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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23P
管理番号 1373789
異議申立番号 異議2020-701021  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-25 
確定日 2021-04-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第6727566号発明「餃子の製造装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6727566号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6727566号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成30年3月26日に出願され、令和2年7月3日にその特許権の設定登録がされ、令和2年7月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について令和2年12月25日に特許異議申立人 トーセー工業株式会社(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれを「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
半練り状の材料を投入可能な投入部と、
該投入部に投入された半練り状の材料を圧縮して帯状に成形する帯状成形部と、
該帯状成形部で得られた帯状の材料を所定形状に型抜きして餃子の皮とし得る型抜き部と、
該型抜き部で得られた餃子の皮に餃子の具を載せるとともに、当該餃子の皮で前記餃子の具を包んで餃子を得る餃子成形部と、
前記型抜き部による型抜き後の残り材料を前記帯状成形部に搬入させる搬入部と、
を具備した餃子の製造装置であって、
前記帯状成形部は、一方の面側に形成され、前記投入部に投入された半練り状の材料にて形成された第1層と、他方の面側に形成され、前記搬入部により前記帯状成形部に搬入された残り材料にて形成された第2層とを有した帯状の材料を成形し得ることを特徴とする餃子の製造装置。
【請求項2】
前記餃子成形部は、前記第1層を餃子の皮の外側としつつ前記第2層を餃子の皮の内側として前記餃子の具を包んで餃子を得ることを特徴とする請求項1記載の餃子の製造装置。
【請求項3】
前記帯状成形部は、
所定間隔離間した一対のローラを有し、これらローラの間に半練り状の材料及び残り材料を通過させて圧縮することにより帯状に成形し得る圧縮手段と、
前記投入部に投入された半練り状の材料及び残り材料を押圧して前記圧縮手段に案内させ得る案内手段と、
を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の餃子の製造装置。
【請求項4】
前記案内手段は、前記残り材料を面で押圧して当該残り材料と共に半練り状の材料を前記圧縮手段に案内し得る板状部材を有することを特徴とする請求項3記載の餃子の製造装置。
【請求項5】
前記帯状成形部と型抜き部との間には、前記帯状の材料を所定寸法ずつ展伸させ得る複数の圧延手段が配設されたことを特徴とする請求項1?4の何れか1つに記載の餃子の製造装置。」

第3 特許異議申立ての概要
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証(以下、「甲1」ないし「甲4」という。)を提出し、概略次の特許異議の申立ての理由を主張している。

甲1:実願昭58-116944号(実開昭60-27681号)のマイクロフィルム
甲2:登録実用新案第3189262号公報
甲3:特開2002-85043号公報
甲4:実願昭61-117276号(実開昭63-23985号)のマイクロフィルム

<理由(特許法第29条第2項)>
本件特許発明1ないし5は、甲1ないし甲4に記載された発明に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

第4 当審の判断
[1]甲1ないし甲4の記載等
1.甲1
(1)甲1の記載等
甲1には、「麺帯圧延供給装置」に関して、以下の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

1a)「(1) 打抜き工程後の麺帯(1′)を打抜き装置(31)から搬送して圧延部(C)へ供給する麺帯復帰部(B)と、打抜き工程後の麺帯(1′)とロール巻等されたものから送り込まれた麺帯(1)を重合圧延する圧延部(C)をロール巻等された麺帯(1)を送り出す麺帯供給部(A)と打抜き装置(31)との間に介設したことを特徴とする麺帯圧延供給装置。」(第1ページ第5ないし11行)

1b)「本考案は打抜き工程後の麺帯を特に加工することなく復帰させ、打抜き前の麺帯と重合圧延して新しい麺帯として打抜き工程に供給する新規考案の麺帯圧延供給装置に関するものである。」(第2ページ第9ないし12行)

