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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03F
管理番号 1374230
審判番号 不服2019-13000  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-30 
確定日 2021-05-12 
事件の表示 特願2016-508063「放射コレクタ、放射源およびリソグラフィ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月23日国際公開、WO2014/170093、平成28年 7月28日国内公表、特表2016-522431〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)3月24日(パリ条約による優先権主張2013年4月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。

平成30年 1月19日付け:拒絶理由の通知
平成30年 4月23日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 9月18日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知
平成31年 2月25日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 5月23日付け:平成31年2月25日の手続補正について
の補正の却下の決定、拒絶査定
令和 元年 9月30日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 6月30日付け:拒絶理由の通知
令和 2年10月 7日 :意見書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、令和元年9月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
放射コレクタであって、
当該放射コレクタは、極端紫外(EUV)放出プラズマを生成するために、当該放射コレクタを通して一つ以上のレーザビームを第1焦点に渡すよう構成された開口と、互いの周りに配置され、当該放射コレクタの光軸の周りに円周方向に延在している複数の反射面を備え、
前記複数の反射面のそれぞれが複数の楕円の異なる一つの一部と一致しており、
前記複数の楕円は、共通の第2焦点および前記第1焦点を有し、前記第1焦点および前記第2焦点は前記光軸上に配置され、
前記複数の反射面は、i)前記光軸に対して垂直な方向に沿って配置され、ii)前記第1焦点から生じる、前記EUV放出プラズマを用いて生成される放射を受け、iii)前記第2焦点に受けた放射を反射するよう構成され、
前記第1焦点および前記第2焦点は、前記複数の反射面の少なくとも1つに対して同じ側に位置し、
前記第1焦点は、前記光軸に対して垂直な方向に沿って配置された前記複数の反射面と、前記第2焦点との間に位置する、放射コレクタ。」

第3 拒絶の理由
令和2年6月30日付けで当審が通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

[理由](進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1-13
・引用文献等 1-6

<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2012-109218号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2008/0073592号明細書
引用文献3:特開2010-004001号公報
引用文献4:特表2010-538420号公報
引用文献5:特開2012-199582号公報
引用文献6:特開2012-235109号公報

第4 引用文献について
1 引用文献1の記載
(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。
「【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外(EUV)光を生成するための装置及びシステムに関する。」

「【0009】
<1.第1の実施形態>
図1は、本開示の第1の実施形態に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す断面図である。EUV光生成システム100では、LPP方式が採用されてもよい。図1に示すように、EUV光生成システム100は、チャンバ1と、支持フレーム2と、ターゲット供給部3と、EUV集光ミラー4と、ドライバレーザ5と、を含んでもよい。
・・・(中略)・・・
【0014】
支持フレーム2は、機械的基準面に対して正確に位置決めされて配置されており、ターゲット供給部3や、EUV集光ミラー4等を所定位置に支持し、かつ固定する機能を有してもよい。支持フレーム2には、レーザ光透過窓11を支持するためのホルダ11aと、接続部12とが固定されてもよい。また、支持フレーム2は、弾性部材25を介してチャンバ1とフレキシブルに接続されてもよい。
【0015】
ターゲット供給部3は、EUV光を生成するために用いられるスズ(Sn)やリチウム(Li)等のターゲット物質をチャンバ1内に供給するよう構成されてもよい。ターゲット供給部3は、ターゲット物質を収容するタンク3aと、タンク3a内のターゲット物質をチャンバ1内に出力するためのノズル3bと、を含んでもよい。
【0016】
ターゲット供給部3は、連続流れ(ターゲット噴流)や液滴(ドロップレット)等の、公知の何れの態様でターゲット物質をチャンバ1内に供給するよう構成されてもよい。例えば、ターゲット物質としてスズを溶融した状態で用いる場合には、ターゲット供給部3は、スズを溶融するためのヒータ、溶融スズを加圧して噴出させるための高純度アルゴン(Ar)ガスを供給するためのガスボンベ、高純度アルゴンガスの流量を制御するためのマスフローコントローラ等をさらに含んでもよい。
【0017】
ドライバレーザ5は、ターゲット物質を励起してプラズマ化するために用いられるレーザ光を出力するよう構成されてもよい。ドライバレーザ5は例えば、発振増幅(MOPA)型のレーザ装置でもよい。ドライバレーザ5から出力されたレーザ光は、レーザ光集光ミラー41やレンズ等を含む光学系と、レーザ光透過窓11とを介してチャンバ1内に導入されてもよい。チャンバ1内に導入されたレーザ光は、EUV集光ミラー4に形成された貫通孔を通って、チャンバ1内の所定のプラズマ生成領域PSで集光されてもよい。プラズマ生成領域PSにおいて、ターゲット物質がレーザ光に照射されると、ターゲット物質がプラズマ化し得る。このプラズマから、EUV光を含む様々な波長の光が放射され得る。レーザ光集光ミラー41は、支持フレーム2によって支持されてもよい。レーザ光集光ミラー41を支持フレーム2によって支持することにより、チャンバ1が熱膨張しても、機械的基準面に対してレーザ光集光ミラー41が所望の位置及び姿勢に維持され得る。
【0018】
EUV集光ミラー4は、チャンバ1内に設けられてもよい。EUV集光ミラー4は、所定の波長のEUV光を高い反射率で反射する多層膜がコートされた反射面を有してもよい。例えば、波長が13.5nm付近のEUV光を選択的に反射するミラーとしては、反射面にモリブデン(Mo)とシリコン(Si)とが交互に積層されたミラーが用いられてもよい。EUV集光ミラー4の反射面は回転楕円面の形状で、EUV集光ミラー4は、回転楕円面の第1の焦点位置がプラズマ生成領域PSに位置するように配置されてもよい。EUV集光ミラー4によって反射されたEUV光は、回転楕円面の第2の焦点位置、すなわち中間集光点IFに集光されてもよい。
【0019】
以上のように、チャンバ1内に供給されたターゲット物質にレーザ光が照射されることにより、ターゲット物質がプラズマ化し得る。このプラズマからEUV光を含む様々な波長の光が放射され得る。放射される光の内、所定の波長(例えば、13.5nm)のEUV光が、EUV集光ミラー4によって高い反射率で反射されてもよい。EUV集光ミラー4によって反射されたEUV光は、接続部12の開口を介して、チャンバ1の外部に接続された露光装置の投影光学系等の処理装置に出力されてもよい。」

