• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R
管理番号 1374263
審判番号 不服2020-16275  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-26 
確定日 2021-06-01 
事件の表示 特願2016-119692号「ピラートリム取付構造」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月21日出願公開、特開2017-222278号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月16日の出願であって、令和2年4月3日付けで拒絶理由が通知され、同年6月9日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月24日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年11月26日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項1?3
・引用文献1、2
<刊行物等一覧>
引用文献1.実願平4-56882号(実開平6-12213号)の
CD-ROM
引用文献2.特開2013-248981号公報
なお、原査定において、引用文献1を「実開平6-12213号公報」としているが、考案の詳細な説明における「従来の技術」に係る記載を引用箇所として示していることから、上記のとおりの「実願平4-56882号(実開平6-12213号)のCD-ROM」の誤記であることは明らかである。

第3 本願発明
本願請求項1?3に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、令和2年6月9日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
車両側部で上下方向に延びるピラーと、
前記ピラーの車内側に取付けられるピラートリムとを含み、
前記ピラートリムは、
前記ピラーを車内側から覆う基部と、
前記ピラーの車両前後方向の両縁にそれぞれ係合する爪部であって、該爪部同士が互いに離れることによって係合が解除される爪部とを有するピラートリム取付構造において、
前記ピラーには、車内側に所定の孔が形成されていて、
前記ピラートリムは、前記基部から車外側に突出し前記ピラーの所定の孔に挿入される突出部を備えることを特徴とするピラートリム取付構造。
【請求項2】
前記突出部の前記基部側は、その車両前後方向の寸法が前記所定の孔の車両前後方向の寸法よりも大きくなるように拡張されていることを特徴とする請求項1に記載のピラートリム構造。
【請求項3】
前記ピラートリムは、前記基部の車両前後方向の両縁からそれぞれ車外側に湾曲して延びていて前記爪部が形成されているフランジと、該フランジと前記突出部とをつなぐリブとをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のピラートリム取付構造。」

第4 引用文献の記載事項等
1 引用文献1
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下同様。)。
(1a)「【図面の簡単な説明】
【図1】本考案のピラ-ガ-ニッシュの、図2のB-B線に沿う位置での取付構造を示す断面図である。
【図2】ピラ-ガ-ニッシュの外観図である。
【図3】従来のピラ-ガ-ニッシュの、図2のA-A線に沿う位置での取付構造を示す断面図である。
【図4】従来のピラ-ガ-ニッシュの、図2のB-B線に沿う位置での取付構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 センタピラ-
G ピラ-ガ-ニッシュ
2 アッパガ-ニッシュ
3 ロアガ-ニッシュ
20、30 当てリブ
4 ラップ部
5 トリム
S 空間」

(1b)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は自動車センタピラーの車内面に取付けられるピラーガーニッシュに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記ピラーガーニッシュとしては、これを上下に二分割し、ドアサッシュと対応するセンタピラーの上半部にアッパガーニッシュを取付け、ドアパネルと対応する下半部にロアガーニッシュを取付ける構造としたものがある(実開平4-31054号)
【0003】
図2ないし図4は、一般に用いられている分割タイプのピラーガーニッシュGの取付構造を示すもので、センタピラー1の上半部にはアッパガーニッシュ2が、下半部にはロアガーニッシュ3が取付けられている。センタピラー1の上半部の前後のフランジ11にはトリム5が取付けられている。
【0004】
アッパガーニッシュ2は、その内面側の上下位置に突設した図略のクリップ取付座にクリップ6a,6bを取付け、これをセンタピラー1のクリップ穴に押込むことにより固定されている。
【0005】
一方、ロアガーニッシュ3はセンタピラー1との間にシートベルト収納部となる空間Sを形成するようにセンタピラー1を覆っている。そしてロアガーニッシュ3は、図4(図1のA-A線断面)に示すように、前後の内面に対設したリブ71,72でセンタピラー1の前後のフランジ11を挟むようにして取付けられている。
【0006】
ところが、シートベルト(図略)が引き出されるアッパガーニッシュ2の下端とロアガーニッシュ3の上端とのラップ部4では、図4(図2のB-B線断面)に示すようにフランジ11にトリム5が取付けられているのでロアガーニッシュ3の端縁31でフランジ11を挟み付けることができず、トリム5を包むように嵌合せしめてある。」

