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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05B
管理番号 1374161
審判番号 不服2020-9387  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-03 
確定日 2021-06-01 
事件の表示 特願2016-555276「隔壁の製造方法および隔壁の修復方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日国際公開、WO2016/063943、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2016-555276号(以下「本件出願」という。)は、平成27年10月22日(先の出願に基づく優先権主張 平成26年10月24日、同年月日)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和元年 8月 1日付け:拒絶理由通知書
令和元年10月 4日提出:意見書
令和元年10月 4日提出:手続補正書
令和2年 3月30日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年 7月 3日提出:審判請求書
令和2年 7月 3日提出:手続補正書
令和2年12月25日付け:拒絶理由通知書
令和3年 3月 5日提出:意見書
令和3年 3月 5日提出:手続補正書


第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1?14に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び周知技術に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献A:国際公開第2008/149776号
引用文献B:国際公開第2013/115195号
引用文献C:特開2010-267576号公報
(当合議体注:引用文献Aは主引例であり、引用文献B及び引用文献Cは周知技術を示す文献である。)


第3 当合議体の拒絶理由通知の概要
当合議体の拒絶理由通知は、概略、本件出願の請求項1?6に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び周知技術に基づいて、先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:国際公開第2008/149776号
引用文献2:国際公開第2013/089204号
引用文献3:特開2010-267576号公報
(当合議体注:引用文献1及び引用文献2は主引例であり、引用文献3は周知技術を示す文献である。また、引用文献1及び引用文献3は、それぞれ、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献A及び引用文献Cであり、引用文献2は、当合議体において新たに引用した文献である。)


第4 本件発明
本件出願の請求項1及び請求項2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、令和3年3月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
基板表面をドット形成用の複数の区画に仕切る形に形成された上面とそれに続く側面を有する隔壁の製造方法であって、
前記基板表面の所定の位置に隔壁用硬化性組成物をインクジェット法により塗布し硬化させて、前記隔壁に対応する形状の、上面とそれに続く側面を有する硬化膜を形成する工程と、
前記基板の裏面から光を照射し、前記硬化膜の側面に親液性領域を形成する工程と
を有し、
前記隔壁用硬化性組成物は、撥液性化合物(A)と、架橋剤(B)と、重合開始剤(C)として光重合開始剤とを含有し、前記撥液性化合物(A)が波長300nm未満の紫外線の照射によって親液化するものであり、
前記撥液性化合物(A)が、波長300nm未満の紫外線の照射によって撥液性部位が分解する構造を有し、
前記撥液性化合物(A)が、架橋性官能基を有し、
前記撥液性化合物(A)が、下式(m1)で表される化合物に基づく単位(u1-1)
を有し、
前記隔壁用硬化性組成物の粘度が、0.5?20mPa・Sである
隔壁の製造方法。
【化1】

ただし、Cfは、炭素数1?20のフルオロアルキル基、または炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数2?20のフルオロアルキル基であり、
R^(1)およびR^(2)は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1?6のアルキル基、またはフェニル基であり、
R^(3)は、単結合、またはフッ素原子を有さない2価の有機基であり、
R^(4)?R^(8)の少なくとも1つは下式(1)で表される基であり、その他はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、それぞれ置換されていてもよい炭素数1?12のアルキル基、炭素数2?12のアルケノイル基、炭素数1?12のアルコキシ基、炭素数5?8のシクロアルキル基、炭素数6?20のアリール基、炭素数7?20のベンゾイル基、炭素数2?12のアルカノイル基、炭素数2?12のアルコキシカルボニル基もしくは炭素数7?20のフェノキシカルボニル基、またはニトロ基である。
【化2】


ただし、Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはNHであり、
nは、0?4の整数であり、
mは、Xが単結合、酸素原子、硫黄原子またはNHである場合には1であり、Xが窒素原子である場合には2であり、
Zは、架橋性官能基を有する基である。
【請求項2】
基板表面をドット形成用の複数の区画に仕切る形に形成された隔壁に発生した欠陥を修復する方法であって、
前記欠陥に隔壁用硬化性組成物をインクジェット法により塗布し硬化させて、前記隔壁に対応する形状の、上面とそれに続く側面を有する硬化膜を形成する工程と、
前記硬化膜の側面に光を照射して、前記側面に親液性領域を形成する工程と
を有し、
前記隔壁用硬化性組成物は、撥液性化合物(A)と、架橋剤(B)と、重合開始剤(C)として光重合開始剤とを含有し、
前記撥液性化合物(A)が波長300nm未満の紫外線の照射によって親液化するものであり、
前記撥液性化合物(A)が、波長300nm未満の紫外線の照射によって撥液性部位が分解する構造を有し、
前記撥液性化合物(A)が、架橋性官能基を有し、
前記撥液性化合物(A)が、下式(m1)で表される化合物に基づく単位(u1-1)
を有し、
前記隔壁用硬化性組成物の粘度が、0.5?20mPa・Sである
ことを特徴とする隔壁の修復方法。
【化3】

