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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する B29C
管理番号 1374118
審判番号 訂正2021-390032  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2021-02-03 
確定日 2021-04-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6628605号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6628605号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 主な手続の経緯
特許第6628605号(請求項の数4。以下、「本件特許」という。)に係る出願は、2015年(平成27年)4月24日(優先権主張 2014年(平成26年)5月11日)を国際出願日とする特許出願であって、令和1年11月7日付けで特許査定がされ、同年12月13日にその特許権の設定登録がされたものである。
そして、令和3年2月3日に本件訂正審判が請求された。

第2 請求の趣旨及び理由
1 請求の趣旨
結論同旨

2 請求の理由(訂正の内容)
請求人の求めた訂正(以下「本件訂正」という場合がある。)について、訂正事項ごとに掲記すると、概略、以下のとおりである。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「圧力が1atomで」とあるのを、「圧力が1atmで」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「圧力が1atomで」とあるのを、「圧力が1atmで」に訂正する。
請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。

(3) 訂正事項3
明細書の段落【0298】において2箇所に「圧力が1atomで」とあるのを、共に「圧力が1atmで」に訂正する。

第3 当審の判断
1 訂正の目的、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否についての検討

事案に鑑み、訂正事項3から検討する。
(1) 訂正事項3(上記第2 2(3))についての検討
ア 訂正の目的
本件訂正前の明細書の段落【0298】における「圧力が1atomで」との記載に関し、圧力の計量単位の記号として「atm」が一般に用いられること(例えば、計量単位規則(平成4年通商産業省令第80号)の別表第2(第2条関係)として、「物象の状態の量」としての「圧力」の「計量単位」である「気圧」に関し、その記号として「atm」が規定されている。)、また、気圧の単位記号としての「atm」は、日本国内において、「アトム」と呼称することが慣用であって、「atom」は、その音写に基づく誤記であると推認することができることから、「圧力が1atmで」との誤記であることは、当業者にとって明らかである。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものに該当する。

新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたことによると、明細書の段落【0298】に係る訂正事項3の訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないことは明らかである。
また、明細書の段落【0298】に関連する特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものと認めることはできない。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するといえる。

(2) 訂正事項1(上記第2 2(1))についての検討
ア 訂正の目的
本件特許の請求項1における「圧力が1atomで」について、上記(1)で述べたのと同様、「atom」との記載は「atm」の誤記であることが明らかである。
また、請求項1の記載を引用する請求項2も同様である。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものに該当する。

新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
請求項1の記載に対応する、明細書の段落【0298】については、上記(1)で述べたとおりであるから、請求項1に係る訂正事項1の訂正は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項においてしたものである。
また、請求項1の訂正前後の記載を比較しても、請求項1に係る訂正事項1の訂正は、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものと認めることはできない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するといえる。

(3) 訂正事項2(上記第2 2(2))についての検討
本件特許の請求項3における「圧力が1atomで」についても、請求項1及び2に係る訂正について上記(2)で述べたのと同様、「atom」との記載は「atm」の誤記であることが明らかである。
また、請求項3の記載を引用する請求項4も同様である。

2 独立特許要件について
上記1で検討したとおり、訂正事項1ないし3は、いずれも誤記の訂正を目的とするものである。そこで、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか(いわゆる独立特許要件の充足性。特許法第126条第7項)について検討したが、独立特許要件を欠くとする事由を見いだすことができない。
したがって、本件訂正は特許法第126条第7項の規定に適合する。

第4 むすび
以上の次第であるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するので、適法な訂正と認める。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
成形品の製造方法、成形品の製造装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂と発泡剤とからなる成形材料をインサートが配置された型内に未充填部を残してショート・ショットし、発泡剤の発泡による膨張力で未充填部を充填する発泡成形方法が記載されている。樹脂は、母材樹脂と、母材樹脂と同種で母材樹脂より低分子量の低分子量樹脂と、からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-103919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、発泡成形品の品質を安定させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る成形品の製造方法は、気化温度が加熱筒内における溶融樹脂の温度以下であり予め定められた量の液体を、前記溶融樹脂に注入する工程と、前記溶融樹脂に注入された前記液体を前記加熱筒内で気体にする気化工程と、前記気体を含む前記溶融樹脂を金型キャビティに射出、金型に注入、またはダイを介して押出しする工程と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る成形品の製造方法は、請求項1において、前記液体は、熱分解温度が前記加熱筒内における前記溶融樹脂の温度以下である物質を含み、前記気化工程は、前記溶融樹脂に注入された前記液体および前記物質を前記加熱筒内で気体にすることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る成形品の製造方法は、炭酸水素塩、または炭酸塩を含む予め定められた量の第1液体と、有機酸を含む予め定められた量の第2液体と、を別々に加熱筒内の溶融樹脂に注入する工程と、前記溶融樹脂に注入された前記第1液体および前記第2液体を前記加熱筒内で反応させて気体を発生させる工程と、前記気体を含む前記溶融樹脂を金型キャビティに射出、金型に注入、またはダイを介して押出しする工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る成形品の製造方法は、気化温度が加熱筒内における溶融樹脂の温度以下
であり予め定められた量の液体を、気化装置に注入する工程と、前記気化装置内に注入された前記液体を前記気化装置内で気体にする気化工程と、前記気体を加熱筒内の溶融樹脂に注入する工程と、前記気体を含む前記溶融樹脂を金型キャビティに射出、金型に注入、またはダイを介して押出しする工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る成形品の製造方法は、請求項4において、前記液体は、熱分解温度が前記気化装置の温度以下である物質を含み、前記気化工程は、前記気化装置に注入された前記液体および前記物質を前記気化装置内で気体にすることを特徴とする。
【0010】
請求項6に係る成形品の製造方法は、炭酸水素塩、または炭酸塩を含む予め定められた量の第1液体と、有機酸を含む予め定められた量の第2液体と、を別々に気化装置に注入する工程と、前記気化装置に注入された前記第1液体および前記第2液体を前記気化装置内で反応させて気体を発生させる工程と、前記気体を加熱筒内における溶融樹脂に注入する工程と、前記気体を含む前記溶融樹脂を金型キャビティに射出、金型に注入、またはダイを介して押出しする工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項7に係る成形品の製造装置は、気化温度が加熱筒内における溶融樹脂の温度以下であり、予め定められた量の液体を、前記溶融樹脂に注入する注入装置と、前記溶融樹脂に注入された前記液体が前記加熱筒内で気化した気体を含む前記溶融樹脂を金型キャビティに射出する射出装置、金型に注入する注型装置、またはダイを介して押出しする押出装置と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項8に係る成形品の製造装置は、請求項7において、前記液体は、熱分解温度が前記加熱筒内における前記溶融樹脂の温度以下である物質を含み、前記射出装置、前記注型装置、または前記押出装置は、前記溶融樹脂に注入された前記液体および前記物質を前記加熱筒内で気体にすることを特徴とする。
【0013】
請求項9に係る成形品の製造装置は、炭酸水素塩、または炭酸塩を含む予め定められた量の第1液体と、有機酸を含む予め定められた量の第2液体と、を別々に加熱筒内の溶融樹脂に注入する注入装置と、前記溶融樹脂に注入された前記第1液体および前記第2液体を前記加熱筒内で反応させて気体を発生させ、前記気体を含む前記溶融樹脂を金型キャビティに射出する射出装置、金型に注入する注入装置、またはダイを介して押出しする押出装置と、を有することを特徴とする。
【0014】
請求項10に係る成形品の製造装置は、液体を気体にする気化装置と、気化温度が加熱筒内における溶融樹脂の温度以下であり予め定められた量の液体を、前記気化装置に注入する第1注入装置と、前記気化装置内の気体を加熱筒内の溶融樹脂に注入する第2注入装置と、前記第2注入装置により前記溶融樹脂に注入された前記気体を含む前記溶融樹脂を金型キャビティに射出する射出装置、金型に注入する注型装置、またはダイを介して押出しする押出装置と、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項11に係る成形品の製造装置は、請求項10において、前記液体は、熱分解温度が前記加熱筒内における前記溶融樹脂の温度以下である物質を含み、前記気化装置は、前記液体および前記物質を気体にすることを特徴とする。
【0016】
請求項12に係る成形品の製造装置は、炭酸水素塩、または炭酸塩を含む第1液体と、有機酸を含む第2液体と、を反応させて気体を発生させる気化装置と、予め定められた量の前記第1液体と、予め定められた量の前記第2液体と、を別々に前記気化装置に注入する第1注入装置と、前記気化装置内の気体を加熱筒内の溶融樹脂に注入する第2注入装置と、前記第2注入装置により前記溶融樹脂に注入された前記気体を含む前記溶融樹脂を金
型キャビティに射出する射出装置、金型に注入する注型装置、またはダイを介して押出しする押出装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、2および3に係る成形品の製造方法は、予め定められた量の液体を溶融樹脂に注入しない場合に比べて、発泡成形品の品質を安定させることができる。
【0018】
請求項4、5および6に係る成形品の製造方法は、予め定められた量の液体を気化装置に注入しない場合に比べて、発泡成形品の品質を安定させることができる。
【0019】
請求項7、8および9に係る成形品の製造装置は、予め定められた量の液体を溶融樹脂に注入しない場合に比べて、発泡成形品の品質を安定させることができる。
【0020】
請求項10、11および12に係る成形品の製造装置は、予め定められた量の液体を気化装置に注入しない場合に比べて、発泡成形品の品質を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】成形品の製造装置の模式図
【図2】成形品の製造装置の模式図
【図3】成形品の製造装置の模式図
【図4】注入口の模式図
【図5】注入口の取り付け状態を示す模式図
【図6】注入口の取り付け状態を示す模式図
【図7】注入口の取り付け状態を示す模式図
【図8】発泡剤の攪拌の手段を示す模式図
【図9】注入口の構造を示す模式図
【図10】図9における注入口の断面A-Aの一例を示す断面図
【図11】図9における注入口の断面A-Aの他の例を示す断面図
【図12】図9における注入口の断面A-Aの他の例を示す断面図
【図13】図9における注入口の断面A-Aの他の例を示す断面図
【図14】注入口の構造を示す模式図
【図15】図14におけるボールチェック弁42のリテーナーを示す模式図
【図16】図14におけるボールチェック弁42を円柱弁とした構造を示す模式図
【図17】(A)は図16における円柱弁46を示す模式図、(B)は(A)におけるB-B断面図
【図18】図16における円柱弁46を示す模式図
【図19】注入口の一例を示す模式図
【図20】シャット・オフノズルの一例を示す模式図
【図21】シャット・オフノズルの一例を示す模式図
【図22】シャット・オフノズルの一例を示す模式図
【図23】シール金型の構造を示す模式図
【図24】金型キャビティ内を加圧する装置の構造を示す模式図
【図25】(A)は金型の平面図、(B)は(A)の金型の側面図
【図26】ダミー形状の概念を説明するための模式図
【図27】(A)は成形品の平面図、(B)は(A)の成形品の側面図
【図28】(A)は成形品の平面図、(B)は(A)の成形品の側面図
【図29】自動ゲートカットを説明するための図
【図30】(A)は成形品の平面図、(B)は(A)の成形品の側面図
【図31】(A)は成形品の平面図、(B)は(A)の成形品の側面図
【図32】IGCP装置の模式図
【図33】(A)は成形品の平面図、(B)は(A)の成形品の側面図
【図34】成形品の製造装置の模式図
【図35】成形品の製造装置の模式図
【図36】成形品の製造装置の模式図
【図37】注型、ブロック成形の金型の模式図
【図38】成形品の製造装置の模式図
【図39】成形品の製造装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明において用いる用語を定義する。
「金型キャビティ」とは、射出成形、ブロック成形、または注型成形において、発泡性を持たせた樹脂および非発泡性の樹脂の少なくとも一つの樹脂で満たされる空間、または体積を言う。
また、「金型キャビティ内」、または「キャビティ内」とは、金型キャビティの内部、空間、または体積を言う。
【0023】
「射出」とは、金型キャビティ内に発泡性を持たせた樹脂および非発泡性の樹脂の少なくとも一つの樹脂を充填すること、またはその工程(プロセス)を言う。
【0024】
「充填」とは、成形加工において、金型キャビティ内に発泡性を持たせた樹脂および非発泡性の樹脂の少なくとも一つの樹脂を満たすことを言う。
金型キャビティ内の体積よりも少ない量の充填は、ショート・ショット、またはショート・モールドと言う。
金型キャビティ内の体積と同等な量の充填は、フル・ショット、またはフル・パックと言う。
金型キャビティ内の体積よりも多い量の充填は、オーバー・ショット、またはオーバー・パックと言う。
ヒケを少なくする、または転写性を向上するため、フル・ショット後に保圧をかける場合は、保圧を使用したことを明示する。
ブロック成形の場合の非加圧、加圧の区分けは、充填後は非加圧、充填後に加圧などのように加圧の有無を明示する。
【0025】
「注入」とは、気体、または液体を、例えば注射器、またはポンプなどを利用して外力で入れ込む(注ぎ込む)工程を言う。
「添加」とは、ただ単に、混ぜ合わせること、加えることを言い、注入よりも広義である。つまり、「注入」は、「添加」に含まれる。特に加熱筒内で可塑化、計量中の熱可塑性樹脂に液状発泡剤、または発泡性ガスを注入する場合は、加熱筒内の溶融状態にある熱可塑性樹脂の圧力よりも注入の圧力を高めないと、液状発泡剤、または発泡性ガスの注入が困難である。このため、本発明では、後述する図1、図2および図3などに示すように、液状発泡剤、または発泡性ガスの注入量を制御可能な装置を用いる。
【0026】
なお、図2は、熱的な作用で液状発泡剤を気化(ガス化)および熱分解の少なくとも一つをさせて発泡性ガスを発生させる気化器・反応器22を持つ注入装置である。
気化器・反応器22は、その内部の残渣を除去するための洗浄機構を備えている。
気化器・反応器22内の発泡残渣の洗浄は、以下の手段で行なう。すなわち、図2において、発泡成形時に開となっている自動開閉弁158は、閉じて、加熱筒7内に洗浄液が入らないようにする。そして、洗浄液を気化器・反応器22に入れるため、通常は閉じている自動開閉弁159および洗浄液の廃棄用の自動開閉弁153を開き、入口155から、洗浄液、例えば水、エタノールなどの有機溶剤を入れる。気化器・反応器22内を洗浄液で満たし、必要に応じて気化器・反応器22内部の残渣が溶解しやすいように加温し、
外部から超音波などで振動させる、または内部に空気若しくは窒素ガスを入れバブリングして発泡残渣を洗浄液中に溶解させ、洗浄液の出口156から外部に廃棄する。
【0027】
この作業完了の後、入口155から空気、または窒素ガスなどを入れ、気化器・反応器22および配管154内に残っている洗浄液を気体(空気、または窒素ガスなど)の圧力によって押し出し、乾燥させて気化器・反応器22の洗浄が完了する。
使用する洗浄液は、装置で使用している溶媒であることが好ましいが、他のものを用いてもよい。重曹、または、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素塩を熱分解させた場合の残渣は、炭酸塩であるので、水で溶解する以外に、クエン酸水溶液などの有機酸水溶液を入れて、化学反応させ除去する方法がある。
【0028】
図3は、液状発泡剤を混ぜ合わせ、化学反応および加熱の少なくとも一つによって気化させ発泡性ガスを発生させる気化器・反応器22を備えた成形品の製造装置の模式図である。発泡性ガスが炭酸ガスの場合は、臨界温度以下で圧力を加えると液化するので、炭酸ガスを気体のまま、加熱筒内に注入するには、気化器・反応器22から加熱筒までを加温する必要がある。
また、気化器・反応器22は、その内部の残渣を除去するための洗浄機構を備えている。
【0029】
「可塑化」とは、例えば、熱可塑性樹脂を加熱筒内で加熱し、スクリュなどを用いて溶融混練すること、または加熱して溶融することを言う。
「溶融」、「熔融」および「融解」は、物質が加熱されて液体になることを言う。換言すると、「溶融」、「熔融」および「融解」は、固相の物質が加熱されて液相になる相変化を言う。
固体が液体に変化する温度は、融点という。熱可塑性樹脂には融点はないが、融点に近い概念に軟化点がある。「溶融」は、軟化点まで熱可塑性樹脂を加熱することを言う。本発明では「溶融」、「熔融」および「融解」は、同義語として取り扱う。
【0030】
「加熱筒」とは、射出成形機の可塑化装置、混練装置、若しくは射出装置、または押出成形機の可塑化装置、混練装置、若しくは押出装置において、内部にスクリュを収容し、熱可塑性樹脂を加工する場合は外部に加熱用のヒータが設けられたものを言う。加熱筒は、バレル、シリンダ、ハウジング、ケーシングなどとも言う。熱硬化性樹脂の場合、「加熱筒」の外部には、必要に応じて、ヒータおよびクーラーの少なくとも一つが設けられている。
【0031】
「加熱筒内への注入」とは、加熱筒を加工し、図1乃至図3、図34乃至図36、図38、図39または図5乃至図7で示す注入口(弁)5を設け、加熱筒内の樹脂へ液状発泡剤、または発泡性ガスを注入することを言う。本発明では、液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つを、スクリュの後部にあけた穴から、スクリュの中を通じて加熱筒内の溶融樹脂中に注入する方法もあり、これに限定する趣旨ではない。
可塑化前の加熱筒内の熱可塑性樹脂のペレットに液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つを注入する場合は、1回の成形(1ショット)毎にホッパー下部に蓋をしてホッパーから発泡性ガスが逃げないようにシールするのが望ましい。
【0032】
加熱筒内に注入した液状発泡剤の内、余分な液状発泡剤(例えば、重曹水の溶媒の水)がホッパー下近くまで戻った(逆流した)場合は、高温の液状発泡剤が熱可塑性樹脂のペレットの一部を溶融し、ペレット同士が接合(接着)するという問題が生じる。この問題が生じた場合は、成形材料を金型キャビティなどへ射出する(加熱筒内に送り込む)ことができない。この問題の回避策としては、ホッパー近くの加熱筒に穴を開け、この穴から余分な液状発泡剤(水分などの溶媒)を自然に、または強制的な手段(例えば、真空引き
(バキューム)など)によって外部に排出することが挙げられる。
【0033】
「加熱筒内の樹脂」とは、加熱溶融前のペレット、バルク、パウダーなど固体(固形)の状態、可塑化途中の段階、可塑化が完了して溶融状態にある熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂を言う。
「発泡成形」とは、熱可塑性樹脂の場合は、下記の(A)?(E)のいずれかの方法を用いて発泡構造体を有する成形品を成形加工することを言う。
(A)UCC法。
(B)MuCell法。
(C)本発明の液状発泡剤を加熱筒の外部で気化、熱分解、化学反応させた発生する気体を加熱筒内に注入して加熱筒内の溶融樹脂に発泡性を持たせる方法。
(D)本発明の液状発泡剤、例えば水、アルコール類、重曹、炭酸水素カリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどの水溶液を加熱筒内に注入して加熱筒内の溶融樹脂に発泡性を持たせる方法。
(E)本発明の重曹粉末、クエン酸粉末、アゾジカルボン酸アミド粉末などの固体の発泡剤、あるいはこれら固体の発泡剤を成形予定の樹脂と同質、あるいは相容性を持つ樹脂を用いて製造した発泡剤のマスターバッチを用いて加熱筒内の溶融樹脂に発泡性を持たせる方法。
【0034】
「発泡成形」とは、熱硬化性樹脂の場合は、市販の発泡剤、液状発泡剤を混ぜ合わせ、金型への充填の前、充填の途中、充填後に加熱して気化、熱分解、化学反応などの手段で起泡させ発泡構造体の成形品を成形加工することを言う。
気体、液体または固体の3つの性状がある発泡剤は、発泡成形において、単独で用いても良く、併用しても良い。
【0035】
液状発泡剤を熱可塑性樹脂に用いる場合は、成形品の重量に対して最適な容量を測定(計量)して、加熱筒内の熱可塑性樹脂に注入し、加熱筒と加熱筒内の温度、加熱筒内の溶融した熱可塑性樹脂の温度および金型の温度の少なくとも一つによって、気化、熱分解および化学反応の少なくとも一つをさせて、または熱を必要としないで分解および化学反応の少なくとも一つをさせて発泡に有用(有効)なガスを発生させる。
【0036】
発生させたガスは、加熱筒内の熱可塑性樹脂中に微分散および加圧溶解の少なくとも一つをさせる。そうすると、加熱筒内の熱可塑性樹脂は、発泡性を有する熱可塑性樹脂となる。これを金型キャビティ内に射出して、発泡構造体を有する成形品を製造すること、または押出成形して発泡成形品を得ることができる。
別言すると、「発泡成形」とは、加熱筒内の樹脂に対して、液状発泡剤を分散および溶解の少なくとも一つをさせて、金型の温度によって有用な発泡性ガスを発生させ発泡構造体を得ること、およびその工程を言う。特に後者は、熱可塑性樹脂のブロック成形若しくは注型成形、または熱硬化性樹脂の成形加工において主に用いる。
