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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47L
管理番号 1374353
審判番号 不服2019-14540  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-31 
確定日 2021-05-20 
事件の表示 特願2019- 29229「自走式掃除機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月23日出願公開、特開2019- 76790〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年1月17日に出願した特願2012-7400号の一部を平成28年3月 24日に新たな出願とした特願2016-59697号の一部を平成29年9月4日に新たな出願とした特願2017-169479号の一部を平成29年11月30日に新たな出願とした特願2017-230193号の一部を平成31年2月21日に新たな出願としたものであって、令和元年7月31日付で拒絶査定がなされ(発送日:令和元年8月6日)、これに対し、令和元年10月31日に拒絶査定不服審判請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、当審により令和2年12月17日付で拒絶の理由が通知され(発送日:令和2年12月22日)、これに対し、令和3年1月28日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.特許請求の範囲
令和3年1月28日の手続補正(以下、「本件補正」という。)で特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【請求項1】
吸込口と排気口とを有する筐体と、
前記吸込口に設けられた回転ブラシと、
前記筐体が床面を自走するために設けられた一対の駆動輪と、
前記回転ブラシを回転させる駆動モータと、
床面上の塵埃を空気と共に前記吸込口から前記筐体内に吸引しかつ塵埃が除去された空気を前記筐体から外部に排出するための送風部とを備え、
前記駆動モータ及び前記送風部は、前記筐体の内部に配置され、
前記排気口は、前記筐体の上面に設けられ、且つ前記筐体の上面の左右両側に設けられた第1排気口および第2排気口を含み、
前記第1排気口および前記第2排気口は、前記筐体内で前記塵埃が除去された空気が流通する排気路と連通し、
前記送風部で発生した気流は、前記第1排気口、前記第2排気口、および前記筐体の隙間や貫通孔から前記筐体外部へ排出され、
前記筐体は、前記吸込口から前記筐体内に吸引された塵埃が堆積する集塵ボックスが上方から収納され、且つ前記筐体の上面側に設けられた蓋部によって上方から開閉可能な収納室を有し、
前記第1排気口および前記第2排気口の各々は、前記筐体の上面側において、前記収納室を閉じた前記蓋部の周縁と前記筐体との間に形成される隙間から、前記塵埃が除去された空気を排出する
ことを特徴とする自走式掃除機。
【請求項2】
前記送風部で発生した気流は、前記駆動モータに向かって流出するように構成された請求項1に記載の自走式掃除機。
【請求項3】
前記排気口から排出される空気は、前記筐体外部へ斜め上方に向けて排出されることを特徴とする請求項1または2に記載の自走式掃除機。
【請求項4】
前記筐体の隙間や貫通孔は、前記筐体の底板に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の自走式掃除機。」


3.分割要件
特許法第44条第2項の規定が適用されるためには、新たな出願の明細書等に記載された事項は原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内のものでなければならない。
本件補正後の請求項1には、「前記排気口は、前記筐体の上面に設けられ、且つ前記筐体の上面の左右両側に設けられた第1排気口および第2排気口を含み」とあるから、排気口には第1排気口と第2排気口があり、第1及び第2排気口は筐体の上面に設けられることとなる。
そこで、当該記載事項が、原出願(特願2017-230193号)の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載された範囲内のものか否か検討する。
