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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1374238
審判番号 不服2020-4391  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-02 
確定日 2021-05-12 
事件の表示 特願2017-519481「カメラモジュールオートフォーカス作動装置およびその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月19日国際公開、WO2016/075606、平成29年11月30日国内公表、特表2017-535808〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成27年11月 9日 :国際出願(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成26年11月12日、伊国、平成27年1月9日、伊国)
平成30年11月 9日 :手続補正書
平成31年 1月22日付け :拒絶理由通知
平成31年 4月24日 :意見書、手続補正書
令和 元年 6月27日付け :拒絶理由通知(最後)
令和 元年 9月25日 :意見書、手続補正書
令和 元年11月22日付け :補正の却下の決定、拒絶査定(同年12月2日送達)
令和 2年 4月 2日 :本件審判請求・手続補正書
令和 2年 6月18日 :上申書
令和 2年 9月15日 :上申書

第2 令和2年4月2日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年4月2日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1?11の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「【請求項1】
ハウジング(12;62;92)と、
形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)を留めるための突起頂点(21;71;101)を具備する突起(20;70;100)を有する可動レンズキャリア(15;65;95)と、
形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)と、
少なくとも4つの転動球体(14;64;94,94')と、
底板(19;69;99)と、
前記突起頂点(21;71;101)に対して異なる高さにある2つの電気端子(18;68,68';98,98')と、
戻し弾性要素(13;63;93)と
を備え、
前記底板(19;69;99)と前記ハウジング(12;62;92)とは互いに対して固定されて、オートフォーカス本体を形成し、
前記2つの電気端子(18;68,68';98,98')は前記オートフォーカス本体上に固定され、
前記形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)は、前記可動レンズキャリア(15; 65; 95)の光軸に平行な方向に前記可動レンズキャリア(15; 65; 95)に力を及ぼすように前記可動レンズキャリアの前記突起頂点(21;71;101)に接触し、前記形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)の両端部は、前記オートフォーカス本体の前記2つの電気端子(18;68,68';98,98')にロックされ、
前記ハウジング(12;62;92)と前記可動レンズキャリア(15;65;95)とは、対応する同一側面に少なくとも2つの側部チャネル(100,100';101,101')をそれぞれが有し、前記転動球体(14;64;94,94')を転動可能に収納および保持する少なくとも2つのガイドチャネルを形成する前記少なくとも2つの側部チャネル(100,100';101,101')を介して位置が揃っており、これにより、前記転動球体(14;64;94,94')は、前記可動レンズキャリアが光軸に沿って移動する際に前記ガイドチャネル内で光軸に沿って転動し、かつ、前記ガイドチャネルそれぞれ内の前記転動球体は連接しており、
前記戻し弾性要素(13;63;93)は、前記ハウジング(12;62;92)と前記可動レンズキャリア(15;65;95)との間に取り付けられる、カメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)であって、
前記戻し弾性要素(13;63;93)は、前記可動レンズキャリア(15; 65; 95)上の前記形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)の力と反対の前記可動レンズキャリア(15; 65; 95)の光軸方向に平行な方向のみ力を前記可動レンズキャリア(15; 65; 95)に及ぼすことを特徴とする、カメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項2】
前記ハウジング(12;62;92)と前記可動レンズキャリア(15;65;95)との間に配置された撓み部(600)を更に備える、請求項1に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項3】
ガイドチャネル当たりの球体(14;64;94,94')の数が5つ以下2つ以上である、請求項1又は2に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項4】
前記転動球体(14;64;94,94')は、30?150μmの間、好ましくは40?60μmの間の直径を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項5】
前記戻し弾性要素は、板バネ(13)である、請求項1から4のいずれか一項に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項6】
前記可動レンズキャリア(15;65;95)上に固定された磁石(16;66)と、前記ハウジング(12;62;92)に固定されたフレキシブルプリント回路基板(191;691)上に固定されたホールセンサ(192;692)とを更に備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項7】
前記形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)は、Ni-Ti合金から作られ、10?50μmの間の直径を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項8】
前記可動レンズキャリア(15;65;95)は、前記光軸に垂直に半径方向外側に向かって僅かな偏移を提供する頂点(31;71;101)を具備する突起(30;70;100)を有し、それにより、前記形状記憶合金ワイヤの中央点を前記光軸から離れるように、0.3mm?1mmの間の距離だけ移動させる、請求項1から7のいずれか一項に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)の制御方法であって、前記形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)が活性化されて前記可動レンズキャリア(15;65;95)を第1の端部位置へと移動させ、次いで、前記戻し弾性要素(13;63;93)によって非活性化されて前記可動レンズキャリア(15;65;95)を第2の端部位置へと移動させる初期化フェイズを備える、制御方法。
【請求項10】
前記可動レンズキャリア(15;65;95)の位置は、ホールセンサ(192;692)および磁石(16;66)を介して、フレキシブルプリント回路基板(191;691)によって決定される、請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記可動レンズキャリア(15;65;95)の位置は、前記形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)の抵抗測定によって決定される、請求項9に記載の制御方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
平成31年4月24日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1?11の記載は、次のとおりである。
なお、令和元年9月25日付け手続補正は、令和元年11月22日付け補正の却下の決定により却下された。

