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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1374159 |
審判番号 | 不服2020-5441 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-04-22 |
確定日 | 2021-05-10 |
事件の表示 | 特願2017-533581「標的生検の針軌道予測」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日国際公開、WO2016/103094、平成30年 1月18日国内公表、特表2018-500997〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願(以下「本願」と記す。)は、2015年(平成27年)12月10日(パリ条約による優先権主張 2014年12月24日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和元年8月26日付けで拒絶理由が通知され、同年11月26日付けで意見書が提出され、同年12月18日付けで拒絶査定されたところ、令和2年4月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後当審にて同年8月12日付けで拒絶理由が通知され、同年11月13日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和元年12月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 請求項 1-2,5-15 引用文献等 1-3 請求項 3-4 引用文献等 1-4 <引用文献等一覧> 1.特表2014-516738号公報 2.特表2000-500031号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2000-185041号公報(周知技術を示す文献) 4.特表2007-536063号公報(周知技術を示す文献) 第3 当審拒絶理由の概要 令和2年8月12日付けで当審より通知された拒絶理由の概要は以下のとおりである。 理由1.本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 理由2.本件出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 1.理由1について (1)本件出願(以下「本願」という。)の請求項1に係る発明(以下「本願補正前発明1」という。同様に請求項2ないし15に係る発明はそれぞれ「本願補正前発明2」ないし「本願補正前発明15」という。)における「前記標的生検針に対して既知の配置の少なくとも2つの超音波受信器であって、各超音波受信器は、前記標的生検針が前記解剖学的領域内に挿入されると、前記超音波平面を検知するように動作可能である、少なくとも2つの超音波受信器」という発明特定事項(以下「本願発明特定事項1」という。)を備えた発明であるが、前記本願発明特定事項1において、「超音波受信器」が「超音波平面を検知するように動作可能である」という事項が不明である。一般に超音波受信器は、超音波を受信するものであり、受信器位置に超音波が来たこと及びその超音波の周波数を測定できるものであるが、その超音波受信器が「超音波平面を検知するように動作可能である」ということが、具体的にどのような構成を指すものなのかが不明である。 以上のことから、本願補正前発明1は明確でない。また本願補正前発明1を引用する本願補正前発明2ないし12も同様の理由で明確でない。 (2)さらに、本願補正前発明13は、「前記標的生検針が前記解剖学的領域内に挿入されると前記超音波平面の検知を表すデータを検知することに応答して、前記超音波平面に対する各超音波受信器の位置を追跡するために、前記少なくとも2つの超音波受信器と通信するように動作可能な受信器追跡モジュール」を備える「音波誘導コントローラ」の発明であり、「超音波平面の検知を表すデータを検知する」という前記(1)で検討した事項と同様の事項を含む発明であるから、同様の理由で不明である。 以上のことから、本願補正前発明13は明確でない。また本願補正前発明13を引用する本願発明14ないし15も同様の理由で明確でない。 2.理由2について (1)前記「1.理由1について」で検討したとおり、本願の発明の詳細な説明には、「2つの超音波受信器31」で「超音波平面の検知を表すデータを検知する」具体的手法やそのデータ構造について明記が無く、本願の発明の詳細な説明の開示内容だけでは当業者がその実施をするために2つの超音波受信器でどのように測定を行いどのようなデータを得ればいいかは、不明といわざるを得ず、当業者に過度の試行錯誤を強いることとなる。 