【0037】
「気体」は、液体とともに流体であり、分子の熱運動が分子間力を上回っており、液体の状態に比べて分子が自由に動くことができる。気体は、圧力と温度による体積の変化が激しい。また、気体は、一定の体積を持たず、容器に入れるとこれを満たし、流動性に富み、常に自ら広がろうとする性質を持つ。気体の密度は、固体、液体よりも小さく、容易に圧縮することができる。気体の体積は、温度に比例し、圧力に反比例する。
【0038】
「蒸気」は、物質が液体から蒸発、固体から昇華して気体になった状態のものを言う。特に臨界温度以下の物質は、気相と言う。
「気化」とは、物質が液体または固体から気体に変化する現象を言う。気化には、蒸発と沸騰がある。蒸発は液体の表面から、沸騰は液体の内部から気化する現象で、「沸点」とは沸騰が生じる温度を言う。沸点は圧力が高くなると、沸点も高くなる。
「凝宿」とは、気体が液体になる物理変化を言い、「凝結」とも言う。「凝縮点」とは気体が液体になる温度を言い、圧力が高いと凝縮点も高くなる。水の場合の凝縮点を特に「露点(露点温度)」と言う。水が個体の表面で凝結することを「結露」と言う。重曹水を液状発泡剤としてもちいた場合、溶媒の水が金型の表面で結露するのは、金型の表面温度が、露点温度よりも低いからである。結露を少なくするには、金型の表面温度を上げる。金型の表面温度を露点以上に高くすると、結露はしなくなる。
なお、OGCPを使用した場合は、露点温度が高くなるので、より金型の表面温度を更に高くしなければならない。
ジエチルエーテルなどの低沸点の液状発泡剤をもちいることで、金型の表面での溶媒の凝縮は解決する。
低沸点の物質と、高沸点の物質、たとえばジエチルエーテルと水、エタノールとの混合物をもちいることで、液状発泡剤の高沸点の物質の使用量が少なくなるので溶媒の結露問題は緩和される。
【0039】
「液体」は、分子が引力をおよぼしあっている状態であるが、流動的で、容器に合わせて形を変え、気体と同様に流体としての特性を示すが、気体に比べて圧縮性が小さいのでパスカルの原理に従う。液体は、ほぼ一定の密度を保ち、気体とは異なり、容器全体に広がることはない。液体は、それ自身の表面を形成するなど特有の性質として、表面張力がある。直観的には、形が一定ならば「固体」、形は一定しないが体積が一定ならば「液体」、形も体積も一定しないのが「気体」である。
【0040】
「液状発泡剤」は、それ自身の温度がマイナス40℃?プラス150℃、圧力が0.01MPa?25MPaの範囲内のもと{温度と圧力とが定められた点(もと、元、下)}で上述した液体の性質を示す物質を言う。
【0041】
液状発泡剤は、通常使用する段階、例えば加熱筒内へ注入する時、または図2および図3で示す気化器・反応器22に注入をする段階で液体であればよい。本発明において、液状発泡剤は、例えば、熱可塑性樹脂の射出成形においては1ショット当りの樹脂の重量、押し出し成形加工においては一定の時間当たりの樹脂の押出重量に対して、注入の容量の測定が可能であることが求められる。
【0042】
このことから、本発明では、液状発泡剤は、水、アルコール類、水とアルコール類との混合溶液、炭酸水、炭酸水素塩の水溶液、カルボン酸の水溶液、カルボン酸塩の水溶液、エーテル類、水とエーテル類との混合溶液などに代表される液体、これらを主成分として他の物質を加え、混ぜ合わせた、エマルジョン(乳濁液)、サスペンジョン(懸濁液)、ゾルまたはゲルも含めた液状の物質がある。なお、本発明で「液体」と「液状」とは同義語である。
【0043】
「注入量」とは、一定重量の樹脂に対し、注入する液状発泡剤の容量が定められていることを言う。
「容量」とは、注射器、秤などの装置で量った体積(vol)、重量(wt)または質量(mass)を言う。地球上では重力の加速度を生じさせる力は略一定の9.8ニュートン(N)であることから、重量と質量とは同義語とする。
【0044】
「制御(コントロール)」とは、一定量の樹脂に、予め定められた容量の液状発泡剤を注入することを言う。
「計量」または「チャージ」とは、何らかの手段で容量を量り取ることを言う。成形加工でも計量と言うが、これはスクリュの回転数、または後退距離などによって、樹脂の容量を量り取ることができることを言う。
【0045】
「起泡」とは、液状発泡剤、市販の発泡剤が気化などの物理的な変化、熱分解、化学反応などによって発泡成形に有用な気体、例えば水蒸気、アルコール類の蒸気(気体)、エーテル類の蒸気、有機溶剤の蒸気、一酸化炭素、炭酸ガス、窒素ガス、水素ガスなどを発生させることを言う。
【0046】
別言すると、「起泡」とは、外部からの圧力、たとえばIGCP、OGCP、背圧、射出圧力などの力によって発泡性ガスが抑えられた状態(樹脂中に圧縮され体積が小さく微分散および加圧溶解の少なくとも一つがなされた状態)から、外部からの圧力が少なくなりまたは無くなり、樹脂中の発泡性ガスの体積が増すこと、または加圧溶解されていた発泡性ガスが気体になることを言う。
また、「起泡」には、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂が加熱筒から押出されて発泡する場合または、熱硬化性樹脂が金型キャビティ内で加熱されて発泡する場合も含まれる。液状発泡剤、固体の発泡剤が、気化、熱分解、化学反応によって発泡性ガスが発生する工程も「起泡」と言う。
【0047】
熱可塑性樹脂の場合、「発泡」とは、発泡性ガスを溶融状態の熱可塑性樹脂中に微分散および加圧溶解の少なくとも一つをさせ、圧力を下げることで、熱可塑性樹脂の内部および表面の少なくとも一つで発泡セルが形成させることを言う。
熱硬化性樹脂の場合、「発泡」とは、発泡剤を加熱することで、発泡剤が気化、熱分解、化学反応して、発泡性ガスを発生し、熱硬化性樹脂の内部および表面の少なくとも一つで発泡セルを形成させることを言う。
このように発泡によって内部、または外部に発泡層を持った成形品は、発泡成形品と言う。
【0048】
「発泡性樹脂」とは、発泡成形に有用な発泡性ガスを微分散および加圧溶解の少なくとも一つがなされた溶融状態の熱可塑性樹脂を言う。
別言すると、「発泡性樹脂」とは、液状発泡剤および市販の発泡剤の少なくとも一つを含んだ熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂を言う。
本発明では、「溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂」、「発泡剤含有の熱可塑性樹脂、または発泡剤含有の熱硬化性樹脂」のように、発泡性を持たせたこと、液状発泡剤および市販の発泡剤の少なくとも一つを含有することなど樹脂の状態をできるだけ正確に記す。
【0049】
「発泡成形品」とは、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂を用いて成形加工した、内部に不連続な発泡セル(Cell)を持っている樹脂成形品を言う。発泡セルは、その大きさが1,000μm(ミクロン、マイクロメーター)以下である。本発明では、中空部分と発泡セルとが混在する場合も発泡成形品とする。
【0050】
「併用」とは、それだけでなく、別のモノとともに用いること、組み合わせることを言う。例えば、本発明の明細書には多くの成形加工法が記載されている。これらの成形法は1つでも効果があるが、別の方法との併用も可能で、相乗効果を求めたり、一方または両方の効果の向上が期待できる。また、液状発泡剤も、単独ではなく数種類を併用することもある。市販の発泡剤と併用することもある。
【0051】
「発泡剤」は、大きくは物理発泡剤、化学発泡剤に分類され、それぞれ無機系、有機系のモノがある。発泡剤は、化学発泡剤の無機系の熱分解型では炭酸水素塩、炭酸塩、亜硝酸塩、水素化合物カルボン酸、カルボン酸塩などがあり、有機系の熱分解型であるアゾ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、アジ化合物、ニトロソ化合物、トリアゾール化合物などがあり、反応型ではイソシアネート化合物がある。本発明では、発泡剤
の性質を明確にするために「液状発泡剤」、「市販の発泡剤」、「固形の発泡剤」のように区別する。
【0052】
市販の発泡剤は、例えば発泡剤のマスターバッチとしてポリスレン、ファインブロー(何れも商品名で固形の性状はペレット)などがある。
発泡剤のマスターバッチは、無機系発泡剤または有機系発泡剤と、成形予定の樹脂などと、を用いて生産される。
【0053】
無機系発泡剤は、例えば、炭酸ナトリウムに代表される炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムに代表される炭酸水素塩、カルボン酸、カルボン酸塩、有機酸、クエン酸2水素ナトロウム、クエン酸2水素カリクムに代表される有機酸塩などである。
有機系発泡剤は、例えば、ADCA(アゾジカルボン酸アミド、アゾジカルボンアミド)、HDCA(ヒドロジカルボン酸アミド、ヒドリジカルボンアミド)、バリウムアゾジカルボキシレート、OBSH{P-P’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジッド)}、DPT(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)などである。
発泡剤、発泡成形の詳細は、株式会社技術情報協会1993年8月発行の各種高分子と発泡成形技術に記載されている。
【0054】
本発明において使用可能で有用な発泡剤の性状は、ペレットまたはパウダーではなく、液状(液体)である。液体は、注射器のような装置、または流量が確認できるプランジャポンプ、またはダイヤフラムポンプなどを用いて、容量を測定することができ、容量制御が可能である。
【0055】
本発明で使用可能な液状発泡剤は、熱的な作用によって気化、熱分解、化学反応、または熱的な作用をさせなくとも混ぜ合わせることで化学反応して発泡性ガスを発生させる物質を言う。
液状発泡剤は、例えば、水、1価のアルコ-ル類、多価アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などがあげられる。それらは、単独で、あるいは2種以上を混合した溶液としても使用できる。
【0056】
液状発泡剤は、エタノール96wt(重量)%と水4wt%の混合溶液などの共沸混合物も含まれる。
なお、「共沸混合物」は、混合する物質同士に相互作用がある場合、一つの物質のように共沸点を示す。例えば、本発明で使用する水とエタノールの混合物は、共沸混合物である。液状発泡剤として共沸混合物を使用する場合は、一方の物質が発泡核剤として作用する場合がある。
【0057】
また、液状発泡剤は、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、炭酸水素塩(重炭酸塩:例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)、亜硝酸塩、硝酸塩、カルボン酸(例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸など)、カルボン酸塩(例えば、クエン酸2水素ナトリウム、クエン酸2水素カリウムなど)、アジ化ナトリウムの水溶液、前記一価アルコール類と有機溶剤、例えばペンタンまたはヘキサンなどの混合溶液、前記炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸、カルボン酸塩などの水溶液とアルコール類との混合溶液などが例示できる。
【0058】
これら塩類の水溶液は、通常時に析出しない濃度であることが必要である。
これら塩類の水溶液が析出した場合は、加温し再溶解させる。
これら塩類の水溶液は、溶解度を上げるために水溶液を加温しながら使用する場合もある。例えば、重曹または炭酸水素カリウムなどの溶解度は温度が高くなれば大きくなるの
で、図1乃至図3の液状発泡剤を入れるタンク1およびシリンジ11とその液状発泡剤が通る配管などは、必要に応じて溶解度を上げる目的で加温する。また、図34乃至図36、図39では液状発泡剤を入れるタンク1および145のダイラフラムポンプとその液状発泡剤が通る配管などは、必要に応じて溶解度を上げる目的で加温する。
【0059】
また、有機系の熱分解型の発泡剤であるADCA、DPTなどは、水またはアルコール類、発泡成形に有用な低沸点の有機溶剤などへは不溶なので、サスペンジョンとして使用し、発泡成形に有用な低沸点の有機溶剤と水とは乳濁液(エマルション)として使用する。これらは、本発明に記載した手段、例えば図1、図2、図34、図35の装置などを用いて加熱筒内への注入が可能である。二酸化炭素の水溶液(炭酸水)、他に液化炭酸ガス、液化プロパン、液化ブタンも有用な液状発泡剤である。
【0060】
熱的な作用をさせなくとも、例えば炭酸塩、炭酸水塩などの塩基性物質の固体、またはその水溶液と、無機酸、有機酸の水溶液との接触で発生してくる炭酸ガスも図3の装置を用いれば発泡性ガスとして使用できるので、何れか一方が液状であれば液状発泡剤に含まれる。
炭酸ガスは、臨界温度以下で加圧し加熱筒内に注入するために送り込もうとすると液化するので、図3、図36の気化器・反応器22と、それ以降加熱筒までの配管などは臨界温度以上に加温する。
【0061】
上記反応は、図3の製造装置を用いなくとも、例えば、炭酸水素塩または炭酸水素塩水溶液と、クエン酸またはクエン酸の水溶液と、を加熱筒内にそれぞれ液体である一方を容量制御して注入し炭酸ガスを発生させることで安定した発泡成形ができる。
【0062】
また、図3の装置を用いれば、金属と酸性物質、塩基性物質の接触で水素ガスを発生させ発泡性ガスとして活用もできる。
【0063】
次に、本発明で使用する液状発泡剤の使用方法について説明する。
液状発泡剤は、使用時には液状で、図1、図2、図35、図36、図38、図39の加熱筒7内または気化器・反応器22に注入した時に、熱的な作用によって気化などの物理変化、熱分解および化学反応などの少なくとも1つにより発泡性ガスを発生させる。また、液状発泡剤は、樹脂に混ぜ合わせ、金型キャビティ内で加熱することで起泡させる。
【0064】
液状発泡剤は、具体的には、水、炭酸水、メタノール、エタノール、ブロパノール、ブタノール、デカノールなど脂肪族アルコール類、例えば一級、二級、三級の一価のアルコール類、多価のアルコール類で炭素数が20以下、好ましくは14以下、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、エチルブチルエーテルなどの脂肪族エーテル、芳香族のエーテル、テトラヒドロフランなどの環状エーテルなどのエーテル類、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、n-ブタノン(メチルエチルケトン、MEK、)に代表されるケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、塩化メチレン、クロロフォルム、四塩化炭素の脂肪族炭化水素の塩化物などから選ばれる有機溶剤と称する物質の単独で、あるいは2種以上の混合物などが例示される。
成形機の加熱筒に注入し、気化させ発泡性ガスを発生させる液状発泡剤は、例えば、水、アルコール類、エーテル類など、沸点が溶融樹脂の温度以下であることが望ましい。
金型の表面温度が使用する液状発泡剤の露点温度より高い方が、金型の表面で液状発泡剤の一部が凝縮しないので、この凝縮に起因するヒケ発生が少なくなる。
【0065】
液状発泡剤は、水と上述した有機溶剤とを混ぜわせた混合液、有機溶剤同士の混合物、水、または有機溶剤に炭酸塩、重曹、炭酸水素カリウムに代表される重炭酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩、硼(ほう)水素化ナトリウムに代表される硼水素化物、アジ化ナトリウムに代表される無機のアジ化物、酢酸、酪酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸などに代表される化学式がR-COOHで示されるカルボン酸に代表される有機酸、前記カルボン酸のアルカリ金属塩などの水溶液、または懸濁液、水に対して不溶な物質、例えばベンゼン、キシレンなどは界面活性剤を用いた乳濁液、ADCA、HDCA、DPTなどのパウダーは水、アルコール類、またはエーテル類などでの懸濁液を使用したりする。
本発明で使用する液状発泡剤は、液体の発泡剤、液体発泡剤などと称する場合がある。
【0066】
重曹、炭酸水素カリウムに代表される炭酸水素塩、クエン酸等の有機酸、クエン酸塩などを水溶液にして液状発泡剤として成形機の加熱筒に注入し、気化および熱分解させて発泡性ガスを発生させる場合、溶質の熱分解の温度、および溶媒の気化温度は、共に溶融樹脂の温度以下あることが望ましい。
【0067】
液状発泡剤は、加熱筒の熱などによって気化、熱分解などをさせる。
液状発泡剤は、図2および図3に示すように、加熱筒7への注入前に、容量を量り取り、容量制御された液状発泡剤に熱を加えて気化あるいは熱分解させる気化器(エバポレーター、キャブレター)・反応器(ジェネレーター)22を設けて、加熱筒7に発泡成形に有効なガスを注入する方法もある。
加熱筒7への注入前に液状発泡剤を熱分解して発泡性ガスを発生させた場合は、発泡残渣が気化器・反応器22に残り、成形品に入らないため、発泡成形品における残渣の問題を解決することができる。
【0068】
熱硬化性樹脂の場合は、事前に液状発泡剤を成形予定の熱硬化性樹脂と混ぜ合わせて、射出成形では金型キャビティ内での加熱の段階、押出成形ではダイの加熱の段階で起泡させることができる。
【0069】
液状発泡剤の組成、濃度などは、例えば水、アルコール類およびエテール類から選ばれる少なくとも2つ以上の混合物、の混合比、重曹水の重曹の濃度または注入量で決定される。また、液状発泡剤を注入する際の圧力は、使用する樹脂と、成形条件、成形法、成形品の形状などで決定される。
なお、これら混合物、水溶液の製造には溶解度を考慮する必要がある。
【0070】
液状発泡剤の内、炭酸塩、炭酸水素塩の水溶液は、無機の酸(無機酸)、有機の酸(有機酸)との接触で炭酸ガスが発生する。この化学反応を用いる液状発泡剤の場合には、炭酸塩、炭酸水素塩などの塩基性物質と反応をする酸の化学当量、モル当量を考慮に入れ、それぞれの量を決定する必要がある。
【0071】
図3、図36に示す成形品の製造装置は、上述した炭酸塩、炭酸水素塩と、無機酸、有機酸の反応によって炭酸ガスを発生させ、発泡性ガスとして使用する場合に用いる。例えば、水溶液として用いる場合は、気化器・反応器22を加熱し、化学反応と同時に、溶媒の水を気化させ発泡性ガスにすることもある。
【0072】
液状発泡剤としてアルコール類またはエーテル類を用いる場合は、溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の流動性は増すので、射出成形加工で低圧成形が可能、転写性が向上するなどの作用と効果を奏する。
【0073】
液状発泡剤として、水、アルコール類、エーテル類、重曹水、炭酸水素カリウム水溶液、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどを用いた場合は、発泡性ガスを発生する気化の工程での気化熱、熱分解の工程では何れも吸熱反応で加熱筒内の溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の温度を下げる作用がある。このため、DPTなど発熱量の大きい発泡剤と
併用する場合は、DPT単体で使用した際に問題となる熱可塑性樹脂の成形品の焼けが低減される。またDPTの使用量が下がるので、経済的な効果(成形品のコストトダウン)がある。
【0074】
液化炭酸ガス、液体窒素は、使用時に液体であるため、成形手段によっては使用可能である。ドライアイス、ナフタリンなど昇華する性質がある物質は、発泡剤として使用できるので、液体の液状発泡剤との併用が可能である。
【0075】
「発泡性ガス」とは、ADCAに代表される市販の発泡剤、液状発泡剤の気化、熱分解、または化学反応によって発生する気体を言う。
発泡性ガスは、加熱筒内、金型キャビティ内の圧力と樹脂の温度(成形可能な樹脂の温度)、金型またはダイの温度から、圧力が1気圧(760mm/Hg)で、温度が75℃以上の気体で、本発明で記載の樹脂を発泡させる能力のあるガスならば何でもよい。特に水蒸気、一酸化炭素、炭酸ガス、水素ガス、窒素ガスと、アルコール類{毒性を考慮すれば、メタノールよりもエタノール、イソプロパノール(IPA)がよい。}の蒸気、エーテル類の蒸気、ペンタン、ヘキサンなど有機溶剤の蒸気、プロパン、ブタンガスなどが有用である。
発泡性ガスは、1種類でもよいが、ガスによって微分散、溶解するなど樹脂への作用に違いがあるので、数種類を混ぜあわせて使用することもある。
【0076】
次に、液状発泡剤の注入装置について、図を用いて説明する。
説明を分かりやすくするために、図1に示す熱可塑性樹脂の射出成形での液状発泡剤の使用について説明する。
液状発泡剤は、1回の射出量に対して最適な容量を量り取り、加熱筒7内の溶融された熱可塑性樹脂に直接注入し、加熱筒7の熱によって気化、熱分解および化学反応の少なくとも一つを行わせ、発泡性ガスを発生させる。加熱筒7内への液状発泡剤の注入は、一般的に、加熱筒7にそれぞれ設けた注入口5から行う。
【0077】
図1に示す成形品の製造装置201について説明する。
符号1は、液状発泡剤を入れるタンクである。
タンク1内の液状発泡剤は、液状発泡剤の自重および注入装置4の吸引動作により、またはタンク1内を予め加圧し、その圧力で配管9を介して、注入装置4に送り込まれる。
【0078】
注入装置4は、プランジャ12の駆動装置3、例えばサーボモーター、油圧シリンダ、または空圧シリンダなどで、次の計量(可塑化)する熱可塑性脂などに注入する液状発泡剤の容量を量り取る(計量)ようになっている。
1ショット分を加熱筒7内へ注入ができるようにしてあるか、あるいは一度に多くの液状発泡剤の容量を量り取り、1ショットごとの必要量の注入ができるようになっている。
【0079】
射出成形の場合、注入は、
(a)加熱筒7内に一度に入れる、または数回に分けて入れる、
(b)計量の開始から終了に合わせて連続して入れる、
(c)計量の開始からあらかじめ定めた時間が経過した後、注入が開始され、その後、更に予め定めた時間が経過した後、注入を停止する、
(d)計量の開始からあらかじめ定めた時間が経過した後、注入が開始され、その後、計量の終了に合わせて注入を停止する、
(e)計量の終了後に少し遅れて注入を停止する、
などがある。
押出成形の場合、通常は、注入を連続させる。
【0080】
熱可塑性樹脂の可塑化(計量)が開始される場合は、外部のプランジャ12の駆動装置3が動いて、プランジャ12が下がり、加熱筒7内への液状発泡剤の注入を開始する。注入口(弁)5は、加熱筒7内の溶融状態の熱可塑性樹脂の圧力が高くなっても、注入装置4に逆流しないように、例えば図10乃至図19のように工夫されている。
【0081】
符号6は材料を入れるホッパー、符号7は加熱筒、符号8は熱可塑性樹脂の可塑化と液状発泡剤を混ぜ合わせ、起泡させて、発泡性ガスを溶融状態の熱可塑性樹脂中に微分散させ、加圧溶解をさせるスクリュ、符号16は計量中に鼻タレを防止する目的で装着されるシャット・オフノズル、符号10は金型キャビティである。
【0082】
液状発泡剤を加熱筒7内に注入する注入装置4は、シリンジ(筒)11と、プランジャ(押子)12とを有している。
プランジャ12は、プランジャ12の駆動装置3につながれ、射出成形機204からの計量開始の信号を受けて直ぐに、または一定の時間が経過して加熱筒7内への液状発泡剤の注入が開始される。
注入のスピード(時間あたりの注入の容量)は、一度に入れてもよいが、好ましくは、計量のスピードおよび射出成形機のスクリュ8の位置の少なくとも一つと同期させる。注入は、計量(スクリュ8の回転)が停止する前、停止した時、または停止後に少し遅れて、停止される。
【0083】
プランジャ12には、シリンジ11の外(図1では紙面上部)に液状発泡剤が漏れないようにプランジャリング13が設けられている。プランジャリング13は、Oリングでもよいが、圧力が加わることによりシール性が高くなるオムニシール(商品名)、バリシール(商品名)など摺動性のあるテフロン(登録商標)または高密度PE、金属性のものを用いることが好ましい。プランジャリング13は、1本でもよいが、シール性を高めるため複数本、かつ複数の種類を使用するのが望ましい。
プランジャの振れを少なくするために、スライドリング(図示せず)などを設けるとよい。
【0084】
図2、図35は、図1に示す成形品の製造装置201に気化器・反応器22を持たせた成形品の製造装置である。
気化器・反応器22は、液状発泡剤を入れた後、ヒータなどで外部から加熱して気化、熱分解および化学反応の少なくとも一つをさせて発泡性ガスを発生させる。
