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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1374162 |
審判番号 | 不服2020-6266 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-05-08 |
確定日 | 2021-06-01 |
事件の表示 | 特願2017-526503「ハプティック出力デバイスに関連するユーザ入力エレメントのフィードバック減少」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日国際公開、WO2016/105496、平成30年 1月18日国内公表、特表2018-501552、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2015年(平成27年)12月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年12月23日,米国)を国際出願日とする出願であり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。 令和 元年 7月29日付け:拒絶理由通知 令和 元年12月17日 :意見書・手続補正書 令和 元年12月26日付け:拒絶査定(以下,「原査定」という。) 令和 2年 5月 8日 :審判請求 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 1.理由2として,(進歩性)本願の請求項1-21に係る発明は,以下の引用文献1ないし3に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2.理由3として,(実施可能要件)この出願は,「期待される信号」をどのように算出するかについて,発明の詳細な説明に実施可能に記載されているとはいえないから,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 3.理由5として,(明確性要件)この出願は,特許請求の範囲の記載において,「期待される信号」と実際に受信された信号とを比較することの技術的な意味が不明であるから,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 1.特開2009-037582号公報 2.特開2014-216017号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2013-228813号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願請求項1-21に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明21」という。)は,令和元年12月17日提出の手続補正によって補正(以下,「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1-21に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-21は以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 ハプティック出力デバイスでユーザ入力信号を分離する方法であって, 前記ハプティック出力デバイスに関連するユーザ入力エレメントから信号を受信するステップと, 前記ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップと, 前記比較に基づいて,前記受信された信号を,前記ユーザ入力信号を含む第一成分とハプティックフィードバック信号に関連する第二成分とに分けるステップと, 前記ユーザ入力信号にしたがって命令を実行するために前記第一成分を処理するステップと を含む,方法。 【請求項2】 前記ハプティックフィードバック信号は,前記ハプティック出力デバイスに関連する前記ユーザ入力エレメントでハプティック効果を生成することにより引き起こされる,請求項1記載の方法。 【請求項3】 前記受信された信号を前記第一成分と前記第二成分とに分けるステップは,前記受信された信号に周波数フィルタを適用するステップをさらに含む,請求項1記載の方法。 【請求項4】 前記ハプティックフィードバック信号は,前記ユーザ入力信号と比較して高周波数の信号である,請求項1記載の方法。 【請求項5】 前記ハプティック出力デバイスは,コントローラまたはゲームパッドを含む周辺デバイスに位置する,請求項1記載の方法。 【請求項6】 前記ハプティックフィードバック信号は,前記周辺デバイスのトリガまたはジョイスティックエレメントで生み出される,請求項5記載の方法。 【請求項7】 前記第一成分は,ホストデバイスに前記ユーザ入力信号に基づいて命令を実行させるために処理される,請求項1記載の方法。 【請求項8】 プロセッサと, 前記プロセッサによる実行のためのプログラムを記憶するメモリと,を備え,前記プログラムは, ハプティック出力デバイスに関連するユーザ入力エレメントから信号を受信し, ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較し,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成され, 前記比較に基づいて,前記受信された信号を,ユーザ入力信号を含む第一成分とハプティックフィードバック信号に関連する第二成分とに分け, 前記ユーザ入力信号にしたがって命令を実行するために前記第一成分を処理するための命令を含む, デバイス。 