でホィール11?14と車体10を接続して1対の平行移動する下部アームを構成している。」 と補正する。 2 補正の適否の判断 請求人は審判請求書の3.[3-2]において、 「相違点1は、上記の相違点に加えて、各駆動モータは各サスペンションシステムの下部アームである構成も引用文献1にはなく、付加された新たな相違点1’である。 そこで、まず相違点1’を検討すると、該構成は引用文献1には勿論のこと、引用文献2,3にも開示がない。該構成は、当初図面の2、4、5から明らかであるが、自明のことながら、効果としては、車体重心がより低くなり、サスペンションシステムがよりコンパクトになる。」 と述べている。 これによれば、上記補正事項1ないし4の補正の根拠は当初図面の図2、4及び5であると理解できる。 しかしながら、当初明細書には「下部アーム」という明示的な記載はない。当初図面の図2、4及び5から、サスペンションシステムが上側のアームのようなものと下側のアームのようなものとを備えていることが看取できるとしても、駆動モータとの具体的な関係は明確に示されておらず、「各駆動モータは各サスペンションシステムの下部アーム」であるとの事項が記載されているということはできないし、当初明細書等の記載から自明の事項であるということもできない。 また、補正事項3においては「電気自動車直接駆動システムは、各駆動モータは各サスペンションシステムの下部アームである構成であるので、車体重心がより低くなり、電気自動車直接駆動システムがコンパクトになる。」という、「各駆動モータは各サスペンションシステムの下部アームである構成」による、当初明細書等の記載からは必ずしも自明とはいえない効果に関する事項を追加している。 さらに、補正事項4においては「1対の平行移動する下部アームを構成している。」との記載を追加している。ここで「一対」の「下部アーム」が、当初図面の図2、4及び5におけるどの部材を指しているのか明らかでないか、一つのサスペンションシステム(例えば、サスペンションシステム111)において、「下部アーム」が「一対」あるとすると、「各駆動モータは各サスペンションシステムの下部アームである」から、駆動モータも一対、すなわち、各サスペンションシステムについて2個あることになり、そのような事項は、当初明細書等には記載されていない。 そうすると、上記補正事項1ないし4は、当初明細書等に記載されておらず、当初明細書等の記載から自明な事項であるということもできないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえないので、本件補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものではない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 4 補正の適否についての予備的な検討 仮に、本件補正が、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものといえるとした場合について予備的に検討する。 上記補正事項1は、本件補正前の請求項1に記載される発明において「前記各駆動モータは各サスペンションシステムの下部アームであり、」との限定を付したものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。 (1)特許法第36条第6項2号(明確性)についての検討 本件補正後の請求項1の「各駆動モータは各サスペンションシステムの下部アームであり」との記載は明確ではない。 モータとアームは概念が異なるものであるから、単に「各駆動モータは各サスペンションシステムの下部アームであり」との記載では、「駆動モータ」と「下部アーム」の具体的な関係(例えば、駆動モータがアーム状であるいう意味なのか、駆動モータと下部アームが一体になっているという意味なのか、駆動モータが下部アームに取り付けられているという意味なのか等)が理解できない。 したがって、本件補正発明は明確でないから、特許法第36条第6項2号の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 (2)特許法第29条第2項(進歩性)についての検討 ア 引用文献、引用発明 (ア)引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2017-77750号公報)には、「車両制御装置」に関して、図面を参照して以下の記載がある(下線は当審が付与した。以下同様。)。 a 「【0013】 [第1実施形態] 車両制御装置は、インホイールモータ方式の車両に搭載されるものである。この車両1は、図1に示すように、車輪11,12,13,14と、4つのインホイールモータ(制駆動力発生機構)20と、モータドライバ21と、4つのブレーキ機構30と、ブレーキアクチュエータ31と、サスペンション機構40と、バッテリ50と、操作状態検出装置61と、車両状態検出装置62と、ECU(Electronic Control Unit:制御手段)70と、を備えている。