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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02M
管理番号 1374222
審判番号 不服2020-15508  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-10 
確定日 2021-06-01 
事件の表示 特願2019- 27005「電力変換装置、発電電動機の制御装置、および、電動パワーステアリング装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月31日出願公開、特開2020-137233、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成31年2月19日の出願であって,令和2年3月6日付けで拒絶の理由が通知され,同年5月14日に意見書とともに手続補正書が提出され,同年9月10日付けで拒絶査定(謄本送達日同年9月23日)がなされ,これに対して同年11月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年12月11日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,令和3年1月18日に上申書が提出されたものである。


第2 原査定の概要

原査定(令和2年9月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

4.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1について

・請求項 1-21
請求項1には、「前記第2の3相巻線の1相の前記第2印加電圧を、前記第2の3相巻線の1相との位相差が小さい組み合わせとなる前記第1の3相巻線の1相の搬送波信号と異なる搬送波信号と比較し、前記第2の3相巻線の他の1相の前記第2印加電圧を、前記第1の3相巻線の他の1相の搬送波信号と異なる搬送波信号と比較し」との記載があり、また、請求項10には、「前記第2の3相巻線の1相の前記第2印加電圧を、前記第2の3相巻線の1相との位相差が小さい組み合わせとなる前記第1の3相巻線の1相の搬送波信号と同じ搬送波信号と比較し、前記第2の3相巻線の他の1相の前記第2印加電圧を、前記第1の3相巻線の他の1相の搬送波信号と同じ搬送波信号と比較し」との記載があることから、請求項1、10に係る発明は、第2の3相巻線の1相の第2印加電圧と比較される搬送波信号の決定を、第2の3相巻線の1相と第1の3相巻線の1相との間の位相差に基づいて行うという構成を開示するものである。
しかしながら、発明の詳細な説明に記載された搬送波信号の決定方法(特に図16、31を参照)は、同一の電力変換器に対応する3相巻線を流れる電流と電圧指令とに基づいて搬送波信号の決定を行うというものであって、異なる電力変換器に対応する相間の物理量の差である、第2の3相巻線の1相と第1の3相巻線の1相との間の位相差に基づくものではないし、出願時の技術常識に照らしても、当該位相差に基づかずに第2の3相巻線の1相と第1の3相巻線の1相の位相差が小さい組み合わせとなるように、第2の3相巻線の1相の第2印加電圧と比較される搬送波信号を選択することが可能であるということもできない。
したがって、出願時の技術常識に照らしても、請求項1、10に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
よって、請求項1、10及びこれらを引用する請求項2-9、11-21に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、依然として特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

なお、発明の詳細な説明の段落[0008]には、請求項1の記載と同一の内容が記載されているものの、当該記載により請求項1の上記記載に対応する事項が記載されているものとは認められない。

●理由4について

・請求項 1,6-10,15-21
・引用文献等 1-3

<引用文献等一覧>
1.特開2006-197707号公報
2.特許第4941686号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平7-147782号公報(周知技術を示す文献)


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は,特許法17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1及び10に「前記第1の3相巻線と前記第2の3相巻線との位相差は既知であり、」という事項を追加する補正は,当初明細書の段落【0014】及び図2,並びに同【0100】及び図37に,第1の3相巻線U1,V1,W1と第2の3相巻線U2,V2,W2との位相差が零のものと30degのものがそれぞれ記載されているから,当該補正は新規事項を追加するものではなく,また,「第1の3相巻線」及び「第2の3相巻線」につき,限定的に減縮するものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,以下,第4?第6に示すように,補正後の請求項1?21に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明

本願請求項1?21に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明21」という。)は,令和2年11月10日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?21に記載された,次のとおりのものと認める。(下線は,補正箇所を示す。)