【請求項9】 前記ハプティックフィードバック信号は,前記ハプティック出力デバイスに関連する前記ユーザ入力エレメントでハプティック効果を生成することにより引き起こされる,請求項8記載のデバイス。 【請求項10】 前記受信された信号を前記第一成分と前記第二成分とに分けることは,前記受信された信号に周波数フィルタを適用することをさらに含む,請求項8記載のデバイス。 【請求項11】 前記ハプティックフィードバック信号は,前記ユーザ入力信号と比較して高周波数の信号である,請求項8記載のデバイス。 【請求項12】 前記ハプティック出力デバイスは,コントローラまたはゲームパッドを含む周辺デバイスに位置する,請求項8記載のデバイス。 【請求項13】 前記ハプティックフィードバック信号は,前記周辺デバイスのトリガまたはジョイスティックエレメントで生み出される,請求項12記載のデバイス。 【請求項14】 前記第一成分は,ホストデバイスに前記ユーザ入力信号に基づいて命令を実行させるために処理される,請求項8記載のデバイス。 【請求項15】 プロセッサによって実行されるように構成されたプログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって,前記プログラムは, ハプティック出力デバイスに関連するユーザ入力エレメントから信号を受信するステップと, ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップと, 前記比較に基づいて,前記受信された信号を,ユーザ入力信号を含む第一成分とハプティックフィードバック信号に関連する第二成分とに分けるステップと, 前記ユーザ入力信号にしたがって命令を実行するために前記第一成分を処理するステップと のための命令を含む,コンピュータ可読記憶媒体。 【請求項16】 前記ハプティックフィードバック信号は,前記ハプティック出力デバイスに関連する前記ユーザ入力エレメントでハプティック効果を生成することにより引き起こされる,請求項15記載のコンピュータ可読記憶媒体。 【請求項17】 前記受信された信号を前記第一成分と前記第二成分とに分けるステップは,前記受信された信号に周波数フィルタを適用するステップをさらに含む,請求項15記載のコンピュータ可読記憶媒体。 【請求項18】 前記ハプティックフィードバック信号は,前記ユーザ入力信号と比較して高周波数の信号である,請求項15記載のコンピュータ可読記憶媒体。 【請求項19】 前記ハプティック出力デバイスは,コントローラまたはゲームパッドを含む周辺デバイスに位置する,請求項15記載のコンピュータ可読記憶媒体。 【請求項20】 前記ハプティックフィードバック信号は,前記周辺デバイスのトリガまたはジョイスティックエレメントで生み出される,請求項19記載のコンピュータ可読記憶媒体。 【請求項21】 前記第一成分は,ホストデバイスに前記ユーザ入力信号に基づいて命令を実行させるために処理される,請求項15記載のコンピュータ可読記憶媒体。」 第4 引用文献及び引用発明等 1 引用文献1の記載および引用発明 (1)引用文献1の記載 引用文献1には,以下の記載がある。(下線は,当審が付加した。以下同様。) ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,ゲームコントローラの技術に関する。 【背景技術】 【0002】 ゲームシステムにおいて,モータなどの振動子を備えたゲームコントローラが普及している。ゲームの進行にあわせて振動子が駆動されることで,ユーザに現実感を与えることができる。 【0003】 また近年,ゲームコントローラに動きセンサを搭載して,ゲームコントローラの姿勢や動きそのものをゲームへの入力として利用することが現実化されている。ユーザがゲームコントローラを動かすと,動きセンサはゲームコントローラの傾きや回転量などを検出し,その検出値をゲーム装置に送信することで,従来からあるボタン操作とは異なるゲーム入力が実現される。たとえばレーシングゲームでは,ゲームコントローラが自動車のハンドルのように扱われて,ユーザは,ボタン操作よりもリアルな感覚をもってゲームを行うことができる。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら,ゲームコントローラに振動子と動きセンサが搭載された場合,動きセンサは,ユーザの動作により与えられるゲームコントローラの動き成分に加えて,振動子の振動に起因するゲームコントローラの動き成分も検出する。そのため,ユーザが本来意図するゲーム操作とは異なる入力がゲームキャラクタの挙動に反映されることがあり,ユーザに違和感を生じさせることもある。 【0005】 そこで本発明は,加速度センサや角速度センサなどの動きセンサの出力から,振動子の振動に起因するゲームコントローラの動き成分を簡易に除去または低減する技術を提供することを目的とする。」 イ 「【発明の効果】 【0008】 本発明によると,動きセンサの出力から,振動子の振動に起因するゲームコントローラの動き成分を簡易に除去または低減する技術を提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0009】 図1は,本発明の実施例にかかるゲームシステムの使用環境を示す。ゲームシステム1は,画像表示装置3,音声出力装置4,ゲーム装置10およびコントローラ20を備える。画像表示装置3,音声出力装置4およびコントローラ20は,ゲーム装置10に接続される。 (中略) 【0011】 コントローラ20は,ユーザがゲーム中のキャラクタを動作させるゲーム操作データを入力するための入力装置であり,またゲーム装置10は,コントローラ20から供給されるゲーム操作データをもとにゲームアプリケーションを処理して,ゲームアプリケーションの処理結果を示す画像信号および音声信号を生成する処理装置である。