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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1374241 |
審判番号 | 不服2020-6608 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-05-15 |
確定日 | 2021-05-12 |
事件の表示 | 特願2018-536262「光結合装置、方法および光結合装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月27日国際公開、WO2017/124227、平成31年 1月24日国内公表、特表2019-502167〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、2016年1月18日(外国庁受理 中国)を国際出願日とする外国語出願であって、その後の主な手続きの経緯は、以下のとおりである。 平成30年 7月31日 :国際出願翻訳文提出書・出願審査請求書 手続補正書の提出 平成31年 4月25日付け:拒絶理由通知(令和元年5月14日発送) 令和元年 8月 6日 :意見書・手続補正書の提出 令和2年 1月 9日付け:拒絶査定(同年1月21日送達) 同年 5月15日 :審判請求書・手続補正書の提出 同年 9月 9日 :上申書の提出 第2 令和2年5月15日付け手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年5月15日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正内容 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成31年8月6日付け手続補正後のもの)に、 「【請求項1】 光結合装置であって、前記光結合装置は、第1の光チップと第2の光チップと光書き込み導波路ブロックとを備え、 前記第1の光チップは、第1の結合方式で前記光書き込み導波路ブロックに結合され、 前記第2の光チップは、第2の結合方式で前記光書き込み導波路ブロックに結合され、 前記光書き込み導波路ブロックは、内部に屈折率が増大した光導波路が書き込まれており、 前記第1の光チップは、前記光書き込み導波路ブロックを使用することによって前記光導波路を介して前記第2の光チップに光学的に相互接続される、光結合装置。」とあったものを、 本件補正後に、 「【請求項1】 光結合装置であって、前記光結合装置は、第1の光チップと第2の光チップと光書き込み導波路ブロックとを備え、 前記第1の光チップは、第1の結合方式で前記光書き込み導波路ブロックに結合され、 前記第2の光チップは、第2の結合方式で前記光書き込み導波路ブロックに結合され、 前記光書き込み導波路ブロックは、内部に屈折率が増大した光導波路が書き込まれており、 前記第1の光チップは、前記光書き込み導波路ブロックを使用することによって前記光導波路を介して前記第2の光チップに光学的に相互接続され、 前記第1の結合方式および前記第2の結合方式の少なくともいずれか一方は、断熱結合器ACを含む、光結合装置。」と補正する内容を含むものである(なお、下線は、請求人が手続補正書において付したものである。)。 2 補正目的 (1)本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な「第1の結合方式および第2の結合方式」について、「少なくともいずれか一方は、断熱結合器ACを含む」ことを特定するものであって、その補正前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (2)よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められることから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、これが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)を、以下に検討する。 3 独立特許要件 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記「第2 1」に、本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。 (2)引用文献 ア 原査定の拒絶の理由において、引用文献1として引用された米国特許出願公開第2013/0223788号明細書(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の記載がある(なお、下線は、当審で付した。以下同様。)。 (ア)「 …… 」(第11頁左欄ないし第18頁左欄) (日本語訳 1 光学装置であって、 少なくとも1つの平面基板と、 前記少なくとも1つの平面基板上に平面集積された少なくとも1つの光導波路と、 光接続構造体と、 平面集積光導波路の1つに前記光接続構造体を介して接続された少なくとも1つの端部を有する少なくとも1つの光導波路構造体とを備え、 前記少なくとも1つの光導波路構造体は、少なくとも一部は、前記少なくとも1つの平面集積光導波路のための集積平面の外側に配置され、前記光導波路構造体のコア領域とクラッド領域との間の屈折率コントラストは、少なくとも0.01である、光学装置。 …… 18 請求項1に記載の光学装置であって、前記光接続構造体は、テーパ、逆テーパ、格子カプラ、周期構造の一つの形状を有している、光学装置。) (イ)「 」 (日本語訳 【0001】1 技術分野 【0002】本発明は、マイクロオプティクスおよびナノオプティクスの分野に関するものであり、より詳細には、平面集積フォトニックシステムの光相互接続(チップ?チップ接続)および平面集積フォトニックシステムのガラスファイバに対する接続(ファイバ?チップ接続)のための導波路構造体に関するものである。本発明は、さらに、導波路構造体を製造するための方法およびデバイスに関する。) (ウ)「 」 (日本語訳 【0010】2 先行技術 【0011】ドイツ特許文献DE 10 2007 055530 A1には、ワークピースのレーザビーム加工のための方法が記載されている。特に、本明細書には、加工されるワークピース内の平面を見つけるための方法が開示されている。この方法では、三次元構造を検出することはできず、導波路の製造並びに予め位置決めされた構造体に対する接続については、そこでは言及されていない。 【0012】ドイツ特許文献DE 601 14 820 T2には、ポリマーまたはオリゴマー材料中に三次元光学的に機能的な構造体を生成するための多光子誘起光構造化方法の使用が記載されている。この記述は、リソグラフィ方法およびレジスト材料に集中している。生成された構造体を予め位置決めされた構成要素に適合させ、接続することについては言及されていない。 【0013】ドイツ特許文献DE 601 30 531 T2には、光硬化性樹脂からなる光導波路の製造が記載されている。この記述は、導波路のコア領域およびシース領域を画定するために使用される、異なる照明工程のシーケンスに焦点を当てている。ここでの樹脂は、光ビームの伝搬方向に沿って構成されている。このようにして、導波路は、一連の、そしていくつかの部分では直線状のセクションから構成されている。この方法では、可変の導波路断面を有する自由曲線は作成できない。したがって、本発明の基礎となる課題定義は、この方法では解決できない。 【0014】ドイツ特許文献DE102007038642A1には、多光子過程を用いた伝搬方向に可変の断面幾何学的形状を有する導波路の三次元構造化が記載されている。放射線によって誘発される屈折率の局所的な増加は、光誘導のために使用される。結果として達成可能な屈折率コントラストは低い(典型的には0.005)ため、この方法ではコンパクトなフォトニックワイヤボンドの実現は不可能である。このようにして生成された導波路構造体の予め位置決めされた光学要素に対する適応および/または接続は、本明細書の主題ではない。 【0015】国際特許出願公開WO2009/021256 A1には、ポリマー基板上に光導波路を製造する方法が記載されている。本明細書では、リソグラフィ方法およびレジスト材料に焦点を当てており、ここでは、2光子吸収過程の支援による三次元構造についても言及されている。このようにして生成された導波路構造体を、予め位置決めされた光学要素に適応させることおよび/または接続することは、本明細書の主題の一部ではない。 【0016】欧州特許文献EP 0 689 067 A2には、予め位置決めされた構成要素間で接続用導波路の光構造化のための方法が記載されている。構造化に使用される光ビームは、非線形光学材料に接続される導波路の端部から直接放射される。光強度の高い領域、すなわち光線に沿って、特に光線の交点では、光誘起重合反応が生じ、これにより、光を放射するための経路に沿って導波路構造体が形成される。これらの導波路構造体は、接続される光学素子上で画定したとおりに方向付けられるが、この方法で作成できる導波路の幾何学的形状は大きく制限される。特に、事前に計算され、最適化された自由形状の導波路を生成することは不可能である。達成可能な屈折率コントラストはさらに非常に低く、接続される構成要素は、互いに相対的に高い精度で位置決めされる必要がある。さらに、リソグラフィ波長での単一光子プロセスでは透明でないことが多いという点で、受動部品の使用はさらに困難になっている。多光子重合プロセスの使用は、必要とされる容量が受動的構造では輸送できないことが多いため、ほとんどの場合失敗する。本発明の基礎となる課題定義は、この方法では解決できない。 