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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01F
管理番号 1374252
審判番号 不服2020-12999  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-16 
確定日 2021-06-01 
事件の表示 特願2015-235651「コイル部品の製造方法、コイル部品、及び電源回路ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 8日出願公開、特開2017-103355、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月2日の出願であって、令和元年5月7日付けで拒絶理由が通知され、令和元年7月16日に手続補正がなされ、令和元年11月11日付けで最後の拒絶理由が通知され、令和2年1月17日に手続補正がなされ、令和2年6月8日付けで、令和2年1月17日にされた手続補正についての補正却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和2年9月16日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年6月8日付け拒絶査定)は「この出願については、令和 1年11月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。」というものであって、令和 1年11月11日付け拒絶理由通知書に記載された理由の概要は、次のとおりである。

「理由1
この出願の請求項1ないし3、5ないし6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2
この出願の請求項1ないし6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」

<引用文献等一覧>
1.特開2014-13815号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、令和2年9月16日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
主面を有すると共に、コイルと該コイルの両端部それぞれから前記主面まで延びて該主面に露出するとともに前記主面側から見て前記コイルの巻回部分の一部と重なる一対の引出導体とを内部に有する磁性素体を準備する工程と、
前記磁性素体の前記主面上に絶縁層を形成する工程と、
前記磁性素体の前記主面上にのみ、該主面に露出した前記一対の引出導体と直接接して電気的に接続される一対の端子電極をめっき形成する工程とを含み、
前記絶縁層は、前記一対の端子電極の間の少なくとも一部に形成され、
前記磁性素体の前記主面が、磁性粉とバインダ樹脂とが混合された磁性樹脂層で構成されており、
前記一対の引出導体が前記磁性樹脂層を貫通している、コイル部品の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記一対の端子電極の間において、前記一対の端子電極が隣り合っている方向に交差する方向に延びて前記主面を横断する、請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記主面の全領域を覆うと共に前記引出導体に対応する位置に孔を有し、前記孔を介して前記端子電極と前記引出導体とが電気的に接続される、請求項1又は2に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁層を形成する工程では、前記主面上に絶縁性樹脂を塗布して前記絶縁層を形成する、請求項1?3のいずれか一項に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項5】
主面を有すると共に、コイルと該コイルの両端部それぞれから前記主面まで延びて該主面に露出するとともに前記主面側から見て前記コイルの巻回部分の一部と重なる一対の引出導体とを内部に有する磁性素体と、
前記磁性素体の前記主面上に設けられた絶縁層と、
前記磁性素体の前記主面上にのみ設けられ、該主面に露出した前記一対の引出導体と直接接して電気的に接続される、めっき電極である一対の端子電極と、を備え、
前記絶縁層は、前記一対の端子電極の間の少なくとも一部に形成され、
前記磁性素体の前記主面が、磁性粉とバインダ樹脂とが混合された磁性樹脂層で構成されており、
前記一対の引出導体が前記磁性樹脂層を貫通している、コイル部品。
【請求項6】
請求項5に記載のコイル部品を備える電源回路ユニット。」

第4 引用発明、引用文献等
1.原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2014-13815号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

「【0001】
本発明はコイル部品及びその製造方法に関し、特に、電解めっきによりプリント基板上に形成した平面スパイラル導体を有するコイル部品及びその製造方法に関する。」

「【0011】
本発明によれば、平面スパイラル導体の最外周と基板の端部との間にダミー引出導体が設けられているので、電解めっき工程において平面スパイラル導体の最外周を構成するめっき層が横方向へ成長することを抑制できる。したがって、平面スパイラル導体の最外周の線幅が極端に太くなることを防止することができる。さらに、本発明によれば、バンプ電極を介してスパイラル導体と外部電極とを接続でき、バンプ電極よりも大きな面積を有する外部電極を用いることによって表面実装時に所望の実装強度を確保することができる。」

