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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1374291 |
審判番号 | 不服2020-1277 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-01-30 |
確定日 | 2021-06-11 |
事件の表示 | 特願2017-517765「自動車両用の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月 7日国際公開、WO2016/051114、平成29年10月26日国内公表、特表2017-531870、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)10月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年10月2日 仏国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和元年 5月30日付け:拒絶理由通知書 令和元年 7月10日 :意見書、手続補正書の提出 令和元年12月24日付け:拒絶査定(原査定) 令和2年 1月30日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和3年 1月26日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書 令和3年 3月12日 :意見書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願請求項1ないし10に係る発明は、以下の引用文献AないしDに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 [引用文献等一覧] A 特開2012-123689号公報 B 国際公開第2013/179096号(周知技術を示す文献) C 特開2013-168124号公報(周知技術を示す文献) D 国際公開第2012/132495号(周知技術を示す文献) 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 [理由1]明確性要件違反 本願請求項2ないし9に係る発明は、以下の点で明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (1)請求項2及び7に記載の「2つの垂直な方向」は、明確ではない。 (2)請求項3及び8に記載の「複数の角度セクタ(Z1,Z2,Z3,Z4)」と「前記ゾーン(Z1,Z2,Z3,Z4)」において、括弧内の「Z1,Z2,Z3,Z4」のそれぞれが、「角度セクタ」であるのか「ゾーン」であるのか、明確ではない。 (3)請求項2及び7に記載の「別個の触覚及び/又は聴覚フィードバックが少なくとも2つの垂直な方向においてもたらされること」と、請求項3及び8に記載の「ユーザの指が前記ゾーン(Z1,Z2,Z3,Z4)の一方で又は他方で移動しているかどうかに応じて別個の触覚及び/又は聴覚フィードバックがもたらされること」との関係が明確ではない。 (4)請求項5に記載の「2つの同一の信号」は、明確ではない。 [理由2]進歩性欠如 本願請求項1ないし9に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 [引用文献等一覧] 1 国際公開第2012/132495号(拒絶査定の引用文献D) 2 特開2012-123689号公報(拒絶査定の引用文献A) 3 特開2014-112357号公報(当審において新たに引用した文献) 第4 本願発明 本願請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和3年3月12日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし7は以下のとおりの発明である。(なお、下線は、補正された箇所を示す。) 「 【請求項1】 自動車両制御装置であって、 -タッチ面(2)であって、該タッチ面(2)上の自動車両を運転するユーザの指の接触と指の移動方向とを検出するようになっている、タッチ面(2)と、 -前記タッチ面(2)上の接触に応じて、前記タッチ面(2)を振動させる及びユーザへの聴覚フィードバックをもたらすように構成される触覚及び聴覚フィードバックモジュール(4)と、 触覚及び聴覚フィードバックの少なくとも1つのパラメータが前記タッチ面(2)上での指の移動方向に伴って変化するという触覚及び聴覚フィードバックをもたらすべく前記触覚及び聴覚フィードバックモジュール(4)を駆動させるように構成される駆動ユニット(5)と、 前記タッチ面(2)を通じて画像を表示するために前記タッチ面(2)の下側に配置される表示装置と、を備え、 前記触覚及び聴覚フィードバックのパラメータが前記タッチ面(2)上での指の移動速度に伴って変化するものであり、 前記タッチ面(2)上での指の移動速度に基づいた前記触覚及び聴覚フィードバックのパラメータに対応するパターンを前記表示装置に更に表示することを特徴とする自動車両制御装置。 【請求項2】 指の位置(P1)を中心とする前記タッチ面(2)のゾーンが複数の角度セクタに分けられ、ユーザの指が前記ゾーンの一方で又は他方で移動しているかどうかに応じて別個の触覚及び聴覚フィードバックがもたらされることを特徴とする請求項1に記載の自動車両制御装置。 【請求項3】 指の位置を中心とする前記タッチ面のゾーンが四分円に分けられることを特徴とする請求項2に記載の自動車両制御装置。 【請求項4】 前記聴覚フィードバックのパラメータは、音量、位相、周波数、持続時間の大きさから選択され、及び、前記触覚フィードバックのパラメータは、加速度、周波数、振幅、持続時間、位相の大きさから選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動車両制御装置。 【請求項5】 請求項1から4のいずれか一項に記載の自動車両制御装置を制御するための方法であって、 -前記タッチ面(2)上のユーザの指の接触と指の移動方向とが検出されるステップと、 -触覚及び聴覚フィードバックの少なくとも1つのパラメータが前記タッチ面(2)上での指の移動方向に伴って変化するという触覚及び聴覚フィードバックがもたらされるステップと、 を備えることを特徴とする方法。 