実施例2、実施例27では、高周波誘導加熱を用いた。この発泡性ガスは、必要に応じて圧力調整弁23で圧力を調整して加熱筒7内に注入する。流量調整が必要な場合は、流用調整弁26を設ける。なお、符号24は注入前の圧力、符号25は加熱筒内に注入する発泡性ガスの圧力計である。
【0085】
図2、図35に示す気化器・反応器22の概念を使用すれば、例えば粉末のADCAを気化器・反応器22に入れた後、外部から加熱してADCAを熱分解させ、発生するガスだけを加熱筒7内に注入し、発泡残渣を回収、廃棄すれば、ADCAの使用でも成形品中に残渣が残る問題は解決する。途中に水をくぐらせれば、発泡性ガス中に含まれるアンモニアガスを除去できる。
【0086】
熱可塑性樹脂の成形加工の場合であって、液状発泡剤が水、またはアルコール類、エーテル類の場合は、気化器・反応器22を必ずしも用いる必要はなく、液状発泡剤は直接加熱筒7内に入れ、気化などをさせればよい。むろん、熱可塑性樹脂の成形加工の場合であっても、気化器・反応器22内で気化などをさせて、発泡性ガスを加熱筒7内に入れてもよい。
なお、必要に応じて気化させた発泡性ガスは、圧力調整弁23で圧力を調整して加熱筒
7内に注入する。流量調整が必要な場合は、流量調整弁26を設けることが望ましい。
【0087】
図3、図36は、液状発泡剤を化学反応させ、発泡成形に有用な発泡性ガスを発生させる装置を示した。ここでは、重曹水と、クエン酸水溶液との化学反応で炭酸ガスを発生させる手段を説明する。
図3の紙面左側に示したタンク1には重曹水、図3の紙面右側に示したタンク1にはクエン酸水溶液を入れ、化学反応に必要な当量をプランジャ12でそれぞれ計りとる。
その後、それぞれのプランジャを動作させて気化器・反応器22に重曹水およびクエン酸水溶液入れて、気化器・反応器22の内部で炭酸ガスを発生させる。
【0088】
圧力調整弁(レギュレーター)23で炭酸ガスの圧力を調整して加熱筒7内に注入する。
流量調整が必要な場合は流量調整弁26を設ける。この装置を応用すれば、気化器・反応器22中に固形物、例えばCaCO3を入れて塩酸などを用い炭酸ガスを発生させ発泡性ガスとして使用することもできる。
また、この装置を応用すれば、金属亜鉛に塩酸、金属アルミニウムに水酸化ナトリウム水溶液を接触させて発生する水素も発泡性ガスとして使用できる。
【0089】
図1乃至図3、図38に示す成形品の製造装置は射出成形機204である。図34乃至図36、図39に示す成形品の製造装置は押出機206である。この装置で得られた発泡性樹脂は、常圧(非加圧)、加圧のブロック成形、注型(形)。カレンダー成形、積層成形などでも用いることができ、成形品を製造できる。
なお、図1中の符号2は、逆止弁で、液状発泡剤の逆流を防いでいる。
また、図1乃至図3、図38、図34乃至図36、図39に示した成形品の製造装置は、熱硬化性樹脂を用いた成形品の製造でも使用できる。この場合は、主に金型、またはダイを加熱する
【0090】
図1乃至図3、図38は、射出成形の場合の説明をした。
押出成形の場合は、加熱筒7内の溶融状態の熱可塑性樹脂に対して連続的に液状発泡剤を注入する必要が有るので、注入装置4を複数設けて交互に運転するか、連続的に注入可能なギャーポンプ、ダイヤフラムポンプポンプ、プランジャポンプなどに変更すればよい。これらポンプを用いた場合に注入での脈動が発生する場合は、その後に、脈動を低減させるクッションタンク(図示せず)を設けてもよい。図34乃至図36、図39は押出成形の場合を示し注入装置4をダイヤフラムポンプ145にして図示した。
【0091】
上記した図1乃至図3、図38の説明は、射出成形加工1ショットごとに毎回の液状発泡剤の容量を量り取る工程を示した。
注入装置4へ一度に多くの容量を量り取り(チャージをしておいて)、駆動装置3の動作、例えばサーボモーターを用いる場合は、その動きによって注入量を決めてもよい。
特に、注入装置4に一旦液状発泡剤数ショット分を溜めて、数回に分けて注入する場合は、必要に応じて自動開閉のバルブ(図示せず)を注入口5の上流側に設置する。
【0092】
図1は射出成形、図34は押出成形で、1種類の液状発泡剤を加熱筒7内に注入する手段を図示した。
2種類以上の液状発泡剤を加熱筒7内に注入するには、タンク1および注入装置4を液状発泡剤の種類だけ準備する。そして、それぞれの液状発泡剤は、1つの注入口5の手前(上流側)で混合して加熱筒7内に注入しても、複数の注入口5を加熱筒7に設けて、それぞれの注入口5から加熱筒7内に注入してもよい(図5、図6および図7)。
【0093】
液状発泡剤が1種類の場合、注入口5は、1つである必要はなく、複数の注入口5から
液状発泡剤を注入してもよい。
加熱筒7への注入口5の設置(取り付け)場所は、例えば、加熱筒7の先端からの距離が同じ場所でも、異なった場所でもよく、同一場所では加熱筒7の周方向ならば何処でもよい。
なお、図4には、注入口5の詳細が示してある。
【0094】
液状発泡剤は、必ずしも混合液である必要はなく、例えば、水とエタノールとを別々の注入口5から加熱筒7内に注入してもよい。
図5は、加熱筒7に2つの注入口5を設け、1種類の液状発泡剤を2つの注入口5から注入する構成を例示した。
図6は、加熱筒7に2つの注入口5を設け、2種類の異なる液状発泡剤を2つの注入口5からそれぞれ注入する構成を例示した。
この場合、それぞれの発泡剤の注入は、同時でも同時でなくてもよい。
【0095】
図7は、加熱筒7に1つの注入口5を設け、2種類の異なる液状発泡剤を1つの注入口5から注入する構成を示した。この場合、それぞれの発泡剤の注入は、同時でも同時でなくてもよい。
図5および図6は、2つの注入口を示したが、注入口5は、それ以上設置してもよい。また、図5乃至図7の構成を組み合わせて実施してもよい。
【0096】
ADCA、HDCA、DPTなどは、水とアルコール類などには難溶、あるいは不溶である。このため、これらを使用する場合は、成形予定の樹脂と相容(溶)性のある樹脂でドープセメントを作り、その中に分散させる。そのままで使用することも可能であるが、水またはアルコール類などを加えて粘度調整を行い注入可能な粘度にしてから使用する場合もある。
【0097】
以下、ドープセメントを用いたABS用の液状発泡剤の製造方法を示す。
ABSと相溶性のあるAS樹脂のペレットに適量のn-ブタノンを加え、常温で放置、溶解しドープセメントとする。その中にADCAのパウダー(粉末)を混ぜわせADCA入り、懸濁させたゾル状の液状発泡剤とする。粘度が高い場合はn-ブタノンなどを加え、粘度が低い場合は別に準備した高粘度のASのドープセメントを加え粘度調整をする。ADCA含有のドープセメントを用いた液状発泡剤は、ベースレジンがASなので、AS、ABS、PCなどと相容性を示すこれらの樹脂の液状発泡剤として使用できる。ASをPSにすれば、PS、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)、m-PPEなど用の液状発泡剤になる。
【0098】
発泡助剤、発泡核剤(材){起泡核剤(材)}、反応型発泡剤の場合は、上述したように別々に加熱筒7に注入する手段の他、これらの材料だけを成形予定の樹脂に添着する、成形予定の樹脂を用いてマスターバッチにする、成形予定の樹脂に溶融混練する場合もある。
【0099】
例えば、重曹とクエン酸とを別々の水溶液とし、それぞれを図6または図7に示すように加熱筒7に注入し、加熱筒7内で混合して化学反応させ、発泡性ガスを発生させる。
【0100】
クエン酸をマスターバッチとして、炭酸水素塩の水溶液を液状発泡剤として、加熱筒7内で化学反応させることもできる。また勿論のこと、図3の製造装置を用いてもよい。
【0101】
水、またはアルコール類などに不溶なADCA、発泡助剤、発泡核剤などは、液状発泡剤中に分散させ懸濁液として使用する手段もある。そのままでは分離してしまうので、機械的な攪拌またはその他バブリング(空気攪拌)などによって分離をさせないような手段
を講じながら注入する(図8)。
なお、図8は、エマルジョンまたはサスペンジョンとした発泡剤の攪拌の手段を示した図である。この機構は、主に液状発泡剤を入れるタンク1の内部に用いる。
【0102】
発泡成形に最も有用なガスは、水蒸気、炭酸ガスまたは窒素ガスである。
本発明において、水蒸気は、水の気化、炭酸水素塩、カルボン酸などの熱分解、または有機酸などとの化学反応で容易に発生させることができる。
【0103】
窒素ガスは、アジ化ナトリウムなどに代表される無機のアジ化合物、ADCA、DPTなどの熱分解で得られる。アジ化合物の毒性が懸念させるが、取り扱いが容易な水溶液とし、図1、図2、図34、図35の装置を用いて窒素ガスを発生させる。ADCA、HDCAは毒性が低いので、発泡剤のマスターバッチ、あるいは成形予定の樹脂ペレットなどに添着させる。発泡に必要な窒素ガスは、このように従来の手段で得て、液状発泡剤との併用によって、発泡剤のマスターバッチなどの使用量を低減させる。
【0104】
アルコール類の蒸気、エーテル類の蒸気は、有用な発泡性ガスとして用いることができる。、アルコール類の蒸気、エーテル類の蒸気は、液体のアルコール類、エーテル類を加熱して、気化させることにより、生成できる。
【0105】
本発明においては、液状発泡剤は、上述したMuCell等との併用も可能である。
例えば、窒素ガスはガス状態で加熱筒7に注入し、炭酸ガスは重曹の水溶液(重曹水)を用いれば、窒素ガス、炭酸ガスおよび水蒸気の混合ガスを得ることができる。このため、ある程度はMuCell等の課題である注入量のバラツキ(圧力だけが設定されたガスの注入量のバラツキ)などの低減になる。
【0106】
「発泡助剤」とは、発泡剤の分解温度を下げたり、発泡剤に分解を促進させる目的で使用する物質を言う。有機系発泡剤の発泡助剤は、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、金属石鹸、尿素、亜鉛華などがあげられ、炭酸塩、炭酸水素塩の分解に用いる無機系、有機系の酸も発泡助剤であるとも言える。
【0107】
「発泡核剤(気泡核剤、起泡核剤)」とは、起泡させる目的、微細な発泡セルを形成させる目的で、成形予定の樹脂、または本発明で使用する液状発泡剤に混ぜ合わせる物質である。
【0108】
発泡核剤は、例えば、シリカ、タルク、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩、発泡剤として使用されるクエン酸2水素ナトリウム(クエン酸モノソーダ)、クエン酸1水素2ナトリウム(クエン酸ジソーダ)、クエン酸3ナトリウム(クエン酸トリソーダ)、クエン酸2水素カリウム(クエン酸モノカリウム)、クエン酸1水素2カリウムウム(クエン酸ジカリウム)、クエン酸3カリウム(クエン酸トリカリウム)に代表されるヒドロキシ酸のアルカリ金属塩、さらには発泡剤のADCA、DPT、OBSHなどが挙げられる。
【0109】
液状発泡剤の成分(例えば、水、アルコール類、エーテル類など)に不溶な発泡核剤(例えば、タルク、アルミナ、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)は、成形予定の樹脂(成形に使用する樹脂)に混ぜ合わせる方がよい。上記した発泡核剤以外では、樹脂の添加剤(例えば、顔料など)も発泡核剤の作用をする。
【0110】
「発泡倍率」は、中実(ソリッド)成形品の重量から発泡成形品の重量を減じ、その値を中実成形品の重量で除し、100を乗じた値である。発泡倍率は、発泡層が形成され、発泡構造体となっているか否かを判断するための参考値である。
【0111】
「発泡剤混合比」とは、液状発泡剤の重量、または容量を1とし、成形予定の樹脂の重量、または容量との比をいい、成形予定の樹脂中に含まれる発泡剤の割合で表す。
例えば、樹脂に対して2wt%、2vol(容量)%の液状発泡剤を使用する場合は、2:100(あるいは1:50、あるいは1/50)、または2wt%、2vol%などと表現する。
【0112】
「注入量」とは、成形予定の樹脂中に混ぜ合わせる液状発泡剤の量をいい、「発泡剤混合比」と同義語である。市販の発泡剤またはその他のマスターバッチの使用時でも「発泡剤混合比」または「注入量」を用いる。
【0113】
本発明が適用可能な製品は、押出成形、射出成形、注型またはブロック成形などによって作られた樹脂成形品であれば材質、形状、使用用途など特に問わない。
OA、家電製品、遊技機などでは、スチレン系樹脂、またはスチレン系樹脂を含むポリマーアロイ、ポリマーブレンドが主に使用される。
車両では、オレフィン系樹脂、またはオレフィン系樹脂を含むポリマーアロイ若しくはポリマーブレンドが主に使用される。
住宅、家具、雑貨品などでは、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニルなどに代表されるビニル系樹脂、エステル系、アミド系樹脂などの熱可塑性樹脂を含むポリマーアロイ若しくはポリマーブレンドが主に使用される。また、住宅、家具、雑貨品などでは、熱硬化性樹脂が主流である。
【0114】
本発明は、市場回収された特に熱可塑性樹脂を出発原料として、改質、変性をして、新たな成形材料としたリサイクル材を使用した成形品も対象としている。
発泡成形は、中実成形に比べ、保圧を使用しない分、寸法安定性(成形品の寸法の繰り返し精度)が高いので、熱可塑性樹脂のリサイクル(再生)材の使用に適する。
【0115】
本発明で使用可能な樹脂は、化学工業日報社のプラスチック成形材料商取引便覧-特性データベース-〈1999年版、2012年版〉に記載されている。
【0116】
本発明は、成形用の熱可塑性樹脂であれば種類を問わない。
熱可塑性樹脂は、例示すれば、スチレン系単量体を重合せしめてなるポリスチレン系樹脂、例えばポリスチレン(PS)、ハイインパクト(耐衝撃性)ポリスチレン(HIPS)、ニトリル系単量体・スチレン系単量体との共重合体であるスチレン系樹脂、例えば、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、ニトリル系単量体・スチレン系単量体・ブタジエン系ゴムからなる樹脂例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ブタジエン系ゴムをオレフィン系ゴムとしたAES、アクリル系ゴムとしたASA(AAS)などのスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などに代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、スチレン変性のポリフェニレンエーテル(m-PPE)、その他に樹脂で変性したPPE、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのエンジニアリングプラスチック、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂、塩化ビニル(PVC)のビニル系樹脂などである。
【0117】
熱可塑性樹脂、または熱可塑性エラストマーは、二種以上を混合してポリマーブレンドあるいはポリマーアロイとしてもよい。ポリマーブレンドあるいはポリマーアロイは、例
えば押出成形機におけるスクリュ混練などによって製造される。
【0118】
本発明で実施可能な樹脂として、熱硬化性樹脂もある。
熱硬化性樹脂の場合は、加熱筒の温度は、液状発泡剤を起泡させる温度ではないので、金型キャビティ内で加熱する時の温度で気化および熱分解の少なくとも1つをして発泡させる。
熱硬化性樹脂には、尿素樹脂、メラミン、フェノール、ポリエステル(不飽和ポリエステル)、エポキシなどがある。
【0119】
エラストマーには、ウレタンゴム系、フッ素ゴム系、シリコンゴム系の熱硬化性系エラストマー(TSE)と、スチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、ウレタン系、アミド系の熱可塑性エラストマー(TPE)がある。
TSEは、熱硬化性樹脂または後述のゴムと同じように、金型キャビティ内の温度で気化、熱分解などをさせて起泡させる。また、TSEは、押出成形ではダイを加熱することで気化、熱分解などをさせて起泡させる。
【0120】
ゴムは、天然ゴム、SBR、IR、BR、CR、NBRなどのジエン系ゴム、シリコンゴム、ブチルゴム、EPM、EPDM、ウレタンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、エピクロヒドリンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、などの非ジエン系ゴムなどがあげられる。
これらのゴムは、金型キャビティ内への充填後に加熱することで架橋する。ゴムは、その時の温度(架橋温度)によって、液状発泡剤が気化、熱分解などで起泡し、発泡ゴム構造体を形成させる。
【0121】
本発明の樹脂には、機能を損なわない限りにおいては、ラバーダイジェスト社編の便覧ゴム・プラスチック配合薬品1989年3月〔最新版〕1993年、2003年12月〔改訂第二版〕に記載の配合薬品の使用ができる。
【0122】
樹脂の配合時に他の樹脂、および添加剤は、例えば顔料、染料、補強剤(硝子繊維、炭素繊維など)、充填剤(カーボンブラック、シリカ、酸化チタン、タルクなど)耐熱剤、老化防止剤、酸化劣化防止剤、オゾン劣化防止剤、耐候(光)剤(紫外線吸収剤、光安定剤)、可塑剤、発泡助剤、発泡核材、滑剤、スリップ材、内部離型剤、離型剤、防曇剤、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、流動性改良剤、帯電防止剤、相容(溶)化剤などが使用される。
【0123】
「樹脂」とは、熱可塑性樹脂(TPR)、熱硬化性樹脂(TSR)、TSE、TPE、ゴムの全てを言う。
熱可塑性を示す熱可塑性樹脂、およびTPEは、「熱可塑性樹脂」と言う。
熱硬化性を示す、熱硬化性樹脂、ゴム、TSEは、「熱硬化性樹脂」と言う。
【0124】
本発明で実施可能な成形法は、射出成形、押出成形、加圧成形、注型成形、ブロック成形などである。これらの成形法とそれ以外に実施可能な成形法については、1997年3月24日初版第1刷 実用プラスチック成形加工辞典 実用プラスチック成形加工辞典編集委員会 編集 株式会社産業調査会 辞典出版センター発行に記載されている。
本発明の液状発泡剤は、押出成形機、射出成形機などの加熱筒内の樹脂に対して、直接注入する場合と、外部で発泡性ガスを形成し、当該発泡性ガスを加熱筒内の樹脂に注入する場合と、がある。
【0125】
熱可塑性樹脂の押出成形の場合は、溶融状態の熱可塑性樹脂に対して、液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つを連続的に注入する。液状発泡剤および発泡性ガスの少な
くとも一つの注入量は、押出のスピード(量)に対して所望する発泡倍率が得られるように制御する。
【0126】
射出成形の場合は、成形サイクルに同調させ、可塑化の段階、溶融混練の段階で液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも1つを注入する。
【0127】
ホッパー下での液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも1つの注入は、発泡に有用なガスがホッパーを通じて抜けて、加熱筒内の溶融状態の熱可塑性樹脂中に入りにくい。このため、液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも1つは、加熱筒の中の溶融された熱可塑性樹脂に注入し、強(高)混練する。そうすることで、液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも1つは、加熱筒内の溶融状態の熱可塑性樹脂中に均一に微分散または溶解して、溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂が得られる。可塑化、溶融混練の段階には背圧をできるだけ高くし、強混練し発泡性ガスを均一に微分散および加圧溶解の少なくとも一つをさせる。上述したようにホッパーから発泡性ガスが漏れるのを抑制するためには、ホッパー下部に蓋をすることもある。
熱硬化性樹脂の成形加工でも、加熱筒内に液状発泡剤を注入する。
【0128】
MuCell等において発泡に用いるガスは、圧力だけで注入するので、加熱筒内の熱可塑性樹脂中の発泡ガスの量は制御できない。
しかし、本発明は、加熱筒内の熱可塑性樹脂に注入する液状発泡剤または発泡性ガスを容量制御しているので、樹脂中の発泡性ガスの量は一定である。このため、本発明の製造方法により製造される成形品は、安定した発泡力を有する。これが液状発泡剤または発泡性ガスの容量制御であり、本発明の技術的な特徴の1つである。
【0129】
熱可塑性樹脂の可塑化のタイミングは、射出成形機の金型の動きと同期させる必要はないが、計量を遅延させるのが好ましい。所謂計量遅延タイマーを設け、可能ならば計量中型開閉ができることは、ショット毎の成形加工の工程の安定性(発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の発泡力の安定性)の点で好ましい。
トグル式のモーターを用いた電動式の射出成形機(電動機)は、このような動作は容易に設定ができる。計量、可塑化、液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つを注入による発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の溶融混練は、射出前に完了していればよい。
【0130】
液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つの注入は、液体または気体は通過するが溶融状態の熱可塑性樹脂は通過しにくい(逆流しない)構造の注入口から行う。
本発明では「注入口」、または「注入弁」と称し、加熱筒の溶融ゾーン(加熱筒内で溶融した樹脂中)などに設ける。
注入口を通じて加熱筒内に液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つを入れる場所は、図1乃至図3、図38、図34乃至図36、図39などに記載の注入口(弁)5である。
図4、図9、図14、図16は、加熱筒7に穴を開け、そこにネジ加工して、注入口5に施したネジ(図示せず)と、固定目的の例えば図4、図9、図14、図16に示した加熱筒7への固定目的のセットナット31と、によって取り付けられている。
なお、図10乃至図19は、液状発泡剤または発泡性ガスを加熱筒7内へ注入する注入口の詳細な構造を示した図である。
その他の図も含め、本来破線で示すべきところ説明を分かりやすくするため、あえて実線で示した部分もある。
【0131】
注入口5は、内芯29と外筒30とを有する。
内芯29は、断面A-A(詳細は図10乃至図13)で示すように、液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つは通過するが、加熱筒内の溶融状態の発泡性を持たせた熱可
塑性樹脂は逆流しない構造となっている。
【0132】
図10は、図9の注入口の断面A-Aの一例を示しており、2重構造で、内芯29の側面をDカットし、液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つの注入の通路を示した図である。
図10に示すように、二重構造の注入口は、内芯29と外筒30とを有している。
内芯29は、側面がDカットされてその隙間(クリアランス)を液状発泡剤または発泡性ガスが通り、加熱筒7内に注入される。そのクリアランスは1/1000mm?1mmである。
【0133】
図11は、図9の注入口の断面A-Aの他の例を示しており、2重構造で、内芯を二つ割りにした液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つの注入の通路を示した図である。
図12は、図9の注入口の断面A-Aの他の例を示しており、2重構造で、内芯を四つ割りにした液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つの注入通路を示した図である。
液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つは、図11および図12に示されたクリアランスを通り、加熱筒7内に注入される。
【0134】
図13は、図9の注入口の断面A-Aの他の例を示しており、2重構造で内に細い円柱(芯体)を束ねて入れ、その隙間から液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つの注入の通路を示した図である。
図13に示すように、外筒30内には、細い芯体40が束ねて入れられている。液状発泡剤または発泡性ガスは、芯体40の隙間を通り、加熱筒7内に注入される。隙間の調整は芯体40の太さを変えることで行う。
これら内芯と芯体40は、固定する上の埋め込みボルト37と、固定する下の埋め込みボルト38で前後にサンドイッチされて固定される。固定するボルト37および38には、液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つが通るための符号28の穴または溝が設けられている。
