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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1374365
審判番号 不服2020-8016  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-10 
確定日 2021-05-20 
事件の表示 特願2019-500113「空気調和機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月23日国際公開、WO2018/150521〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)2月16日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 1月18日 :上申書および手続補正書
令和 元年12月24日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 2月 6日 :意見書
令和 2年 4月28日付け:拒絶査定
令和 2年 6月10日 :審判請求書
令和 2年12月17日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 1月29日 :意見書および手続補正書

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1および2に係る発明は、令和3年1月29日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1および2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
室内機と、
室外機と、
接点及びリレーコイルを有し、前記リレーコイルの二つの端部のうちの一方の端部が第1のトランジスタのコレクタに接続されていると共に抵抗を介して第2のトランジスタのコレクタに接続されているリレー回路と、
前記接点をオンさせるための動作電圧以上の第1電圧又は前記動作電圧より低くかつ前記接点がオンしている状態を保持させるための保持電圧以上の第2電圧を前記リレーコイルに印加させる制御部と、
前記室外機に異常が発生した場合に前記室外機に異常が発生したことを検出する異常検出部とを備え、
前記室内機は、前記異常検出部によって前記室外機に異常が発生したことが検出された場合に前記室外機に異常が発生したことを報知する報知部を有し、
前記接点の二つの端部のうちの一方の端部は交流電源に接続されていて、前記接点の二つの端部のうちの他方の端部は前記室外機に接続されており、
前記リレーコイルの二つの端部のうちの他方の端部は、前記リレー回路を駆動させるための電源に接続されており、
前記制御部は、前記第1のトランジスタのベースに接続されている第1制御ポートと前記第2のトランジスタのベースに接続されている第2制御ポートとを有し、前記第1のトランジスタのエミッタ及び前記第2のトランジスタのエミッタは接地されており、前記制御部は、前記接点のオンの開始時に前記第1電圧を前記リレーコイルに印加させ、前記接点がオンした後に前記第2電圧を前記リレーコイルに印加させると共に、前記異常検出部によって前記異常が発生したことが検出された場合に前記異常が発生したことが検出された時から前記報知部によって前記異常が発生したことが報知される時までに前記第1制御ポート及び前記第2制御ポートをオンにして前記第1電圧を前記リレーコイルに印加させる
ことを特徴とする空気調和機。」

第3 拒絶の理由
令和2年12月17日付けで当審が通知した請求項1についての拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2001-91013号公報
引用文献2:特開平8-178391号公報

第4 引用文献および公知文献
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
令和2年12月17日付けで当審より通知した拒絶理由において引用した引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与したものである。
「【0018】
【実施例】以下、図面を参照して本発明における実施例を詳細に説明する。なお、以下の実施例では、冷凍サイクル構造につては、本発明の要旨とは直接関連が無く、また従来周知の構造で良いため、図示ならびに説明を省略し、要旨に関わる制御回路について説明する。
【0019】
(実施例1)図1に示すように、空気調和機は、室外機11と、この室外機11への電源供給を制御する制御部を具備した室内機18から構成されている。そして、前記制御部は、前記室外機11の電源線11aに設けられた開閉器12と、開閉器12の駆動コイル13と、この駆動コイル13に接続した第1の駆動手段14と、駆動コイル13に抵抗15を介して接続した第2の駆動手段16と、これら駆動コイル13・第1の駆動手段14・抵抗15・第2の駆動手段16の電源となる直流電源17と、駆動コイル13のオフ時の電流吸収用ダイオード13aから構成されている。そして、前記第1の駆動手段14と、抵抗15と、第2の駆動手段16と、直流電源17と、電流吸収用ダイオード13aによって駆動回路19が構成されている。
【0020】
次に、上記制御部による空気調和機の運転動作について、図2を用いて説明する。まず、別途設けられた運転スイッチ(図示せず)により、第1の駆動手段14と、第2の駆動手段16を図2に示すように同時にON通電する。この各駆動手段14・16のスイッチング動作によって、駆動コイル13に直流電源17が印加される。本実施例では、直流電源17の電圧を、駆動コイル13の定格に応じた12Vとしている。
【0021】
その結果、駆動コイル13の励磁作用によって開閉器12が閉動作し、室外機11への通電が行なわれ、室外機11は、運転を開始する。
【0022】
次に所定時間後、第1の駆動手段14をOFFする。この時、駆動コイル13のインダクタンスに蓄積されたエネルギーにより駆動コイル13と抵抗15の接続点の電圧が上昇し、ダイオード13aに電流が流れる。その後、本実施例では抵抗15を駆動コイル13のインピーダンスと同一にしているので、駆動コイル13に直流電源17の電圧の半分となる6Vが印加される。
【0023】
開閉器12は、接点を移動させる時には大きな駆動電力を必要とするが、接点移動後の状態を保持するだけであれば、小さな駆動電力で保持することができる。
【0024】
以上の動作により、起動時は、12V一定の駆動電力(12V×12V)/(駆動コイルの抵抗値)であるが、開閉器12の閉動作時は、半分の駆動電力(12V×12V)/(2×駆動コイルの抵抗値)となる。したがって、空気調和機の運転時における駆動回
路19による消費電力の削減が可能となる。」