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願補正前発明1ないし15を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 3.本願補正前発明1ないし15の進歩性について 前記「1.理由1について」で述べたとおり、本願補正前発明1ないし15については、発明特定事項に不明な点があり、先行技術文献との差異が正しく判断できないので、拒絶査定の理由である進歩性の有無については、判断を行うことを留保する。 なお、拒絶査定で引用された引用文献1(特表2014-516738号公報)には、医療装置102(針等)に設けられた複数の被追跡素子106(超音波センサ106)の撮像面に対する3D位置をプローブ220内のトランスデューサ222の1Dアレイを使用して評価し、針を目標領域を表示しながら三次元において位置特定及び画像化することは開示されており(段落[0015]、[0016]、[0023]、[0026]、[0036]参照。)、引用文献2(特表2000-500031号公報)及び引用文献3(特開2000-185041号公報)には、超音波断層像において、断層面に対する針の位置(面内、面外の位置関係を含む)及び針の予測軌道を表示する技術が開示されている、と当審にて確認している。 第4 本願発明 本願の請求項1ないし15に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明15」という。)は、令和2年11月13日提出の手続補正書により手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりである。(下線は請求人が補正箇所として引いたものである。) 「【請求項1】 解剖学的領域と交差する超音波平面を投射するように動作可能な超音波プローブと、 標的生検針と、 前記標的生検針に対して既知の配置の少なくとも2つの超音波受信器であって、各超音波受信器は、前記標的生検針が前記解剖学的領域内に挿入されると、超音波を受信するように動作可能である、少なくとも2つの超音波受信器と、 前記少なくとも2つの超音波受信器により受信した前記超音波に基づくデータから、各超音波受信器の3次元位置を求めて前記標的生検針の位置を特定することに応答して、前記超音波平面に対する前記解剖学的領域内の前記標的生検針の生検軌道を予測するために、前記超音波プローブ及び前記少なくとも2つの超音波受信器と通信するように動作可能な超音波誘導コントローラと を含む、標的生検システム。」 本願発明1は、前記「第3」で指摘した本願補正前発明1の「超音波平面を検知するように」を「超音波を受信するように」と変更し、「前記少なくとも2つの超音波受信器による前記超音波平面の検知に応答して」を「前記少なくとも2つの超音波受信器により受信した前記超音波に基づくデータから、各超音波受信器の3次元位置を求めて前記標的生検針の位置を特定することに応答して」と変更するものであり、「超音波平面」を「検知する」という不明瞭な記載を修正したものである。 当該修正により、本願発明1は明確となり、前記「第3」の当審拒絶理由は解消された。 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の優先日前である2014年(平成26年)7月17日に頒布された刊行物である特表2014-516738号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同じ。) (1)「【0001】 本開示は、医療装置及び処置に関し、より具体的には、一又は二次元撮像プローブを使用する三次元における医療装置位置特定に対するシステム及び方法に関する。」 (2)「【0004】 本原理によると、画像化システム及び方法は、追跡素子を取り付けられた医療装置を含む。トランスデューサのアレイは、前記追跡素子と前記トランスデューサのアレイとの間の対象においてエネルギを交換するために互いから離間されたトランスデューサを持つ。三辺測量モジュールは、前記追跡素子と前記トランスデューサのアレイとの間で感知された信号を解釈し、追跡素子の位置が少なくとも二次元において決定されるように前記アレイ内の前記トランスデューサと関連付けられた信号の飛行時間を計算し、視覚画像内の前記医療装置の位置を位置特定するように構成される。」 (3)「【0008】 本原理によると、目標面、(例えば、前記目標面の目標生体構造に対する)医療装置の相対的位置及び軌道は、処置中に面外針画像を失うことに関連付けられた問題を避けるために同時に撮像される必要がある。一次元(1D)超音波プローブは、幅広い範囲の臨床的介入において生体構造に対する針の二次元(2D)視覚化に対して使用される。しかしながら、前記針又はツールの位置は、撮像面の外側に位置する場合に、評価されることができない。