【0135】
図14は、液状発泡剤または発泡性ガスを加熱筒内へ注入する注入口の詳細な構造を示しており、ボールチェック弁を使用した構造図である。
ボールチェック弁(球体のボールベアリング)42は、重力が加わり、下に下がり栓をする。このため、加熱筒7内の溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂は、例えば、図1乃至図3、図38で示した注入装置内、図34乃至図36、図39のダイヤフラムポンプ内などに入り込まないようになっている。
液状発泡剤または発泡性ガスの注入時、注入の圧力によってボールチェック弁42は、上に押し上げられる。外筒とボールチェック弁42と接する部分は、ボールチェック弁42のリテーナー43には、図15で例示する符号44の溝または隙間が設けられている。このため、液状発泡剤または発泡性ガスは、ここを通じて、加熱筒7内の樹脂へ注入される。先端に樹脂が少し溜まることが考えられるが、注入によって毎回加熱筒内へ押し戻させるので問題になることはない。これをセルフ・クリーニング作用と言う。
図15は、図14に示したボールチェック弁42のリテーナーを示した図である。
【0136】
図16は、図14のボールチェック弁42を円柱弁とした構造を示した図である。先端は液状発泡剤または発泡性ガスが通るため、図17に示したような注入の溝50を設け、円柱弁の高さよりも少し長くしてある。このため、液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つの注入による圧力によって円柱弁が前進端に達すると、この溝50と接し、注入目的の通路、回路が作られ、ここから液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つは加熱筒7内に注入される。
なお、図17は、図16の円柱弁46の前進端において溝が開となり、液状発泡剤また
は発泡性ガスの通路ができることを示した図である。
【0137】
液状発泡剤または発泡性ガスの注入が完了すれば、重力、加熱筒内の発泡性ガスが混練された樹脂の圧力などによって円柱弁46は溝がないところまで戻される。このため、注入装置内、ポンプ内には、樹脂が進入することはない。
図14および図16の注入口は、重力と加熱筒内の溶融樹脂の圧力によってボールチェック42弁、円柱弁46が自重で下がり、液状発泡剤注入回路が閉じ、加熱筒内の樹脂が注入装置内への侵入、逆流を防ぐには加熱筒の下半分に取り付ける。
【0138】
図18は、液状発泡剤を加熱筒内へ注入する注入口の図16の円柱弁46が、バネによって閉じる機構を示した図である。
図18に示すように、図16の円柱弁46にバネ52を設けることにより、液状発泡剤または発泡性ガスの注入時には注入圧力によってバネは縮められ、円柱弁46は前進し、外筒内壁の溝50(図17)と接し、回路が開かれ、液状発泡剤または発泡性ガスの注入が開始される。液状発泡剤または発泡性ガスの注入が完了すると、バネ52の力によって円柱弁51は元に戻り、注入回路は閉ざされるので、液状発泡剤の注入装置内、ポンプ内に加熱筒内の樹脂が侵入することがない。この構成は、重力を考慮する必要がないので、加熱筒7の上側にも取り付けが可能である。
【0139】
図19は、液状発泡剤を加熱筒内へ注入する注入口を機械的に作動するスライド弁を示した図である。
スライド弁は、油圧、空圧または電気(機)的な動作によって、液状発泡剤の注入装置からの「開」信号を受けて、弁が開き、液状発泡剤または発泡性ガスの注入が開始される。液状発泡剤または発泡性ガスの注入が完了すれば、「閉」信号を受けてスライド弁は閉じる。押出成形機、射出成形機などの加熱筒7への注入口5は1箇所でもよいが、複数設けてもよく、加熱筒7の同じ場所でも、また異なってもよい。
【0140】
これら複数の注入口を設けた場合、同じ液状発泡剤または発泡性ガスを注入してもよく、また異なる液状発泡剤または発泡性ガス、例えば水とエタノール、エタノールと重曹水、重曹水とクエン酸水溶液などでもよい。それぞれの注入口からの液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つの注入は同時でも、異なってもよく、注入の停止(終了)も同時でも、異なっていてもよい。
【0141】
熱可塑性樹脂の押出成形の場合は、加熱筒前部の先端(バレルヘッド)にメッシュ(ストレーナー)を設け、メッシュの大きさ(目の粗さ、大きさ)を制御すること、吐出量を少なくするためにノズル先端を絞る、押出の速度を遅くするなど手段を講じれば、高い背圧がかかり加熱筒内の溶融した熱可塑性樹脂の混練性は向上する。
さらに、スクリュにダルメージを設ければ、混練性は向上し、液状発泡剤または発泡性ガスの連続混合で均一に発泡性ガスが加熱筒内の溶融した熱可塑性樹脂に微分散、加圧溶解する。
【0142】
熱可塑性樹脂を射出成形する成形機の場合は、型締(閉)め、射出、冷却、型開、成形品の押出(エジェクト)、成形品取り出しの1サイクル中に、熱可塑性樹脂ペレットなどに熱を加え(作用させ)、溶融し混練する所謂計量(可塑化)が行われる。その際、均一に発泡性ガスが加熱筒内の溶融された熱可塑性樹脂の中に微分散、加圧溶解させる目的で背圧をかけるが、それ(背圧)によって、射出成形機ノズルからの樹脂漏れが発生する(「鼻タレ」とも称する。)。
【0143】
これ(樹脂漏れ)を防止するためには、空圧(エアーシリンダを用いた作動)、油圧(油圧シリンダを用いた作動)または機械的(モーターまたはソレノイドなどを用いた作動
)などを用いて、ニードル式(図20)、ロータリーバルブ式、スライドバルブ式(図21)、図22に示したように溶融状態の熱可塑性樹脂の射出圧力によってニードルを開け(下がり)、射出圧力がなくなるとバネの力でニードルが前進して閉ざされる動作が行われるバネ式の、プリコンタイプのシャット・オフノズルなどを使用することが望ましい。
なお、図21は、機械的に作動させるスライド式の開閉弁の構造を持つシャット・オフノズルの図である。
【0144】
熱可塑性樹脂を加工する射出成形機または押出成形機などでは、可塑化中は加熱筒の熱によって液状発泡剤から発泡性ガスが起泡してくるので、背圧を高めに設定し、起泡した発泡性ガスを加熱筒内の溶融した熱可塑性樹脂の中に微分散、加圧溶解させ溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を得る。
【0145】
射出成形機の場合、計量完了後、背圧を切ると、加熱筒内の溶融した熱可塑性樹脂は、発泡性を持っているので加熱筒内で発泡し、スクリュを後に押し下げる(後退させる)。このため、射出成形機の場合は、計量完了後、背圧を切らずに、背圧をかけたままで、スクリュ位置を維持させることが好ましい。
これを発明者は、背圧ブロック{エンド・バック・プレッシャー(EBP)}と称した。
【0146】
なお、背圧の設定値は、樹脂によって異なるが、油圧ポンプの吐出圧力が140kg/cm2を用いた射出成形機の場合は、油圧を示すゲージ圧で5kg/cm2?約30kg/cm2程度、またそれ以上でも可能である。一般には実際加熱筒内の溶融状態の熱可塑性樹脂にかかる圧力は約10kg/cm2以上であればよく、計量に要する時間と、成形加工1サイクルとの兼ね合いでの最適値を設定する。
計量時に背圧を高くした場合は、熱可塑性樹脂の溶融混練性は高くなるが、計量完了までに時間がかかり、成形の1サイクルが計量時間に律速され、生産性が低くなる。このため、背圧値は、成形の1サイクル内の射出前までに計量が完了するように設定する。
【0147】
上述した背圧ブロックは、単に熱可塑性樹脂の可塑化終了後に、一定の圧力をスクリュにかけるだけの背圧では、加熱筒内の発泡の圧力(加熱筒内の溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂が発泡しようとする力)によってスクリュが後退する。そうすると、成形機は、元のスクリュ位置に戻すために力を作用させる。しかし、この作用させる力が大きいと、スクリュが前進し過ぎることになる。反対に作用する力を下げると、上述した加熱筒内の発泡の圧力によってスクリュを押し下げ(後退させ)、計量完了の位置からずれるとまた前進させる。
【0148】
このようにスクリュは前後に泳動(振動)するので、スクリュが前進した状態で射出すると、ショート・モールドに、後退した状態で射出すると反対のオーバー・パックをする可能性がある。発泡成形に限らず、成形品の重量のバラツキは、寸法精度の低下(バラツキ)となる。特に発泡成形では、これ(スクリュの振動)が寸法のバラツキに加え、発泡倍率のバラツキの原因となる。
発明者は、背圧ブロックをソフト的に、ハード的に改良し、スクリュが計量の完了位置でとどまる工夫をした。
【0149】
熱可塑性樹脂の加工に用いる射出成形機または押出成形機のスクリュ形状について説明する。
射出成形機の場合は、加熱筒内に設置されているスクリュのL/D(長さをスクリュの直径で除した値)が15以上、好ましくは18以上であれば高混練性が望めるので望ましい。射出成形機の場合は、せん断で温度が上がり、熱可塑性樹脂の種類によっては焼け発生が懸念されるので、最適なスクリュを選択する。
【0150】
スクリュは、必要に応じて、混練性と、発泡性ガスの十分な分散性と、加圧溶解と、を高める目的で、フライト{溝(螺旋溝)}を浅く高圧縮ができるようにしたり、ピッチを狭くしたり、ダブルにしたり、またダルメージを設けもよい。圧縮比は、溝の1ピッチあたりの圧縮される容積比で、熱可塑性樹脂の溶け込み具合とせん断による自己発熱との兼ね合いを考慮して決める。
【0151】
射出成形機は、熱可塑性樹脂のペレット製造の押出機によく装着されている高混練の2軸のスクリュをもった仕様の射出成形機であってもよい。例えば、ソディックのスクリュプリプラ式において、スクリュを2軸にした場合は、例えば、PC/ABSなどのポリマーアロイが、ペレット、またはパウダー同士を混ぜ合わせ、射出成形することで、PC/ABSのポリマーアロイの射出成形品を容易に製造できる。この方法では、熱可塑性樹脂が受ける熱履歴が少なくなるので、物性低下が少なく、押出機でのペレット化の加工工数が省けるので経済的である。
【0152】
押出成形機の場合は、連続的に可塑化が行われるので、通常のL/Dのスクリュで実施可能である。必要に応じてダブル溝、ダルメージを1段、あるいは多段に設ける場合もある。
【0153】
射出成形機の場合は、均一に、熱可塑性樹脂を可塑化し高い圧縮を得るには、例えば名機製作所のダイナメルターのようにホッパー下に小さなフィード・スクリュを設けてその回転数を制御して、加熱筒内に供給する樹脂量を一定にする方法がある。この方法は押出成形機でも実施可能である。
【0154】
液状発泡剤を用いた樹脂の加工は単独でも実施可能であるが、他の成形法との組み合わせによっては更に新たな作用と効果が期待できる。
以下、熱可塑性樹脂の射出成形で実施可能な方法を説明する。
【0155】
始めに熱可塑性樹脂の射出成形加工における発泡成形技法の代表的なモノを説明する。
これらの技法は多々ある。例えばUCC法、SS(ショート・ショット)法、ブリージング・ツール法、USM法、TAF法、ミックスド・プロセス法、アライドケミカル社の方法、EX-Cell-O社法、Battenfeld法{サンドイッチ成形、Co-SF)、GCP法(本発明明細書では「OGCP」と記載した内容である。}、NSF(New-SF)法、MuCell、AMOTEC等などがあげられる。
【0156】
米国のUUC(ユニオンカーバイト社)法は、射出成形機加熱筒内の可塑化中の溶融状態にある熱可塑性樹脂に窒素ガスを注入、攪拌し、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂としてそれをアキュームレーターに移送し溜めて、アキュームレーターを押し下げ発泡性を持たせた溶融状態の熱可塑性樹脂を金型キャビティ内に充填し、発泡構造を持つ熱可塑性樹脂の成形品を得る方法で、MuCell等と酷似する。
【0157】
ショート・ショット(SS)法とは、物理発泡剤、化学発泡剤を熱可塑性樹脂のペレットと混ぜ合わせ、可塑化し、溶融混練し、射出成形機加熱筒内の熱によって前記物理発泡剤は気化、化学発泡剤は熱分解などをさせ、起泡して発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を成形する方法で、金型キャビティ内へ充填する溶融された熱可塑性樹脂はフル・ショットではなく、ショート・ショットとして射出し、金型キャビティ内で拡張して発泡させることからショート・ショット法と称せられる。
【0158】
ブリージング・ツール法は発泡性の熱可塑性樹脂を金型キャビティ内に充填した後、金型キャビティ内に充填された溶融状態の熱可塑性樹脂の圧力を下げる目的で金型の一部を
動かし、金型キャビティ内の体積を増し発泡させる方法である。
【0159】
金型キャビティ内に発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を充填(射出)後に、射出成形機のスクリュを下げて{バック(サックバック)させて}金型キャビティ内の溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の圧力を下げ発泡させる場合も同じ効果を示す。
【0160】
USM法、TAF法は、金型キャビティ内に溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を充填、金型のパーティング(PL;この場合は金型キャビティ内に充填された溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の漏れを防ぐ目的で「縦見切り」としている。)を開き金型キャビティ内の溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の圧力を下げ発泡させる方法で、USMは米国の技術、TAF法は東芝機械と、旭ダウ(旭化成)とが共同開発した射出成形の発泡技術である。
【0161】
ミックスド・プロセス法は、射出成形機ノズルの部分で発泡剤と溶融状態の非発泡性の熱可塑性樹脂とを混ぜ合わせ、発泡性を持つ熱可塑性樹脂を作り出す方法である。また、ミックスド・プロセス法は、発泡性の熱可塑性樹脂と、非発泡性の熱可塑性樹脂と、を混ぜ合わせ、発泡性を持たせる場合もある。
【0162】
上述した方法では、成形品表面まで発泡し、外観にスワール・マーク(発泡縞模様)、フラッシュ、シルバー・ストリーク(銀条)などが発生する。このため、目に触れる外装品に使用する場合は、塗装などの表面処理を必要とした。
【0163】
そこで、外観を綺麗にする方法としては、マルチノズルを持ち、金型キャビティ内で表面が発泡するまでに高速・高圧で射出(金型キャビティ内に充填する。)し、冷却・固化させ綺麗な表面を得るEX-CELL-O社法がある。
【0164】
外観を綺麗にする他の方法としては、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の両側に非発泡性の熱可塑性樹脂をサンドイッチしながら金型に充填するBattenfeld法がある。
【0165】
射出成形加工は、金型キャビティ内に溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の充填が開始されると直ぐに発泡するので、成形品の外観にスワール・マークが発生する。これは、MuCell等、あるいは従来の物理および化学発泡剤の少なくとも一つを用いた場合と何ら変わらない。使用に際して外観が問題とならない内装品、スワール・マークを模様として利用する成形品などでは使用可能である。しかし、綺麗な外観が要求される場合は、内部の発泡ガスが略抜けるのを待ち、その後は必要に応じてサンドペーパーなどで研ぎ(サンディング)、塗装をする。表面にスワール・マークがある場合は、ノッチ効果よって衝撃強度が低下する。
【0166】
スワール・マークをなくす手段を説明する。
図23と図25で説明したシール金型を用いて予め金型キャビティ内を空気(エアー)、窒素ガス、あるいは炭酸ガスで加圧(例えば図24で示す89の加圧ガス)しておいて、溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を射出し、タイミングを見て金型キャビティ内の加圧ガスを大気開放(放出)させ、綺麗な外観の発泡成形品を得るGCP(ガス・カウンター・プレッシャー)法がある。
本発明では、GCPは外観を綺麗にする目的の外側(アウター)の場合と、高発泡倍率の成形品を得る手段の内側(インナー)からの場合とで、OGCPとIGCPとに区分した。
【0167】
以下、OGCPについて説明する。
図23は、OGCPの実施をするためのシール金型の構造を示した図である。
図24は、OGCPの実施をするために金型キャビティ内を加圧する装置の構造を説明した図である。
符号78は、エジェクターボックスである。
符号79に示したように、エジェクターピンそれぞれをOリングを用いてシールするのではなく、エジェクター機構全体を囲い、ボックス形状として、エジェクターピンをシールした場合と同じ、またそれ以上の作用と効果を持たせた。
符号79は、エジェクターピン83をOリングでシールする構造を例示したものである。
本発明は、これを用いないで、エジェクターボックス78に示したように、ボックス構造とした。
【0168】
本発明では、後述する別の手段(IGCP)と区別するために、この手段(シール金型に予め、金型キャビティ内へ溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の充填前に金型キャビティ内を加圧すること)をOGCP{Outer Gas Counter Pressure(アウター・ガス・カウンター・プレッシャー)}と称する。
【0169】
OGCPで用いる気体は、1種類である必要はなく、例えば、空気と窒素ガス、空気と炭酸ガスなど数種類の気体を混ぜ合わせてもよい。成形品に変色、焼けが発生する場合には、この手段で酸素濃度を下げられるので上記の変色、焼けの問題を回避できる。OGCPは、窒素ガスまたは炭酸ガスだけでも実施可能である。窒素ガスは高価なので、容量の少ない金型キャビティには不活性な窒素ガスを、容量の多いエジェックターボックスへは安価な空気を用いる。
アルコール蒸気、エーテル蒸気を空気、窒素ガスなどに混ぜてOGCPに用いた場合は、これら蒸気が樹脂の流動末端で溶け込むため、樹脂の転写性が向上する。この際、発泡剤にもアルコール類、エーテル類を用いた場合は、更に樹脂の転写性が向上する。
【0170】
前記OGCPを行い、金型キャビティ内に充填させた溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂に射出成形機のノズルから高圧の窒素ガスを吹き込み、発泡倍率の高い成形品を得る旭化成(旭ダウ)が開発したNSF法がある。
【0171】
綺麗な外観の射出成形品を得る手段としてOGCPがあることは上述した。OGCPとは、例えばPLなどをOリング、薄いゴムシートなどでシールされた金型(シール金型)に、予め大気圧以上の空気、窒素ガス、炭酸ガスなどを用いて加圧する工程と、金型内に溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の充填される工程と、前記加圧したガスを大気放出する工程と、を有する成形法を言う。OGCPにおいて初めに金型キャビティ内を溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の発泡を抑えるために加圧するガスは、「加圧ガス」と言う。
【0172】
加圧ガスの圧力は、発泡剤(液状発泡剤、発泡性ガスなど)の添加量で決まり、発泡剤を多く使用すると、熱可塑性樹脂の発泡力が高まるので高い加圧ガスの圧力を必要とする。その圧力は0.5MPa以上で、好ましくは、0.8MPa以上、更に好ましくは1.0MPa以上である。2.5MPa以上でも実施可能であるが、高い圧力では危険を伴いとともに、金型キャビティ内の気体の量が多い(圧力をかけているので気体の密度は高い。)ので、ショート・モールドの原因になったり、空気を用いた場合には酸素の量が圧力を高めた分だけ多くなるので、成形品の変色、焼けの問題が懸念される。
【0173】
金型キャビティ内に溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を未充填で、あるいはフル充填して、充填の途中(予め予定された充填量に達した時点)、充填完了直後または充填完了後に定められた時間を経過させた後に、金型キャビティ内の加圧ガスを大気開放(ブローアウト)、または回収などして金型キャビティ内の圧力を下げると、OGCPによ
って抑えられていた発泡力(加圧ガスの圧力によって抑えられていた熱可塑性樹脂中の発泡性ガス)が外部圧力(加圧ガスの圧力)の開放によって起泡する。加圧ガスの大気開放前などに金型表面に達した溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂は、金型表面に触れ、既に冷却・固化しているので、表面が発泡することはない。成形品の内部は冷却・固化が完了していないので発泡する。この手段によって得られる成形品の表面は非発泡(スキン)層、内部は発泡層を持ち外観は綺麗である。
【0174】
OGCP用のシール金型に付いて図23を用いて説明する。PLはOリング71が外れないようにアリ(蟻、あり)溝がほってある。固定(キャビ)の型板80と取り付け板81の間、スプールブッシュ82と固定側の取り付け(取付け)板81の間、エジェクタープレート75の下板(エジェクターピンの押さえ板)と可動(コア)側の取り付け板77の間で、ノックアウトピン(成形機のエジェクターロットの入口の穴76)の周りも、それぞれOリング69,70,72,73,74でシールする。但しOリング74は外れないようにPLと同様のアリ溝としてある。
【0175】
79のようにエジェクターピンは1本1本をOリングでシールしてもよいが、Oリングのシール性に問題があるので、エジェクターピン、エジェクタープレート75の全体をボックス(78のエジェクターボックス)囲いシール(72、73のOリング)するとエジェクターピン1本1本をシールする必要がないのでこの方がよい。当然ながらスライドコアを持つ金型は、PLと同様にスライドコアのPL面などにOリングを配しシールする。Oリングの代りゴムシートなどを貼り付けてもよい。
【0176】
図24はOGCP装置を示した。コンプレッサーなどで圧縮された気体(加圧ガス)、例えば空気は、射出成形機からの金型の閉信号を受けて、金型キャビティ10とエジェクターボックス78の内への加圧ガスの注入するための電磁弁86が開になり、加圧ガス注入口100を通じて金型キャビティ10と金型のエジェクターボックス78内に入れる。この作業を加圧{これを予圧、圧気、アウター・ガス・カウンター・プレッシャー(OGCP)などとも称する。}と言う。上述したように充填の途中、充填完了直後などでこれらの加圧ガスは電磁弁86の閉と同時に、または閉した後で、ブローアウト(大気放出弁)87の開によって大気開放される。この図24の装置は、図示したように1台の装置でエジェクターボックス78と金型キャビティ10内とを兼用としてもよく、成形品が大きくなればこの装置をエジェクターボックス78用と金型キャビティ10内用とに分け、複数台使用する場合もある。図23の金型キャビティ10内へのOGCPの出入りはPLに設けられた図25に示す加圧ガスベント(ガス抜き溝)98、エジェクターピン83の隙間などを介して行われる。88は加圧ガス用の圧力計、89はコンプレッサーなどで圧縮した空気などの加圧ガス、90は大気放出した加圧ガス、10は金型キャビティ、100はエジェクターボックス78内と金型キャビティ10内への加圧ガスの出入り口を示す。92は加圧ガスの流れ、94は加圧ガスの配管、93はフレキシブルなエアーホース、20は金型である。
【0177】
図25はOGCPで加圧ガスを金型キャビティ内に入れる、また大気放出するための金型構造である。81は固定側の取り付け板、80は固定側型板、71はPLのOリングである。95は加圧ガスの出入の回路、98は加圧ガスベントで、厚さは加圧ガスは通るが溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂は通さない程度で、ABSの場合厚さは250μm以下、幅は成形品の形状によって異なるが10mmから20mm程度、長さは5mm程度としている。PLにはガス溝の97の加圧ガスの回路、96はPLの加圧ガス回路、10は金型キャビティ、19はPL、99がガイドポスト、100は金型に加圧ガスを出入させるための図24に示すOGCPの装置とのつなぎこみの口、101はスプールである。OGCP装置は図24のフレキシブルなエアーホース93を加圧ガスの注入口100につなぎ、図25のPLの加圧ガス回路96、加圧ガス回路97、加圧ガスベント98を
介して金型キャビティ内を加圧したり大気放出をする。
【0178】
