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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1374243
審判番号 不服2020-7700  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-04 
確定日 2021-05-12 
事件の表示 特願2018-544889「接着力に優れた光学フィルム、およびこれを含む偏光板」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月29日国際公開、WO2018/056670、平成31年 4月 4日国内公表、特表2019-509517〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2018-544889号(以下、「本件出願」という。)は、2017年(平成29年)9月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年9月20日 韓国、2017年9月18日 韓国)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 元年 7月12日付け:拒絶理由通知書
令和 元年10月17日付け:意見書
令和 元年10月17日付け:手続補正書
令和 2年 3月 9日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
平成 2年 6月 4日付け:審判請求書
令和 2年 6月 4日付け:手続補正書
令和 2年 7月21日付け:上申書
令和 2年10月14日付け:上申書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月4日にした手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1) 本件補正前(令和元年10月17日にされた手続補正後)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 基材層と、前記基材層上に形成されたプライマー層とを含む、二軸延伸光学フィルムにおいて、
前記基材層は、アクリル系樹脂およびポリカーボネートを含み、
前記プライマー層は、ポリエステル系樹脂80?95重量部およびポリウレタン系樹脂5?20重量部を含む、二軸延伸光学フィルム。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「 基材層と、前記基材層上に形成され、偏光子と接するプライマー層とを含む、二軸延伸光学フィルムにおいて、
前記基材層は、アクリル系樹脂およびポリカーボネートを含み、
前記プライマー層は、ポリエステル系樹脂80?95重量部およびポリウレタン系樹脂5?20重量部を含む、二軸延伸光学フィルム。」

(3) 本件補正について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の、発明を特定するために必要な事項である「プライマー層」を、本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0075】の記載に基づいて、「偏光子と接する」ものに限定する補正を含むものである。
そして、本件補正前の請求項1に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題は、同一である(【0002】及び【0008】、【0009】)。
したがって、請求項1についてした本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合するとともに、同条第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正後発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

2 独立特許要件違反についての判断
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由2(特許法第29条第2項)において引用文献1として引用された、国際公開第2015/162926号(以下、同じく「引用文献1」という。)は、本件出願の優先権主張の日(以下、「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。なお、引用発明の認定や判断等に活用した箇所に下線を付した(以下、同じ。)。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は、メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂を含有して成るメタクリル樹脂組成物に関する。また、前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルム、成形体、および前記フィルムを具備する偏光板に関する。
背景技術
[0002] 液晶表示装置には各種の樹脂製フィルムが使用されている。このうち偏光子保護フィルムには、トリアセチルセルロースが主に使用されている。トリアセチルセルロースからなるフィルムは透湿度が高いため、薄膜化するにしたがって、偏光子の品質低下を引き起こす傾向がある。偏光子保護フィルムの改良は液晶表示装置の薄型化において課題となっている。
[0003] そこで、新たな偏光子保護フィルムの材料としてメタクリル樹脂が検討されている。メタクリル樹脂からなるフィルムを延伸処理すると靭性が高まることが知られている(特許文献1参照)。ところが、通常のメタクリル樹脂フィルムを延伸すると位相差が大きくなり、例えばIPS液晶方式では画面の品位低下を引き起こしてしまう。
[0004] メタクリル樹脂にポリカーボネート樹脂などの樹脂を添加することで、位相差の小さいフィルムを得やすくなることが知られている(特許文献2?5)。しかしながら、これらのメタクリル樹脂組成物は、透明性を確保するために、分子量の低いポリカーボネート樹脂を添加しているため延伸性が十分でなかった。具体的には、より薄膜に延伸する場合には割れ易くなり、また、延伸後のフィルムの強度を高めるために、より低い温度で延伸する場合には、破断しやすくなるといった問題を抱えていた。また、メタクリル樹脂組成物の耐熱性を高めるため、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)の高いメタクリル樹脂は、一般的に分子量分布が狭く、通常のメタクリル樹脂を用いたメタクリル樹脂組成物よりも延伸性が十分でなかった。
・・・略・・・
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0006] 本発明は、上記背景に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、透明性が高く、厚さ方向の位相差が小さく、延伸しやすいメタクリル樹脂組成物を提供することである。また、厚さが均ーで且つ表面平滑性に優れ、生産性が高く、強度の大きいメタクリル樹脂組成物からなるフィルムを提供することである。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明者らは、上記の目的を達成すべく検討を重ねた結果、以下の態様を包含する本発明を完成するに至った。
[0008]〔1〕:メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂および高分子加工助剤を含むメタクリル樹脂組成物であって、
前記メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチル由来の構造単位の含有量が80質量%以上であって、重量平均分子量が200000以下であり、前記ポリカーボネート樹脂は、1000以上、32000以下の粘度平均分子量を有しており、前記メタクリル樹脂100質量部に対する前記ポリカーボネート樹脂の含有量が1質量部以上、4質量部以下であり、
前記高分子加工助剤は、3,000以上、40,000以下の平均重合度を有しており、前記メタクリル樹脂100質量部に対する前記高分子加工助剤の含有量が0.3質量部以上、6質量部以下であり、
メタクリル樹脂組成物中に含有される前記メタクリル樹脂と前記ポリカーボネート樹脂との合計量が、80質量%以上であるメタクリル樹脂組成物。
[0009]〔2〕:前記メタクリル樹脂が、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が50%以上であり、重量平均分子量が80000?200000であり、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が92質量%以上、100質量%以下である〔1〕に記載のメタクリル樹脂組成物。
・・・略・・・
[0010]〔8〕:〔1〕?〔7〕のいずれかひとつに記載のメタクリル樹脂組成物からなる成形体。
〔9〕:〔1〕?〔7〕のいずれかひとつに記載のメタクリル樹脂組成物からなるフィルム。
〔10〕:厚さが10?50μmである、〔9〕に記載のフィルム。
〔11〕:面積比で1.5?8倍に二軸延伸された〔9〕または〔10〕に記載のフィルム。
〔12〕:偏光子保護フィルムとして用いられる〔9〕?〔11〕のいずれかひとつに記載のフィルム。
〔13〕:〔12〕に記載のフィルムが少なくとも1枚積層された偏光板。
・・・略・・・
発明の効果
[0011] 本発明によれば、透明性が高く、厚さ方向の位相差が小さく、延伸しやすいメタクリル樹脂組成物を提供することができる。また、厚さが均ーで且つ表面平滑性に優れ、生産性が高く、強度の大きいメタクリル樹脂組成物からなるフィルムを提供することができるという優れた効果を奏する。」