図1の記載から、「第1の焦点位置(プラズマ生成領域PS)」及び「第2の焦点位置(中間集光点IF)」は、「反射面」の同じ側に位置し、「第1の焦点位置(プラズマ生成領域PS)」は「反射面」と「第2の焦点位置(中間集光点IF)」との間に位置することが見て取れる。


(2)引用発明
したがって、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「チャンバ1と、支持フレーム2と、ターゲット供給部3と、EUV集光ミラー4と、ドライバレーザ5と、を含むEUV光生成システム100において、(【0001】)
支持フレーム2は、ターゲット供給部3や、EUV集光ミラー4等を所定位置に支持し、(【0014】)
ドライバレーザ5は、ターゲット物質を励起してプラズマ化するために用いられるレーザ光を出力するよう構成され、
ドライバレーザ5から出力されたレーザ光は、チャンバ1内に導入され、チャンバ1内に導入されたレーザ光は、EUV集光ミラー4に形成された貫通孔を通って、チャンバ1内の所定のプラズマ生成領域PSで集光され、
プラズマ生成領域PSにおいて、ターゲット物質がレーザ光に照射されると、ターゲット物質がプラズマ化し、
このプラズマから、EUV光を含む様々な波長の光が放射され、(【0017】)
EUV集光ミラー4は、所定の波長のEUV光を高い反射率で反射する多層膜がコートされた反射面を有し、EUV集光ミラー4の反射面は回転楕円面の形状で、
EUV集光ミラー4は、回転楕円面の第1の焦点位置がプラズマ生成領域PSに位置するように配置され、
EUV集光ミラー4によって反射されたEUV光は、回転楕円面の第2の焦点位置、すなわち中間集光点IFに集光されるものであり、(【0018】)
第1の焦点位置(プラズマ生成領域PS)及び第2の焦点位置(中間集光点IF)は、反射面の同じ側に位置し、第1の焦点位置(プラズマ生成領域PS)は、反射面と第2の焦点位置(中間集光点IF)との間に位置する、(上記(ウ))
EUV光生成システム100のEUV集光ミラー4。(【0009】)」

2 引用文献2の記載
引用文献2には以下の事項が記載されている。
「[0002]The present description relates to the field of optical collectors for EUV photolithography, and in particular, to a collector using an elliptical reflective surface to provide collection in a single reflection.」
(日本語訳:[0002]
本説明は、EUVフォトリソグラフィ用の光学コレクタの分野に関し、特に、楕円反射面を使用して一回の反射で収集を提供するコレクタに関する。)

