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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1374210
審判番号 不服2019-14983  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-08 
確定日 2021-06-07 
事件の表示 特願2017- 76985「タッチ表面の端部領域におけるタッチ接触の選択的拒否」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月 6日出願公開、特開2017-120673、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年12月26日(パリ条約による優先権主張 2008年1月4日 米国、2008年9月30日 米国)に出願された特願2008-336240号の一部を、平成24年11月30日に新たな特許出願とした特願2012-262208号の一部を、平成26年3月20日に新たな特許出願とした特願2014-57454号の一部を、平成29年4月7日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 4月28日 :手続補正書の提出
平成30年 6月29日付け:拒絶理由通知書
平成31年 1月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 6月28日付け:拒絶査定(原査定)
令和 元年11月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 元年12月20日 :審判請求書(方式)の提出
令和 2年10月30日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 3年 3月31日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年6月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし16に係る発明は、以下の引用文献A及びBに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
A 特開2000-163211号公報
B 国際公開第2007/076226号

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

[理由1]明確性要件
本願請求項2、3、7及び8に係る発明は、以下の点において明確ではないから、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていない。

・本願請求項2及び7に記載の「瞬間的位置」及び「平均的位置」は、明確ではない。
・本願請求項3及び8に記載の「質量中心」は、明確ではない。

[理由2]サポート要件
本願請求項3及び8に係る発明は、以下の点において発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

・本願請求項3及び8に記載の「質量中心」は、発明の詳細な説明に記載したものはない。

[理由3]進歩性
本願請求項1、3、6、8、11及び14に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
1 特開2000-47824号公報(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1ないし16に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明16」という。)は、令和3年3月31日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし16は以下のとおりの発明である。なお、下線は、補正された箇所を示す。