「【0013】
本発明によるコイル部品は、前記平面スパイラル導体、前記引出導体及び前記ダミー引出導体を覆う絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の上から前記基板の前記表面を覆う金属磁性粉含有樹脂層とをさらに備え、前記外部電極は、前記金属磁性粉含有樹脂層の側面に形成されることなく主面に選択的に形成され、前記バンプ電極は、前記絶縁樹脂層及び前記金属磁性粉含有樹脂層を貫通して前記外部電極に接続されていることが好ましい。この構成によれば、直流重畳特性に優れた電源用チョークコイルを提供することが可能になる。さらに、チップ側面に半田フィレットを形成しない底面電極のみの電極構造とすることができ、近年の高密度実装の要求に対応することができる。」

「【0028】
本発明によれば、平面スパイラル導体の最外周と基板の端部との間に形成されたダミー引出導体によって、電解めっき工程において平面スパイラル導体の最外周を構成するめっき層の横方向への成長を抑制することができる。また、コイル部品の底面だけに電極面を有する外部電極を採用することができ、コイル形成領域及び磁性体形成領域を減らすことなく、外部電極の所望の面積を確保することができる。」

「【0030】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品1の分解斜視図である。同図に示すように、コイル部品1は略矩形の基板2を有している。「略矩形」とは、完全な矩形の他、一部の角が欠けている矩形を含む意である。本明細書では矩形の「角部」という用語を用いるが、一部の角が欠けている矩形についての「角部」とは、欠けがないとした場合に得られる完全な矩形の角部を意味する。」

【図1】

「【0033】
基板2のおもて面2tの中央部には、平面スパイラル導体10a(第1の平面スパイラル導体)が形成される。同様に、うら面2bの中央部には、平面スパイラル導体10b(第2の平面スパイラル導体)が形成される。また、基板2には導体埋込用のスルーホール12aが設けられ、その内部にスルーホール導体12(第1のスルーホール導体)が埋め込まれている。平面スパイラル導体10aの内周端と平面スパイラル導体10bの内周端とは、スルーホール導体12によって互いに接続される。」

「【0036】
基板2のおもて面2tとうら面2bには、引出導体11a,11bがそれぞれ形成されている。引出導体11a(第1の引出導体)は、基板2の側面2X_(1)に沿って形成される。一方、引出導体11b(第2の引出導体)は、側面2X_(1)と対向する側面2X_(2)に沿って形成される。引出導体11aは平面スパイラル導体10aの外周端と接続され、引出導体11bは平面スパイラル導体10bの外周端と接続される。
【0037】
基板2のおもて面2tには、平面スパイラル導体10aの最外周と基板2の端部との間の領域に、ダミー引出導体15a(第1のダミー引出導体)が形成される。より具体的に説明すると、ダミー引出導体15aは引出導体11bとほぼ同じ平面形状を有しており、平面的に見て引出導体11bと重なる位置に配置される。つまり、ダミー引出導体15aは、基板2の側面2X_(2)と平面スパイラル導体10aの最外周との間に形成されている。ダミー引出導体15aは、同一平面内で他の導体と接続されていないが、基板2を貫通するスルーホール導体17(第2のスルーホール導体)を介して引出導体11bと接続されている。基板2には導体埋込用のスルーホール17aが設けられ、その内部にスルーホール導体17が埋め込まれている。
【0038】
同様に、基板2のうら面2bには、平面スパイラル導体10bの最外周と基板2の端部との間の領域に、ダミー引出導体15b(第2のダミー引出導体)が形成される。より具体的に説明すると、ダミー引出導体15bは引出導体11aと同じ平面形状を有しており、平面的に見て引出導体11aと重なる位置に配置される。つまり、ダミー引出導体15bは、基板2の側面2X_(1)と平面スパイラル導体10bの最外周との間に形成されている。ダミー引出導体15bは、ダミー引出導体15aと同様、同一平面内で他の導体と接続されていないが、基板2を貫通するスルーホール導体16(第3のスルーホール導体)を介して引出導体11aと接続されている。基板2には導体埋込用のスルーホール16aが設けられ、その内部にスルーホール導体16が埋め込まれている。」