イ 「発明を実施するための形態
[0013] 本発明のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂および高分子加工助剤を含有するものである。また、本発明のフィルムは、前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムである。
[0014] 本発明に用いられるメタクリル樹脂は、得られるフィルムの耐熱性の観点からメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が、メタクリル樹脂の質量を基準にして、80質量%以上であり、・・・略・・・特に好ましくは99質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
・・・略・・・
[0016] 本発明に用いられるメタクリル樹脂は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)の下限が、耐熱性の観点から、好ましくは50%、・・・略・・・最も好ましくは60%である。該メタクリル樹脂は、製膜性の観点から、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)の上限が、好ましくは99%、・・・略・・・最も好ましくは64%である。このようなシンジオタクティシティを有するメタクリル樹脂は、分子量分布が狭いことに起因して延伸性が充分でないため、高分子加工助剤の添加がより効果を発現する。
[0017] 三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(以下、単に「シンジオタクティシティ(rr)」と称することがある。)は、連続する3つの構造単位の連鎖(3連子、triad)が有する2つの連鎖(2連子、diad)が、ともにラセモ(rrと表記する)である割合である。
・・・略・・・
[0018] 本発明に用いられるメタクリル樹脂は、重量平均分子量(以下、「Mw」と称することがある。)が、200000以下であり、好ましくは80000?200000、より好ましくは85000?160000、さらに好ましくは90000?120000である。かかるMwが80000以上で、かつ、シンジオタクティシティ(rr)が50%以上あることで、得られるフィルムは、強度が高く、割れ難く、延伸し易い。そのためフィルムをより薄くすることができる。またMwが200000以下であることで、メタクリル樹脂の成形加工性が高まるので、得られるフィルムの厚さが均一で且つ表面平滑性に優れる傾向となる。
・・・略・・・
[0021] 本発明に用いられるメタクリル樹脂のガラス転移温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは118℃以上、さらに好ましくは120℃以上、よりさらに好ましくは123℃以上、最も好ましくは124℃以上である。該メタクリル樹脂のガラス転移温度の上限は、通常140℃、好ましくは130℃である。ガラス転移温度は、分子量やシンジオタクティシティ(rr)を調節することによって制御することができる。ガラス転移温度がこの範囲にあると、得られるフィルムの熱収縮などの変形が起こり難い。なお、ガラス転移温度は、実施例に記載の方法で測定した中間点ガラス転移温度である。
・・・略・・・
[0029] 本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、多官能ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物との反応によって得られる重合体である。該ポリカーボネート樹脂は、メタクリル樹脂との相溶性、得られるフィルムの透明性がよいという観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
[0030] 本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、得られるメタクリル樹脂組成物からポリカーボネートがブリードアウトし難いという観点から、粘度平均分子量(以下、「Mv」と称することがある)が1000以上であり、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上、さらにより好ましくは10000以上である。また、メタクリル樹脂との相溶性の観点から、粘度平均分子量が、32000以下、好ましくは22000以下、より好ましくは18000以下、さらにより好ましくは17000以下である。使用するメタクリル樹脂のシンジオタクティシティ(rr)が高いほど、ポリカーボネート樹脂との相溶性が高く、より大きな粘度平均分子量のポリカーボネート樹脂を使用することができる。このような比較的粘度平均分子量の小さいポリカーボネートを添加する場合、延伸性が低下するため、高分子加工助剤の添加がより効果を発現する。
・・・略・・・
[0034] 本発明に用いられるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは140℃以上である。該ポリカーネト樹脂のガラス転移温度の上限は、通常180℃である。
・・・略・・・
[0043] 高分子加工助剤は、高分子量成分を多く含んでいる物質である。高分子加工助剤と樹脂材料との間には高分子どうしの絡み合い(ネットワーク)が発生し、その絡み合い点が疑似架橋点として作用するとされている。そのため高分子加工助剤を添加した場合、ゴムを変形した時と同じように、その樹脂組成物を均ーに延伸することができる。高分子加工助剤を無添加の樹脂材料の場合は、この疑似架橋点が存在しないため、例えば、延伸前のフィルムに厚みの薄い部分が存在するとその部分に応力集中し、局部的に伸ばされて破断するといった不具合が生じる場合がある。
[0044] 本発明において用いる高分子加工助剤は、平均重合度が3,000?40,000の高分子化合物であり、好ましくはメタクリル酸メチル単位60質量%以上およびこれと共重合可能なビニル系単量体単位40質量%以下からなるものである。平均重合度は好ましくは6,000?30,000であり、より好ましくは10,000?25,000である。メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル系単量体の例としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸エステル、・・・略・・・を挙げることができる。そうような高分子加工助剤としては、三菱レイヨン社製のメタブレンシリーズ、ダウ社製またはクレハ社製のパラロイドシリーズ等が挙げられる。
・・・略・・・
[0050] 本発明の高分子加工助剤の平均重合度は、3,000以上、40,000以下の範囲とする。高分子加工助剤の平均重合度が3,000未満では本発明のメタクリル樹脂組成物をフィルムにする際の製膜性の向上が認められないおそれや、延伸した際に十分な延伸性向上の改善効果が認められないことがある。一方、高分子加工助剤の平均重合度が40,000を超えると、透明性が低下すること、または、溶融張力が高くなりすぎて製膜時にメルトカーテンの両端部がちぎれやすくなることがある。高分子加工助剤の配合量は、メタクリル樹脂100質量部に対し、0.3?6質量部であり、好ましくは0.5?3質量部である。高分子加工助剤の配合量が0.3質量部未満であると、メタクリル樹脂組成物のフィルム製膜性および延伸性の十分な改善効果が発現しなくなる。一方、高分子加工助剤の配合量が6質量部を超えると、メタクリル樹脂組成物のガラス転移温度が低下すること、また透明性が低下すること、さらには、溶融張力が高くなりすぎて製膜時にメルトカーテンの両端部がちぎれやすくなることがある。
[0051] 本発明のメタクリル樹脂組成物に含有されるポリカーボネート樹脂の含有量は、前記メタクリル樹脂100質量部に対して1質量部以上、4質量部以下、より好ましくは2質量部以上、3質量部以下である。
[0052] 本発明のメタクリル樹脂組成物に含有されるメタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂との合計量は、80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは94質量%以上、さらに好ましくは96質量%以上である。なお、係る量の上限については、本発明の効果を得られる範囲で高分子加工助剤を本発明のメタクリル樹脂組成物に含有できれば特に制限はない。
・・・略・・・
[0055] 本発明のメタクリル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、・・・略・・・などの添加剤を含有していてもよい。
・・・略・・・
[0071] 本発明のメタクリル樹脂組成物は、ガラス転移温度が、好ましくは120℃以上、より好ましくは123℃以上、さらに好ましくは124℃以上である。メタクリル樹脂組成物のガラス転移温度の上限は特に制限はないが、好ましくは140℃、より好ましくは130℃である。
[0072] 本発明のメタクリル樹脂組成物をGPCにて測定して決定されるMwは、好ましくは70000?200000、より好ましくは72000?160000、さらに好ましくは75000?120000である。本発明に用いられるメタクリル樹脂組成物をGPCにて測定して決定される分子量分布は、好ましくは1.2?2.5、より好ましくは1.3?2.0である。Mwや分子量分布がこの範囲にあると、メタクリル樹脂組成物の成形加工性が良好となり、耐衝撃性や靱性に優れた成形体を得易くなる。
・・・略・・・
[0075] 本発明のフィルムは、その製法によって特に限定されない。本発明のフィルムは、例えば、前記メタクリル樹脂組成物を、溶液キャスト法、溶融流延法、押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法などの公知の方法にて製膜することによって得ることができる。これらのうち、押出成形法が好ましい。押出成形法によれば、透明性に優れ、改善された靭性を持ち、取扱い性に優れ、靭性と表面硬度および剛性とのバランスに優れたフィルムを得ることができる。押出機から吐出されるメタクリル樹脂組成物の温度は好ましくは160?270℃、より好ましくは220?260℃に設定する。
・・・略・・・
[0078] 本発明のフィルムは延伸処理を施したものであってもよい。延伸処理によって、機械的強度が高まり、ひび割れし難いフィルムを得ることができる。延伸方法は特に限定されず、一軸延伸、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法などが挙げられる。延伸時の温度は、均ーに延伸でき、高い強度のフィルムが得られるという観点から、100?200℃が好ましく、120?160℃がより好ましい。また特に強度を大きくしたい場合は、低い温度である方が好ましく、例えば110?150℃が好ましく、125?140℃がより好ましい。好ましくはメタクリル樹脂組成物のガラス転移温度以上で延伸することが好ましい。延伸は、通常長さ基準で100?500%/分で行われる。延伸の後、熱固定を施したり、フィルムを弛緩することにより、より熱収縮の少ないフィルムとすることができる。延伸倍率に制限はないが、通常面積比で1.5?8倍程度とする。
[0079] 本発明のフィルムは、その中に含まれるメタクリル樹脂の量が、透明性や厚さ方向の位相差が小さいという観点から、好ましくは78?98.7質量%、より好ましくは85?97質量%である。
また、本発明のフィルムは、その中に含まれるポリカーボネート樹脂の量が、厚さ方向の位相差が小さいという観点から、好ましくは1?3.8質量%、より好ましくは2?2.9質量%である。
また、本発明のフィルムは、その中に含まれる高分子加工助剤の量が、延伸性の観点から、好ましくは0.3?5.6質量%、より好ましくは0.5?2.9質量%である。
[0080] 本発明のフィルムの厚さは、特に制限されないが、光学フィルムとして用いる場合、その厚さは、好ましくは1?300μm、より好ましくは10?50μm、さらに好ましくは15?40μmである。
・・・略・・・
[0082] 本発明のフィルムは、波長590nmの光に対する面内方向位相差Reが、フィルムの厚さ40μmの時に、好ましくは5nm以下、より好ましくは4nm以下、さらに好ましくは3nm以下、特に好ましくは2nm以下、最も好ましくは1nm以下である。
本発明のフィルムは、波長590nmの光に対する厚さ方向位相差Rthが、フィルムの厚さ40μmの時に、-10nm以上10nm以下であることが好ましく、より好ましくは-5nm以上、5nm以下、さらに好ましくは-4nm以上、4nm以下、さらにより好ましくは-3nm以上、3nm以下、特に好ましくは-2nm以上、2nmm以下、最も好ましくは-1m以上、1nmm以下である。
面内方向位相差および厚さ方向位相差がこのような範囲であれば、位相に起因する画像表示装置の表示特性への影響が顕著に抑制され得る。より具体的には、干渉ムラや3Dディスプレイ用液晶表示装置に用いる場合の3D像の歪みが顕著に抑制され得る。
なお、面内方向位相差Reおよび厚さ方向位相差Rthは、それぞれ、以下の式で定義される値である。
Re=(nx-ny)×d
Rth=((nx+ny)/2-nz)×d
ここで、nxはフィルムの遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルムの進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率であり、d(nm)はフィルムの厚さである。遅相軸は、フィルム面内の屈折率が最大になる方向をいい、進相軸は、面内で遅相軸に垂直な方向をいう。
[0083] 本発明のフィルムは、透明性が高く、耐熱性が高く、位相差が小さく、薄いため、偏光子保護フィルムや後述する各種フィルム等に好適である。
[0084] 本発明の偏光板は、本発明のフィルムからなる偏光子保護フィルムを少なくとも1枚積層されたものである。好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子と本発明の偏光子保護フィルムが接着剤層を介して積層されてなるものである。
[0085] 本発明の好ましい一実施形態に係る偏光板は、図1に示すように、偏光子11の一方の面に、接着剤層12、易接着層13、および本発明の偏光子保護フィルム14がこの順で積層され、偏光子11のもう一方の面に、接着剤層15、および光学フィルム16がこの順で積層されてなるものである。
[0086] 上記ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)で染色して一軸延伸することによって得られる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を任意の適切な方法(例えば、樹脂を水または有機溶媒に溶解した溶液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法)にて製膜することによって得ることができる。該ポリビニルアルコール系樹脂は、重合度が、好ましくは100?5000、さらに好ましくは1400?4000である。また、偏光子に用いられるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚さは、偏光板が用いられるLCDの目的や用途に応じて適宜設定され得るが、代表的には5?80μmである。
[0087] 本発明の偏光板に設けることができる接着剤層は光学的に透明であれば特に制限されない。接着剤層を構成する接着剤として、例えば、水系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤などを用いることができる。これらのうち、水系接着剤および活性エネルギー線硬化型接着剤が好適である。
[0088] 水系接着剤は、その形態が、水溶液であってもよいし、ラテックスであってもよい。水系接着剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニルボリマー系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリエステル系、エポキシ系等を例示できる。このような水系接着剤には、必要に応じて、架橋剤や他の添加剤、酸等の触媒も配合することができる。前記水系接着剤としては、ビニルポリマーを含有する接着剤などを用いることが好ましく、ビニルポリマーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。またポリビニルアルコール系樹脂には、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などの水溶性架橋剤を含有することができる。特に偏光子としてポリビニルアルコール系のポリマーフィルムを用いる場合には、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する接着剤を用いることが、接着性の点から好ましい。
・・・略・・・
[0089] 活性エネルギー線硬化型接着剤としては、単官能および二官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物やビニル基を有する化合物を硬化性成分として用いる他、エポキシ化合物やオキセタン化合物と光酸発生剤とを主体とする光カチオン型硬化成分を使用することもできる。活性エネルギー線としては、電子線や紫外線を用いることができる。
・・・略・・・
[0091] 接着剤層の形成方法は特に制限されない。例えば、上記接着剤を対象物に塗布し、次いで加熱または乾燥することによって形成できる。接着剤の塗布は本発明の偏光子保護フィルムまたは光学フィルムに対して行ってもよいし、偏光子に対して行ってもよい。
・・・略・・・
接着剤層の厚さは、乾燥状態において、好ましくは0.01?10μm、さらに好ましくは0.03?5μmである。
[0092] 本発明の偏光板に設けることができる易接着層は、偏光子保護フィルムと偏光子とが接する面の接着性を向上させるものである。易接着層は、易接着処理などによって設けることができる。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理等の表面処理が挙げられる。また、易接着層は、アンカー層を形成する方法、または前記の表面処理とアンカー層を形成する方法との併用によって設けることができる。これらの中でも、コロナ処理、アンカー層を形成する方法、およびこれらを併用する方法が好ましい。
[0093] 上記アンカー層としては、例えば、反応性官能基を有するシリコーン層が挙げられる。反応性官能基を有するシリコーン層の材料は、特に制限されないが、例えば、イソシアネート基含有のアルコキシシラノール類、アミノ基含有アルコキシシラノール類、メルカプト基含有アルコキシシラノール類、カルボキシ含有アルコキシシラノール類、エポキシ基含有アルコキシシラノール類、ビニル型不飽和基含有アルコキシシラノール類、ハロゲン基含有アルコキシシラノール類、イソシアネート基含有アルコキシシラノール類が挙げられる。これらのうち、アミノ系シラノールが好ましい。シラノールを効率よく反応させるためのチタン系触媒や錫系触媒を上記シラノールに添加することにより、接着力を強固にすることができる。また上記反応性官能基を有するシリコーンに他の添加剤を加えてもよい。他の添加剤としては、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペンーフェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂などの粘着付与剤;紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤等を挙げることができる。また、アンカー層として、セルロースアセテートブチレート樹脂をケン化させたものからなる層も挙げられる。
[0094] 上記アンカー層は公知の技術により塗工、乾燥して形成される。アンカー層の厚さは、乾燥状態において、好ましくは1?100nm、さらに好ましくは10?50nmである。
・・・略・・・
[0095] 光学フィルム16は本発明の偏光子保護フィルムであってもよいし、別の任意の適切な光学フィルムであってもよい。用いられる光学フィルムは、特に制限されず、例えば、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、メタクリル樹脂等からなるフィルムが挙げられる。
・・・略・・・
[0103] 本発明の偏光板は、画像表示装置に使用することができる。画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、・・・略・・・のような自発光型表示装置、液晶表示装置が挙げられる。液晶表示装置は、液晶セルと、当該液晶セルの少なくとも片側に配置された上記偏光板とを有する。
[0104] 本発明のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とが均ーに相溶するため透明性が高く、また、延伸させても厚さ方向の位相差が小さい。また、得られるフィルムは延伸性が高いものである。故に、本発明のメタクリル樹脂組成物によれば、薄くて、面内均一性に優れ、表面平滑性が高いフィルムを得ることができる。また、低い温度での延伸が可能となり、強度の大きいフィルムが得られる。さらに、メタクリル樹脂のシンジオタクシティティ(rr)を特定値とすることにより、耐熱性を高くし、熱収縮率の小さいフィルムを提供できる。」