このOGCPを用いて綺麗な外観の熱可塑性樹脂の発泡射出成形品を得るには、本発明で示す液状発泡剤の注入量、市販の発泡剤の添加量が重要である。発泡剤の添加量が多い場合は、OGCPの加圧ガスの圧力によって表面の発泡が抑えられず表面が発泡し、スワール・マークが発生する。反対に発泡剤の添加量が少ない場合は、発泡力不足でヒケの目立つ成形品になる。これが液状発泡剤の注入量、市販の発泡剤の添加量を制御する必要がある理由である。OGCPを用いた場合に綺麗な外観の熱可塑性樹脂の発泡成形品を得るには、発泡剤の熱可塑性樹脂に対しての注入量、添加量の制御が必要な条件の1つである。
【0179】
この方法で得られる熱可塑性樹脂の成形品は、表面は綺麗なスキン層、内部は発泡層を持つ構造となっている。OGCPは、金型キャビティ内に充填された溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の発泡を外(アウター)からの圧力で抑える作用と効果を持っている。
OGCPに炭酸ガスを使用した場合は、圧力によって金型キャビティ内の溶融状態の熱可塑性樹脂の中に溶け込み流動性が増すことの報告がある。更に発泡性ガスに炭酸ガスを用いた場合は、溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の流動性は増す。さらに、硝子繊維20wt%含有のABSなどの複合材の射出成形にOGCPを用いた場合は、硝子繊維の浮きを少なくする作用と効果がある。
【0180】
(表面を綺麗にする手段)
(Battenfeld法での実施)
Battenfeld法は、2本の射出装置(ユニット)を持ち、一方に溶融状態の非発泡性の熱可塑性樹脂を、もう一方に発泡剤含有の熱可塑性樹脂をそれぞれ可塑化しておいて、初めに非発泡性の熱可塑性樹脂を金型キャビティに射出し、その後、当該非発泡性の熱可塑性樹脂の中に発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を射出する成形法である。Battenfeld法は、表面の非発泡性の熱可塑性樹脂(スキン層)が、内部の発泡性の熱可塑性樹脂{餡子(あんこ)層}をサンドイッチ(挟み込んだ状態)しながら金型キャビティ内を流動し、表面が綺麗な射出成形品を得ることができる。しかし、Battenfeld法は、成形品に複雑な形状、開口部などがあると、内部餡子層が表に出て、外観不良となる。また、餡子層は、成形品の流動末端まで達しないので、肉厚のスキン層だけになり、ヒケが発生する。これらは、Battenfeld法の致命的欠点である。
【0181】
ヒケの課題の解決には、スキン層も発泡性の熱可塑性樹脂とし、OGCPを併用することでヒケのない外観の綺麗な成形品が得られる。
【0182】
スキン層、餡子層とも本発明の液状発泡剤を使用し、餡子層に注入する液状発泡剤の量を多くし、スキン層にはヒケを止める程度の少なめの液状発泡剤を使用すればヒケのない、内部は高発泡の成形品が得られる。当然ながらスキン層、餡子層ともに液状発泡剤は同量でもよい。
【0183】
スキン層に用いる発泡剤は液状発泡剤に限定せず、物理、化学発泡剤でもよく、内部に液状発泡剤を用いること、またその逆の使用(仕様)も可能である。
【0184】
スキン層には液状発泡剤を用い、餡子層にMuCell等で得た発泡性の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0185】
(発泡倍率を高める手段)
(ブリージング・ツール法)
射出成形加工は、金型キャビティ内一杯に溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を充填後、金型の一部を動かし体積を増す(これを「ブリージング」と言う。)ことで金型キャビティ内へ充填された溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の圧力を下げ発泡しやすくして、高発泡倍率の成形品を得ることができる。
【0186】
ブリージングは、1箇所でも複数箇所でもよい。ブリージングの場所が複数の場合は、同時でも、タイミングをずらしてもよい。
【0187】
ブリージングと同じ効果は、エジェクターピンを前進させておいて溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の充填と同時に、あるいは少し遅れてエジェクターピンを下げることでも期待できる。当然のことながら、当該エジェクターピンの動作は、ブリージングと併用してもよい。OGCPを併用すれば外観の綺麗な成形品が得られる。
【0188】
(ダミー形状)
図26は、金型に設けたダミー形状106の概念を説明するための図である。射出成形用の金型キャビティ10内に成形品の形状とは無関係の形状(ダミー形状、捨て形状、捨てキャビ)を持たせ、溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を金型キャビティ10内と、図26に示すダミー形状106の一部にまで充填しても、ダミー形状106を含めた金型キャビティ空間全体から見ればショート・ショットとなるので、金型キャビティ内の溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の充填の圧力は下がり、発泡しやすくなる。
【0189】
ダミー形状の前の通路に開閉ゲート102を設け、この開閉ゲート102は充填前には閉ざされ、溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の充填と同時に、あるいは少し遅れて、開閉ゲートの駆動装置103で開け溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の圧力を下げれば、発泡しやすくなる。
【0190】
ダミー形状106は、複数でもよい。開閉ゲート102を設ける場合の開は溶融樹脂の充填と同時でも、タイミングをずらしてもよい。このダミー形状106は粉砕し、粉砕のままで、必要に応じてペレット化して再使用{リサイクル(再生)}してもよい。OGCPを併用すれば外観が綺麗な成形品が得られる。IGCPを用いれば中空を持つ、高発泡倍率の成形品が得られる。
【0191】
(スクリュのサックバック)
射出成形加工で金型キャビティ内へ溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を充填して直ぐに、あるいは一定の時間を経過させてスクリュを予定しておいた位置まで下げる(射出後のサックバック)と、金型キャビティ内へ充填された溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の圧力が下がり起泡しやすくなる。OGCPを併用すれば外観の綺麗な成形品が得られる。IGCPではサックバックを実施することでより発泡倍率があげられる。
【0192】
〔TAF{東芝機械・旭ダウ(現在の旭化成)フォーム}、USM、H2M(Higher Hollow Mold)〕
TAF、USMは、射出成形加工で金型キャビティ内に溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を充填した後に金型を開け(コアバックさせて、コアを下げて、リセスさせて、リセッションさせて、金型を後退させて、)発泡させる方法で、USMは予めOGCPで金型キャビティ内を加圧してシール金型に溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を充填し、リセッションを行い、高発泡倍率の成形品を得る方法である。このリセッションの動作はキャビ(固定)側でも構わない。
【0193】
H2Mは、非発泡性の熱可塑性樹脂を金型キャビティ内に充填し、型締めを一旦中止、若しくは型閉(締)力を少なくし、成形機のノズルから、スプール・ランナーからおよび
金型キャビティ内に直接の少なくとも1箇所から高圧に圧縮したガスを注入、ガス圧力によって溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の拡張を行い、成形品の内部に中空を形成させ、拡張の圧力(中空を形成する圧力)で金型を開け、大きな中空(Higher Hollow)を作る技術で、金型の一部をタイミングを遅らせ、機械的などな動作によって開けることで中空内部の任意の場所にリブを作ることができる。勿論発泡性の熱可塑性樹脂を用いても実施可能である。なお、TAF、USM、H2MでもOGCPを併用すれば綺麗な外観の成形品が得られる。射出成形加工で熱可塑性樹脂の発泡成形品を得る技法で、OGCPで説明したシール金型に予め1MPa程度の空気で加圧しておいて、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂をショート・ショットで射出、続いて成形機ノズルから高圧の窒素ガスを注入し、金型キャビティ内の隅々まで拡張(膨らませ、ブローさせて、)し、加圧ガスを大気開放、成形品内部の窒素ガスは、大気放出、または回収すると、内側の圧力が下がり、内部に向かって発泡を始める方法で、外観の綺麗な高発泡倍率の成形品が得られる。
【0194】
{ガス・アシスト(中空)成形}・{インナー・ガス・カウンター・プレッシャー(IGCP)}
発明者が発表したGaStyのカテゴリー2、AGI、シンプレス、GIM、エアーモールド、GAIN Technologyなどは非発泡性の熱可塑性樹脂の中空射出成形であるが、これを発泡性持たせた熱可塑性樹脂の射出成形加工に適用する。
金型キャビティ内に溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂をショート・ショット、またはフル・ショットで充填し、成形機ノズルから、スプール・ランナーからおよび金型キャビティ内の少なくとも1つに充填された溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の中(内部)に、必要に応じて複数の箇所から、直接圧縮した高圧のガスを注入、中空を形成、金型キャビティ内の溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の内部の冷却固化が完了する前(まだ溶融状態で発泡性を有する状態である時)に、注入したガスを大気放出、または回収すると、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂中の発泡ガスは発泡を抑制する圧力が下がるので、成形品の中空内部に向かって発泡を始める。これを本発明では内部(内側)からの加圧{インナー・ガス・カウンター・プレッシャー(IGCP)}と言う。この手段を用いると中空部分と発泡層の部分とが存在する成形品、高発泡倍率の成形品が得られる。OGCPを併用すれば外観の綺麗な成形品が得られる。
【0195】
{ガス・インジェクション・プレス(圧空)成形}
射出成形において金型キャビティ内に非発泡性の熱可塑性樹脂を充填し、金型キャビティ内の溶融状態の熱可塑性樹脂の表面(溶融状態の熱可塑性樹脂と金型キャビティとの隙間)の可動側および固定側の少なくとも一つから、成形品の一部または全部の面に、高圧のガスを作用させて、金型への転写性の向上をはかる手段にGaStyのカテゴリー3、GPM(ガス・プレス・モールド)、GPI(ガス・プレス・インジェクション、射出圧空成形(単に「圧空成形」とも言う。)がある。発泡性の熱可塑性樹脂でも実施可能で金型キャビティ内に充填された溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂に、一旦高圧のガスを用いて、例えば固定側へ押し付け(押さえ付け)、タイミングを見て高圧のガスを大気放出すれば、IGCPの場合と同様に発泡を抑制していた圧力が開放されるので発泡が開始される。これはブリージング・ツール、TAF、USM、H2Mなどと同じような作用(高発泡倍率の成形品を得る。)が期待できる。OGCPを併用すれば外観の綺麗な成形品が得られる。ガス圧が高い、成形品の肉厚が厚いと、表面に作用(例えばキャビ側からの圧縮)をするガスが、成形品の中に入っていってしまう場合がある。
【0196】
その他金型キャビティの表面に断熱層を持たせ、溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の冷却固化を遅くさせて、綺麗な外観の成形品を得る方法、予め金型表面を加熱水蒸気、高周波誘導加熱などで加熱し、金型表面温度が高い状態で射出し、発泡した表面を再溶(熔)融させ綺麗な外観の成形品を得る方法など射出成形における発泡成形の技術は多
々開発されて来た。
【0197】
(表面を綺麗にする手段)
上述した発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の射出成形の技法と、例えばヒート・アンド・クール(Heat&Cool)、RHCM、BSM(ブライト・サーフェース・モールド)、スチーム・モールド、金型表面に断熱層を持たせた手段などとの組み合わせも実施が可能で、それにOGCPなどを付加することもできる。
【0198】
(その他の射出成形)
それ以外に、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を用いて、新日鉄化学(株)が発表したPFP(パーシャル・フレーム・プロセス)、RFM{RP東プラ(ランニング)、フローティング・コア・モールド}、富士ゼロックス(株)のPIM(プレス・インジェクション・モールド)、アライドケミカル社の方法、2層成形法、2色成形法、多色成形法、多層成形法、混色成形法、射出圧縮成形法、圧縮成形法、注型、回転成形法、トランスファー成形法、圧縮成形法、SPモールド、タンデム成形、プレス成形、DSI(ダイ・スライド・インジェクション)などでの実施も可能で、それに成形法によってはOGCPおよびIGCPなどの少なくとも1つを併用することもできる。
【0199】
(射出成形での成形条件など)
発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の射出成形加工での金型キャビティ内への射出(充填)の条件は高速で高圧である。保圧は使わずに、クッションも取らない充填が普通であるが、少しの保圧、例えば0.5秒間で最高(最大)の射出圧力の30%程度を使用すると、金型キャビティ内への充填の反動(スクリュを押し戻す作用)が少なくなり、充填の圧力が一定となるので、重量のバラツキを少なくなり、寸法精度のよい、高い品質の発泡樹脂成形品が得られる。熱可塑成樹脂の射出成形加工での発泡成形でヒケが発生する時は計量を下げる、溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の温度を上げる、溶融状態での流動性をアップするなどの手段を講じる。射出成形加工における熱可塑成樹脂の発泡成形品に、寸法に影響を与える主な要因は、溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性脂の温度、金型の表面温度、金型キャビティ内での冷却時間である。
【0200】
{押し出し(押出)成形}
本発明の液状発泡剤は、発泡のシートなどを加工する押出成形、異形(型)押出成形での実施も可能である。
【0201】
(ブロック成形)
ブロック成形とは、発泡性を持たせた樹脂を、金型に注ぎ、上から蓋をして、その蓋を加圧する場合、加圧しない場合とがある。
熱可塑性樹脂では、液状発泡剤を用いて加熱溶融して、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂とする場合と、液状発泡剤を混ぜ合わせ、金型内で加熱して発泡させる場合とがある。熱硬化性樹脂の場合は液状発泡剤を混ぜ合わせ金型を加熱して発泡させる。架橋剤(材)を入れて加熱し発泡と同時に架橋させる場合もある。
【0202】
{注形(型)}
発泡性を持たせた樹脂を、金型に注ぎ込む成形法で、前記ブロック成形とよく似ている。熱可塑性樹脂は加熱溶融して発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を溶融状態で金型の注ぎ込み発泡させる、熱硬化性樹脂の場合は液状発泡剤を混ぜ合わせて金型に入れて加熱して発泡させる。
発泡ポリエチレンは、ポリエチレンに過酸化ベンゾイルと液状発泡剤とを混ぜ合わせ、加熱溶融して架橋させると同時に発泡させて得る。発泡ポリプロピレンは、ポリプロピレンを用いて同様な手段で得られる。この方法で得た発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレ
ンなどは、ブロック成形、押出成形で利用できる。
【0203】
(第1実施形態)
本発明の液状発泡剤は、Co-SFでの実施が可能である。この場合、内部餡子層の熱可塑性樹脂の発泡性を持たせるために本発明の液状発泡剤を用いて、外側のスキン層はソリッドでもよい。流動末端のヒケが問題となる場合は、スキン層も発泡性を持たせた熱可塑性樹脂とする。この場合は、市販の発泡剤を使用しても、液状発泡剤でもよい。
また、綺麗な外観を得るためには、OGCPを用いればよい。発泡倍率をアップするためには、ダミー形状、ブリージング・ツール、USM、TAF、H2Mなどの技法を併用すればよい。
【0204】
(第2実施形態)
本発明の液状発泡剤は、NaBH4と、酸などとの接触で発生してくる水素ガスと、を発泡性ガスとして使用することが可能である。なお、水素ガスの発生には、図3、図35に示す装置が使用できる。
【0205】
(第3実施形態)
水に有機溶剤(例えば、ペンタン)を界面活性剤を用いて乳濁させたエマルジョンタイプの液状発泡剤は、図8などで攪拌などをして、加熱筒内に注入する前までに均一に保てば、押出成形、または射出成形などでも実施が可能である。
【0206】
(第4実施形態)
ADCAは水およびアルコール類に不溶なので、懸濁させたサスペンジョンタイプの液状発泡剤は、図8に示した手段などで攪拌などをして、加熱筒に注入する前まで均一に保てば、押出成形、または射出成形などでも実施が可能である。
【0207】
(第5実施形態)
液状発泡剤を用いて発泡性を持たせた熱可塑性樹脂は、2層成形品の射出成形でも実施(使用)ができる。具体的には、表(おもて、化粧)面を中実成形して、回転、あるいは反転させ、当該中実成形品の裏(うら)面に発泡性を持たせた熱可塑成樹脂を射出して表面が中実成形(ソリッド層)で裏面が発泡成形(発泡層)となる2重構造を持った成形品の製造が可能である。
【0208】
当然ながら、成形品の発泡倍率をアップさせるためには、ダミー形状、ブリージング・ツール、USM、TAF、H2Mなどとの併用も可能である。さらにOGCPを用い綺麗な表面の発泡成形、ソリッド層、発泡層何れでの中空成形、GPIの実施も可能である。
【0209】
(第6実施形態)
液状発泡剤で発泡性を持たせた熱可塑性樹脂は、HEAT&COOL、BSM、スチーム・モールドなど金型の表面温度を高くして綺麗な射出成形品を得る技法で用いることができる。更にOGCPを用いれば綺麗な外観の成形品が得られる。また前記第5実施形態でも示したようなUSM、TAF他などの技法との組み合わせが、第6実施形態でも可能である。
HEAT&COOLなどの金型加熱には、磁性流体を用い、それを高周波誘導加熱、電磁誘導で昇温し前記磁性流体を熱媒体として使用する方法も可能である。このような手段で金型の表面温度を高くすると、スワール・マークが少なくなる、液状発泡剤の金型の表面での凝縮が少なくなるなどの作用がある。
【0210】
(第7実施形態)
液状発泡剤で発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を用いて、成形転写、フィルム転写、インモールド成形、インサート成形、アウトサート成形での実施も可能である。
【0211】
(第8実施形態)
発泡性を持たせた熱可塑性樹脂は、非発泡の熱可塑性樹脂よりも流動性は高い。このため、レンズ、ミラー、導光板などの金型への高い転写性が求められる射出成形品には、発泡残渣のないアルコール類、エーテル類、図3の22に気化器・反応器で発生させた炭酸ガスなどを用いて、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂とし、高速・高圧で金型キャビティ内に充填後、高い保圧をかけ、必要に応じて金型を圧縮して、発泡セルを小さく、あるいはなくし、金型への転写性が高い成形品を得る。アルコール類、エーテル類などの液状発泡剤は、発泡性を持たせることで溶融状態の熱可塑性樹脂の流動性は高める作用と効果を持つ。
【0212】
(第9実施形態)
フェノール樹脂の発泡構造体は、成形前のフェノール樹脂のパウダーに対し、例えば水とエタノールの1:1の混合物の液状発泡剤を混ぜ合わせ、金型に入れ、加熱することで得られる。
【0213】
(第10実施形態)
BMCの発泡構造体は、第9実施形態において、フェノール樹脂の代わりに不飽和ポリエステルのBMC(BulkMolding Compound)を用いると得られる。
【0214】
(第11実施形態)
シリコンゴムの発泡構造体は、液状シリコンゴムの成形において、液状発泡剤の水、アルコール類、エーテル類だけの単品、あるいはそれらの混合液を用いて得られる。シリコンゴムの発泡構造体の加工の手段は、射出成形、押出成形、非圧縮、圧縮してのブロック成形などの何れでも良い。
【0215】
(第12実施形態)
パラフィンオイル含有の柔らかな発泡成形品は、スチレン系熱可塑性エラストマーに対して、パラフィンオイルを20wt%と、8wt%重曹水を図6の装置を用いて加熱筒内にそれぞれ別々に注入すれば得られる。ここで、重曹水は、エタノール、ジエチルエーテル、またはこれらの混合溶液に変えても良い。
【0216】
(第13実施形態)
第12実施形態のスチレン系熱可塑性エラストマーとパラフィンオイルとを混ぜ合わせて成形材料とし、加熱溶融して、その中に炭酸水素カリウム水溶液を入れ発泡性を持たせたパラフィンオイル含有のスチレン系熱可塑性エラストマーとして注型、ブロック成形での実施が可能である。
【0217】
(第14実施形態)
第14実施形態は、第8実施形態にOGCPを適用した実施形態である。
第14実施形態は、まず、シール金型の金型内を0.5MPa以上2.0MPa以下の空気で加圧(OGCP)する。成形機の加熱筒中の溶融樹脂は、その計量中にエチルアルコール、ジエチルエーテルなどを当該溶融樹脂に対して0.5wtから2.5wt%の範囲内で注入する。そうすると、当該溶融樹脂は、溶融樹脂中にエチルアルコール、ジエチルエーテルなどが分散、加圧溶解された発泡性樹脂となる。当該発泡性樹脂は、金型キャビティ内に充填し、その後、樹脂保圧をかけて転写性を向上させる。0.5MPa以上2.0MPa以下で加圧(OGCP)した空気は、充填の途中、充填完了後、樹脂保圧途中、樹脂保圧完了後の何れかで大気開放する。
なお、OGCPで使用する気体は、窒素または二酸化炭素であっても良い。
また、本第14実施形態に使用する樹脂は、透明な樹脂であれば良い。透明な樹脂は、例えば、PS、AS、PC、PMMA、透明エラストマー、PET(ポリエチレンテレタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、MS樹脂、PEI(ポリエーテルイミド)、PES、透明PA(ポリアミド)、環状ポレオレフィン、ゼオネックス(商品名)、ゼオノア(商品名)アペル(商品名)、アートン(商品名)などである。
【0218】
次に、実施例に基づいて、本発明を説明する。
(使用樹脂)
実施例で用いた樹脂について説明する。
射出成形加工、注型の場合のABSは、旭化成工業(株)のスタイラック121(商品名)を、HIPSは旭化成工業(株)のスタイロン492、m-PPEは旭化成工業(株)のザイロン100Z(商品名)、PC/ABSは帝人化成のマルチロンT3714(商品名)、PCは三菱エンジニアリングプラスチック(株)のユーピロンS2000(商品名)、PPは住友化学工業(株)の住友ノーブレンH501(商品名)を用いた。
押出成形では、ABSは旭化成工業(株)のスタイラックABS A4130(商品名)、HIPSは旭化成工業(株)のスタイロン475D(商品名)、PPはグランドポリマー(株)のグランドプリプロJ101(商品名)を用いた。
【実施例1】
【0219】
〔成形品の製造装置〕
図1は、本発明に係る射出成形品の製造装置201の模式図である。
製造装置201は、熱可塑性樹脂を溶融して混ぜる加熱筒7と、気化温度が加熱筒7の内部にある溶融状態の熱可塑性樹脂の温度以下である液体の体積または質量を加熱筒7の外部で測定する測定装置202と、測定装置202で測定された液体を加熱筒7の内部の熱可塑性樹脂に注入する第1注入装置4と、第1注入装置4で液体が注入された加熱筒7の内部の溶融状態の熱可塑性樹脂を金型キャビティ10に射出する射出装置203と、を有する。
図34は、本発明に係る押出成形品の製造装置201の模式図である。
【0220】
(加熱筒)
加熱筒7は、ホッパー6により供給された熱可塑性樹脂を溶融状態にする可塑化装置である。加熱筒7は、内部にスクリュ8を有し、外部に加熱用のヒーター(図示せず)が取り付けられている。ホッパー6により供給された加熱筒7の内部の熱可塑性樹脂は、ヒーターの熱と、スクリュ8の回転によるせん断力とによって加熱され、効率よく可塑化される。