「【0041】
基板2のおもて面2t側に設けられた平面スパイラル導体10a、引出導体11a、及びダミー引出導体15aは、絶縁樹脂層21aに覆われている。この絶縁樹脂層21aは、各導体と金属磁性粉含有樹脂層22aとの電気的導通を防止するために設けられているものである。同様に、基板2のうら面2bに設けられた平面スパイラル導体10b、引出導体11b、及びダミー引出導体15bは、絶縁樹脂層21bに覆われている。この絶縁樹脂層21bは、各導体と金属磁性粉含有樹脂層22bとの電気的導通を防止するために設けられているものである。
【0042】
基板のおもて面2t及びうら面2bは、絶縁樹脂層21a,21bの上からさらに、金属磁性粉含有樹脂層22a,22bにそれぞれ覆われている。金属磁性粉含有樹脂層22a,22bは、樹脂に金属磁性粉を混入して作られる磁性材料(金属磁性粉含有樹脂)によって構成される。金属磁性粉としては、パーマロイ系材料を用いることが好適である。・・・(以下、省略)・・・」

「【0048】
なお、図1には示していないが、金属磁性粉含有樹脂層22a,22bの表面には薄い絶縁層が形成される。この絶縁層の形成は、金属磁性粉含有樹脂層22a,22bの表面をリン酸塩で処理することによって行う。この絶縁層を設けたことにより、外部電極26aと金属磁性粉含有樹脂層22a,22bとの電気的導通が防止される。
【0049】
本実施の形態によるコイル部品1は、引出導体11aの上面にバンプ電極25a(第1のバンプ電極)が、ダミー引出導体15aの上面にバンプ電極25b(第2のバンプ電極)が、それぞれ形成されている。バンプ電極25a,25bは、引出導体11aの上面及びダミー引出導体15aの上面のみを露出させるレジストパターンを形成し、各導体をシードレイヤとして、さらに電解めっきを行うことにより形成される。絶縁樹脂層21a,21bを形成する工程並びに金属磁性粉含有樹脂層22a,22bを形成する工程は、バンプ電極25a,25bの形成後に実施される。」

「【0051】
コイル部品1の底面であって金属磁性粉含有樹脂層22aの主面には、一対の外部電極26a,26b(第1及び第2の外部電極)が形成されている。なお、図1は、コイル部品1の底面(実装面)が上向きの状態を示している。外部電極26a,26bは、上記のバンプ電極25a,25bを介して引出導体11a,11bにそれぞれ接続されている。外部電極26a,26bは、図示しない実装基板上に形成されたランドに半田実装される。これにより、実装基板上に形成された配線を通じて、平面スパイラル導体10aの外周端と平面スパイラル導体10bの外周端との間に電流を流すことができる。」

「【0073】
次に、図11に示すように、金属磁性粉含有樹脂層22aの表面に一対の外部電極26a,26bを形成する。外部電極26a,26bは、バンプ電極25a,25bの先端部の露出位置を覆い、バンプ電極25a,25bと電気的に接続されるように形成される。外部電極は、スパッタリングにより形成することが好ましいが、スクリーン印刷により形成してもよい。」
【図11】


2.したがって、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
ア 段落【0001】より、引用文献1は「コイル部品」に関するものであることがわかる。

イ 段落【0031】、【0033】より「略矩形の基板2を有し、基板2のおもて面には、平面スパイラル導体10aが形成され、うら面には、平面スパイラル導体10bが形成され、平面スパイラル導体10aの内周端と平面スパイラル導体10bの内周端とは、スルーホール導体によって互いに接続される」ことが読み取れる。

ウ 段落【0036】ないし【0038】より、「基板2のおもて面2tとうら面2bには、引出導体11a,11bがそれぞれ形成され、引出導体11aは平面スパイラル導体10aの外周端と接続され、引出導体11bは平面スパイラル導体10bの外周端と接続され、
基板2のおもて面2tには、平面スパイラル導体10aの最外周と基板2の端部との間の領域に、ダミー引出導体15aが形成され、ダミー引出導体15aは平面的に見て引出導体11bと重なる位置に配置され、基板2を貫通するスルーホール導体を介して引出導体11bと接続され、
基板2のうら面2bには、平面スパイラル導体10bの最外周と基板2の端部との間の領域に、ダミー引出導体15bが形成され、ダミー引出導体15bは平面的に見て引出導体11aと重なる位置に配置され、基板2を貫通するスルーホール導体を介して引出導体11aと接続され」ることが読み取れる。