1c)「本考案装置全体は、ロール状に巻回された麺帯(1)を圧延工程に供給する麺帯供給部(A)と、餃子の皮等が打抜かれた後の麺帯(1′)を圧延工程に再度搬送する麺帯復帰部(B)と、麺帯(1)と麺帯(1′)を重合圧延して新しい麺帯(11′′)を作る圧延部(C)と、麺帯復帰部(B)、圧延部(C)等を載置する台車部(D)とから構成されている。
麺帯(1)を圧延工程に供給する麺帯供給部(A)は、麺帯復帰部(B)のフレーム(11)、(11)へ対設された受板(3)、(3)と、受板(3)、(3)上部の支柱(2)へ回動自在に軸支されたローラー(4)と、受板(3)、(3)後方に形成した軸受(5)、(5)、(6)、(6)および各軸受(5)、(5)、(6)、(6)へ揺動自在に付設された軸押え(7)、(7)とから構成されている。上の軸受(5)、(5)はロール状に巻回された麺帯(1)のロール軸(8)が軸承されている。
また、下の軸受(6)、(6)は予備の麺帯(1)がロール状に巻回されたロール軸(8′)を軸承している。
餃子の皮等が打抜かれた後の麺帯(1′)を圧延工程に再度搬送する麺帯復帰部(B)は、立上り(9a)部分が内側に稍傾斜したL形のベルトコンベア(9)と、L形のベルトコンベア(9)の立上り(9a)に対して若干の間隔を置いて平行に設置された受ベルトコンベア(10)およびベルトコンベア(9)と受ベルトコンベア(10)を回動自在に軸承する立上り部分が内側に稍傾斜したL形のフレーム(11)、(11)とからなっている。」(第3ページ第12行ないし第4ページ第18行)

1d)「ロ-ル巻状態から送り出された麺帯(1)と餃子の皮等が打抜かれた後の麺帯(1′)を重合圧延して新しい麺帯(1′′)を作る圧延部(C)は、上方が内側へ傾斜したフレーム(21)、(21)に圧延ローラー(22)、(23)が回転自在に軸承されたもので、駆動機構により圧延ローラー(22)、(23)が互に内向に回転し、麺帯(1)と麺帯(1′)を重合わせた状態で圧延して新しい麺帯(1′′)を作り、打抜き工程に送り出す。」(第6ページ第1行ないし第8行)

1e)「以上のような麺帯圧延供給装置で、麺帯(1′′)を作成し打抜き工程に供給するのには、先ず、ロール状に巻回された麺帯(1)のロール軸(8)を軸受(5)に軸承させ、軸押え(7)を掛け、その後で麺帯の始端をローラ(4)、(30)を介して圧延ローラ(22)、(23)の間から打抜き装置(31)まで導き、駆動機構のスイッチを入れて始動させる。装置が作動し始めると、圧延ローラー(22)、(23)から送り出された麺帯(1)は、打抜き装置(31)で所望形状の型に打抜かれ、その打抜かれた後の麺帯(1′)が麺帯復帰部(B)のベルトコンベア(9)に送られる。ベルトコンベア(9)に送られた、麺帯(l′)は、ベルトコンベア(9)で矢印(イ)方向に移動し、立上りコーナ-で受ベルトコンベア(10)とベルトコンベア(9)の立上り(9a)間に挾持された状態で上昇し、圧延ローラー(22)、(23)間に供給され、この圧延ローラー(22)、(23)で麺帯(1)と重合して圧延され、新しい麺帯(1′′)として打抜き装置に送られる。」(第7ページ第5行ないし第8ページ第3行)

1f)「以上のように本考案に係る麺帯圧延供給装置は、打抜き工程後の穴あき状態の麺帯(l′)を特に加工することなく打抜き前の麺帯(1)と重合圧延するので、従来のように再利用に手間をかけることなく自動的に再利用でき、その麺帯も打抜き前の麺帯(1)と重合圧延するので厚みにムラがなく、均一な厚さの麺帯(1′′)を打抜き工程に供給することができる。
尚、本考案は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、打抜き後の麺帯(1′)を上方から復帰させるとか、圧延ローラー(22)、(23)を二段式するとか、打抜き前の麺帯(1)を別工程の圧延工程から直接供給する等は本考案の技術的思想に包含されるものである。」(第8ページ第9行ないし第9ページ第3行)