【0017】ドイツ特許文献DE 19545 721 C2には、ファイバ端面および/またはレーザファセット上に光学マイクロコンポーネントを製造する方法が記載されている。このために、まず、光学マイクロコンポーネントが生成されるべき領域の位置がイメージング手段によって検出される。そして、得られたデータに基づいて、光マイクロコンポーネントをファイバ端面またはレーザファセット上に高い相対精度で生成する。ここでいう光学マイクロコンポーネントとは、レンズまたはプリズムを意味する。予め位置決めされた光学要素上の導波路の接続および幾何学的適応は言及されておらず、記載されたイメージング方法では三次元位置検出が可能ではないので、この方法では実現不可能である。したがって、記載された方法は、本発明のために定義された課題を解決するために使用することができない。 【0018】Schmid,G.;Leeb,W.;Langer G.;Schmidt,V&Houbertz,R.,Gbit/s transmission via two-photon absorption-inscribed optical waveguides on printed circuit boards;Electronic Letters,2009,pp.45,219-221は、レジスト材料および/またはVCSEL(垂直共振器面発光レーザ)とフォトダイオードを接続するマルチコア導波路の体積内で製造されたマルチモード導波路の製造および機能実証を開示している。接続されるべき集積化された構成要素により、光は基板の表面を介してカップルインおよびカップルアウトされる。この方法では、シングルモードの平面集積導波路に接続するという課題は発生しない。したがって、本発明の基礎となる課題は、上述の方法では解決できない。さらに、そこに記載された構造体は、非常に低い屈折率(0.005と推定される)を有しており、これはフォトニックワイヤボンドに必要とされる高い集積密度に到達することを可能にしない。 【0019】Schmidt,V;Kuna L.;Satzinger,V.;Houbertz,R.;Jakopic,G.&Leising G.;Application of two-photon 3D lithography for fabrication of embedded ORMOCER waveguides;Porc.SPIE,Vol.6476は、2光子重合による導波路構造体の製造を開示している。この導波路は、放射線によって誘起される屈折率の局所的な増加に基づいている。導波路は、VCSELと、関連するフォトダイオードとを接続する。導波路の直径は「数十ミクロン」を測定すると記述されており、刊行物に示された強度分布によって確認されたマルチモーダル導波路が、ここでも使用されていると仮定することができる。したがって、記載されている導波路は、原則としてシングルモードの集積光学素子の接続には適していない。したがって、平面的集積横シングルモード導波路構造体に埋め込み導波路を接続することは考慮されていない。さらに、低い屈折率差により、極端に大きな構造(導波路の長さは2?12cm)となり、導波路の曲率もそれに応じて大きな半径を仮定する必要がある。フォトニックワイヤボンドに必要な集積密度は、この方法では達成できない。本明細書はさらに、完全な導波路断面が単一の書き込み通過の過程で生成されることを開示している。この目的のために、円筒レンズからなるテレスコープがビーム経路内に配置され、これにより、レジスト材料内の集束領域の形状を対応して適応させることができる。このことから、前述の配置で達成され得る空間分解能は、10μmの範囲であると仮定することができ、これは、生成された構造体の横方向シングルモード、平面集積導波路に対する効率的な光学的接続を妨げる。この刊行物に記載されている製造方法は、いわゆる「マシンビジョンシステム」の支援で接続される光学要素の位置検出をさらに含んでいる。したがって、横方向の位置検出にはCCDカメラが使用され、顕微鏡対物レンズに隣接して設置される。この配置で達成できる精度は限られており、せいぜい数マイクロメートル程度である。これは、マルチモーダル接続導波路には十分である。しかし、シングルモード接続導波路をあらかじめ位置決めされた構成要素に接続することは、精度不足のためにこのシステムではできない。軸方向では、マシンビジョンシステムは共焦点配置の支援で試料表面の位置を検出するだけである。レジスト材料に埋め込まれた成分の三次元的な位置検出は意図されておらず、したがって、この配置は、平面集積導波路ベースの構成要素に直接かつ高精度で接続された導波路構造体を生成するために使用することができない。このようにして製造された導波路の測定された挿入損失は7.8dBであり、ナノフォトニックシステムを接続する場合、このような高い値は許容できない。 【0020】Houbertz,R.;Satzinger,V.;Schmid V.;Leeb,W.