エ 段落【0041】ないし【0042】より「基板2のおもて面2t側に設けられた平面スパイラル導体10a、引出導体11a、及びダミー引出導体15aは、絶縁樹脂層21aに覆われ、基板2のうら面2bに設けられた平面スパイラル導体10b、引出導体11b、及びダミー引出導体15bは、絶縁樹脂層21bに覆われ、金属磁性粉含有樹脂層22a,22bは、樹脂に金属磁性粉を混入して作られる磁性材料(金属磁性粉含有樹脂)によって構成され」ることが読み取れる。

オ 段落【0049】より「引出導体11aの上面にバンプ電極25aが、ダミー引出導体15aの上面にバンプ電極25bが、それぞれ形成され」ることが読み取れる。

カ 段落【0048】、【0051】、【0013】より「金属磁性粉含有樹脂層22a,22bの表面には薄い絶縁層が形成され、コイル部品1の底面であって金属磁性粉含有樹脂層22aの主面には、一対の外部電極26a,26bが形成され、前記外部電極26a,26bは、前記金属磁性粉含有樹脂層22aの側面に形成されることなく主面に選択的に形成され、前記バンプ電極25a,25bは、前記絶縁樹脂層21a及び前記金属磁性粉含有樹脂層22aを貫通して前記外部電極26a,26bに接続され」ることが読み取れる(なお、記載を統一するため、段落【0013】の「外部電極」、「絶縁樹脂層」、「金属磁性粉含有樹脂層」及び「バンプ電極」を、それぞれ「外部電極26a,26b」、「絶縁樹脂層21a」、「金属磁性粉含有樹脂層22a」及び「バンプ電極25a,25b」と記載した。)。

キ 段落【0073】より「外部電極26a,26bは、スパッタリングにより形成することが好ましいが、スクリーン印刷により形成してもよい。」ことが読み取れる(なお、記載を統一するため、段落【0073】の「外部電極」を「外部電極26a,26b」と記載した。)。

3.上記アないしキより、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「コイル部品であって、
略矩形の基板2を有し、基板2のおもて面には、平面スパイラル導体10aが形成され、うら面には、平面スパイラル導体10bが形成され、平面スパイラル導体10aの内周端と平面スパイラル導体10bの内周端とは、スルーホール導体によって互いに接続され、
基板2のおもて面2tとうら面2bには、引出導体11a,11bがそれぞれ形成され、引出導体11aは平面スパイラル導体10aの外周端と接続され、引出導体11bは平面スパイラル導体10bの外周端と接続され、
基板2のおもて面2tには、平面スパイラル導体10aの最外周と基板2の端部との間の領域に、ダミー引出導体15aが形成され、ダミー引出導体15aは平面的に見て引出導体11bと重なる位置に配置され、基板2を貫通するスルーホール導体を介して引出導体11bと接続され、
基板2のうら面2bには、平面スパイラル導体10bの最外周と基板2の端部との間の領域に、ダミー引出導体15bが形成され、ダミー引出導体15bは平面的に見て引出導体11aと重なる位置に配置され、基板2を貫通するスルーホール導体を介して引出導体11aと接続され、
基板2のおもて面2t側に設けられた平面スパイラル導体10a、引出導体11a、及びダミー引出導体15aは、絶縁樹脂層21aに覆われ、基板2のうら面2bに設けられた平面スパイラル導体10b、引出導体11b、及びダミー引出導体15bは、絶縁樹脂層21bに覆われ、金属磁性粉含有樹脂層22a,22bは、樹脂に金属磁性粉を混入して作られる磁性材料(金属磁性粉含有樹脂)によって構成され、
引出導体11aの上面にバンプ電極25aが、ダミー引出導体15aの上面にバンプ電極25bが、それぞれ形成され、
金属磁性粉含有樹脂層22a,22bの表面には薄い絶縁層が形成され、コイル部品1の底面であって金属磁性粉含有樹脂層22aの主面には、一対の外部電極26a,26bが形成され、前記外部電極26a,26bは、前記金属磁性粉含有樹脂層22aの側面に形成されることなく主面に選択的に形成され、前記バンプ電極25a,25bは、前記絶縁樹脂層21a及び前記金属磁性粉含有樹脂層22aを貫通して前記外部電極26a,26bに接続され、
外部電極26a,26bは、スパッタリングにより形成することが好ましいが、スクリーン印刷により形成してもよい、
コイル部品。」