原出願には、
a「【請求項 1】
吸込口と排気口とを有する自走可能な筐体と、
前記吸込口に設けられた回転ブラシと、
筐体の前後方向中間に前記筐体が床面を自走するために設けられた一対の駆動輪と、
前記筐体に内蔵され、前記回転ブラシを回転させる駆動モータと、
床面上の空気を塵埃と共に前記吸込口から筐体内に吸引しかつ塵埃が除去された空気を前記排気口から外部に排出するための送風部とを備え、
前記送風部は、ハウジングと前記ハウジングに収納される電動送風機とを有し、
前記ハウジングは、筐体内に開口し前記電動送風機で発生した気流を流出させる通風口を有し、
前記流出した気流は、前記通風口に対向する近傍位置に配された部材に当たって、前記駆動モータを冷却した後、前記筐体の隙間や貫通孔から筐体外部へ排出されることを特徴とする自走式掃除機。」
b「かくして、本発明によれば、吸込口と排気口とを有する自走可能な筐体と、
吸込口に回転可能に設けられた回転ブラシと、
回転ブラシを回転させる駆動モータと、
床面上の空気を塵埃と共に吸込口から筐体内に吸引しかつ塵埃が除去された空気を排気口から外部に排出するための送風部とを備え、
前記駆動モータ及び前記送風部は、前記筐体の内部に配置され、
塵埃が除去された空気の一部によって駆動モータを冷却するように構成され自走式掃除機が提供される。
なお、本発明において「自走式掃除機」とは、底面に吸込口を有すると共に内部に集塵部を有する筐体、筐体を走行させる駆動輪、駆動輪の回転、停止および回転方向等を制御する制御部などを備え、ユーザーの手を離れて自立的に掃除動作する掃除機を意味し、後述の図面を用いた実施形態によって一例が示される。
本発明の自走式掃除機は、次のように構成されてもよい。
(1)送風部は、ハウジングと、ハウジング内に収納される電動送風機とを備え、
ハウジングは、塵埃が除去された空気を吸い込む開口部と、筐体の排気口に連通する排気路と、排気路の途中に設けられ筐体内に開口する通風口とを有し、
回転ブラシの駆動モータはハウジングの通風口に対向する近傍位置に配置されており、通風口から駆動モータに向かって塵埃が除去された空気の一部が流出するように構成されてもよい。」(【0010】-【0011】)
c「(3)ハウジングは、その上面の左右両側に筐体の排気口と連通する第1排気路および第2排気路を有してもよい。」(【0013】)
d「また、前記構成(3)によれば、送風部のハウジングの第1排気路および第2排気路と連通するように筐体の左側から右側に亘って長い排気口を形成することができ、これによって左右方向に長い排気口から塵埃が除去された空気を外部に排出することができるため、排気抵抗を低減することができ、この結果、送風部により吸込口から塵埃を吸引する吸引力を高めることができる。
また、前記構成(4)によれば、第1排気路と第2排気路のうち、通風口と連通していない一方から排気口を介してイオンを含む空気を外部に放出することができる。すなわち、イオンを含む空気を、無駄に筐体内に放出せずに、室内の消臭および除菌のために有効利用することができる。」(【0018】-【0019】)
e「筐体2は、前方部における中間部との境界付近の位置に形成された吸込口6を有する平面視円形の底板2aと、筐体2に対して集塵ボックス30を出し入れする際に開閉する蓋部3を中間部に有している天板2bと、底板2aおよび天板2bの外周部に沿って設けられた平面視円環形の側板2cとを備えている。また、底板2aには前輪27、一対の駆動輪29および後輪26の下部を筐体2内から外部へ突出させる複数の孔部が形成され、天板2bにおける前方部と中間部との境界付近には排気口7が形成されている。」(【0023】)
f「掃除ロボット1全体の動作制御を行う制御部は、図6に示されるように、CPU15aおよびその他の図示しない電子部品で構成された制御回路を有する制御基板15と、走行マップ18aを記憶する記憶部18、電動送風機22を駆動するためのモータドライバ22a、駆動輪29の走行モータ51を駆動するためのモータドライバ51a、筐体2内の排気口7付近に回動可能に設けられたルーバー17およびそれを駆動するための制御ユニット17a、臭いセンサ52およびその制御ユニット52a、湿度センサ53およびその制御ユニット53a、人感センサ54およびその制御ユニット54a、接触センサ55およびその制御ユニット55a等を備えて構成される。」(【0031】)