(1c)「【0007】
【考案が解決しようとする課題】
ロアガーニッシュ3は、その両端縁をフランジ11およびトリム5に嵌着させるためにはトリム全体を幅方向に広げるように変形させる必要があることから、変形可能な厚さに形成されている。このため、上端では、何等かの外力(矢印P)で押込まれると、両端縁が図4の破線で示すように口開き状に変形し、トリム5からはずれるおそれがある。また、長期間使用においては口開き状に永久変形する。
【0008】
そこで本考案は、ロアガーニッシュの上端に外力が加えられても、ロアガーニッシュのトリムと嵌合する端縁に変形が生じたり、また端縁がトリムからはずれたりすることのないピラーガーニッシュの取付構造を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本考案は図1に示すように、アッパガーニッシュ2の下端と空間Sをおいてラップするロアガーニッシュ3の上端は、その前後の端縁をセンタピラー1の前後のトリム5を包むように嵌合させてセンタピラー1に取付けてある。アッパガーニッシュ2の下端内面には当てリブ20を突設してセンタピラー1に当接せしめる。また、ロアガーニッシュ3の上端内面には前後位置に当てリブ30を突設してアッパガーニッシュ2の下端外面に当接せしめる。
【0010】
【作用】
ロアガーニッシュ3の上端に車内から外力が加えられても、外力はロアガーニツシュ3の前後位置で、当てリブ30および当てリブ20を有するアッパガーニッシュ2を介してセンタピラー1により受け止められる。従ってトリム5を包むロアガーニッシュ3の端縁31に変形や口開きは生じない。」

(1d)【図1】?【図4】は次のとおりである。

【図1】


【図2】


【図3】


【図4】



(2)引用発明
上記(1)より、引用文献1には、その「従来の技術」に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「自動車センタピラーの車内面に取付けられる分割タイプのピラーガーニッシュGの取付構造であって、
センタピラー1の上半部にはアッパガーニッシュ2が、下半部にはロアガーニッシュ3が取付けられ、
センタピラー1の上半部の前後のフランジ11にはトリム5が取付けられ、
アッパガーニッシュ2は、その内面側の上下位置に突設したクリップ取付座にクリップ6a,6bを取付け、これをセンタピラー1のクリップ穴に押込むことにより固定され、
ロアガーニッシュ3はセンタピラー1との間にシートベルト収納部となる空間Sを形成するようにセンタピラー1を覆っており、
ロアガーニッシュ3は、前後の内面に対設したリブ71,72でセンタピラー1の前後のフランジ11を挟むようにして取付けられ、
シートベルトが引き出されるアッパガーニッシュ2の下端とロアガーニッシュ3の上端とのラップ部4では、フランジ11にトリム5が取付けられているのでロアガーニッシュ3の端縁31でフランジ11を挟み付けることができず、トリム5を包むように嵌合せしめてある、
ピラーガーニッシュGの取付構造。」

2 引用文献2
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a)「【0001】
本発明は、自動車用内装材の接合構造に関する。」