第5 対比・判断
1.本願発明5について
(1)対比
事案に鑑み、まず本願発明5と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「金属磁性粉含有樹脂層22a,22b」が、本願発明5における「磁性素体」に相当する。よって、引用発明における「コイル部品1の底面」である「金属磁性粉含有樹脂層22aの主面」が、本願発明5における「磁性素体」の「主面」に相当する。

イ 引用発明における「平面スパイラル導体10b」と「平面スパイラル導体10a」は、「内周端」が「互いに接続され」ているから、本願発明5における「コイル」に相当する。

ウ 引用発明において「基板2のおもて面2tとうら面2bには、引出導体11a,11bがそれぞれ形成され、引出導体11aは平面スパイラル導体10aの外周端と接続され、引出導体11bは平面スパイラル導体10bの外周端と接続され、基板2のおもて面2tには、平面スパイラル導体10aの最外周と基板2の端部との間の領域に、ダミー引出導体15aが形成され、ダミー引出導体15aは平面的に見て引出導体11bと重なる位置に配置され、基板2を貫通するスルーホール導体を介して引出導体11bと接続され、基板2のうら面2bには、平面スパイラル導体10bの最外周と基板2の端部との間の領域に、ダミー引出導体15bが形成され、ダミー引出導体15bは平面的に見て引出導体11aと重なる位置に配置され、基板2を貫通するスルーホール導体を介して引出導体11aと接続され」、「引出導体11aの上面にバンプ電極25aが、ダミー引出導体15aの上面にバンプ電極25bが、それぞれ形成され」、「コイル部品1の底面であって金属磁性粉含有樹脂層22aの主面には、一対の外部電極26a,26bが形成され」、「前記バンプ電極25a,25bは、前記絶縁樹脂層21a及び前記金属磁性粉含有樹脂層22aを貫通して前記外部電極26a,26bに接続され、」「前記バンプ電極25a,25bは、前記絶縁樹脂層21a及び前記金属磁性粉含有樹脂層22aを貫通して前記外部電極26a,26bに接続され」ているから、引用発明における電気的接続及び配置を整理して略記すれば、次のとおりである(矢印は、電気的接続を示す。)。
(ア)「外部電極26a」(金属磁性粉含有樹脂層22aの主面)

「バンプ電極25a」(絶縁樹脂層21a及び金属磁性粉含有樹脂層22aを貫通)

「引出導体11a」→「平面スパイラル導体10aの外周端」(基板2のおもて面2t)

「ダミー引出導体15b」(基板2のうら面2b)
(イ)「外部電極26b」(金属磁性粉含有樹脂層22aの主面)

「バンプ電極25b」(絶縁樹脂層21a及び金属磁性粉含有樹脂層22aを貫通)

「ダミー引出導体15a」(基板2のおもて面2t)

「引出導体11b」→「平面スパイラル導体10bの外周端」(基板2のうら面2b)