【請求項6】 指の位置を中心とする前記タッチ面(2)のゾーンが複数の角度セクタに分けられ、ユーザの指が前記ゾーンの一方で又は他方で移動しているかどうかに応じて別個の触覚及び聴覚フィードバックがもたらされることを特徴とする請求項5に記載の方法。 【請求項7】 前記触覚及び聴覚フィードバックのパラメータが前記タッチ面(2)上での指の移動速度に伴って変化することを特徴とする請求項5から6のいずれか一項に記載の方法。」 なお、本件補正により、本件補正前の請求項2及び7は削除され、本件補正後の請求項1、2、3、4、5、6及び7はそれぞれ、本件補正前の請求項1、3、4、5、6、8及び9に対応する。 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1(引用文献D)について (1)引用文献1記載事項 当審拒絶理由に引用された引用文献1(拒絶査定の引用文献D)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のため当審が付与した。(以降においても同様。) 「[0022] 以下、本発明の一実施形態に係る操作装置について、添付図面を参照しながら説明する。 本実施形態による操作装置10は、例えば車両に搭載され、図1に示すように、入力操作機器(入力手段)11と、表示器12と、スピーカー13と、アクチュエータ14と、制御装置15とを備えて構成されている。 [0023] 入力操作機器11は、操作者(例えば、車両の運転者)の入力操作に応じて、表示器12の表示画面12a上に表示されている適宜の操作対象を移動操作可能なポインティングデバイスであって、例えば車両の運転者によって操作可能な車両室内の所定位置に配置された略平面状の操作部11aを有し、この操作部11aに対する運転者の手指の接触位置を検出し、この検出結果に応じて表示画面12a上の操作対象に対する操作入力を行なう。 そして、入力操作機器11は、操作者の入力操作に応じて逐次変化する適宜の時刻tでの操作状態量(例えば、操作方向、操作量など)を示す操作入力A(t)の信号を出力する。 [0024] 表示器12は、例えば車両の運転者により視認可能に車室内に配置された表示画面12aを備え、例えば車両の車両室内に搭載されるインストルメントパネルの上面よりも下方に表示画面12aが配置され、制御装置15により制御される。」 「[0027] 制御装置15は、例えば、移動状態検出部21と、フィードバック制御部22とを備えて構成されている。 [0028] 移動状態検出部21は、例えば、入力操作機器11から出力される操作入力A(t)の信号に基づき、入力操作機器11に対する操作者の入力操作に応じて表示器12の表示画面12a上で移動する操作対象(例えば、カーソル、図形など)の移動状態量を検出する。 そして、入力操作機器11に対する操作者の入力操作に応じて逐次変化する適宜の時刻tでの移動状態量B(t)の検出結果の信号を出力する。 なお、移動状態量B(t)は、例えば、表示画面12a上での位置、表示画面12a上での移動方向および移動開始前の位置に対する相対的な移動量からなる移動ベクトル、移動速度、移動加速度などである。 [0029] フィードバック制御部22は、入力操作機器11に対する操作者の入力操作に伴って操作対象が表示画面12a上を移動したことに応じて、表示画面12aに表示される操作対象を直接視認せずに認識可能に、操作者に対して所定のフィードバックを行なう。 [0030] フィードバック制御部22は、例えば、移動状態検出部21から出力される移動状態量B(t)の検出結果の信号に基づき、移動状態量B(t)の変化に伴い連続的に変化するフィードバック量Z(t)を生成し、このフィードバック量Z(t)によって操作者にフィードバックを行なう。 [0031] なお、移動状態量B(t)の変化は、例えば、表示画面12a上での操作対象の移動速度および表示画面12a上での操作対象の移動開始前の位置に対する相対的な移動量のうち少なくとも一方の変化や、表示画面12a上での操作対象の位置の変化や、表示画面12a上での操作対象の移動方向の変化や、表示画面12a上での操作対象の移動加速度の変化などである。 [0032] また、フィードバック量Z(t)は、例えば、スピーカー13から出力される音に対する各種の状態量(例えば、音量、音程、音色、音場、音像、音出力を繰り返す際の周波数など)や、アクチュエータ14によって入力操作機器11に伝達される振動に対する各種の状態量(例えば、周波数、振幅など)や、アクチュエータ14によって入力操作機器11に付与される操作入カの反力に対する各種の状態量(例えば、大きさなど)である。 [0033] 例えば、フィードバック制御部(音フィードバック手段)22は、表示画面12a上での操作対象の移動速度および表示画面12a上での操作対象の移動開始前の位置に対する相対的な移動量のうち少なくとも一方が大きくなることにつれて、スピーカー13から発する音の周波数および音量のうち少なくとも一方を増大傾向に変化させる。 [0034] また、例えば、フィードバック制御部(音フィードバック手段)22は、表示画面12a上での操作対象の移動方向と対応するように操作対象の移動方向の変化に応じてスピーカー13から発する音の音像を変化させる。 [0035] また、例えば、フィードバック制御部(振動フィードバック手段)22は、表示画面12a上での操作対象の移動速度および表示画面12a上での操作対象の移動開始前の位置に対する相対的な移動量のうち少なくとも一方が大きくなることにつれて、アクチュエータ14によって入力操作機器11に伝達される振動の周波数および振幅のうち少なくとも一方を増大傾向に変化させる。 …(中略)… [0037] フィードバック制御部22は、例えば図2に示すように、表示画面12a上での操作対象の移動開始前の位置に対する相対的な移動量、移動速度、移動加速度などの移動状態量B(t)の増大に伴い、増大傾向に変化するフィードバック量Z(t)を生成する。」 「[0069] なお、上述した実施の形態に係る操作装置10において、入力操作機器11は、例えば、タッチパネル、タッチパッド、マウス、トラックボール、ジョイスティック、ペンタブレット、ダイヤルスイッチ、プッシュボタン、ジェスチャー入力機器、遠隔入力機器などであってもよい。」 (2)引用発明 前記(1)より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 車両に搭載され、入力操作機器(入力手段)11と、表示器12と、スピーカー13と、アクチュエータ14と、制御装置15とを備える操作装置10であって、 入力操作機器11は、操作者(例えば、車両の運転者)の入力操作に応じて、表示器12の表示画面12a上に表示されている適宜の操作対象を移動操作可能なポインティングデバイスであり、車両の運転者によって操作可能な車両室内の所定位置に配置された略平面状の操作部11aを有し、この操作部11aに対する運転者の手指の接触位置を検出し、この検出結果に応じて表示画面12a上の操作対象に対する操作入力を行ない、操作者の入力操作に応じて逐次変化する適宜の時刻tでの操作状態量(例えば、操作方向、操作量など)を示す操作入力A(t)の信号を出力し、 表示器12は、例えば車両の運転者により視認可能に車室内に配置された表示画面12aを備え、 制御装置15は、移動状態検出部21と、フィードバック制御部22とを備え、 移動状態検出部21は、入力操作機器11から出力される操作入力A(t)の信号に基づき、入力操作機器11に対する操作者の入力操作に応じて表示器12の表示画面12a上で移動する操作対象(例えば、カーソル、図形など)の移動状態量を検出し、入力操作機器11に対する操作者の入力操作に応じて逐次変化する適宜の時刻tでの移動状態量B(t)の検出結果の信号を出力し、移動状態量B(t)は、表示画面12a上での位置、表示画面12a上での移動方向および移動開始前の位置に対する相対的な移動量からなる移動ベクトル、移動速度、移動加速度などであり、 フィードバック制御部22は、表示画面12aに表示される操作対象を直接視認せずに認識可能に、移動状態検出部21から出力される移動状態量B(t)の検出結果の信号に基づき、移動状態量B(t)の変化に伴い連続的に変化するフィードバック量Z(t)を生成し、このフィードバック量Z(t)によって操作者にフィードバックを行ない、 フィードバック量Z(t)は、例えば、スピーカー13から出力される音に対する各種の状態量(例えば、音量、音程、音色、音場、音像、音出力を繰り返す際の周波数など)や、アクチュエータ14によって入力操作機器11に伝達される振動に対する各種の状態量(例えば、周波数、振幅など)や、アクチュエータ14によって入力操作機器11に付与される操作入カの反力に対する各種の状態量(例えば、大きさなど)であり、 フィードバック制御部22は、表示画面12a上での操作対象の移動開始前の位置に対する相対的な移動量、移動速度、移動加速度などの移動状態量B(t)の増大に伴い、増大傾向に変化するフィードバック量Z(t)を生成し、 入力操作機器11は、タッチパネル、タッチパッドなどであってもよい、 操作装置10。」 2 引用文献2(引用文献A)について 当審拒絶理由に引用された引用文献2(拒絶査定の引用文献A)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0008】 そこで、本発明は、目視時間が限られる状況や目視自体ができないような状況においても確実に操作を行なえる情報処理装置を提供することを目的とする。」 「【0019】 図1は、情報処理装置の実施形態の構成を示す図である。本情報処理装置は、車両に取り付けられたカーナビゲーションシステムであり、エアコン(空調装置)、ラジオ、カーナビゲーション、及びエコ表示の機能を処理する。ここで、エコ表示とは、燃料消費量の少ない運転をしているか等を表示する機能である。 【0020】 情報処理装置は、操作領域を表示する画面を備えたタッチパネル1、入力された信号に応じて音を発生する音発生手段としてのスピーカ2、振動発生手段としての振動素子3、及び制御手段としての制御装置4から構成される。」 「【0023】 制御装置4は、各種演算処理を実行するCPU41とこのCPU41で実行される各種演算プログラム、各種テーブル、演算結果などを記憶するROM及びRAMメモリからなる記憶装置(メモリ)42とを備え、タッチパネル1が生成した位置情報などの各種電気信号が入力されると共に、演算結果などに基づいてタッチパネル1、スピーカ2及び振動素子3などを制御する制御信号を出力する。」 「【0025】 CPU41には、分割処理手段41a、対応処理手段41b、音発生処理手段41c、及び振動発生処理手段41dの4つの処理が設けられており、これらの処理の詳細は後述する。 【0026】 タッチパネル1のタッチ操作は、「タッチ」と「スライド」と「リリース」との3つの操作が可能である。「タッチ」とは、操作者の指先などがタッチパネル1の表面に触れる操作である。この操作によって、タッチパネル1は、タッチされているタッチパネル1の操作領域内の位置に応じた位置情報を生成して電気信号として出力する。「スライド」とは、タッチした後に、指先をタッチパネル1に触れたまま、タッチした位置とは別の位置まで動かす操作である。この操作によってタッチされている操作領域内の位置が変化するため、タッチパネル1は、この変化した位置に応じた位置情報を新たに生成して電気信号として出力する。「リリース」とは、タッチパネル1にタッチしている指先をタッチパネル1から離す操作である。この操作によって、タッチパネル1は、タッチが終了したことを電気信号として出力する。」 「【0028】 図2の最初のステップST1では、第1位置P1に応じてタッチパネル1の操作領域内の位置情報として第1の位置情報C1を生成する。ここで、位置情報とは、CPU41のプログラム内部で扱うための情報であり、例えば、図3のタッチパネル1の左上を原点[0,0]とし、右上を[M,0]、左下を[0,N]、右下を[M,N]として、タッチパネル1の操作領域の任意の位置を[m,n]のように2次元座標で表される。ここで、M,N,m,nは正の数であり、M≧m,N≧nである。このように表された位置情報は、タッチパネル1の操作領域内の位置と対になる。 【0029】 次にステップST2に進み、第1の位置情報C1に応じて得られる第1位置P1とタッチパネル1の操作領域の縁とを結ぶ複数の線によって、操作領域を処理の数になるように複数の領域に分割する。図3の例では、エアコン、ラジオ、カーナビゲーション、及びエコ表示の4つの処理があるため、第1位置P1とタッチパネル1の操作領域の縁とを結ぶ4つの線によって、A1?A4の4つの領域に分割する。このとき、図3に示されるように、タッチされた第1位置P1を基点として、上下左右の方向に4つの領域A1?A4が配置されるように斜線で分割する。本ステップST2の処理を実行するプログラムが、分割処理手段41aに該当すると共に、本発明の処理方法における「分割処理」に該当する。 