ただし、Cfは、炭素数1?20のフルオロアルキル基、または炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数2?20のフルオロアルキル基であり、
R^(1)およびR^(2)は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1?6のアルキル基、またはフェニル基であり、
R^(3)は、単結合、またはフッ素原子を有さない2価の有機基であり、
R^(4)?R^(8)の少なくとも1つは下式(1)で表される基であり、その他はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、それぞれ置換されていてもよい炭素数1?12のアルキル基、炭素数2?12のアルケノイル基、炭素数1?12のアルコキシ基、炭素数5?8のシクロアルキル基、炭素数6?20のアリール基、炭素数7?20のベンゾイル基、炭素数2?12のアルカノイル基、炭素数2?12のアルコキシカルボニル基もしくは炭素数7?20のフェノキシカルボニル基、またはニトロ基である。
【化4】

ただし、Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはNHであり、
nは、0?4の整数であり、
mは、Xが単結合、酸素原子、硫黄原子またはNHである場合には1であり、Xが窒素原子である場合には2であり、
Zは、架橋性官能基を有する基である。」


第5 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
1 引用文献1の記載事項
当合議体の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の記載事項がある。なお、当合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。

(1)「技術分野
[0001] 本発明は、例えばインクジェット記録技術法により作製される、隔壁と画素が形成された基板を製造する方法に関する。
背景技術
[0002] 近年、カラーフィルタや有機EL等の光学素子の製造方法としてインクジェット記録技術法を利用した低コスト化プロセスが提案されている。
例えば、カラーフィルタの製造においては、隔壁をフォトリソグラフィにより形成した後に、隔壁で区分された領域であるドット内にR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)のインクをインクジェット法により噴射・塗布し、着色層を有する画素が形成される。
有機EL表示素子の製造においては、隔壁をフォトリソグラフィにより形成した後に、隔壁で区分された領域であるドット内に正孔輸送材料、発光材料の溶液インクをインクジェット法により噴射・塗布し、正孔輸送層、発光層等を有する画素が形成される。
[0003] インクジェット法においては、隣り合う画素間におけるインクの混色の発生を防ぐ必要がある。そのため、隔壁は、インクジェットの塗出液である水や有機溶剤等をはじく性質、いわゆる撥液性を有することが要求されている。
一方、インクジェット法においては、インク層の膜厚均一性に優れた画素を形成する必要がある。そのため、隔壁で区分された領域であるドットはインクに対して濡れる性質、いわゆる親液性を有することが要求されている。
・・・省略・・・
[0006] しかし、上記従来の方法で形成された隔壁で区分された領域であるドット内に、インクジェット法によりインクを注入しインク層を形成すると、インク層の膜厚が不均一になることがあった。このようなものでカラーフィルタや有機EL表示素子を作製すると、隔壁近傍のインク層の膜厚が薄くなり、隔壁周辺が白く見えるいわゆる白抜け現象が起こる場合があった。特に、隔壁の解像度を上げるためには露光工程の露光量を低くすることが望ましいところ、低露光量で形成された隔壁を形成したときに、画素のインク層の膜厚不均一性が顕著であった。
[0007] そこで本発明は、露光工程の露光量が低くとも、撥液性に優れた隔壁と、膜厚均一性に優れたインク層を有する画素とを得ることが可能な、隔壁と画素が形成された基板の製造方法を提供することを課題とする。
課題を解決する手段
[0008] 本発明は、隔壁と画素が形成された基板を製造する方法であって、基板に下記感光性組成物を塗布する工程[11]、感光性組成物の塗膜を乾燥する工程[12]、露光工程[13]、現像工程[14]、ポスト露光工程[15]を経て、基板上に隔壁を形成し、前記隔壁で区分された領域であるドット内にインクを注入する工程[21]、インクの塗膜を乾燥する工程[22]を経て、ひとつのドット内のインク層の膜厚の最大値をh1、最小値をh2とするとき(h1-h2)/h1<0.3である膜を形成して画素を得ることを特徴とする隔壁と画素が形成された基板の製造方法を提供する。
[0009] 感光性組成物:1分子内に下記式1で表される基または下記式2で表される基を有する側鎖と、エチレン性二重結合を有する側鎖と、を有する重合体(A)を含む感光性組成物。
-CFXR^(f) (1)
式1中、Xは水素原子、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を示し、R^(f)はエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数20以下の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されたアルキル基、またはフッ素原子を示す。
-(SiR^(1)R^(2)O)_(n)-SiR^(1)R^(2)R^(3) (2)
式2中、R^(1)、R^(2)は独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を示し、R^(3)は水素原子または炭素数1?10の有機基を示し、nは1?200の整数を示す。
[0010] 本発明における感光性組成物に含まれる重合体(A)は、式1で表される基または式2で表される基を有する側鎖を有するため、表面移行性を示し、乾燥工程[12]において塗膜表面近傍に移行する。よって、感光性組成物を硬化して得られる隔壁の上部表面はインクに対する撥液性を発現する。
[0011] また、重合体(A)はエチレン性二重結合を有する側鎖を有しているため露光工程[13]において硬化反応させ塗膜表面に固定することが可能である。しかし露光工程[13]の露光量が低い場合には重合体(A)の一部の分子が硬化反応せず、かつ現像工程で系内から除去されずに隔壁内に残存することがある。従来の方法では、上記未反応の残存分子は、現像工程[14]の後に行われるポストベーク工程[16]において、隔壁上部表面から隔壁の側面またはドットにマイグレートしてドットを汚染していたと考えられる。
[0012] 本発明においては現像工程[14]の後に、ポスト露光工程[15]を有するため、重合体(A)の硬化反応が充分に行われ、未反応の残存分子がドットにマイグレートすることが起こりにくい。すなわち、隔壁上部表面はインクに対する撥液性に優れ、隔壁の側面またはドットはインクに対する親液性に優れる。よって、隔壁の側面またはドットはインクの濡れ性が高いので、インクはドット内に均一に濡れ拡がりやすく、隔壁の側面でインクをはじくこともないため、形成されるインク層の膜厚の最大値をh1、最小値をh2とした場合に、(h1-h2)/h1<0.3となるような膜厚均一性の高いインク層を得ることが可能となる。
[0013] 本発明において、ポスト露光工程[15]によって隔壁は充分硬化し、インク中の溶媒に対する耐性を備えるため、ポストベーク工程[16]による硬化は必ずしも必要としない。一方、隔壁の耐熱性を高めるため、あるいは、隔壁から揮発成分を除去する目的で、ポスト露光工程の後にポストベーク工程[16]を採用することが好ましい。
[0014] また本発明は、上記の製造方法によって基板上に隔壁と画素を形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
また本発明は、上記の製造方法によって基板上に隔壁と画素を形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法を提供する。
[0015] 本発明の製造方法によれば、露光工程の露光量が低くとも、撥液性に優れた隔壁とインク層の膜厚均一性に優れた画素を形成することができる。よって本発明の製造法によって形成された隔壁と画素を有するカラーフィルタや有機EL素子は、インクの混色が抑えられ、またインク層の膜厚均一性に優れる。
隔壁内には未反応の残存分子が残りにくいので、デバイス形成後の長期間にわたってマイグレートすることなく、デバイスの信頼性を低下させることがない。」