(2b)「【0016】
図1に示す自動車1は、・・・
本自動車1は、フロントドア3aの前にフロントピラー、フロントドア3aとリアドア3bとの間にセンターピラー、リアドア3bの後にリヤピラーがある。これらのピラーは、車体パネルの一種であり、車両の骨組みとしてルーフ(車体パネルの一種)を支える。各ピラーの車室CA1側には、前から、フロントピラーガーニッシュ4a、センターピラーガーニッシュ4b、リヤピラーガーニッシュ4cが取り付けられている。ルーフの車室CA1側にはヘッドライナー5aが取り付けられ、各ドア3a,3bのドアパネル(車体パネルの一種)の車室CA1側にはドアトリム5b,5cが取り付けられている。各ドア3a,3bの開口を縁取る位置の車体パネルには、ゴムといった弾性部材で形成されたオープニングトリム5d,5eが取り付けられている。
【0017】
ピラーガーニッシュは、多くの場合、アッパー部材20とロア部材50とを上下に突き合わせて形成される。図1では、ピラーガーニッシュ4b,4cが内装材11とされ、アッパー部材20が第一の内装材とされ、ロア部材50が第二の内装材とされ、ピラーガーニッシュ4b,4cに接合構造10が設けられていることが示されている。図1に示すアッパー部材20は、シートベルト(ウェビング)6を通すための略長円形状の開口20aが形成されている。
なお、本発明を適用可能な接合構造は、ピラーガーニッシュの上端部とヘッドライナーとの接合部、ピラーガーニッシュの上端部とサイドルーフレールガーニッシュとの接合部、ピラーガーニッシュの下端部とサイドシルガーニッシュとの接合部、等に設けられてもよい。」

(2c)「【0022】
次に、内装材の接合構造10をより具体的に説明する。
アッパー部材20及びロア部材50には、成形後に可撓性を示す成形材料を成形した成形品等を用いることができる。前記成形は、射出成形やプレス成形等により行うことができる。前記成形材料には、熱可塑性樹脂といった合成樹脂を含む樹脂成形材料等を用いることができる。前記樹脂成形材料には、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン、これらの合成樹脂にエラストマーを添加した改質樹脂、これらの樹脂に着色剤といった添加剤を添加した材料、等を用いることができる。また、アッパー部材20やロア部材50の表面、特に、車室側の面には、不織布等の表皮材が積層されてもよい。
【0023】
図2?9に示すアッパー部材20及びロア部材50は、長手方向を連続方向D1に向けていわゆる断面略コ字状に形成され、開断面構造とされている。アッパー部材20の下端部(アッパー接合端部22)とロア部材50の上端部(ロア接合端部52)とが重ね合わせ方向D4へ重ね合わせられ、接合面12でアッパー部材20とロア部材50とが突き合わされて接合されている。
【0024】
図2?5に示すように、アッパー部材(第一の内装材)20は、長手方向を連続方向D1へ向けた開断面構造のアッパー本体21、アッパー本体21のロア部材50側の端部に設けられた開断面構造のアッパー接合端部(第一接合端部)22、及び、アッパー本体21の上端部に設けられた図示しない接合端部を備えている。図3?5,9に示すように、アッパー接合端部22は、横断面において、開口部35を挟んで相対向するアッパー側部40,40が車室CA1側のアッパー基底部(第一基底部)30から車外側(開口部35側)へ若干拡がるように延出している。なお、アッパー基底部30とアッパー側部40,40との境界部を符号23で示している。」