「 【請求項1】
直流電源からの直流電圧に基づいて、交流回転機の2つの3相巻線のうちの第1の3相巻線に電圧を印加する第1の電力変換器と、
前記直流電圧に基づいて、前記交流回転機の2つの3相巻線のうちの第2の3相巻線に電圧を印加する第2の電力変換器と、
外部から入力される制御指令に基づいて前記第1の3相巻線の各相に対する第1の電圧指令を演算するとともに、前記第1の電圧指令に基づいて前記第1の3相巻線の各相に印加する第1印加電圧を演算し、各前記第1印加電圧と搬送波信号とを比較することにより、前記第1の電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力するとともに、前記制御指令に基づいて前記第2の3相巻線の各相に対する第2の電圧指令を演算するとともに、前記第2の電圧指令に基づいて前記第2の3相巻線の各相に印加する第2印加電圧を演算し、各前記第2印加電圧と前記搬送波信号とを比較することにより、前記第2の電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力する制御部と
を備え、
前記搬送波信号は、第1搬送波信号と、前記第1搬送波信号と180deg位相が異なる第2搬送波信号とを含み、
前記第1の3相巻線と前記第2の3相巻線との位相差は既知であり、
前記制御部は、
前記第1の3相巻線の各相に対する前記第1の電圧指令を大きい順に並べたときのそれぞれに対応する相を、順に、第1電圧最大相、第1電圧中間相、第1電圧最小相としたとき、
前記第1の3相巻線を流れる電流のうちで当該電流の絶対値が最大となる電流絶対値最大相が、前記第1電圧最大相と一致している場合に、当該電流絶対値最大相に対応する第1印加電圧を、前記搬送波信号の最大値に一致させる上べた二相変調を実施し、
前記電流絶対値最大相が前記第1電圧最小相と一致している場合に、当該電流絶対値最大相に対応する第1印加電圧を、前記搬送波信号の最小値に一致させる下べた二相変調を実施し、
前記上べた二相変調または前記下べた二相変調を実施した相以外の2相のうち、1相の前記第1印加電圧を第2搬送波信号と比較し、他の1相の前記第1印加電圧を前記第1搬送波信号と比較して、前記第1の電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力し、
前記第2の3相巻線の各相に対する前記第2の電圧指令を大きい順に並べたときのそれぞれに対応する相を、順に、第2電圧最大相、第2電圧中間相、第2電圧最小相としたとき、
前記第2の3相巻線を流れる電流のうちで当該電流の絶対値が最大となる電流絶対値最大相が、前記第2電圧最大相と一致している場合に、当該電流絶対値最大相に対応する第2印加電圧を、前記搬送波信号の最大値に一致させる上べた二相変調を実施し、
前記電流絶対値最大相が前記第2電圧最小相と一致している場合に、当該電流絶対値最大相に対応する第2印加電圧を、前記搬送波信号の最小値に一致させる下べた二相変調を実施し、
前記第1の3相巻線の前記上べた二相変調または前記下べた二相変調を実施した相以外の2相および前記第2の3相巻線の前記上べた二相変調または前記下べた二相変調を実施した相以外の2相のうち、前記第2の3相巻線の1相の前記第2印加電圧を、前記第2の3相巻線の1相との位相差が小さい組み合わせとなる前記第1の3相巻線の1相の搬送波信号と異なる搬送波信号と比較し、前記第2の3相巻線の他の1相の前記第2印加電圧を、前記第1の3相巻線の他の1相の搬送波信号と異なる搬送波信号と比較して、前記第2の電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1の3相巻線の各相のうち、前記電流絶対値最大相が、前記第1電圧中間相と一致している場合に、
前記上べた二相変調または前記下べた二相変調を実施した相以外の2相の前記第1印加電圧を、前記第1搬送波信号および前記第2搬送波信号のいずれか一方の同一の搬送波信号と比較する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1の3相巻線の各相のうち、前記電流絶対値最大相が、前記第1電圧中間相と一致している場合に、
前記第1電圧中間相の前記第1の電圧指令が正のときに上べた二相変調を実施するとともに、
前記第1電圧中間相の前記第1の電圧指令が負のときに下べた二相変調を実施する、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2の3相巻線の各相のうち、前記電流絶対値最大相が、前記第2電圧中間相と一致している場合に、
前記上べた二相変調または前記下べた二相変調を実施した相以外の2相の前記第2印加電圧を、前記第1搬送波信号および前記第2搬送波信号のいずれか一方の同一の搬送波信号と比較する、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2の3相巻線の各相のうち、前記電流絶対値最大相が、前記第2電圧中間相と一致している場合に、
前記第2電圧中間相の前記第2の電圧指令が正のときに上べた二相変調を実施するとともに、
前記第2電圧中間相の前記第2の電圧指令が負のときに下べた二相変調を実施する、
請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1の3相巻線と前記第2の3相巻線との位相差は零である、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1の電圧指令と前記第2の電圧指令との位相差は零である、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1の3相巻線と前記第2の3相巻線との位相差は30degである、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第1の電圧指令と前記第2の電圧指令との位相差は30degである、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
直流電源からの直流電圧に基づいて、交流回転機の2つの3相巻線のうちの第1の3相巻線に電圧を印加する第1の電力変換器と、
前記直流電圧に基づいて、前記交流回転機の2つの3相巻線のうちの第2の3相巻線に電圧を印加する第2の電力変換器と、
外部から入力される制御指令に基づいて前記第1の3相巻線の各相に対する第1の電圧指令を演算するとともに、前記第1の電圧指令に基づいて前記第1の3相巻線の各相に印加する第1印加電圧を演算し、各前記第1印加電圧と搬送波信号とを比較することにより、前記第1の電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力するとともに、前記制御指令に基づいて前記第2の3相巻線の各相に対する第2の電圧指令を演算するとともに、前記第2の電圧指令に基づいて前記第2の3相巻線の各相に印加する第2印加電圧を演算し、各前記第2印加電圧と前記搬送波信号とを比較することにより、前記第2の電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力する制御部と
を備え、
前記搬送波信号は、第1搬送波信号と、前記第1搬送波信号と180deg位相が異なる第2搬送波信号とを含み、
前記第1の3相巻線と前記第2の3相巻線との位相差は既知であり、
前記制御部は、
前記第1の3相巻線の各相に対する前記第1の電圧指令を大きい順に並べたときのそれぞれに対応する相を、順に、第1電圧最大相、第1電圧中間相、第1電圧最小相としたとき、