ここで、車両制御装置は、少なくともインホイールモータ20と、ブレーキ機構30と、ECU70とを含んで構成される。 【0014】 車輪11,12,13,14は、図1に示すように、それぞれ独立したサスペンション機構40を介して車体10に懸架されている。また、車輪11,12,13,14のホイール内部には、インホイールモータ20がそれぞれ設けられている。」 b 「【0015】 インホイールモータ20は、車輪11,12,13,14のそれぞれに設けられ、車輪11,12,13,14に対して他と独立して駆動力または制動力(以下、回生制動力という)を発生させる。インホイールモータ20は、例えばブラシレスモータ等により構成され、モータドライバ21を介して蓄電装置であるバッテリ50に接続されている。 【0016】 モータドライバ21は、例えばインバータであり、バッテリ50から供給される直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を各インホイールモータ20に供給する。これにより各インホイールモータ20が駆動制御され、車輪11,12,13,14に対して駆動力を付与する。このように、インホイールモータ20に電力を供給して駆動トルクを発生させる動作のことを力行という。 【0017】 また、インホイールモータ20は発電機としても機能し、車輪11,12,13,14の回転エネルギーにより発電した電力を、モータドライバ21を介してバッテリ50に回生することができる。そしてこのようなインホイールモータ20の発電により発生する制動トルクは、車輪11,12,13,14に対して回生制動力を付与する。」 c 「【0018】 ブレーキ機構(摩擦制動機構)30は、車輪11,12,13,14のそれぞれに設けられ、車輪11,12,13,14に対して摩擦制動力を付与することができるように構成されている。ブレーキ機構30は、例えばディスクブレーキ等により構成され、ブレーキアクチュエータ31に接続されている。ブレーキアクチュエータ31は、図示しないマスタシリンダから圧送される油圧により、ブレーキ機構30に摩擦制動力を発生させる。」 d 「【0019】 サスペンション機構40としては、例えばショックアブソーバを内蔵したストラット、コイルスプリングおよびサスペンションアーム等から構成されるストラット型サスペンションや、コイルスプリング、ショックアブソーバおよび上下のサスペンションアーム等から構成されるウィッシュボーン型サスペンション等を用いることができる。」 e 「【0020】 操作状態検出装置61は、例えば図示しない操舵ハンドルに対する運転者の操作量(操舵角)を検出する操舵角センサ、図示しないアクセルペダルに対する運転者による操作量(踏み込み量、角度、圧力等)を検出するアクセルセンサ、図示しないエンジンに設けられてアクセルペダルの操作に応じて作動するスロットルの開度を検出するスロットルセンサ、図示しないブレーキペダルに対する運転者による操作量(踏み込み量、角度、圧力等)を検出するブレーキセンサ等から構成される。 【0021】 車両状態検出装置62は、例えば車体10(バネ上)の上下方向における上下加速度を検出するバネ上上下加速度センサや、車体10の左右方向における横加速度を検出する横加速度センサ、車体10の車速を検出する車速センサ、各車輪11,12,13,14の回転速度(車輪速度)を検出する車輪速度センサ、車体10に発生したヨーレートを検出するヨーレートセンサ、車体10に発生したピッチレートを検出するピッチレートセンサ、車体10に発生したロールレートを検出するロールレートセンサ等から構成される。」 f 「【0022】 ECU70は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものであり、各種プログラムを実行するものである。ECU70には、図1に示すように、操作状態検出装置61および車両状態検出装置62を構成する各種センサからの信号、およびモータドライバ21からの信号が入力される。これにより、ECU70は車両1の走行状態および車両運動状態を把握して制御することが可能となる。また、ECU70は、車両1の走行状態に基づいて、車輪11,12,13,14のロックによるスリップ状態を制御するABS制御を実施可能である。 【0023】 ECU70は、図2に示すように、要求制動力演算部(要求制動力演算手段)71と、制動力割合演算部(制動力割合演算手段)72と、車両運動制御力演算部(車両運動制御力演算手段)73と、制動力割合変更部(制動力割合変更手段)74と、を備えている。なお、これら構成の説明については後記する。」 g 「【0024】 (回生摩擦協調ブレーキ制御の詳細) 以下、車両1において実施される回生摩擦協調ブレーキ制御について、図3を参照しながら説明する。