(2)甲1に記載された発明
上記(1)を総合すると、甲1には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「ロール巻等されたものから送り込まれた麺帯(1)を供給する麺帯供給部(A)と、
麺帯供給部(A)に供給された麺帯(1)を圧延する圧延部(C)と、
圧延部(C)から送り出された麺帯(1)を所望形状の型に打抜いて餃子等の皮とする打抜き装置(31)と、
餃子の皮等が打ち抜かれた後の麺帯(1′)を圧延部(C)に再度搬送する麺帯復帰部(B)とを備えた麺帯圧延供給装置であって、
圧延部(C)は、麺帯(1)と麺帯(1′)とを重ね合わせた状態で圧延して新しい麺帯(1′′)を作る麺帯圧延供給装置。」

(3)甲1に記載された技術
上記(1)を総合すると、甲1には以下の技術(以下、「甲1技術」という。)が記載されている。
「ロール巻等されたものから送り込まれた麺帯(1)を圧延する圧延部(C)において、麺帯(1)と圧延部(C)に再度搬送された餃子の皮等が打ち抜かれた後の麺帯(1′)とを重ね合わせた状態で圧延して新しい麺帯(1′′)を作る技術。」

2.甲2
(1)甲2の記載等
「【0017】
まず、図1、図2を参照しながら説明する。本考案は開口焼き餃子専用自動成型機に関する。餃子皮作りと具包みの二つの大型の成型装置から形成される。餃子皮成型装置は、餃子皮生地収納容器1、複数の餃子皮製造ユニット2、粉桶3、ブラシ3A及び餃子皮成型機4から構成される。具包み成型装置は、餃子具供給筒5、攪拌器5Aを備え、餃子具供給筒5下方において、餃子包みのベルト6が動かして餃子包み型7にまで移動させて、餃子包み型7末端の上方の位置に押しロール8が設置されて構成される。このうち、餃子皮生地収納容器1は、機台の下方に位置して、作業員が計量及び調合済みの餃子皮生地Aを置きやすくする。餃子皮生地収納容器1出口の前方には、複数の餃子皮製造ユニット2が設置されて、餃子皮製造ユニット2内の二個の皮延ばしローラー21が餃子皮生地Aが二個のローラーの間の隙間を通過する時、調整ローラー22によって二個の皮延ばしローラー21の間の隙間の大きさを調節することで、餃子皮A1の厚さを調節する(図2、図3に示したとおり)。餃子皮製造ユニット2のこねて延ばす作用を受けて、餃子皮A1が徐々に練られて弾力性を増していく。餃子皮A1は複数の餃子皮製造ユニット2のこねて延ばす作用を経た後、帯送ベルト2Aによって粉桶3下方まで移動されて小麦粉A11をまぶされることで、餃子皮A1表面が粘つくのを回避する。同時にブラシ3Aによって余分な小麦粉A11を払い落とすことで、餃子皮A1表面上に平均に小麦粉A11がまぶされる(図5に示したとおり)。さらに、餃子皮A1を餃子皮成型機4中に送り、餃子皮成型機4が餃子皮A1に向かって押し付けられて、一枚ずつの型抜きされた餃子皮A2に切り離される。その他の残った餃子皮A1の切れ端は餃子皮生地収納容器1内に戻されて、再び新しい餃子皮A1(当審注:図2の記載から、「新しい餃子皮生地A」の誤記と認める。)と混ぜられて使用される(図5に示したとおり)。
【0018】
餃子皮成型装置の作動の下、型抜きされた餃子皮A2の製作が完了後、具包み成型装置に送られると同時に、具包み成型装置の餃子具供給筒5も野菜、肉の計量及び調合済みの具Bの準備を完了している。攪拌器5Aによって材料を攪拌して押し出し、餃子包みのベルト6によって、その上の型抜きされた餃子皮A2を餃子具供給筒5下方の位置に移して、餃子具供給筒5が定点定量方式で具Bを型抜きされた餃子皮A2に供給して、それを受ける(図6に示したとおり)。その後、餃子包みのベルト6に送られて、餃子包み型7に移動してこれを通過する。餃子包み型7底面はカーブ状を呈していて、餃子包みのベルト6と具Bを受け取る型抜きされた餃子皮A2により、両面が徐々に中間の位置に向かって包み込まれて行き、さらに餃子包み型7末端上方に位置した押しロール8がこれを押し付けることで、両側の型抜きされた餃子皮A2が相互に張り付いて固定された状態を形成する(図7に示したとおり)。このように、両辺が開口状の焼きギョーザCが構成されて、さらに機台を離れて、作業台9において、例えば、冷凍や包装等の後続作業が行なわれる。こうして、自動化された規格量産が達成される。」