前記第1の3相巻線を流れる電流のうちで当該電流の絶対値が最大となる電流絶対値最大相が、前記第1電圧最大相と一致している場合に、当該電流絶対値最大相に対応する第1印加電圧を、前記搬送波信号の最大値に一致させる上べた二相変調を実施し、
前記電流絶対値最大相が前記第1電圧最小相と一致している場合に、当該電流絶対値最大相に対応する第1印加電圧を、前記搬送波信号の最小値に一致させる下べた二相変調を実施し、
前記上べた二相変調または前記下べた二相変調を実施した相以外の2相のうち、1相の前記第1印加電圧を第2搬送波信号と比較し、他の1相の前記第1印加電圧を前記第1搬送波信号と比較して、前記第1の電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力し、
前記第2の3相巻線の各相に対する前記第2の電圧指令を大きい順に並べたときのそれぞれに対応する相を、順に、第2電圧最大相、第2電圧中間相、第2電圧最小相としたとき、
前記第2の3相巻線を流れる電流のうちで当該電流の絶対値が最大となる電流絶対値最大相が、前記第2電圧最大相と一致している場合に、当該電流絶対値最大相に対応する第2印加電圧を、前記搬送波信号の最大値に一致させる上べた二相変調を実施し、
前記電流絶対値最大相が前記第2電圧最小相と一致している場合に、当該電流絶対値最大相に対応する第2印加電圧を、前記搬送波信号の最小値に一致させる下べた二相変調を実施し、
前記第1の3相巻線の前記上べた二相変調または前記下べた二相変調を実施した相以外の2相および前記第2の3相巻線の前記上べた二相変調または前記下べた二相変調を実施した相以外の2相のうち、前記第2の3相巻線の1相の前記第2印加電圧を、前記第2の3相巻線の1相との位相差が小さい組み合わせとなる前記第1の3相巻線の1相の搬送波信号と同じ搬送波信号と比較し、前記第2の3相巻線の他の1相の前記第2印加電圧を、前記第1の3相巻線の他の1相の搬送波信号と同じ搬送波信号と比較して、前記第2の電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力する、
電力変換装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記第1の3相巻線の各相のうち、前記電流絶対値最大相が、前記第1電圧中間相と一致している場合に、
前記上べた二相変調または前記下べた二相変調を実施した相以外の2相の前記第1印加電圧を、前記第1搬送波信号および前記第2搬送波信号のいずれか一方の同一の搬送波信号と比較する、
請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記第1の3相巻線の各相のうち、前記電流絶対値最大相が、前記第1電圧中間相と一致している場合に、
前記第1電圧中間相の前記第1の電圧指令が正のときに上べた二相変調を実施するとともに、
前記第1電圧中間相の前記第1の電圧指令が負のときに下べた二相変調を実施する、
請求項11に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記第2の3相巻線の各相のうち、前記電流絶対値最大相が、前記第2電圧中間相と一致している場合に、
前記上べた二相変調または前記下べた二相変調を実施した相以外の2相の前記第2印加電圧を、前記第1搬送波信号および前記第2搬送波信号のいずれか一方の同一の搬送波信号と比較する、
請求項10から12までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記第2の3相巻線の各相のうち、前記電流絶対値最大相が、前記第2電圧中間相と一致している場合に、
前記第2電圧中間相の前記第2の電圧指令が正のときに上べた二相変調を実施するとともに、
前記第2電圧中間相の前記第2の電圧指令が負のときに下べた二相変調を実施する、
請求項13に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記第1の3相巻線と前記第2の3相巻線との位相差は30degである、
請求項10から14までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項16】
前記第1の電圧指令と前記第2の電圧指令との位相差は30degである、
請求項10から14までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項17】
前記第1の電力変換器の前記スイッチング素子は、高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とを含み、
前記第2の電力変換器の前記スイッチング素子は、高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とを含み、
前記制御部は、
前記第1の電力変換器の前記高電位側スイッチング素子および前記低電位側スイッチング素子のうちの少なくとも1つが開放故障したときに、前記第1の電力変換器の前記高電位側スイッチング素子および前記低電位側スイッチング素子をオフし、
前記第2の電力変換器の前記高電位側スイッチング素子および前記低電位側スイッチング素子のうちの少なくとも1つが開放故障したときに、前記第2の電力変換器の前記高電位側スイッチング素子および前記低電位側スイッチング素子をオフする、
請求項1から16までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項18】
前記第1の電力変換器の前記スイッチング素子は、高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とを含み、
前記第2の電力変換器の前記スイッチング素子は、高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とを含み、
前記制御部は、
前記第1の電力変換器の前記高電位側スイッチング素子および前記低電位側スイッチング素子のうちの少なくとも1つが短絡故障したときに、故障したスイッチング素子と同電位側の全てのスイッチング素子をオンするとともに、反対側の全てのスイッチング素子をオフし、
前記第2の電力変換器の前記高電位側スイッチング素子および前記低電位側スイッチング素子のうちの少なくとも1つが短絡故障したときに、故障したスイッチング素子と同電位側の全てのスイッチング素子をオンするとともに、反対側の全てのスイッチング素子をオフする、
請求項1から17までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項19】
前記制御部は、
前記第1の3相巻線の各相において、360degのうち、連続する180deg間で前記第1搬送波信号を選択し、残りの連続する180deg間で前記第2搬送波信号を選択する、または、
前記第2の3相巻線の各相において、360degのうち、連続する180deg間で前記第1搬送波信号を選択し、残りの連続する180deg間で前記第2搬送波信号を選択する、
請求項1から18までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか1項に記載の電力変換装置を備えた発電電動機の制御装置。
【請求項21】
請求項1から19までのいずれか1項に記載の電力変換装置を備えた電動パワーステアリング装置。」