「【0032】(実施例3)図4に示すように、空気調和機は、先の実施例1および2と同様に室外機31と、この室外機31への電源供給を制御する制御部を具備した室内機35から構成されている。そして、前記制御部は、前記室外機31の電源線36に設けられた開閉器32と、前記開閉器32の駆動コイル33と、前記駆動コイル33への通電を制御する開閉器駆動回路34より構成されている。さらに、前記室外機31には、前記室内機35に設けられた開閉器駆動回路34との間で、運転状況などの各種制御信号の送受信を行なうための通信信号用電源31aおよび信号ライン31bを具備している。ここで、上記開閉器駆動回路34は、先の実施例1の駆動回路19と同じ構成となっている。
【0033】
次に、上記制御部による空気調和機の運転動作について図4を用いて説明する。まず、別途設けられた運転スイッチ(図示せず)により、開閉器駆動回路34を駆動する。その結果、駆動コイル33に通電され、励磁作用にて開閉器32がONとなり、空気調和機の運転が開始される。そして、室外機31では、空気調和機の動作とともに室内機35から供給された電源にて室内機35との通信用電源31aが作り出される。この通信用電源31aにより信号ライン31bを介して室内機35と室外機31との通信を行ない、各負荷(圧縮機およびファンモータなど)の制御を行なっている。
【0034】
そして、室内機35と室外機31の通信動作時において、瞬間的な停電などに起因して通信信号が途絶えた時には、開閉器駆動回路34を駆動し、駆動コイル33に再び電圧を印加して開閉器32を再駆動する。前記開閉器駆動回路34の駆動要領については、実施例1と同じであるため、説明を省略する。
【0035】
以上の動作によって、万一瞬時停電等により直流電源電圧が低下し、開閉器32がOFFしても、室外機31に電源を再供給することができ、空気調和機の動作を継続することができる。」

「【図1】


【図2】



「【図4】




(2)引用文献1から理解できる事項
段落【0019】および【0032】並びに図1および4の記載から、空気調和機は、室内機35と、室外機31と、室外機31の電源線36に設けられた開閉器32と、開閉器32の駆動コイル33とを有していると理解できる。
段落【0019】および【0032】並びに図1及び4の記載から、空気調和機は、駆動コイル33に接続した第1の駆動手段14と、駆動コイル33に抵抗15を介して接続した第2の駆動手段16を有していると理解できる。また、図1に記載された第1の駆動手段14および第2の駆動手段16は、技術常識から見て「NPNトランジスタ」であると理解でき、同様に、技術常識から見て、駆動コイル13は、NPNトランジスタである第1駆動手段14の「コレクタ」に接続されているとともに、抵抗15を介して、NPNトランジスタである第2の駆動手段16の「コレクタ」に接続されていると理解できる。
段落【0019】の記載から、空気調和機は制御部を有していると理解できる。そして、段落【0020】および図2の記載から、前記制御部による空気調和機の運転動作は、第1の駆動手段14と第2の駆動手段16を同時にON通電して、駆動コイル33に直流電源17の電圧を印加し、段落【0021】の記載から、これにより開閉器32が閉動作し、段落【0022】の記載から、所定時間後、第1の駆動手段14をOFFして駆動コイル33に直流電源17の電圧の半分となる6Vを印加し、段落【0023】の記載から、それにより、開閉器32は、小さな駆動電力で接点移動後の状態を保持する、と理解できる。
段落【0034】の記載によれば、「室内機35と室外機31の通信動作時において、瞬間的な停電などに起因して通信信号が途絶えた時には、開閉器駆動回路34を駆動し、駆動コイル33に再び電圧を印加して開閉器32を再駆動する」ことから、空気調和機は通信信号が途絶えたことを検知する手段を有していると理解できる。
図1および図4の記載によれば、開閉器32は、交流電源および室外機31に接続されていると理解できる。
段落【0019】及び【0032】並びに図1、2および4の記載から、駆動コイル33は直流電源17に接続されていると理解できる。
図1および2に記載された第1の駆動手段14および第2の駆動手段16は、既に述べたとおり、技術常識から見て「NPNトランジスタ」であり、その「エミッタ」がいずれも「接地」していることも、技術常識を参酌しつつ図1および2を見れば明らかである。
段落【0034】および図4の記載から、空気調和機は、瞬間的な停電などに起因して通信信号が途絶えた時には、開閉器駆動回路34を駆動し、駆動コイル33に再び電圧を印加して開閉器32を再駆動すると理解できる。