「【請求項1】
ハウジング(12;62;92)と、
形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)を留めるための突起頂点(21;71;101)を具備する突起(20;70;100)を有する可動レンズキャリア(15;65;95)と、
形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)と、
少なくとも4つの転動球体(14;64;94,94')と、
底板(19;69;99)と、
前記突起頂点(21;71;101)に対して異なる高さにある2つの電気端子(18;68,68';98,98')と、
戻し弾性要素(13;63;93)と
を備え、
前記底板(19;69;99)と前記ハウジング(12;62;92)とは互いに対して固定されて、オートフォーカス本体を形成し、
前記2つの電気端子(18;68,68';98,98')は前記オートフォーカス本体上に固定され、
前記形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)は、前記可動レンズキャリア(15; 65; 95)の光軸に平行な方向に前記可動レンズキャリア(15; 65; 95)に力を及ぼすように前記可動レンズキャリアの前記突起頂点(21;71;101)に接触し、前記形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)の端部は、前記オートフォーカス本体の前記2つの電気端子(18;68,68';98,98')にロックされ、
前記ハウジング(12;62;92)と前記可動レンズキャリア(15;65;95)とは、対応する同一側面に少なくとも2つの側部チャネル(100,100';101,101')をそれぞれが有し、前記転動球体(14;64;94,94')を収納および保持する少なくとも2つのガイドチャネルを形成する前記少なくとも2つの側部チャネル(100,100';101,101')を介して位置が揃っており、
前記戻し弾性要素(13;63;93)は、前記ハウジング(12;62;92)と前記可動レンズキャリア(15;65;95)との間に取り付けられる、カメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)であって、
前記戻し弾性要素(13;63;93)は、前記可動レンズキャリア(15; 65; 95)上の前記形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)の力と反対の前記可動レンズキャリア(15; 65; 95)の光軸方向に平行な方向のみ力を前記可動レンズキャリア(15; 65; 95)に及ぼし、
ことを特徴とする、カメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項2】
前記ハウジング(12;62;92)と前記可動レンズキャリア(15;65;95)との間に配置された撓み部(600)を更に備える、請求項1に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項3】
ガイドチャネル当たりの球体(14;64;94,94')の数が5つ以下2つ以上である、請求項1又は2に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項4】
前記転動球体(14;64;94,94')は、30?150μmの間、好ましくは40?60μmの間の直径を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項5】
前記戻し弾性要素は、板バネ(13)である、請求項1から4のいずれか一項に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項6】
前記可動レンズキャリア(15;65;95)上に固定された磁石(16;66)と、前記ハウジング(12;62;92)に固定されたフレキシブルプリント回路基板(191;691)上に固定されたホールセンサ(192;692)とを更に備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項7】
前記形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)は、Ni-Ti合金から作られ、10?50μmの間の直径を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項8】
前記可動レンズキャリア(15;65;95)は、前記光軸に垂直に半径方向外側に向かって僅かな偏移を提供する頂点(31;71;101)を具備する突起(30;70;100)を有し、それにより、前記形状記憶合金ワイヤの中央点を前記光軸から離れるように、0.3mm?1mmの間の距離だけ移動させる、請求項1から7のいずれか一項に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のカメラモジュールオートフォーカス作動装置(10;60;90)の制御方法であって、前記形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)が活性化されて前記可動レンズキャリア(15;65;95)を第1の端部位置へと移動させ、次いで、前記戻し弾性要素(13;63;93)によって非活性化されて前記可動レンズキャリア(15;65;95)を第2の端部位置へと移動させる初期化フェイズを備える、制御方法。
【請求項10】
前記可動レンズキャリア(15;65;95)の位置は、ホールセンサ(192;692)および磁石(16;66)を介して、フレキシブルプリント回路基板(191;691)によって決定される、請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記可動レンズキャリア(15;65;95)の位置は、前記形状記憶合金ワイヤ(17;67;97)の抵抗測定によって決定される、請求項9に記載の制御方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「転動球体」について「前記可動レンズキャリアが光軸に沿って移動する際に前記ガイドチャネル内で光軸に沿って転動し、かつ、前記ガイドチャネルそれぞれ内の前記転動球体は連接しており」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定する要件を満たすか)について検討する。

(1)本件補正発明について
本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載したとおりのものである。