第5 引用例

1 引用例1に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2006-197707号公報(平成18年7月27日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「【0031】
図1(a)に示すように、インバータ装置1は、入力されるドライブ信号D1?D6に基づいてオン、オフすることにより直流電源41の直流電力を交流に変換し、3相モータ42を駆動させる複数のスイッチング素子2?7と、シャント抵抗8(検出手段)と、シャント抵抗8に印加される電圧に基づいてドライブ信号D1?D6を出力する制御装置9(制御手段)とを備えて構成されている。」

B 「【0034】
図1(b)は、本発明の実施形態の制御装置9を示す図である。
図1(b)に示すように、制御装置9は、ドライブ信号出力回路10と、切替えタイミング制御回路11とを備えて構成されている。
【0035】
上記ドライブ信号出力回路10は、例えば、IC(Integrated Circuit)などで構成され、シャント抵抗8に印加される電圧とドライブ信号D1?D6のそれぞれのオンタイミングとに基づいて、3相モータ42の各相の電流値を出力する。また、ドライブ信号出力回路10は、切替えタイミング制御回路11から出力される出力電圧パターン(3相モータ42の各相の目標出力電圧を示す指令値)及び切替信号に基づいて、ドライブ信号D1?D6を出力する。そして、スイッチング素子2?7は、ドライブ信号D1?D6に基づいてオン、オフすることにより、3相モータ42の各相に互いに位相が120度づつ異なる交流電力を供給し3相モータ42を駆動させる。
【0036】
上記切替えタイミング制御回路11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などで構成され、ドライブ信号出力回路10から出力される各相の電流値に基づいて、3相モータ42の各相の出力電圧パターンを推定する。また、切替えタイミング制御回路11は、ドライブ信号出力回路10から出力される各相の電流値に基づいて、各相の出力電圧パターンに対応する切替信号を出力する。
【0037】
上記切替信号には、各相の出力電圧パターンと比較される三角基準波が示される。例えば、切替信号には、U相の出力電圧パターンと三角基準波Aとを比較し、V相の出力電圧パターンと三角基準波Bとを比較し、W相の出力電圧パターンと三角基準波Aとを比較する旨が示される。
【0038】
次に、ドライブ信号出力回路10の動作を説明する。なお、ドライブ信号出力回路10は、互いに位相が180度異なる2つの三角基準波A及びBを使用して2相変調方式を行うことにより、ドライブ信号D1?D6を出力するものとする。また、三角基準波A及びBは、互いに振幅と周波数が同じものとする。」