「DETAILEDDESCRIPTION
[0014] Elliptical mirrors may be designed and constructed to collect EUV with a single bounce, a high range of incident light angles and at low cost. The design is compact, potentially easy to cool, and collects a larger proportion of the light from an EUV source than many other designs. As many as fifteen or more elliptical shells may be used to collect light from different types of EUV sources. The shells are reflective and may be used in a vacuum environment to avoid absorption.」
(日本語訳:詳細な説明
[0014]
楕円ミラーは、1回の反射、広範囲の入射光角度、低コストでEUVを収集するように設計および構築できます。設計はコンパクトで、冷却が容易な可能性があり、他の多くの設計よりもEUV光源からの光の割合を多く集めます。15以上の楕円シェルを使用して、さまざまなタイプのEUV光源からの光を収集できます。シェルは反射性があり、吸収を避けるために真空環境で使用できます。)

「[0016] The described collector is particularly well-suited for discharge produced plasma (DPP)sources. However, it may be adapted to any of a variety of other extreme ultraviolet (EUV) and other light sources.
[0017] FIG. 1 shows an example of a fifteen ring elliptical collector 10 according to an embodiment of the invention. The collector has fifteen concentric or nested rings 11, 12, 13, 14 . . . Each ring is in the shape of a circle and is formed by a shell with an elliptical cross-section, as shown in FIG. 3. The illustrated collector has been simulated to have a collection efficiency of about 63%. The collection efficiency may be increased by increasing the number of shells.
[0018] FIG. 2 is a simulated ray trace diagram showing the collection of EUV light by the array of nested shells, the array of elliptical shells, including outer shell 12 collect the light from a light source 20 and bring it to a focus at a focus point 22. The light at the focus point may be imaged directly on the lithography mask or at relay optics that relay the light to the mask or to some other optical system. As can be seen from FIG. 2, a single reflection brings the light from the source to the focus point. Because the best EUV reflectors are still poor reflectors and still absorb a significant part of the light, reducing the number of reflections or bounces significantly improves the efficiency of the collector.This is particularly true for shallow reflection angles. For broader reflection angles, two bounces may offer advantages that overcome the light loss, however,the best design may depend on the particular reflector material, and other aspects of the optical design.」
(日本語訳: [0016]
記載されたコレクタは、放電生成プラズマ(DPP)源に特に適しています。しかしながら、それは、他の様々な極端紫外線(EUV)および他の光源のいずれにも適合され得る。
[0017]
図1は、本発明の実施形態による15個のリングの楕円形コレクタ10の例を示す。 コレクターには、15個の同心円または入れ子のリング11、12、13、14・・・があります。各リングは、円形であり、図3に示されるように、楕円形の断面を有するシェルによって形成される。描かれたコレクターは、約63%の収集効率を持つようにシミュレーションされています。シェルの数を増やすことで、収集効率を上げることができます。
[0018]
図2は、入れ子シェルのアレイによるEUV光の収集を示すシミュレーションされた光線追跡図であり、外側シェル12を含む楕円シェルのアレイは、光源20からの光を収集し、それを焦点22に焦点を合わせる。焦点での光は、リソグラフィマスク上に直接、または光をマスクまたは他の光学系にリレーするリレー光学系で結像されます。図2から分かるように、単一の反射は、光源から焦点に光をもたらします。最良のEUVリフレクターは依然として不十分なリフレクターであり、依然として光のかなりの部分を吸収するため、反射またはバウンスの数を減らすと、コレクターの効率が大幅に向上します。これは特に、浅い反射角度に当てはまります。より広い反射角度の場合、2回の反射が光の損失を克服する利点を提供する可能性がありますが、最適な設計は、特定の反射材と光学設計の他の側面に依存する場合があります。)

「[0019] FIG. 3 is a diagram of a cross-section of an example elliptical shell 12 of the collector 10 of FIG. 1. The cross-sectional diagram shows two internal surfaces 31, 32 which are exposed to the EUV light. If, as shown in FIG. 1, the shells are circular,then these two surfaces are different locations on one continuous inner surface of the ring. FIG. 3 also shows an ellipse drawn with one focus 20 at the illumination source image plane and the other focus 22 at the focal point of the collector system. The outer surface of the ellipse defines the shape of the inner reflective surface 31, 32 of the shell. FIG. 3 further shows how the shell reflects a cone of light 35 from the source, to another cone of light36 that converges at the focal point.」
(日本語訳:[0019]
図3は、図1のコレクタ10の例示的な楕円シェル12の断面図である。 断面図は、EUV光に露光される2つの内面31、32を示している。図1に示すように、シェルは円形であり、これらの2つの表面は、リングの1つの連続した内表面上の異なる位置である。図3はまた、照明源画像平面に1つの焦点20で、コレクタシステムの焦点に他の焦点22で描かれた楕円を示す。 楕円の外面は、シェルの内部反射面31、32の形状を定義します。図3はさらに、シェルが光源からの円錐状の光35をどのように反射して、焦点に集束する別の円錐状の光36にするかを示す。)