本システム及び方法は、目標生体構造画像を失うことなしに面外の針を追跡及び視覚化するために提供される。一実施例において、これは、(2D撮像に対する)単純な一次元(1D)プローブを使用して、又は3D撮像に対する二次元(2D)プローブを使用して達成される。1Dアレイを使用して前記撮像面に対する針の3D位置を評価する方法も、提供される。 【0009】 超音波素子(パッシブ又はアクティブ)は、被追跡ツール内に、例えば、前記ツールの先端に埋め込まれる。前記被追跡素子と前記撮像プローブの複数の素子との間の超音波信号飛行時間は、前記被追跡素子の位置を与えるように三次元(3D)三角測量又は三辺測量ルーチンにおいて使用される。結果として、超音波ガイド針介入は、高価な追加機器(例えば、マトリクスアレイ)の必要性なしに、大幅に容易化される。」 (4)「【0014】 ここで同様な数字が同じ又は同様の要素を表す図面、最初に図1を参照すると、医療処置を実行するシステム100が、事例的に表現されている。システム100は、ワークステーション又はコンソール112を含むことができ、ここから、処置が、監督及び管理される。処置は、生検、アブレーション、薬物の注射等を含むが、これらに限定されない如何なる処置をも含むことができる。ワークステーション112は、好ましくは、1つ又は複数のプロセッサ114並びにプログラム及びアプリケーションを記憶するメモリ116を含む。システム10 0の機能及びコンポーネントが、1つ又は複数のワークステーション又はシステムに一体化されることができると理解されるべきである。 【0015】 メモリ116は、医療装置102からの電磁、光及び/又は音響フィードバック信号を解釈するように構成された装置感知モジュール115を記憶することができる。感知モジュール115は、医療画像において医療装置102を表現する又は位置を提供するのに前記信号フィードバック(及び他のフィードバック)を使用するように構成される。医療装置102は、例えば、針、カテーテル、ガイドワイヤ、内視鏡、プローブ、ロボット、電極、フィルタ装置、バルーン装置又は他の医療コンポーネント等を含むことができる。ワークステーション112は、撮像システム110を使用して対象の内部画像を見るディスプレイ118を含むことができる。撮像システム110は、超音波、蛍光透視、光音響等のような撮像モダリティを含むことができる。撮像システム110は、例えば、磁気共鳴撮像(MRI)システム、蛍光透視システム、コンピュータ断層撮影(CT)システム、超音波システム又は他のシステムを含むこともできる。ディスプレイ118は、ユーザがワークステーション及びそのコンポーネント及び機能とインタラクトすることを可能にすることもできる。これは、キーボード、マウス、ジョイスティック又はワークステーション112に対するユーザインタラクションを可能にする他の周辺機器又は制御部を含むことができるインタフェース120により更に容易化される。」 (5)「【0017】 この具体例は、(装置102上の)被追跡素子106が受信器であり、追跡素子又は(撮像アレイ109の)トランスデューサ107が送信器であることに関連して記載され、反対の構成も提供されることができると理解されるべきである。例えば、同じ飛行時間が、送信器として(装置102上の)被追跡素子106を使用することにより測定されることができ、(アレイ109の)追跡素子/トランスデューサは、受信器として動作することができる。」 (6)「【0021】 一実施例において、撮像システム110は、超音波システムを含み、放射は、実際は音響的である。この場合、センサ106は、超音波プローブ111上のアレイ109内に配置された超音波トランスデューサ107により生成された音響信号を検出する超音波センサを含む。このようにして、解剖学的画像及び装置画像の両方が、同時に表示されることができる。」 (7)「【0023】 1つの特に有用な実施例において、1つ又は複数の超音波センサ106が、被追跡ツール又は装置102に取り付けられる。ツール102は、装置102の位置を追跡するセンサを使用して追跡される。1D撮像アレイ109は、センサ106によってツール102を撮像するように設けられる。アレイ109は、1D次元アレイ109を形成するトランスデューサ(受信器又は送信器)のラインを含むことができる。前記一次元アレイは、トランスデューサ107の直線配置(ライン)を含むことができるか、又は湾曲経路(アーク)に配置されたトランスデューサ107を含むことができる。」 (8)「【0026】 図2A及び2Bを参照すると、図は、(送信又は受信に対する)複数の超音波(US)トランスデューサ又は素子222を持つ湾曲アレイ(2Dプローブ又は1Dアレイ)超音波プローブ220の近傍に表現された先端において要素208(例えば、送信又は受信に対する超音波素子)を持つ被追跡ツール206(例えば、針)を示す。