(2)引用文献について
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1である、特開2014-10380号公報(平成26年1月20日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、主にカメラや携帯電話等に用いられるレンズアクチュエータに関するものである。」

b 「【0039】
電子回路は端子32A、32B、33A、33Bを介して、ワイヤ22A、22Bに接続され、撮像時には、撮像素子からの信号等を基にワイヤ22A、22Bに流す電流を制御し、レンズホルダ21を固定ユニット24に対し、レンズの光軸OA方向に移動させ、オートフォーカス制御を行う。」

c 「【0053】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2におけるレンズアクチュエータ400について、図5?図7を用いて説明する。
【0054】
図5は本発明の実施の形態2におけるレンズアクチュエータ400のカバー45を外した斜視図、図6はレンズアクチュエータ400の分解斜視図、図7はレンズアクチュエータ400の断面図である。
【0055】
レンズアクチュエータ400は、レンズホルダ41と、ワイヤ42と、ガイドボール43A?43Dと、固定ユニット52と、カバー45と、上側付勢バネ46と、下側付勢バネ47と、コイルバネ48を備える。
【0056】
また、固定ユニット52は、ベース51と、端子50A、50Bと、ガイドプレート49を備える。
【0057】
このレンズアクチュエータ400は、ワイヤ42の変形による張力でレンズホルダ41を固定ユニット52に対し上方に移動させ、ワイヤ42が発生する張力が小さくなるとコイルバネ48の復元力でレンズホルダ41を固定ユニット52に対し下方に移動させるよう構成されている。
【0058】
ここで、レンズホルダ41には光軸OAを中心軸とする円筒形の円孔414 を備えて、その外側にはおよそ円筒形状の壁部415が形成される。なお、レンズホルダ41は円孔414内にレンズバレルを保持する部分である(図面においてはレンズバレルを省略している)。レンズホルダ41の壁部415の外周下部には突起412が形成されている。さらに、突起412の上面に突出したコイルバネ受け部416がおよそ円筒状に設けられる。また、レンズホルダ41の側面の二箇所には、窪んでガイドボール43A?43Dと接触するボール受け面413A、413Bが形成されている。
【0059】
また、レンズホルダ41の壁部415において突起412に近い部分の上面および下面には、それぞれバネ受け部411A、411Bが形成される。バネ受け部411A、411Bの光軸OAの方向を向く面に、それぞれ上側付勢バネ46と、下側付勢バネ47とが接触するように固定される。上側付勢バネ46と、下側付勢バネ47は、金属線を曲げて作られており、変形させたときに元の形に戻ろうとする復元力をもつ。レンズホルダ41は上側付勢バネ46と下側付勢バネ47により、L字状のガイドプレート49と組み合わされる。
【0060】
さらに、コイルバネ48は、その下側端部が突起412の上側平面に接触するように固定される。コイルバネ受け部416はおよそ円筒状の形状に形成されており、コイルバネ48の下部がコイルバネ受け部416の円筒形状を囲むように配置される。コイルバネ48の上側端部はカバー45の上面内側に接触するように固定される。コイルバネ48は、自然長から縮んだ状態で固定されており、レンズホルダ41に対して下方向の力を加えている。
【0061】
次に、固定ユニット52と、ワイヤ42と、ガイドボール43A?43Dの構成を説明する。
【0062】
ベース51は、底面部511と、側面部512A、512Bと、端子受け面513A、513Bと、柱部514から構成される。端子受け面513A、513Bには、端子50A、50Bが固定される。側面部512A、512Bと、端子受け面513A、513Bと、柱部514の内面に接するようにガイドプレート49が固定される。
【0063】