「 【請求項1】
タッチセンサパネル上の接触を選択的に拒否する方法であって、
前記タッチセンサパネル内の1つ又はそれ以上の縁部に沿った1つ又はそれ以上の領域を接触拒否領域として指定し、前記接触拒否領域は、特定の操作を実行するための予め定められた入力領域から独立しており、
前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で接触が開始されることが検出された第1の接触が、前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で特定の動き閾値を超える動きを有するものとして検出されない限り、操作を実行する入力として前記第1の接触を使用しないことにより前記第1の接触を無視する、方法。
【請求項2】
前記第1の接触の瞬間ポジションと平均ポジション値との間の差異が、前記特定の動き閾値を超えない限り、前記第1の接触を無視することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の接触の重心が、計算された重心から、閾値量よりも少なく動くとき、前記第1の接触を無視することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記タッチセンサパネルの前記接触拒否領域によって囲まれた主領域内の第2の接触を検出し、
前記第2の接触の動きが、前記第1の接触の動きを追跡している場合、前記第1及び第2の接触をジェスチャーの一部として認識することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記タッチセンサパネルの前記接触拒否領域によって囲まれた主領域内の第2の接触を検出し、
前記第2の接触の動きが前記第1の接触の動きと同期している場合、前記第1及び第2の接触をジェスチャーの一部として認識することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
タッチセンサパネル上の接触を選択的に拒否する装置であって、
前記タッチセンサパネル内の1つ又はそれ以上の縁部に沿った1つ又はそれ以上の領域を接触拒否領域として指定する手段であって、前記接触拒否領域は、特定の操作を実行するための予め定められた入力領域から独立している、手段と、
前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で接触が開始されることが検出された第1の接触が、前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で特定の動き閾値を超える動きを有するものとして検出されない限り、操作を実行する入力として前記第1の接触を使用しないことにより前記第1の接触を無視する手段と、を備える装置。
【請求項7】
前記第1の接触の瞬間ポジションと平均ポジション値との間の差異が、前記特定の動き閾値を超えない限り、前記第1の接触を無視する手段をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の接触の重心が、計算された重心から、閾値量よりも少なく動くとき、前記第1の接触を無視する手段をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記タッチセンサパネルの前記接触拒否領域によって囲まれた主領域内の第2の接触を検出する手段と、
前記第2の接触の動きが前記第1の接触の動きを追跡している場合、前記第1及び第2の接触をジェスチャーの一部として認識する手段と、をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記タッチセンサパネルの前記接触拒否領域によって囲まれた主領域内の第2の接触を検出する手段と、
前記第2の接触の動きが前記第1の接触の動きと同期している場合、前記第1及び第2の接触をジェスチャーの一部として認識する手段と、をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
タッチセンサパネル上の接触を選択的に拒否する方法であって、
前記タッチセンサパネル内の1つ又はそれ以上の縁部に沿った1つ又はそれ以上の領域を接触拒否領域として指定し、前記接触拒否領域は、特定の操作を実行するための予め定められた入力領域から独立しており、
前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で接触が開始されることが検出された第1の接触が、前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で特定の速度閾値を超える動きを有するものとして検出されない限り、操作を実行する入力として前記第1の接触を使用しないことにより前記第1の接触を無視する、方法。
【請求項12】
前記タッチセンサパネルの前記接触拒否領域によって囲まれた主領域内の第2の接触を検出し、
前記第2の接触の動きが前記第1の接触の動きを追跡している場合、前記第1及び第2の接触をジェスチャーの一部として認識することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記タッチセンサパネルの前記接触拒否領域によって囲まれた主領域内の第2の接触を検出し、
前記第2の接触の動きが前記第1の接触の動きと同期している場合、前記第1及び第2の接触をジェスチャーの一部として認識することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
タッチセンサパネル上の接触を選択的に拒否する装置であって、
前記タッチセンサパネル内の1つ又はそれ以上の縁部に沿った1つ又はそれ以上の領域を接触拒否領域として指定する手段であって、前記接触拒否領域は、特定の操作を実行するための予め定められた入力領域から独立している、手段と、
前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で接触が開始されることが検出された第1の接触が、前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で特定の速度閾値を超える動きを有するものとして検出されない限り、操作を実行する入力として前記第1の接触を使用しないことにより前記第1の接触を無視する手段と、を備える装置。
【請求項15】
前記タッチセンサパネルの前記接触拒否領域によって囲まれた主領域内の第2の接触を検出する手段と、
前記第2の接触の動きが前記第1の接触の動きを追跡している場合、前記第1及び第2の接触をジェスチャーの一部として認識する手段と、をさらに備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記タッチセンサパネルの前記接触拒否領域によって囲まれた主領域内の第2の接触を検出する手段と、
前記第2の接触の動きが前記第1の接触の動きと同期している場合、前記第1及び第2の接触をジェスチャーの一部として認識する手段と、をさらに備える、請求項14に記載の装置。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、強調のため当審が付与した。以降の記載においても同様。)

「【発明の名称】ジェスチャー処理装置及びジェスチャー処理方法」

「【0017】一方、図2に示すように、前記表示装置14の画面上に、その画面の各座標を検出するための透明なタブレット19が一体的に形成されていて、上記タブレット19は、図4(a)に示すように、碁盤の目状に各XY( 640×400 )座標が設定されていて、前記の表示装置14の文字配列、例えば図4(b)に示す縦40行、横80列に対応するようになっている。」