(2)上記(1)から分かること
図2には、餃子皮成型機4により型抜きされた後の残った餃子皮A1の切れ端を餃子皮生地収納容器1に戻すための搬送装置が設けられていることが分かる。

(3)甲2に記載された発明
上記(1)を総合すると、甲2には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「餃子皮生地Aが置かれた餃子皮生地収納容器1と、
餃子皮生地収納容器1に置かれた餃子皮生地Aを、二個のローラー21の間を通過させて、こねて延ばすことにより餃子皮A1の厚さを調整する餃子皮製造ユニット2と、
餃子皮製造ユニット2で得られた餃子皮A1を型抜きして餃子皮A2とする餃子皮成型機4と、
餃子皮成型機4により型抜きされた餃子皮A2に具Bを供給し、餃子皮A2により具Bを包むことにより焼きギョーザCを構成する餃子包み型7及び押しロール8と、
餃子皮成型機4により型抜きされた後の残った餃子皮A1の切れ端を餃子皮生地収納容器1に戻すことにより新しい餃子皮生地Aと混ぜて使用するための搬送装置を備えた、開口焼き餃子専用自動成形機。」

(4)甲2に記載された技術
上記(1)を総合すると、甲2には以下の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されている。
「餃子皮生地収納容器1に収納された餃子皮生地Aを、二個のローラー21の間を通過させて、こねて延ばすことにより餃子皮A1の厚さを調整し、得られた餃子皮A1を型抜きして餃子皮A2とするとともに、型抜きされた後の残った餃子皮A1の切れ端を餃子皮生地収納容器1に戻すことにより、新しい餃子皮生地Aと混ぜて使用する技術。」

3.甲3
(1)甲3の記載等
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は1個ずつ丸ごと口に入れて食べることのできる比較的小さいサイズの、いわゆる一口ぎょうざを製造するための製造装置に関する。」
「【0010】前記支枠11にはターンテーブル15の外方に位置して餃子の皮Kの供給手段30と、出来上がった一口ぎょうざ18を取り出すための取出し手段31とが設けられている。それら供給手段30と取出し手段31との間には、搬送されてくる餃子の皮Kの上に餃子の具Gを落下させる餃子の具Gの供給手段32と、餃子の皮の周縁を閉じるための粘結手段33とが設けられ、環状に配置された一連のコンベアを形成している。なお、前記餃子の皮Kの供給手段30と餃子の具Gの供給手段32とは、既に市販されている製造装置と同じものが用いられており、公知公用に属するので、詳細な説明は省略する。取出し手段31はターンテーブル15の外方に設けた取出しコンベア31aと、内側に設けた押出し手段31bによって構成されている。」




4.甲4
(1)甲4の記載等
4a)「イ.産業上の利用分野
本考案は一口中華まんじゅう、シューマイ、餃子、春巻等に供する麺帯を自動連続的に成形する麺帯成形装置に関し、詳しくは、麺帯打抜き後の麺帯に新しい生地を重合して新たに麺帯を成形する麺帯成形装置に関するものである。」(第1ページ第17行ないし第2ページ第4行)

4b)「ニ 問題点を解決するための手段
以上の点に鑑み、本考案は「捏ね」「叩き」を加えた作業で強い麺帯を成形できると共に、打抜き後の麺帯を裁断せずに自動連続的に再生することができる麺帯成形装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するための手段は、打抜き麺帯8を搬送するベースコンベア7上に生地3が投入されるホッパー1およびローラ枠12を設置し、複数の叩きローラ10を同一円周上へ回動自在に軸支した回転円板5をローラ枠12へ軸承された軸6に楔止すると共に、ホッパー1と叩きローラ10の間に押込み板4を揺動自在に軸支し、ベースコンベア7の延長線上に麺帯19を順次延伸させる麺厚調整ローラ11,11と送り調整ローラ23、23を光電管22、25により各調整自在に設置したものである。」(第3ページ第6行ないし第4ページ第4行)