ガイドプレート49は金属で形成される。ガイドプレート49は、柱部514の内壁に沿うように曲げられており、この曲面の上部および下部にそれぞれバネ受け部491A、491Bが形成される。バネ受け部491A、491B の内側面に、それぞれ上側付勢バネ46と、下側付勢バネ47とが接触するように固定される。側面部512Aと端子受け面513Aの交線、および、側面部512Bと端子受け面513Bの交線に沿うようにガイドプレート49の両端は曲げられており、その曲げられた部分の内側にガイドボール43A?43Dと接触するボール受け面492A、492Bが形成される。
【0064】
ガイドボール43A及び43Bは、ボール受け面413Bとボール受け面492Bの間に配置され、ガイドボール43C及び43Dは、ボール受け面413Aとボール受け面492Aの間に配置される。そして、レンズホルダ41がガイドプレート49に対し上下動する際に、ガイドボール43A?43Dがボール受け面413A、491A或いはボール受け面413B、491Bと接触しながら回転するよう、ボール受け面413A、413Bに保持される。
【0065】
ワイヤ42の両端は導電性の端子50A、50Bに固定され、ワイヤ42の中央部はレンズホルダ41の突起412の下側を通過して配置される。ワイヤ42は形状記憶合金で形成される。形状記憶合金は例えばTiNiやTiNiCuなどの材料で構成される。
【0066】
図7の断面図に示すように、レンズアクチュエータ400を上面から見ると正方形であり、端子50Aおよび50B、突起412、柱部514はそれぞれ異なった角に配置される。図7に模式的に示すように光軸と垂直な平面内において、ワイヤ42がレンズホルダ41に加える力Fwはおよそ突起412が配置される角から柱部514が配置される角に向かう方向である。上側付勢バネ46および下側付勢バネ47は、柱部514が配置される角から突起412が配置される角を結ぶ直線に沿って圧縮される方向に変形した状態で固定されている。このため、光軸と垂直な平面内において、上側付勢バネ46および下側付勢バネ47はレンズホルダ41に対して、およそ柱部514が配置される角から突起412が配置される角に向かう方向の力Fsを加えている。Fsの大きさがFwの大きさよりも大きくなるように、上側付勢バネ46および下側付勢バネ47の形状および配置は設計される。Fsの大きさがFwの大きさよりも大きいために、それらの力の合力によってレンズホルダ41はガイドボール43A?43Dに対してFsと同じ方向に押し付けられる。このため、上側付勢バネ46および下側付勢バネ47の力によって、ガイドボール43A?43Dは、レンズホルダ41のボール受け面413Aおよび413Bと、ガイドプレート49のボール受け面492Aおよび492Bの間で押し付けられて保持される。ガイドプレート49を例えばステンレス鋼(SUS)によって形成すれば、強度や加工精度やコストの点から望ましい。ガイドプレート49を曲げ加工や鍛造などの方法を用いて形成することによって高精度に加工することが可能である。
【0067】
このように構成されたレンズアクチュエータ400を動作させる際には、端子50Aおよび50Bの間に電圧を印加して電流を流す。ワイヤ42に流す電流を増加させると、ワイヤ42において発生するジュール熱が増加することによってワイヤ42の温度は上昇して、ワイヤ42の長さが縮む。またワイヤ42に流す電流を減少させると、ワイヤ42において発生するジュール熱が減少することによってワイヤ42の温度は減少して、ワイヤ42の長さが伸びる。
【0068】
ワイヤ42が伸び縮みする際に、ガイドボール43Aと43Bがボール受け面413Bとボール受け面492Bと接触を保ち、ガイドボール43Cと43Dがボール受け面413Aとボール受け面492Aと接触を保つ。このため、レンズホルダ41は光軸OAに沿って上下方向に移動する。
【0069】
駆動部材となるコイルバネ48は、ワイヤ42に流す電流を減少させたときに、レンズホルダ41を下方向に移動させる働きをもつ。ただし、レンズホルダ41を下方向に移動させる働きをもつものであれば、コイルバネ以外にも例えば板バネなどの他の形状のバネを使用することも可能である。またバネ以外にも例えば磁石と磁性体との間に生じる磁力によってレンズホルダ41を下方向に移動させる構造によってレンズアクチュエータ400を構成することも可能である。」