例えば運転者がブレーキペダルを踏んで制動操作を行った場合、操作状態検出装置61によってその操作量が検出され、ECU70によって、当該操作量に基づいて運転者が要求する要求制動力が車輪11,12,13,14に対してそれぞれ演算される(同図の破線矢印参照)。 【0025】 その後、ECU70は、車輪11,12,13,14における要求制動力を、インホイールモータ20による回生制動力(図3のドット矢印参照)と、ブレーキ機構30による摩擦制動力(同図の黒矢印参照)とに配分する。なお、同図では、説明の便宜上、車輪11,12,13,14における回生制動力と摩擦制動力との割合を全て同じ割合で示しているが、車輪11,12,13,14における回生制動力と摩擦制動力との割合は、実際には例えば要求制動力の大きさ、前後加速度等に基づいて演算される。 【0026】 続いて、ECU70は、モータドライバ21を介してインホイールモータ20を制御し、前記配分された割合で回生制動力を発生させる。同時に、ECU70は、ブレーキアクチュエータ31を介してブレーキ機構30を制御し、前記配分された割合で摩擦制動力を発生させる。このように、回生摩擦協調ブレーキ制御では、インホイールモータ20による回生制動力と、ブレーキ機構30による摩擦制動力とを協調制御して運転者が要求する要求制動力を発生させる。」 h 「【0027】 (車両運動制御の詳細) 次に、車両1において実施される車両運動制御について、図3を参照しながら説明する。以下では、車両1が左方向に旋回を行う場合において、車体10に作用するヨー運動およびロール運動を制御する場合を説明する。 【0028】 車両運動制御は、各車輪11,12,13,14に設けられたインホイールモータ20を利用して行われる。すなわち、車両1の制動中にヨー運動およびロール運動等の車両運動が発生した場合、ECU70によって各車輪11,12,13,14のインホイールモータ20をそれぞれ独立に制御し、各車輪11,12,13,14に対して駆動力または制動力を発生させることにより車両運動を制御する。 【0029】 例えば車両1が図3における左方向に旋回を行う場合、ECU70は、旋回内輪側の車輪11,13に設けられたインホイールモータ20に対して回生制御力(同図の下向きの斜線矢印参照)を付与する。これにより、旋回内輪側の車輪11,13に回生制動力が発生する。なお、前記した「回生制御力」とは、インホイールモータ20を回生させるための制御力(制御指令値)のことを示しており、この回生制御力をインホイールモータ20に付与することにより、対応する車輪に、当該回生制御力に対応した回生制動力が発生する。また、この回生制御力と後記する力行制御力とを併せたものを、ここでは「車両運動制御力」と定義する。」 上記記載事項及び図面(特に、図1及び2を参照。)の図示内容から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 〔引用発明〕 「車体10を有し、該車体10の両側の前後にそれぞれ対応する車輪11,12,13,14を設け、且つ各車輪11,12,13,14は、それぞれ独立したサスペンション機構40を介して車体10に懸架され、また、車輪11,12,13,14のホイール内部には、インホイールモータ20がそれぞれ設けられ、各インホイールモータ20は、車輪11,12,13,14に対して他と独立して駆動力または制動力を発生させ、 車両1の車体10内にECU70を有し、且つECU70はモータドライバ21を介してインホイールモータ20を制御する車両制御装置。」 (イ)引用文献3 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2008-207687号公報)には、「車両用ブレーキ制御装置」に関して、図面を参照して次の記載がある。 a 「【0036】 また、ブレーキECU70は、ブレーキ制御システム1の制御系を司る本発明の車両用ブレーキ制御装置に相当するもので、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種演算などの処理を実行する。 【0037】 具体的には、ブレーキECU70は、各車輪FL?RRに対して備えられた車輪速度センサ71?74、M/C13に発生するM/C圧に対応するブレーキ液圧を検出するM/C圧センサ75や各W/C14、15、34、35に発生するW/C圧に対応するブレーキ液圧を検出するW/C圧センサ76?79の検出信号、および、ブレーキペダル11の操作状態を示すストップスイッチ80のオンオフ信号を受け取り、これら各信号に基づいて制御圧を制御する。すなわち、ブレーキECU70が各制御弁16?18、21、22、36?38、41、42やポンプ19、39を駆動するためのモータ60を制御する。これにより、各W/C14、15、34、35に発生させられるW/C圧を制御する。」 上記記載事項及び図面(特に、図1を参照。)