C 「【0040】
また、ドライブ信号出力回路10は、各相の出力電圧パターンと三角基準波A及びBとをそれぞれ比較し、ドライブ信号D1?D6を出力する。例えば、各相の出力電圧パターンと三角基準波A及びBとを比較することにより、ドライブ信号D1、D3、及びD5を生成し、デッドタイムを設けてドライブ信号D1、D3、及びD5を反転させることによりドライブ信号D2、D4、及びD6を生成してもよい。」

D 「

図1」

2 引用発明

(1)上記記載事項Aの,「インバータ装置1は、入力されるドライブ信号D1?D6に基づいてオン、オフすることにより直流電源41の直流電力を交流に変換し、3相モータ42を駆動させる複数のスイッチング素子2?7と、シャント抵抗8(検出手段)と、シャント抵抗8に印加される電圧に基づいてドライブ信号D1?D6を出力する制御装置9(制御手段)とを備えて構成され」との記載から,引用例1には,“入力されるドライブ信号D1?D6に基づいてオン,オフすることにより前記直流電源の直流電力を交流に変換し,3相モータを駆動させる複数のスイッチング素子2?7と,シャント抵抗8(検出手段)と,シャント抵抗8に印加される電圧に基づいてドライブ信号D1?D6を出力する制御装置9(制御手段)とを備えて構成されるインバータ装置”が記載されているといえる。

(2)上記記載事項Bの「制御装置9は、ドライブ信号出力回路10と、切替えタイミング制御回路11とを備え」との記載,および,上記(1)の認定事項から,引用例1には,“前記制御装置9は,ドライブ信号出力回路10と,切替えタイミング制御回路11とを備え”ることが記載されているといえる。
同じく上記記載事項Bの「上記切替えタイミング制御回路11は…(中略)…ドライブ信号出力回路10から出力される各相の電流値に基づいて、3相モータ42の各相の出力電圧パターンを推定する」との記載,および,上記(1)の認定事項から,引用例1には,“前記切替えタイミング制御回路11は,前記ドライブ信号出力回路10から出力される各相の電流値に基づいて,前記3相モータの各相の出力電圧パターンを推定”することが記載されているといえる。

(3)上記記載事項Cの「ドライブ信号出力回路10は、互いに位相が180度異なる2つの三角基準波A及びBを使用して2相変調方式を行うことにより、ドライブ信号D1?D6を出力する」との記載,および,上記(1)?(2)の認定事項から,引用例1には,前記ドライブ信号出力回路10は,互いに位相が180度異なる2つの三角基準波A及びBを使用して2相変調方式を行うことにより,前記ドライブ信号D1?D6を出力する”ことが記載されているといえる。

(4)以上,上記(1)?(3)の認定事項を踏まえると,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「入力されるドライブ信号D1?D6に基づいてオン,オフすることにより前記直流電源の直流電力を交流に変換し,3相モータを駆動させる複数のスイッチング素子2?7と,シャント抵抗8(検出手段)と,シャント抵抗8に印加される電圧に基づいてドライブ信号D1?D6を出力する制御装置9(制御手段)とを備えて構成されるインバータ装置であって,
前記制御装置9は,ドライブ信号出力回路10と,切替えタイミング制御回路11とを備え,
前記切替えタイミング制御回路11は,前記ドライブ信号出力回路10から出力される各相の電流値に基づいて,前記3相モータの各相の出力電圧パターンを推定し,
前記ドライブ信号出力回路10は,互いに位相が180度異なる2つの三角基準波A及びBを使用して2相変調方式を行うことにより,前記ドライブ信号D1?D6を出力する
インバータ装置。」

3 引用例2に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特許第4941686号公報(平成24年5月30日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

E 「【0024】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態による電力変換装置1は、多相回転電機としてのモータ10を駆動制御するものである。電力変換装置1は、モータ10とともに、例えば車両のステアリング操作をアシストするための電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という)に適用される。
【0025】
モータ10は、三相ブラシレスモータであり、いずれも図示しないロータおよびステータを有している。ロータは、円板状の部材であり、その表面に永久磁石が貼り付けられ、磁極を有している。ステータは、ロータを内部に収容するとともに、回転可能に支持している。ステータは、径内方向へ所定角度毎に突出する突出部を有し、この突出部に図1に示すU1コイル11、V1コイル12、W1コイル13、U2コイル14、V2コイル15、および、W2コイル16が巻回されている。U1コイル11、V1コイル12、および、W1コイル13は、第1巻線組18を構成している。また、U2コイル14、V2コイル15、および、W2コイル13は、第2巻線組19を構成している。第1巻線組18および第2巻線組19が、「2つの巻線組」に対応している。モータ10には、回転位置を検出する位置センサ69が設けられている。」