(2)「発明を実施するための最良の形態
[0018] 以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書において特に説明のない場合、%は質量%を表す。
[0019] まず、本発明の製造法においては、下記工程[11]?工程[15]を経て隔壁を形成し(任意に工程[16]を採用してもよい。)、下記工程[21]、工程[22]を経て画素を形成する(任意に工程[23]を採用してもよい。)。
[0020] 基板に感光性組成物を塗布する工程[11]
最初に、基板の表面に本発明における感光性組成物を塗布し、感光性組成物の塗膜を形成する。本発明における感光性組成物については後述する。
感光性組成物の塗布方法としては、スピンコート法、スプレー法、スリットコート法、ロールコート法、バーコート法などが挙げられる。
塗膜の厚さは、基材の材質、用途にもよるが、好ましくは0.3?300μm、より好ましくは1?60μmである。
[0021] 基板としては、その材質は特に限定されるものではないが、例えば、各種ガラス板;ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル樹脂等の熱可塑性プラスチックシート;エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂の硬化シート等を挙げることができる。特に、耐熱性の点からガラス板または耐熱性プラスチックが好ましく用いられる。またポスト露光を、隔壁が形成されていない裏面(基板側)から行うこともあるため、透明基板であることが好ましい。
[0022] また金属ブラックマトリックスや樹脂ブラックマトリックス等のブラックマトリックスが形成されている基板を用いることもできる。その場合ブラックマトリックス上に隔壁を形成することが好ましい。
また酸化インジウム錫(ITO)等の透明電極やクロムやモリブデン等の金属配線が製膜された基板を用いることもできる。
[0023] 感光性組成物の塗膜を乾燥する工程[12]
次に、塗膜を真空乾燥や加熱乾燥することによって、感光性組成物に含まれる希釈剤を揮発させる。塗膜の外観のムラを発生させず、効率よく乾燥させるために、真空乾燥と加熱乾燥を併用することがより好ましい。感光性組成物の各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、真空乾燥は500?10Pa、10?300秒間程度、加熱乾燥は50?120℃、10?2000秒間程度の幅広い範囲で行うことが好ましい。
[0024] 露光工程[13]
次に、塗膜の一部を露光する。露光は所定パターンのマスクを介して行うことが好ましい。照射する光としては、可視光;紫外線;遠紫外線;KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F_(2)エキシマレーザー、Kr_(2)エキシマレーザー、KrArエキシマレーザー、Ar_(2)エキシマレーザー等のエキシマレーザー;X線;電子線等が挙げられる。
波長100?600nmの電磁波が好ましく、300?500nmの範囲に分布を有する光線がより好ましく、i線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)が特に好ましい。
照射装置として、公知の超高圧水銀灯やディープUVランプ等を用いることができる。露光量は、好ましくは5?1000mJ/cm^(2)の範囲であり、より好ましくは50?400mJ/cm^(2)であり、特に好ましくは50?100mJ/cm^(2)である。露光量が5mJ/cm^(2)以下の場合、隔壁の硬化が不十分で、その後の現像で溶解や剥離が起こるため好ましくない。露光量が1000mJ/cm^(2)を超えると高い解像度が得られなくなる傾向にある。
[0025] 現像工程[14]
露光工程の後、現像液により現像し、未露光部分を除去する。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類;エチルアミン、n-プロピルアミンなどの第1級アミン類;ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミンなどの第2級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、N-メチルピロリドンなどの第3級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンなどの第4級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジン等の環状アミン類;のアルカリ類からなるアルカリ水溶液を用いることができる。また上記アルカリ水溶液に、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒、界面活性剤などを適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
[0026] 現像時間(現像液に接触させる時間)は、5?180秒間が好ましい。また現像方法は液盛り法、ディッピング法、シャワー法などのいずれでもよい。現像後、高圧水洗や流水洗浄を行い、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、基板上の水分を除去できる。
[0027] ポスト露光工程[15]
次に、再度、露光を行う。ポスト露光は基板全面に対して行うことが好ましい。ポスト露光は隔壁が形成されている表面、または隔壁が形成されていない裏面(基板側)のいずれから行ってもよい。また、表裏両面から露光してもよい。ブラックマトリックスが形成された基板上に隔壁を形成する場合は、表面から露光することが好ましい。好ましい露光量としては、50mJ/cm^(2)以上であり、より好ましくは200mJ/cm^(2)以上であり、さらに好ましくは1000mJ/cm^(2)以上であり、特に好ましくは2000mJ/cm^(2)以上である。露光量は3000mJ/cm^(2)以下が好ましい。
[0028] 照射する光としては、紫外線が好ましく、光源として、超高圧水銀灯または高圧水銀灯を用いることが好ましい。これらの光源は隔壁の硬化に寄与する600nm以下の光を発光し、かつ、隔壁の酸化分解の原因となる200nm以下の光の発光が少ないため、好ましく用いられる。さらに水銀灯に用いられている石英管ガラスが200nm以下の光をカットする光学フィルター機能を有することが好ましい。