の図示内容から、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献3記載事項〕 「車両において、各車輪FL?RRに車輪速度センサ71?74及びブレーキ液圧を検出するW/C圧センサ76?79を設け、これらの検出信号を、マイクロコンピュータによって構成されるブレーキECU70にそれぞれ伝達すること。」 イ 対比及び判断 本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「車体10」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件補正発明における「車体」に相当し、以下同様に、「車輪11,12,13,14」は「ホイール」に、「サスペンション機構40」は「サスペンションシステム」に、「インホイールモータ20」は「駆動モータ」に、「各インホイールモータ20は、車輪11,12,13,14に対して他と独立して駆動力または制動力を発生させ」は「各駆動モータに独立して相対するホイールの回転を連動させ」に、「車両1」は「電気自動車」に、「ECU70」は「コンピュータ制御モジュール」に、「ECU70はモータドライバ21を介してインホイールモータ20を制御し」は「コンピュータ制御モジュールは、各駆動モータと接続し、各駆動モータにコンピュータ制御モジュールとの間で制御及び出力信号を伝達させ」に、「車両制御装置」は「電気自動車直接駆動システム」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明における「各車輪11,12,13,14は、それぞれ独立したサスペンション機構40を介して車体10に懸架され、また、車輪11,12,13,14のホイール内部には、インホイールモータ20がそれぞれ設けられ」と、本件補正発明における「ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステム及びホイールの車軸を有し、また、車体と各駆動モータの出力軸は、それぞれ対応するホイールの車軸と自在に接続され」とは、「各ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステムを有し、また、車体と各駆動モータは、それぞれ対応するホイールと接続され」という限りにおいて一致している。 そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 〔一致点〕 「車体を有し、該車体の両側の前後にそれぞれ対応するホイールを設け、且つ各ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステムを有し、また、車体と各駆動モータは、それぞれ対応するホイールと接続され、各駆動モータに独立して相対するホイールの回転を連動させ、 電気自動車の車体内にコンピュータ制御モジュールを有し、且つコンピュータ制御モジュールは、各駆動モータと接続し、各駆動モータにコンピュータ制御モジュールとの間で制御及び出力信号を伝達させる電気自動車直接駆動システム。」 〔相違点1〕 「各ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステムを有し、また、車体と各駆動モータは、それぞれ対応するホイールと接続され」に関して、本件補正発明においては、各ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステム及び「ホイールの車軸」を有し、また、車体と「各駆動モータの出力軸」は、それぞれ対応する「ホイールの車軸と自在に」接続されるものであり、「前記各駆動モータは各サスペンションシステムの下部アーム」であるのに対して、引用発明においては、各車輪11,12,13,14は、それぞれ独立したサスペンション機構40を介して車体10に懸架され、また、車輪11,12,13,14のホイール内部には、インホイールモータ20がそれぞれ設けられるものである点。 〔相違点2〕 本件補正発明においては「コンピュータ制御モジュール内に、少なくとも1つのステアリング制御モジュール、スロットル制御モジュール及びブレーキ制御モジュールを有し」ているのに対して、引用発明においては、かかる事項を備えていない点。 〔相違点3〕 本件補正発明においては「コンピュータ制御モジュール及び各ホイールの間に、車輪速度検出器を設け、各ホイールの車輪速度をそれぞれ伝達させ、更に、ブレーキ検出器を設け、各ホイールのブレーキ状態をそれぞれ伝達する」ものであるのに対して、引用発明においては、かかる事項を備えていない点。 上記相違点1について検討する。 各ホイールがそれぞれ駆動モータを有する車両において、各ホイールが、それぞれ車体に接続するサスペンションシステム及びホイールの車軸を有し、車体と各駆動モータの出力軸は、それぞれ対応するホイールの車軸と自在に接続され、各駆動モータが各サスペンションシステムの下部アームであるように構成すること、本願の出願前に周知の技術である(以下「周知技術1」という。