「[0021] The elliptical surface of each shell may be based on an ellipse with a different height, but the same foci. This provides a different shape surface on each shell and the surface will be shaped specifically for the range of angles that are anticipated for that shell to reflect. The number of shells and their design may be adapted to suit differentlight sources and different types of reflectors.」
(日本語訳:[0021]
各シェルの楕円面は、高さが異なるが、焦点が同じ楕円に基づいている場合があります。これにより、各シェルに異なる形状の表面が提供され、表面は、そのシェルが反射することが予想される角度の範囲に合わせて特別に成形されます。シェルの数とそのデザインは、さまざまな光源やさまざまなタイプのリフレクターに合わせて調整できます。)

図1、図2及び図3の記載から、複数の反射面(11,12,13,14・・・)は光源20と焦点位置22を結ぶ軸に対して垂直な方向に沿って配置されているコレクタ10が、見て取れる。



第5 対比
1 本願発明と引用発明を対比する。
(1)本願発明の「放射コレクタであって」との特定事項について検討する。
ア 本願発明において「放射コレクタ」は、「第1焦点」で生じたEUVを反射し、「第2焦点」に集光するものであり、引用発明の「EUV集光ミラー4」は、「回転楕円面の第1の焦点位置」である「プラズマ生成領域PS」で発生したEUV光(放射)を、「回転楕円面の第2の焦点位置(中間集光点IF)」に集光するもの(コレクタ)である。

イ したがって、引用発明の「EUV集光ミラー4」は、本願発明の「放射コレクタ」に相当する。

(2)本願発明の「当該放射コレクタは、極端紫外(EUV)放出プラズマを生成するために、当該放射コレクタを通して一つ以上のレーザビームを第1焦点に渡すよう構成された開口と、互いの周りに配置され、当該放射コレクタの光軸の周りに円周方向に延在している複数の反射面を備え」との特定事項について検討する。
ア 引用発明における、ドライバレーザ5から出力された「レーザ光」、「第1の焦点位置(プラズマ生成領域PS)」、EUV集光ミラー4に形成された「貫通孔」は、それぞれ、本願発明における「レーザビーム」、「第1焦点」、「開口」に相当する。
そして、引用発明は、本願発明でいう「EUV放出プラズマを生成するため」のものであり、「EUV集光ミラー4」の「貫通孔」と「反射面」はそのためのものである。

イ また、引用発明は、「EUV集光ミラー4」の「反射面」の形状が「回転楕円面」であり、「回転楕円面の第1の焦点位置」が「プラズマ生成領域PSに位置」しており、さらに、「EUV集光ミラー4によって反射されたEUV光は、回転楕円面の第2の焦点位置、すなわち中間集光点IFに集光される」ものである。

そうすると、引用発明における「EUV集光ミラー4」の「第1の焦点位置」と「第2の焦点位置」を結ぶ線は、本願発明の「放射コレクタの光軸」に相当し、「EUV集光ミラー4」の「反射面」は、「第1の焦点位置」と「第2の焦点位置」を結ぶ線の周りの円周方向に延在していることは明らかである。

ウ したがって、引用発明は本願発明と、「放射コレクタは、EUV放出プラズマを生成するために、当該放射コレクタを通して一つ以上のレーザビームを第1焦点に渡すよう構成された開口と、当該放射コレクタの光軸の周りに円周方向に延在している反射面を備え」る点で一致する。

(3)本願発明の「前記複数の反射面のそれぞれが複数の楕円の異なる一つの一部と一致しており」との特定事項について検討する。
ア 引用発明における「EUV集光ミラー4」の「反射面」は、形状が「回転楕円面」であるから、楕円の一部と一致しているものである。

イ したがって、引用発明は本願発明と「反射面が楕円の一部と一致して」いる点で一致する。

(4)本願発明の「前記複数の楕円は、共通の第2焦点および前記第1焦点を有し、前記第1焦点および前記第2焦点は前記光軸上に配置され」との特定事項について検討する。
ア 上記(2)イのとおり、引用発明における、「第2の焦点位置」、「第1の焦点位置」、「第2の焦点位置」と「第1の焦点位置」とを結ぶ線は、それぞれ、本願発明における「第2焦点」、「第1焦点」、「光軸」に相当する。