&Langer,G.;“Optoelectronic printed circuit board:3D structures written by two-photon absorption;Organic 3D Photonics Materials and Devices II,”SPIE Int.Soc.Optical Engineering,2008,Proceedings Vol.7053,B530-B530は、上述の刊行物と密接に関連している。それは、予め位置決めされた構成要素を接続するための導波路構造体の製造について記載している。導波路構造体を画定するために、2光子プロセスによって誘起される屈折率の局所的な増加がこの場合にも使用される。しかしながら、結果として得られる構造体は、極端に大きな断面積を有し、したがって、マルチモーダルであり、本発明の目的の解決には適していない。導波路はさらに、低い屈折率コントラストとそれに対応する大きな曲率半径を有し、したがって、集積密度に関してフォトニックワイヤボンドの要求事項を満たすことができない。ここでも、接続される構成要素の横方向の位置は、顕微鏡対物レンズに隣接して設置されたカメラの支援で検出される。軸方向の位置検出は、コンポーネントキャリアの表面に垂直に固定されたVCSELとフォトダイオードチップの上端の検出に限定される。この配置で達成できる相対位置精度は、数μmにすぎない断面積を有するシングルモード平面集積導波路を接続するためには十分ではないと推測することができる。さらに、生成された導波路構造体は、チップの表面に直接接続することはできず、導波路は、フォトダイオード(VCSEL)まで約10μmの距離で終了(開始)する。このための技術的な理由は開示されておらず、垂直に実装されたチップによって引き起こされるシャドウイング効果が役割を果たしていると推測すべきである。上述した配置は、対応する接続構造体を介して平面集積導波路に直接接続することができるフォトニックワイヤボンドを製造するために使用することはできない。 【0021】Houbertz,R;Wolter,H.;Dannberg,P;Serbin,J.&Uhlig,S.;Advanced packaging materials for optical applications:bridging the gap between nm-size structures and large-area panel processing;Art.No.612605,Photonics Packaging and Integration VI,2006,pp.6126,12605-12605は、2光子重合に基づく関連する構造化方法を有する無機?有機ハイブリッドポリマー(いわゆるオルモセル)と、オプトエレクトロニクスのためのそれらの用途について論じている。他のものの中で例として議論されているのは、2光子重合を有する光学要素の製造であり、ここでは、これらの構成要素は、VCSELやマイクロレンズのような事前に構造化された構成要素を既に含んでいる基板上で実現できるという利点として言及されている。しかしながら、刊行物は、TPP構造化導波路と集積光導波路との結合については論じていない。そこに記載されている導波路は、マルチモーダルであり、したがって、シングルモード平面集積導波路に損失なく結合することはできない。したがって、本発明のために規定された課題は、本刊行物に記載された方法では解決できない。) (エ)「 」 (日本語訳 発明の開示 【0022】本発明の目的は、横シングルモードの平面集積フォトニックシステムの低損失での光接続を可能にする技術を提供することにある。 【0023】本発明のさらなる目的は、三次元で自由に設計できる光導波路構造体を提供することである。このような光導波路構造は、本明細書ではフォトニックワイヤボンド(PWB)とも呼ばれる。フォトニックワイヤボンドは、高い集積密度を可能にすると同時に、大きな個数での経済的な製造を可能にすることを意図している。 【0024】上記および他の目的は、光学装置を提供することによって、本発明に従って達成され、これは一実施形態では、少なくとも1つの平面基板、少なくとも1つの平面基板上に平面集積された少なくとも1つの光導波路、光接続構造体、および少なくとも1つの平面集積光導波路に光接続構造体を介して接続された少なくとも1つの端部を有する少なくとも1つの光導波路構造体を備え、少なくとも1つの光導波路構造体は、少なくとも1つの平面集積光導波路のための集積平面の少なくとも一部は外側に配置され、少なくとも1つの光導波路構造体のコア領域とクラッド領域との間の屈折率コントラストは、少なくとも0.01である。 【0025】このように、本発明の光導波路構造体(フォトニックワイヤボンド)は、高分解能三次元構造化技術を用いて加工可能な材料から構成される。