ウ 「実施例
[0105] 以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、物性値等の測定は以下の方法によって実施した。
[0106](重合転化率)
・・・略・・・
[0107](重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn))
各製造例、実施例および比較例で得られたメタクリル樹脂およびメタクリル樹脂組成物のMwおよび分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて下記の条件でクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンの分子量に換算した値を算出した。ベースラインはGPCチャートの高分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てマイナスからゼロに変化する点を結んだ線とした。
GPC装置:東ソー社製、HLC-8320
検出器:示差屈折率検出器
カラム:東ソー社製のTSKgel SuperMultipore HZM-Mの2本とSuperhz4000を直列に繋いだものを用いた。
溶離剤:テトラヒドロフラン
溶離剤流量:0.35ml/分
カラム温度:40℃
検量線:標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成
[0108](粘度平均分子量(Mv)
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、ウベローデ粘度計を用いてポリカーボネート樹脂0.5gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の比粘度η_(sp)を20℃で測定し、下記のSchnellの式を満足する値として、20℃の塩化メチレン溶液の極限粘度[η]から、算出した。
η_(sp)/c=[η]+0.45×[η]^(2)c
(但し[η]は極限粘度、上記条件ではc=0.5)
[η]=1.23×10^(-4)Mv^(0.83)
[0109](三連子表示のシンジオタクティシティ(rr))
メタクリル樹脂の^(1)H-NMRスペクトルを、核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用いて、溶媒として重水素化クロロホルムを用い、室温、積算回数64回の条件にて、測定した。そのスペクトルからTMSを0ppmとした際の0.6?0.95ppmの領域の面積(X)と、0.6?1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測し、次いで、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)を式:(X/Y)×100にて算出した。
[0110](ガラス転移温度Tg)
メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびメタクリル樹脂組成物を、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定装置(島津製作所製、DSC-50(品番))を用いて、230℃まで一度昇温し、次いで室温まで冷却し、その後、室温から230℃までを10℃/分で昇温させる条件にてDSC曲線を測定した。2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
[0111](メルトマスフローレート(MFR))
・・・略・・・
(メルトボリュームフローレート(MVR))
各実施例および比較例でフィルムの製造に用いたメタクリル樹脂組成物の原料であるポリカーボネート樹脂を、JIS K7210に準拠して、300℃、1.2kg荷重、10分間の条件で測定した。
[0112](表面平滑性)
・・・略・・・
[0113](高分子加工助剤の平均重合度)
自動希釈型毛細管粘度計(ウベローデ型、毛細管内径=0.5mm)を用い、クロロホルムを溶媒として20℃で測定して、PMMA換算重合度で求めた。
[0114](加熱収縮率)
・・・略・・・
[0115](全光線透過率)
各実施例および比較例で得られた二軸延伸フィルムから50mm×50mmの試験片を切り出し、JIS K7361-1に準じて、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM-150)を用いてその全光線透過率を測定した。またメタクリル樹脂組成物の評価は、1.0mm厚の成形体を熱プレスにて成形し、全光線透過率を測定した。
[0116](ヘイズ)
・・・略・・・
[0117](厚さ方向位相差Rthおよび面内方向位相差Re)
各実施例および比較例で得られた二軸延伸フィルムから40mm×40mmの試験片を切り出した。この試験片を、自動複屈折計(王子計測社製KOBRA-WR)を用いて、温度23土2℃、湿度50土5%において、波長590nm、40゜傾斜方向の位相差値から3次元屈折率nx、ny、nzを求め、前述した式より厚さ方向位相差Rthおよび面内方向位相差Reを計算した。試験片の厚さd(nm)は、デジマティックインジケータ(ミツトヨ社製)を用いて測定し、屈折率nは、デジタル精密屈折計(カルニュー光学工業社製 KPR-20)で測定した。
(延伸性)
各実施例および比較例で得られた未延伸フィルムを二軸延伸する際、以下の基準で延伸性を評価した。延伸は、未延伸フィルムを、100mm×100mmに切り出し、パンタグラフ式二軸延伸試験機(東洋精機社製)により、ガラス転移温度+10℃の延伸温度、一方向120%/分の延伸速度、一方向2倍の延伸倍率で逐次二軸延伸し後(面積比で4倍)、10秒保持し、次いで冷却した。
A:割れやクラックのないフィルムを10サンプル中、5サンプル以上取得できたもの。
B:割れやクラックのないフィルムを10サンプル中、4サンプル以下しか取得できなかったもの。
[0119]<製造例1>
・・・略・・・
[0120]<製造例2> 撹拌翼と三方コックが取り付けられた5Lのガラス製反応容器内を窒素で置換した。これに、室温下にて、トルエン1600g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン2.49g(10.8mmol)、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液53.5g(30.9mmol)、および濃度1.3Mのsec-ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95%、n-ヘキサン5%)6.17g(10.3mmol)を仕込んだ。撹拌しながら、これに、蒸留精製したメタクリル酸メチル550gを20℃にて30分かけて滴下した。滴下終了後、20℃で90分間撹拌した。溶液の色が黄色から無色に変わった。この時点におけるメタクリル酸メチルの重合転化率は100%であった。
得られた溶液にトルエン1500gを加えて希釈した。次いで、希釈液をメタノール100kgに注ぎ入れ、沈澱物を得た。得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥して、Mwが8400で、分子量分布が1.08で、シンジオタクティシティ(rr)が73%、ガラス転移温度が131℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル樹脂〔PMMA2〕を得た。
[0121]<製造例3> 攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0052質量部、およびn-オクチルメルカプタン0.28質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。かかる原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間150分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は55質量%であった。
[0122] 定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状の、Mwが82000で、分子量分布が1.85で、シンジオタクティシティ(rr)が52%で、ガラス転移温度が120℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル樹脂〔PMMA3〕を得た。
[0123]<製造例4> n-オクチルメルカプタンの量を0.225質量部に変更した以外は製造例3と同じ操作を行って、Mwが103600で、分子量分布が1.81で、シンジオタクティシティ(rr)が52%で、ガラス転移温度が120℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の割合が100質量%であるメタクリル樹脂〔PMMA4〕を得た。
[0124]<製造例5>
・・・略・・・
[0125]<製造例6> メタクリル樹脂〔PMMA2〕57質量部およびメタクリル樹脂〔PMMA4〕43質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機(テクノベル社製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)で250℃にて混練押出してメタクリル樹脂〔PMMA6〕を製造した。
・・・略・・・
[0127] 上記〔PMMA1〕?〔PMMA7〕の物性を表1に示す。
[0128][表1]