d 「【0085】
上述の説明ではレンズホルダ41が移動する際にガイドボール43A?43Dが回転する構成について説明したが、レンズホルダ41が移動する際にガイドボール43A?43Dが回転しない構成も考えることができる。この場合でも、固定ユニット52およびレンズホルダ41とガイドボール43A?43Dとの接触面積が小さいために摩擦が小さくできて、レンズホルダ41の位置制御の精度を向上することが可能である。この場合においても、固定ユニット52もしくはレンズホルダ41とガイドボール43A?43Dとの接触面を金属で構成すれば、摩擦力低減によるレンズホルダ41の位置制御の精度向上の効果を得ることができる。」

e 図5は以下のとおりである。


f 図6は以下のとおりである。


g 上記a、bの記載から見て、上記cに記載されたレンズアクチュエータにおいても、オートフォーカス制御を行うことは明らかである。

h 図5、6から、端子50A、50Bは、突起412に対して異なる高さにあることが看て取れる。

(イ)上記記載及び図面から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠とした箇所を括弧内に記載した。

引用発明
「カメラに用いられるオートフォーカス制御を行うレンズアクチュエータに関して(【0001】、【0039】、g)、
レンズアクチュエータ400は、レンズホルダ41と、ワイヤ42と、ガイドボール43A?43Dと、固定ユニット52と、カバー45と、上側付勢バネ46と、下側付勢バネ47と、コイルバネ48を備え(【0055】)、
固定ユニット52は、ベース51と、端子50A、50Bと、ガイドプレート49を備え(【0056】)、
レンズアクチュエータ400は、ワイヤ42の変形による張力でレンズホルダ41を固定ユニット52に対し上方に移動させ、ワイヤ42が発生する張力が小さくなるとコイルバネ48の復元力でレンズホルダ41を固定ユニット52に対し下方に移動させるよう構成されており(【0057】)、
レンズホルダ41の壁部415の外周下部には突起412が形成されており、レンズホルダ41の側面の二箇所には、窪んでガイドボール43A?43Dと接触するボール受け面413A、413Bが形成されており(【0058】)、
端子50A、50Bは、突起412に対して異なる高さにあり(h)、
ベース51は、底面部511と、側面部512A、512Bと、端子受け面513A、513Bと、柱部514から構成され、端子受け面513A、513Bには、端子50A、50Bが固定され、側面部512A、512Bと、端子受け面513A、513Bと、柱部514の内面に接するようにガイドプレート49が固定され(【0062】)、
ガイドプレート49の両端は曲げられており、その曲げられた部分の内側にガイドボール43A?43Dと接触するボール受け面492A、492Bが形成され(【0063】)、
ガイドボール43A及び43Bは、ボール受け面413Bとボール受け面492Bの間に配置され、ガイドボール43C及び43Dは、ボール受け面413Aとボール受け面492Aの間に配置され、レンズホルダ41がガイドプレート49に対し上下動する際に、ガイドボール43A?43Dがボール受け面413A、491A或いはボール受け面413B、491Bと接触しながら回転するよう、ボール受け面413A、413Bに保持され(【0064】)、
ワイヤ42の両端は導電性の端子50A、50Bに固定され、ワイヤ42の中央部はレンズホルダ41の突起412の下側を通過して配置され、ワイヤ42は形状記憶合金で形成され(【0065】)、
レンズアクチュエータ400を動作させる際には、ワイヤ42に流す電流を増加させると、ワイヤ42において発生するジュール熱が増加することによってワイヤ42の温度は上昇して、ワイヤ42の長さが縮み、ワイヤ42に流す電流を減少させると、ワイヤ42において発生するジュール熱が減少することによってワイヤ42の温度は減少して、ワイヤ42の長さが伸び(【0067】)、
ワイヤ42が伸び縮みする際に、ガイドボール43Aと43Bがボール受け面413Bとボール受け面492Bと接触を保ち、ガイドボール43Cと43Dがボール受け面413Aとボール受け面492Aと接触を保つため、レンズホルダ41は光軸OAに沿って上下方向に移動し(【0068】)、
駆動部材となるコイルバネ48は、ワイヤ42に流す電流を減少させたときに、レンズホルダ41を下方向に移動させる働きをもつ(【0069】)、
レンズアクチュエータ。」

イ 引用文献5
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献5である、米国特許出願公開第2013/0258172号明細書(2013年10月3日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「[0052] The drive module frame 510 comprises guides 514 which are coupled to a support 414 formed at the lens module 400 to guide the forward and backward movement of the lens module 400. The guides 514 may have ball bearings 516 mounted thereto, which maintain a gap between the magnetic piece 522 and the coils 512 and facilitate the forward and backward movement of the lens module 400.」
(仮訳;駆動モジュールフレーム510は、レンズモジュール400に形成された支持部414に結合されてレンズモジュール400の前後移動をガイドするガイド514を含む。ガイド514にはボールベアリング516が装着されてもよく、これは磁性片522とコイル512との間のギャップを維持し、レンズモジュール400の前後移動を容易にする。)

b FIG.1Aは以下のとおりである。


c FIG.1Aから、2カ所のボールベアリング516は、レンズモジュール400の同一側面に配されていることが看て取れる。

ウ 周知文献1
周知文献1である、特開平6-43347号公報(平成6年2月18日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、たとえばレンズ鏡筒における可動レンズ群等といった回動または摺動動作される可動部材を精密にしかも円滑に可動させるためのガイド軸や送りねじ等のような軸状部材の防塵シールに関する。」

b 「【0045】図4は本発明の別の実施例を示すものであり、図において上述した実施例と同一または相当する部分には同一番号を付して、具体的な説明は省略する。ここで、この実施例では、図3との比較において明らかな通り、可動部材としての可動レンズ枠4のガイド孔4a部分を、軸線方向にのみ摺動自在に支持するリニアボールベアリング20に置き換えた場合を示している。そして、このようなリニアボールベアリング20で可動レンズ枠4をガイド軸5を摺動自在に支持している場合において、その両端側の防塵シール8,9の存在によって、リニアボールベアリング20による支持部へのほこりの侵入を、確実に防止できることは言うまでもない。」

c 図4は以下のとおりである。


d 図4から、リニアボールベアリング20は互いに接触していることが看て取れる。

エ 周知文献2
周知文献2である、特開昭59-116627号公報(昭和59年7月5日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「この発明は電磁力によりレンズユニットを直線的に駆動し、合焦操作等を可能にした撮影レンズ駆動装置に関するものである。」(1頁左欄下から4行?2行)

b 「7はレンズ後群8a , 8bの鏡枠で, 該鏡枠7は前記円筒状継鉄2の内径面に設けたフランジ部2bにポールベアリング9を介して摺動自在に軸受けされている。」(2頁右上欄11行?14行)