【0221】
(注入装置)
注入装置4は、モーター等の駆動装置3によりプランジャ12を動作させることにより、シリンジ11の内部に液体を吸引し、シリンジ11の外部に液体を排出できる。つまり、注入装置4は、駆動装置3でプランジャ12を後退させることにより、プランジャ12の後退距離に応じた量の液体を注入装置4に収容することができる。また、注入装置4は、駆動装置3でプランジャ12を前進させることにより、注入装置4から液体を排出して加熱筒7の内部に液体を注入できる。
【0222】
液体は、タンク1の内部に収容されており、タンク1と注入装置4を接続する配管9により、タンク1から注入装置4に供給される。タンク1と注入装置4を接続する配管9には、逆止弁2が設けられている。逆止弁2により液体の逆流が防止されており、液体は、タンク1から注入装置4に向かってのみ流れる。
【0223】
(測定装置)
測定装置202は、加熱筒7の外部において加熱筒7の内部の熱可塑性樹脂に注入する液体の体積または質量を測定する装置である。別言すると、測定装置202は、注入装置4に収容された液体の体積または質量を測定する装置である。
【0224】
測定装置202は、射出成形の場合は注入装置4のプランジャ12の位置を把握することにより、注入装置4の内部にある液体の体積または質量を測定するものである。測定装置202は、液体の排出口があるシリンジ11の先端からのプランジャ12の移動距離をL、プランジャ12の半径をrとすると、液体の体積は、Lπr2で得ることができる。液体の密度をBとすると、液体の質量は、BLπr2で得ることができる。
押出成形の場合は、プランジャでもかまわないが、連続的に注入するので、図34、図35、図36などで示したダイヤフラムポンプ145の方がよい。
【0225】
移動距離Lを得る手段は問わない。例えば、駆動装置3がモーターである場合は、モーターの回転数nと、当該モーター1回転当たりのプランジャ12の移動距離mが分かっていれば、L=nmで算出することができる。また、プランジャ12に磁石を取り付け、シリンジ11の外周面に当該磁石の位置を認識するセンサを取り付けて、当該センサによりプランジャ12の移動距離Lを得ても良い。
【0226】
(射出装置)
射出装置203は、加熱筒7の内部にある液体が注入された溶融状態の熱可塑性樹脂を金型20の金型キャビティ10に射出する装置である。
【0227】
〔成形品の製造方法〕
次に成形装置201を用いた成形品の製造方法について説明する。用いた樹脂等は、下記の通りである。
・熱可塑性樹脂:ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)
・液体:水
・成形品:縦200mm、横300mm、厚さ8mmの成形品110
・成形機:型締力350tonの油圧を用いた直圧式射出成形機(東芝機械)
・金型:成形品110(図27)にサイドゲート108を形成する金型(図示せず)
【0228】
注入装置4の内部に液体がほぼ無い状態から駆動装置3を動作させてプランジャ12を後退させ、タンク1に蓄えられた水の一部を注入装置4に入れた。プランジャ12の位置により測定装置202が測定した水の質量は、3.6グラムであった(測定工程)。
【0229】
この水は、成形機の加熱筒内で240℃に加熱溶融され、混練、圧縮されているABSに注入した(注入工程)。そうすると、水が気化するため、加熱筒内の溶融したABSは、発泡性を有するABSとなった。水は、純水またはイオン交換水が望ましいが、水道水でも良い。
【0230】
加熱筒内の溶融したABSは、成形品110を成形するための金型キャビティに射出した(射出工程)。金型キャビティへの溶融したABSの充填量は、金型キャビティの体積に対して、略100%のフル・ショットとした。その後、金型を冷却すると、溶融したABSは、冷却固化して成形品110となった。なお、計量時成形機の背圧は、圧力計のゲージ圧を1.5MPaとした。スクリュ直径回転数は、30rpmに設定した。射出条件は、充填の速度を最高射出速度の65%、射出圧力を最大射出圧力の70%に設定した。
【0231】
加熱筒内への液状発泡剤の注入は、図1に示すように注入口5は1箇所で計量開始から計量の終了まで連続的に実施した。
液状発泡剤の水を図5に示す様に2箇所から同時に注入しても、また少し注入のタイミングをずらしても実施可能で、更に図6に示すように注入装置を別々に2つ用いて、1.8gの液状発泡剤を測定し、2箇所から同時に注入しても、また少し注入のタイミングをずらしても注入しても略同じ発泡倍率の発泡成形品が得られた。
【0232】
この条件でそれぞれ10ショット成形し、10枚の成形品110の質量のバラツキを確認したところ、0.5%以内で、発泡倍率は約7%であった。なお、ゲート近傍で生じるジェッティング(スネーク模様)は、溶融樹脂がゲートから金型キャビティに入る位置で溶融樹脂の射出速度を一旦減速させ、溶融樹脂がゲートを通過した後、再び速度65%、圧力70%で充填すれば少なくすることができる。さらにジェッティングを少なくするためには、成形品110におけるゲート近傍に長さ35mm、幅2mm、深さ6mmの凹溝111を設ける方が望ましい(図28)。この場合、凹溝111の各コーナーには、溶融樹脂の流れをスムーズにする目的で、R1程度の面取加工をするのが望ましい。
【0233】
成形品110を成形するための金型は、自動ゲートカット機構が設けてある。熱可塑性樹脂の発泡成形は、中実成形のような保圧は使用しないので金型キャビティ内に充填後、ゲートシール(ゲート部分の冷却固化が完了)前に油圧シリンダなどでゲート部を成形品に押し込みゲートカットを実施した。(図29)
このようにして得られた成形品は内部に不連続で大きさが0.05mm?0.5mm程度の不連続な微細な発泡セルを持つ発泡構造体で、ヒケはないが、成形品の表面も発泡をして、スワール・マークが確認される。
【0234】
本実施例において、タルクを発泡核剤として用いても良い。この場合は、事前にペレット化の段階で練りこんでおいた。なお、発泡核剤を用いなくとも実施可能ではある。
【0235】
発泡成形は、保圧を使用しないので、それぞれの金型キャビティ内に同時に入れるなど、ランナーおよびゲートの少なくとも1つの断面積を変えること、図26で示した102の開閉ゲートの構造を成形品のゲート部に設けて、それぞれの金型キャビティ毎に充填するなどの工夫をすれば、異形状の多数個取りも容易にできる。
【実施例2】
【0236】
実施例2は、実施例1において図1の装置を図2に変更した。測定装置202で3.6mlの水を量り取り、気化器・反応器22内に入れて、高周波誘導加熱機を用いて180℃に加熱し、気化させ、注入圧力は圧力調整弁23で設定し、注入量は流量調整弁26で制御し、自動開閉弁158を開け、水蒸気を射出成形機加熱筒内の可塑化中の溶融したABS中に計量開始から計量終了までの間注入し、発泡性を持たせたABSを、実施例1と同様な成形条件、金型を用いて成形した。
なお、本実施例2では自動開閉弁158は注入完了と同時に閉じたが、自動開閉弁158は常時開でも実施できる。
気化器・反応器22の加熱は、液状発泡剤を入れてから加熱しても、加熱しておいてその中に入れてもどちらでもよい。実施例2では気化器・反応器22に液体で入れて加熱して気化した。
加熱筒内への気化させた発泡性ガスを注入する注入口5は1箇所でも良いが、図5に示すように2箇所以上でもよい。
実施例2では注入口5を、1箇所と2箇所とで実施し、それぞれの成形品の発泡倍率は7%であった。
【実施例3】
【0237】
実施例3は、実施例1の水を水とメタノールを体積比1:1の混合物、注入量は5mlとした。この場合も射出成形機加熱筒内へ液状発泡剤を注入する注入口5は1箇所でも良い
が、図5に示すように2箇所以上でもよい。
実施例3でも注入口5を、1箇所と2箇所とで実施し、それぞれの成形品の発泡倍率は7%であった。
【実施例4】
【0238】
実施例4は、実施例2で使用した液状発泡剤の水を水とメタノールを体積比1:1の混合物、注入量は5mlとした。
実施例4でも注入口5を、1箇所と2箇所とで実施し、それぞれの成形品の発泡倍率は7%であった。
【実施例5】
【0239】
実施例5は、実施例1、実施例2、実施例3、および実施例4において、ABSをHIPSと、m-PPE、PC/ABS、PCそれぞれに変更した。HIPSの場合の溶融樹脂温度は、230℃、m-PPEとPC/ABSとPCの場合は265℃とし、その他射出条件などは実施例1と同じである。得られる成形品の重量のバラツキの程度、発泡倍率もABSと略同じであった。
【実施例6】
【0240】
実施例6は、実施例1、実施例2、実施例3、および実施例4において、ABSをPPに変更した。溶融樹脂温度は230℃とし、その他射出条件などは同じである。外観のスワール・マークは、実施例1と実施例2のスチレン系樹脂に比べて少なかった。得られる成形品の発泡倍率は8.5%程度、重量のバラツキは0.5%未満であった。
【実施例7】
【0241】
実施例7は、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、および実施例6の発泡剤をメタノールだけとした。液状発泡剤の注入量は6.4ml、射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例8】
【0242】
実施例8は、実施例7において、液状発泡剤としてメタノールの代わりにエタノールを9.2ml使用した。射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例9】
【0243】
実施例9は、実施例7において、液状発泡剤としてメタノールの代わりにIPAを12ml使用した。射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例10】
【0244】
実施例10は、実施例7において、液状発泡剤としてメタノールの代わりにジエチルエーテルを10ml使用した。射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例11】
【0245】
実施例11は、実施例7において、液状発泡剤として水とエタノールの1:1の混合物を6.4ml使用した。射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例12】
【0246】
実施例12は、実施例7において、液状発泡剤として水とIPAの1:1の混合物を7.8ml使用した。射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例13】
【0247】
実施例13は、実施例7において、液状発泡剤として水とジエチルエーテルの1:1の混合物を6.8ml使用した。射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例14】
【0248】
実施例14は、実施例7において、液状発泡剤としてメタノールとエタノールの1:1の混合物を7.8ml使用した。射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例15】
【0249】
実施例15は、実施例7において、液状発泡剤としてメタノールとIPAとの1:1の混合物を9.2ml使用した。射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例16】
【0250】
実施例16は、実施例7において、液状発泡剤としてエタノールとIPAとの1:1の混合物を10.6ml使用した。射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例17】
【0251】
実施例17は、実施例7において、液状発泡剤としてメタノールとエタノールとIPAとの1:1:1の混合物を9.2ml使用した。射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例18】
【0252】
実施例18は、実施例7において、液状発泡剤としてメタノールとジエチルエーテルとの1:1の混合物を8.2ml使用した。射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例19】
【0253】
実施例19は、実施例7において、液状発泡剤としてエタノール、ジエチルエーテルとの1:1の混合物を9.6ml使用した。射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例20】
【0254】
実施例20は、実施例7において、液状発泡剤として、IPAとジエチルエーテルとの1:1の混合物を11ml使用した。射出条件などはそれぞれの実施例と同じである。得られる成形品の発泡倍率は約7%程度、但しPPは約8.5%であった。
【実施例21】
【0255】
実施例4では水とメタノールの1:1の混合溶液を用い、図1の装置を用いて射出成形機加熱筒内に注入した。実施例21では、図38のように液状発泡剤を注入する装置を2器(台、セット)用いて、一方の装置の液状発泡剤を入れるタンク1には水を、他方の装置の液状発泡剤を入れるタンク1にはメタノールを入れた。実施例21では、水1.8ml、メタノール3.2lmをそれぞれ計量し、水(本実施例では水道水も使用した。)と
メタノールを別々に図6で示すように注入口5を2箇所設けて注入し、射出成形機加熱筒内で気化させ、スクリュ8で攪拌し溶融状態の熱可塑性樹脂に微分散し、加圧溶解させ発泡性を持たせた。
実施例1と同様に成形した結果、発泡倍率7%の成形品を得た。
実施例21では、注入は水とメタノールとを同時に注入したが、先に水、または先にメタノールを注入するなどと時間差を設けてもよく、得られる成形品の発泡倍率などは略同じであった。
【0256】
また注入口5を図6の2箇所から、図7に示すように1箇所の注入口5とし、別々に注入した水とメタノールとはこの注入口5内で混ざり合い、射出成形機加熱筒7内に注入、気化させ、スクリュ8で攪拌し微分散し、加圧溶解させ発泡性を持たせた熱可塑性樹脂とした。
実施例1と同様に成形した結果、発泡倍率7%の成形品を得た。
【実施例22】
【0257】
実施例22は、実施例21のメタノールをエタノールに変えて、水は1.8ml、エタノールを4.6mlとした。発泡倍率などの結果は実施例21と変わりはなかった。
【実施例23】
【0258】
実施例23は、実施例21のメタノールをIPAに変えて、水は1.8ml、IPAを6mlとした。発泡倍率などの結果は実施例21と変わりはなかった。
【実施例24】
【0259】
実施例24は、前記実施例21のメタノールをジエチルエーテルに変えて、水は1.8ml、ジエチルエーテルを5mlとした。発泡倍率などの結果は実施例21と変わりはなかった。
ABSをHIPSと、m-PPE、PC/ABS、PCそれぞれに変更した。HIPSの場合の溶融樹脂温度は、230℃、m-PPEとPC/ABSとPCの場合は265℃とし、その他射出条件などは実施例1と同じである。得られる成形品の重量のバラツキの程度は0.5%以内、発泡倍率は約7%もABSと略同じであった。
PPでも実施し、発泡倍率は8.5%と他の実施例のPPと同じであった。
また上記樹脂HIPSと、m-PPE、PC/ABS、PCとを実施例21乃至実施例23実施した。得られたそれぞれの成形品の得られる成形品の重量のバラツキの程度は0.5%以内、発泡倍率は約7%もABSと略同じであった。
【実施例25】
【0260】
実施例25は、実施例1において水を15wt%の重曹水に変え、注入量は3.6mlとした。その他使用した樹脂、射出成形機、金型などは同じである。得られた発泡成形品の発泡倍率は約7%であった。
【実施例26】
【0261】
実施例26は、実施例1において水を25wt%の炭酸水素カリウム水溶液に変え、注入量は3.6mlとした。その他使用した樹脂、射出成形機、金型などは同じである。得られた発泡成形品の発泡倍率は約7%であった。
【実施例27】
【0262】
実施例27は、実施例2の液状発泡剤の水を15wt%の重曹水に変更し、6mlを量り取り、気化器・反応器22内で300℃に加熱し、溶媒の水は気化させ、重曹は熱分解させ炭酸ガスと水蒸気とし、注入圧力は圧力調整弁23で設定し、注入量は流量調整弁26で制御し、自動開閉弁158を開け、射出成形機加熱筒内の可塑化中の溶融したABS
中に計量開始から計量終了までの間注入し、発泡性を持たせ、実施例1と同様な成形条件、金型を用いて成形した。得られた成形品の発泡倍率は約7%であった。自動開閉弁158は発泡性ガス注入完了と同時に閉じた。
気化器・反応器22の加熱は、短時間で昇温させる目的で高周波誘導加熱した。
【0263】
重曹の熱分解によって気化器・反応器22内には残渣の炭酸ナトリウムが残ったので、10ショット毎に気化器・反応器22内の発泡残渣の洗浄を以下の手段で実施した。
初めに自動開閉弁158を閉じ、射出成形機加熱筒7内に入らないようにして、通常は閉じている洗浄液を気化器・反応器22に入れるための自動開閉弁159と洗浄液の廃棄用の自動開閉弁153を開き、洗浄液の入口155から水を入れて気化器・反応器22内を満たし、溶解しやすいように80℃に加温し、外部から超音波などで振動させ発泡残渣の炭酸ナトリウムを水に溶解させ、洗浄液を出口156から外部に廃棄した。この作業完了の後、入口155から空気を入れ、その圧力で気化器・反応器22と配管154内に残っている洗浄液を空気の圧力によって押出し、乾燥させ洗浄は完了した。その後入口155から窒素ガスを入れて装置内を窒素置換した。
【実施例28】
【0264】
実施例28は、実施例27で使用した15wt%の重曹水を25wt%の炭酸水素カリウム水溶液に変更して、注入量を6mlで実施した。その他使用樹脂、発泡残渣の洗浄の手段などは実施例27と同様である。
【実施例29】
【0265】
実施例29は、実施例25乃至実施例28においてABSの代わりにHIPS、m-PPE、PC/ABS、PC、PPでも実施した。発泡倍率などの結果は前記ABSと略同様であった。PPの場合は発泡倍率は約8.5%であった。
【0266】
実施例25、実施例26において液状発泡剤の射出成形機加熱筒内の注入は、樹脂の可塑化が始まる計量開始から、終了までと、計量が開始され2秒後に一度(いっき)に注入(本発明では「ドカン注入」と称する。)した場合とで実施したが、一度に注入した場合でも、発泡倍率と発泡セルの形状などに差はなかった。
ドカン注入は実施例1、実施例3でも実施、結果は計量の開始から終了までの連続注入と略同じであった。
【実施例30】
【0267】
図1の装置の紙面上部の注入部を2台を用いて、一方の装置の液状発泡剤を入れるタンク1には1当量のクエン酸を含む水溶液100mlを、他方には1当量の重曹を含む水溶液300mlを入れ、クエン酸水溶液を3mlと重曹水をそれぞれ3mlづつを計量し、図6に示すようにそれぞれを別々の注入口5から射出成形機加熱筒内に注入し、射出成形機加熱筒内で重曹水とクエン酸水溶液とを接触させ、化学反応させて炭酸ガスを発生させ、溶媒の水は気化させ発泡性ガスとした。
実施例30では実施例1のABS、金型、射出成形機を用い発泡倍率1.5%発泡成形品が得られることを確認した。
【実施例31】
【0268】
前記実施例30において、重曹水の代わりに1当量の炭酸水素カリウム水溶液として結果、前記実施例30の重曹使用の場合と略同じ結果を得た。
【実施例32】
【0269】
図3の装置を用い、1当量の重曹水150mlと、1当量のクエン酸水溶液150mlを量り取り、気化器・反応器22入れ、加熱はせず、炭酸ガスの臨界温度以上(35℃程
度)に加温はして、化学反応だけさせ炭酸ガスを発生させ、計量開始と同時に自動開閉弁158を開け、圧力調整弁23を用いて注入の圧力を設定し、流量調整弁26を用いて射出成形機加熱筒内に注入する炭酸ガスの量を調整し、図5に示すように、2箇所から可塑化中のABSに注入し発泡性を持たせた。計量完了と同時に自動開閉弁158を閉じ、気体注入を終了した。実施例1の金型を用いて成形した。発泡倍率は2%であった。
【0270】
気体発生が完了した気化器・反応器22内に残った液体は、自動開閉弁158を閉じ、洗浄液を気化器・反応器22に入れるための自動開閉弁159と洗浄液の廃棄用の自動開閉弁153を開け、洗浄液の入口155から空気を入れてその圧力で洗浄液の出口156から排出した。
炭酸水素カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液と、濃度が3wt%程度の希酢酸、クエン酸水溶液との反応でも同じ結果を得た。
これら反応させる塩基性の物質、炭酸水素塩、炭酸塩は単独の水溶液でなく、混ぜ合わせ使用することも、また希酢酸、クエン酸水溶液も単独でなく、これら水溶液を混ぜ合わせ使用することできる。
【実施例33】
【0271】
実施例33は、実施例32では気化器・反応器22を加熱せず炭酸ガスを発生させ、発泡性ガスとしたが、実施例33では反応と同時に180℃に加熱、溶媒の水も気化させ発泡性ガスとした結果、発泡倍率が2%から7%にアップした。
気化器・反応器22内に残った残渣は前記実施例27と同じ手段・方法で除去した。
【実施例34】
【0272】
実施例34は、実施例30乃至実施例33のABSをHIPSと、m-PPE、PC/ABSPC、PPそれぞれに変更した。HIPS、PPの場合の溶融樹脂温度は、230℃、m-PPEとPC/ABS、PCの場合は265℃とし、その他射出条件などは実施例1同じである。得られる成形品の内部には発泡セルが形成させていることを確認した。
【実施例35】
【0273】
実施例35は、実施例1において図23と図25に示す構造のシール金型に、図24の装置を用い、空気で1MPaの加圧、実施例1の発泡性樹脂を射出し、射出完了後、0.5秒後に加圧ガスを図24の金型キャビティ10とエジェクターボックス78内の加圧ガスのブローアウト{大気放出(排気)}弁87を開きブローアウト(排気)した。
得られた成形品の外観は、実施例1で発生したスワール・マークのない綺麗な表面を形成し、内部は実施例1と同様に発泡層がある。表面は1mm?2mm程度はスキン(ソリッド)層を持っていた。発泡倍率は約7%であった。
実施例2乃至実施例33でもOGCPを実施したところ、綺麗な外観の成形品を得た。
【実施例36】
【0274】
実施例36は、図27の成形品110に、図26に示すような流動末端に図27の製品体積480cm3の30%のダミー形状(捨て形状)106を設けた金型を用いて、実施例1乃至実施例33の熱可塑性樹脂と、液状発泡剤を用いて成形を実施した。ダミー形状106へ少しだけ樹脂が充填されるシュート・ショットとした。結果ダミー形状106によって金型キャビティ内に充填された溶融樹脂の圧力が低くなったことと、ダミー形状106へ金型キャビティ内の発泡性樹脂の広がり(ダミー形状106への移動)が見られたので、実施例1に比べ発泡倍率をあげる効果が認められた。
実施例36では開閉ゲートの機構(シャッター)102は用いず溶融樹脂の充填前に開けておいた。
【実施例37】
【0275】
実施例37は、実施例36において、図26に示す、ダミー形状106の処(所、ところ)にシャッター102を設けて金型キャビティ内一杯までフル・ショットし、直ぐに前記シャッター102を開けて金型キャビティ10内に充填された樹脂の圧力を下げ、発泡倍率の向上を狙った。結果それぞれの実施例で0.5%弱の発泡倍率のアップが確認された。本実施例37の結果のから、ダミー形状106による充填した金型キャビティ内の溶融樹脂の圧力を下げ、発泡倍率をあげる効果が認められた。実施例36と比べて、実施例37では一旦フル・ショットするので金型への転写性は向上した。
【実施例38】
【0276】
実施例38は、実施例37にOGCPを併用した結果、スキン層を持つ外観が綺麗な成形品を得た。実施例1の成形品に比べ更に発泡倍率のアップが確認された。OGCPの加圧ガスは空気を用いて圧力は1.6MPaである。実施例2乃至実施例33の熱可塑性樹脂と液状発泡剤でも実施、発泡倍率をあげる効果が認められた。
【実施例39】
【0277】
実施例39は、実施例1において、金型キャビティ内に発泡性樹脂の充填と同時に、射出成形機のスクリュをサックバックさせた。結果実施例1よりも発泡倍率のアップが少しは認められた。実施例39の技法(充填完了後にスクリュをサックバックさせて、金型キャビティ内の圧力を下げること)は、実施例2乃至実施例33の熱可塑性樹脂と液状発泡剤でも実施、発泡倍率をあげる効果が認められた。
【実施例40】
【0278】
実施例40は、図28の金型で、金型の一部{図30の破線118で示した部分=160×50の大きさで8mm後退(ブリージング)}が可能なようにした。よってこの部分だけ初めの肉厚8mmにブルージングの8mmが加わり16mmの肉厚となる。
実施例1の発泡成樹脂を金型キャビティ内にフル充填した後直ぐに前記金型を動かし(ブリージングして)、金型キャビティ内の発泡成樹脂の圧力を下げ、発泡しやすくした結果、実施例1に比べて発泡倍率が10%?13%高くなることが確認された。ブリージングの速度は0.5秒程度/8mmとした。