[0029] また光源として低圧水銀灯を用いることもできる。ただし、低圧水銀灯は200nm以下の波長の発光強度も高く、オゾンの生成により隔壁の酸化分解が起こり易いため、多量の露光を行うことは好ましくない。露光量は500mJ/cm^(2)以下であることが好ましく、300mJ/cm^(2)以下がさらに好ましい。
[0030] 隔壁を加熱処理するポストベーク工程[16]
続いて、隔壁を加熱処理することが好ましい。ホットプレート、オーブンなどの加熱装置により、好ましくは150?250℃で、5?90分間加熱処理を行ってもよい。加熱温度は180℃以上がより好ましい。隔壁を加熱処理することにより、隔壁の耐薬品性が向上し、塗布したインクに含まれる溶媒により隔壁が膨潤したり、インクが滲むことを防ぐことができる。
[0031] 上記のようなフォトリソグラフィ工程を経ることによって、隔壁が得られる。本発明における感光性組成物が黒色着色剤を含む場合には、形成される隔壁はブラックマトリックスとしての機能が付与される。
得られる隔壁の幅の平均は、好ましくは100μm以下、より好ましくは40μm以下であり、特に好ましくは20μm以下である。隔壁の幅の平均は、10μm以上が好ましい。また、隔壁の高さの平均は、好ましくは0.05?50μm、より好ましくは0.2?10μm、特に好ましくは0.5?3μmである。
得られる隔壁の形状は、特に限定されず、逆テーパー、矩形、順テーパーのいずれの形状でもよい。隔壁の上部表面のみが撥液性を示し、隔壁の側面は親液性を示すため、隔壁の形状に依存せずにインク層は優れた均一性を奏することができる。
また隔壁の側壁と隔壁の底面のおりなすテーパー角の好ましい範囲は、30°?150°である。テーパー角が小さすぎても大きすぎてもコントラストが低下するため好ましくない。
また、隔壁で区分された領域であるドットの幅の平均は、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下である。ドットひとつのサイズ(面積)は、好ましくは5000μm^(2)以上150000μm^(2)以下であり、より好ましくは10000μm^(2)以上120000μm^(2)以下であり、特に好ましくは15000μm^(2)以上100000μm^(2)である。ドットのサイズが小さすぎるとインクジェットで所望のドットにインクを着弾させるのが難しくなるため、好ましくない。一方、ドットのサイズが大きすぎると着弾したインクがドットに均一に濡れ拡がることが難しくなるため、好ましくない。
[0032] 次に、画素を形成する方法について説明する。
隔壁で区分された領域であるドット内にインクを注入する工程[21]
インクを注入する塗布方法としては、インクジェット法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、またはバーコート法等が挙げられる。なかでも、インクジェット法、スプレーコート法、またはスクリーン印刷法が大面積の基板にも比較的容易に塗布可能であるため好ましく、さらに多様なインクを同時に製膜することが可能であるインクジェット法が特に好ましい。
・・・省略・・・
[0036] 次に、本発明のカラーフィルタの製造方法を説明する。
本発明の製造方法を用いてカラーフィルタを製造する場合、隔壁にブラックマトリックスとしての機能を付与するために、感光性組成物は黒色着色剤を含んでいることが好ましい。その場合、上記隔壁の形成工程により、ブラックマトリックスとしての機能を有する隔壁を形成した後、隔壁で区分された領域内に、インクジェット法によって青、緑、赤色のカラーインクを注入する塗布工程、乾燥工程、加熱処理工程を経て画素を形成する。
・・・省略・・・
[0042] 次に、本発明の有機EL表示素子の製造方法を説明する。
最初に、ガラス等の透明基板に酸化インジウム錫(ITO)等の透明電極をスパッタ法等によって製膜し、必要に応じて所望のパターンに透明電極をエッチングする。次に、本発明の製造方法を用いて隔壁を形成する。その後、インクジェット法を用いて隔壁間のドットに正孔輸送材料、発光材料の溶液を順次塗布、乾燥して、正孔輸送層、発光層を形成する。
・・・省略・・・
[0045] 次に、本発明における隔壁形成材料である感光性組成物について説明する。
なお、以下の具体的化合物名において、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基とメタクリロイル基の両者を意味する総称として使用する。(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートの両者を意味する総称として使用する。(メタ)アクリル酸とはアクリル酸とメタクリル酸の両者を意味する総称として使用する。(メタ)アクリルアミドとはアクリルアミドとメタクリルアミドの両者を意味する総称として使用する。
本明細書において式1で表される基を、基(1)という。他の基も同様である。
本明細書において式(11)で表される単量体を、単量体(11)という。他の単量体も同様である。
[0046] 本発明における重合体(A)は、基(1)または基(2)を有する側鎖と、エチレン性二重結合を有する側鎖とを有する。
-CFXR^(f) (1)
式1中、Xは水素原子、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を示し、R^(f)はエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数20以下の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されたアルキル基、またはフッ素原子を示す。
-(SiR^(1)R^(2)-O)_(n)-SiR^(1)R^(2)R^(3) (2)
式2中、R^(1)、R^(2)は独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を示し、R^(3)は水素原子または炭素数1?10の有機基を示し、nは1?200の整数を示す。
・・・省略・・・
[0105] 本発明における感光性組成物は、光重合開始剤(C)を含有することが好ましい。光重合開始剤(C)は、光によりラジカルを発生する化合物からなることが好ましい。
・・・省略・・・
[0108] 感光性組成物は、2個以上のエチレン性二重結合を有し、かつ酸性基を有しないラジカル架橋剤(D)を含むことが好ましい。これにより、さらに感光性組成物の光硬化性が向上し、低露光量での隔壁形成が促進される。」