本原理によると、撮像面に対するツール206の3D位置は、プローブ220内のトランスデューサ222の1Dアレイを使用して評価される。超音波素子208(パッシブ又はアクティブ)は、被追跡ツール206内に、例えば、先端に埋め込まれる。被追跡素子208と撮像プローブ220の複数のトランスデューサ222との間の超音波信号飛行時間は、被追跡素子208の位置を与えるように3D三角測量又は三辺測量ルーチン(図1の104)において使用される。複数の素子208がツール206において使用されることができると理解されるべきである。各センサの位置は、処置中に位置を記述するために本原理を使用して追跡されることができる。」 (9)「【0036】 従来のシステムにおいて、一次元(1D)超音波(US)プローブが、針又は他のツールの2D視覚化に対して使用される場合、前記ツールの位置は、前記ツールがUS撮像面239の外側に位置する場合に撮像に対して評価されることができない。二次元(2D)超音波プローブ(1D湾曲アレイ)は、幅広い範囲の臨床的介入において患者の生体構造に対する針の2D視覚化に対して使用されることができる。従来のシステムにおいて、臨床医は、前記針を視覚化するために前記針を完全に前記面内に向けるのに大量の時間をかける。斜め/直交注入から、前記針は、視覚するのが非常に難しい。しかしながら、本原理によると、前記針又はツールは、目標領域を表示しながら三次元において位置特定及び画像化されることができる。このようにして、前記針は、見つけるのが容易であり、その位置は、超音波ガイド針介入、例えば、神経ブロック、生検、血管アクセス、膿瘍ドレナージ、アブレーション等のような如何なるタイプの処置に対しても正確に追跡される。USガイド針介入は、高価な追加の機器(マトリクスアレイ)の必要性なしに、大幅に容易化される。USガイド介入は、(i)より正確に、(ii)より速く、(iii)(2Dプローブを使用することにより)安価になる。 【0037】 図4を参照すると、一実施例による針246の三次元レンダリングを示す具体的な二次元超音波画像242が表現されている。針246は、画像境界244とともに示されるが、これらの境界244の外側で追跡されることができる。針246のレンダリングは、上記のように三辺測量を使用して生成される。針移動は、リアルタイムで追跡され、周囲の組織に沿って表示される。本原理は、比較的安価なセットアップで速く、正確な画像化を可能にする。」 (10)「【図1】 ![]() 」 (11)「【図2A】 ![]() 」 (12)「【図2B】 ![]() 」 (13)「【図4】 ![]() 」 上記引用文献1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「一又は二次元撮像プローブを使用する三次元における医療装置位置特定に対するシステムにおいて、 医療処置を実行するシステム100は、針である医療装置102と、超音波プローブ111と、超音波システムを含む撮像システム110と、撮像システム110を使用して対象の内部画像を見るディスプレイ118を含むワークステーション112と、備え、 複数の超音波センサ106が、針である医療装置102に取り付けられ、 超音波センサ106は、超音波プローブ111上のアレイ109内に配置された超音波トランスデューサ107により生成された音響信号を検出する超音波センサであり、 前記針は、目標領域を表示しながら三次元において位置特定及び画像化されることができ、 超音波センサと超音波プローブの複数のトランスデューサとの間の超音波信号飛行時間は、超音波センサの位置を与えるように三辺測量ルーチンにおいて使用され、 針の三次元レンダリングを示す具体的な二次元超音波画像において、針は、画像境界とともに示されるが、これらの画像境界の外側で追跡されることができ、針のレンダリングは、三辺測量を使用して生成され、針移動は、リアルタイムで追跡され、周囲の組織に沿って表示される、 システム。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用文献2として引用された、本願の優先日前である2000年(平成12年)1月11日に頒布された刊行物である特表2000-500031号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。 (1)「図9に見られるように、もし軌道112及び針92の双方が完全に超音波平面内にあるならば、軌道112は白色ドット線のように示される。図10に見られるように、もし軌道が112が超音波平面と交差するならば、超音波平面の前にある軌道112の部分160が赤色ドット線として表示され、平面の背後の部分162が緑色ドット線として表示され、且つ交差点164は白色で空のサークルとして表示される。これらのカラーが単に例であり、且つ他のカラーパターンが採用されてもよいことが理解される。 