「【0023】次に、表示装置14上に表示されている文章の編集を容易にするためのジェスチャー機能について説明する。まず、図1に示すように、CRTや液晶等の表示装置14と、その表示面上に設けられた透明なタブレット19とが一体に構成されたディスプレイタブレット20上で、その表示装置14上で表示されている文章等の画像の所望の位置において、例えば編集記号を示すイメージを入力ペン12にて描画する。
【0024】そのような描画の各座標データは、上記タブレット19および入力ペン12に接続されている軌跡座標抽出部21にて順次検出される。このとき、上記座標データの内、上記入力ペン12とタブレット19とが最初に当接したXY座標であるペンダウン座標が、図5(a)に示すタブレット19におけるジェスチャー機能の有効領域19a内であるか無効領域19b内であるかを、上記軌跡座標抽出部21からの座標データが入力されるジェスチャー判定部22にて判定される。
【0025】さらに、上記ジェスチャー判定部22では、上記のペンダウン座標が有効であると判定されると、そのペンダウン座標が、表示装置14における各表示画面に応じて設定され、入力ペン12により選択等が実行される図5(b)に示すペンボタン領域19cであるか否かが判定される。
【0026】その後、上記ペンダウン座標が、前記の有効領域19a内であり、かつ、上記のペンボタン領域19cでないことが判定されると、上記ジェスチャー判定部22から座標データが入力される軌跡判定部23は、ジェスチャー機能のONを示すジェスチャー機能ONフラグをフラグ指示部24にセットする。
【0027】このフラグ指示部24に、ジェスチャー機能ONフラグがセットされていると、上記の描画軌跡を示す各座標データは、ペンダウン座標も含めて軌跡判定部23に接続されている座標データバッファ25にそれぞれ順次記憶される。
【0028】その上、上記フラグ指示部24にジェスチャー機能ONフラグがセットされていると、前記ジェスチャー判定部22は、入力される座標データが有効領域内であるか否か、およびペンボタン領域であるか否かの判定を停止して、入力された座標データを全て有効として軌跡判定部23に出力するようになっている。
【0029】上記の入力ペン12による描画が終了して、入力ペン12がタブレット19から離間するペンアップの状態となると、軌跡判定部23は上記のジェスチャー機能ONフラグがセットされていることを確認して、上記各軌跡座標データの全てが上記座標データバッファ25からジャスチャーコマンド判定部26に出力される。
【0030】なお、上記のように各座標データが全てジャスチャーコマンド判定部26に出力されると、上記フラグ指示部24によるジェスチャー機能ONフラグがリセットされるようになっている。
【0031】上記各軌跡座標データは、そのジャスチャーコマンド判定部26にて正規化されて図2に示す手書き認識辞書17に含まれる、例えば横書きジェスチャーコマンドテーブル27にそれぞれ格納されている各基本ストロークのデータと順次比較照合される。
【0032】このように上記構成では、上記フラグ指示部24にジェスチャー機能ONフラグがセットされていると、前記ジェスチャー判定部22は、入力される座標データが有効領域内であるか否か、およびペンボタン領域であるか否かの判定を停止して、入力された座標データを全て有効として軌跡判定部23に出力するようになっている。
【0033】このことから、図5(c)に示すように、ペンダウン座標が有効領域19a内であれば、入力ペン12による他の軌跡座標が、無効領域19bであっても、入力ペン12による描画が有効なものとなっていて、描画途中に誤って無効領域19bを通過させて、入力ペン12による描画を無効となり、再度入力しなおすという手間を省くことができる。ただし、図5(d)に示すように、ペンダウン座標が無効領域19bであると、エラー処理に移行し、ジェスチャー機能が停止する。」

「【0040】前記のジャスチャーコマンド判定部26は、上記の各基本ストロークとの比較照合の結果、前記の軌跡座標と最も近似する基本ストロークに対応したコマンドを、テキスト編集部1aに出力すると共に、供給された軌跡座標から上記コマンドにより処理される文字または文字列の座標情報、つまり表示装置14における位置情報を上記テキスト編集部1aに出力する。」