【0030】 次にステップST3に進み、領域A1?A4の各領域に、処理、音声及び振動を対応させる。図3の領域A1には、エアコンに関する処理と、「エアコン」という音声と、エアコンを表す振動とを対応させる。本実施形態では、振動のパターンとして、例えば、0.5秒間隔で振動と停止を3回繰り返す振動パターン1、1秒間隔で振動と停止を2回繰り返す振動パターン2、1秒間の振動と0.5秒間の停止を2回繰り返す振動パターン3、0.5秒間の振動と1秒間の停止を3回繰り返す振動パターン4などを用意している。そして、エアコンを表す振動を振動パターン1と予め既定しておく。これにより、操作者の指先に振動パターン1の振動が伝達されると、操作者はエアコンを表す振動であると把握することができる。領域A1には、エアコンに関する処理を対応させたため、エアコンを表す振動として振動パターン1を対応させる。 【0031】 領域A2には、ラジオに関する処理と、「ラジオ」という音声と、ラジオを表す振動として振動パターン2とを対応させる。領域A3には、カーナビゲーションに関する処理と、「カーナビ」という音声と、カーナビゲーションを表す振動として振動パターン3とを対応させる。領域A4には、エコ表示に関する処理と、「エコ表示」という音声と、エコ表示を表す振動として振動パターン4とを対応させる。本ステップST3の処理を実行するプログラムが、対応処理手段41bに該当すると共に、本発明の処理方法における「対応処理」に該当する。 【0032】 次にステップST4に進み、領域A1?A4の各領域に、ステップST3で対応させた処理を説明する文字を表示する。これは、図3に示されるように、領域A1に「エアコン」という文字を表示し、領域A2に「ラジオ」という文字を表示し、領域A3に「カーナビ」という文字を表示し、領域A4に「エコ表示」という文字を表示する。ステップST1?ST4の処理によって、タッチパネル1の表示が図3(a)に示されるように表示される。但し、第1位置P1は、説明の便宜上示しているだけであり実際には表示されない。 【0033】 次にステップST5に進み、リリースされたか否かを判定する。リリースされた場合には(ステップST5の判定結果がYES)、ステップST6に進み、初期画面に戻る。ここで、初期画面とはタッチ操作される前の画面であり、初期画面に戻った状態で再びタッチされると、ステップST1の処理が再び実行される。 【0034】 ステップST5で、リリースされていないと判定された場合には(ステップST5の判定結果がNO)、ステップST7に進み、ステップST2によって得られた複数の領域(図3の例では、領域A1?A4)のいずれかの領域にスライドされたか否かを判定する。図3(b)の例では、第1位置P1から領域A4内の任意の位置である第2位置P2にスライドされると、第2位置P2に応じて操作領域内の位置情報として第2の位置情報C2を生成する。そして、第2の位置情報C2が領域A4内にあるため、本ステップST7で領域A4にスライドされたと判定される。スライドされていない場合には(ステップST7の判定結果がNO)、再度ステップST5に進む。ステップST7で、スライドされたと判定された場合には(ステップST7の判定結果がYES)、ステップST8に進み、時間を計測するタイマーを開始する。ここで、タイマーとは、時間の経過と共に値が増加するものであり、この値の大きさに応じて経過した時間の長さを知ることができる。 【0035】 次にステップST9に進み、上記ステップST3でスライドされた領域に対応させた音声を再生する。図3(b)の例では、第1位置P1から第2位置P2にスライドしているため、第2位置P2を含む領域A4に対応させた「エコ表示」という音声を再生する。本ステップST9の音声を再生する処理によって、操作者は、目視をしなくとも音声を聞くことでタッチしている領域に対応する処理を把握できる。本ステップST9の処理を実行するプログラムが、音発生処理手段41cに該当すると共に、本発明の処理方法における「音発生処理」に該当する。 【0036】 次にステップST10に進み、上記ステップST3でスライドされた領域に対応させた振動を発生する。図3(b)の例では、第1位置P1から第2位置P2にスライドしているため、第2位置P2を含む領域A4に対応させたエコ表示を表す振動である振動パターン4を発生する。本ステップST10の振動を発生する処理によって、操作者は、目視をしなくともタッチパネル1の振動を指先で感じることでタッチしている領域に対応する処理を把握できる。本ステップST10の処理を実行するプログラムが、振動発生処理手段41dに該当すると共に、本発明の処理方法における「振動発生処理」に該当する。 【0037】 次にステップST11に進み、規定時間が経過したか否かを判定する。この判定は、ステップST8で開始したタイマーの値が、所定の値以上になっている場合には規定時間が経過したとし、所定の値未満の場合には規定時間が経過していないとする。ステップST11で、規定時間が経過していないと判定された場合には(ステップST11の判定結果がNO)、ステップST12に進み、他の領域へスライドされたか否かを判定する。図3(c)の例では、領域A4内の第2位置P2から領域A1内の任意の位置である第3位置P3にスライドされている。このようなスライドが、規定時間が経過する前に行なわれた場合には、ステップST12で他の領域へスライドされたと判定する。ステップST12で、他の領域へスライドされたと判定された場合には(ステップST12の判定結果がYES)、上記ステップST8に進み、タイマーを再び最初から開始する。 【0038】 ステップST12で、他の領域へスライドされていないと判定された場合には(ステップST12の判定結果がNO)、ステップST13に進み、上記ステップST5と同様に、リリースされたか否かを判定する。ステップST13で、リリースされたと判定された場合には(ステップST13の判定結果がYES)、上記ステップST6に進み初期画面に戻り、リリースされていないと判定された場合には(ステップST13の判定結果がNO)、上記ステップST11に進む。 【0039】 ステップST11で、規定時間が経過したと判定された場合には(ステップST11の判定結果がYES)、ステップST14に進み、現時点でタッチされている位置を含む領域に、上記ステップST3で対応させた処理を実行する。図3(b)のように、第1位置P1から第2位置P2にスライド後、タッチされたままの状態で規定時間が経過し、ステップST14に進んだ場合には、第2位置P2を含む領域A4に対応させたエコ表示に関する処理を実行する。