なお,本実施例に示す技術は,ゲームアプリケーションに限らず,他の種類のアプリケーションを実行する処理装置を備えたエンタテインメントシステムにおいても実現できる。以下では,エンタテインメントシステムを代表して,ゲームアプリケーションを実行するゲームシステム1について説明する。 (中略) 【0013】 コントローラ20は,図示しないバッテリにより駆動され,ゲームを進行させるゲーム入力を行うための複数のボタンやキーを有して構成される。ユーザがコントローラ20のボタンやキーを操作すると,そのゲーム操作データが無線により周期的にゲーム装置10に送信される。またコントローラ20は,コントローラ20の3軸方向の加速度を検出する3軸加速度センサと,所定の軸回りの角速度を検出する角速度センサを有して構成される。3軸加速度センサおよび角速度センサは,コントローラ20の動きを検出する動きセンサを構成する。ゲームアプリケーションによっては,各センサの検出値がゲーム操作データとして扱われ,無線により周期的にゲーム装置10に送信される。たとえば,コントローラ20を自動車のハンドルに見立て,ユーザがコントローラ20をハンドルのように動かすことで,ゲーム中の自動車を動かすレーシングゲームにおいては,3軸加速度センサおよび角速度センサの出力値がゲーム操作データとして利用される。 【0014】 ゲーム装置10は,コントローラ20からゲームアプリケーションに関するゲーム操作データを受信し,ゲーム操作データに応じてゲーム進行を制御して,ゲーム画像信号およびゲーム音声信号を生成する。生成されたゲーム画像信号およびゲーム音声信号は,それぞれ画像表示装置3および音声出力装置4により出力される。またゲーム装置10は,ゲームアプリケーションの進行状況に応じて,コントローラ20を振動させる振動制御信号をコントローラ20に送信する機能ももつ。コントローラ20は振動子を有し,振動開始信号を受信すると振動子を駆動させ,振動停止信号を受信すると振動子の駆動を停止させる。なおゲーム装置10は,振動子を駆動させるか否かを特定する振動制御信号を,送信フレームごとに送信してもよく,この場合,コントローラ20は,この振動制御信号にしたがって動作する。」 ウ 「【0019】 図3は,コントローラの内部構成を示す。コントローラ20は,処理部90を有し,さらに,モータと偏心部材から構成される振動子80a,80bと,無線通信モジュール92とを備える。振動子80a,80bは,それぞれコントローラ20の左側把持部28a,右側把持部28bの筐体内部に配置される。無線通信モジュール92は,ゲーム装置10の無線通信モジュールとの間でデータを送受信する機能をもつ。処理部90は,コントローラ20における所期の処理を実行する。処理部90および無線通信モジュール92の機能は,筐体内部に設けられる基板に作り込まれた回路として実現されてもよい。 【0020】 処理部90は,メイン制御部50,入力受付部52,センサユニット56,フィルタユニット60,アナログデジタル変換装置64,平均処理ユニット68,メモリ70,読出部72,通信制御部74および駆動制御部76を備える。通信制御部74は,無線通信モジュール92との間で必要なデータの送受を行う。 【0021】 入力受付部52は,方向キー21,操作ボタン26,アナログスティック27などの入力部からの入力情報を受け付け,メイン制御部50に送る。メイン制御部50は,受け取った入力情報をメモリ70に供給し,記憶させる。各種入力部からの入力情報は,メモリ70においてそれぞれに割り当てられる領域に上書きして記憶される。 (中略) 【0024】 フィルタユニット60は,複数のローパスフィルタ(LPF)58,57を有する。LPF58は,加速度センサ54の下流に設けられ,加速度センサ54の出力のうち,カットオフ周波数以下の周波数成分を通過させ,カットオフ周波数近傍から,それ以上の周波数成分を減衰させるフィルタである。LPF57は,角速度センサ53の下流に設けられ,角速度センサ53の出力のうち,カットオフ周波数以下の周波数成分を通過させ,カットオフ周波数近傍から,それ以上の周波数成分を減衰させるフィルタである。LPF58およびLPF57は,パッシブフィルタとして構成され,同一のカットオフ周波数を有するように構成されてもよい。パッシブフィルタはアクティブフィルタに比べて,そのフィルタ動作に電力を要しないため,バッテリ駆動のコントローラ20においては好適である。」 エ 「【0039】 ユーザの動作によりコントローラ20に与えられる振動数は,振動子80の振動によりコントローラ20に与えられる振動数よりも一般には低い。既述したように,人間がコントローラ20を動かすスピードには限界があり,通常は15Hzを超えることはないと考えられる。したがって,LPF58のカットオフ周波数を,15Hz以下の所定値,たとえば15Hzに設定すると,LPF58は,ユーザの動きに起因する振動成分を好適に出力できるとともに,振動子80の振動に起因する振動成分を効果的に除去することが可能となる。」 (2) 引用発明 上記(1)からみて,特に,下線部に着目すると,引用文献1には,以下のような発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「動きセンサの出力から,振動子の振動に起因するゲームコントローラの動き成分を簡易に除去または低減する技術を提供することができるゲームシステムにおいて, ゲームシステム1は,画像表示装置3,音声出力装置4,ゲーム装置10およびコントローラ20を備え,画像表示装置3,音声出力装置4およびコントローラ20は,ゲーム装置10に接続されており, コントローラ20は,ユーザがゲーム中のキャラクタを動作させるゲーム操作データを入力するための入力装置であり,またゲーム装置10は,コントローラ20から供給されるゲーム操作データをもとにゲームアプリケーションを処理して,ゲームアプリケーションの処理結果を示す画像信号および音声信号を生成