[0129] 実施例で使用したポリカーボネート樹脂を以下に記載し、物性を表2に記載した。
・・・略・・・
PC2:三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロンHL-4000(品番);MVR(300℃、1.2Kg)=60cm^(3)/10分、Mv=15100
・・・略・・・
[0130][表2]

[0131] 実施例で使用した高分子加工助剤を以下に記載した。なお、ここでMMAはメタクリル酸メチルに由来する構造単位を意味し、BAはアクリル酸ブチルに由来する構造単位を意味する。
・・・略・・・
B4:三菱レイヨン社製メタブレンP530A(平均重合度:24455、MMA80質量%/BA20質量%)
・・・略・・・
[0133]<実施例1>
メタクリル樹脂〔PMMA1〕100質量部、ポリカーボネート樹脂〔PC1〕2.5質量部および加工助剤〔B2〕2質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機(テクノベル社製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)で250℃にて混練押出してメタクリル樹脂組成物〔1〕を製造した。得られたメタクリル樹脂組成物〔1〕を熱プレス成形して50mm×50mm×1.0mmの板状成形体を成形し、全光線透過率、ヘイズおよびガラス転移温度を測定した。メタクリル樹脂組成物〔1〕の物性を表3に示す。
[0134] メタクリル樹脂組成物〔1〕を、80℃で12時間乾燥させた。20mmΦ単軸押出機(OCS社製)を用いて、樹脂温度260℃にて、メタクリル樹脂組成物〔1〕を150mm幅のTダイから押し出し、それを表面温度85℃のロールにて引き取り、幅110mm、厚さ160μmの未延伸フィルムを得た。
[0135] 前記の手法にて得られた未延伸フィルムを、100mm×100mmに切り出し、パンタグラフ式二軸延伸試験機(東洋精機社製)により、ガラス転移温度+10℃の延伸温度、一方向500%/分の延伸速度、一方向2倍の延伸倍率で逐次二軸延伸し(面積比で4倍)、2分かけて100℃以下に冷却して取り出し、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムについての表面平滑性、加熱収縮率、全光線透過率、ヘイズ、面内方向位相差Re、厚さ方向位相差Rthおよび未延伸フィルムから延伸フィルムを作製する際の延伸性の測定結果を表3に示す。
[0136]<実施例2?11、比較例1?7>
表3および表4に示す配合とする以外は実施例1と同じ方法でメタクリル樹脂組成物〔2〕?〔18〕を製造した。得られたメタクリル樹脂組成物〔2〕?〔18〕を熱プレス成形して50mm×50mm×1.0mmの板状成形体を成形し、全光線透過率、ヘイズおよびガラス転移温度を測定した。メタクリル樹脂組成物〔2〕?〔18〕の物性を表3および表4に示す。
[0137] メタクリル樹脂組成物〔1〕の代わりにメタクリル樹脂組成物〔2〕?〔18〕を用いた以外は実施例1と同じ方法で二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表3および表4に示す。
[0138][表3]

・・・略・・・
[0140](偏光子)
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬して膨潤させた。次いで、0.3質量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=0.5/8)の30℃のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3.5倍まで延伸した。その後、65℃の4質量%のホウ酸水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍になるよう延伸した。延伸後、70℃のオーブンで3分間乾燥を行い、厚さ22μmの偏光子を得た。
[0141]<偏光板Xの作製>
実施例8の二軸延伸フィルムを偏光子保護フィルムAとして用いた。ポリエステルウレタン(第一工業製薬社製、商品名:スーパーフレックス210、固形分:33%)16.8g、架橋剤(オキサゾリン含有ポリマー、日本触媒社製、商品名:エポクロスWS-700、固形分:25%)4.2g、1質量%のアンモニア水2.0g、コロイダルシリカ(扶桑化学工業社製、クォートロンPL-3、固形分:20質量%)0.42gおよび純水76.6gを混合し、易接着剤組成物を得た。
得られた易接着剤組成物を、コロナ放電処理を施した実施例8の二軸延伸フィルムのコロナ放電処理面に、乾燥後の厚さが100nmとなるように、バーコーターで塗布した。その後、フィルムを熱風乾燥機(110℃)に投入し、易接着剤組成物を約5分乾燥させて、実施例8の二軸延伸フィルム上に易接着層を形成した。
[0142] 次に、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製)38.3質量部と、トリプロピレングリコールジアクリレート(商品名:アロニックスM-220,東亜合成社製)19.1質量部と、アクリロイルモルホリン(興人社製)38.3部と、光重合開始剤(商品名:KAYACURE EDTX-S,ジエチルチオキサントン,日本化薬社製)1.4質量部とを混合して50℃で1時間撹拌して活性エネルギー線硬化型接着剤を得た。
[0143] 上記活性エネルギー線硬化型接着剤を、偏光子保護フィルムAの易接着層側に、乾燥後の厚さが500nmとなるように塗布した。その後、活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、前述の偏光子の両側に1枚ずつの偏光子保護フィルムAを、小型ラミネーターを用いて積層した。貼り合わせた偏光子保護フィルムAの両側から、IRヒーターを用いて50℃に加温し、積算照射量1000mJ/cm^(2)の紫外線を両面に照射して、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させ、偏光子の両面に透明な偏光子保護フィルムAを有する偏光板Xを得た。作製した偏光板Xを80℃90%RHの恒温恒湿機に投入して100時間後の偏光子の劣化の程度を目視にて観察したところ劣化は認められなかった。
・・・略・・・
産業上の利用可能性
[0148] 本発明のメタクリル樹脂組成物は、透明性が高く、厚さ方向の位相差が小さく、更に耐熱性が高く、薄く延伸できるので、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、液晶保護板、・・・略・・・各種ディスプレイの前面板用途などに好適である。」

エ 「



(2) 引用発明
引用文献1の[0141]には、「二軸延伸フィルム上に易接着層を形成した偏光子保護フィルムA」が記載されている。ここで、上記「二軸延伸フィルム」は、[0120]、[0123]、[0125]、[0129]及び[0133]?[0138]の記載からみて、「樹脂材料としてメタクリル樹脂〔PMMA6〕及びポリカーボネート樹脂〔PC2〕を含むメタクリル樹脂組成物〔8〕を含」むものである。また、上記「二軸延伸フィルム」は、[0138]の[表3]からみて、「Rthは-0.8nm、Reは0.1nm、全光線透過率は92%、ヘイズは0.1%」のものである。加えて、上記「易接着層」は、[0092]の記載からみて、「偏光子保護フィルムAと偏光子とが接する面の接着性を向上させるもの」といえる。
以上勘案すると、引用文献1には、次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 二軸延伸フィルム上に易接着層を形成した偏光子保護フィルムAであって、
二軸延伸フィルムは、樹脂材料としてメタクリル樹脂〔PMMA6〕及びポリカーボネート樹脂〔PC2〕を含むメタクリル樹脂組成物〔8〕を含み、Rthは-0.8nm、Reは0.1nm、全光線透過率は92%、ヘイズは0.1%であり、
易接着層は、偏光子保護フィルムAと偏光子とが接する面の接着性を向上させるものである、
偏光子保護フィルムA。」