4c)「ホ.作用
実施例に基づき作用を順次説明する。
餃子製造機26で所定形状の麺皮に打抜かれた後の打抜き麺帯8が受プレート36および立上りコンベア38,39を通過してベースコンベア7に送られる。
一方、新しい生地3は、ホッパー1に投入され傾斜コンベア2で下方に送られる。
ホッパー1の下方に送られた生地3は、上下に揺動する押込み板4の二段の下面によりベースコンベア7上の打抜き麺帯8に捏ねるようにして押付けられ、更に、軸6を中心に公転する複数の叩きローラ10で叩くようにして打抜き麺帯8と混練される。
生地3と打抜き麺帯8とが混練され厚い麺帯状となったものは、麺厚調整ローラ11、11で比較的厚い麺帯19となり、次に、送り調整ローラ23,23で延伸されて仕上ローラ29、29に送られ、所望の厚さに延伸される。
所望の厚さに延伸された麺帯19は、形抜き機構31で所定形状の麺皮が打抜かれ、打抜き後の打抜き麺帯8はガイド34、ローラ35に案内され、受プレート36および立上りコンベア38、39を通ってベースコンベア7に送られる。」(第4ページ第5行ないし第5ページ第10行)

4d)「ト.考案の効果
以上のように本考案に係る麺帯成形装置は、麺皮を打抜いた後の打抜き麺帯8上に新しい生地3を押込み板4で捏ねるように押重ね、次いで、軸6を中心として公転する叩きローラ10で叩くように混練し、麺厚調整ローラ11,11、送り調整ローラ23、23、仕上ローラ29、29と順次薄くしながら延伸し、形抜き機構31で所定形状の麺皮を打抜き、麺皮を打抜いた後の打抜き麺帯8を返送するもので、比較的小型の可搬タイプの装置で「捏ね」、「叩き」を加えて強い麺帯19が自動連続的に成形できると共に、打抜き麺帯8を裁断することなくそのまま再生利用できる。また、製造工程中には、光電管22、25で進行をコントロールすることができ、製造中に麺帯19と打抜き麺帯8がエンドレスとなり、作業が中断することなく自動連続的に効率良く行える等の利点を有するものである。」(第11ページ第7行ないし第12ページ第6行)







[2]特許異議の申立ての理由についての判断1(甲1を主引用例とした場合の検討)
1.本件特許発明1
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「麺帯(1)」は、本件特許発明1における「帯状の材料」に相当し、以下同様に「供給」は「投入」に、「圧延」は「成形」に、「所望形状の型に打抜いて」は「所定形状に型抜きして」に、「餃子等の皮とする」は「餃子の皮とし得る」に、「打抜き装置(31)」は「型抜き部」に、「餃子の皮等が打ち抜かれた後の麺帯(1′)」は「型抜き部による型抜き後の残り材料」に、「再度搬送する」は「搬入させる」に、「麺帯復帰部(B)」は「搬入部」に、「備えた」は「具備した」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明における「ロール巻等されたものから送り込まれた麺帯(1)」と本件特許発明1における「半練り状の材料」とは、「材料」という限りにおいて一致し、
甲1発明における「ロール巻等されたものから送り込まれた麺帯(1)を供給する麺帯供給部(A)」と本件特許発明1における「半練り状の材料を投入可能な投入部」とは、「材料供給部」という限りにおいて一致し、
甲1発明における「麺帯供給部(A)に供給された麺帯(1)を圧延する圧延部(C)」と本件特許発明1における「該投入部に投入された半練り状の材料を圧縮して帯状に成形する帯状成形部」とは、「成形部」という限りにおいて一致し、
さらに、甲1発明における「麺帯圧延供給装置」と本件特許発明1における「餃子の製造装置」とは、「装置」という限りにおいて一致する。

そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「材料を投入可能な材料供給部と、
材料供給部に投入された材料を成形する成形部と、
成形部で得られた帯状の材料を所定形状に型抜きして餃子の皮とし得る型抜き部と、
型抜き部による型抜き後の残り材料を成形部に搬入させる搬入部と、を具備した装置。」

[相違点1]
「材料」に関して、本件特許発明1においては「半練り状の材料」であるのに対して、甲1発明においては「ロール巻等されたものから送り込まれた麺帯(1)」である点。

[相違点2]
「材料供給部」に関して、本件特許発明1においては「半練り状の材料を投入可能な投入部」であるのに対して、甲1発明においては「ロール巻等されたものから送り込まれた麺帯(1)を供給する麺帯供給部(A)」である点。

[相違点3]
「装置」に関して、本件特許発明1においては「餃子の製造装置」であって、「該型抜き部で得られた餃子の皮に餃子の具を載せるとともに、当該餃子の皮で前記餃子の具を包んで餃子を得る餃子成形部」を備えるものであるのに対して、甲1発明においては「麺帯圧延供給装置」であって、餃子の皮で餃子の具を包んで餃子を得る餃子成形部を備えるか不明である点。

[相違点4]
「成形部」に関して、本件特許発明1においては「該投入部に投入された半練り状の材料を圧縮して帯状に成形する帯状成形部」であって、「一方の面側に形成され、前記投入部に投入された半練り状の材料にて形成された第1層と、他方の面側に形成され、前記搬入部により前記帯状成形部に搬入された残り材料にて形成された第2層とを有した帯状の材料を成形し得る」ものであるのに対して、甲1発明においては「麺帯供給部(A)に供給された麺帯(1)を圧延する圧延部(C)」であって、「麺帯(1)と麺帯(1′)とを重ね合わせた状態で圧延して新しい麺帯(1′′)を作る」ものである点。

以下、事案に鑑み、まず相違点4について検討する。

[相違点4について]
甲1発明は、「打抜き工程後の麺帯を特に加工することなく復帰させ、打抜き前の麺帯と重合圧延して新しい麺帯として打抜き工程に供給する」(上記[1]1.(1)1b)参照。)ことを前提とする発明であって、打抜き工程後の麺帯と打抜き前の麺帯とを重合圧延することにより、厚みにムラがなく、均一な厚さの麺帯を打抜き工程に供給することができるというものであるから(上記[1]1.(1)1f)参照。)、ロール巻き等されたものから送り込まれた「麺帯(1)」に代えて餃子皮生地(半練り状の材料)を採用する動機付けは見いだせない。
そうすると、甲1発明に基づいて上記相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。

さらに、甲2技術は、「餃子皮生地収納容器1に収納された餃子皮生地Aを、二個のローラー21の間を通過させて、こねて延ばすことにより餃子皮A1の厚さを調整し、得られた餃子皮A1を型抜きして餃子皮A2とするとともに、型抜きされた後の残った餃子皮A1の切れ端を餃子皮生地収納容器1に戻すことにより、新しい餃子皮生地Aと混ぜて使用する技術」であって、型抜きされた後の残った餃子皮A1の切れ端を餃子皮生地収納容器1に戻して、新しい餃子皮生地Aと混ぜて使用するものであるが、二個のローラー21において、一方の面側に餃子皮生地Aにて形成された第1層、他方の面側に型抜きされた後の残った餃子皮A1の切れ端にて形成された第2層とを有した帯状の材料が形成されることを示すものではない。
そうすると、甲1発明に甲2技術を適用して上記相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。

また、甲3においては、「餃子の皮Kの供給手段30」が記載されているが、「既に市販されている製造装置と同じもの」(段落【0010】参照。)と記載されるところ、その具体的な構成については不明である。
そうすると、甲1発明、甲2技術及び甲3に記載された事項を適用して上記相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。