する処理装置であり, コントローラ20は,ゲームを進行させるゲーム入力を行うための複数のボタンやキーを有して構成され,ユーザがコントローラ20のボタンやキーを操作すると,そのゲーム操作データが無線により周期的にゲーム装置10に送信されており,またコントローラ20は,コントローラ20の3軸方向の加速度を検出する3軸加速度センサと,所定の軸回りの角速度を検出する角速度センサを有して構成され,3軸加速度センサおよび角速度センサは,コントローラ20の動きを検出する動きセンサを構成しており,3軸加速度センサおよび角速度センサの出力値がゲーム操作データとして利用されており, ゲーム装置10は,ゲームアプリケーションの進行状況に応じて,コントローラ20を振動させる振動制御信号をコントローラ20に送信する機能ももっており,コントローラ20は振動子を有し,振動開始信号を受信すると振動子を駆動させ,振動停止信号を受信すると振動子の駆動を停止させており, コントローラ20は,処理部90を有し,処理部90は,メイン制御部50,入力受付部52,センサユニット56,フィルタユニット60,アナログデジタル変換装置64,平均処理ユニット68,メモリ70,読出部72,通信制御部74および駆動制御部76を備え, 入力受付部52は,方向キー21,操作ボタン26,アナログスティック27などの入力部からの入力情報を受け付けており, フィルタユニット60は,ローパスフィルタ(LPF)58を有しており,LPF58は,加速度センサ54の下流に設けられ,加速度センサ54の出力のうち,カットオフ周波数以下の周波数成分を通過させ,カットオフ周波数近傍から,それ以上の周波数成分を減衰させるフィルタであり, ユーザの動作によりコントローラ20に与えられる振動数は,振動子80の振動によりコントローラ20に与えられる振動数よりも一般には低く,人間がコントローラ20を動かすスピードには限界があり,通常は15Hzを超えることはないため,LPF58は,ユーザの動きに起因する振動成分を好適に出力できるとともに,振動子80の振動に起因する振動成分を効果的に除去することが可能となるコントローラにおける振動成分除去方法。」 2 引用文献2の記載および周知技術 (1)引用文献2の記載 引用文献2には,以下の記載がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,ユーザー入力エレメントに結合されるターゲットアクチュエーターを備え,触覚効果をユーザー入力エレメントに伝えるようになっている装置に関する。 (中略) 【背景技術】 【0003】 ビデオゲーム及びビデオゲームシステムは,カジュアルゲーマーに向けたマーケティング及びその結果のカジュアルゲーマーによる関与によって,更にいっそう一般的になっている。従来のビデオゲーム機器又はコントローラーは,視覚キュー及び聴覚キューを使用して,ユーザーにフィードバックを提供する。一部のインターフェース装置では,運動感覚フィードバック(アクティブな抵抗力覚フィードバック等)及び/又は触感フィードバック(振動,テキスチャ,及び熱等)もユーザーに提供される。これらのフィードバックは,より一般的には「触覚フィードバック」又は「触覚効果」として総称的に知られている。触覚フィードバックは,ユーザーインターフェースを向上させ単純化するキューを提供することができる。具体的には,振動効果,すなわち振動触覚効果が,電子装置のユーザーに特定のイベントを知らせるようにそのユーザーにキューを提供するときに有用であるか,又はシミュレート環境若しくはバーチャル環境内でより高い知覚没入感をもたらすように現実的なフィードバックを提供する場合がある。 【0004】 また,ユーザーがユーザー入力エレメントとインターフェースして動作を引き起こす医療装置,自動車制御装置,遠隔制御装置,及び他の同様の装置等の他の機器が,触覚フィードバック又は触覚効果によって利益を受ける。例えば,限定するのではないが,医療装置のユーザー入力エレメントは,ユーザーによって医療装置の近位部において患者の体外で操作され,医療装置の遠位端部において患者の体内で動作を引き起こしてもよい。触覚フィードバック又は触覚効果を機器において用いて,ユーザーに特定のイベントを知らせるか,又は医療装置の遠位端部における医療装置と患者との相互作用に関する現実的なフィードバックをユーザーに提供してもよい。 【0005】 ゲーミング機器又は他の機器に用いられる従来の触覚フィードバックシステムは,一般的に,1つ又は複数のアクチュエーターを備える。1つ又は複数のアクチュエーターは,コントローラーのハウジングに取り付けられ,触覚フィードバックを生成する。しかし,これらの従来の触覚フィードバックシステムは,コントローラーの本体全体を伝って触感(haptic sensation)を生じさせる。このような装置は,特定の動作又はロケーションに関するターゲット触感又は指向性触感をユーザーに提供しない。 【0006】 本発明の実施形態は,運動触覚効果をユーザー入力エレメントに提供する触覚フィードバックシステムに関する。さらに,本発明の実施形態は,装置/コントローラーの本体全体を伝って生じる全体触覚効果(general haptic effects)に対して弁別可能又は区別可能である触覚効果をユーザー入力エレメントにもたらす触覚フィードバックシステムに関する。」 イ 「【0014】 コントローラー100は,一般的に,コンピューター,移動電話,テレビ,又は他の同様の装置に接続してもよいゲーミングシステムとともに用いられる場合がある。図1及び図2は,コントローラー100の異なる斜視図を示しており,その一方で図3は,ホストコンピューター104及びディスプレイ106を更に備えるゲーミングシステム101において用いられるコントローラー100のブロック図を示している。図3のブロック図に示されているように,コントローラー100は,接続105を介してホストコンピューター104と通信するローカルプロセッサ108を備える。