イ したがって、引用発明は、本願発明と「楕円は、第2焦点および第1焦点を有し、第1焦点および第2焦点は光軸上に配置され」ている点で一致する。

(5)本願発明の「前記複数の反射面は、i)前記光軸に対して垂直な方向に沿って配置され、ii)前記第1焦点から生じる、前記EUV放出プラズマを用いて生成される放射を受け、iii)前記第2焦点に受けた放射を反射するよう構成され」との特定事項について検討する。

引用発明の「EUV集光ミラー4」は、上記(2)ウで示したとおりのものであるから、引用発明は本願発明と「反射面は、ii)第1焦点から生じる、EUV放出プラズマを用いて生成される放射を受け、iii)第2焦点に受けた放射を反射するよう構成され」ている点で一致する。

(6)本願発明の「前記第1焦点および前記第2焦点は、前記複数の反射面の少なくとも1つに対して同じ側に位置し、前記第1焦点は、前記光軸に対して垂直な方向に沿って配置された前記複数の反射面と、前記第2焦点との間に位置する」との特定事項について検討する。

引用発明において、第1の焦点位置(プラズマ生成領域PS)及び第2の焦点位置(中間集光点IF)は、反射面の同じ側に位置し、第1の焦点位置(プラズマ生成領域PS)は、反射面と第2の焦点位置(中間集光点IF)との間に位置する。
したがって、引用発明は、本願発明と「第1焦点および第2焦点は、反射面に対して同じ側に位置し、第1焦点は、反射面と第2焦点との間に位置する」点で一致する。

(7)そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「放射コレクタであって、
当該放射コレクタは、EUV放出プラズマを生成するために、当該放射コレクタを通して一つ以上のレーザビームを第1焦点に渡すよう構成された開口と、当該放射コレクタの光軸の周りに円周方向に延在している反射面を備え、
反射面が楕円の一部と一致しており、
楕円は、第2焦点および第1焦点を有し、第1焦点および第2焦点は光軸上に配置され、
反射面は、ii)第1焦点から生じる、EUV放出プラズマを用いて生成される放射を受け、iii)第2焦点に受けた放射を反射するよう構成され、
第1焦点および第2焦点は、反射面に対して同じ側に位置し、第1焦点は、反射面と第2焦点との間に位置する、放射コレクタ。」

【相違点】
本願発明では、反射面が「複数」備えられ、「複数」の反射面の「それぞれ」が「複数」の楕円の「異なる一つの」一部と一致しており、「複数」の楕円は、「共通の」第2焦点および第1焦点を有し、「複数」の反射面は、「光軸に対して垂直な方向に沿って配置され」ており、第1焦点及び第2焦点の位置が、「複数」の反射面の「少なくとも1つ」に対して同じ側に位置し、第1焦点は「光軸に対して垂直な方向に沿って配置された複数の」反射面と第2焦点との間に位置するのに対し、
引用発明では、反射面が単一であり、第1焦点及び第2焦点の位置が「単一の」反射面に対して同じ側に位置しており、第1焦点は「単一の」反射面と第2焦点との間に位置する点。

第6 判断
1 相違点に対する判断
(1)引用文献2には、EUVリソグラフィに用いるコレクタとして、複数の反射面(11,12,13,14・・・)を備え、反射面のそれぞれは、異なる高さを有するが、同じ焦点を持つ楕円に基づいて構成されており、複数の反射面(11,12,13,14・・・)は光源20と焦点位置22を結ぶ軸に対して垂直な方向に沿って配置されているコレクタの技術事項が開示されているものと認められる。
そして、このコレクタは、このコレクタと同じ(共通する)焦点を持つ楕円に沿って設けられた一枚の反射面からなるコレクタと、同じ集光特性を備えているものである。

(2)また、ミラーに関する技術において、ミラーを薄くすることは周知の技術課題である(必要ならば、特開昭47-12078号公報(特に、第5頁右下欄下から4行目-第6頁左上欄下から4行目、FIG.3参照。)、特開2003-156610号公報(特に、図2(a)参照。)、特開平4-219715号公報(特に、【0013】、図6参照。)、特開平6-130211号公報(特に、図2参照。)、特開平8-129904号公報(特に、図14参照。)を参照されたい。)。