「【図5】



(2)引用発明
前記(1)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 ジェスチャー処理装置及びジェスチャー処理方法であって、
表示装置14上に表示されている文章の編集を容易にするためのジェスチャー機能について、
タブレット19は、碁盤の目状に各XY( 640×400 )座標が設定されていて、
CRTや液晶等の表示装置14と、その表示面上に設けられた透明なタブレット19とが一体に構成されたディスプレイタブレット20上で、その表示装置14上で表示されている文章等の画像の所望の位置において、例えば編集記号を示すイメージを入力ペン12にて描画すると、
そのような描画の各座標データは、上記タブレット19および入力ペン12に接続されている軌跡座標抽出部21にて順次検出され、このとき、上記座標データの内、上記入力ペン12とタブレット19とが最初に当接したXY座標であるペンダウン座標が、タブレット19におけるジェスチャー機能の有効領域19a内であるか無効領域19b内であるかを、上記軌跡座標抽出部21からの座標データが入力されるジェスチャー判定部22にて判定され、
上記のペンダウン座標が有効であると判定されると、上記の描画軌跡を示す各座標データは、ペンダウン座標も含めて軌跡判定部23に接続されている座標データバッファ25にそれぞれ順次記憶され、
前記ジェスチャー判定部22は、入力される座標データが有効領域内であるか否か、およびペンボタン領域であるか否かの判定を停止して、入力された座標データを全て有効として軌跡判定部23に出力し、
上記の入力ペン12による描画が終了して、入力ペン12がタブレット19から離間するペンアップの状態となると、上記各軌跡座標データの全てが上記座標データバッファ25からジャスチャーコマンド判定部26に出力され、
上記各軌跡座標データは、そのジャスチャーコマンド判定部26にて正規化されて手書き認識辞書17に含まれる、例えば横書きジェスチャーコマンドテーブル27にそれぞれ格納されている各基本ストロークのデータと順次比較照合され、
前記のジャスチャーコマンド判定部26は、上記の各基本ストロークとの比較照合の結果、前記の軌跡座標と最も近似する基本ストロークに対応したコマンドを、テキスト編集部1aに出力すると共に、供給された軌跡座標から上記コマンドにより処理される文字または文字列の座標情報、つまり表示装置14における位置情報を上記テキスト編集部1aに出力するものであり、
このことから、ペンダウン座標が有効領域19a内であれば、入力ペン12による他の軌跡座標が、無効領域19bであっても、入力ペン12による描画が有効なものとなっていて、描画途中に誤って無効領域19bを通過させて、入力ペン12による描画を無効となり、再度入力しなおすという手間を省くことができ、
ただし、ペンダウン座標が無効領域19bであると、エラー処理に移行し、ジェスチャー機能が停止する、
ジェスチャー処理装置及びジェスチャー処理方法。」

2 引用文献Aについて
(1)引用文献A記載事項
原査定の理由に引用された引用文献Aには、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0002】
【従来の技術】近年、パーソナルコンピュータ、特にノートブックタイプの携帯型パーソナルコンピュータ(以降、ノートブック型パーソナルコンピュータと称する)においては、ポインティングデバイスとして、ユーザがその表面に触れて操作する平面型入力装置が広く用いられている。
【0003】図11、図12、図13、および図14を参照して、このような従来の平面型入力装置の構造について説明する。先ず、図11に示すように、従来の平面型入力装置TSPcは、大別して、片面に座標検出センサ(図示せず)を有する回路基板101と表面シート102とを含む。平面型入力装置TSPcは、回路基板101の座標検出センサ面を設けた側に、表面シート102が重ねて構成される。
【0004】図12に示すように、平面型入力装置TSPcは、表面シート102の周辺を囲む入力操作面枠105をさらに有する。なお、入力操作面枠105で囲まれた表面シート102の内側は、ユーザが操作する入力操作面104である。このような状態で、平面型入力装置TSPcはノートブック型パーソナルコンピュータ(図示せず)の前面に取り付けられて使用されることが多い。」

「【0007】図12において、入力操作面104に設けられた第1の機能領域106および第2の機能領域107が点線で明示されている。左上隅の第1の機能領域106を指で触れると、回路基板101は接触点の絶対座標を検出して、ノートブック型パーソナルコンピュータのCPUに座標信号を送る。CPUは送られた座標信号がカーソル移動命令か、割当機能実効命令かを判断する。そして、CPUは、割当機能実効命令と判断した場合には、予め絶対座標に割り当てられている機能を実行し、ノートブック型パーソナルコンピュータの表示部に結果を表示する。
【0008】第1の機能領域106に割り当てられた機能が、例えばENTERキー入力機能であれば、第1の機能領域106に指を触れることによって、キーボードに設けられたENTERキーを押した場合と同じ命令が実行される。つまり、平面型入力装置の操作途中でENTERキーを押す必要のある場合にも、平面型入力装置の入力操作面104上で指を移動させるだけで、ENTERキーを押すのと同じ入力操作ができるので便利である。同様に、例えば第2の機能領域107に上下スクロール機能を割り当てておけば、第2の機能領域107に指を触れ、指を上下に滑らすことで上下スクロールを実現できる。」