g「集塵ボックス30から筐体2の排気路12へ流入した気流は、図2の矢印A2に示されるように前方収納室R1へ流入し、第1排気路24aおよび第2排気路24bを流通する(図9参照)。後述するが、第2排気路24bを流通する気流にはイオン発生装置25が放出するイオンが含まれる。そして、筐体2の上面に設けた排気口7から、図2の矢印A3に示されるように、後方の斜め上方にイオンを含む気流が排気される。これにより、床面F上の掃除が行われると共に、掃除ロボット1の排気に含まれるイオンによって室内の除菌および脱臭が行われる。このとき、排気口7から後方の斜め上方に向けて排気するので、床面Fの塵埃の巻き上げが防止され、室内の清浄度を向上することができる。なお、イオン発生装置25から放出されるイオンは、負イオンと正イオンのどちらか一方、又はその両方でもよい。負イオンと正イオンの両方を放出する場合、特に優れた空気の浄化、殺菌あるいは消臭の効果がある。 また、後述するが、第2排気路24bを流通する気流の一部は、凹部8に導かれてもよい。このようにすれば、吸込口6から吸引路11に導かれる気流内にイオンが含まれるため、集塵ボックス30の集塵容器31内およびフィルタ部33の除菌および脱臭を行うことができる。」(【0040】)
h「例えば、掃除ロボット1は、環境検知装置が検知した周辺環境に基づいて定めた特定箇所に一定時間留まり、排気口7からイオンを含む気流を放出することができる。 掃除ロボット1は、掃除が終了すると充電台40に帰還する。」(【0043】)
i「これにより、排気口7から後方の斜め上方にイオンを含む気流が放出され、イオンを含む気流は側壁Sに沿って上昇し、室内の天井壁および対向する側壁に沿って流通する。」(【0044】)
j「ハウジング21は、その正面中央位置にモータケース22bの吸気口に対向する開口部23を有し、左右両側にモータケース22bの各排気口にそれぞれ連通する第1排気路24aおよび第2排気路24bを有し、さらに、正面の開口部23の横(この場合、左横)に通風口24cを有している。第1、第2排気路24a、24bは、筐体2の上面に設けられた排気口7(図2参照)に連通している。すなわち、ハウジング21は、筐体2が前進する方向を前方とした前後左右上下方向に面する壁面を有し、後面の中央位置に開口部23が配置され、後面における開口部23の左側に通風口24cが配置され、上面の左右両側に第1、第2排気路24a、24bが配置されている。」(【0049】)
k「そして、図2中の矢印A3に示されるように、筐体2の上面の排気口7から後方斜め上に向けてイオンを含む気流が排気される。これにより、室内の掃除が行われるとともに、自走する筐体2の排気に含まれるイオンが室内に行き渡って室内の除菌や脱臭が行われる。この時、排気口7から上方に向けて排気するので、床面Fの塵埃の巻き上げを防止して室内の清浄度を向上することができる。」(【0056】)
と記載されるにすぎず、筐体の上面に送風部のハウジングの第1排気路および第2排気路と連通するように筐体の左側から右側に亘って長い排気口7を形成することができ、これによって左右方向に長い排気口から塵埃が除去された空気を外部に排出することができるため、排気抵抗を低減することができ、この結果、送風部により吸込口から塵埃を吸引する吸引力を高めることは記載はあるが、排気口には第1排気口と第2排気口があり、第1及び第2排気口は筐体の上面に設けられることは記載も示唆も無い。
なお、請求人は令和3年1月28日付意見書において、
「これに対応する明細書の記載として、段落0040には「第1、第2排気路24a、24bは、筐体2の上面に設けられた排気口7に連通している。すなわち、ハウジング21は、・・・左右両側に第1、第2排気路24a、24bが配置されている。」と開示されています。更に、図5および図11が例示するように、筐体2内で塵埃が除去された空気は、排気路24a、24bにおいて左右両側で上側へ流れます。この左右両側を流れる空気を筐体2外に排気するために、図1が例示するように排気口7は、上面の左側で開口した開口部位と、上面の右側で開口した開口部位(即ち、二つの排気口)とを含みます。ここで図11には、排気路24a、24bの上側に、左右両側にある二つの矢印A3が示されています。つまり排気口7は左右両側から排気可能である以上、左右両側にある二つの開口部位(即ち、排気路24a、24bと連通する二つの排気口)を含むことは明らかです。
このように本願の明細書等は、上面の排気口7が排気路24a、24bと連通する二つの排気口(即ち、第1排気口および第2排気口)を含み、これら二つの排気口が左右両側に設けられることを例示しており、第1排気口および第2排気口が筐体にどの様に設けられるかを開示するものです。」、