c 第2図は以下のとおりである。



d 第2図から、ボールベアリング9は互いに接触していることが看て取れる。

オ 周知文献3
周知文献3である、米国特許出願公開第2014/0255016号明細書(2014年9月11日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「The lens carrier 14 is guided by means of a pair of guide devices along the optical axis. The pair of guide devices includes well-known guide units g1 and g2, and ball bearings b1 and b2. The lens barrel 13 may be detachably coupled to the lens carrier, or constituted of a one-piece structure.」(2頁右欄末行?3頁左欄5行)
(仮訳;レンズキャリア14は、一対のガイド装置によって光軸に沿って案内される。一対のガイド装置は、周知のガイドユニットg1,g2と、ボールベアリングb1,b2とを備えている。レンズバレル13は、レンズキャリアに着脱可能に結合されてもよく、または一体構造で構成されてもよい。)

b FIG2Aは以下のとおりである。


c FIG2Aから、ボールベアリングb1、b2はレンズキャリア14の同一側面に配されていること、及びボールベアリングb1、b2はそれぞれ互いに接していることが看て取れる。

(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「レンズホルダ41」、「コイルバネ48」は、それぞれ本件補正発明の「可動レンズキャリア」、「戻し弾性要素」に相当する。

イ 引用発明の「ワイヤ42」は、「形状記憶合金で形成され」ているので、本件補正発明の「形状記憶合金ワイヤ」に相当する。

ウ 引用発明の「レンズホルダ41」は、「壁部415の外周下部には突起412が形成されており」、「ワイヤ42の中央部はレンズホルダ41の突起412の下側を通過して配置され」るので、引用発明は、本件補正発明の「形状記憶合金ワイヤを留めるための突起頂点を具備する突起を有する」との構成を有する。

エ 引用発明において「ベース51は、底面部511と、側面部512A、512Bと、端子受け面513A、513Bと、柱部514から構成され、端子受け面513A、513Bには、端子50A、50Bが固定され、側面部512A、512Bと、端子受け面513A、513Bと、柱部514の内面に接するようにガイドプレート49が固定され」ていることから、引用発明の「ベース51」、「ガイドプレート49」、「端子50A、50B」が、それぞれ本件補正発明の「底板」、「ハウジング」、「2つの電気端子」に相当する。また、引用発明の「ベース51」と「ガイドプレート49」が互いに固定されたものが、本件補正発明の「オートフォーカス本体」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の「前記底板と前記ハウジングとは互いに対して固定されて、オートフォーカス本体を形成し、前記2つの電気端子は前記オートフォーカス本体上に固定され」との構成を有する。

オ 引用発明において「端子50A、50Bは、突起412に対して異なる高さにあ」るので、引用発明は、本件補正発明の「前記突起頂点に対して異なる高さにある」との構成を有する。

カ 引用発明において「ワイヤ42の両端は導電性の端子50A、50Bに固定され、ワイヤ42の中央部はレンズホルダ41の突起412の下側を通過して配置され、・・・ワイヤ42が伸び縮みする際に、ガイドボール43Aと43Bがボール受け面413Bとボール受け面492Bと接触を保ち、ガイドボール43Cと43Dがボール受け面413Aとボール受け面492Aと接触を保つため、レンズホルダ41は光軸OAに沿って上下方向に移動」することから、引用発明は、本件補正発明の「前記形状記憶合金ワイヤは、前記可動レンズキャリアの光軸に平行な方向に前記可動レンズキャリアに力を及ぼすように前記可動レンズキャリアの前記突起頂点に接触し、前記形状記憶合金ワイヤの両端部は、前記オートフォーカス本体の前記2つの電気端子にロックされ」との構成を有する。

キ 引用発明において「レンズホルダ41の側面の二箇所には、窪んでガイドボール43A?43Dと接触するボール受け面413A、413Bが形成されており」、「ガイドプレート49の両端は曲げられており、その曲げられた部分の内側にガイドボール43A?43Dと接触するボール受け面492A、492Bが形成され」、「ガイドボール43A及び43Bは、ボール受け面413Bとボール受け面492Bの間に配置され、ガイドボール43C及び43Dは、ボール受け面413Aとボール受け面492Aの間に配置され、レンズホルダ41がガイドプレート49に対し上下動する際に、ガイドボール43A?43Dがボール受け面413A、491A或いはボール受け面413B、491Bと接触しながら回転するよう、ボール受け面413A、413Bに保持され」ることから、引用発明の「ボール受け面413A、413B」、「ボール受け面492A、492B」は、それぞれ本件補正発明の「側部チャネル」に相当し、引用発明の「ボール受け面413A、413B」、「ボール受け面492A、492B」によって形成されるものが、本件補正発明の(転動球体を転動可能に収納および保持する)「ガイドチャネル」に相当する。
そして、上記のように引用発明において「ガイドボール43A?43Dがボール受け面413A、491A或いはボール受け面413B、491Bと接触しながら回転するよう、ボール受け面413A、413Bに保持され」ており、ガイドボールはボール受け面と接触しながら回転するので、「ボール受け面413A、413B」と「ボール受け面492A、492B」の間で転動しているといえるから、本件補正発明の「転動球体」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の「前記ハウジングと前記可動レンズキャリアとは、対応する同一側面に少なくとも2つの側部チャネルをそれぞれが有し、前記転動球体を転動可能に収納および保持する少なくとも2つのガイドチャネルを形成する前記少なくとも2つの側部チャネルを介して位置が揃っており、これにより、前記転動球体は、前記可動レンズキャリアが光軸に沿って移動する際に前記ガイドチャネル内で光軸に沿って転動し」と、「前記ハウジングと前記可動レンズキャリアとは、少なくとも2つの側部チャネルをそれぞれが有し、前記転動球体を転動可能に収納および保持する少なくとも2つのガイドチャネルを形成する前記少なくとも2つの側部チャネルを介して位置が揃っており、これにより、前記転動球体は、前記可動レンズキャリアが光軸に沿って移動する際に前記ガイドチャネル内で光軸に沿って転動し」の点で一致する。