なお、特に【0008】を参酌すると、引用文献Aには、平面型入力装置を用いた入力方法が記載されているといえる。

「【図12】



(2)引用発明A
前記(1)より、引用文献Aには、次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。

「 ポインティングデバイスとして、ユーザがその表面に触れて操作する平面型入力装置を用いた入力方法において、
平面型入力装置TSPcは、
片面に座標検出センサを有する回路基板101と表面シート102とを含み、
表面シート102の周辺を囲む入力操作面枠105をさらに有し、なお、入力操作面枠105で囲まれた表面シート102の内側は、ユーザが操作する入力操作面104であり、
入力操作面104には、第1の機能領域106および第2の機能領域107が設けられ、
第1の機能領域106に割り当てられた機能が、例えばENTERキー入力機能であれば、第1の機能領域106に指を触れることによって、キーボードに設けられたENTERキーを押した場合と同じ命令が実行され、第2の機能領域107に上下スクロール機能を割り当てておけば、第2の機能領域107に指を触れ、指を上下に滑らすことで上下スクロールを実現できる入力方法。」

3 引用文献Bについて
原査定の理由に引用された引用文献Bには、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0055] Figure 2 is a flow diagram illustrating an embodiment of a method 200 of scrolling through a list. Movement of a point of contact corresponding to a sweeping motion or gesture by a user of a touch-sensitive display is determined (208). A determination is made if the movement of the point of contact corresponds to a displacement greater than a pre-determined magnitude (210). A list of items on the touch-sensitive display is scrolled in response to the movement (212). A direction of the scrolling may reverse when the scrolled list intersects a virtual boundary corresponding to a terminus of the list (214). In other embodiments, the method 200 may include fewer operations or additional operations. In addition, two or more operations may be combined and/or an order of the operations may be changed.
[0056] Determining if the point of contact corresponds to a displacement greater than the pre-determined value (210) allows small variations, such as less than 0.5, 1 or 2 mm, in the point of contact to occur without scrolling the list of items (212). For example, when the user taps on the touch sensitive screen there may be small, unintentional changes in the point of contact. When the movement corresponds to a displacement greater than the predetermined magnitude, the scrolling (212) commences smoothly. For example, an offset in the point of contact may be included when scrolling through the list of items. The offset corresponds to the pre-determined magnitude of the displacement. The offset may prevent or reduce an abrupt jump or discontinuity in a displayed image corresponding to the list.」
[当審訳]
「[0055] 図2は、リストをスクロールする方法200の実施形態を示すフロー図である。タッチセンシティブディスプレイのユーザによるスイーピングの動き又はジェスチャーに対応する接触ポイントの動きが測定される(208)。接触ポイントの動きが、事前に設定した大きさよりも大きな変位に相当するかどうかの判定が行われる(210)。タッチセンシティブディスプレイ上の項目リストは、この動きに応答してスクロールされる(212)。スクロールされたリストが、リストの終端に一致する仮想境界と交わった場合、スクローリングの方向は逆向きになる(214)。別の実施形態では、方法200は、より少ない操作又は追加の操作を含むことができる。さらに、2又はそれ以上の操作を組み合わせる、及び/又は操作の順序を変えることができる。
[0056] 接触ポイントが、事前に設定した値よりも大きな変位に相当するかどうかを判定すること(210)により、項目リストをスクロールせずに、接触ポイントにおいて0.5mm、1mm又は2mmよりも小さいような小さな変動を発生させることが可能となる(212)。例えば、ユーザがタッチセンシティブスクリーンをタップしたときに、接触ポイントにおいて小さな意図的でない変化が発生する可能性がある。この動きが事前に設定した大きさよりも大きな変位に相当する場合、スムーズにスクローリングが開始する(212)。例えば、項目リストをスクロールするときに、接触ポイントにおけるオフセット値を含むことができる。このオフセット値は事前に設定した変位の大きさと一致する。このオフセット値は、リストに対応する表示された画像における不意のジャンプ又は途切れを防ぐか、或いは減少させることができる。」