接続105は,有線接続,無線接続,又は当業者に既知である他のタイプの接続としてもよい。代替的には,コントローラー100は,ローカルプロセッサ108を備えずに構成してもよく,それにより,コントローラー100からの全ての入力/出力信号は,ホストコンピューター104によって直接ハンドリング及び処理される。ホストコンピューター104は,ディスプレイ106に結合される。一実施形態において,ホストコンピューター104はゲーミング装置コンソールであり,ディスプレイスクリーン106は,当該技術分野において既知のようなゲーミング装置コンソールに結合されるモニターである。当業者には既知であるように,別の実施形態において,ホストコンピューター104及びディスプレイ106は組み合わせて単一の装置にしてもよい。 (中略) 【0016】 コントローラー100は,ジョイスティック110,ボタン114,及びトリガー118を含む,いくつかのユーザー入力エレメント又はマニピュランダムを備える。本明細書で用いられるとき,「ユーザー入力エレメント」は,ユーザーによって操作されてホストコンピューター104と相互作用する,例えばトリガー,ボタン,ジョイスティック等のインターフェース装置を指す。図1及び図2において見て取ることができるとともに当業者に既知であるように,各ユーザー入力エレメント及び追加のユーザー入力エレメントの2つ以上をコントローラー100上に備えてもよい。したがって,例えば,トリガー118の本説明は,コントローラー100を単一のトリガーに限定しない。さらに,図3のブロック図は,ジョイスティック110,ボタン114,及びトリガー118のそれぞれを1つのみ示している。しかし,上述したように,多数のジョイスティック,ボタン,及びトリガー並びに他のユーザー入力エレメントを用いてもよいことが当業者には理解される。 【0017】 図3のブロック図において見て取ることができるように,コントローラー100は,自身のユーザー入力エレメントのそれぞれを直接駆動するターゲットアクチュエーター又はモーターと,ユーザーの手が概ね置かれる場所においてハウジング102に結合される1つ又は複数の全体アクチュエーターすなわちランブルアクチュエーター122,124とを備える。より具体的には,ジョイスティック110は,自身に結合されるターゲットアクチュエーター又はモーター112を備え,ボタン114は,自身に結合されるターゲットアクチュエーター又はモーター116を備え,トリガー118は,自身に結合されるターゲットアクチュエーター又はモーター120を備える。複数のターゲットアクチュエーターに加えて,コントローラー100は,自身のユーザー入力エレメントのそれぞれに結合される位置センサーを備える。より具体的には,ジョイスティック110は,自身に結合される位置センサー111を備え,ボタン114は,自身に結合される位置センサー115を備え,トリガー118は,自身に結合される位置センサー119を備える。ローカルプロセッサ108が,ターゲットアクチュエーター112,116,120と,ジョイスティック110,ボタン114,及びトリガー118の位置センサー111,115,119とにそれぞれ結合される。本明細書においてより詳細に説明されるように,位置センサー111,115,119から受信される信号に応答して,ローカルプロセッサ108は,ターゲットアクチュエーター112,116,120に対して,指向性運動効果又はターゲット運動効果をジョイスティック110,ボタン114,及びトリガー118にそれぞれ直接提供するように命令する。このようなターゲット運動効果は,全体アクチュエーター122,124によってコントローラーの本体全体を伝って生成される全体触覚効果,すなわちランブル触覚効果に対して弁別可能又は区別可能である。複数の種類の感覚(multiple modalities),例えば,映像,音声,及び触感(haptics)が同時に関与するとき,総合した触覚効果は,ゲームへのより高い没入感をユーザーにもたらす。」 (2)引用文献2に記載の技術的事項 上記(1)の下線部の記載に着目すると,引用文献2には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「ゲーミングシステム101において用いられるコントローラー100であって, コントローラー100は,ジョイスティック110,ボタン114,及びトリガー118を含む,いくつかのユーザー入力エレメントを備えており, コントローラー100は,自身のユーザー入力エレメントのそれぞれを直接駆動するターゲットアクチュエーター又はモーターと,ユーザーの手が概ね置かれる場所においてハウジング102に結合される1つ又は複数の全体アクチュエーターすなわちランブルアクチュエーター122,124とを備えており, コントローラー100は,自身のユーザー入力エレメントのそれぞれに結合される位置センサーを備え,より具体的には,ジョイスティック110は,自身に結合される位置センサー111を備え,ボタン114は,自身に結合される位置センサー115を備え,トリガー118は,自身に結合される位置センサー119を備えており, 位置センサー111,115,119から受信される信号に応答して,ターゲットアクチュエーター112,116,120に対して,指向性運動効果又はターゲット運動効果をジョイスティック110,ボタン114,及びトリガー118にそれぞれ直接提供しており,このようなターゲット運動効果は,全体アクチュエーター122,124によってコントローラーの本体全体を伝って生成される全体触覚効果,すなわちランブル触覚効果に対して弁別可能又は区別可能である。複数の種類の感覚(multiple modalities),例えば,映像,音声,及び触感(haptics)が同時に関与するとき,総合した触覚効果は,ゲームへのより高い没入感をユーザーにもたらす コントローラー。」 