2 引用発明
引用文献1において、[0019]?[0031]には、隔壁を形成する方法、[0046]には、隔壁形成材料である感光性組成物における重合体、[0105]には、隔壁形成材料である感光性組成物における光重合開始剤、[0108]には、隔壁形成材料である感光性組成物におけるラジカル架橋剤が、それぞれ記載されている。
そうしてみると、上記1の記載に基づけば、引用文献1には、発明を実施するための最良の形態である隔壁を形成する方法として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 基板の表面に感光性組成物を塗布し、
次に、塗膜を乾燥することによって、感光性組成物に含まれる希釈剤を揮発させ、
次に、塗膜の一部を所定パターンのマスクを介して露光し、
露光工程の後、現像液により現像し、未露光部分を除去し、
次に、再度、隔壁が形成されていない裏面(基板側)から露光を行い、照射する光としては、紫外線であって、隔壁の硬化に寄与する600nm以下の光を発光し、かつ、隔壁の酸化分解の原因となる200nm以下の光の発光が少ないものであり、
得られる隔壁の幅の平均は、10μm以上、100μm以下であり、隔壁の高さの平均は、0.05?50μmであり、隔壁の上部表面のみが撥液性を示し、隔壁の側面は親液性を示し、隔壁で区分された領域であるドットひとつのサイズ(面積)は、5000μm^(2)以上150000μm^(2)以下であり、
上記隔壁形成材料である感光性組成物は、基(1)を有する側鎖と、エチレン性二重結合を有する側鎖とを有する重合体(A)と、光重合開始剤(C)と、ラジカル架橋剤(D)とを含み、
-CFXR^(f) (1)
式1中、Xは水素原子、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を示し、R^(f)はエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数20以下の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されたアルキル基、またはフッ素原子を示す、
隔壁を形成する方法。」