例えば、特開2011-88488号公報の特に、段落【0023】、【0026】、【0045】及び【0046】並びに図1、2及び6、特開2004-322802号公報の特に、段落【0006】及び【0007】並びに図1及び2、中国特許出願公開第102785566号明細書の段落[0013]及び図1を参照。)。 また、引用発明におけるインホイールモータ20と各車輪との関係を、周知技術1のようなものに置換することを妨げる特段の事情も見出せない。 そうすると、引用発明において周知技術1を参酌し、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 上記相違点2について検討する。 引用文献1の上記記載事項b、e及びfから、車輪11,12,13,14に対する駆動力の制御、すなわちスロットル制御が行われることが理解でき、上記記載事項e、f及びgからブレーキ制御が行われることが理解できる。 そして、上記記載事項hから旋回を行う場合にヨー運動制御が行われることが理解できる。このことは、ステアリング制御を示唆するものである。 そうすると、引用発明においてコンピュータ制御モジュール(ECU70)内に、少なくとも1つのステアリング制御モジュール、スロットル制御モジュール及びブレーキ制御モジュールを有する構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 したがって、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項は、引用発明から、当業者が容易に想到できたことである。 上記相違点3について検討する。 車両において、各ホイールに、車輪速度検出器及びブレーキ検出器を設け、各ホイールの車輪速度及びブレーキ状態をコンピュータにそれぞれ伝達することは、例えば、引用文献3記載事項が示しているように、本願の出願前に周知の技術である(以下「周知技術2」という。)。 また、引用発明において、周知技術2を適用することを妨げる特段の事情も見出せない。 そうすると、引用発明において周知技術2を適用して、上記相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、全体としてみても、本件補正発明が奏する効果は、引用発明並びに周知技術1及び2から、当業者が予測できる範囲内のものである。 したがって、本件補正発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (3)予備的な検討のむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 〔理由〕1 (1)」において本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定における拒絶の理由の概要は次のとおりである。 (進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1に対して:引用文献等1ないし3 <引用文献等一覧> 1.特開2017-77750号公報 2.特開平6-46508号公報 3.特開2008-207687号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献、引用発明 (1)引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2017-77750号公報)には、上記「第2 〔理由〕4 (2)ア(ア)」で述べたとおり、次の引用発明が記載されている。 〔引用発明〕 「車体10を有し、該車体10の両側の前後にそれぞれ対応する車輪11,12,13,14を設け、且つ各車輪11,12,13,14は、それぞれ独立したサスペンション機構40を介して車体10に懸架され、また、車輪11,12,13,14のホイール内部には、インホイールモータ20がそれぞれ設けられ、各インホイールモータ20は、車輪11,12,13,14に対して他と独立して駆動力または制動力を発生させ、 車両1の車体10内にECU70を有し、且つECU70はモータドライバ21を介してインホイールモータ20を制御する車両制御装置。」 (2)引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平6-46508号公報)には、「電気自動車の駆動システム」に関して、図面を参照して以下の記載がある。 ア 「【0010】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、第1の発明は、電池を電源としてインバータを介し車輪駆動用交流電動機を駆動する電気自動車の駆動システムにおいて、前記交流電動機を構成する2台の交流電動機の各出力軸を左右駆動車輪に各々連結し、前記2台の交流電動機を各々駆動する2台のインバータをこれらの直流側で直列接続し、これらの直列接続された直流入力端子両端を可逆形直流電力変換器を介して前記電池に接続すると共に、前記電力変換器は2台のインバータの合成入力電圧または電流を制御し、前記インバータを方形波出力インバータとして周波数制御のみを行うものである。 