3 引用文献3の記載および技術的事項 (1)引用文献3の記載 引用文献3には,以下の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は,電子機器及び動き検出方法に関する。 【背景技術】 【0002】 3軸加速度センサ等を備える携帯電話や携帯情報端末などの電子機器として,例えば特許文献1が知られている。特許文献1に示すような電子機器においては,3軸加速度センサにより自装置の動きを検出することで,自装置の動きをインターフェースとして利用するモーションインターフェースを有する。 (中略) 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら,従来の電子機器においては,振動デバイス等により振動を発生した場合に,その振動を自装置の動きとして検出する。このため,従来の電子機器は,電子機器が振動しているときにユーザがモーション操作をした場合に,振動とモーション操作とが混合された動きを検出するため,ユーザの所望する機能が実行されない場合がある,という問題がある。 【0005】 本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり,その目的は,自装置の動きをインターフェースとして用いる電子機器において,内部に備える振動デバイスの動きによる入力を防ぐことができる電子機器及び動き検出方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり,本発明の一態様は,加速度を検出する加速度センサと,振動を発生する振動部と,前記振動部が発生する音声を収音して音声データを生成する収音部と,各音声データに対応する加速度を記憶する記憶部と,前記収音部により生成された音声データに対応する加速度を前記記憶部から読み出し,前記加速度センサにより検出された加速度から前記読み出した加速度を除去した加速度に基づいて自装置の動きを検出する動き検出部と,を備えることを特徴とする電子機器である。 【0007】 また,本発明の一態様は,電子機器が,電子機器が,加速度を検出するステップと,前記電子機器が,振動を発生する振動部による音声を収音して音声データを生成するステップと,前記電子機器が,各音声データに対応する加速度を記憶する記憶部から前記生成した音声データに対応する加速度を読み出し,前記検出した加速度から前記読み出した加速度を除去した加速度に基づいて自装置の動きを検出するステップと,を有することを特徴とする動き検出方法である。」 (2)引用文献3に記載の技術的事項 上記(1)の下線部の記載に着目すると,引用文献3には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「自装置の動きをインターフェースとして用いる電子機器において,内部に備える振動デバイスの動きによる入力を防ぐことができる動き検出方法であって, 電子機器が,加速度を検出するステップと,前記電子機器が,振動を発生する振動部による音声を収音して音声データを生成するステップと,前記電子機器が,各音声データに対応する加速度を記憶する記憶部から前記生成した音声データに対応する加速度を読み出し,前記検出した加速度から前記読み出した加速度を除去した加速度に基づいて自装置の動きを検出するステップと,を有することを特徴とする動き検出方法。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。 ア 引用発明の「ゲーム装置10は,ゲームアプリケーションの進行状況に応じて,コントローラ20を振動させる振動制御信号をコントローラ20に送信する機能ももっており,コントローラ20は振動子を有し,振動開始信号を受信すると振動子を駆動させ」ているから,引用発明の「コントローラ」は,本願発明1の「ハプティック出力デバイス」に対応するといえる。 また,引用発明の「コントローラ20は,コントローラ20の3軸方向の加速度を検出する3軸加速度センサと,所定の軸回りの角速度を検出する角速度センサを有して構成され,3軸加速度センサおよび角速度センサは,コントローラ20の動きを検出する動きセンサを構成しており,3軸加速度センサおよび角速度センサの出力値がゲーム操作データとして利用されて」いるから,は,引用発明の「コントローラ20の動きを検出する動きセンサ」である「3軸加速度センサおよび角速度センサの出力値」は,本願発明1の「ユーザ入力信号」に対応するといえる。 さらに,引用発明は「振動子80の振動に起因する振動成分を効果的に除去することが可能となるコントローラにおける振動成分除去方法」であるから,本願発明1の「ハプティック出力デバイス」における「ユーザ入力信号を分離する方法」に対応するといえる。 したがって,本願発明1と引用発明とは,「ハプティック出力デバイスでユーザ入力信号を分離する方法」である点で共通している。 イ 引用発明の「コントローラ20の動きを検出する動きセンサ」である「3軸加速度センサおよび角速度センサの出力値」は,本願発明1の「ハプティック出力デバイスに関連するユーザ入力エレメントから」の「信号」に対応するといえる。 したがって,本願発明1と引用発明とは,「ハプティック出力デバイスに関連するユーザ入力エレメントから信号を受信するステップ」「を含」んでいる点で共通している。 ウ 引用発明の「フィルタユニット60は,ローパスフィルタ(LPF)58を有しており,LPF58は,加速度センサ54の下流に設けられ,加速度センサ54の出力のうち,カットオフ周波数以下の周波数成分を通過させ,カットオフ周波数近傍から,それ以上の周波数成分を減衰させるフィルタであり,ユーザの動作によりコントローラ20に与えられる振動数は,振動子80の振動によりコントローラ20に与えられる振動数よりも一般には低く,人間がコントローラ20を動かすスピードには限界があり,通常は15Hzを超えることはないため,LPF58は,ユーザの動きに起因する振動成分を好適に出力できるとともに,振動子80の振動に起因する振動成分を効果的に除去することが可能となる」から,引用発明の「ユーザの動きに起因する振動成分」および「振動子80の振動に起因する振動成分」は,それぞれ,本願発明1の「ユーザ入力信号を含む第一成分」および「ハプティックフィードバック信号に関連する第二成分」に対応するといえる。 