「上記から明らかなように、筐体の上面の左右両側に第1排気口および第2排気口を設けることは、この出願の分割前の出願である特願2017-230193号に記載されており、分割要件を満たすものです。」
と主張するが、上記主張はこの出願の明細書の記載に基づくものであって、上述の様に原出願には排気口は第1および第2排気路に対応して2つあることは記載も示唆もないから、請求人の上記主張は採用できない。
したがって、この出願の明細書等に記載された事項は原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲外のものを含むものであるから分割要件を満たしておらず、出願日は平成31年2月21日であり、出願日の遡及は認められない。


4.拒絶理由
令和2年12月17日付の進歩性に関する拒絶の理由IIの概略は以下のとおりである。
「II この出願の請求項1-5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用例1(特開2018-51344号公報)記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び引用例2(特開2007-325701号公報)に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
なお、本願の請求項1に係る発明を、以下「本願発明1」という。


5.引用例
当審の拒絶の理由に引用された引用例1には、図面と共に、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。
「【請求項1】
吸込口と排気口とを有する自走可能な筐体と、
前記吸込口に設けられた回転ブラシと、
筐体の前後方向中間に前記筐体が床面を自走するために設けられた一対の駆動輪と、
前記筐体に内蔵され、前記回転ブラシを回転させる駆動モータと、
床面上の空気を塵埃と共に前記吸込口から筐体内に吸引しかつ塵埃が除去された空気を前記排気口から外部に排出するための送風部とを備え、
前記送風部は、ハウジングと前記ハウジングに収納される電動送風機とを有し、
前記ハウジングは、筐体内に開口し前記電動送風機で発生した気流を流出させる通風口を有し、
前記流出した気流は、前記通風口に対向する近傍位置に配された部材に当たって、前記駆動モータを冷却した後、前記筐体の隙間や貫通孔から筐体外部へ排出されることを特徴とする自走式掃除機。」
「かくして、本発明によれば、吸込口と排気口とを有する自走可能な筐体と、
吸込口に回転可能に設けられた回転ブラシと、
回転ブラシを回転させる駆動モータと、
床面上の空気を塵埃と共に吸込口から筐体内に吸引しかつ塵埃が除去された空気を排気口から外部に排出するための送風部とを備え、
前記駆動モータ及び前記送風部は、前記筐体の内部に配置され、
塵埃が除去された空気の一部によって駆動モータを冷却するように構成され自走式掃除機が提供される。」(【0010】)
「また、前記構成(3)によれば、送風部のハウジングの第1排気路および第2排気路と連通するように筐体の左側から右側に亘って長い排気口を形成することができ、これによって左右方向に長い排気口から塵埃が除去された空気を外部に排出することができるため、排気抵抗を低減することができ、この結果、送風部により吸込口から塵埃を吸引する吸引力を高めることができる。」(【0018】)
「筐体2は、前方部における中間部との境界付近の位置に形成された吸込口6を有する平面視円形の底板2aと、筐体2に対して集塵ボックス30を出し入れする際に開閉する蓋部3を中間部に有している天板2bと、底板2aおよび天板2bの外周部に沿って設けられた平面視円環形の側板2cとを備えている。また、底板2aには前輪27、一対の駆動輪29および後輪26の下部を筐体2内から外部へ突出させる複数の孔部が形成され、天板2bにおける前方部と中間部との境界付近には排気口7が形成されている。」(【0023】)
「掃除ロボット1は、円盤形の筐体2を備え、この筐体2の内部および外部に、回転ブラシ9、サイドブラシ10、集塵ボックス30、電動送風機22を有する送風部、一対の駆動輪29、後輪26および前輪27、各種センサを含む制御部等の構成要素が設けられている。」(【0022】)