(2d)「【0026】
図3?5,9,10に示すように、各アッパー側部40は、アッパー基底部30から横断面の開口部35側へ延出した側壁部41、該側壁部41の先端縁41aから外側方向D9へ延出した第二段部42、及び、該第二段部42の先端縁42aから横断面の開口部35側へ延出した縁部43、を有している。側壁部41,41は、境界部23,23から車外側へ若干拡がるように延出している。第二段部42,42は、アッパー基底部の第一段部31,31よりも車外側へ下がっている。縁部43,43は、第二段部の先端縁42a,42aから車外側へ若干拡がるように延出している。各縁部43の車室CA1側、すなわち、第二段部42と繋がる部位(先端縁42aと一致)には、第二段部42よりも車室CA1側、すなわち、横断面のアッパー基底部30側へ凸とされたストッパーリブ(第二凸部)44が形成されている。図3,4,10に示すストッパーリブ44は、長手方向を上下方向(連続方向D1)へ向けた突条状とされている。むろん、ストッパーリブの形状は、線状以外にも、曲線状、突起状、膨出状、等でもよい。ストッパーリブ44が無い場合、第二段部42の広い面と根元部71とが接触することとなり、成形誤差等の寸法ばらつきにより接合面12によじれが生じる可能性がある。ストッパーリブ44が有ることにより、成形誤差等の寸法ばらつきが好適に吸収され、該寸法ばらつきによるよじれが抑制される。
また、各アッパー側部40には、ロア部材50の爪部80を挿入させるための貫通穴45が形成されている。各貫通穴45は、アッパー側部40を厚み方向へ貫通し、第二段部42から側壁部41にかけて形成されている。これにより、アッパー側部40が撓み易くなっており、アッパー部材20の成形誤差が好適に吸収される。
【0027】
図2,6?8示すように、ロア部材(第二の内装材)50は、長手方向を連続方向D1へ向けた開断面構造のロア本体51、ロア本体51のアッパー部材20側に端部に設けられた開断面構造のロア接合端部(第二接合端部)52、及び、ロア本体51の下端部に設けられた図示しない接合端部を備えている。図6?9に示すように、ロア接合端部52は、横断面において、開口部65を挟んで相対向するロア側部70,70が車室CA1側のロア基底部(第二基底部)60から車外側(開口部65側)へ若干拡がるように延出している。なお、ロア基底部60とロア側部70,70との境界部を符号53で示している。」

(2e)「【0029】
図6?10に示すように、各ロア側部70の内側には、内側方向D8へ板状に延出した補強用のリブ76が形成されている。根元部71から開口部65側のリブ76は、延出長さが短くされた幅狭部76aとされている。凸部74と窪み部72との間の幅狭部76aは、ロア接合端部52の弾性による内側方向D8への付勢力をアッパー側部40の縁部43に作用させる作用面75とされている。
上記リブ76は、ロア基底部60の内側面61に形成されていない。従って、ロア基底部60に対してロア側部70が内外方向D7へ撓み易い構造とされている。
【0030】
また、アッパー接合端部22の外側に可撓性のロア接合端部52を重ね合わせ方向D4へ重ねるときにアッパー側部40の縁部43が乗り越えた後に掛止される凸部74が各ロア側部70の内側に形成されている。図7,10に示す凸部74は、幅狭部76aから内側方向D8に向かって突出している。ロア側部70の内側に凸部74があることにより、取り外し方向D6におけるロア側部70の移動が規制されるので、容易にロア接合端部52がアッパー接合端部22に固定される。
【0031】
さらに、各ロア側部70の内側には、横断面の開口部65側へ突出した爪部80が設けられている。従って、ロア側部70は、爪部80の根元にあたる根元部71から開口部65側に向かって二股に分かれた蟹爪状に形成されている。図7,10に示す爪部80の内側縁部は、上方向D2(連続方向D1)へ延出した立壁部80aとされている。この立壁部80a は、重ね合わせ方向D4に向けて爪部80に設けられ、根元部71からロア基底部60側でリブ76から上方向D 2(連続方向D1)へ延出した立壁部80bに繋がっている。立壁部80bは、内外方向D7に向けてリブ76に設けられ、ロア側部70の周壁部70aに繋がっている。繋がった立壁部80a,80bは、いわゆる略L字状に形成され、爪部80の剛性を高めている。根元部71に臨む爪部80の内側面は、アッパー側部40の縁部43が内側方向D8へ動かないように該縁部43 の内側を支持する支持面81とされている。
各爪部80は、アッパー接合端部22の貫通穴45に挿入される。各アッパー側部40の縁部43は、貫通穴45を貫通した爪部80とロア側部70とで挟持される。これにより、アッパー側部40の内側方向D8への移動が規制されるので、ロア接合端部52のがたつきや浮きが抑制される。」