フォトニックワイヤボンドは、特殊な接続構造体を介して、平面集積光導波路、例えば横シングルモードの平面集積光導波路に光学的に接続されていてもよい。) (オ)「 」 (日本語訳 【0038】本発明の基礎となる導波路構造体は、横シングルモード平面集積フォトニックシステムの低損失での光接続のためのものである。本発明の機能原理を、図1に図示した配置の例を用いて説明する。光学装置(1)は、異なる基板(2?4)(「チップ」)上に平面集積され、横シングルモード導波路(50)を含む複数のフォトニックシステムで構成されている。異なるチップ上に配置された導波路(50)は、相互接続され、および/または出力および入力導波路(5?6)に接続され(図12?15も参照)、入力/出力導波路(6)のみが図1に図示されている。このため、接続されるべき要素(2?6)は、コンポーネントキャリア(10)上に実装され、少なくとも部分的にレジスト材料(11)で覆われている。接続されるべき要素の各々は、本明細書ではフォトニックワイヤボンドとも呼ばれる、接続用光導波路構造体(20?22)が取り付けられる光接続点(15?18)を備えている。接続されるべき要素と接続点の正確な位置は、測定システムによって検出される。それに基づいて、例えば、可能な限り低い伝搬損失でシングルモード動作を可能にする接続導波路のための好ましい幾何学的形状が決定される。この幾何学的形状はデジタルデータセットに変換され、その後、接続用光導波路構造体(20、21、22)の構造化は、このデータセットに従って、直接描画リソグラフィ法の支援でレジスト材料の体積内で生じる。この方法は、多光子過程を介して短パルスレーザー(30)の集光ビーム中に誘導された重合反応に基づくことができる。さらなる加工工程では、このようにして画定された構造体は、レジスト材料を現像することによって露出させることができ、周囲の空気がクラッド材料として機能する自立型導波路として動作させることができる。しかしながら、現像に続いて、それらは低屈折クラッド材に埋め込むこともでき、このようにして、機械的に安定化され、または物理化学的な環境の影響から保護されることができる。) (カ)「 」 (日本語訳 【0050】図3(b)および図3(c)に概略的に図示されている逆テーパは、フォトニックワイヤボンド(20)と平面集積シリコンオンインシュレーター(SOI)ストリップ導波路(50)との間の接続のための好ましい接続構造体を示している。この場合のシリコン導波路のコアの屈折率は、波長1550nmに対して約3.48である。原則として、導波路は、200nm?500nm、特に200nm?350nmの間の好ましい高さを有するほぼ長方形の断面を有する。集積導波路(50)の幅w1は、好ましくは200nm?800nmの間、特に好ましくは300nm?500nmの間である。フォトニックワイヤボンド(20)に対する逆テーパとして具現化された接続構造体(56)において、この幅は、好ましくは120nm未満、特に80nm未満、特に60nm未満の値w2に低減される。逆テーパの長さL1は、好ましくは10μm?400μmの間であり、特に好ましくは15μm?200μmの間であり、特に好ましくは20μm?120μmの間である。フォトニックワイヤボンド(20)は、好ましくは0.5μm以上10μm以下、特に好ましくは1μm以上5μm以下、特に好ましくは1.5μm以上4μm以下の範囲の幅w3を有する。テーパ(24)の幅w4は、好ましくは幅w3よりも小さいか、またはこれに等しく、w1よりも大きいか、またはこれに等しい。したがって、w4の数値は、好ましくは200nm?10μmの間、特に好ましくは300nm?4μmの間、特に好ましくは500nm?2μmの間である。テーパ(24)の長さL2は、好ましくは10μm?400μmの間、特に好ましくは15μm?200μmの間、特に好ましくは20μm?120μmの間である。) (キ)「 」 (日本語訳 【0085】図15の例は、工程6の間にレジスト材料(11、12)の非露光領域が除去された構造体を示す。自立した接続導波路は、最初に保護層(14)を提供され、その後、低屈折率クラッド材料(25)に埋め込まれる。) (ク)図1は、以下のものである。 2?4…異なる基板(チップ) 6…入力/出力導波路 10…コンポーネントキャリア 11…レジスト材料 15?18…光接続点 20?22…光導波路構造体 30…短パルスレーザ 50…横シングルモード導波路 (ケ)図3b及び図3cは、以下のものである。 20…フォトニックワイヤボンド 24…テーパ 50…ストリップ導波路 56…光接続構造体 L1…逆テーパの長さ L2…テーパの長さ (コ)図15は、以下のものである。 2、3…異なる基板(チップ) 5、6…入力/出力導波路 14…保護層 20?22…光導波路構造体 25…低屈折率クラッド材料 28…導波路 イ 引用文献に記載された発明 (ア)上記ア(ア)及び(イ)の記載からして、引用文献には、 光相互接続(チップ?チップ接続)のための「光導波路構造体」を利用した以下の「光学装置」が記載されているものと認められる。 