この図3(b)の場合に、第2位置P2に応じて得られる操作領域内の位置情報としての第2の位置情報C2が、本発明の第2の位置情報に該当する。」 「【図2】 」 「【図3】 」 以上より、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。 「 目視時間が限られる状況や目視自体ができないような状況においても確実に操作を行なえる情報処理装置であって、 本情報処理装置は、車両に取り付けられたカーナビゲーションシステムであり、 操作領域を表示する画面を備えたタッチパネル1、入力された信号に応じて音を発生する音発生手段としてのスピーカ2、振動発生手段としての振動素子3、及び制御手段としての制御装置4から構成され、 制御装置4は、各種演算処理を実行するCPU41と記憶装置(メモリ)42とを備え、 CPU41には、分割処理手段41a、対応処理手段41b、音発生処理手段41c、及び振動発生処理手段41dの4つの処理が設けられ、 タッチパネル1のタッチ操作は、「タッチ」と「スライド」と「リリース」との3つの操作が可能であり、「タッチ」の操作によって、タッチパネル1は、タッチされているタッチパネル1の操作領域内の位置に応じた位置情報を生成して電気信号として出力し、 ステップST1では、第1位置P1に応じてタッチパネル1の操作領域内の位置情報として第1の位置情報C1を生成し、 ステップST2に進み、第1の位置情報C1に応じて得られる第1位置P1とタッチパネル1の操作領域の縁とを結ぶ複数の線によって、操作領域を処理の数になるように複数の領域に分割し、図3の例では、エアコン、ラジオ、カーナビゲーション、及びエコ表示の4つの処理があるため、タッチされた第1位置P1を基点として、上下左右の方向に4つの領域A1?A4が配置されるように斜線で分割し、 ステップST3に進み、領域A1?A4の各領域に、処理、音声及び振動を対応させ、 ステップST4に進み、領域A1?A4の各領域に、ステップST3で対応させた処理を説明する文字を表示し、 ステップST5に進み、リリースされたか否かを判定し、 リリースされていないと判定された場合には、ステップST7に進み、ステップST2によって得られた複数の領域(図3の例では、領域A1?A4)のいずれかの領域にスライドされたか否かを判定し、図3(b)の例では、第1位置P1から領域A4内の任意の位置である第2位置P2にスライドされると、第2位置P2に応じて操作領域内の位置情報として第2の位置情報C2を生成し、本ステップST7で領域A4にスライドされたと判定され、 スライドされたと判定された場合には、ステップST8に進み、時間を計測するタイマーを開始し、 ステップST9に進み、上記ステップST3でスライドされた領域に対応させた音声を再生し、 ステップST10に進み、上記ステップST3でスライドされた領域に対応させた振動を発生し、 ステップST11に進み、規定時間が経過したか否かを判定し、 規定時間が経過したと判定された場合には、ステップST14に進み、現時点でタッチされている位置を含む領域に、上記ステップST3で対応させた処理を実行する、 情報処理装置。」 3 引用文献3について 当審拒絶理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、触覚効果を用いてユーザインタフェース上で表面フィーチャ(surface feature)をシミュレートする方法及び装置に関する。」 「【0003】 本発明の一態様によれば、触覚効果を提供する方法が提供される。当該方法は、表面への接触入力及び当該表面での触知的知覚に基づいて周期的な駆動信号を生成する工程を備える。前記周期的な駆動信号は、触覚出力装置に印加され得る。 【0004】 一実施形態において、前記表面はインタフェース装置の表面であり、当該触覚出力装置は当該表面と結合される。一実施形態において、前記触覚出力装置は、静電的な摩擦を生成するように構成されてもよい。前記周期的な駆動信号を生成する工程は、前記周期的な駆動信号の振幅、周波数、又は波形を変化させて、前記インタフェース装置の前記表面における摩擦の大きさを変化させる工程を備える。前記信号の変更は、前記接触入力の位置、速度、加速度、圧力、又は接触面積に基づくものであってもよい。」 「【0025】 図1Aは、触覚効果対応のユーザインタフェース装置100の一実施形態を示す。当該装置の表面110に、触覚効果が生成される。当該触覚効果を生成することによって、装置100によって表現されるフィーチャ、例えば表面フィーチャをシミュレートすることができる。例えば、シミュレートされる表面フィーチャは、表面110のシミュレートされた触感、空間配置、端部もしくは境界、又はこれら以外の任意の触知的知覚(tactile sensation)であり、天然のものであるか人工的なものであるかを問わない。一実施形態において、表面110は、シミュレートされた表面フィーチャに対応する画像、例えば、シミュレートされた触感等の触知的知覚を有する物体の画像を表示するタッチスクリーンであってもよい。一実施形態において、表面110は、当該画像のディスプレイに対応するタッチパッドやそれ以外の任意の接触インタフェースである。」 「【0031】 また、容量結合は、表面120に近接し又は接触しているユーザの皮膚の機械受容器(mechanoreceptor)等の物体の一部分を刺激することによって、触覚効果を生成することもできる。一実施例における導電層は、ユーザの指の導電性の部分と結合する交流電圧信号を加えられてもよい。ユーザは、指をスクリーン上で動かすときに、とげとげした感じ(プリックリネス、prickliness)、ざらざらした感じ(グレインネス、graininess)、こぶのある感じ(バンピネス、bumpiness)、でこぼこした感じ(ラフネス、roughness)、ねばねばした感じ(スティッキーネス、stickiness)、又はこれら以外の触感を感じることができる。」 「【0040】 一実施形態において、触覚効果を不連続に変化させることによって、表面110において触感が異なる不連続領域をシミュレートすることができる。例えば、図3Bは、3つの異なる触感をシミュレートする3つの不連続領域を示す。物体が接触領域113にあることが検出された場合には、触覚駆動信号213で表される周波数及び振幅を有する周期的な触覚効果が生成される。当該周期的な触覚効果によって、第1の水準の表面ラフネスをシミュレートすることができる。