F 「

図1」

4 引用例3に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開平7-147782号公報(平成7年6月6日公開。以下,これを「引用例3」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

G 「【0040】
【実施例】
実施例1.以下、請求項1および請求項2の発明の一実施例を図について説明する。図1は、本実施例のインバータ装置の構成を示すブロック図である。図において1はインバータ装置本体、2はパルス幅変調信号を基に3相交流電圧を生成する3相ブリッジ型インバータ主回路(以下、主回路という)、3は3相負荷であり、本実施例では3相モータである。4はコントローラ、5は電圧位相演算部である。6はPWM変調手段であり、相選択部7と相電位指令演算部8と周期発生器9と変換部(変調部)10とを備えている。
【0041】コントローラ4は、主回路2の出力電圧を制御するためのY型3相負荷時の中性点とU相間の相電圧の相電圧指令V* を出力する回路である。電圧位相演算部5は、主回路2の出力周波数および出力位相を制御するためのY型3相負荷時のU相電圧の位相指令θを出力する回路である。相選択部7は、電圧位相演算部5から出力される位相指令θと力率角演算手段13から出力される力率角φを基に相電流の絶対値の大きい相をPWM休止相として選択し切り替えを行なわせることで、力率角φに応じた量PWM休止相の期間をずらしPWMを相電流の絶対値の大きい相に対し行なわないようにする回路である。相電位指令演算部8は、直流グランドレベルを基準にした各相電位の指令値を演算する回路であり相電位指令V2u* ,V2v* ,V2w* を出力する回路である。周期発生器9は、相電位指令信号をパルス幅変調するための同期信号を出力する回路であり水晶発振子を備えている。変換部10は、相電位指令V2u* ,V2v* ,V2w* と前記同期信号とを基にパルス幅変調信号を生成し出力する回路である。

…(中略)…

【0063】このように本実施例によれば、負荷電流および負荷に印加された電圧間の位相差を基に想定または求めた負荷力率角により電流値の大きな相および期間にPWM休止期間が割り当てられるので、スイッチングロスが低減されることになるのであるが、ここでスイッチングロス低減効果について説明する。」

H 「

図1」

第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「3相モータ」及び「直流電源」は,それぞれ,本願発明1の「交流回転機」及び「直流電源」に相当する。
引用発明の「3相モータを駆動させる複数のスイッチング素子2?7」は,「入力されるドライブ信号D1?D6に基づいてオン,オフすることにより前記直流電源の直流電力を交流に変換」ものであるところ,本願発明1の「直流電源からの直流電圧に基づいて、交流回転機の2つの3相巻線のうちの第1の3相巻線に電圧を印加する第1の電力変換器」及び「前記直流電圧に基づいて、前記交流回転機の2つの3相巻線のうちの第2の3相巻線に電圧を印加する第2の電力変換器」とは,下記の点(相違点1)で相違するものの,“直流電源からの直流電圧に基づいて,交流回転機の3相巻線に電圧を印加する電力変換器”である点で一致する。

イ 引用発明の「制御装置9」は,「ドライブ信号出力回路10と,切替えタイミング制御回路11とを備え」,当該「ドライブ信号出力回路10」は,「互いに位相が180度異なる2つの三角基準波A及びBを使用して2相変調方式を行うことにより,前記ドライブ信号D1?D6を出力する」ところ,当該「2つの三角基準波A及びB」は,本願発明1の「搬送波信号」に対応するとともに,「ドライブ信号D1?D6」は,本願発明1の「電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号」に対応するといえるから,引用発明の「制御装置9」は,本願発明1の「外部から入力される制御指令に基づいて前記第1の3相巻線の各相に対する第1の電圧指令を演算するとともに、前記第1の電圧指令に基づいて前記第1の3相巻線の各相に印加する第1印加電圧を演算し、各前記第1印加電圧と搬送波信号とを比較することにより、前記第1の電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力するとともに、前記制御指令に基づいて前記第2の3相巻線の各相に対する第2の電圧指令を演算するとともに、前記第2の電圧指令に基づいて前記第2の3相巻線の各相に印加する第2印加電圧を演算し、各前記第2印加電圧と前記搬送波信号とを比較することにより、前記第2の電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力する制御部」と,下記の点(相違点2?4)の点で相違するものの,“各印加電圧と搬送波信号とを比較することにより,前記電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力する制御部”である点で一致する。