「平面集積光導波路が形成された少なくとも1つの平面基板と、 光接続構造体と、 前記平面集積光導波路に前記光接続構造体を介して接続された光導波路構造体と、を備え、 前記光導波路構造体は、光相互接続(チップ?チップ接続)のためのものであって、少なくとも一部は、平面集積光導波路のための集積平面の外側に配置され、コア領域とクラッド領域との間の屈折率コントラストは、少なくとも0.01であり、 前記光接続構造体は、テーパ、逆テーパ、格子カプラ、周期構造の一つの形状を有している(請求項18)、光学装置。」(請求項1を引用する請求項18) (イ)上記ア(ウ)の[0014]の記載によれば、ドイツ特許文献DE102007038642A1に開示された、固体材料内部に「光書き込み導波路」を形成する方法では、コアとクラッドの屈折率差が小さい(典型的には0.005)ことが理解出る(以下「汎用技術1」という。)。 また、本願出願当時に、固体材料内部に「光書き込み導波路」を形成する際に、コアとクラッドの屈折率差を前記汎用技術1よりも大きく(典型的には0.01以上)できる他の方法もよく知られていることである(以下「汎用技術2」という。)。 必要ならば、例えば、特開2001-311847号公報(【0046】、【0048】、図1)及び特許第3649835号公報(【0012】、図2)等を参照されたい。 ちなみに、引用文献の[0014]に記載されたドイツ特許文献DE102007038642A1の図1は、以下のものである。 (ウ)上記ア(エ)及び(カ)の記載を踏まえて、図1、図3b、図3c、及び図15を見ると、以下のことが理解できる。 a 「少なくとも一つの平面基板」は、複数の平面基板であってもよいこと。 b 「少なくとも一つの平面基板」には、それぞれ、「平面集積光導波路」が形成されていること。 c 「光導波路構造体」は、レジスト材料11を露光・現像することにより、周囲の空気がクラッド材料として機能する自立型導波路として、または、低屈折クラッド材に埋め込むことで製造できること。 以下、レジスト材料11を「ブロック状のレジスト材料」という。 d 「光接続構造体」及び「平面集積光導波路」の端部形状は、「テーパ形状」であってもよいこと。 (ウ)上記ア(キ)の記載を踏まえて、図1及び図15を見ると、以下のことが理解できる。 「光導波路構造体」は、ブロック状のレジスト材料を露光・現像した後にブロック状の低屈折率クラッド材料に埋め込まれること。 以下「低屈折率クラッド材料からなるブロック体」という。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)の検討からして、引用文献には、上記アの「光学装置」を図15に示された装置に適用した、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「平面集積光導波路が形成された複数の平面基板と、 光接続構造体と、 前記平面集積光導波路に前記光接続構造体を介して接続された光導波路構造体と、を備え、 前記光導波路構造体は、光相互接続(チップ?チップ接続)のためのもので、ブロック状のレジスト材料を露光・現像した後に低屈折率クラッド材料からなるブロック体に埋め込まれたものであり、 前記平面集積導波路及び前記光接続構造体の端部形状はテーパ形状である、光学装置。」 (3) 対比 ア 本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。 (ア)a 引用発明の「光導波路構造体」は、「光相互接続(チップ?チップ接続)のためのもの」であるから、「(複数の)平面基板」は、「光チップ」と呼べるものである。 b 引用発明の「低屈折率クラッド材料からなるブロック体」は、内部に「光導波路構造体」が埋め込まれており、本願補正発明の「光書き込み導波路ブロック」とは、「導波路ブロック」で一致する。 c また、引用発明の「光学装置」は、「光導波路構造体」を利用して「チップ?チップ接続」を行うものであるから、本願補正発明の「光結合装置」に相当する。 d よって、本願補正発明と引用発明とは、「光結合装置であって、前記光結合装置は、第1の光チップと第2の光チップと導波路ブロックとを備える」点で一致する。 (イ)a 引用発明の「光導波路構造体」は、「(テーパ形状の)光接続構造体」を介して「平面集積光導波路」同士を光結合していることは明らかである。 b 引用発明の「低屈折率クラッド材料からなるブロック」は、内部に「光導波路構造体」が埋め込まれており、当該「光導波路構造体」の屈折率は、「低屈折率クラッド材料からなるブロック体」の屈折率より大きいことは明らかである。 c よって、本願補正発明と引用発明は、「第1の光チップは、第1の結合方式で導波路ブロックに結合され、 第2の光チップは、第2の結合方式で前記導波路ブロックに結合され、 前記導波路ブロックは、内部に屈折率が大きい光導波路を有し、 前記第1の光チップは、前記導波路ブロックを使用することによって前記光導波路を介して前記第2の光チップに光学的に相互接続されている」点で一致する。 (ウ)引用発明においては、「平面集積光導波路及び光接続構造体の端部形状はテーパ形状である」ところ、当該「テーパ形状」が光結合のための形状、つまり、結合器を構成することは、当業者にとって明らかである。 よって、本願補正発明と引用発明とは、「第1の結合方式および第2の結合方式の少なくともいずれか一方は、結合器を含む」点で一致する。 イ 上記アの検討からして、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「光結合装置であって、前記光結合装置は、第1の光チップと第2の光チップと導波路ブロックとを備え、 前記第1の光チップは、第1の結合方式で前記導波路ブロックに結合され、 前記第2の光チップは、第2の結合方式で前記導波路ブロックに結合され、 前記導波路ブロックは、内部に屈折率が大きい光導波路を有し、 前記第1の光チップは、前記導波路ブロックを使用することによって前記光導波路を介して前記第2の光チップに光学的に相互接続され、 前記第1の結合方式および前記第2の結合方式の少なくともいずれか一方は、結合器を含む、光結合装置。」 一方、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1> 導波路ブロックに関して、 本願補正発明は、「光書き込み導波路ブロック」であって、「内部に屈折率が増大した光導波路が書き込まれて」いるのに対して、 引用発明は、「光書き込み導波路ブロック」と呼べるか否か不明である点。 <相違点2> 結合器に関して、 本願補正発明は、「断熱結合器AC」であるのに対して、 引用発明は、「断熱結合器AC」といえるか否か不明である点。 (4)判断 ア 上記<相違点1>について検討する。 (ア)引用発明の「光導波路構造体」は、引用文献の記載(【0038】等)によれば、直接描画リソグラフィ法により形成されたものであるから、「光書き込み導波路」と呼べるものである。 してみると、引用発明の「低屈折率クラッド材料からなるブロック体」は、結果として、「内部に『光書き込み導波路』を有する構造物」であるといえる。 よって、上記<相違点1>は、実質的な相違点ではない。 (イ)仮に、実質的な相違点であるとしても、原査定の拒絶の理由で指摘したように、引用文献には「汎用技術1」が開示され、また、上記(2)イ(イ)で指摘したように、屈折率差を大きくした「汎用技術2」も本願出願当時によく知られていたことである。 してみると、引用発明の「『光導波路構造体』が埋め込まれた『低屈折率クラッド材料からなるブロック体』」に代えて、上記「汎用技術2」の「光書き込み導波路ブロック」を採用することは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。 イ 上記<相違点2>について検討する。 (ア)本願補正発明の「断熱結合器AC」に関連して、本願明細書には、以下の記載がある。 a 「【0060】 図10は、本発明の一実施形態に係る光チップと光書き込み導波路ブロックとの間のAC結合の概略構造図である。図10に示すように、光チップ51が、ACを使用することによって光書き込み導波路ブロック52に結合される。光信号が、エバネッセント波結合の態様で光チップ51における光導波路から光書き込み導波路ブロック52における光導波路に入る。光導波路を書き込むプロセスにおいて、光導波路のパラメータが柔軟に設計されてよい。具体的には、光書き込み導波路ブロックにおける光導波路は、二次元taper構造を有するよう設計されてよく、光導波路は、光の伝搬方向に対して垂直な方向にくさび形構造を有する。加えて、光の伝搬方向に対して、水平方向および縦方向におけるくさび形の輻輳角は、同一であってよく、または異なっていてよい。本発明の本実施形態において、光導波路は、二次元taper構造およびくさび形構造を有するよう設計され、これにより、光チップ結合導波路の設計および処理の困難さが低減され得る。」 図10は、以下のものである。 51…光チップ 52…光書き込み導波路ブロック b 上記記載からして、 「断熱結合器AC」とは、「二つの光導波路(「光チップ」と「光書き込み導波路ブロック」の導波路)」の光結合を、二次元taper構造を採用して、エバネッセント波結合する結合器であると解される。 (イ)一方、引用発明においては、「平面集積光導波路及び光接続構造体の端部形状はテーパ形状である」ところ、当該「テーパ形状」は、エバネッセント波結合を生じさせる形状であることは、当業者にとって明らかである。 必要ならば、下記の文献を参照。 a 特開2006-309197号公報(【0009】、図1) b 特開2008-261952号公報(【0029】、図4) c 特表2005-534178号公報(【0026】、図1、図4) d 国際公開第2008/114624号(【要約】、図1) ちなみに、特表2005-534178号公報の図4は、以下のものである。 (ウ)してみると、引用発明は、「断熱結合器AC」を備えているといえるから、上記<相違点2>は実質的な相違点ではない。 仮に、実質的な相違点であるとしても、当業者が光結合損失等を考慮して「断熱結合器AC」を採用することは、適宜なし得ることである。 ウ まとめ 上記検討からして、本願補正発明は、引用発明である。 また、本願補正発明は、当業者が引用発明及び上記汎用技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。 エ 効果 本願補正発明の奏する効果は、当業者が引用発明の奏する効果及び上記汎用技術2から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 4 本件補正についてのむすび 本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 1」にて、本件補正前の請求項1に係る発明として記載したとおりのものである。 本願発明を再掲すると、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 光結合装置であって、前記光結合装置は、第1の光チップと第2の光チップと光書き込み導波路ブロックとを備え、 前記第1の光チップは、第1の結合方式で前記光書き込み導波路ブロックに結合され、 前記第2の光チップは、第2の結合方式で前記光書き込み導波路ブロックに結合され、 前記光書き込み導波路ブロックは、内部に屈折率が増大した光導波路が書き込まれており、 前記第1の光チップは、前記光書き込み導波路ブロックを使用することによって前記光導波路を介して前記第2の光チップに光学的に相互接続される、光結合装置。」 2 対比・判断 本願発明は、前記「第2 2 補正目的」の検討によれば、本願補正発明から「第1の結合方式」と「第2の結合方式」について、「少なくともいずれか一方は、断熱結合器ACを含む」との限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 3 独立特許要件」で検討したとおり、引用発明である又は当業者が引用発明及び上記汎用技術2に基づいて容易に発明をすることができたものあるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明である又は当業者が引用発明及び上記汎用技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。 3 平成31年8月6日提出の意見書における主張について 請求人は、本願発明は、予め光導波路が書き込まれた光書き込み導波路ブロックを作成し、その後、光書き込み導波路ブロックを光チップの間または光チップと光ファイバとの間に接合することができるという有利な効果を奏する旨主張する[(c)本願発明の有利な効果]。 しかしながら、本願発明は、物に関する発明であり、製造方法に関する発明ではない。 また、請求人の主張する効果は、上記「汎用技術1」及び「汎用技術2」が奏する効果であり、上記「2」の判断を左右するものではない。 4 まとめ 本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本願発明は、当業者が引用発明及び上記汎用技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 【付言】 1 令和2年9月9日提出の上申書における補正案について 上申書において、本願補正発明に「前記光導波路は、光の伝搬方向に対して垂直な方向にくさび型構造を有する」との発明特定事項を追加する補正案を提示している(「2.本願発明が特許されるべき理由」を参照。)。 しかしながら、光結合器において、水平方向だけではなく、垂直方向についてもテーパ形状とすることは、当業者が適宜なし得る設計事項である(必要ならば、上記「c 特表2005-534178号公報」等を参照。) よって、本願補正発明を補正案のとおり補正したとしても、新規性・進歩性は認められない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本願発明は、当業者が引用発明及び上記汎用技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-11-25 |
結審通知日 | 2020-12-01 |
審決日 | 2020-12-18 |
出願番号 | 特願2018-536262(P2018-536262) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井部 紗代子 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 星野 浩一 |
発明の名称 | 光結合装置、方法および光結合装置の製造方法 |
代理人 | 龍華国際特許業務法人 |