したがって、引用発明における「バンプ電極25a」と「バンプ電極25b」は、「金属磁性粉含有樹脂層22aを貫通」しているから「金属磁性粉含有樹脂層22aの主面」に露出していることは明らかであって、引用発明と本願発明5とは「該コイルの両端部それぞれから前記主面まで延びて該主面に露出する一対の引出導体」の点で一致する。
しかしながら、本願発明5では、「一対の引出導体」は「該前記主面側から見て前記コイルの巻回部分の一部と重なる」のに対し、引用発明5では、「バンプ電極25a」と「バンプ電極25b」を「金属磁性粉含有樹脂層22aの主面」側からみると、
・「バンプ電極25a」は、「平面スパイラル導体10bの最外周と基板2の端部との間の領域」の「ダミー引出導体15b」(と平面的に見て重なる「引出導体11a」)の「上面」に形成され、
・「バンプ電極25b」は、及び「平面スパイラル導体10aの最外周と基板2の端部との間の領域」の「ダミー引出導体15a」の「上面」に形成されているから、
「バンプ電極25a」及び「バンプ電極25b」は、「平面スパイラル導体10a」及び「平面スパイラル導体10b」の巻回部分と重ならない点で相違する。

エ 引用発明における「薄い絶縁層」は「金属磁性粉含有樹脂層22a,22bの表面に」「形成され」ているから、「金属磁性粉含有樹脂層22aの主面」にも形成されていることは明らかであって、本願発明5における「前記磁性素体の前記主面上に設けられた絶縁層」に相当する。

オ 引用発明における「外部電極26a,26b」は「前記金属磁性粉含有樹脂層22aの側面に形成されることなく主面に選択的に形成され」、「前記金属磁性粉含有樹脂層22aを貫通」する「前記バンプ電極25a,25b」に「接続され」、「外部電極26a,26bは、スパッタリングにより形成することが好ましいが、スクリーン印刷により形成してもよい」とされているから、引用発明における「外部電極26a,26b」と本願発明5における「一対の端子電極」とは、「前記磁性素体の前記主面上にのみ設けられ、該主面に露出した前記一対の引出導体と直接接して電気的に接続される、一対の端子電極」の点で一致する。
しかしながら、本願発明5では、「一対の端子電極」が「めっき電極」であるのに対し、引用文献1では「外部電極26a,26b」を「スパッタリング」または「スクリーン印刷」により形成することは示されているものの、「めっき電極」とすることは示されていない点で相違する。

カ 引用発明における「絶縁層」を「金属磁性粉含有樹脂層22a」の「表面」に形成することは、これにより「絶縁層」が「金属磁性粉含有樹脂層22a」の「主面上」の「外部電極26a,26b」の間にも形成されることは明らかであって、本願発明5における「前記絶縁層は、前記一対の端子電極の間の少なくとも一部に形成され」ていることに相当する。

キ 引用発明における「金属磁性粉含有樹脂層22aの主面」が「樹脂に金属磁性粉を混入して作られる磁性材料(金属磁性粉含有樹脂)によって構成され」ていることが、本願発明5における「前記磁性素体の前記主面が、磁性粉とバインダ樹脂とが混合された磁性樹脂層で構成されて」いることに相当する。

ク 引用発明における「前記バンプ電極25a,25bは、前記絶縁樹脂層21a及び前記金属磁性粉含有樹脂層22aを貫通して」いることが、本願発明5における「前記一対の引出導体が前記磁性樹脂層を貫通している」ことに相当する。

ケ 引用発明における「コイル部品」は、本願発明5でいう「磁性素体」「絶縁層」「端子電極」を備えているから、本願発明5における「コイル部品」に相当する。

よって、上記アないしケより、本願発明5と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「主面を有すると共に、コイルと該コイルの両端部それぞれから前記主面まで延びて該主面に露出する一対の引出導体とを内部に有する磁性素体と、
前記磁性素体の前記主面上に設けられた絶縁層と、
前記磁性素体の前記主面上にのみ設けられ、該主面に露出した前記一対の引出導体と直接接して電気的に接続される、一対の端子電極と、を備え、
前記絶縁層は、前記一対の端子電極の間の少なくとも一部に形成され、
前記磁性素体の前記主面が、磁性粉とバインダ樹脂とが混合された磁性樹脂層で構成されており、
前記一対の引出導体が前記磁性樹脂層を貫通している、コイル部品。」