第6 当合議体の判断
1 本件発明1
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

ア 基板、隔壁
引用発明の「隔壁を形成する方法」は、「基板の表面に感光性組成物を塗布し」、「次に、塗膜を乾燥することによって、感光性組成物に含まれる希釈剤を揮発させ」、「次に、塗膜の一部を所定パターンのマスクを介して露光し」、「露光工程の後、現像液により現像し、未露光部分を除去し」、「次に、再度、隔壁が形成されていない裏面(基板側)から露光を行い」、「得られる隔壁の幅の平均は、10μm以上、100μm以下であり、隔壁の高さの平均は、0.05?50μmであり、隔壁の上部表面のみが撥液性を示し、隔壁の側面は親液性を示し、隔壁で区分された領域であるドットひとつのサイズ(面積)は、5000μm^(2)以上150000μm^(2)以下である」「隔壁を形成する方法」である。
上記方法からみて、引用発明の「基板」、「隔壁」及び「隔壁を形成する方法」は、その文言どおり、それぞれ、本件発明1の「基板」、「隔壁」及び「隔壁の製造方法」に相当する。
また、上記方法からみて、引用発明の「隔壁」は、「基板の表面」を「ドット」形成用の複数の区画に仕切る形に形成され、「上部表面」とそれに続く「側面」を有するといえる。
そうしてみると、引用発明の「隔壁」は、本件発明1の「隔壁」の「基板表面をドット形成用の複数の区画に仕切る形に形成された上面とそれに続く側面を有する」との要件を満たす。

イ 硬化膜を形成する工程
引用発明の「隔壁を形成する方法」は、「基板の表面に感光性組成物を塗布し」、「次に、塗膜を乾燥することによって、感光性組成物に含まれる希釈剤を揮発させ」、「次に、塗膜の一部を所定パターンのマスクを介して露光し」、「露光工程の後、現像液により現像し、未露光部分を除去」する工程を具備する。
ここで、上記製造工程を経た後の引用発明の「塗膜」は、隔壁に対応する形状の、上面とそれに続く側面を有する硬化した膜であるといえる(当合議体注:引用発明においては、塗膜を乾燥することによって、感光性組成物に含まれる希釈剤を揮発させ、露光するものであるから、塗膜が硬化していることは明らかである。)。
そうしてみると、引用発明の「隔壁形成材料である感光性組成物」は、本件発明1の「隔壁用硬化性組成物」に相当する。また、引用発明の上記製造工程と、本件発明1の「前記基板表面の所定の位置に隔壁用硬化性組成物をインクジェット法により塗布し硬化させて、前記隔壁に対応する形状の、上面とそれに続く側面を有する硬化膜を形成する工程」とは、「基板表面」「に隔壁用硬化性組成物を」「塗布し硬化させて、前記隔壁に対応する形状の、上面とそれに続く側面を有する硬化膜を形成する工程」の点で共通する。