当該物体が領域114に移動したことが検出されると、周期的な触覚効果の振幅が不連続な量だけ減少する。触覚駆動信号215に基づいて変更された周期的な触覚効果によって、第2の水準の表面ラフネスをシミュレートすることができる。当該物体が領域115に移動したことが検出されると、周期的な触覚効果の振幅が不連続な量だけ増加する。触覚駆動信号217に基づいて変更された周期的な触覚効果によって、第3の水準の表面ラフネスをシミュレートすることができる。一実施形態においては、当該触感の視覚的表現が表面110に提示されてもよい。例えば、表面110の領域113及び領域115ではざらざらした表面の画像が提示される。」 以上より、引用文献3には、以下の技術事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されているといえる。 「 触覚効果を用いてユーザインタフェース上で表面フィーチャ(surface feature)をシミュレートする方法及び装置に関し、 触覚効果を提供する方法は、表面への接触入力及び当該表面での触知的知覚に基づいて周期的な駆動信号を生成する工程を備え、 前記表面はインタフェース装置の表面であり、当該触覚出力装置は当該表面と結合され、 前記周期的な駆動信号を生成する工程は、前記周期的な駆動信号の振幅、周波数、又は波形を変化させて、前記インタフェース装置の前記表面における摩擦の大きさを変化させる工程を備え、 前記信号の変更は、前記接触入力の位置、速度、加速度、圧力、又は接触面積に基づくものであってもよく、 表面110は、シミュレートされた表面フィーチャに対応する画像、例えば、シミュレートされた触感等の触知的知覚を有する物体の画像を表示するタッチスクリーンであってもよく、 ユーザは、指をスクリーン上で動かすときに、とげとげした感じ、ざらざらした感じ、こぶのある感じ、でこぼこした感じ、ねばねばした感じ又はこれら以外の触感を感じることができ、 一実施形態においては、当該触感の視覚的表現が表面110に提示されてもよく、例えば、表面110の領域113及び領域115ではざらざらした表面の画像が提示されること。」 4 引用文献Bについて 原査定に引用された引用文献Bには、図面とともに次の事項が記載されている。 (第18ページ第30行?第19ページ第3行) 「The tactile effect generator 203 can, having determined the context parameters and receiving the touch parameters, generate tactile effects dependent on the context and touch parameters. For the texture example the tactile effect generator can be configured to generate the tactile effect dependent on the simulated texture and the touch parameters such as the speed, direction, and force of the touch. The generated tactile effect can then be passed to the piezo amplifier 207 as described herein.」 [当審訳] 「触覚効果生成器203は、コンテキスト・パラメータを決定し、タッチ・パラメータを受信して、そのコンテキストとタッチ・パラメータに依存する触覚効果を生成することができる。テクスチャの例に対して、触覚効果生成器は、速さ、方向、および、タッチの力などの、シミュレーションされたテクスチャとタッチ・パラメータに依存する触覚効果を生成するように構成することができる。生成された触覚効果は、次に、ここに記載されるように、圧電増幅器207にパスすることができる。」 (第25ページ第16?22行) 「In some embodiments the volume or amplitude of the audio signal or tactile signal can be adjusted based on the touch speed. Thus the faster the speed, the louder the volume and the slower the speed, the lower the volume (with no movement producing zero volume). Thus once again the effect of moving a finger on a textured cloth in a quiet environment can be simulated where very slow movement produces very little sound and a faster movement produces greater or louder sounds.」 [当審訳] 「いくつかの実施形態において、オーディオ信号または触覚信号の量または振幅は、タッチ速度に基づいて、調節することができる。したがって、速さが、より速いほど、ボリュームは、より大きくなり、そして、速さが、より遅いほど、ボリュームは、より小さくなる(運動がない場合には、ゼロ・ボリュームを生成する)。このように、もう一度繰り返すと、織られた布の上に指を動かす効果は、静かな環境では、非常に遅い運動は、非常に小さな音を生成し、そして、より速い運動は、より大きな音を生成するように、シミュレーションすることができる。」 5 引用文献Cについて 原査定に引用された引用文献Cには、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0043】 図9Cは、動的触覚効果に関連して表示される次の写真のスクリーンの図を示す。図9Bにおいて、1つ以上のユーザのジェスチャから1つ以上の入力に基づいて、動的触覚効果がユーザのジェスチャの間に提供されて、インタラクションのパラメータによって決定されるように、連続して修正される。動的触覚効果は、例えばユーザのジェスチャ自体の速度、方向、圧力、強さ、または時間などの要素に従って、あるいはある画像が閲覧された回数などのバーチャルなオブジェクトの変化特性に基づいて、リアルタイムで、速度上昇してもよく、または速度低下してもよく、強くなったり弱くなったりしてもよく、あるいは、そのパターンまたは時間が変わってもよく、または任意の他の方法において変化してもよい。