ウ 引用発明は,「スイッチング素子2?7と,…(中略)…制御装置9(制御手段)とを備えて構成されるインバータ装置」であり,引用発明の「インバータ装置」は,本願発明1の「電力変換装置」に相当するといえるから,上記アおよびイの認定を踏まえると,引用発明と本願発明1とは,“直流電源からの直流電圧に基づいて,交流回転機の3相巻線に電圧を印加する電力変換器”と,“各印加電圧と搬送波信号とを比較することにより,前記電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力する制御部”と“を備え”る“電力変換装置”である点で一致する。

エ 引用発明の「2つの三角基準波A及びB」は,「互いに位相が180度異なる」ものであるところ,上記イの対比を踏まえると,引用発明と本願発明1とは,“前記搬送波信号は,第1搬送波信号と,前記第1搬送波信号と180deg位相が異なる第2搬送波信号とを含む”点で一致する。

オ 上記ア?エの検討を踏まえ,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
直流電源からの直流電圧に基づいて,交流回転機の3相巻線に電圧を印加する電力変換器と,
各印加電圧と搬送波信号とを比較することにより,前記電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力する制御部と
を備え,
前記搬送波信号は,第1搬送波信号と,前記第1搬送波信号と180deg位相が異なる第2搬送波信号とを含む,
電力変換装置。

〈相違点1〉
本願発明1は,「交流回転機」が「2つの3相巻線」である,「第1の3相巻線」及び「第2の3相巻線」を有し,当該「第1の3相巻線」及び「第2の3相巻線」に対して,それぞれ「第1の電力変換器」及び「第2の電力変換器」が設けられるのに対して,引用発明の「3相モータ」は,1つの3相巻線しか有しておらず,したがって,1つの3相巻線に対する「インバータ装置」しか有していない点。

〈相違点2〉
第1印加電圧の算出方法について,本願発明1は,「外部から入力される制御指令に基づいて前記第1の3相巻線の各相に対する第1の電圧指令を演算するとともに、前記第1の電圧指令に基づいて前記第1の3相巻線の各相に印加する第1印加電圧を演算」するとともに,「前記制御指令に基づいて前記第2の3相巻線の各相に対する第2の電圧指令を演算するとともに、前記第2の電圧指令に基づいて前記第2の3相巻線の各相に印加する第2印加電圧を演算し、各前記第2印加電圧と前記搬送波信号とを比較する」のに対し,引用発明は,「切替えタイミング制御回路11」が,「ドライブ信号出力回路10から出力される各相の電流値に基づいて,前記3相モータの各相の出力電圧パターンを推定」するものである点。

〈相違点3〉
本願発明1の「制御部」は,「前記第1の3相巻線の各相に対する前記第1の電圧指令を大きい順に並べたときのそれぞれに対応する相を、順に、第1電圧最大相、第1電圧中間相、第1電圧最小相としたとき、」「前記第1の3相巻線を流れる電流のうちで当該電流の絶対値が最大となる電流絶対値最大相が、前記第1電圧最大相と一致している場合に、当該電流絶対値最大相に対応する第1印加電圧を、前記搬送波信号の最大値に一致させる上べた二相変調を実施し、」「前記電流絶対値最大相が前記第1電圧最小相と一致している場合に、当該電流絶対値最大相に対応する第1印加電圧を、前記搬送波信号の最小値に一致させる下べた二相変調を実施し、」「前記上べた二相変調または前記下べた二相変調を実施した相以外の2相のうち、1相の前記第1印加電圧を第2搬送波信号と比較し、他の1相の前記第1印加電圧を前記第1搬送波信号と比較して、前記第1の電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力」するのに対して,引用発明の「制御装置9」はそのような制御を行うことが特定されていない点。