また、甲4の「麺帯成形装置」においては、「麺皮を打抜いた後の打抜き麺帯8上に新しい生地3を押込み板4で捏ねるように押重ね、次いで、軸6を中心として公転する叩きローラ10で叩くように混練し、麺厚調整ローラ11,11、送り調整ローラ23,23、仕上ローラ29,29と順次薄くしながら延伸」(上記[1]4.(1)4d)参照。)するものであり、打抜き麺帯8と新しい生地3とが「捏ねるように押重ね」られ、「叩きローラ10で叩くように混練」された場合に、新しい生地3と麺皮を打抜いた後の打抜き麺帯8とは混練されて一体になると考えるのが自然であるところ、成形された麺帯の一方の面側において新しい生地3による第1層、他方の面側において麺皮を打抜いた後の打抜き麺帯8による第2層が形成されるかは不明である。
そうすると、甲1発明、甲2技術、甲3に記載された事項及び甲4に記載された事項を適用して上記相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。

したがって、上記相違点1ないし3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて、または甲1発明、甲2技術、甲3に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.本件特許発明2ないし5
本件特許の請求項2ないし5の記載は、請求項の記載を他の記載に置きかえることなく本件特許の請求項1を直接あるいは間接的に引用してされたものであるから、本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1と同様の理由により甲1発明、甲2技術、甲3に記載された事項、及び甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[3]特許異議の申立ての理由についての判断2(甲2を主引用例とした場合の検討)
1.本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「餃子皮生地A」は、本件特許発明1における「半練り状の材料」に相当し、以下同様に、「餃子皮生地収納容器1」は「投入部」に、
「餃子皮生地Aが置かれた餃子皮生地収納容器1」は「半練り状の材料を投入可能な投入部」に、「餃子皮生地収納容器1に置かれた餃子皮生地A」は「該投入部に投入された半練り状の材料」に、「二個のローラー21の間を通過させて、こねて延ばすことにより餃子皮A1の厚さを調整する」、「餃子皮製造ユニット2」は「圧縮して帯状に成形する」、「帯状成形部」に、「餃子皮A1」は「帯状の材料」に、「型抜きして」は「所定形状に型抜きして」に、「餃子皮A2」は「餃子の皮」に、「餃子皮成型機4」は「型抜き部」に、「餃子皮成型機4により型抜きされた」、「餃子皮A2」は「該型抜き部で得られた」、「餃子の皮」に、「具B」は「餃子の具」に、「供給し」は「載せる」に、「焼きギョーザC」は「餃子」に、「構成する」は「得る」に、「餃子包み型7及び押しロール8」は「餃子成形部」に、「餃子皮成型機4により型抜きされた後の残った餃子皮A1の切れ端」は「型抜き部による型抜き後の残り材料」に、「搬送装置」は「搬入部」に、「開口焼き餃子専用自動成型機」は「餃子の製造装置」に、それぞれ相当する。
また、甲2発明における「餃子皮成型機4により型抜きされた後の残った餃子皮A1の切れ端を餃子皮生地収納容器1に戻すことにより新しい餃子皮生地Aと混ぜて使用するための搬送装置」と、本件特許発明1における「前記型抜き部による型抜き後の残り材料を前記帯状成形部に搬入させる搬入部」とは、「型抜き部による型抜き後の残り材料を再使用するために設けた搬入部」という限りにおいて一致する。

そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「半練り状の材料を投入可能な投入部と、
該投入部に投入された半練り状の材料を圧縮して帯状に成形する帯状成形部と、
該帯状成形部で得られた帯状の材料を所定形状に型抜きして餃子の皮とし得る型抜き部と、
該型抜き部で得られた餃子の皮に餃子の具を載せるとともに、当該餃子の皮で前記餃子の具を包んで餃子を得る餃子成形部と、
前記型抜き部による型抜き後の残り材料を再使用するために設けた搬入部と、
を具備した餃子の製造装置。」

[相違点5]
「型抜き部による型抜き後の残り材料を再使用するために設けた搬入部」に関して、本件特許発明1においては「搬入部」が「前記型抜き部による型抜き後の残り材料を前記帯状成形部に搬入させる」ものであるのに対して、甲2発明においては「搬送装置」が「餃子皮成型機4により型抜きされた後の残った餃子皮A1の切れ端を餃子皮生地収納容器1に戻すことにより新しい餃子皮生地Aと混ぜて使用するための」ものである点。