ウ 親液性領域を形成する工程
引用発明の「隔壁を形成する方法」は、前記イで述べた製造工程の次に、「再度、隔壁が形成されていない裏面(基板側)から露光を行」う工程を具備し、その結果、「隔壁の上部表面のみが撥液性を示し、隔壁の側面は親液性を示」すものとなる。
上記の構成からみて、引用発明の「再度、隔壁が形成されていない裏面(基板側)から露光を行」う工程は、塗膜の側面に親液性領域を形成する工程といえる(当合議体注:このことは、引用文献1の[0011]?[0012]等の記載からも確認できる。)。
そうしてみると、引用発明の「次に、再度、隔壁が形成されていない裏面(基板側)から露光を行」う工程は、本件発明1の「前記基板の裏面から光を照射し、前記硬化膜の側面に親液性領域を形成する工程」に相当する。

エ 隔壁用硬化性組成物
引用発明の「隔壁形成材料である感光性組成物」は、「基(1)を有する側鎖と、エチレン性二重結合を有する側鎖とを有する重合体(A)と、光重合開始剤(C)と、ラジカル架橋剤(D)とを含む。
-CFXR^(f) (1)
式1中、Xは水素原子、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を示し、R^(f)はエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数20以下の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されたアルキル基、またはフッ素原子を示す。」である。
上記組成からみて、引用発明の「基(1)を有する側鎖と、エチレン性二重結合を有する側鎖とを有する重合体(A)」は、撥液性化合物であるといえる(当合議体注:このことは、引用文献1の[0009]?[0010]の記載からも確認できる。)。また、引用発明の「光重合開始剤(C)」及び「ラジカル架橋剤(D)」は、その文言が意味する機能のものである。
そうしてみると、引用発明の「基(1)を有する側鎖と、エチレン性二重結合を有する側鎖とを有する重合体(A)」、「ラジカル架橋剤(D)」及び「光重合開始剤(C)」は、それぞれ、本件発明1の「撥液性化合物(A)」、「架橋剤(B)」及び「重合開始剤(C)としての光重合開始剤」に相当する。また、引用発明の「隔壁形成材料である感光性組成物」は、本件発明1の「隔壁用硬化性組成物」の「撥液性化合物(A)と、架橋剤(B)と、重合開始剤(C)としての光重合開始剤を含有し」との要件を満たす。

オ 隔壁の製造方法
上記ア?エを総合すると、引用発明の「隔壁を形成する方法」は、本件発明1の「隔壁の製造方法」における、「硬化膜を形成する工程と」、「前記硬化膜の側面に親液性領域を形成する工程と」「を有し」との要件を満たす。

(2)一致点及び相違点
以上より、本件発明1と引用発明とは、
「 基板表面をドット形成用の複数の区画に仕切る形に形成された上面とそれに続く側面を有する隔壁の製造方法であって、
前記基板表面に隔壁用硬化性組成物を塗布し硬化させて、前記隔壁に対応する形状の、上面とそれに続く側面を有する硬化膜を形成する工程と、
前記基板の裏面から光を照射し、前記硬化膜の側面に親液性領域を形成する工程と
を有し、
前記隔壁用硬化性組成物は、撥液性化合物(A)と、架橋剤(B)と、重合開始剤(C)として光重合開始剤とを含有する、
隔壁の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「硬化膜を形成する工程」が、本件発明1は、「前記基板表面の所定の位置に隔壁用硬化性組成物をインクジェット法により塗布」するのに対して、引用発明は、「基板の表面に感光性組成物を塗布」する(全面に塗布し露光現像する)点。

(相違点2)
「撥液性化合物(A)」が、本件発明1は、「波長300nm未満の紫外線の照射によって親液化するものであり」、「波長300nm未満の紫外線の照射によって撥液性部位が分解する構造を有し」、「架橋性官能基を有し」、「下式(m1)で表される化合物に基づく単位(u1-1)を有する
【化1】

ただし、Cfは、炭素数1?20のフルオロアルキル基、または炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数2?20のフルオロアルキル基であり、
R^(1)およびR^(2)は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1?6のアルキル基、またはフェニル基であり、
R^(3)は、単結合、またはフッ素原子を有さない2価の有機基であり、
R^(4)?R^(8)の少なくとも1つは下式(1)で表される基であり、その他はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、それぞれ置換されていてもよい炭素数1?12のアルキル基、炭素数2?12のアルケノイル基、炭素数1?12のアルコキシ基、炭素数5?8のシクロアルキル基、炭素数6?20のアリール基、炭素数7?20のベンゾイル基、炭素数2?12のアルカノイル基、炭素数2?12のアルコキシカルボニル基もしくは炭素数7?20のフェノキシカルボニル基、またはニトロ基である。
【化2】