〈相違点4〉
本願発明1の「制御部」は,「前記第2の3相巻線の各相に対する前記第2の電圧指令を大きい順に並べたときのそれぞれに対応する相を、順に、第2電圧最大相、第2電圧中間相、第2電圧最小相としたとき、」「前記第2の3相巻線を流れる電流のうちで当該電流の絶対値が最大となる電流絶対値最大相が、前記第2電圧最大相と一致している場合に、当該電流絶対値最大相に対応する第2印加電圧を、前記搬送波信号の最大値に一致させる上べた二相変調を実施し、」「前記電流絶対値最大相が前記第2電圧最小相と一致している場合に、当該電流絶対値最大相に対応する第2印加電圧を、前記搬送波信号の最小値に一致させる下べた二相変調を実施し、」「前記第1の3相巻線の前記上べた二相変調または前記下べた二相変調を実施した相以外の2相および前記第2の3相巻線の前記上べた二相変調または前記下べた二相変調を実施した相以外の2相のうち、前記第2の3相巻線の1相の前記第2印加電圧を、前記第2の3相巻線の1相との位相差が小さい組み合わせとなる前記第1の3相巻線の1相の搬送波信号と異なる搬送波信号と比較し、前記第2の3相巻線の他の1相の前記第2印加電圧を、前記第1の3相巻線の他の1相の搬送波信号と異なる搬送波信号と比較して、前記第2の電力変換器のスイッチング素子に対するオン/オフ信号を出力する」するのに対し,引用発明の「制御装置9」はそのような制御を行うことが特定されていない点。

〈相違点5〉
本願発明1は,「前記第1の3相巻線と前記第2の3相巻線との位相差は既知であ」るのに対し,引用発明の「3相モータ」は,2つの組の3相巻線を有しておらず,したがって2つの巻線の位相差は存在しない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,先に相違点1について検討する。
引用発明の「3相モータ」は,巻線の組が1つのものであって,これを2組とすることは,引用例1に記載も示唆も無い。
そして,引用例2は,本願明細書段落【0004】に,本願の従来例として例示されたものであるところ,上記第5 3に示したとおり,2つの巻線組を有する交流回転機が,本願出願前に公知であったとしても,引用発明において当該構成を採用する動機付けとなる記載は引用例1の中から見いだすことはできず,当業者といえども,さらに相違点2?5に係る構成を引用例1の記載に基づいて想起することは,容易とまではいえない。
そして,本願発明1は,相違点5に係る構成,すなわち既知の(固有の)位置関係を有する2つの3相巻線に対して,相違点2?4に係る制御を行うことによって,コンデンサ電流の低減を図るという,格別な効果を奏するものであって,その他引用例2及び3に記載された技術的事項を参照したとしても,当該相違点2?4に係る構成は,本願出願前周知であったことを認めるに足る根拠を見いだすことはできず,したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用発明並びに引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明10について

本願発明1と同様な構成を有する本願発明10も,上記1に示した本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明並びに引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明2?9及び11?21について

本願発明1又は10を,直接又は間接的に引用する本願発明2?9及び11?21についても,上記1に示した本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明並びに引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について

1 理由1(特許法36条6項1号)について

審判請求時の補正により,請求項1及び10に,「前記第1の3相巻線と前記第2の3相巻線との位相差は既知であ」るとの特定事項が追加された。
審判請求書において,審判請求人が主張するとおり,第1の3相巻線U1,V1,W1と第2の3相巻線U2,V2,W2との位相差は,本願の図2あるいは図37に示したように,制御対象である電力変換装置において固有の位置関係にあり,電流位相θiが遷移していくものであって,実施の形態1では,図2の位置関係に基づいて,「2群の巻線の位相差が零」である場合を示し,実施の形態2では,図37の位置関係に基づいて,「2群の巻線の位相差が30deg」である場合について示している。
そして,本願発明における位相差は,電力変換装置における2群の巻線の固定配置状態によって既知の固定値であり,搬送波信号の決定自体は,固定値である当該位相差の情報を考慮した上で,同一の電力変換器に対応する3相巻線を流れる電流と電圧指令とに基づいて搬送波信号の決定を行うことを基本とし,比較に用いる搬送波信号として,「第1搬送波信号」を用いるか「第2搬送波信号」を用いるかを適切に切り替えることで,コンデンサ電流の低減を図るという,本願発明の解決しようとする課題を解決するものであることが,当業者に理解されるものとなった。
したがって,本願発明1及び10,並びにこれらを直接又は間接的に引用する本願発明2?9及び11?21は,明細書の発明の詳細な説明に記載されたものといえ,原査定の理由1を維持することはできない。

2 理由4(特許法29条2項)について

上記第6に示したとおり,本願発明1?21は,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1?3(上記第5の引用例1?3)に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由4を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-05-14 
出願番号 特願2019-27005(P2019-27005)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H02M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 土井 悠生東 昌秋  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山澤 宏
山崎 慎一
発明の名称 電力変換装置、発電電動機の制御装置、および、電動パワーステアリング装置  
代理人 梶並 順  
代理人 大宅 一宏  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 上田 俊一  
代理人 曾我 道治  
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