(3)ここで、引用発明において、「EUV集光ミラー4」は、「回転楕円面」の「第1の焦点位置(プラズマ生成領域PS)」で発生したEUV光が、「回転楕円面」の「第2の焦点位置(中間集光点IF)」に集光される機能を備えていれば、いかなる形状であってもよいものであるといえる。

(4)そうすると、引用発明においても、上記周知の技術課題も考慮して、引用文献2に記載の技術事項を採用し、「EUV集光ミラー4」と同じ集光特性を備える集光ミラーを、「第1の焦点位置」と「第2の焦点位置」とに、共通の焦点を持つ回転楕円面形状の反射面を、それぞれ高さを異ならせて複数備え、この複数の反射面を「第1の焦点位置」と「第2の焦点位置」とを結ぶ線に対して垂直な方向に沿って配置したものとすることは、当業者にとって容易になし得る事項である。

(5)そして、引用発明において、上記周知の技術課題も考慮して、引用文献2に記載の技術事項を採用し、「EUV集光ミラー4」を「第1の焦点位置」と「第2の焦点位置」とを結ぶ線に対して垂直な方向に沿って配置された複数の反射面を備えるよう構成した場合、「第1の焦点位置」及び「第2の焦点位置」は、複数の反射面に対して同じ側に位置するようになり、また、「第1の焦点位置」は、「第1の焦点位置」と「第2の焦点位置」とを結ぶ線に対して垂直な方向に沿って配置された複数の反射面と、「第2の焦点位置」との間に位置するようになる。

(6)以上のとおりであるから、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を採用して、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(7)効果について
そして、相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(8)したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 審判請求人の主張について
1 審判請求人は、令和2年10月7日付けの意見書において、
(1)「すなわち、引用文献2に開示されたコレクタ12は、EUV光源内ではなく、EUV光源よりも下流に配置されるものです。」、「引用文献2に開示されたコレクタ10と、引用文献1に開示されたEUV集光ミラー4は、EUV露光装置において配置される位置が全く異なります。引用文献2には、コレクタ10を光源101内に使用することができるなどといった示唆は全くありません。従いまして、引用文献1に記載の発明において引用文献2に開示されたコレクタ12を採用する動機付けが存在しませんので、本願発明1は引用発明、及び、引用文献2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえません。」、
(2)「引用文献2には、コレクタ10はDPP源での使用に適することが記載されており、一方、引用文献1の図1に開示されたEUV光生成システム100は、LPP方式の光源であることが記載されています。すなわち、光源の動作原理が異なります。したがって、この点からも、引用文献2に開示された技術を引用文献1に開示された発明で採用する動機付けが存在しませんので、本願発明1は引用発明、及び、引用文献2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえません。」、
(3)「引用文献2に記載の技術事項を採用するのであれば、引用文献2におけるコレクタ12に対する光源20と焦点22の位置関係も採用すべきであると考えます。」、
(4)「引用文献1に記載された発明において、引用文献2に記載の技術事項を採用するというのであれば、引用文献1の図16のように、プラズマ生成領域PSと中間集光点IFとの間に複数の反射面を配置するのが自然であると考えます。」、
(5)「引用文献2は、光コレクタ10が「極端紫外(EUV)放出プラズマを生成するために、当該放射コレクタを通して一つ以上のレーザビームを第1焦点に渡すよう構成された開口」を有することを開示していません。」
旨主張している。

2 上記主張について検討する。
(1)上記1(1)について
引用文献1の図1の記載から、ドライバレーザ5よりも下流にEUV集光ミラー4が配置されることが、見て取れる。
(2)上記1(2)、1(3)、1(4)について
引用文献2には、「記載されたコレクタは、放電生成プラズマ(DPP)源に特に適しています。しかしながら、それは、他の様々な極端紫外線(EUV)および他の光源のいずれにも適合され得る。」旨記載されている。
したがって、引用文献2に記載の技術事項は、DPP源以外の他の様々な極端紫外線(EUV)にも適合され得るものであり、EUV露光には、主にLPP方式、DPP方式が用いられることから、LPP方式に用いることも示唆されている。
(3)上記1(5)について
引用文献2の図2の記載から、コレクタ10の中心に開口を有することが見て取れる。

以上のとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-11-25 
結審通知日 2020-12-01 
審決日 2020-12-25 
出願番号 特願2016-508063(P2016-508063)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷 潮  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 星野 浩一
野村 伸雄
発明の名称 放射コレクタ、放射源およびリソグラフィ装置  
代理人 森下 賢樹  

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