よって、引用文献Bには、次の技術事項(以下、「引用文献B記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「 タッチセンシティブディスプレイのユーザによるスイーピングの動き又はジェスチャーに対応する接触ポイントの動きが測定され、接触ポイントの動きが、事前に設定した大きさよりも大きな変位に相当するかどうかの判定が行われ、
接触ポイントが、事前に設定した値よりも大きな変位に相当するかどうかを判定することにより、項目リストをスクロールせずに、接触ポイントにおいて0.5mm、1mm又は2mmよりも小さいような小さな変動を発生させることが可能となり、
接触ポイントの動きが事前に設定した大きさよりも大きな変位に相当する場合、スムーズにスクローリングが開始すること。」

第6 当審拒絶理由について
1 理由1(明確性要件)及び理由2(サポート要件)について
本件補正により、本件補正前の請求項2及び7に記載の「瞬間的位置」及び「平均的位置」はそれぞれ、「瞬間的ポジション」及び「平均的ポジション値」に補正され、本願明細書の【0018】の記載と整合するように明確となった。
また、本件補正により、本件補正前の請求項3及び8に記載の「質量中心」は、「重心」に補正され、本願明細書の【0018】の記載と整合するとともに、明確となった。

よって、当審拒絶理由通知の理由1(明確性要件)及び理由2(サポート要件)は、解消した。

2 理由3(進歩性)について
(1)本願発明1について
ア 対比
請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「タブレット19」及び「ディスプレイタブレット20」は、本願発明1の「タッチセンサパネル」に相当する。また、引用発明において、「タブレット19」に「入力ペン12」が「当接」すること、及び、「ディスプレイタブレット20上」で「入力ペン12にて描画」がなされることは、本願発明1の「タッチセンサパネル上の接触」に相当する。

(イ)引用発明は、概略、「上記入力ペン12とタブレット19とが最初に当接したXY座標である」「ペンダウン座標が有効であると判定されると」「入力ペン12」により「入力された座標データを全て有効として軌跡判定部23に出力し」「上記各軌跡座標データの全てが上記座標データバッファ25からジャスチャーコマンド判定部26に出力され」「ジャスチャーコマンド判定部26にて」「上記各軌跡座標データは、」「各基本ストロークのデータと順次比較照合され」「前記の軌跡座標と最も近似する基本ストロークに対応したコマンドを、テキスト編集部1aに出力する」のに対して、「ペンダウン座標が無効領域19bであると、エラー処理に移行し、ジェスチャー機能が停止する」ものである。
すなわち、引用発明は、「ペンダウン座標」が有効である場合は入力ペン12による描画に基づくジェスチャ処理(機能)を実行し、「ペンダウン座標」が無効領域19bにある(無効である)場合はジェスチャ処理(機能)を実行しないというものであるから、選択的に、入力ペン12による描画すなわち「接触」を処理したり処理しなかったりするものであり、処理しないことは処理を「拒否」することに他ならない。
よって、引用発明の「ジェスチャ処理方法」は、本願発明1の「タッチセンサパネル上の接触を選択的に拒否する方法」に相当するものである。

(ウ)引用発明は、
「 このことから、ペンダウン座標が有効領域19a内であれば、入力ペン12による他の軌跡座標が、無効領域19bであっても、入力ペン12による描画が有効なものとなっていて、描画途中に誤って無効領域19bを通過させて、入力ペン12による描画を無効となり、再度入力しなおすという手間を省くことができ、
ただし、ペンダウン座標が無効領域19bであると、エラー処理に移行し、ジェスチャー機能が停止する、」
との構成を備えている。ここで、引用文献1の図5(c)及び図5(d)から、「無効領域19b」が、「タブレット19」及び「ディスプレイタブレット20」の下方の縁部に沿った1つの領域であることが見て取れる。
また、引用発明の「無効領域1b」は、上述のとおり、「ペンダウン座標」が当該領域であると、エラー処理に以降して、入力12ペンによる描画に基づくジェスチャ処理(機能)を停止するのであるから、「ペンダウン座標」が「有効領域19a」である場合を除いて、原則的には、接触が拒否される領域、すなわち、「接触拒否領域」といい得るものである。
また、引用発明は、「タブレット19は、碁盤の目状に各XY( 640×400 )座標が設定されていて」との構成を備えることからすれば、「タブレット19」の「各XY( 640×400 )座標」の中から、「有効領域19a」と「無効領域19b」とが指定されていることは自明である。
そうすると、引用発明は、本願発明1の「前記タッチセンサパネル内の1つ又はそれ以上の縁部に沿った1つ又はそれ以上の領域を接触拒否領域として指定し」に含まれる構成を備える。