(相違点1)
本願発明5では、「一対の端子電極」が「めっき電極」であるのに対し、引用発明では「めっき電極」とすることは示されていない点。

(相違点2)
本願発明5では、「一対の引出導体」が「前記主面側から見て前記コイルの巻回部分の一部と重なる」のに対し、引用発明では、その旨の特定がされていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、まず、上記相違点2について検討する。
ア 引用文献1の段落【0007】、【0065】、【図5】には、「HAP(ハイアスペクトプレーティング)めっき」(段落【0005】)の解決すべき課題について、次のように記載されている。
「【0007】
しかしながら、HAPめっきを行う場合、平面スパイラル導体の最外周に相当する部分のめっき層が横方向に異常成長してしまう場合がある。・・・(省略)・・・このため、最外周の線幅が過度に太くなり、所望のスパイラルパターンを形成できないという問題がある。このようなパターンコイル部品の特性劣化の原因となるため、特に防止する必要がある。」
「【0065】
しかし一方で、HAPめっき処理を行うと、上述したように、隣接する他のシードレイヤがない箇所では、めっき層20が横方向に大きく成長する。図5は、実際にHAPめっき処理を行って形成した平面スパイラル導体10a,10bの断面電子顕微鏡写真のトレースである。」

「【図5】



イ そこで、引用発明では、上記課題を解決するため「基板2のおもて面2tには、平面スパイラル導体10aの最外周と基板2の端部との間の領域に、ダミー引出導体15a」を形成し、「基板2のうら面2bには、平面スパイラル導体10bの最外周と基板2の端部との間の領域に、ダミー引出導体15b」を形成して、「電解めっき工程において平面スパイラル導体の最外周を構成するめっき層が横方向へ成長することを抑制でき」、「したがって、平面スパイラル導体の最外周の線幅が極端に太くなることを防止することができる」(引用文献1の段落【0011】参照。)ようにしたものである。

ウ よって、引用発明において、「バンプ電極25a」及び「バンプ電極25b」を「平面スパイラル導体10a」及び「平面スパイラル導体10b」の巻回部分と重なるようにした場合には、上記「ダミー引出導体15a」及び「ダミー引出導体15b」を、平面スパイラル導体の最外周と基板の端部との間の領域に設けることが困難となり、引用文献1に記載された上記課題を解決することができなくなることは明らかである。

エ したがって、引用発明において、「バンプ電極25a」及び「バンプ電極25b」を、「平面スパイラル導体10a」及び「平面スパイラル導体10b」の巻回部分と重なる構成とすることには阻害要因があり、そのような構成が仮に周知技術であったとしても、引用発明においてそのような構成を採用することは、当業者に動機付けられないことである。

オ 以上のとおり、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明5は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3〉まとめ
よって、本願発明5は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明1ないし4、6について
(1)本願発明1は、本願発明5に係る「コイル部品」を製造する方法に関する発明であって、本願発明5の「一対の引出導体」が「前記主面側から見て前記コイルの巻回部分の一部と重なる」構成と同一の構成を備えるもの(相違点2に係る構成)であるから、本願発明5と同じ理由により、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(2)本願発明2ないし4は、本願発明1に更なる限定事項を付した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(2)本願発明6は、本願発明5に係る「コイル部品」を備える電源回路ユニットに関する発明であるから、本願発明5と同じ理由により、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1.理由1(特許法第29条第1項第3号)について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし3、5ないし6は、「一対の端子電極」が「めっき電極」であり、「一対の引出導体」が「前記主面側から見て前記コイルの巻回部分の一部と重なる」という構成(相違点1及び2に係る構成)を有するものとなっているから、本願発明1ないし3、5ないし6は、引用文献1に記載された発明ではない。

2.理由2(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし6は、「一対の引出導体」が「前記主面側から見て前記コイルの巻回部分の一部と重なる」という構成(相違点2に係る構成)を有するものとなっているから、本願発明1ないし6は、当業者であっても引用文献1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.まとめ
したがって、原査定の拒絶の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-05-11 
出願番号 特願2015-235651(P2015-235651)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H01F)
P 1 8・ 121- WY (H01F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久保田 昌晴  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 畑中 博幸
清水 稔
発明の名称 コイル部品の製造方法、コイル部品、及び電源回路ユニット  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 三上 敬史  
代理人 黒木 義樹  
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