(3) 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由2(特許法第29条第2項)において、引用文献2として引用された特開2010-204622号公報(以下、同じく「引用文献2」という。)は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子外面保護フィルム、及び偏光子外面保護フィルムを備えた偏光板、並びに偏光板を備えた液晶表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD)が、薄型、軽量であり、消費電力が小さいことからCRTの代わりに広範に使用されている。液晶表示素子の使用分野は、従来の電卓や時計などの小型品から、自動車用計器、PCモニタ、テレビといった大型品に至るまで拡大されつつある。
【0003】
図5に示されるように、液晶表示装置に配置される一般的な液晶表示素子21は、液晶層27が両面の透明媒体層26(例えばガラス)で挟持された液晶セル25と、偏光能を有する偏光子24の両面に偏光板用保護フィルム23が貼り合わせられた偏光板22とを備え、液晶セル25が、接着剤層28を介して偏光板22によって上下から挟持された構造を有している。このように、偏光子24は、強度の向上と取扱いの容易化の観点から偏光子保護フィルム23によって保護されている。
【0004】
偏光子の素材として、一般的に、親水性樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)が用いられており、PVAフィルムを一軸延伸してから、ヨウ素又は二色性染料で染色するか、あるいは染色してから延伸し、次いでホウ素化合物で架橋することによって偏光子が形成される。また、偏光子保護フィルムとしては、光学的に透明であり複屈折性が小さいこと、表面が平滑であること、PVAからなる偏光子との接着性が優れていることなどの特性が要求されることから、一般的にトリアセチルセルロース(TAC)が用いられている。・・・略・・・ところが、トリアセチルセルロースは高価であるため、同等の性質を有する安価な代替材料の開発が求められている。
【0005】
・・・略・・・一方、液晶表示素子の外面側(液晶セルから離れた側、すなわち図5における最上層及び最下層の23の位置)に配置される偏光子保護フィルムの要求特性としては、複屈折性の有無よりも、透明性がさらに重要な位置付けとなるため、トリアセチルセルロース以外の代替材料の開発が期待されている。
【0006】
トリアセチルセルロースに代替しうる高い透明性を有する汎用の樹脂材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等が考えられる。しかしながら、これらの樹脂は、親水性基を有していないことから、偏光子を構成する親水性樹脂であるポリビニルアルコールとの接着性が劣るという不都合があるため、そのままでトリアセチルセルロースの代替材料として用いることができない。従って、高い透明性を有することに加えて、ポリビニルアルコールからなる偏光子との接着が容易化された、液晶表示素子の外面側に配置されるための新規な偏光子外面保護フィルムの開発が望まれている。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、高い透明性を有し、ポリビニルアルコールからなる偏光子に対する易接着処理が施された、液晶表示素子の外面側に配設される新規な偏光子外面保護フィルム、及びこのような偏光子外面保護フィルムを備えた偏光板、並びに液晶表示素子にの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
液晶表示素子の外面側に配設される偏光子外面保護フィルムであって、
透明な合成樹脂製の基材層と、
この基材層の内面側に積層される親水性樹脂層と
を備えることを特徴とする偏光子外面保護フィルムである。
【0010】
・・・略・・・また、当該偏光子外面保護フィルムは、ポリビニルアルコールからなる偏光子との接着を容易化するように、基材層の内面側に親水性樹脂層を積層することによって、同じく親水性樹脂であるポリビニルアルコールからなる偏光子との接着性が飛躍的に改善される。つまり、このような易接着処理により形成された親水性樹脂層は、同じく親水性樹脂であるポリビニルアルコールとの化学的親和性が高いため、偏光子との接着性が効果的に向上する。また、この親水性樹脂層はそれ自身で親水性を有するため、従来の偏光子保護フィルムを構成するトリアセチルセルロースに対して行われるようなケン化処理を行うことなく偏光子との接着工程に供することが可能である。なお、本明細書における「内面」とは、一対の偏光板間に液晶セルを挟持してなる液晶表示素子において、中心の液晶セル側を意味し、「外面」とはその反対側を意味する。
【0011】
当該偏光子外面保護フィルムにおいて基材層を構成する合成樹脂は、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。これらの合成樹脂を用いることによって、高い透明性を有すると共に、偏光子を保護するために適当な強度を有する偏光子外面保護フィルムが得られる。
【0012】
当該偏光子外面保護フィルムにおいて親水性樹脂層を構成する親水性樹脂は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種によって形成されていてよい。このような親水性樹脂は、基材層を構成する合成樹脂との化学的な親和性が高いため、基材層との良好な接着性が得られる。
【0013】
また、このような親水性樹脂は、側鎖に親水性基を有するように変性されていることが好ましい。親水性樹脂の主鎖(炭素鎖)が基材層の合成樹脂と化学的親和性を有すると同時に、この親水性樹脂の側鎖が親水性を付与するように変性されることによって、偏光子を構成するポリビニルアルコールに対する化学的親和性が高まり、偏光板の各層を安定的に接合することが可能となる。
【0014】
当該偏光子外面保護フィルムにおいて、親水性樹脂層の厚みは0.01μm以上3μm以下であってよい。親水性樹脂層の厚みを0.01μm以上とすることによって、ポリビニルアルコールからなる偏光子の接着性の容易化が促進される。一方、親水性樹脂層の厚みを3μm以下とすることによって、十分に薄い偏光子外面保護フィルムを得ることができ、偏光板の厚みの増大を抑制することができる。
・・・略・・・
【0016】
ポリビニルアルコールからなる偏光子の外面側に当該偏光子外面保護フィルムを積層して、この偏光子の内面側に偏光子内面保護フィルムを積層することによって、偏光板を構成することができる。このような偏光板においては、偏光子の外面側に、ポリビニルアルコールに対する易接着処理が施された基材層を備えた偏光子外面保護フィルムを用いることによって、偏光子と偏光子外面保護フィルムとの接着性、接着の耐久性が高められ、しいては偏光板の強度、取扱い性が向上する。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の偏光子外面保護フィルムは、ポリビニルアルコールからなる偏光子との接着を容易化するように、内面側が親水性樹脂により表面処理されている透明な合成樹脂製の基材層を備えているため、高い透明性が得られると共に、同じく親水性樹脂であるポリビニルアルコールからなる偏光子との接着性が飛躍的に改善される。また、偏光板が当該偏光子外面保護フィルムを備えることによって、このような偏光板の強度、取扱い性が向上する。さらに、液晶表示素子が当該偏光板を備えることによって、所望の特性が長期間に渡って安定的に発揮される。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
【0021】
図1の偏光子外面保護フィルム1は、透明な合成樹脂製の基材層2、及び親水性樹脂層3を有する。偏光子外面保護フィルム1は、衝撃に対する耐性及び取扱い性を向上させるための偏光子の保護膜として用いられるものであって、液晶表示素子の外面側(図示されたA方向の側)に配置される。
【0022】
透明樹脂製の基材層2を構成する樹脂は、液晶表示素子の偏光子外面保護フィルムとして要求される高い透明性を有する限り特に限定されるものではないが、典型的には、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる群から選択される。これらの合成樹脂は、優れた光学的透明性及び耐衝撃強度を有するため、トリアセチルセルロースに替わって液晶表示素子の外層側に配置することができる。基材層2は、透明性及び所望の強度を損なわない限りは他の任意成分を含んでよいが、上記のような合成樹脂を好ましくは90質量%以上含み、さらに好ましくは98質量%以上含む。
・・・略・・・
【0036】
基材層2は、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。延伸する場合は、一軸延伸フィルムでもよいし、2軸延伸フィルムでもよい。2軸延伸フィルムとする場合は、同時2軸延伸したものでもよいし、逐次2軸延伸したものでもよい。2軸延伸した場合は、機械強度が向上しフィルム性能が向上する。
・・・略・・・
【0041】
親水性樹脂層3を構成する親水性樹脂は、基材層の合成樹脂及び偏光子を構成するポリビニルアルコールとの化学的親和性を有する樹脂である限りは、特に限定されるものではないが、側鎖が親水性を有する基によって変性されているものが好ましい。親水性樹脂の親水化変性の方法としては、予め親水性の官能基を有するモノマーを(共)重合させてもよいし、あるいは、主鎖となるモノマーを(共)重合させた後、親水性基を有するモノマーをグラフト重合させて側鎖を形成してもよい。また、親水性樹脂は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂からなる群から選択されるものから形成されていることが好ましい。これらの樹脂は、単独で重合あるいは2種以上を共重合させたものであってもよい。
・・・略・・・
【0056】
親水性樹脂層3を構成する親水性樹脂の中でも、親水性基を有するアクリル酸由来のラジカル重合性ビニルモノマー(以下、「アクリル系ラジカル重合性ビニルモノマー」と称する)によって側鎖が変性されているポリエステル系樹脂(以下、「アクリル変性ポリエステル系樹脂」又は単に「変性ポリエステル系樹脂」と称する)と、ウレタン系樹脂とを含む組成物が最も好ましい。このような組成物を用いることによって、ポリエステル樹脂が本来有する透明性、強靱性、耐熱性や、合成樹脂(例えば、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂など)に対する接着性などの特性を活かしつつ、上記変性によって親水性樹脂に対する接着性を付与すると共に、ウレタン系樹脂のブレンドによって更に合成樹脂に対する接着性及び柔軟性を付与することが可能となる。
・・・略・・・
【0058】
上記組成物におけるアクリル変性ポリエステル系樹脂とウレタン系樹脂の質量比は、60:40から90:10の範囲とすることが好ましく、70:30から80:20の範囲とすることがさらに好ましい。アクリル変性ポリエステル系樹脂とウレタン系樹脂の質量比をこのような範囲とすることによって、親水性樹脂層の透明性、耐水性、耐熱性等の層物性を良好に保ちつつ、基材層を構成する合成樹脂及び偏光子を構成するポリビニルアルコールに対する接着力を最適化することが可能となる。
・・・略・・・
【0062】
アクリル変性ポリエステル系樹脂において、主鎖を形成するポリエステル系樹脂に対するアクリル系ラジカル重合性ビニルモノマーの質量比は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して50質量部以上150質量部以下が好ましく、70質量部以上120質量部以下とすることがさらに好ましい。ポリエステル系樹脂に対するアクリル系ラジカル重合性ビニルモノマーの質量比をこのような範囲とすることによって、親水性樹脂層の基材層に対する化学的親和性と、親水性樹脂層の偏光子に対する化学親和性とをバランス良く改善することが可能となる。
・・・略・・・
【0067】
このように、親水性樹脂層3を構成する親水性樹脂が、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂又はエポキシ系樹脂などの樹脂から形成され、さらにこれらの樹脂が親水性を有するように変性されていることによって、偏光子を構成するポリビニルアルコールに対する化学的親和性が高められ、親水性樹脂層と偏光子との接着性が高められると同時に、さらに、これらの樹脂と基材層を構成する合成樹脂との化学的な相性が良いことと相俟って、偏光板の各層の安定した接合が可能となる。なお、親水性樹脂層を形成する樹脂としてポリエステル系樹脂とウレタン系樹脂とを組み合わせて用いることによって、層の柔軟性が高くなり、強度及び接着力が向上する。
【0068】
親水性樹脂は、それ自身である程度の親水性を有するため、この樹脂によって形成された親水性樹脂層3は、ケン化処理を行わずに偏光子との接着工程に供することが可能である。ポリエステル系樹脂を含んで形成された親水性樹脂は、さらにアルカリでケン化することによって親水性基である水酸基を生じ、それによって親水性が高まり、ポリビニルアルコールからなる偏光子との親和性・接着性が一層向上する。
・・・略・・・
【0074】
上述のように、本発明による偏光子外面保護フィルムによれば、ポリビニルアルコールからなる偏光子との接着を容易化するように、内面側が親水性樹脂により表面処理されている基材層を備えることによって、偏光子を構成する親水性樹脂であるポリビニルアルコールとの親和性及び接着性が効果的に向上する。
【0075】
図2の偏光板4は、ポリビニルアルコールからなる偏光子6の外面側(図示されたA方向の側)に、図1の偏光子外面保護フィルム1を備え、偏光子6の内面側に、従来から用いられているセルロースエステルからなる偏光子内面保護フィルム5を備えた構造を有している。偏光子6と偏光子外面保護フィルム1との間、及び、偏光子6と偏光子内面保護フィルム5との間は、接着剤(図示せず)によって接合されている。
・・・略・・・
【0082】
偏光子外面保護フィルム1の親水性樹脂層3を構成する親水性樹脂がポリエステル系樹脂を用いて形成されている場合、偏光子6との接着を行う前に、親水性樹脂層3をアルカリによるケン化処理に供することが一層好ましい。このケン化によって、エステル基が親水性基である水酸基に変換され、これによって、偏光子外面保護フィルム1と、親水性樹脂であるポリビニルアルコールで形成された偏光子6との化学的な親和性が高められ、相互の接着性が格段に向上する。
・・・略・・・
【0085】
装置7によって偏光子外面保護フィルム1の親水性樹脂層3と偏光子6とを貼り合わせるために使用される接着剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレートなどビニル系ラテックス等が挙げられる。通常、これらの接着剤は水溶液として用いられる。
・・・略・・・
【0088】
上述のように、本発明による偏光子外面保護フィルムを有する偏光板によれば、ポリビニルアルコールからなる偏光子の外面側に配置された合成樹脂製の基材層に易接着処理が施されていることから、ポリビニルアルコールからなる偏光子と偏光子外面保護フィルムとの接着性及び剥離耐久性が高められ、それによって偏光板の強度や取扱い性が改善される。
・・・略・・・
【0090】
本発明による偏光子外面保護フィルムが配置された偏光板を備えた液晶表示素子は、偏光子外面保護フィルムが易接着化処理されているため、偏光子と偏光子外面保護フィルムとの接着性、剥離に対する耐久性が高く、かつ偏光板の強度、取扱い性が優れている。」