(2f)【図1】、【図2】、【図7】?【10】は次のとおりである。
【図1】

【図2】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


(2)引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)より、引用文献2には次の技術的事項が記載されているものと認める。
「自動車1は、フロントドア3aの前にフロントピラー、フロントドア3aとリアドア3bとの間にセンターピラー、リアドア3bの後にリヤピラーがあり、
各ピラーの車室CA1側には、前から、フロントピラーガーニッシュ4a、センターピラーガーニッシュ4b、リヤピラーガーニッシュ4cが取り付けられ
ピラーガーニッシュは、アッパー部材20とロア部材50とを上下に突き合わせて形成され、ピラーガーニッシュ4b,4cに接合構造10が設けられ、
アッパー部材20は、長手方向を連続方向D1へ向けた開断面構造のアッパー本体21、アッパー本体21のロア部材50側の端部に設けられた開断面構造のアッパー接合端部22を備え、
アッパー接合端部22は、横断面において、開口部35を挟んで相対向するアッパー側部40,40が車室CA1側のアッパー基底部30から車外側へ若干拡がるように延出しており、
各アッパー側部40は、アッパー基底部30から横断面の開口部35側へ延出した側壁部41、該側壁部41の先端縁41aから外側方向D9へ延出した第二段部42、及び、該第二段部42の先端縁42aから横断面の開口部35側へ延出した縁部43、を有しており、
各アッパー側部40には、ロア部材50の爪部80を挿入させるための貫通穴45が形成され、各貫通穴45は、アッパー側部40を厚み方向へ貫通し、第二段部42から側壁部41にかけて形成され、
ロア部材50は、長手方向を連続方向D1へ向けた開断面構造のロア本体51、ロア本体51のアッパー部材20側に端部に設けられた開断面構造のロア接合端部52を備え、
各ロア側部70の内側には、内側方向D8へ板状に延出した補強用のリブ76が形成され、
根元部71から開口部65側のリブ76は、延出長さが短くされた幅狭部76aとされ、
凸部74と窪み部72との間の幅狭部76aは、ロア接合端部52の弾性による内側方向D8への付勢力をアッパー側部40の縁部43に作用させる作用面75とされ、
アッパー接合端部22の外側に可撓性のロア接合端部52を重ね合わせ方向D4へ重ねるときにアッパー側部40の縁部43が乗り越えた後に掛止される凸部74が各ロア側部70の内側に形成され、
各ロア側部70の内側には、横断面の開口部65側へ突出した爪部80が設けられ、
各爪部80は、アッパー接合端部22の貫通穴45に挿入され、各アッパー側部40の縁部43は、貫通穴45を貫通した爪部80とロア側部70とで挟持され、
アッパー側部40の内側方向D8への移動が規制されるので、ロア接合端部52のがたつきや浮きが抑制される、自動車用内装材の接合構造」の技術。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 後者の「自動車」は前者の「車両」に相当し、同様に、「センタピラー1」及び「自動車センタピラー」は「ピラー」に相当する。

イ 後者の「ピラーガーニッシュG」(「アッパガーニッシュ2」と「ロアガーニッシュ3」)は、前者の「ピラートリム」に相当するといえ、同様に「ピラーガーニッシュGの取付構造」は、「ピラートリム取付構造」に相当するといえる。
また、このことを踏まえると、後者の「アッパガーニッシュ2」と、「ロアガーニッシュ3」における「リブ71」を設けた「後の内面」を除いた部分のいずれか一方又は双方が、前者の「基部」に相当するといえる。

ウ 後者の「センタピラー1」は「自動車センタピラー」であるから、自動車の側部で上下方向に延びるものであることは自明のことである。
そうすると、上記ア、イも踏まえると、後者の「自動車センタピラーの車内面に取付けられる分割タイプのピラーガーニッシュG」であり、「センタピラー1の上半部にはアッパガーニッシュ2が、下半部にはロアガーニッシュ3が取付けられ」るということは、前者の「車両側部で上下方向に延びるピラーと、前記ピラーの車内側に取付けられるピラートリムとを含み」ということに相当するといえる。