動的触覚効果は、ユーザのジェスチャが停止した後でも、さらに継続してもよく、かつさらに、インタラクションのパラメータによって修正されてもよい。例えば一実施形態において、動的触覚効果は、ユーザのジェスチャの終りの直後に停止されてもよく、あるいは別の実施形態において、動的触覚効果は必要に応じて、インタラクションのパラメータに従ってユーザのジェスチャの終りの後にゆっくりと消えてもよい。ユーザのジェスチャの間、リアルタイムで、およびユーザのジェスチャの後でも、動的触覚効果を提供または修正することの効果は、例えばページターンまたは指の滑らせなどのジェスチャを、ユーザは1つとして同じように感じないということである。すなわち、こうした動的触覚効果は、ユーザのジェスチャに対して常に一意であり、これにより、トリガイベントによって提供される簡素で静的な触覚効果と比べた場合に、ユーザにとっては、デバイスとのさらなるつながりの感覚、そして、さらなる魅力的なユーザインターフェース経験が生じる。」 第6 当審拒絶理由について 1 理由1(明確性要件違反)について 本件補正により、本件補正前の請求項2及び7が削除された結果、理由1の(1)及び(3)は解消した。 本件補正により、本件補正前の請求項3及び8に記載の「複数の角度セクタ(Z1,Z2,Z3,Z4)」及び「前記ゾーン(Z1,Z2,Z3,Z4)」はそれぞれ、本件補正後の請求項2及び6の記載において「複数の角度」及び「ゾーン」と補正された結果、理由1の(2)は解消した。 本件補正により、本件補正前の請求項5に記載の「2つの同一の信号」は、本件補正後の請求項4の記載においては削除された結果、理由1の(4)は解消した。 よって、理由1は、いずれも解消した。 2 理由2(進歩性欠如)について (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (ア)引用発明の「操作装置10」は、「車両」に搭載されるものであって、「操作者(例えば、車両の運転者)」により入力操作されるものであるから、本願発明1の「自動車両制御装置」といい得るものである。 (イ)引用発明の「入力操作機器11」は、「タッチパネル、タッチパッドなどであってもよい」「ポインティングデバイス」であって、「運転者の手指の接触位置を検出し、この検出結果に応じて表示画面12a上の操作対象に対する操作入力を行ない、操作者の入力操作に応じて逐次変化する適宜の時刻tでの操作状態量(例えば、操作方向、操作量など)を示す操作入力A(t)の信号を出力」を行うものであるから、運転者(ユーザ)の手指によるタッチ(接触)とその移動に伴う操作方向、操作量等より入力操作がなされるから、ユーザの指の接触と指の移動方向とを検出するようになっているタッチ面、を含むものといえる。 よって、引用発明の「入力操作機器11」は、本願発明1の「-タッチ面(2)であって、該タッチ面(2)上の自動車両を運転するユーザの指の接触と指の移動方向とを検出するようになっている、タッチ面(2)」に相当する。 (ウ)引用発明において、「移動状態検出部21」は、「入力操作機器11に対する操作者の入力操作に応じて逐次変化する適宜の時刻tでの移動状態量B(t)の検出結果の信号を出力」し、「フィードバック制御部22」は、「移動状態検出部21から出力される移動状態量B(t)の検出結果の信号に基づき、移動状態量B(t)の変化に伴い連続的に変化するフィードバック量Z(t)を生成し、このフィードバック量Z(t)によって操作者にフィードバックを行な」うものであるから、操作者による「入力操作機器11」の操作(接触)に応じて、操作者に「フィードバック」を行うものである。 そして、引用発明において、「フィードバック量Z(t)」は「例えば、スピーカー13から出力される音に対する各種の状態量(例えば、音量、音程、音色、音場、音像、音出力を繰り返す際の周波数など)や、アクチュエータ14によって入力操作機器11に伝達される振動に対する各種の状態量(例えば、周波数、振幅など)や、アクチュエータ14によって入力操作機器11に付与される操作入カの反力に対する各種の状態量(例えば、大きさなど)」であるから、前記「フィードバック」は、「フィードバック制御部22」が生成する「フィードバック量Z(t)」により、「アクチュエータ14」が「入力操作機器11」に「振動」を伝達することと、「音」を「スピーカー13」から出力することとによってもたらされている。 ここで、「振動」を「入力操作機器11」に伝達することによる「フィードバック」は、「触覚フィードバック」といい得るものであり、「音」の出力による「フィードバック」は、「聴覚フィードバック」といい得るものであるから、これら「フィードバック」をもたらす「アクチュエータ14」及び「スピーカー13」は、「触覚及び聴覚フィードバックモジュール」といい得るものである。 よって、引用発明の「アクチュエータ14」及び「スピーカー13」は、本願発明1の「-前記タッチ面(2)上の接触に応じて、前記タッチ面(2)を振動させる及び/又はユーザへの聴覚フィードバックをもたらすように構成される触覚及び聴覚フィードバックモジュール(4)」に相当する。 (エ)引用発明は、「移動状態検出部21は、入力操作機器11から出力される操作入力A(t)の信号に基づき、入力操作機器11に対する操作者の入力操作に応じて表示器12の表示画面12a上で移動する操作対象(例えば、カーソル、図形など)の移動状態量を検出し、入力操作機器11に対する操作者の入力操作に応じて逐次変化する適宜の時刻tでの移動状態量B(t)の検出結果の信号を出力し、移動状態量B(t)は、表示画面12a上での位置、表示画面12a上での移動方向および移動開始前の位置に対する相対的な移動量からなる移動ベクトル、移動速度、移動加速度などであり」との構成を備えており、ここで、「表示器12の表示画面12a上で移動する操作対象操作対象(カーソル、図形など)」の「移動状態量B(t)」は、「ポインティングデバイス」である「入力操作機器11」の入力操作に応じて逐次変化するものであるから、操作者(運転者)による入力操作、すなわち操作者(運転者)の「入力操作機器11」に対する指の「移動方向」を反映したものである。 また、引用発明において、「フィードバック制御部22」が生成する「フィードバック量Z(t)」は、「移動状態量B(t)」の変化に伴い連続的に変化するものであるから、指の「移動方向」に伴って連続的に変化するから、「フィードバック量Z(t)」によりもたらされる「フィードバック」もまた、指の「移動方向」に伴って変化しているといえる。 