ウ 「【実施例】
【0091】
・・・略・・・
【0092】
[アクリル系樹脂製の基材層の形成]
・・・略・・・膜厚30μmのアクリル系樹脂フィルム(透明な合成樹脂製の基材層)を得た。このアクリル系樹脂フィルムを試料A1とする。
・・・略・・・
【0094】
[ポリエステル系樹脂製の親水性樹脂層の形成]
・・・略・・・次いで、この変性ポリエステル系樹脂の水系乳化物を、試料A1のアクリル系樹脂フィルムの面上に塗布し、加熱・乾燥させて厚み0.3μmの親水性樹脂層を有する偏光子保護フィルムを得た。この偏光子保護フィルムを試料B1とする。
・・・略・・・
【0095】
[ポリエステル系樹脂/ウレタン系樹脂製の親水性樹脂層の形成]
上で得られた変性ポリエステル系樹脂の水系乳化物に対して、固形分40質量%の水性ウレタン(東亞合成化学工業社製の「アロンネオタンUE-1300」)を、両者の固形分の比が75:25となるようにブレンドして、ポリエステル系樹脂/ウレタン系樹脂混合系の水系乳化物を得た。次いで、この水系乳化物を、試料A1のアクリル系樹脂フィルムの面上に塗布し、加熱・乾燥させて厚み0.3μmの親水性樹脂層を有する偏光子保護フィルムを得た。この偏光子保護フィルムを試料B3とする。
・・・略・・・
【0099】
[偏光子の形成]
膜厚200μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)して、膜厚40μmのフィルムを得た。このフィルムを、ヨウ素0.15g及びヨウ化カリウム10gを含む水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム12g及びホウ酸7.5gを含む68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し、偏光子を得た。
【0100】
[実施例1-10]
試料B1からB10の各々の偏光子保護フィルム及び上記偏光子を18cm×5cmのサイズに裁断し、固形分濃度が2質量%のポリビニルアルコール水溶液である接着剤を介して、これらを重ね合わせ、ハンドローラーを用いて過剰の接着剤や気泡を取り除きながら貼り合わせた。これを2kg/cm2に加圧したラミネーターに挿入し、さらに80℃で乾燥させることによって、積層体1から10を得た(それぞれを実施例1から10とする)。この貼合においては、試料B1からB10の各々の親水性樹脂層と上記偏光子が接着されるようにした。
【0101】
[比較例1及び2]
試料A1のアクリル系樹脂フィルム又は試料A2のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムと上記偏光子とを、上記実施例1から10と同様の手段により貼り合わせて積層体11及び12を得た。
【0102】
上で得られた積層体1から12に対して、以下の方法により初期接着性及び耐久性に関する特性評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0103】
(1)初期接着性
積層体の二つの層を手で剥離し、材料破壊の発生の程度により、下記の三段階に評価した。
極めて良好(◎):殆どの部分で材料破壊が起こる。
良好(○):半分程度の部分で材料破壊が起こる。
やや不良(△):一部材料破壊が起こるが、試料と偏光子の間の剥がれ面積が大きい。
不良(×):試料と偏光子の間が完全に剥がれる。
【0104】
(2)耐久性
積層体を、75℃で90%RHの条件下に500時間放置し、外観変化を観察し、端部からの剥離の幅を測定した。評価基準は以下のとおりした。
極めて良好(◎):0.1mm未満
良好(○):0.1mm以上0.5mm以下
やや不良(△):0.5mm以上1.5mm以下
不良(×):1.5mm以上
【0105】
【表1】

【0106】
表1の結果から、実施例1?10の積層体1から10は、初期接着性が良好であり、また厳しい条件下での剥離耐久性も優れていることが分かった。特に、変性ポリエステル系樹脂及びウレタン系樹脂を含む水系乳化物から形成された資料B3及びB4を用いた実施例3及び4における初期接着性は、格段に優れていた。一方、比較例1及び2の積層体11、12は、初期接着性が不良であると共に、剥離耐久性が劣っていることが分かった。このように、本発明による偏光子外面用の保護フィルムは、一方の表面が親水性樹脂により表面処理されている基材層を備えていることによって、そのような表面処理がなされていない基材層からなるフィルムと比較して、ポリビニルアルコールに対する接着力及び剥離耐久性が飛躍的に改善されている。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明による偏光子外面保護フィルムを備えた偏光板を用いた液晶表示素子は、偏光子外面保護フィルムと偏光子の間の接着が確実に行われているため、液晶表示素子及びこれを備えた電子機器全体の信頼性が高まる。そのため、このような液晶表示素子は、電卓や時計などの小型品から、自動車用計器、PCモニタ、テレビといった大型品に至るまで様々な分野で用いることが可能である。」