[相違点6]
本件特許発明1においては「前記帯状成形部は、一方の面側に形成され、前記投入部に投入された半練り状の材料にて形成された第1層と、他方の面側に形成され、前記搬入部により前記帯状成形部に搬入された残り材料にて形成された第2層とを有した帯状の材料を成形し得る」のに対して、甲2発明においては「餃子皮成型機4により型抜きされた後の残った餃子皮A1の切れ端を餃子皮生地収納容器1に戻すことにより新しい餃子皮生地Aと混ぜて使用する」ところ、「餃子皮生地収納容器1に置かれた餃子皮生地Aを、二個のローラー21の間を通過させて、こねて延ばすことにより得られた餃子皮A1」が、一方の面側に形成され、新しい餃子皮生地Aにて形成された第1層と、他方の面側に形成され、餃子皮成型機4により型抜きされた後の残った餃子皮A1の切れ端にて形成された第2層を有するか不明である点。

以下、事案に鑑み、まず相違点6について検討する。

[相違点6について]
甲1技術は、「ロール巻等されたものから送り込まれた麺帯(1)を圧延する圧延部(C)において、麺帯(1)と圧延部(C)に再度搬送された餃子の皮等が打ち抜かれた後の麺帯(1′)とを重ね合わせた状態で圧延して新しい麺帯(1′′)を作る技術」であって、打抜き工程後の麺帯と打抜き前の麺帯とを重合圧延することを前提とするものであり、それによって厚みにムラがなく、均一な厚さの麺帯を打抜き工程に供給することができるというものである(上記[1]1.(1)1f)参照。)。
ここで、甲2発明において甲1技術を適用した場合、餃子皮成型機4により型抜きされた後の残った餃子皮A1の切れ端(型抜き後の麺帯)が重ね合わせた状態で圧延される対象は、餃子皮生地Aではなく、餃子皮生地Aを二個のローラー21の間を通過させて、こねて延ばすことにより得た餃子皮A1(麺帯)であるから、「投入部に投入された半練り状の材料にて形成された第1層と、他方の面側に形成され、前記搬入部により前記帯状成形部に搬入された残り材料にて形成された第2層とを有した帯状の材料を成形しうる」という本件特許発明1の発明特定事項を得るには至らない。
そうすると、甲2発明に甲1技術を適用して上記相違点6に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。

また、甲4の「麺帯成形装置」においては、「麺皮を打抜いた後の打抜き麺帯8上に新しい生地3を押込み板4で捏ねるように押重ね、次いで、軸6を中心として公転する叩きローラ10で叩くように混練し、麺厚調整ローラ11,11、送り調整ローラ23,23、仕上ローラ29,29と順次薄くしながら延伸」(上記[1]4.(1)4d)参照。)するものであり、打抜き麺帯8と新しい生地3とが「捏ねるように押重ね」られ、「叩きローラ10で叩くように混練」された場合に、新しい生地3と、麺皮を打抜いた後の打抜き麺帯8とは混練されることにより一体になると考えるのが自然であり、成形された麺帯の一方の面側において新しい生地3による第1層、他方の面側において麺皮を打抜いた後の打抜き麺帯8による第2層が形成されるかは不明である。
そうすると、甲2発明、甲1技術、及び甲4に記載された事項を適用して上記相違点6に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。

したがって、上記相違点5について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明、及び甲1技術に基いて、または、甲2発明、甲1技術、及び甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.本件特許発明2ないし5
本件特許の請求項2ないし5の記載は、請求項の記載を他の記載に置きかえることなく本件特許の請求項1を直接あるいは間接的に引用してされたものであるから、本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1と同様の理由により甲2発明、甲1技術、及び甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-04-15 
出願番号 特願2018-57844(P2018-57844)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23P)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西村 賢  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 松下 聡
山崎 勝司
登録日 2020-07-03 
登録番号 特許第6727566号(P6727566)
権利者 東亜工業株式会社
発明の名称 餃子の製造装置  
代理人 青木 充  
代理人 平田 功  
代理人 越川 隆夫  

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