ク 引用発明において「ワイヤ42が発生する張力が小さくなるとコイルバネ48の復元力でレンズホルダ41を固定ユニット52に対し下方に移動させるよう構成されて」いることから、引用発明は、本件補正発明の「前記戻し弾性要素は、前記可動レンズキャリア上の前記形状記憶合金ワイヤの力と反対の前記可動レンズキャリアの光軸方向に平行な方向のみ力を前記可動レンズキャリアに及ぼす」との構成を有する。

ケ 引用発明の「レンズアクチュエータ」は、「カメラに用いられるオートフォーカス制御を行う」ものであり、作動装置ということができるから、本件補正発明の「カメラモジュールオートフォーカス作動装置」に相当する。

コ 上記ア?ケから、本件補正発明と引用発明は、 以下の一致点で一致し、以下の相違点1?3で相違する。

<一致点>
「ハウジングと、
形状記憶合金ワイヤを留めるための突起頂点を具備する突起を有する可動レンズキャリアと、
形状記憶合金ワイヤと、
少なくとも4つの転動球体と、
底板と、
前記突起頂点に対して異なる高さにある2つの電気端子と、
戻し弾性要素と
を備え、
前記底板と前記ハウジングとは互いに対して固定されて、オートフォーカス本体を形成し、
前記2つの電気端子は前記オートフォーカス本体上に固定され、
前記形状記憶合金ワイヤは、前記可動レンズキャリアの光軸に平行な方向に前記可動レンズキャリアに力を及ぼすように前記可動レンズキャリアの前記突起頂点に接触し、前記形状記憶合金ワイヤの両端部は、前記オートフォーカス本体の前記2つの電気端子にロックされ、
前記ハウジングと前記可動レンズキャリアとは、少なくとも2つの側部チャネルをそれぞれが有し、前記転動球体を転動可能に収納および保持する少なくとも2つのガイドチャネルを形成する前記少なくとも2つの側部チャネルを介して位置が揃っており、これにより、前記転動球体は、前記可動レンズキャリアが光軸に沿って移動する際に前記ガイドチャネル内で光軸に沿って転動しており、
前記戻し弾性要素は、前記可動レンズキャリア上の前記形状記憶合金ワイヤの力と反対の前記可動レンズキャリアの光軸方向に平行な方向のみ力を前記可動レンズキャリアに及ぼすことを特徴とする、カメラモジュールオートフォーカス作動装置。」

<相違点1>
側部チャネルについて、本件補正発明が(ハウジングと可動レンズキャリアの)「対応する同一側面に」有しているのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。

<相違点2>
転動球体について、本件補正発明が、「ガイドチャネルそれぞれ内の前記転動球体は連接し」ているのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。

<相違点3>
戻し弾性要素について、本件補正発明が、「戻し弾性要素は、前記ハウジングと前記可動レンズキャリアとの間に取り付けられる」のに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。

(4)判断
ア 相違点1について
ボールベアリングを、レンズキャリアの同一側面に配することは、引用文献5、周知文献3に記載されているように、通常取り得る一態様にすぎず、引用発明において、そのような態様を採用することにより、相違点1に係る本件補正発明のようにすることは、当業者が必要に応じて適宜選択しうる設計事項にすぎない。