エ 「【図1】



オ 「【図2】



カ 「【図5】



(4) 対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。
ア 二軸延伸光学フィルム
引用発明の「偏光子保護フィルムA」は、「二軸延伸フィルム上に易接着層を形成した」ものである。また、引用発明の「二軸延伸フィルム」は、「Rthは-0.8nm、Reは0.1nm、全光線透過率は92%、ヘイズは0.1%であ」る。そして、引用発明の「易接着層」は、「偏光子保護フィルムAと偏光子とが接する面の接着性を向上させるものである」。
上記構成からみて、引用発明の「偏光子保護フィルムA」は、「二軸延伸フィルム」と、「二軸延伸フィルム」上に形成された「易接着層」とを含み、また、厚さ方向及び面内方向の位相差が0となるように制御された、二軸延伸された光学フィルムといえる。また、引用発明の「二軸延伸フィルム」は「易接着層」との関係において、基材層ということができ、また、引用発明の「易接着層」は、その文言及び機能からみて、偏光子と接するプライマー層といえる。
そうしてみると、引用発明の「二軸延伸フィルム」、「易接着層」及び「偏光子保護フィルムA」は、それぞれ本件補正後発明の「基材層」、「プライマー層」及び「二軸延伸光学フィルム」に相当する。また、引用発明の「易接着層」は、本件補正後発明の「プライマー層」における、「前記基材層上に形成された」及び「偏光子と接する」という要件を満たし、引用発明の「偏光子保護フィルムA」は、本件補正後発明の「二軸延伸光学フィルム」における、「基材層と、前記基材層上に形成されたプライマー層とを含む」という要件を満たす。

イ 基材層
引用発明の「二軸延伸フィルム」は、「樹脂材料としてメタクリル樹脂〔PMMA6〕及びポリカーボネート樹脂〔PC2〕を含むメタクリル樹脂組成物〔8〕を含」む。
ここで、引用発明の「メタクリル樹脂〔PMMA6〕」は、技術的にみて、アクリル系樹脂である。また、引用発明の「ポリカーボネート樹脂〔PC2〕」は、その文言が意味するとおり、ポリカーボネートである。
そうしてみると、引用発明の「二軸延伸フィルム」は、本件補正後発明の「基材層」における、「アクリル系樹脂およびポリカーボネートを含み」という要件を満たす。

(5) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「 基材層と、前記基材層上に形成され、偏光子と接するプライマー層とを含む、二軸延伸光学フィルムにおいて、
前記基材層は、アクリル系樹脂およびポリカーボネートを含む、
二軸延伸光学フィルム。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点)
「プライマー層」が、本件補正後発明は、「ポリエステル系樹脂80?95重量部およびポリウレタン系樹脂5?20重量部を含む」のに対して、引用発明は、そのようなものとなっていない点。

(6) 判断
ア 引用発明の「易接着層」について、引用文献1の[0092]には、「易接着層は、易接着処理などによって設けることができる。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理等の表面処理が挙げられる。また、易接着層は、アンカー層を形成する方法、または前記の表面処理とアンカー層を形成する方法との併用によって設けることができる。これらの中でも、コロナ処理、アンカー層を形成する方法、およびこれらを併用する方法が好ましい。」、[0093]には、「上記アンカー層としては、例えば、反応性官能基を有するシリコーン層が挙げられる。・・・略・・・また、アンカー層として、セルロースアセテートブチレート樹脂をケン化させたものからなる層も挙げられる。」と記載されている。

イ また、引用文献1の[0140]?[0143]によれば、引用発明の「偏光子保護フィルムA」の易接着層側に活性エネルギー線硬化型接着剤が塗布され、活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の両側に積層され、活性エネルギー線硬化型接着剤が硬化されて、偏光子の両面に透明な二軸延伸フィルム(偏光子保護フィルムA)を有する「偏光板X」が作製される。
ここで、引用発明の「偏光子保護フィルムA」と偏光子とを接着する「接着剤」について、引用文献1の[0087]には、「本発明の偏光板に設けることができる接着剤層は光学的に透明であれば特に制限されない。接着剤層を構成する接着剤として、例えば、水系接着剤、・・・略・・・活性エネルギー線硬化型接着剤などを用いることができる。これらのうち、水系接着剤および活性エネルギー線硬化型接着剤が好適である。」、[0088]には、「前記水系接着剤としては、ビニルポリマーを含有する接着剤などを用いることが好ましく、ビニルポリマーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。・・・略・・・特に偏光子としてポリビニルアルコール系のポリマーフィルムを用いる場合には、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する接着剤を用いることが、接着性の点から好ましい。」と記載されている。

ウ 一方、引用文献2(【0006】、【0008】?【0012】、【0018】、【0056】、【0058】、【0067】、【0085】、【0100】等)には、
(A)液晶表示素子の外面側に配設され、透明な合成樹脂製の基材層と基材層の内面側に積層される親水性樹脂層とを備えた偏光子外面保護フィルム(【0009】)において、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の合成樹脂からなる透明基材層(【0010】)が(親水性基を有しておらず、)偏光子を構成する親水性樹脂であるポリビニルアルコールとの接着性が劣る(【0006】)ところ、基材層の内面側に易接着処理として親水性樹脂層を積層することにより、同じく親水性樹脂であるポリビニルアルコールからなる偏光子との接着性を飛躍的に改善する(【0018】)こと、
(B)親水性樹脂層を構成する親水性樹脂としては、変性ポリエステル系樹脂と、ウレタン系樹脂とを含む組成物が最も好ましく、このような組成物を用いることによって、ポリエステル樹脂が本来有する透明性、強靱性、耐熱性や、基材層の合成樹脂に対する接着性などの特性を活かしつつ、上記変性によって親水性樹脂に対する接着性を付与すると共に、ウレタン系樹脂のブレンドによって更に基材層の合成樹脂に対する接着性及び柔軟性を付与し、強度及び接着力を向上できること(【0056】、【0067】)、変性ポリエステル系樹脂とウレタン系樹脂の質量比は、60:40から90:10の範囲とすることが好ましく、70:30から80:20の範囲とすることがさらに好ましいこと、変性ポリエステル系樹脂とウレタン系樹脂の質量比をこのような範囲とすることによって、親水性樹脂層の透明性、耐水性、耐熱性等の層物性を良好に保ちつつ、基材層を構成する合成樹脂及び偏光子を構成するポリビニルアルコールに対する接着力を最適化することが可能となる(【0058】)こと、
(C)偏光子外面保護フィルムの親水性樹脂層と偏光子とを貼り合わせるために使用される接着剤として、水系接着剤が用いられること(【0085】、【0100】)、
が記載されている。

エ 引用文献1の上記アの記載に接した当業者は、引用発明の「易接着層」について、「偏光子保護フィルムA」と偏光子とが接する面の接着性を向上させる材料を用いることができると理解する(当合議体注:「アンカー層」として[0093]に記載の材料は、例示に留まる。)。
また、引用文献1の上記イの記載に接した当業者は、引用発明の「偏光子保護フィルムA」を接着する「接着剤」として、水系接着剤および活性エネルギー線硬化型接着剤が好適であり、また、偏光子としてポリビニルアルコール系のポリマーフィルムを用いる場合、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水系接着剤を用いることが接着性の点から好ましいと理解する。
そうすると、水系接着剤による偏光板Xの作製を考える当業者は、引用発明のアクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂を含む「二軸延伸フィルム(偏光子保護フィルムA)」と、ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子との接着性を向上させる「易接着層」として、引用文献2に記載の、変性ポリエステル系樹脂及びウレタン系樹脂とを含む親水性樹脂層の構成が好ましいことに気付くといえる(当合議体注:引用発明の「偏光子保護フィルムA」は、偏光子の両面に設けられるものであるから、引用発明は、引用文献2でいう「液晶表示素子の外面側に配設され」る態様も想定される。また、引用文献2に記載の親水性樹脂層は、偏光板の強度を高めることができるもの(引用文献2【0016】、【0018】、【0067】等)であるから、「作製した偏光板Xを80℃90%RHの恒温恒湿機に投入して100時間後の偏光子の劣化の程度を目視にて観察したところ劣化は認められない」(引用文献1[0143])とされる、引用発明を用いた「偏光板X」にとっても好ましい。)。
してみると、引用文献2に記載された上記ウ(A)?(C)の技術的事項に基づき、引用発明の「易接着層」を、変成ポリエステル系樹脂80重量部及びポリウレタン系樹脂20重量部を含む構成、あるいは、変成ポリエステル系樹脂90重量部及びポリウレタン系樹脂10重量部を含む構成とし、上記相違点に係る本件補正後発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(7) 本件補正後発明の効果について
ア 本件補正後発明の効果に関し、本件出願の明細書の【0079】には、「本発明による二軸延伸光学フィルムは、・・・略・・・ポリメチルメタクリレートを使用しながらもzero位相差を実現することができ、かつ、偏光板のPVA素子との接着力に優れるという特徴がある。」との記載がある。