「集塵ボックス30は、通常、筐体2内における両駆動輪29の回転軸の軸心よりも上方の中間収納室R2内に収納されており、集塵ボックス30内に捕集された塵埃を廃棄する際は、図4に示されるように、筐体2の蓋部3を開いて集塵ボックス30を出し入れすることができる。集塵ボックス30は、開口部を有する集塵容器31と、集塵容器31の開口部を覆うフィルタ部33と、フィルタ部33と集塵容器31の開口部とを覆うカバー部32とを備えている。カバー部32およびフィルタ部33は、集塵容器31の前側の開口端縁に回動可能に軸支されている。集塵容器31の側壁前部には、集塵ボックス30が筐体2の中間収納室R2内に収納された状態において、筐体2の吸引路11と連通する流入路34と、筐体2の排気路12と連通する排出路35とが設けられている。」(【0030】)
「吸込口6から筐体2内に吸い込まれた塵埃を含む空気は、図2の矢印A1に示されるように、筐体2の吸引路11を通り、集塵ボックス30の流入路34を通って集塵容器31内に流入する。集塵容器31内に流入した気流は、フィルタ部33を通過してフィルタ部33とカバー部32との間の空間50に流入し、排出路35を通って筐体2の排気路12へ排出される。この際、集塵容器31内の気流に含まれる塵埃はフィルタ部33によって捕獲されるため、集塵容器31内に塵埃が堆積する。
集塵ボックス30から筐体2の排気路12へ流入した気流は、図2の矢印A2に示されるように前方収納室R1へ流入し、第1排気路24aおよび第2排気路24bを流通する(図9参照)。後述するが、第2排気路24bを流通する気流にはイオン発生装置25が放出するイオンが含まれる。そして、筐体2の上面に設けた排気口7から、図2の矢印A3に示されるように、後方の斜め上方にイオンを含む気流が排気される。これにより、床面F上の掃除が行われると共に、掃除ロボット1の排気に含まれるイオンによって室内の除菌および脱臭が行われる。このとき、排気口7から後方の斜め上方に向けて排気するので、床面Fの塵埃の巻き上げが防止され、室内の清浄度を向上することができる。」(【0039】-【0040】)

上記記載を参照すると、集塵ボックス30から筐体2の排気路12へ流入した気流は、塵埃が筐体内のフィルタ部33によって捕獲されており、また、第1排気路および第2排気路と連通するように筐体の左側から右側に亘って長い排気口を形成することができ、これによって左右方向に長い排気口から塵埃が除去された空気を外部に排出することができるから、排気口は、筐体内で塵埃が除去された空気が流通する排気路と連通している。
上記記載を参照すると、電動送風機で発生した気流は、筐体の上面に設けられた排気口から排気されると共に筐体の隙間や貫通孔から筐体外部へ排出されるから、送風部で発生した気流は、排気口および筐体の隙間や貫通孔から前記筐体外部へ排出される。
上記記載を参照すると、集塵ボックスは中間収納室に収納されており、また、集塵ボックス内に捕集された塵埃を廃棄する際は筐体の蓋部を開いて集塵ボックスを出し入れすることができ、また、天板の中間部に設けられている蓋部は筐体の上方に開閉可能であり、また、吸込口から筐体内に吸い込まれた塵埃を含む空気は、集塵ボックスの流入路を通って集塵ボックスの集塵容器内に流入するから、筐体は、吸込口から前記筐体内に吸い込まれた塵埃が捕集される集塵ボックスが筐体の天板の中間部に設けられた蓋部を開いて出し入れされ、且つ前記筐体の天板の中間部に設けられた蓋部によって上方から開閉可能な収納室を有している。
上記記載を参照すると、筐体の上面に排気口は設けられており、また、筐体の天板における前方部と中間部の蓋部との境界付近には排気口が形成されて、排気口が形成される際中間収納室は蓋部で閉じられており、また、左右方向に長い排気口から塵埃が除去された空気を外部に排出することができるから、排気口は、筐体の上面において、収納室を閉じた蓋部の周縁と前記筐体の前方部との間に形成される排気口から、塵埃が除去された空気を排出する。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「吸込口と排気口とを有する自走可能な筐体と、
前記吸込口に設けられた回転ブラシと、
前記筐体の前後方向中間に前記筐体が床面を自走するために設けられた一対の駆動輪と、
前記筐体に内蔵され、前記回転ブラシを回転させる駆動モータと、
床面上の空気を塵埃と共に前記吸込口から筐体内に吸引しかつ塵埃が除去された空気を前記排気口から外部に排出するための送風部とを備え、
前記駆動モータ及び前記送風部は、前記筐体の内部に配置され、