ただし、Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはNHであり、
nは、0?4の整数であり、
mは、Xが単結合、酸素原子、硫黄原子またはNHである場合には1であり、Xが窒素原子である場合には2であり、
Zは、架橋性官能基を有する基である。」のに対して、引用発明の「基(1)を有する側鎖と、エチレン性二重結合を有する側鎖とを有する重合体(A)」は、「波長300nm未満の紫外線の照射によって親液化するものであり」、「波長300nm未満の紫外線の照射によって撥液性部位が分解する構造を有し」ているか明らかではなく、化合物の構造は異なる点。

(相違点3)
「隔壁用硬化性組成物」が、本件発明1は、「粘度が、0.5?20mPa・Sである」のに対して、引用発明の「隔壁形成材料である感光性組成物」の粘度は、明らかでない点。

(3)判断
上記相違点1及び相違点3について検討する。
ア まず引用文献1の[0020]には、「感光性組成物の塗布方法としては、スピンコート法、スプレー法、スリットコート法、ロールコート法、バーコート法などが挙げられる。」と記載されていることにとどまり、引用文献1には、隔壁形成材料である感光性組成物の塗布方法として、インクジェット法を用いることは記載も示唆もされていない。
ここで、引用文献1の[0032]及び[0037]において、隔壁で区分された領域であるドット内にインクやカラーインクを注入する工程にインクジェット法を用いることが記載されているように、インクジェット法を用いて塗布することは、周知技術である。しかしながら、引用文献1の[0012]及び[0031]には、「本発明においては現像工程[14]の後に、ポスト露光工程[15]を有するため、重合体(A)の硬化反応が充分に行われ、未反応の残存分子がドットにマイグレートすることが起こりにくい。すなわち、隔壁上部表面はインクに対する撥液性に優れ、隔壁の側面またはドットはインクに対する親液性に優れる。よって、隔壁の側面またはドットはインクの濡れ性が高いので、インクはドット内に均一に濡れ拡がりやすく、隔壁の側面でインクをはじくこともないため、形成されるインク層の膜厚の最大値をh1、最小値をh2とした場合に、(h1-h2)/h1<0.3となるような膜厚均一性の高いインク層を得ることが可能となる。」、「上記のようなフォトリソグラフィ工程を経ることによって、隔壁が得られる。」とそれぞれ記載されているように、引用文献1には、フォトリソグラフィ工程を前提とした工程が記載されている。
そうしてみると、引用発明において、「隔壁形成材料である感光性組成物」の塗布方法として、インクジェット法を用いるという動機付けがあるとはいえないし、一般的に、パターニング方法において、フォトリソグラフィ法とインクジェット法を同時に実行するものでもない。また、引用発明において、「隔壁形成材料である感光性組成物」をインクジェット法に適した粘度の範囲内とする動機付けもあるとはいえない。

イ 念のため付言すると、引用文献2には、[0131]に「塗布方法としては・・・インクジェット法」と例示されているにすぎない。そして、上記アで述べたように、引用発明において、「隔壁形成材料である感光性組成物」の塗布方法として、インクジェット法を用いたり、「隔壁形成材料である感光性組成物」をインクジェット法に適した粘度の範囲内とする動機付けがあるとはいえない。
そうしてみると、仮に、引用発明に引用文献2に記載された単位(u1)を適用したとしても、上記相違点1及び相違点3に係る本件発明1の構成には至らない。

ウ 当合議体の拒絶の理由に引用された引用文献3や、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Bにも、引用発明において、上記相違点1及び相違点3に係る本件発明1の構成を適用することを窺わせる記載はなく、また、引用発明において、上記相違点1及び相違点3に係る本件発明1の構成を適用することが、周知技術であるともいえない。

エ 上記ア?ウより、当業者であっても、引用発明において、引用文献1?3に記載された事項等を適用して上記相違点1及び相違点3に係る本件発明の構成を容易になし得たということができない。

(4)効果
本件発明1は、上記相違点1?3に係る本件発明1の構成により、本件明細書の[0013]及び[0014]に記載された効果を奏するものである。

(5)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献1?3に記載された事項等に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

2 本件発明2について
本件発明2は本件発明1においてカテゴリーを隔壁の修復方法としたものであるから、本件発明2も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1?3に記載された事項等に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

3 引用文献2を主引例とした場合
引用文献2を主引例とした場合であっても、引用文献1を主引例とした場合と同じ理由により、本件発明1及び本件発明2は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1?3に記載された事項等に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

4 まとめ
本件発明1及び本件発明2は、当業者であっても、引用文献1?3に記載された発明等に基づいて容易に発明することができたということができない。


第7 原査定についての判断
上記第6で述べたように、本件発明1及び本件発明2は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献A?Cに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-05-14 
出願番号 特願2016-555276(P2016-555276)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05B)
P 1 8・ 537- WY (H05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 井亀 諭
井口 猶二
発明の名称 隔壁の製造方法および隔壁の修復方法  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
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