(エ)引用発明の「文章の編集」(「テキスト編集」)ないしそのための「ジャスチャーコマンド」は、本願発明1の「特定の操作」であり、引用発明の「有効領域19a」は、当該「特定の操作」を実行するための予め定められた入力領域といい得るものである。
また、引用文献1の図5(c)及び図5(d)から、「無効領域19b」と「有効領域19a」とは区別された区画として設けられているから、「無効領域19b」は「有効領域19a」から独立しているといえる。
よって、引用発明は、本願発明1の「前記接触拒否領域は、特定の操作を実行するための予め定められた入力領域から独立しており」との構成を備える。

(オ)引用発明の
「ペンダウン座標が有効領域19a内であれば、入力ペン12による他の軌跡座標が、無効領域19bであっても、入力ペン12による描画が有効なものとなっていて、描画途中に誤って無効領域19bを通過させて、入力ペン12による描画を無効となり、再度入力しなおすという手間を省くことができ、
ただし、ペンダウン座標が無効領域19bであると、エラー処理に移行し、ジェスチャー機能が停止する」
との構成において、「ペンダウン座標」が「無効領域19b」である「入力ペン12」による「描画」は、本願発明1の「前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で接触が開始されることが検出された第1の接触」に相当する。
また、引用発明において、「ペンダウン座標」が「無効領域19b」である「入力ペン12」による「描画」をした場合に、「エラー処理に移行し、ジェスチャー機能を停止する」ことは、当該「描画」が「無効」となるものと理解することができる。また、「描画」が「無効」となることは、当該「描画」を、「ジェスチャ機能」のための「操作を実行する入力」として使用しないことにより当該「描画」を「無視」することに他ならない。
よって、引用発明と、本願発明1の「前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で接触が開始されることが検出された第1の接触が、前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で特定の動き閾値を超える動きを有するものとして検出されない限り、操作を実行する入力として前記第1の接触を使用しないことにより前記第1の接触を無視する」とは、「前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で接触が開始されることが検出された第1の接触が、操作を実行する入力として前記第1の接触を使用しないことにより前記第1の接触を無視する」点において共通する。

イ 一致点・相違点
以上から、本願発明1と引用発明とは、以下の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 タッチセンサパネル上の接触を選択的に拒否する方法であって、
前記タッチセンサパネル内の1つ又はそれ以上の縁部に沿った1つ又はそれ以上の領域を接触拒否領域として指定し、前記接触拒否領域は、特定の操作を実行するための予め定められた入力領域から独立しており、
前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で接触が開始されることが検出された第1の接触が、操作を実行する入力として前記第1の接触を使用しないことにより前記第1の接触を無視する、方法。」

[相違点]
<相違点1>
本願発明1は、「第1の接触を無視する」ことの例外条件として、「前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で特定の動き閾値を超える動きを有するものとして検出されない」ことを含むのに対し、引用発明は、このような例外条件について特定していない点。