イ 相違点2について
本件補正発明、本願明細書において、「連接」について格別の定義がなされておらず、また、審判請求書において、「連接」とする補正に関して「当該補正は、本願明細書の図8、10、11及び12に基づくものである。」(「[3]補正(1)請求項1」参照)と記載され、図面のみをその根拠にしていることから、「連接」とは何らかの特別な態様を意味するものではなく、「転動球体」が互いに接触していることを意味していると解することが自然である。
また、カメラ等の装置においてレンズ等の部材を移動させるために複数のボールベアリングを用いるに際し、ボールベアリングを互いに接触させて配することは、周知文献1?3に記載されているように周知技術である。
引用文献1における実施の形態や図面等を参酌すると、ガイドボール43A、43B、及びガイドボール43C、43Dは互いに離間して配されており、また、ガイドボールの配置に関して「【0033】ここで、ガイドボール23A?23Dは、上面視で対角に備えられたガイド部351A、351Bそれぞれに対し二つずつ配置される。ここで、四つのガイドボール23A?23Dの中心を結び、図4のような仮想領域Sを設定すると、この仮想領域Sの面積が大きいほうが、固定ユニット24に対するレンズホルダ21の前後左右方向の振動を抑制できる。【0034】仮想領域Sが大きいほうがレンズホルダ21の振動が抑制できるため、ガイド部351A、351Bは、レンズホルダ21、固定ユニット24の上面視で対角線上に設けるのが望ましい。【0035】なお、ガイドボール23A?23Dの配置は、少なくとも仮想領域Sの面積が確保できれば本発明の実施は可能である。つまり、ガイドボール23A? 23Dは三個以上で、それらの中心を結ぶ仮想領域S が面積を有する配置、言い換えると仮想領域Sが多角形を構成する配置であれば良い。」との記載があるが、これらの記載等は、ガイドボール同士が接触することによって生じる問題点を示しているわけではなく、例えば、ガイドボールを接触させたとしても、ガイドボールの数や大きさが一定程度あれば、上記仮想領域Sの面積は一定以上確保できることになることなどを考慮すると、ガイドボールの接触そのものを除外しているとは認められない。
そして、一般的に、同様の技術分野における周知技術を適宜採用することは当業者が通常行いうる事項であることに鑑みれば、引用発明において、上記周知技術を採用して、相違点2に係る本件補正発明のようにすることは当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。

ウ 相違点3について
引用発明の「コイルバネ48」は、本件補正発明の「戻し弾性要素」と同じ機能を有しており、「コイルバネ48」の一端は「可動レンズキャリア」(レンズホルダ41)に固定し、他端は「可動レンズキャリア」(レンズホルダ41)が移動する対象の部材に固定されれば足りるわけであるから、その対象の部材として「ハウジング」を選択することは、各部材の位置関係等に応じて、当業者が適宜選択しうる設計事項にすぎない。

エ 作用効果について
相違点1?3に係る本件補正発明の効果について、引用発明、引用文献5に記載された事項及び周知技術から、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。

オ 請求人の主張について
請求人は、令和2年9月15日上申書において、
(ア)「引用文献1に明示的に開示されているのは各ガイドボールが離隔されている構成であり、この隔離に有益な技術効果がある構成です。従って、本願請求項1発明のようにガイドボールを連接させるには上述のように阻害要因があります。」(2-2(4))
(イ)「引用文献1では、下の図4の拡大図からも分かるように、要素21Aに形成された凹部によってガイドボールが互いから離隔された適所に保持されていることが分かります。・・・(7) この構成は、図7に関連する段落〔0058〕の「レンズホルダ41の側面の二箇所には、窪んでガイドボール43A?43Dと接触するボール受け面413A、413Bが形成されている。」とに記載から明らかです。従って、ガイドボールは回転できますが、ガイドチャネル内で光軸に沿って転動しません。」(2-2(6)(7))
と主張している。
しかしながら、上記主張(ア)については、上記アで説示したように、ガイドボールを連接させることに阻害要因があるとはいえない。
上記主張(イ)については、請求人が「回転」と「転動」の用語をどのように使い分けているか必ずしも明確ではないが、上記(3)キで説示したように「ガイドボール43A?43Dがボール受け面413A、491A或いはボール受け面413B、491Bと接触しながら回転するよう、ボール受け面413A、413Bに保持され」ており、ガイドボールがボール受け面に接触しながら回転するということは、ガイドボールが転動しているといえる。
よって、請求人の主張は採用できない。

(5)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献5に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年4月2日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件補正発明に対応する本件補正前の発明は、平成31年4月24日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に係る発明であるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献1及び5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」
というものである。

3 進歩性について
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、5及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「転動球体」について「前記可動レンズキャリアが光軸に沿って移動する際に前記ガイドチャネル内で光軸に沿って転動し、かつ、前記ガイドチャネルそれぞれ内の前記転動球体は連接しており」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2に記載したとおり、引用発明、引用文献5に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献5に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献5に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-12-04 
結審通知日 2020-12-07 
審決日 2020-12-18 
出願番号 特願2017-519481(P2017-519481)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藏田 敦之  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 佐藤 洋允
井上 博之
発明の名称 カメラモジュールオートフォーカス作動装置およびその制御方法  
代理人 阿部 達彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
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