【0011】第2の発明は、上記第1の発明にかかる駆動システムを2組備え、各駆動システムにより電気自動車の前輪及び後輪を各々駆動するものである。なお、この場合、一方の駆動システムの交流電動機を誘導電動機とし、他方の駆動システムの交流電動機を永久磁石形同期電動機とすると共に、誘導電動機駆動用電池を高出力形電池とし、同期電動機駆動用電池を高エネルギー形電池とすることが望ましい。」 イ 「【0015】50は車輪駆動用交流電動機であり、交流電動機501,502により構成される。交流電動機501は、回転子出力軸513と図示されていない継手とを介して車輪81を直接駆動し、同様に交流電動機502は、回転子出力軸523と図示されていない継手とを介して車輪82を直接駆動するように構成されている。なお、出力軸513,523は互いに別個の軸である。交流電動機501はインバータ41により、また、交流電動機502はインバータ42によりそれぞれ駆動される。」 ウ 「【0031】図6は、第2の発明の一実施例を示すものである。この実施例は、図1に示した駆動システムを2組設け、一方の駆動システムにより前輪を駆動し、他方の駆動システムにより後輪を駆動するようにしたものである。図6において、11,12は図1の電池1に対応する電池、21,22は同じく主スイッチ2に対応する主スイッチ、31,32は同じくヒューズ3に対応する保護ヒューズ、91,92は同じくチョッパ9に対応するチョッパ、43,44及び45,46は同じくインバータ41,42に各々対応するインバータ、51,52は同じく車輪駆動用交流電動機50に対応する交流電動機、503,504及び505,506は同じく交流電動機501,502に各々対応する交流電動機、811,812は前または後の車輪、821,822は他方の車輪を示す。」 上記記載事項及び図面(特に、図1、2及び6を参照。)の図示内容から、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献2記載事項〕 「各駆動車輪にそれぞれ交流電動機の出力軸が連結されている電気自動車において、交流電動機501、502が、回転子出力軸513、523と継手とを介して車輪81、82を直接駆動するように構成すること。」 (3)引用文献3 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2008-207687号公報)には、上記「第2 〔理由〕4 (2)ア(イ)」で述べたとおり、次の引用文献3記載事項が記載されている。 〔引用文献3記載事項〕 「車両において、各車輪FL?RRに車輪速度センサ71?74及びブレーキ液圧を検出するW/C圧センサ76?79を設け、これらの検出信号を、マイクロコンピュータによって構成されるブレーキECU70にそれぞれ伝達すること。」 4 対比及び判断 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「車体10」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明における「車体」に相当し、以下同様に、「車輪11,12,13,14」は「ホイール」に、「サスペンション機構40」は「サスペンションシステム」に、「インホイールモータ20」は「駆動モータ」に、「各インホイールモータ20は、車輪11,12,13,14に対して他と独立して駆動力または制動力を発生させ」は「各駆動モータに独立して相対するホイールの回転を連動させ」に、「車両1」は「電気自動車」に、「ECU70」は「コンピュータ制御モジュール」に、「ECU70はモータドライバ21を介してインホイールモータ20を制御し」は「コンピュータ制御モジュールは、各駆動モータと接続し、各駆動モータにコンピュータ制御モジュールとの間で制御及び出力信号を伝達させ」に、「車両制御装置」は「電気自動車直接駆動システム」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明における「各車輪11,12,13,14は、それぞれ独立したサスペンション機構40を介して車体10に懸架され、また、車輪11,12,13,14のホイール内部には、インホイールモータ20がそれぞれ設けられ」と、本願発明における「ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステム及びホイールの車軸を有し、また、車体と各駆動モータの出力軸は、それぞれ対応するホイールの車軸と自在に接続され」とは、「各ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステムを有し、また、車体と各駆動モータは、それぞれ対応するホイールと接続され」という限りにおいて一致している。 そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 〔一致点〕 「車体を有し、該車体の両側の前後にそれぞれ対応するホイールを設け、且つ各ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステムを有し、また、車体と各駆動モータは、それぞれ対応するホイールと接続され、各駆動モータに独立して相対するホイールの回転を連動させ、 電気自動車の車体内にコンピュータ制御モジュールを有し、且つECU70はモータドライバ21を介してインホイールモータ20を制御しコンピュータ制御モジュールは、各駆動モータと接続し、各駆動モータにコンピュータ制御モジュールとの間で制御及び出力信号を伝達させる電気自動車直接駆動システム。」 〔相違点4〕 「各ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステムを有し、また、車体と各駆動モータは、それぞれ対応するホイールと接続され」に関して、本願発明1においては、ホイールは、それぞれ車体に接続するサスペンションシステム及び「ホイールの車軸」を有し、また、車体と各駆動モータの出力軸は、それぞれ対応する「ホイールの車軸と自在に」接続されるものであるのに対して、引用発明においては、各車輪11,12,13,14は、それぞれ独立したサスペンション機構40を介して車体10に懸架され、また、車輪11,12,13,14のホイール内部には、インホイールモータ20がそれぞれ設けられるものである点。 〔相違点5〕 本願発明においては「コンピュータ制御モジュール内に、少なくとも1つのステアリング制御モジュール、スロットル制御モジュール及びブレーキ制御モジュールを有し」ているのに対して、引用発明においては、かかる事項を備えていない点。 〔相違点6〕 本願発明においては「コンピュータ制御モジュール及び各ホイールの間に、車輪速度検出器を設け、各ホイールの車輪速度をそれぞれ伝達させ、更に、ブレーキ検出器を設け、各ホイールのブレーキ状態をそれぞれ伝達する」ものであるのに対して、引用発明においては、かかる事項を備えていない点。 上記相違点4について検討する。 引用文献2記載事項は上記のとおり「各駆動車輪にそれぞれ交流電動機の出力軸が連結されている電気自動車において、交流電動機501、502が、回転子出力軸513、523と継手とを介して車輪81、82を直接駆動するように構成すること。」というものである。 引用発明と引用文献2記載事項とは、各車輪がそれぞれ駆動モータを備えている車両という点で共通している。 また、引用発明におけるインホイールモータ20と各車輪との関係を、引用文献2記載事項のようなものに置換することを妨げる特段の事情も見出せない。 そうすると、引用発明において引用文献2記載事項を参酌して、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 上記相違点5について検討する。 上記相違点5は、上記相違点2と実質的に同じである。 したがって、上記相違点5に係る本願発明の発明特定事項は、上記「第2 〔理由〕4 (2) イ 」の相違点2についての検討において述べたとおり、引用発明から、当業者が容易になし得たものである。 上記相違点6について検討する。 上記相違点6は、上記相違点3と実質的に同じである。 したがって、上記相違点6に係る本願発明の発明特定事項は、上記「第2 〔理由〕4 (2) イ 」の相違点3についての検討において述べたとおり、引用発明に周知技術2を適用することにより、当業者が容易になし得たものである。 そして、全体として見ても、本願発明が奏する作用効果は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術2から、当業者が予測し得る範囲内のものである。 したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 まとめ したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、原査定は妥当であり、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-11-24 |
結審通知日 | 2020-12-01 |
審決日 | 2020-12-15 |
出願番号 | 特願2018-112563(P2018-112563) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B60K)
P 1 8・ 561- Z (B60K) P 1 8・ 121- Z (B60K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西井 香織、吉村 俊厚、大内 俊彦 |
特許庁審判長 |
渡邊 豊英 |
特許庁審判官 |
西中村 健一 鈴木 充 |
発明の名称 | 電気自動車直接駆動システム |
代理人 | 加治 信貴 |
代理人 | 根本 恵司 |