前記筐体の上面に前記排気口が設けられ、
前記排気口は、前記筐体内で前記塵埃が除去された空気が流通する排気路と連通し、
前記送風部で発生した気流は、前記排気口および前記筐体の隙間や貫通孔から前記筐体外部へ排出され、
前記筐体は、前記吸込口から前記筐体内に吸い込まれた塵埃が捕集される集塵ボックスが前記筐体の天板の中間部に設けられた蓋部を開いて出し入れされ、且つ前記筐体の天板の中間部に設けられた前記蓋部によって上方から開閉可能な収納室を有し、
前記排気口は、前記筐体の上面において、前記収納室を閉じた前記蓋部の周縁と前記筐体の前方部との間に形成される前記排気口から、塵埃が除去された空気を排出する自走式掃除機。」
との発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

同じく当審の拒絶の理由に引用された引用例2には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
「本発明は、掃除機本体に自走機能を有し、被掃除面の清掃を自動的に行う自走式掃除機に関するものである。」(【0001】)
「ローラ11は、掃除機本体1を走行させるもので、掃除機本体1の左右に設け、図4に示すように、金属製のシャーシ12に取り付けた駆動モータ8により左右独立して駆動される。駆動モータ8は、減速ギヤ(図示せず)を内蔵したギヤードモータで構成している。キャスター13は掃除機本体1を走行自在に支持している。」(【0014】)
「なお、電動送風機4の排気を、図9の矢印で示すように、掃除機本体1の上面から排出するようにしてもよく、この場合も、掃除機本体1の走行経路の近傍にある家具などに対して、電動送風機の排気が当たることがなく、排気による悪影響をなくすることができる。」(【0025】)
図9には、自走式掃除機本体の上面に左右に2つの排気口を設けていることが示されている。


6.対比
本願発明1と引用発明1を対比すると、引用発明1、本願発明1は共に「吸込口と排気口とを有する自走可能な筐体」、「前記吸込口に設けられた回転ブラシ」、「前記駆動モータ及び前記送風部は、前記筐体の内部に配置され」との構成を有している。
引用発明1の「前記筐体の前後方向中間に前記筐体が床面を自走するために設けられた一対の駆動輪」は、本願発明1の「前記筐体が床面を自走するために設けられた一対の駆動輪」に相当する。
引用発明1の「前記筐体に内蔵され、前記回転ブラシを回転させる駆動モータ」は、本願発明1の「前記回転ブラシを回転させる駆動モータ」に相当する。
引用発明1の「床面上の空気を塵埃と共に前記吸込口から筐体内に吸引しかつ塵埃が除去された空気を前記排気口から外部に排出するための送風部」は、本願発明1の「床面上の塵埃を空気と共に前記吸込口から前記筐体内に吸引しかつ塵埃が除去された空気を前記筐体から外部に排出するための送風部」に相当する。
引用発明1の「前記筐体は、前記吸込口から前記筐体内に吸い込まれた塵埃が捕集される集塵ボックスが前記筐体の天板の中間部に設けられた蓋部を開いて出し入れされ、且つ前記筐体の天板の中間部に設けられた前記蓋部によって上方から開閉可能な収納室を有し」は、蓋部が筐体の上面にあって開閉可能であるから、本願発明1の「前記筐体は、前記吸込口から前記筐体内に吸引された塵埃が堆積する集塵ボックスが上方から収納され、且つ前記筐体の上面側に設けられた蓋部によって上方から開閉可能な収納室を有し」に相当する。

引用発明1の「前記筐体の上面に前記排気口が設けられ」と、本願発明1の「前記排気口は、前記筐体の上面に設けられ、且つ前記筐体の上面の左右両側に設けられた第1排気口および第2排気口を含み」は、「前記排気口は、前記筐体の上面に設けられ、且つ前記筐体の上面に設けられた排気口を含み」で一致する。
引用発明1の「前記排気口は、前記筐体内で前記塵埃が除去された空気が流通する排気路と連通し」と、本願発明1の「前記第1排気口および前記第2排気口は、前記筐体内で前記塵埃が除去された空気が流通する排気路と連通し」は、「前記排気口は、前記筐体内で前記塵埃が除去された空気が流通する排気路と連通し」で一致する。
引用発明1の「前記送風部で発生した気流は、前記排気口および前記筐体の隙間や貫通孔から前記筐体外部へ排出され」と、本願発明1の「前記送風部で発生した気流は、前記第1排気口、前記第2排気口、および前記筐体の隙間や貫通孔から前記筐体外部へ排出され」は、「前記送風部で発生した気流は、前記排気口、および前記筐体の隙間や貫通孔から前記筐体外部へ排出され」で一致する。