したがって,本願発明1と引用発明とは,「前記受信された信号を,前記ユーザ入力信号を含む第一成分とハプティックフィードバック信号に関連する第二成分とに分けるステップ」「を含」んでいる点で共通している。 しかし,本願発明1では,「前記ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップ」を含み,「前記比較に基づいて,」「第一成分」と「第二成分」を「分け」ているのに対し,引用発明では,「前記ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップ」を含んでおらず,「前記比較に基づいて,」「第一成分」と「第二成分」を「分け」ていない点で相違している。 エ 引用発明の「3軸加速度センサおよび角速度センサの出力値」から「LPF58は,ユーザの動きに起因する振動成分を好適に出力できるとともに,振動子80の振動に起因する振動成分を効果的に除去」した値は,本願発明1の「前記ユーザ入力信号を含む第一成分」に対応するから「ユーザ入力信号に対応する「3軸加速度センサおよび角速度センサの出力値」から,この値に従って処理しているといえるから,引用発明も,本願発明1と同様に,「前記ユーザ入力信号にしたがって命令を実行するために前記第一成分を処理するステップ」を含んでいるといえる。 (2)一致点 本願発明1と,引用発明とは,以下の点で一致する。 「ハプティック出力デバイスでユーザ入力信号を分離する方法であって, 前記ハプティック出力デバイスに関連するユーザ入力エレメントから信号を受信するステップと, 前記受信された信号を,前記ユーザ入力信号を含む第一成分とハプティックフィードバック信号に関連する第二成分とに分けるステップと, 前記ユーザ入力信号にしたがって命令を実行するために前記第一成分を処理するステップと を含む,方法。」 (3)相違点 本願発明1と,引用発明とは,以下の点で相違する。 本願発明1では,「前記ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップ」を含み,「前記比較に基づいて,」「分け」ているのに対し,引用発明では,「前記ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップ」を含んでおらず,「前記比較に基づいて,」「分け」ていない点。 (4)相違点について 相違点に係る本願発明1の「前記ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップ」を含み,「前記比較に基づいて,」「分け」ているという構成は,上記引用文献1-3には記載されておらず,本願優先日前において周知技術であるともいえない。 したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用発明および引用文献2ならびに3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2?21について (1)本願発明2?7 本願発明2ないし7は,いずれも,本願発明1を引用しており,本願発明1の「前記ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップ」を含み,「前記比較に基づいて,」「分け」ているという構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明および引用文献2および3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 (2)本願発明8?14 本願発明8は,本願発明1のカテゴリを,「方法」の発明から,「デバイス」の発明へ変更したものであり,本願発明1の「前記ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップ」を含み,「前記比較に基づいて,」「分け」ているという構成と同様の構成である「ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較し,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成され,前記比較に基づいて,」「分け」を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明および引用文献2および3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 加えて,本願発明9ないし14は,いずれも,本願発明8を引用しており,本願発明8と同様に,本願発明1の「前記ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップ」を含み,「前記比較に基づいて,」「分け」ているという構成と同様の構成である「ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較し,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成され,前記比較に基づいて,」「分け」を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明および引用文献2および3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 (3)本願発明15?21 本願発明15は,本願発明1のカテゴリを,「方法」の発明から,「プログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読記憶媒体」の発明へ変更したものであり,本願発明1の「前記ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップ」を含み,「前記比較に基づいて,」「分けるステップ」ているという構成と同様の構成である「ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップと,前記比較に基づいて,」「分けるステップ」を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明および引用文献2および3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 加えて,本願発明16ないし21は,いずれも,本願発明15を引用しており,本願発明15と同様に,本願発明1の「前記ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップ」を含み,「前記比較に基づいて,」「分けるステップ」ているという構成と同様の構成である「ユーザ入力信号を分離するために,前記受信された信号と期待される信号とを比較するステップであって,前記期待される信号は,前記ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される,比較するステップと,前記比較に基づいて,」「分けるステップ」を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明および引用文献2および3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 その他の原査定における拒絶の理由について (1)実施可能要件について 本願発明の「期待される信号」について,本願明細書には以下の記載がある。 「【0059】 代替的構成においては,ユーザ入力エレメントに適用される位置および/または圧力が測定され,受信された信号と比較されてもよい。一部の場合には,測定された位置および/または圧力に基づいて期待される受信信号が生成され,期待される信号が受信された信号と比較されうる。ここでは,ユーザ入力信号は,比較の結果に基づいて分離されうる。例えば,ハプティック効果がトリガを10%引き込み,ファームウェアがポテンショメータを30%と読み取る場合,残りの20%はエンドユーザのトリガ変位への寄与分である。換言すれば,ハプティック効果に基づいて期待される移動を実際の移動と比較することによって,ユーザ入力成分が計算されうる。」 「ハプティック出力デバイスがユーザ入力信号に干渉する意図しないフィードバック信号を生成することもある。」(段落0056) 以上の記載から,本願発明の「ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される」「期待される信号」の具体例は,「トリガ」という「ユーザ入力エレメント」の「位置」および「ユーザ入力エレメントに適用される圧力」に含まれる「ハプティック効果」により「トリガ」が「10%引き込」まれる値であるといえる。 本願発明の「期待される信号」は,「ハプティック出力デバイスがユーザ入力信号に干渉する意図しないフィードバック信号」として「期待」(予測)される信号のことであり,ノイズ発生源となるハプティック出力信号の内容を「ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される」「期待される信号」として,システムは,把握できるのであるから,その「ユーザ入力信号に干渉する意図しないフィードバック信号」の影響を入力信号から除去しているといえる。 したがって,「期待される信号」をどのように算出するかについて,本願明細書の発明の詳細な説明において,実施可能に記載されているといえるから,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。 (2)明確性要件について 上記(1)で述べたように,「期待される信号」と実際に受信された信号とを比較することの技術的な意味は,ノイズ発生源となるハプティック出力信号の内容を「ユーザ入力エレメントの位置または前記ユーザ入力エレメントに適用される圧力のうちの少なくとも1つに基づいて生成される」「期待される信号」として,システムは把握しており,その「ユーザ入力信号に干渉する意図しないフィードバック信号」の影響を入力信号から除去していることにあると当業者には理解できるから,この出願の特許請求の範囲の記載において,「期待される信号」と実際に受信された信号とを比較することの技術的な意味が不明とはいえない。 したがって,この出願の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。 第6 むすび 以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-05-11 |
出願番号 | 特願2017-526503(P2017-526503) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) P 1 8・ 536- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼瀬 健太郎 |
特許庁審判長 |
稲葉 和生 |
特許庁審判官 |
野崎 大進 小田 浩 |
発明の名称 | ハプティック出力デバイスに関連するユーザ入力エレメントのフィードバック減少 |
代理人 | 藤田 和子 |