加えて、前記(ウ)を参酌すると、引用発明の「フィードバック制御部22」は、「フィードバック量Z(t)」により「アクチュエータ14」及び「スピーカー13」を駆動する「駆動ユニット」といい得るものである。 以上より、引用発明の「フィードバック制御部22」は、本願発明1の「触覚及び聴覚フィードバックの少なくとも1つのパラメータが前記タッチ面(2)上での指の移動方向に伴って変化するという触覚及び聴覚フィードバックをもたらすべく前記触覚及び聴覚フィードバックモジュール(4)を駆動させるように構成される駆動ユニット(5)」に相当する。 (オ)引用発明の「表示器12」と本願発明1の「前記タッチ面(2)を通じて画像を表示するために前記タッチ面(2)の下側に配置される表示装置」とは、「画像を表示するために配置される表示装置」である点において共通する。 (カ)引用発明において、「フィードバック制御部22」は、「表示画面12a上での操作対象の移動開始前の位置に対する相対的な移動量、移動速度、移動加速度などの移動状態量B(t)の増大に伴い、増大傾向に変化するフィードバック量Z(t)を生成」するものであるから、前記(エ)を参酌すると、「フィードバック量Z(t)」は、「入力操作機器11」に対する操作者の指の「移動速度」に伴って変化するものといえる。 引用発明において、「フィードバック量Z(t)」を構成する「例えば、スピーカー13から出力される音に対する各種の状態量(例えば、音量、音程、音色、音場、音像、音出力を繰り返す際の周波数など)や、アクチュエータ14によって入力操作機器11に伝達される振動に対する各種の状態量(例えば、周波数、振幅など)や、アクチュエータ14によって入力操作機器11に付与される操作入カの反力に対する各種の状態量(例えば、大きさなど)」は、「前記触覚フィードバック及び前記聴覚フィードバックのパラメータ」といい得るものである。 よって、引用発明は、本願発明1の「前記触覚フィードバック及び前記聴覚フィードバックのパラメータが前記タッチ面(2)上での指の移動速度に伴って変化するものであり」との構成を備えるものである。 イ 一致点、相違点 前記アより、本願発明1と引用発明とは、次の点において一致ないし相違する。 [一致点] 「自動車両制御装置であって、 -タッチ面(2)であって、該タッチ面(2)上の自動車両を運転するユーザの指の接触と指の移動方向とを検出するようになっている、タッチ面(2)と、 -前記タッチ面(2)上の接触に応じて、前記タッチ面(2)を振動させる及びユーザへの聴覚フィードバックをもたらすように構成される触覚及び聴覚フィードバックモジュール(4)と、 触覚及び聴覚フィードバックの少なくとも1つのパラメータが前記タッチ面(2)上での指の移動方向に伴って変化するという触覚及び聴覚フィードバックをもたらすべく前記触覚及び/又は聴覚フィードバックモジュール(4)を駆動させるように構成される駆動ユニット(5)と、 画像を表示するために配置される表示装置と、を備え、 前記触覚フィードバック及び前記聴覚フィードバックのパラメータが前記タッチ面(2)上での指の移動速度に伴って変化するものである、 自動車両制御装置。」 [相違点] <相違点1> 「表示装置」が、本願発明1は、「前記タッチ面(2)を通じて画像を表示するために前記タッチ面(2)の下側に配置される表示装置」であるのに対し、引用発明においては「表示器12」と「入力操作機器11」との上下の配置関係を具体的に特定していない点。 <相違点2> 本願発明1は、「前記タッチ面(2)上での指の移動速度に基づいた前記触覚及び聴覚フィードバックのパラメータに対応するパターンを前記表示装置に更に表示する」との構成を備えるのに対し、引用発明は、当該構成を特定するものではない点。 ウ 相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本願発明1の構成は、上記引用文献1ないし3には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。 なお、引用文献3記載事項にあるように、ユーザインタフェース上で表面フィーチャをシミュレートするために、所定の触感(テクスチャ)の「視覚的表現」を表示するとともに、ユーザが、指をスクリーン上で動かすときに、所定の触感に対応する触覚効果を生成することは本願優先日の周知技術であるといえる。 一方、本願発明1において表示されるものは、「指の移動速度」に基づいた「触覚及び聴覚フィードバックのパラメータに対応するパターン」であるから、引用文献3記載事項は、相違点2に係る本願発明1の構成を備えるものではなく、そうすると、本願発明1に引用文献3記載事項に係る技術的事項を組み合わせても、相違点2に係る本願発明1の構成には至らない。 したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本願発明2ないし7について 本願発明2ないし7も、相違点2に係る本願発明1構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 当審拒絶理由についてのまとめ 以上のとおりであるから、当審拒絶理由は、いずれも解消した。 第7 原査定についての判断 本件補正により、本件補正後の請求項1ないし7は、「前記タッチ面(2)上での指の移動速度に基づいた前記触覚及び聴覚フィードバックのパラメータに対応するパターンを前記表示装置に更に表示する」との構成を備えるものとなり、当該構成は、原査定における引用文献AないしD(当審拒絶理由の引用文献1及び2を含む。)には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし7は、当業者であっても、原査定における引用文献AないしDに記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-05-25 |
出願番号 | 特願2017-517765(P2017-517765) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木内 康裕 |
特許庁審判長 |
角田 慎治 |
特許庁審判官 |
林 毅 小田 浩 |
発明の名称 | 自動車両用の制御装置 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 出口 智也 |
代理人 | 堀田 幸裕 |