引用発明1の「前記排気口は、前記筐体の上面において、前記収納室を閉じた前記蓋部の周縁と前記筐体の前方部との間に形成される前記排気口から、塵埃が除去された空気を排出する」と、本願発明1の「前記第1排気口および前記第2排気口の各々は、前記筐体の上面側において、前記収納室を閉じた前記蓋部の周縁と前記筐体との間に形成される隙間から、前記塵埃が除去された空気を排出する」は、「前記排気口は、前記筐体の上面側において、前記収納室を閉じた前記蓋部の周縁と前記筐体との間に形成される隙間から、前記塵埃が除去された空気を排出する」で一致する。

したがって、両者は、
「吸込口と排気口とを有する筐体と、
前記吸込口に設けられた回転ブラシと、
前記筐体が床面を自走するために設けられた一対の駆動輪と、
前記回転ブラシを回転させる駆動モータと、
床面上の塵埃を空気と共に前記吸込口から前記筐体内に吸引しかつ塵埃が除去された空気を前記筐体から外部に排出するための送風部とを備え、
前記駆動モータ及び前記送風部は、前記筐体の内部に配置され、
前記排気口は、前記筐体の上面に設けられ、且つ前記筐体の上面に設けられた排気口を含み、
前記排気口は、前記筐体内で前記塵埃が除去された空気が流通する排気路と連通し、
前記送風部で発生した気流は、前記排気口、および前記筐体の隙間や貫通孔から前記筐体外部へ排出され、
前記筐体は、前記吸込口から前記筐体内に吸引された塵埃が堆積する集塵ボックスが上方から収納され、且つ前記筐体の上面側に設けられた蓋部によって上方から開閉可能な収納室を有し、
前記排気口は、前記筐体の上面側において、前記収納室を閉じた前記蓋部の周縁と前記筐体との間に形成される隙間から、前記塵埃が除去された空気を排出する
自走式掃除機。」の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
排気口に関し、本願発明1は、筐体の上面の左右両側に設けられた第1排気口および第2排気口を有するのに対し、引用発明1は、筐体の上面に設けられた排気口を有する点。


7.判断
自走式掃除機において筐体の上面の左右両側に第1排気口および第2排気口を設けることは、引用例2に示されている。また、引用例1の自走式掃除機の排気口に連通する排気路は筐体内で左右両側に設けられるもののみが示されているから、引用発明1の自走式掃除機は排気路として筐体内で左右両側に設けられるものを想定している。
そうすると、引用発明1において筐体内で左右両側に設けられる排気路に連通する排気口を、2つの排気路の排気を1つの排気口から排出するか、2つの排気路の排気を個別に排気するように排気口を引用例2記載のものの様に左右両側に設けるかは適宜選択できるから、引用発明1において、筐体の上面に設けられた排気口を引用例2記載のものの様に筐体の上面の左右両側に設けた第1排気口および第2排気口とすることは当業者が容易に考えられることと認められる。

そして、本願発明1の作用効果も、引用発明1及び引用例2に記載された事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明1は、引用発明1及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


8.むすび
したがって、本願発明1は、引用発明1及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、他の請求項を検討するまでもなく本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-03-10 
結審通知日 2021-03-16 
審決日 2021-03-31 
出願番号 特願2019-29229(P2019-29229)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A47L)
P 1 8・ 536- WZ (A47L)
P 1 8・ 121- WZ (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 邦喜  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 堀川 一郎
山本 健晴
発明の名称 自走式掃除機  
代理人 井上 知哉  
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