実施例2乃至実施例33の熱可塑性樹脂と、液状発泡剤を用いても実施した。ブリージングによって9%?15%程度の発泡倍率のアップが確認された。
【実施例41】
【0279】
実施例41は、実施例40において、OGCPを併用したところ、外観が綺麗(スワール・マークのない。)な成形品が得られた。加圧ガスの圧力は1.6MPaで、実施例41では、変色、焼け(金型キャビティ内へ高速・高圧で溶融樹脂を充填するので断熱圧縮による変色、焼け)を防止する目的でOGCPに窒素ガスを使用した。
【実施例42】
【0280】
実施例42は、実施例40、実施例41では金型の一部を拡張(ブリージング)させたが、実施例42では、金型の全体を5mm拡大(リセッション)させることで更に高発泡倍率の成形品が得られることを確認した。リセッションによって15%?25%程度の発泡倍率のアップが確認された。
【0281】
リセッション可能な金型の構造を説明する。PLは平見切りと縦見切りとからなり、金型のPLが一杯締められている場合(型締がされている状態)は平見切りとなっている。
この状態で実施例1の発泡性樹脂を金型キャビティ内一杯に充填し、充填後直ぐに稼働側の金型を5mm後退(リセッション)させ、金型キャビティ内に充填された発泡性樹脂の圧力を下げ発泡が容易になされるようにした。結果発泡倍率約20%?35%の成形品が得られた。(図31)
【0282】
実施例2乃至実施例33の熱可塑性樹脂と、液状発泡剤を用いても実施、発泡倍率30%以上の高発泡倍率の成形品を得た。
実施例42のリセッション可能な金型構造はTAFと、USMと、H2Mの第1段階の型開きと略同様である。金型のリセッションは成形機の型開きの力を利用して行ない、型開き距離の制御は金型にプラーボルトを設置した。リセッションの速度は0.3秒程度/5mmとした。PPのような結晶性樹脂では収縮率が大きいので、ABSなどの非結晶性(非晶性)樹脂よりも発泡倍率は大きくなった。なお型開きは1段、2段、多段としてもよい。
【実施例43】
【0283】
実施例43は、実施例42において、空気で圧力は1.5MPaのOGCPを併用したところ、成形品表面にスワール・マークの発生のない、綺麗なスキン層、内部は発泡層を持った成形品が得られた。
【実施例44】
【0284】
実施例44は、IGCPを用いて高倍率の発泡成形品を得る手段を示した。図32はガス・アシスト成形装置であるが、成形機とのインターフェースさえ変更すればIGCP装置にも、またMuCell等の装置にも転用可能である。以下IGCP装置を説明する。
15MPaに充填された窒素ガスボンベ120{PSA(プレッシャースイング吸着方式、活性炭の吸着よる窒素ガス分離方式)、分離膜を用い空気中から分離した窒素ガスでもよい。}から、圧力調整弁23で1MPa程度に一旦減圧し、例えばガスブースター127、または高圧コンプレッサーなどを用いて50MPa程度のまで圧縮して、圧縮した高圧の窒素ガスのレシーバーのタンク128に蓄圧する。これを高圧のレギュレーター130で必要な圧力に減圧し使用する。
【0285】
IGCPの場合は、成形機からの射出開始の信号、または充填完了信号を受けて、注入用の自動バルブ133が開き、金型キャビティ10内に充填された溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の内部に、レシーバータンク128内の窒素ガスを、成形機のノズルから、スプール・ランナーから、または直接金型キャビティ10内の溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂に注入する。注入後一定の時間を経過した後、注入用の自動バルブ133は閉じ、直ぐに、あるいは少し遅れて大気放出弁用の自動バルブ134が開き注入した窒素ガスを大気中に放出する。
【0286】
図32ではレシーバータンク128以降の圧力調整弁130から、高圧ガスの使用用途138までと、大気放出弁用の自動バルブ134までのIGCP回路は1回路となっているが、複数の回路でもよく、複数の回路を用いて、一つの成形品に同じ圧力を、または異る圧力を、または同じ注入時間で、または異なった注入時間で実施してもよい。
実施例1で説明したように異形状の多数個取りの場合、それぞれの成形品毎(ごと)に同じ圧力を、または異る圧力を、または同じ注入時間で、または異なった注入時間で実施してもよい。
この装置は非発泡性の溶融樹脂で実施すれば中空成形、GPIになる。射出、または押出成形機の加熱筒につなぎ、熱可塑成樹脂の可塑化中の溶融樹脂に高圧の窒素ガスを注入すれば、MuCell等の装置として実施できることは使用用途1)?4)138で示した。
【0287】
実施例1において、金型キャビティ内に85vol%程度のショート・シュットで充填後、本実施例44のIGCP装置を用いて、樹脂の内部に直接15MPaで、10秒間のIGCPを実施した後に大気放出した。このようにした得られた成形品は発泡倍率が25%程度であった。発泡倍率は金型キャビティ内に充填する樹脂量によって決まり、ショー
ト・ショットで充填後、高圧の窒素ガスによって膨らませ(ブローさせて、一旦中空を形成させて、)ると、より発泡倍率の大きい成形品が得られる。この場合に液状発泡剤の注入量(添加量、使用量)が少ないと、発泡が進まず(広がらず、高発泡倍率の成形品にならず)、中空部ができてしまうので、発泡剤を多めに注入(添加、使用)する。更に高い発泡倍率を得るには、実施例44と、実施例42で記載したTAF、USMなどと同じようにリセッションを付加(いっしょに行えば)すればよい。H2M(金型のコアをバックさせた後に、遅延させたコアをバックさせることで内部に補強のためのリブを作ることができる。)では強度の高い成形品が得られる。実施例2乃至実施例33の熱可塑性樹脂と、液状発泡剤を用いても実施した結果、発泡倍率30%以上の高発泡倍率の成形品を得た。
【実施例45】
【0288】
実施例44はIGCPだけを用いたが、実施例45ではOGCPを併用することでスワール・マークのない綺麗な外観の高発泡倍率の成形品が得られた。
【実施例46】
【0289】
実施例45は金型キャビティ内に溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の内部に高圧の窒素ガスを注入したが、実施例46では、金型のPLの稼働側から、圧力が15MPaの高圧ガスを作用{ガス・プレス(GP)}させ、一旦可動側から固定側へ溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂をガスの圧力でプレスして押し付け、金型キャビティ内の溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂をキャビに一旦転写、窒素ガスを大気放出して、樹脂にかかる圧力を開放し、可動側に向かって発泡(膨張)させた。ガスが金型の外の漏れるのを防ぐ目的で成形品の端には高さ5mm、厚さ1.5mmのリブ(図33の141)を設けた(図33)
【0290】
この手段で実施例42の金型をリセッションさせることと同じ作用と効果を期待した。材料は実施例1のABSを用いた。発泡倍率は25%と高倍率であった。ところが実施例46は肉厚8mmと厚かったので、懸念されたように成形品内部にガスが入り込んでしまった。
肉厚が3mmの場合では成形品の内部にガスは入り込まなかった。
【実施例47】
【0291】
実施例47は、実施例46の成形品にOGCPを併用した結果スワール・マークのない外観が綺麗な成形品を得た。
【実施例48】
【0292】
液状発泡剤の注入量は発泡倍率を高めるために実施例1の2倍とし、実施例1のABSを用いてH2M成形を実施した。金型を前進させ、金型キャビティ内の厚さを5mmとし、前記発泡性樹脂を略金型キャビティ内一杯に充填、その後に型締力を切るおよび型締力を下げることの少なくとも一つを実施して圧力を下げて、IGCP装置を用い可動側から10MPaの圧力で窒素ガスを金型キャビティ10内の樹脂中に注入、ガス注入と同期して機械的な動作と、注入したガスの圧力によって金型を下げ〔バック{後退(リセス,リッセション)}〕て、金型キャビティ内の体積を大きくして、金型の後退完了と同時に注入した前記窒素ガスを大気放出した。結果内部が発泡層を有する発泡倍率約40%強の発泡成形品を得た。その後に機械的に金型の一部を下げて内部の発泡層にリブを作った。
【0293】
本実施例48において注入する窒素ガスは、金型キャビティ内の発泡性樹脂を広げること、金型をリセッションさせること、IGCPとしての作用がある。勿論のことながら、OGCPを用いれば外観が綺麗な成形品が得られる。実施例2乃至実施例33の熱可塑性樹脂と、液状発泡剤を用いての実施でも略同じ結果を得た。
【実施例49】
【0294】
n-ブタノンでASを溶解、その中にADCAを懸濁させADCAが35wt%含有のゾル状の液状発泡剤001Mとした。実施例1の液状発泡剤のかわりに使用したところ、実施例1と略同様な結果を得た。前記ASの代りにPSを用いて、液状発泡剤002Mとした。実施例1の液状発泡剤のかわりに液状発泡剤002M用い樹脂をPSにしたところ、実施例1と略同様な結果を得た。なおそれぞれのADCA含有の発泡剤の注入量は、成形品の重量に対して0.5wt%であった。
実施例49の液状発泡剤001MはABS以外には、PC/ABS、PCに、液状発泡剤002Mはm-PPEでも実施が可能である。
【実施例50】
【0295】
ABSをベース(キャリア)レジンとしてADCAを10wt%含有の発泡剤のマスターバッチ001Aのペレットを製造した。例えばABSの発泡成形品を得るには、射出成形機加熱筒内への投入前にペレット同士(どうし)を混ぜ合わせる。実施例1の場合このマスターバッチ001Aだけを使用、略同じ発泡倍率の発泡成形品を得るとすると添加量は成形品の重量に対して1/25?1/30で添加量は多く、経済的ではない。しかしADCAから発生してくる窒素ガスは発泡成形にとって有用なガスである。
【0296】
この経済的問題を解決する手段として、本発明の液状発泡剤と併用すると、マスターバッチ001Aの使用量を少なくすることができる。発泡残渣も少なくすることができる。
実施例1ではじめにABSのペレットに対し、マスターバッチ001Aを1/80で混ぜ合わせ、射出成形機加熱筒内で可塑化したADCAの熱分解によって発生した窒素ガス、炭酸ガスなどによって発泡性を持たせたABSに対して、前記実施例1の液状発泡剤を0.3wt%を注入した。結果実施例1と略同様な発泡成形品が得られた。本実施例50で述べた手段は実施例2乃至実施例49でも実施可能である。
【実施例51】
【0297】
実施例50で述べたように窒素ガスは発泡成形の発泡性ガスとして有用である。MuCell等では主に窒素ガスを使用するが、射出成形機加熱筒内の熱可塑性樹脂に注入する量は、圧力だけであるので、成形品の発泡倍率のバラつきが大きい課題がある。
実施例51は、この問題を軽減させる目的で、MuCell等の技法と本発明の液状発泡剤を併用する。これによってMuCell等の課題の低減ができた。
【0298】
実施例1において、図32のガス・アシスト成形装置で35MPaに圧縮した窒素ガスを射出成形機加熱筒内の可塑化中のABSに注入し、同時に液状発泡剤として水の代わりに水とエタノールの1:1の混合物を図1の装置を用いて射出成形機加熱筒内に5ml注入、窒素ガスと水蒸気、エタノール蒸気との複合発泡ガスとした。得られた成形品は実施例1と略同様な成形品を得た。本実施例51で述べた手段は実施例2乃至実施例49でも実施可能である。
本実施例51では窒素ガスを用いたが、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、メチルエーテル蒸気、フロン蒸気、一般式CnH2n+2表される鎖式飽和炭化水素(アルカン)、一般式CnH2n(n≧2)で示されるアルケン、アルカジエン、アルカトリエンなどの有機化合物の内で圧力が1atmで、温度が20℃の時に気体である物質などでも実施できる。
上記アルカン、アルケン、アルカジエン、アルカトリエンなどの内で有機化合物の内で圧力が1atmで、温度が20℃の時に液体である物質は本発明の液状発泡剤としても使用が可能である。
【実施例52】
【0299】
ABSを用い、図34の装置で押出機加熱筒内の溶融樹脂に対して液状発泡剤として水をダイヤフラムポンプ145を用いて連続的に、1箇所の注入口5から押出機加熱筒内の溶融樹脂に対して重量比で、0.75wt%の注入、気化させ、微分散、加圧溶解させ発泡性樹脂とした。
前記発泡性を持たせた発泡性樹脂をダイ149から押出、厚さ8mmの内部は発泡層を持った発泡倍率5%の単層押出シート成形品を得た。
射出成形での液状発泡剤の注入量(注入量の容量制御とは一回の射出量(重量)に対する液状発泡剤の注入量(重量)の割合で、液状発泡剤の重量を、液状発泡剤の重量を除して、その値に100を乗じた値である。
例えば、1回の樹脂の射出量が500gに対して、1.25gの液状発泡剤を射出成形機加熱筒内に注入した場合に0.25%の注入量と言う。
押出成形での液状発泡剤の注入量の容量制御とは時間当たりの押出量(重量)に対する液状発泡剤の注入量(重量)の割合で、液状発泡剤の重量を、液状発泡剤の重量を除して、その値に100を乗じた値である。
例えば、1分間の樹脂押出量が500gに対して、1.25gの液状発泡剤を押出機加熱筒内に注入した場合に0.25%の注入量と言う。
【0300】
水以外に他の液状発泡剤として、水とメタノールとの1:1の混合物の場合の注入量は1wt%、水とエタノールとの1:1の混合物の場合の注入量は1.3wt%、水とIPAとの1:1の混合物の場合の注入量は1.6wt%、水とジエチルエーテルールとの1:1の混合物の場合の注入量は1.4wt%、メタノールとエタノールの1:1の混合物の場合の注入量は1.6wt%、メタノールとの1:1の混合物の場合の注入量は1.9wt%、エタノールとIPAの1:1の混合物の場合の注入量は2.2wt%、メタノールとエタノールとIPAの1:1:1の混合物の場合の注入量は1.9wt%、メタノールとジエチルエーテルの1:1の混合物の場合の注入量は1.7wt%、エタノールとジエチルエーテルの1:1の混合物の場合の注入量は2wt%、IPAとジエチルエーテルの1:1の混合物の場合の注入量は2.3wt%をそれぞれ用いた結果発泡倍率がABSの場合は5から7%の発泡倍率を持つ単層押出シート成形品を得た。
実施例53では上述したABS以外に、HIPS、PPでも実施、HIPSを用い水と水以外の液状発泡剤それぞれの実施の結果はHIPSでは発泡倍率5%、PPでは発泡倍率8%であった。
【実施例53】
【0301】
図34の装置2台(機)を用いて、一方の装置の液状発泡剤を入れるタンク1には水を、他方の装置の液状発泡剤を入れるタンク1にはメタノールを入れ、それぞれの装置のダイヤフラムポンプ145を用いて押出機加熱筒内にそれぞれを注入した。注入は図6で示しように、2箇所から実施、押出ユニット148に近い側の注入口5からは樹脂の重量に対して液状発泡剤の水は0.35wt%、他方からはメタノールをそれぞれ0.65wt%で注入、押出機加熱筒内で気化させ、発泡性ガスを押出機加熱筒内の溶融状態のABS樹脂中に微分散、加圧溶解させ、発泡性を持たせたABS樹脂としてダイ149から押出、厚さ8mmの内部は発泡層を持った発泡倍率5%の単層押出シート成形品を得た。
水以外に他の液状発泡剤として、水とエタノールの場合の水は0.35wt%、エタノールは0.95wt%、水とIPAの場合の水は0.37wt%、IPAは1.25wt%、水とジエチルエーテルの場合の水は0.37wt%、ジエチルエーテルは1wt%とした。メタノールとエタノールの場合のメタノールは0.65wt%エタノールは0.95wt%、メタノールとIPAの場合のメタノールは0.65wt%IPAは1.25wt%、メタノールとジエチルエーテルの場合のメタノールは0.65wt%ジエチルエーテルは1wt%、エタノールとIPAの場合のエタノールは0.95wt%IPAは1.25wt%、エタノールとジエチルエーテルの場合のエタノールは0.95wt%ジエチルエーテルは1wt%、IPAとジエチルエーテルの場合のIPAは1.25wt%ジエ
チルエーテルは1wt%をそれぞれ用いた結果発泡倍率がABSの場合は5から7%の発泡倍率を持つ単層押出シート成形品を得た。
実施例53では上述したABS以外に、HIPS、PPでも実施、HIPSを用い水と水以外の液状発泡剤それぞれの実施の結果はHIPSでは発泡倍率5%、PPでは発泡倍率8%であった。
【実施例54】
【0302】
実施例54では図34の装置2台を用いて、図6に示す様にそれぞれの液状発泡剤を別々に押出機加熱筒内に入れて加熱筒内で起泡させた。実施例55では注入口5は1箇所で、それぞれの液状発泡剤はこの注入口5内で混ざり合い、押出機加熱筒7内に注入され、気化させ、スクリュ8で攪拌し微分散し、加圧溶解させ発泡性を持たせた熱可塑性樹脂をダイ149から押出、発泡構造を持った単層押出シート成形品を得た。
【実施例55】
【0303】
実施例53では液状発泡剤を押出機加熱筒内に液状で注入し、気化させたが、実施例55では図35の装置を用いてそれぞれの液状発泡剤を気化器・反応器22内に入れ外部から加熱して、気化させ、その気体の注入圧力を圧力調整弁23で調整し、注入量は流量調整弁26で流量調整して押出機加熱筒内に連続的に注入し、発泡性樹脂とした。
【実施例56】
【0304】
実施例54では、それぞれの液状発泡剤を別々に押出機加熱筒内に入れ気化させたが、実施例56では図35の装置を2台用いて液状発泡剤それぞれを気化器・反応器22内に入れ外部から加熱して、それぞれを気化させ、それぞれの発泡性ガスの注入圧力は圧力調整弁23で調整し、注入量は流量調整弁26で流量調整して押出機加熱筒内に注入し、発泡性樹脂とした。
【実施例57】
【0305】
実施例57は、液状発泡剤を15wt%の重曹水を用い、注入量は0.75wt%で押出機加熱筒内に注入、気化と熱分解をさせ発泡性ガスを発生させ、発泡倍率8%のABS単層押出シート成形品を得た。
なお、HIPS、PPでも実施、それぞれの熱可塑性樹脂の発泡構造を持った単層押出シート成形品を得た。
15wt%の重曹水を25wt%の炭酸水素カリウム水溶液に変更、注入量は同じく0.75wt%として実施、それぞれの熱可塑性樹脂の発泡構造を持った単層押出シート成形品を得た。
【実施例58】
【0306】
実施例52の液状発泡剤を15wt%重曹水に変更した。図35に示す装置の気化器・反応器22を外部から300℃に加熱しておいてその中に15wt%重曹水をダイラフラムポンプ145を用いて連続的に注入、溶媒の水は気化し、重曹は熱分解して、炭酸ガスと水蒸気を発生させ、その発泡性ガスを圧力調整弁23で圧力を調整し、流量調整弁26で流量(注入量)を調整して、押出機加熱筒内に入れ、溶融樹脂中に微分散し、加圧溶解させた。
その発泡性を持たせた熱可塑性樹脂をダイ149から押出、発泡構造を持ったABS単層押出シート成形品を得た。
実施例58では上述したABS以外に、HIPS、PPでも実施し、上述した液状発泡剤それぞれの実施の結果は発泡倍率5%、PPでは発泡倍率8%であった。
なお、それぞれの熱可塑性樹脂に対して液状発泡剤の15wt%重曹水の使用量は0.75wt%とした。
15wt%の重曹水を25wt%の炭酸水素カリウム水溶液に変更、使用量は同じく0
.75wt%として実施、それぞれの熱可塑性樹脂の発泡構造を持った単層押出シート成形品を得た。
【実施例59】
【0307】
図36の装置を用い、15wt%の重曹水と、15wt%のクエン酸水溶液とを連続して、気化器・反応器22入れ、加熱はせずに化学反応させ炭酸ガスを発生させ、自動開閉弁158を開け、圧力調整弁23を用いて注入の圧力を設定し、流量調整弁26を用いて押出機加熱筒内に容量制御しながら注入する炭酸ガスの量を調整し、図5に示すように、2箇所から可塑化中のABSに注入し発泡性を持たせた。その発泡性を持たせた熱可塑性樹脂をダイ149から押出、発泡構造を持った発泡倍率が2%程度のABS単層押出シート成形品を得た。
但し炭酸ガスは、圧力を高めると液化するので、気化器・反応器22を初め押出機加熱筒までの回路は炭酸ガスの臨界温度以上に加温してある。
【0308】
気体発生が完了した気化器・反応器22内に残った液体(残液体)は、定期的に自動開閉弁158を閉じ、洗浄液を気化器・反応器22に入れるための自動開閉弁159と洗浄液の廃棄用の自動開閉弁153を開け、洗浄液の入口155から空気を入れてその圧力で洗浄液の出口156から残液体を排出した。
押出成形の場合は連続して発泡性ガスを押出機加熱筒内に注入しなければならないので、残液体の排出時には別に使用するに図36の装置を別に準備した。
炭酸水素カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液と、濃度が3wt%程度の希酢酸、クエン酸水溶液との反応でも同じ結果を得た。
なお、実施例58の方法を用いれば、気化器・反応器22内に例えばドライアイスを入れておいて、その中に水を注ぎ発生する炭酸ガスを、またはドライアイスの代わりにカルシウムカーバイト(CaC2)を入れておいて、水を注ぎ発生してくるアセチレンを、またはドライアイスの代わりに金属例えば亜鉛(Zn)を入れておいてそれに酸(例えば希硫酸)またはアルカリ(例えば水酸化ナトリウム水溶液)を接触させ発生してくる水素を、また硼水素化ナトリウム(NaBH3)と酸の接触または熱分解で発生してくる水素なども発泡性ガスとして用いることも可能である。
【実施例60】
【0309】
実施例58では気化器・反応器22を加熱せず炭酸ガスを発生させ、発泡性ガスとしたが、実施例59では反応と同時に180℃に加熱、溶媒の水も気化させ発泡性ガスとした結果、発泡倍率が2%から7%にアップした。
気化器・反応器22内に残った残渣は実施例57と同じ手段・方法で除去した。
【実施例61】
【0310】
実施例53乃至実施例59では、表面まで発泡しているので、綺麗な外観を得るために、多層押出成形とした。実施例60では表面は発泡させないPETとして、非発泡のPETシート、ABSの発泡の熱可塑性樹脂のシート、非発泡のPETシートの3層構造を持つ表面が綺麗な発泡3層シートを得た。
また表面にシボ模様などを付ける為にシボを加工したローラーを押し当てる加工した。
【実施例62】
【0311】
熱可塑性樹脂の発泡射出成形法では保圧を用いなので、金型キャビティ内に発泡性を持たせた熱可塑性樹脂の充填後、すぐにサイドゲートの乗せ部分(図29で示す長さ25mm、巾5mm、厚さ3mmのサイドの乗せゲート108)を、機械的な動作によって、ロット棒113で成形品内に押し込む(図29で示す成形品に押し込んだゲート114)ことで自動ゲートカットが可能である。この方式での自動ゲートカットを採用すれば、やっかいなゲートカットを実施する工数低減ができる。
【0312】
自動ゲートカットを採用すれば、巾広で厚い1点ゲートでの成形が可能なので金型キャビティ内への充填する圧力を下げられるので、発泡倍率のアップ、転写性のアップ、ウェルドライン発生のない外観が良好な成形品が得られる。
実施例61は、実施例1乃至実施例44の金型で自動ゲートカットを行いその効果を確認した。(図29)
【実施例63】
【0313】
実施例1乃至実施例4、実施例25乃至実施例28、実施例30、実施例31において熱可塑性エラストマーを用いての発泡構造体の製造が可能であることを確認した。性状発泡剤の種類と注入量などはそれぞれの実施例と同じとした。
実施例63で使用した熱可塑性エラストマーは、オレフィン系エラストマー{住友TEE3572(商品名)}、スチレン系エラストマー{住友TPE-SB2400(商品名)}、ポリエステルエラストマー{ペルプレンP-30B(商品名)}、SEBS(水添SBS)系エラストマー{ラバロンSJ4400(商品名)}である。更に実施例36、実施例37、実施例39乃至実施例40、実施例42、実施例44、実施例46、実施例48に示すブルージング、リセッションなどの手段、IGCPで高発泡倍率の成形品を得ること、OGCPで綺麗な外観を持つ成形品が得られることも確認した
【実施例64】
【0314】
実施例1、実施例2、実施例53、実施例56においてペンタンを液状発泡剤として用いても発泡倍率などはこれらの実施例と略同じ結果であった。
実施例1、実施例2の射出成形の場合のペンタンの注入量は14.4mlとした。実施例53、実施例56の押出成形の場合のペンタンの注入量は3wt%とした。
【実施例65】
【0315】
実施例1、実施例2、実施例53、実施例56においてエタノール96wt%と水4wt%の混合溶液(共沸混合物)を液状発泡剤として用いてもこれらの実施例と略同じ結果であった。
実施例1、実施例2の射出成形の場合のエタノール96wt%と水4wt%の混合液の注入量は9mlとした。実施例53、実施例56の押出成形の場合のエタノール96wt%と水4wt%の混合液の注入量は1.8wt%とした。
【実施例66】
【0316】
実施例66は、性状が液体の難燃剤の芳香族縮合燐酸エステル{大八化学のCR735(商品名)}を用いて発泡成形品に難燃性を付与した。
