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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60T
管理番号 1374148
審判番号 不服2020-10614  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-30 
確定日 2021-06-02 
事件の表示 特願2018-529616「金属コーティングされたブースタハウジングを有する空圧式ブレーキブースタ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月22日国際公開、WO2017/102464、平成30年12月13日国内公表、特表2018-536579、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年12月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年12月17日 (DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、令和1年6月10日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年4月27日(発送日:同年5月7日)に拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年7月30日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年4月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献1-4に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:実願昭63-101921号(実開平2-23269号)のマイクロフィルム
引用文献2:特開2009-145299号公報
引用文献3:特開2009-144101号公報
引用文献4:実願平1-147375号(実開平3-85259号)のマイクロフィルム

第3 本願発明
本願請求項1?10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明10」という。)は、令和1年11月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりである。

[本願発明1]
「鋼薄板から成る少なくとも2つのハウジングシェル(3、4)を有するブースタハウジング(2)を有している空圧式ブレーキブースタ(1)であって、ブレーキブースタ(1)周囲の大気からの封止のために、ブースタハウジング(2)に封着している柔軟な充填材(5、5‘)を少なくとも1つ有しているブレーキブースタ(1)において、少なくとも1つの充填材(5、5‘)との当接域で、ブースタハウジング(2)が、平均粗さRa>1.2という面粗度の金属コーティング15を有することを特徴とする空圧式ブレーキブースタ(1)。」

なお、本願発明2?本願発明10は、概略、それぞれ本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
(下線は当審で付した。以下同様。)

(1)「これによれば、孔の両端部位の開口端側の側面において、リヤシエルのフランジ面の外側面が係合されるため、両シエル間に相対移動が生じることがなく、ダイアフラムの外周ビード部の気密を保持できると共に、また剪断面が生じることはないため、剪断面の発生による耐蝕性の低下が招かれることはない。尚、両シエルの係合面において表面処理の剥離は生じるが、この剥離面は外部に露出することはないので、腐食の心配は少ない。」(5頁10?18行)

(2)「第1図において、負圧式倍力装置10のボデイ11は金属板製のフロントシエル12とリヤシエル13を後述する結合構造によつて一体的に結合して成つている。」(6頁2?5行)

(3)「第3a図に示すように、両シエル12,13を結合するにあたつては、リヤシエル13の環状溝部13aにダイアフラム15の外周ビード部15bを嵌装して環状溝部13aとフランジ部13bをフロントシエル12の筒状部12a内に嵌合させ、フランジ部13bを段部12dに当接させて小径筒部12aの内面と環状溝部13aの内面とフランジ部13bの内面とでダイアフラム15の外周ビード部15bを気密的に挟持させる。」(14頁6?15行)

(4)「尚、両シエル12,13の係合面(図中l_(2)の範囲)において表面処理の剥離は生じるが、この剥離面は組付後外部に露出することはないので、腐食の心配は少ないと共に、凹部12fの円周方向巾l_(1)を大きくして極力l_(2)を小さくすることにより剥離面を小さくできる。」(15頁11?16行)

したがって、上記記載事項を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「金属板製のフロントシエル12とリヤシエル13を有するボディ11を有している負圧式倍力装置10であって、負圧式倍力装置10の気密を保持するために、フロントシエル12とリヤシエル13とで外周ビード部15bが気密的に挟持されるダイヤフラム15を有している負圧式倍力装置10において、ボディ11のフロントシエル12とリヤシエル13は表面処理されている、負圧式倍力装置10」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項3】亜鉛-アルミニウム6%-マグネシウム3%のめっき層を持つ溶融めっき鋼板からなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転角検出用プレート。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項6】塗装金属板における金属板は、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛めっき金属板、溶融亜鉛-アルミニウム合金めっき鋼板、アルミニウム板、溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板、ステンレス鋼板又は冷延鋼板である請求項5記載の塗装金属板。
【請求項7】透過型液晶表示装置のバックパネル反射板として使用される請求項5又は6記載の塗装金属板。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「第1図において、タンデム型負圧ブースタBのブースタシェル1は、対向端を相互に結合する前後一対のシェル半体1a,1bと、両シェル半体1a,1b間に挟止されて両シェル半体1a,1b間の室を前部シェル室2と後部シェル室3とに仕切る隔壁板1cとから構成される。」(9頁4?9行)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「フロントシエル12とリヤシエル13」は本願発明1の「2つのハウジングシェル(3、4)」に相当し、以下同様に、
「ボディ11」は「ブースタハウジング(2)」に、
「負圧式倍力装置10」は「空圧式ブレーキブースタ(1)」に、
「負圧式倍力装置10の機密を保持する」ことは「ブレーキブースタ(1)周囲の大気からの封止」に
「フロントシエル12とリヤシエル13とで外周ビード部15bが気密的に挟持される」ことは「ブースタハウジング(2)に封着している」ことに、
「ダイヤフラム15」は「柔軟な充填材(5、5‘)」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
「少なくとも2つのハウジングシェルを有するブースタハウジングを有している空圧式ブレーキブースタであって、ブレーキブースタ周囲の大気からの封止のために、ブースタハウジングに封着している柔軟な充填材を少なくとも1つ有している空圧式ブレーキブースタ。」
の点で一致し、次の相違点1及び2で相違する。

[相違点1]
本願発明1の2つのハウジングシェル(3、4)は「鋼薄板」であるのに対し、引用発明のフロントシエル12とリヤシエル13は「金属板製」である点。

[相違点2]
本願発明1のブースタハウジング(2)は「少なくとも1つの充填材(5、5‘)との当接域で」「平均粗さRa>1.2という面粗度の金属コーティング15を有する」構成であるのに対し、引用発明のボディ11は「フロントシエル12とリヤシエル13は表面処理されている」構成である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。

引用文献2?4には、金属板の表面を、充填材との当接域で平均粗さRa>1.2という面粗度とする構成も、金属コーティングを有するブースタハウジングの構成も、記載ないし示唆されていない。
また、ブースタハウジングに金属コーティングを施すことが周知技術であったことを示す証拠もないことから、引用発明の「表面処理」として金属コーティングを選択することが、当業者であっても容易であったとは認められない。
そうすると、引用発明に引用文献2?4に記載された技術的事項及び周知技術を組み合わせても、上記相違点2に係る本願発明1の構成に至らない。

そして、本願発明1は、上記相違点2に係る構成により「充填材5‘のハウジングシェル3との当接域においては、金属コーティング15の比較的高い粗面性が、より堅固な接合のために利用される」(段落【0016】)から「取付け作業が軽減され、且つ確実なもの」となり(段落【0017】)「ハウジングシェル3及び4は、比較的広い公差範囲内で、簡素な道具及び工程によって、比較的安価に製造されることが可能となる」(段落【0018】)という効果を奏するから、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、当業者が適宜選択する事項であるとは認められない。

したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

2 本願発明2?10について
本願発明2?10は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、本願発明1と同様の理由で、当業者であっても引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-05-14 
出願番号 特願2018-529616(P2018-529616)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60T)
最終処分 成立  
前審関与審査官 竹村 秀康  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 内田 博之
杉山 健一
発明の名称 金属コーティングされたブースタハウジングを有する空圧式ブレーキブースタ  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 鈴木 友子  
代理人 石田 大成  
代理人 中村 真介  
代理人 江崎 光史  

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