エ 後者の「ピラーガーニッシュG」(「アッパガーニッシュ2」と「ロアガーニッシュ3」)は、「センタピラー1」を車内側から覆うことは自明のことである。また、後者の「アッパガーニッシュ2」の「クリップ取付座に」「取付け」られる「クリップ6a,6b」と、「ロアガーニッシュ3」の「前後の内面に対設したリブ71,72」のいずれか一方又は双方と、前者の「爪部」とは、「固着手段」である点で共通するといえる。
そうすると、上記ア、イも踏まえると、後者の「アッパガーニッシュ2は、その内面側の上下位置に突設したクリップ取付座にクリップ6a,6bを取付け、これをセンタピラー1のクリップ穴に押込むことにより固定され」、「ロアガーニッシュ3は、前後の内面に対設したリブ71,72でセンタピラー1の前後のフランジ11を挟むようにして取付けられ」る「自動車センタピラーの車内面に取付けられる分割タイプのピラーガーニッシュGの取付構造」と、前者の「前記ピラートリムは、前記ピラーを車内側から覆う基部と、前記ピラーの車両前後方向の両縁にそれぞれ係合する爪部であって、該爪部同士が互いに離れることによって係合が解除される爪部とを有するピラートリム取付構造」とは、「前記ピラートリムは、前記ピラーを車内側から覆う基部と、固着手段とを有するピラートリム取付構造」である点で共通するといえる。

オ 以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点〕
「車両側部で上下方向に延びるピラーと、
前記ピラーの車内側に取付けられるピラートリムとを含み、
前記ピラートリムは、前記ピラーを車内側から覆う基部と、固着手段とを有するピラートリム取付構造。」

〔相違点1〕
「固着手段」について、本願発明1は、「前記ピラーの車両前後方向の両縁にそれぞれ係合する爪部であって、該爪部同士が互いに離れることによって係合が解除される爪部」であるのに対し、引用発明は、「センタピラー1のクリップ穴に押込むことにより」「アッパガーニッシュ2」を「固定」する「アッパガーニッシュ2」の「内面側の上下位置に突設したクリップ取付座に」「取付け」られる「クリップ6a,6b」と、「センタピラー1の前後のフランジ11を挟むようにして」「ロアガーニッシュ3」を「取付け」る「ロアガーニッシュ3」の「前後の内面に対設したリブ71,72」のいずれか一方又は双方である点。

〔相違点2〕
本願発明1が、「前記ピラーには、車内側に所定の孔が形成されていて、前記ピラートリムは、前記基部から車外側に突出し前記ピラーの所定の孔に挿入される突出部を備え」るという事項を有するのに対し、引用発明は、当該事項を有していない点。