実施例66は、実施例5のPC/ABSを使用し、図38に示すように、図1における液状発泡剤を加熱筒に注入する装置を2器用いた。実施例66は、液状の難燃剤のCR735と、水とエタノールの1:1の混合物の液状発泡剤と、を別々にタンク1に入れ、それぞれを別々に注入器5で計量し、射出成形機加熱筒内に計量開始と共に注入、計量完了と共に停止、難燃剤含有の発泡性を有する熱可塑性樹脂を実施例1の金型を用いて射出成形加工した。
実施例5のPC/ABSの成形品と、実施例65のPC/ABSの成形品とに火を付け燃焼させたところ明らかに実施例65の難燃剤含有のPC/ABSの成形品は燃焼しにくく結果を得た。なお、難燃助剤としてのフッ素化合物は発泡予定のABS中に溶融混練しておいた。
なお、CR735の注入量は5wt%、水とエタノールの1:1の混合物は0.5wt%とした。
【0317】
大八化学のPX200(商品名)は融点が96℃なので、加温して性状を液体として使
用するか、有機溶剤に溶かして性状を液体として使用する方法がある。それ以外の難燃剤でも、本発明に有効な液状発泡剤例えばアルコール類、エーテル類、脂肪族炭化水素などに溶解可能で、図1の装置を用いて射出成形機加熱筒内に注入可能ならば実施できる。
また本発明の液状発泡剤は難燃性を持たせた(難燃剤含有の、難燃性を付与した)樹脂でも実施可能である。
【実施例67】
【0318】
実施例66は、射出成形を例示した。実施例67は、図39に示すように、押出成形で図34における液状発泡剤を加熱筒に注入する装置2器を用いた。
実施例67は、液状発泡剤の変わりに、一方の装置から難燃剤を押出機加熱筒内に注入しながら、他方の装置から液状発泡剤を加熱筒に注入する。
図39は、図34の液状発泡剤を加熱筒に注入する装置を2器用いた図を示したが、他には一方を図35、図36の注入する装置を用いて液状発泡剤、または発泡性ガスを押出機加熱筒内の可塑化した熱可塑性樹脂に発泡性を持たせ押出成形の実施も可能である。
実施例67は、CR735を図39の装置を用いて押出機加熱筒内に5wt%を注入し、同時に15wt%の重曹水を0.75wt%を図39の装置を用いて注入、押出成形加工して難燃剤含有のPC/ABSの成形品を得た。
実施例67の成形品に火を付け燃焼させたところ、難燃剤含有の成形品は燃焼しにくいという結果を得た。なお、難燃助剤としてのフッ素化合物は発泡予定のPC/ABS中に溶融混練しておいた。
【実施例68】
【0319】
実施例1乃至実施例32の発泡性を持たせたABSまたはHIPS、m-PPEなどの発泡性樹脂を射出成形機ノズルから出し、図37の下型161の金型キャビティ(大きさは、横100mm、横50mm、高さ50mm)内に注ぎそのまま冷却・固化の完了まで待ち、発泡層をもったブロック成形品を得た。
【0320】
前記ブロック成形品は単に発泡性を持たせ熱可塑性樹脂上部がオープンの型(下型161だけを使用)に注ぎ込んだだけでの非圧縮あったので、発泡が進み膨れ上がり綺麗な形状のブロック(直方体)とはならなかったので、次には上から上型160をかぶせで圧力を掛けて、加圧して、冷却・固化後取り出し、大きさは、横100mm、横50mm、高さ50mmの立方体のブロックを得た。
実施例63のTPEを用いても容易に発泡ブロックの製造が可能であることを確認した。
【実施例69】
【0321】
本発明で言うブロック成形とは、樹脂(例えば性状はバルク、ペレット、粉体など)と液状発泡剤とを混ぜ合わせ、金型に入れ、金型を加熱し、金型内で液状発泡剤を気化および熱分解の何れか1つ以上をさせ、発泡成形品を得る手段である。
ABSの粉体にIPAを3wt%混ぜ合わせ、それを図37に示し金型キャビティ10に入れ、上部から上型160をかぶせして、金型全体を300℃に加熱し、ABSを溶解しIPAの気化によって発泡させ、発泡によって体積が膨張した余分な発泡性樹脂はベント162から出てきた。
このようにして発泡倍率約8%のABS発泡成形品を作った。前記IPAの代わりに液状発泡剤として15wt%の重曹水を0.5wt%をABSと混ぜ合わせ同様に加熱、ABSの溶融と、溶媒の水の気化、重曹の熱分解により発泡させIPAと略同様の発泡倍率8%の発泡成形品を得た。(図37)
【実施例70】
【0322】
押出機、射出成形機加熱筒内の洗浄には普通はパージ(洗浄)材{例えばアサクリン、
Zクリーン(何れも商品名)}が使用されるが、実施例70では本発明の液状発泡剤が有用な手段であることを示す。
通常のパージ材はアルキル・ベンゼン・スルフォン酸ソーダ(略号は、樹脂のABSと区別するために本発明では「ABS-Na」とする。)などに代表させる界面活性剤と、ASの硝子繊維(GF)入り、PCの硝子繊維入り、高密度ポリエチレン(HDPE)、PP、アクリル(PMMA)などを用いている。洗浄力向上にADCAなどの化学発泡剤を用いる場合もあるが、ADCAの残渣が加熱筒内に残る懸念があった。
【0323】
本発明の液状発泡剤の水、アルコール類、エーテル類、水とペンタンなどの有機溶剤のエマルジョンなどは発泡残渣がないのでADCAの代わりに用いて、硝子繊維が10wt%以上含有のASまたはPCと、HDPE、PP、アクリルなど洗浄材の主材とすることで高い洗浄力が得られる。
通常はAS、HDPE、界面活性剤のABS-Na、発泡剤などは混ぜ合わせ洗浄材のペレット化するが、ただ単に、ASとHDPEとのペレット同士を混ぜ合わせた方、簡単に組成変更ができ、然もペレット化の費用もかからず経済的である。
40wt%硝子繊維入りASを洗浄材の主材として加熱筒内に入れ、可塑化中に実施例3の水とメタノールの液状発泡剤を用いて洗浄材とした。
【0324】
別には硝子繊維40wt%入りAS50部に、ノバテックHB330(商品名)を50部の混合樹脂ペレットとして洗浄材の主材とし、これに実施例3の液状発泡剤を0.5wt%注入して洗浄した。
また水とペンタンとを1:1の混合溶液にABS-Naを1wt%入れエマルジョンとした液状発泡剤を使用した。この際にABS-Naが加熱筒内に残留することが懸念されるならば、ABS-Naを洗い流す目的で残渣のない実施例1の液状発泡剤の水、実施例3などの水とアルコール類の混合液を使用し再洗浄をすればよい。
【実施例71】
【0325】
実施例71は、実施例1乃至3で用いた液体である水を、50wt%のクエン酸水溶液とした。その他の射出条件などは、それぞれの実施例と同じにした。但しクエン酸などの有機酸は分解温度が高いので、樹脂温度を285℃と高くした。その結果得られた成形品110は、発泡倍率は7%程度であり、重量のバラツキが0.5%未満であった。また、50wt%クエン酸水溶液の代わりに、15wt%の酒石酸水溶液を用いて成形品110を成形した。この場合でも、重曹水を用いた場合とほぼ同様の結果を得た。さらに50wt%の酒石酸カリウムナトリウム水溶液も液状発泡剤として使用が可能であった。
【実施例72】
【0326】
実施例72は、図1に示す装置における液状発泡剤を加熱筒に注入する装置を2器用いた。その全体は、図38に示した。
図38に示す液状発泡剤を加熱筒に注入する2器の装置それぞれのタンク1には、液温が25℃で濃度が9.5wt%の炭酸水素ナトリウム水溶液と、液温が25℃で濃度が20wt%の炭酸2水素ナトリウム水溶液と、を入れた。
射出成形機の加熱筒への液状発泡剤の注入は、図6に示すように、それぞれの水溶液を別々に加熱筒に注入した。使用した樹脂は、ABSである。注入量は、成形品重量に対して、9.5wt%炭酸水素ナトリウム水溶液を1wt%、20wt%の炭酸2水素ナトリウム水溶液を0.05wt%である。注入方法は、加熱筒内で溶融混練中のABS(可塑化中の溶融ABSの樹脂温度は250℃)に対し注入し、それぞれの液状発泡剤を加熱筒内で混合する手段を用いた。実施例1の成形品を用いて成形した。発泡倍率6%であった。
【0327】
なお、図示していないが、図1の装置は、溶解した炭酸水素ナトリウムなどが再結晶し
ないように加温できるようにしてある。
ABSの代わりにHIPS、m-PPEでも実施、ABSと同じような結果を得た。
炭酸2水素ナトリウムは発泡核剤と作用して、炭酸水素ナトリウム水溶液だけの場合よりも微細な発泡セルを確認した。炭酸水素ナトリウムとクエン酸2水素ナトリウムとの混合比は100:20?1、最適値は100:5程度である。
なお、本実施例72の液状発泡剤は押出成形でも実施できる。
【実施例73】
【0328】
炭酸水素ナトリウム水溶液と、クエン酸2水素ナトリウム水溶液は、混ぜ合わせると反応するので、混ぜ合わせた状態で保管することはできない。実施例73では、図6に示すように、それぞれの水溶液を別々の注入口から加熱筒内に注入した。
実施例73は、図5に示すように、注入口の手前で、それぞれの液状発泡剤(水溶液)を混ぜ合わせて注入した。その結果、実施例72と同様に、発泡倍率6%のABS、HIPS、m-PPEの発泡成形品を得た。
なお、本実施例73の液状発泡剤は押出成形でも実施できる。
【実施例74】
【0329】
実施例74は、実施例72、実施例73で使用した9.5wt%の炭酸水素ナトリウム水溶液を、30wt%炭酸水素カリウム水溶液に変更した。発泡の状態、発泡セルの大きさ、発泡倍率などの結果は、実施例72、実施例73とほぼ同じであった。
【実施例75】
【0330】
実施例75は、実施例72、実施例73、実施例74での20wt%のクエン酸2水素ナトリウムを、20wt%のクエン酸2水素カリウム変更した。発泡の状態、発泡セルの大きさ、発泡倍率などの結果は、実施例72乃至実施例74とほぼ同じであった。
【実施例76】
【0331】
実施例76は、実施例72乃至実施例75における液状発泡剤の炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液を、エタノール、ジエチルエーテル、40vol%のエタノール水溶液、60vol%ジエチルエーテル水溶液に変更した。
その結果、エタノール、ジエチルエーテル、40vol%のエタノール水溶液、60vol%のジエチルエーテル水溶液を単独で使用した場合に比べ、発泡セルは細かく、炭酸水素ナトリウム水溶液以外の場合でもクエン酸2水素ナトリウム、クエン酸2水素カリウムが発泡核剤として作用することを確認した。
【実施例77】
【0332】
実施例77は、実施例1における液状発泡剤の水の代わりに、20wt%のクエン酸2水素ナトリウム水溶液とした。20wt%のクエン酸2水素ナトリウム水溶液の注入量は、4mlとした。得られた成形品の発泡倍率は、6%であり、クエン酸2水素ナトリウムの発泡核剤の作用によって、実施例1よりも微細な発泡セルとなった。
【実施例78】
【0333】
実施例78は、実施例77における20wt%のクエン酸2水素ナトリウム水溶液の代わりに、20wt%のクエン酸2水素カリウム水溶液とした。
得られた成形品の発泡倍率は、実施例77と同様の6%であり、クエン酸2水素ナトリウムと同様に微細な発泡セルを確認した。20wt%のクエン酸2水素カリウムは、20wt%のクエン酸2水素ナトリウムと同様に発泡核剤として作用することを確認した。
【実施例79】
【0334】
実施例79では、第14実施形態で示したレンズの製造方法の有効性を確認する。
金型は、金型材料として選定したPROVA400(商品名)を、ダイヤモンドカッターを用いて1,200本/mmの回折格子用の金型を製作した。この金型を用いて成形される成形品の大きさは、25mm×25mm×2mmであり、回折格子の大きさは、10mm×10mmである。
(中実成形品)
比較例としての中実成形品は、上記金型の金型キャビティにPCを射出して成形した。
(発泡成形品)
まず、上記金型内を圧力1MPaの空気で加圧(OGCP)すると共に、加熱筒中で溶融したPCに対して1.5wt%のエタノールを注入した。その後、PC中にエタノールを分散させた加熱筒中の発泡性樹脂を金型キャビティに射出し、発泡性樹脂の射出完了後に大気開放して成形品を得た。充填条件の設定値は、次の通りである。すなわち、PCの溶融樹脂温度は285℃。射出速度は射出成形機の持つ最大射出速度の50%。射出圧力は射出成形機の持つ最大射出圧力の50%。保圧は最大射出圧力の35%、5秒間。
(金型転写性の確認)
金型転写性は、それぞれの成形品に赤色レーザーポインター(波長=635nm?690nm)を当てて、回折格子の分解能を簡易的に目視にて確認した。その結果、OGCPを用いて成形した成形品は、中実成形品に比べて、金型転写性の向上が認められた。
なお、本実施例79の発泡成形品の製造方法において、エタノールをジエチルエーテルに変えた成形品も成形した。当該成形品についても、中実成形品に比べて、転写性の向上が認められた。
(その他の確認)
本実施例79の発泡成形品の製造方法において、OGCPで用いる気体を、窒素ガスのみ、炭酸ガスのみ、窒素ガスと炭酸ガスとの混合ガスとした3種類の成形品を成形した。これら3種類の成形品と中実成形品について前記した金型転写性の確認方法で比較した。その結果、全ての成形品は、中実成形品に比べて、転写性の向上が認められた。なお、OGCPで用いるガスの違いによる転写性の違いは認められなかった。
また、本実施例79の発泡成形品の製造方法において、樹脂をAS、PMMA、アペル、ゼオネックスとして得た成形品についても前記した金型転写性の確認方法で比較した。いずれの成形品においても、中実成形品に比べて、転写性の向上が認められた。
【実施例80】
【0335】
実施例1での金型の表面温度は40℃で、液状発泡剤の水が金型表面に凝縮したので、金型の表面温度を120℃に高めたところ、金型のキャビティ表面での水の凝縮はなくなった。
実施例2乃至実施例10でも金型の表面温度を80℃、120℃に高めたところ、80℃では、金型の表面での水の凝縮は多少確認されたが、エタノールの凝縮はなくなった。120℃では、エタノールも水も凝縮は確認されない。
実施例10は低沸点のジエチルエーテルなので金型の表面温度が40℃でもジエチルエーテルの金型の表面での凝縮は発生しない。このように金型のキャビティ表面での液状発泡剤の凝縮は金型温度を高めることで解決を見た。
使用する液状発泡剤の沸点以上に金型の表面温度を高めると凝縮しないことも確認した。
【0336】
上述の実施例、実施形態は説明のために例示したもので、本発明としてそれに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、および図面の記載から当事者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更、および付加が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0337】
熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の発泡成形品の製造に適用される。
【符号の説明】
【0338】
1 タンク
2 逆止弁
3 駆動装置
4 注入装置
5 注入口(弁)
6 ホッパー
7 加熱筒
8 スクリュ
9 配管
10 金型キャビティ
11 シリンジ(筒)
12 プランジャ(押子)
13 プランジャリング
14 液状発泡剤が流れる方向
15 フィルター
16 シャット・オフノズル
17 可動側の金型(可動型)
18 固定側の金型(固定型)
19 PL(パーティング、またはパーティングライン)
20 金型
21 プランジャが動作する方向
22 気化器・反応器
23 圧力調整弁(レギュレーター)
24 注入前の圧力計
25 注入時の圧力計
26 流量調整弁
27 液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも何れか一方を注入
28 液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも何れか一方の通路
29 内芯
30 外筒
31 加熱筒への固定目的のセットナット
32 耐熱のシートを入れて漏れの防止を図る。
33 機械的な攪拌
34 空気攪拌
35 空気、または窒素ガスのような不活性な気体
36 泡(バブル)
37 内芯29を固定する上の埋め込みボルト
38 内芯29を固定する下の埋め込みボルト
39 クリアランス
40 芯体
41 ボールチェック弁の受け
42 ボールチェック弁
43 ボールチェック弁のリテーナー
44 この隙間から液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つが加熱筒内に注入される
45 円柱弁の受け(外筒)
46 円柱弁
47 円柱弁(前進端)
48 円柱弁のリテーナー
49 円柱弁の止めボルト
50 液状発泡剤および発泡性ガス少なくとも一つの通路の溝
51 バネ52によって動作する円柱弁
52 円柱弁51を押し下げるバネ
53 円柱弁51を押し下げるバネを固定するロット棒(円柱弁51とつながっている)
54 円柱弁51の動きを示す
55 スライド弁
56 左右にスライドさせることで弁の開閉を行う
57 ノズル
58 スパイダー{ノズル57と射出成形機のバレルヘッド62をつなぐジョイントの役目もはたす}
59 ニードル
60 レバー(アーム)
61 レバー、ニードルの駆動装置
62 射出成形機のバレルヘッド
63 スライド式の開閉弁
64 樹脂の流路
65 ノズル57と射出成形機のバレルヘッド62をつなぐジョイント
66 スライド式開閉弁63の動き
67 66のニードル駆動用のバネを支えるロット棒(ノズル57に固定されている)
68 ニードル59駆動用のバネを支えるロット棒(ニードル59とつながっている)
69 スプールブッシユのOリング
70 固定側型板と取り付け板との間のOリング
71 PLのOリング
72 稼動側型板とエジェクターボックスとのOリング
73 エジェクターボックスと取り付け板とのOリング
74 エジェクタープレート75と稼動側の取り付け板77との間のOリング
75 エジェクタープレート
76 エジェクターロット
77 可動側の取り付け板
78 エジェクターボックス
79 エジェクターピンをOリングでシールする図(本発明では実施しない)
80 固定側型板
81 固定側の取り付け板
82 スプールブッシュ
83 エジェクターピン
84 エジェクターボックス78内への加圧ガスの出入り口(詳細は図24、図25の100)
85 金型キャビティ内への加圧ガスの出入り口(詳細は図24、図25の100)
86 金型キャビティとエジェクターボックス内への加圧ガスの注入するための電磁弁
87 金型キャビティとエジェクターボックス内(金型キャビティ内とエジェクターボックス内)の加圧ガスのブローアウト{大気放出(排気)}弁
88 加圧ガス用の圧力計
89 コンプレッサーなどを用いて圧縮した加圧ガス
90 大気放出した加圧ガス
91 10の金型キャビティ、エジェクターボックス78内への加圧ガスのつなぐ口
92 加圧ガスの流れ
93 フレキシブルなホース
94 加圧ガスの配管
95 加圧ガスの出入の回路
96 PLの加圧ガス回路
97 加圧ガスの回路(ガス溝)
98 加圧ガスベント(加圧ガスの出入り回路)
99 ガイドポスト
100 加圧ガス注入口(OGCPの装置とのつなぎこみ口)
101 スプール
102 開閉ゲート(油圧、空圧、モーターなどで駆動し、ダミー形状との通路を開閉する)
103 開閉ゲートの駆動装置
104 ゲート
105 金型キャビティ内に充填された溶融樹脂の通路(樹脂の充填後に開け、金型キャビティ内の溶融樹脂の圧力を下げ、発泡しやすくする)
106 ダミー形状
107 開閉ゲート102の動き
108 長さ25mm、巾5mm、厚さ3mmの成形品に乗せたサイドゲート(乗せゲート)
109 ランナー
110 製品=200mm×300mm×8mmの成形品
111 巾35mm、厚さ2mm、深さ6mmの邪魔板形状(断面)、凹溝
112 金型キャビティ内に溶融樹脂を充填後にロット棒113を前進させ成形品に乗せたゲート部109を成形品に押し込む
113 ロット棒
114 成形品に押し込んだゲート
115 前進したロット棒
116 C部分の詳細と自動ゲートカットの説明
117 160mm×50mmの大きさで8mm後退(ブリージング)が可能な部分
118 160mm×50mmの大きさで8mm後退(ブリージング・ツール)させた後
119 リセッション(ムービングコア、フローティングコア)
120 窒素ガスボンベ
121 窒素ガスボンベ120内の圧力計
123 開閉の手動バルブ
124 圧力調整後の窒素ガスの圧力計
126 圧縮の中間段階の圧力計
127 2段圧縮タイプのガスブースター
128 圧縮した高圧の窒素ガスのレシーバータンク
129 レシーバータンク内の圧力計
130 高圧のレギュレーター
131 ドレンのための手動バルブ
132 IGCPの圧力計=圧縮した窒素ガスの注入の圧力
133 注入用の自動バルブ
134 大気放出弁用の自動バルブ
135 IGCPの流れ方向
136 タンク内のドレンの流れ方向
137 IGCPの大気放出
138 高圧ガスの使用用途(1-金型へのガス注入(中空成形)、2-GPM、3-IGCPへ、4-加熱筒内へ注入して(MuCell等))
139 高圧ガスの使用用途138の内で、1)、2)、3)の戻りのガス
140 ガスピン(高圧ガスの出入口)(GPMの場合は、ボスを設けてその上で、ガスを噴出させることで、PLに高圧ガスPLと金型内の溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑
性樹脂に作用する)
141 ガスを外に逃がさないための高さ5mm、厚さ1.5mmのリブ
142 気化した液状発泡剤および発泡性ガスの少なくとも一つの流れ方向
143 ニードル駆動用のバネ
144 製品=200mm×300mm×18mmでリセッション後の成形品
145 ダイヤフラムポンプ
146 コンロット
147 モーター
148 押出ユニット
149 ダイ
150 コンロット146によりモーター147の回転方向を往復運動にかえるコンロットの動き
151 化学反応によって発生した発泡性ガス、または化学反応によって発生した発泡性ガスと、加熱によって気化した発泡性ガスの流れ方向
152 射出ユニット
153 洗浄液の廃棄用の自動開閉弁
154 洗浄液の配管
155 洗浄液の入口
156 洗浄液の出口
157 洗浄液の流れ方向を示した。
158 自動開閉弁
159 洗浄液を気化器・反応器22に入れるための自動開閉弁
160 上型
161 下型
162 ベント
201 成形品の製造装置
202 測定装置
203 射出装置
204 射出成形機
205 押出装置
206 押出機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化温度が加熱筒内における溶融樹脂の温度以下であり予め定められた量の液体を量り取る工程と、
前記予め定められた量の液体を前記加熱筒に注入する工程と、
前記加熱筒に注入された前記液体を前記加熱筒内で気体にする気化工程と、
前記気体を含む前記溶融樹脂を金型キャビティに射出、金型に注入、またはダイを介して押出しする工程と、
を有する成形品の製造方法において、
前記液体は、圧力が1atmで温度が20℃の時に液体である物質であることを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項2】
前記液体は、熱分解温度が前記加熱筒内における前記溶融樹脂の温度以下である物質を含み、
前記製造方法は、前記加熱筒に注入された前記物質を前記加熱筒内で熱分解して気体を発生させる工程をさらに含む請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
樹脂を加熱して溶融させる加熱筒と、
気化温度が加熱筒内における溶融樹脂の温度以下であり、予め定められた量の液体を量り取って前記加熱筒に注入する注入装置と、
前記加熱筒に注入された前記液体が前記加熱筒内で気化した気体を含む前記溶融樹脂を金型キャビティに射出する射出装置、金型に注入する注型装置、またはダイを介して押出しする押出装置と、
を有する成形品の製造装置において、
前記液体は、圧力が1atmで温度が20℃の時に液体である物質であることを特徴とする成形品の製造装置。
【請求項4】
前記液体は、熱分解温度が前記加熱筒内における前記溶融樹脂の温度以下である物質を含み、
前記射出装置、前記注型装置、または前記押出装置は、前記加熱筒に注入された前記物質を前記加熱筒内で熱分解して気体を発生させる請求項3に記載の成形品の製造装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2021-03-12 
結審通知日 2021-03-16 
審決日 2021-03-29 
出願番号 特願2015-521730(P2015-521730)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (B29C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲来▼田 優来  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 細井 龍史
大畑 通隆
登録日 2019-12-13 
登録番号 特許第6628605号(P6628605)
発明の名称 成形品の製造方法、成形品の製造装置  
代理人 横井 俊之  
代理人 横井 俊之  

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