もし軌道112が完全に超音波平面の前にあり、すなわち、平面に平行であるか又は交差点が見えないところにあるならば、全軌道112は赤色(又は緑色、もし平面の背後ならば)ドット線として表示される。 ドット線のドット間の距離は超音波平面と針92の接近開始角度を医師に視覚的に示す。ドットが接近すると、針92が超音波平面にますます垂直になる。ドットが遠のくと、針92が超音波平面に対してますます平行になる。 なお、ディスプレースクリーン106は選択的に位置及び方向決めプローブ98(図9及び10に示されない)において医師を支援することを目的とするウインドウ114を表示する。ウインドウ114は好ましくはプローブ98の平面図を表示する固定長方形116と、上記から見られるような針92の投影を示す移動可能線118とを含む。超音波プローブ98の回転中又はアライメント中に、医師はプローブ98及び針92が上記から見られるように相互に互いにどのような関係あるかをウインドウ114で観察できる。逆に、針92のイメージは固定され且つ長方形116は超音波プローブ98の移動を示す。 図9において、針92が超音波平面内にあるので、線118は長方形116を介して水平に交差する。図10において、針92が超音波平面と交差するので、線118は長方形116に対するある角度で長方形116を貫通する。」【明細書第16頁第14行-第17頁第9行) (2)「【図9】 ![]() 」 (3)「【図10】 ![]() 」 上記引用文献2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献2には、次の技術(以下「引用文献2開示技術」という。)が記載されていると認められる。 「超音波平面に針92の軌道112を、軌道が112が超音波平面と交差するならば、超音波平面の前にある軌道112の部分160は赤色ドット線として表示し、平面の背後の部分162は緑色ドット線として表示し、、且つ交差点164は白色で空のサークルとして表示する技術。」 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用文献3として引用された、本願の優先日前である2000年(平成12年)7月4日に頒布された刊行物である特開2000-185041号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。 (1)「【0059】図23は、図22に示す両画像IM1、IM2の表示例において、互いの切断面の位置関係等が画像上で認識可能なマーカ表示の例を説明するものである。例えば、二次元断層像IM1中には、針の進行を示すマーカAのほか、3D像IM2中に組み込まれる断層像IM1の切断面に対応する位置を示すマーカBが、また3D像IM2中には二次元断層像IM1の切断面に対応する位置を示すマーカCが表示可能となっている。」 (2)「【図23】 ![]() 」 上記引用文献3の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献3には、次の技術(以下「引用文献3開示技術」という。)が記載されていると認められる。 「二次元断層画像IM1中に針の進行方向を示すマーカAを表示する技術。」 第6 対比・判断 1.対比 本願発明1を、引用発明1と比較する。 (1)引用発明1の「超音波プローブ111」は、「対象の内部画像」である「二次元超音波画像」を測定するために用いられるものであるから、本願発明1における「解剖学的領域と交差する超音波平面を投射するように動作可能な超音波プローブ」に相当する。 (2)引用発明1の「針である医療装置102」は、本願発明1における「標的生検針」に相当する。 (3)引用発明1の「針である医療装置102に取り付けられ」た「複数の超音波センサ106」は、本願発明1における「前記標的生検針に対して既知の配置の少なくとも2つの超音波受信器」に相当する。 (4)引用発明1では、超音波プローブ111が対象の内部画像を測定するために超音波を対象内部に送信してその反射波を測定し、針である医療装置102に取り付けられた超音波センサ106は超音波プローブ111から対象内部に送信された超音波を受信することから、引用発明1の「超音波プローブ111上のアレイ109内に配置された超音波トランスデューサ107により生成された音響信号を検出する」「超音波センサ106」は、本願発明1の「超音波受信器」と「前記標的生検針が前記解剖学的領域内に挿入されると、超音波を受信するように動作可能である」点で共通する。 (5)引用発明1の「撮像システム110を使用して対象の内部画像を見るディスプレイ118を含むワークステーション112」は、「超音波プローブ111」で測定された「二次元超音波画像」に「針」を表示し、「針は、目標領域を表示しながら三次元において位置特定及び画像化されることができ」、「針の三次元レンダリングを示す具体的な二次元超音波画像において、針は、画像境界とともに示されるが、これらの画像境界の外側で追跡されることができ、針のレンダリングは、」「超音波センサと超音波プローブの複数のトランスデューサとの間の超音波信号飛行時間は、超音波センサの位置を与えるように三辺測量ルーチンにおいて使用」「して生成され、針移動は、リアルタイムで追跡され、周囲の組織に沿って表示され」るように「ディスプレイ118」に表示するものであることから、本願発明1における「前記少なくとも2つの超音波受信器により受信した前記超音波に基づくデータから、各超音波受信器の3次元位置を求めて前記標的生検針の位置を特定する」「ために、前記超音波プローブ及び前記少なくとも2つの超音波受信器と通信するように動作可能な超音波誘導コントローラ」に相当する。 (6)引用発明1の「針である医療装置102と、超音波プローブ111と、超音波システムを含む撮像システム110と、撮像システム110を使用して対象の内部画像を見るディスプレイ118を含むワークステーション112と、備え」た「一又は二次元撮像プローブを使用する三次元における医療装置位置特定に対するシステム」である「医療処置を実行するシステム100」は、本願発明1における「標的生検システム」に相当する。 すると、本願発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。 <一致点> 「解剖学的領域と交差する超音波平面を投射するように動作可能な超音波プローブと、 標的生検針と、 前記標的生検針に対して既知の配置の少なくとも2つの超音波受信器であって、各超音波受信器は、前記標的生検針が前記解剖学的領域内に挿入されると、超音波を受信するように動作可能である、少なくとも2つの超音波受信器と、 前記少なくとも2つの超音波受信器により受信した前記超音波に基づくデータから、各超音波受信器の3次元位置を求めて前記標的生検針の位置を特定するために、前記超音波プローブ及び前記少なくとも2つの超音波受信器と通信するように動作可能な超音波誘導コントローラと を含む、標的生検システム。」 一方で、両者は、次の点で相違する。 <相違点> 超音波誘導コントローラにおいて、本願発明1は「前記少なくとも2つの超音波受信器により受信した前記超音波に基づくデータから、各超音波受信器の3次元位置を求めて前記標的生検針の位置を特定することに応答して、前記超音波平面に対する前記解剖学的領域内の前記標的生検針の生検軌道を予測するために、前記超音波プローブ及び前記少なくとも2つの超音波受信器と通信するように動作可能」であるのに対し、引用発明1では、複数の超音波センサ106で測定された超音波データから得られる超音波センサと超音波プローブの複数のトランスデューサとの間の超音波信号飛行時間を超音波センサの位置を与えるように三辺測量ルーチンにおいて使用して、針の三次元レンダリングを示す具体的な二次元超音波画像において、針は、画像境界とともに示されるが、これらの画像境界の外側で追跡されることができるが、針の軌道を予測するかどうか不明な点。 2.判断 前記「1.」で記載した相違点について判断する。 (1)超音波プローブを用いて測定した超音波断層像内に、生体内に挿入した針の位置及びその予測軌道を表示する技術は、上記「第5 2.」の引用文献2開示技術や上記「第5 3.」の引用文献3開示技術として示されているように、本願の優先日前において周知の技術である。 (2)ここで、引用発明1では、針の位置を特定して二次元超音波画像において針を画像内に表示することができるものである。また、針には複数の超音波センサが取り付けられていることから、複数の超音波センサの位置が分かることにより、針の進行方向も分かるものである。 (3)よって、引用発明1に前記(1)で示した周知の技術を採用して、二次元超音波画像に針の位置のみならず、針の予測軌道を表示するようにして、前記相違点に係る構成とすることは、当業者ならば容易になしえたことである。 (4)そして、本願発明1の効果は、引用発明1及び上記周知技術から、当業者が予測しうる程度のものである。 3.小括 したがって、本願発明1は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明に対する拒絶の理由について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-12-07 |
結審通知日 | 2020-12-08 |
審決日 | 2020-12-21 |
出願番号 | 特願2017-533581(P2017-533581) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 永田 浩司 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
伊藤 幸仙 磯野 光司 |
発明の名称 | 標的生検の針軌道予測 |
代理人 | 特許業務法人M&Sパートナーズ |