(2)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
ア 上記「第4 2(2)」で述べた引用文献2に記載された技術的事項は、「ピラーガーニッシュ」を構成する「アッパー部材20」と「ロア部材50」の「接合構造10」(具体的には「アッパー接合端部22の外側に可撓性のロア接合端部52を重ね合わせ方向D4へ重ねる」箇所)において、「ロア本体51のアッパー部材20側に端部に設けられた」「ロア接合端部52のがたつきや浮きが抑制される自動車用内装材の接合構造」に関する技術である。
さらに、摘示(1b)の段落【0006】及び摘示(1c)のとおり、引用文献1においては、「アッパガーニッシュ2の下端とロアガーニッシュ3の上端とのラップ部4」(引用文献2に記載された技術的事項における「接合構造10」に相当)に「フランジ11にトリム5が取付けられているのでロアガーニッシュ3の端縁31でフランジ11を挟み付けることができず、トリム5を包むように嵌合せしめてある」ことにより生じる、「ロアガーニッシュ3」の「上端では、何等かの外力(矢印P)で押込まれると、両端縁が図4の破線で示すように口開き状に変形し、トリム5からはずれるおそれがある。また、長期間使用においては口開き状に永久変形する。」ということが課題として記載されている。
そうすると、引用文献2に記載された技術的事項の構成や、上記の引用文献1に記載された課題を鑑みれば、引用文献2に記載された技術的事項を適用するのであれば、その適用箇所は、引用発明における「アッパガーニッシュ2の下端とロアガーニッシュ3の上端とのラップ部4」ということになり、引用発明の当該「ラップ部4」に引用文献2に記載された技術的事項の「ロア本体51のアッパー部材20側に端部に設けられた」「ロア接合端部52のがたつきや浮きが抑制される」ための構成を有するものとなる(換言すれば、「ピラーガーニッシュG」を構成する「アッパガーニッシュ2」と「ロアガーニッシュ3」との接合構造であり、「センタピラー1」に対する「ピラーガーニッシュG」の取付構造ではない。)ため、「ピラー」と「ピラートリム」に係る固着手段である上記相違点2に係る本願発明1の事項を有するものには至らない。

イ また、引用発明における「センタピラー1」に対する「ピラーガーニッシュGの取付構造」への引用文献2に記載された技術的事項の適用を検討しても、以下のとおりである。
本願発明1は、本願明細書の段落【0006】、【0007】に記載されるように、「ピラートリムは、車室側に面する基部が乗員に押されるなどして車外側への荷重を受け易い」ので、「ピラートリムの基部が車外側への荷重を受けると、基部が車外側へ湾曲し、これに伴いフランジ同士が互いに離れるように変形してしまう」ため、「ピラートリムの一対の爪部と取付ブラケットの一対の貫通孔との嵌合が解除されたり、フランジ同士の変形により見栄えが損なわれたりする」という従来技術が有する課題を解決するために発明されたものである。
ここで、引用発明の「センタピラー1」に対する「ピラーガーニッシュG」の取付は、上記相違点1のとおり、「アッパガーニッシュ2」は、「クリップ6a,6b」を「センタピラー1のクリップ穴に押込むことにより固定され」るものであり、「ロアガーニッシュ3」は、「前後の内面に対設したリブ71,72でセンタピラー1の前後のフランジ11を挟むようにして取付けられ」るものである。
まず、「アッパガーニッシュ2」側は、「クリップ6a,6b」を用いていることから、本願発明1の「ピラーの車両前後方向の両縁にそれぞれ係合する爪部」に相当する事項を有していないため、「ピラートリムの一対の爪部と取付ブラケットの一対の貫通孔との嵌合が解除され」るという問題はそもそも生じないものであるから、引用文献2に記載された技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
次に、「ロアガーニッシュ3」側は、「前後の内面に対設したリブ71,72でセンタピラー1の前後のフランジ11を挟むようにして取付けられ」るものであるが、上記アのとおり、引用文献1においては、「ロアガーニッシュ3」の上端に外力が作用することに着目することしか記載されていない。そうすると、引用文献1に記載された課題を鑑みれば、引用文献2に記載された技術的事項を「ロアガーニッシュ3」側に適用するのであれば、上記アのとおり、「ラップ部4」の箇所となり、あえて、「センタピラー1」と「ロアガーニッシュ3」との間に適用しようとする動機付けがあるとはいえない。仮に適用するとしても、上記相違点2に係る本願発明1の事項を有するものとするには、引用文献2に記載された技術的事項の「爪部80」と「貫通穴45」の具体的構成に大幅な変更を加えなければならないことになり、そのようなことは当業者であっても容易になし得たということはできない。

したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?3は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-05-13 
出願番号 特願2016-119692(P2016-119692)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 浅野 麻木  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
佐々木 一浩
発明の名称 ピラートリム取付構造  
代理人 鈴木 大介  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