イ しかしながら、「ポリメチルメタクリレートを使用しながらもzero位相差を実現することができ」るとの効果は、引用発明も具備する効果である(「二軸延伸フィルム」の「Rthは-0.8nm、Reは0.1nm」である。)。また、「ポリメチルメタクリレートを使用しながらも・・・略・・・偏光板のPVA素子との接着力に優れる」との効果は、上記相違点に係る計変更を施した引用発明が具備する効果であるか、あるいは、引用文献1及び引用文献2の記載に基づき、当業者が予測・期待する効果である。

(8) 請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書の「5.拒絶理由2について」において、「引用文献1にはポリエステル系樹脂70?95重量部及びポリウレタン系樹脂5?30重量部を含むプライマー層は記載されていませんが、審査官殿は引用文献2に記載されたポリエステル系樹脂/ウレタン系樹脂製の親水性樹脂層を引用文献1に記載された発明と組み合わせることで、本願発明に容易に想到すると説示しています。引用文献2には、ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂の固形分の比を75:25とすることが記載されています。」、
「先の拒絶理由通知書における当該拒絶理由に対して、補正により引用文献2の実施例に対応するポリエステル系樹脂75重量部およびポリウレタン系樹脂25重量部を含むプライマー層を発明の範囲外とし、追加比較例を提出して本願発明の有利な効果を主張いたしました。」、
「審査官殿は、追加比較例も十分に優れた接着力を有しているといえるため、本願発明は異質な効果や顕著な効果などの有利な効果を奏するものではないと説示しています。」、
「審査官殿が評価基準として示された明細書の段落[0105]及び[0106]は明細書において行った実施例及び比較例の結果を説明している箇所に過ぎません。また、追加比較例で示した『高温信頼性後のプライマー面の接着力』が0.9N/20mmの場合に、接着力が優れているとする根拠もありません。むしろ、高温信頼性前の『1N/20mm以上と優れていた』(段落[0105])との記載から判断すれば、1N/20mm未満の接着力は好ましくない値であることは明らかであるとも言えます。」、
「さらに、今回の補正により、補正前の請求項1に記載したプライマー層を、『偏光子と接する』ものに限定しました。この補正により、偏光子と接着する層はプライマー層であることは明らかとなったため、本願発明により得られる技術的効果はより明確になったものと思料いたします。」、
「以上より、補正後の本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が本件出願前に容易に発明をすることができたものではありません。」旨主張している。

イ 上記アに加え、請求人は、上申書(令和2年10月14日付け)の「4.拒絶理由について」において、
「具体的には、審査官殿は前置報告書において、『審判請求書では、引用文献2における、変性ポリエステル系樹脂の水系乳化物に対して、水性ウレタンを、両者の固形分の比が75:25となるようにブレンドした実施例(段落0095)に対してのみ反論がなされているが、引用文献2には、変性ポリエステル系樹脂とウレタン系樹脂の質量比として、実施例における75:25の一点のみが開示されているわけではなく、上記のように60:40から90:10の範囲、あるいは70:30から80:20の範囲が好ましいことが示唆されているといえるから、引用文献1の偏光子保護フィルムAにおいて、ポリエステルウレタンを含む易接着剤組成物を、耐熱性や接着力等を向上させるべく、引用文献2に記載されるように、ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂とを質量%で60:40から90:10の範囲、あるいは70:30から80:20の範囲で含むように構成することで、請求項1に係る発明とすることは、当業者が容易に想到できたことである。』と説示しています。」、
「しかしながら、引用文献2の実施例においては、ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂の固形分の比を75:25とすることのみが記載されています。確かに明細書の一般記載としてはポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂とを質量%で60:40から90:10の範囲とすることが記載されていますが、審判請求人は令和1年10月17日付けの意見書において追加比較例を提出して本願発明の有利な効果を主張いたしました。」、「具体的には、本願発明はポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂の比を80:20とすることにより、優れた接着力と高温信頼性を得ることができるものです。また、令和1年10月17日付けの意見書における追加比較例を再度提出いたします。下表における実施例1は、当初明細書に記載した実施例1と同一であり、追加比較例では、プライマー層のポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との比を75:25にしています。
【表1】

この追加比較例によりますと、引用文献2に記載されたポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂の比(75:25)を有する場合に対して、本願発明に係る光学フィルムは『プライマー面の接着力』及び『高温信頼性後のプライマー面の接着力』に優れていることが明らかです。また、ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂の比が80:20のものは、75:25のものに対し、通常の接着力が1.4倍(2.1/1.4)、高温信頼性試験後の接着力が1.78倍(1.6/0.9)であり、その効果は明らかに顕著なものです。すなわち、本願発明は顕著な効果を奏するものであって、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものではありません。」、
「なお、引用文献2には『耐熱性』を向上させることは記載されているものの、その具体的な内容は実施例から判断するに『耐久性』であり、高温に長時間曝した後の接着性が優れていることまでは記載されていません。すなわち、本願発明の効果は引用文献に記載されていない『異質』なものでもあり、有利な効果というべきものであることは明らかです。」旨主張している。

ウ しかしながら、追加比較例(及びその結果)及び「ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂の比が80:20のものは、75:25のものに対し、通常の接着力が1.4倍(2.1/1.4)、高温信頼性試験後の接着力が1.78倍(1.6/0.9)であ」るとのことは、本件出願の明細書に記載されておらず、かつ、明細書又は図面等の記載から推論できるものでもないので、これを参酌することはできない(当合議体注:特定の組成・構成・条件の実施例1(ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂の比を80:20としたもの)に基づく光学フィルムの「プライマー面の接着力」及び「高温信頼性(80℃,500hr)後のプライマー面の接着力」は、【表1】に示されたとおりであるものの、追加比較例(実施例1において当該比を75:25としたもの)が【表1】に示された「プライマー面の接着力」及び「高温信頼性後のプライマー面の接着力」を示すことは、当初明細書に記載されておらず、かつ、明細書又は図面の記載から推論できるものでもない。)。あるいは、特定の組成・製造条件・構成の実施例1を前提とした実施例1及び追加比較例に基づく上記顕著な効果の主張は、本件補正後発明の構成に基づく主張とはいえない(当合議体注:「プライマー面の接着力」及び「高温信頼性後のプライマー面の接着力」は、アクリル系樹脂及びポリカーボネートを含む基材の材料・組成(比)、ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂を含む易接着層の材料・組成(比)、接着剤層の材料・組成等に大きく影響される。)。
仮に、「ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂の比が80:20のものは、75:25のものに対し」ある優れた「プライマー面の接着力」及び「高温信頼性後のプライマー面の接着力」を示すのだとしても、これをもって、本件補正後発明の「ポリエステル系樹脂」「80?95質量部」、「ポリウレタン樹脂」「5?20重量部」の全ての範囲にわたって同等に優れた「プライマー面の接着力」及び「高温信頼性後のプライマー面の接着力」を示すことが保証されるわけでもない(当合議体注:本件明細書比較例7(100:0)の「高温信頼性後のプライマー面の接着力」(「0.4」)からみて、「ポリエステル系樹脂」「95質量部」、「ポリウレタン樹脂」「5重量部」のプライマー層においては、「高温信頼性後のプライマー面の接着力」が低下することも考えられる。)。
また、引用文献2の【0018】、【0056】、【0058】、【0067】、【0095】、【0103】、【0104】、【0105】【表1】(実施例3(変性ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂の比75:25))、【106】等の記載に基づけば、上記相違点に係る設計変更を施した引用発明において、「75℃で90%RHの条件化も500時間放置し」た後の剥離耐久性が優れる(端部からの剥離の幅が小さい)ことから、高温に長時間曝した後の接着性に優れることが予測・期待できる。そうすると、「高温に長時間曝した後の接着性が優れている」との「本願発明の効果は引用文献に記載されていない『異質』なものでもあり、有利な効果というべきものである」とまではいうことができない。
そして、引用発明において、上記相違点に係る本件補正後発明の構成とすることが、当業者が容易になし得たことであることは、上記(6)において、既に述べたとおりである。

エ 以上のとおりであるから、請求人の上記アの審判請求書における主張及び上記イの上申書における主張を採用することはできない。

3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(前記「第2」[理由]1(1)参照。以下「本願発明」という。)。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、(理由2)本件出願の請求項1?13に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1:国際公開第2015/162926号
引用文献2:特開2010-204622号公報
(当合議体注:引用文献1が主引用例、引用文献2が副引用例である。)

3 理由2(特許法第29条第2項)について
(1) 引用文献及び引用発明
引用文献1及び引用文献2の記載並びに引用発明は、前記「第2」[理由]2(1)?(3)に記載したとおりである。

(2) 対比及び判断
本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明の、発明を特定するために必要な事項である「偏光子と接するプライマー層」から、「偏光子と接する」という限定を除いたものである。また、本願発明の構成を全て具備し、これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明は、前記「第2」[理由]2で述べたとおり、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうしてみると、本願発明も、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-12-04 
結審通知日 2020-12-07 
審決日 2020-12-18 
出願番号 特願2018-544889(P2018-544889)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 説志  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 福村 拓
河原 正
発明の名称 接着力に優れた光学フィルム、およびこれを含む偏光板  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡部 崇  
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