ウ 相違点についての判断
相違点1について検討するに、引用発明は、「ただし、ペンダウン座標が無効領域19bであると、エラー処理に移行し、ジェスチャー機能が停止する」との構成を備えることから、「ペンダウン座標が無効領域19bである」接触(第1の接触)については、例外なく無視することを前提としており、その例外を設けることを想定していない。
なお、引用発明は、「ペンダウン座標が有効領域19a内であれば、入力ペン12による他の軌跡座標が、無効領域19bであっても、入力ペン12による描画が有効なものとなっていて、描画途中に誤って無効領域19bを通過させて、入力ペン12による描画を無効となり、再度入力しなおすという手間を省くことができ」との構成を備えるが、当該構成は、「ペンダウン座標が有効領域19a内」である接触について、「描画途中に誤って無効領域19bを通過」した場合であっても例外的に当該描画を有効とするものであるから、本願発明1とは前提が異なる。
また、本願優先日前に、相違点1に係る本願発明1の構成が周知技術ないし技術常識であったともいえない。
よって、本願発明1は、当業者であっても引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5も、相違点1に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本願発明6ないし10について
本願発明6は、本願発明1を装置として特定したものであり、また、本願発明7ないし10は、本願発明6の構成をすべて備えるものである。
よって、本願発明6ないし10は、相違点1に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本願発明11について
本願発明6と引用発明とを対比すると、一致点は、前記(1)イの[一致点]と同じであり、相違点は、次のものである。

<相違点1’>
本願発明11は、「第1の接触を無視する」ことの例外条件として、「前記1つ又はそれ以上の接触拒否領域内で特定の速度閾値を超える動きを有するものとして検出されない」ことを含むのに対し、引用発明は、このような例外条件について特定していない点。

上記相違点1’について検討するに、引用発明は、「ただし、ペンダウン座標が無効領域19bであると、エラー処理に移行し、ジェスチャー機能が停止する」との構成を備えることから、「ペンダウン座標が無効領域19bである」接触(第1の接触)については、例外なく無視することを前提としており、その例外を設けることを想定していない。
なお、引用発明は、「ペンダウン座標が有効領域19a内であれば、入力ペン12による他の軌跡座標が、無効領域19bであっても、入力ペン12による描画が有効なものとなっていて、描画途中に誤って無効領域19bを通過させて、入力ペン12による描画を無効となり、再度入力しなおすという手間を省くことができ」との構成を備えるが、当該構成は、「ペンダウン座標が有効領域19a内」である接触について、「描画途中に誤って無効領域19bを通過」した場合であっても例外的に当該描画を有効とするものであるから、本願発明11とは前提が異なる。
また、本願優先日前に、相違点1’に係る本願発明11の構成が周知技術ないし技術常識であったともいえない。
よって、本願発明11は、当業者であっても引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本願発明12及び13について
本願発明12及び13は、相違点1’に係る本願発明11の構成を備えるものであるから、本願発明11と同じ理由により、当業者であっても引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)請求項14ないし16について
本願発明14は、本願発明11を装置として特定したものであり、また、本願発明15及び16は、本願発明14の構成をすべて備えるものである。
よって、本願発明14ないし16は、相違点1’に係る本願発明11の構成を備えるものであるから、本願発明11と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

以上のとおりであるから、当審拒絶理由の理由3(進歩性)は、解消した。

第7 原査定についての判断
引用発明A及び引用文献B記載事項は、そもそも本願発明1ないし16の「接触拒否領域」に相当する構成を備えないため、引用発明Aに、引用文献Bに記載された事項を組み合わせても、本願発明1ないし16に係る構成は至らない。
なお、引用文献3記載事項は、「接触ポイントが、事前に設定した値よりも大きな変位に相当するかどうかを判定することにより、項目リストをスクロールせずに、接触ポイントにおいて0.5mm、1mm又は2mmよりも小さいような小さな変動を発生させることが可能となり」とあることから、接触ポイントが事前に設定した値よりも小さい変位である場合、「スクロール」を実行しないだけであり、「0.5mm、1mm又は2mmよりも小さいような小さな変動を発生させる」ことを前提としている以上、「第1の接触を使用しないこと」により「接触を無視する」処理を行っているとはいえない。

よって、本願発明1ないし16は、当業者であっても、原査定における引用文献A及びBに記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-05-18 
出願番号 特願2017-76985(P2017-76985)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 酒井 優一  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 太田 龍一
林 毅
発明の名称 タッチ表面の端部領域におけるタッチ接触の選択的拒否  
代理人 岩崎 吉信  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 西島 孝喜  
代理人 那須 威夫  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 大塚 文昭  
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