(3)引用発明
上記(1)および(2)の事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「室内機35と、
室外機31と、
室外機31の電源線36に設けられた開閉器32と、開閉器32の駆動コイル33とを有し、
駆動コイル33は、NPNトランジスタである第1駆動手段14のコレクタに接続されているとともに、抵抗15を介して、NPNトランジスタである第2の駆動手段16のコレクタに接続されており、
第1の駆動手段14と第2の駆動手段16を同時にON通電して、駆動コイル33に直流電源17の電圧を印加し、これにより開閉器32が閉動作し、所定時間後、第1の駆動手段14をOFFして駆動コイル33に直流電源17の電圧の半分となる6Vを印加し、それにより、開閉器32は、小さな駆動電力で接点移動後の状態を保持する空気調和機の運転動作を行う制御部と、
室内機35と室外機31の通信動作時において、通信信号が途絶えたことを検知する手段とを備え、
開閉器32は、交流電源および室外機31に接続され、
駆動コイル33は直流電源17に接続され、
NPNトランジスタである第1の駆動手段14および第2の駆動手段16のエミッタは接地されており、
瞬間的な停電などに起因して通信信号が途絶えた時には、開閉器駆動回路34を駆動し、駆動コイル33に再び電圧を印加して開閉器32を再駆動する空気調和機。」

2 引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
令和2年12月17日付けで当審より通知した拒絶理由において引用した引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「【0016】
(実施例2)以下、請求項2に係わる本発明の空気調和機の制御装置の一実施例について図面を参照しながら説明する。図4は本実施例の構成を示すブロック図、図5は本実施例の構成を示す回路図である。なお、実施例1と同じ構成要素には同一番号を付与して詳細な説明を省略する。本実施例が実施例1と異なる点は、表示部19を備え、LEDなどで停電があったことを表示すようにしたことにある。
【0017】
図6は本実施例の動作を示すフローチャートである。図において、ステップ1ないしステップ8までは実施例1と同じであり、説明を省略する。本実施例において、ステップ8でタイマ運転ボタンが押されていて再運転をしたとき、ステップ9に移行して停電があったことを表示する。このようにして電源が復帰したのちは表示部のランプが点灯するので、使用者は停電があったことに気付くことができる。」

「【図4】



「【図6】



(2)引用文献2記載の技術的事項
上記(1)の記載から、引用文献2には以下の技術的事項(以下「引2事項」という。)が記載されている。
「空気調和機において、停電後電源復帰して再運転した後に、表示部のランプを点灯させて使用者に停電があったことを気づかせること。」

3 公知文献1
本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第2014/050060号(以下、「公知文献1」という。)には以下の記載がある。 なお、公知文献1および2は、周知の技術を示すために当審にて新たに引用するものである。
「[0030]
図6に示すリレー駆動装置600は、図3に示す実施の形態1に係るリレー駆動装置100と比較して、トランジスタ102を除き、トランジスタ602を追加し、制御部101の代わりに制御部601を有している。なお、図6において、図3と同一構成である部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
[0031]
リレー駆動装置600は、リレースイッチ103と、抵抗104と、時定数回路105と、トランジスタ106と、制御部601と、トランジスタ602とから主に構成されている。時定数回路105、トランジスタ106及び制御部601は、電圧調整部を構成している。
[0032]
制御部601の端子701は、図示しない電子機器に電源を供給する際に制御信号を、時定数回路105に出力する。制御部601の端子702は、トランジスタ602の導通と非導通とを切り替えるための制御信号をトランジスタ602に出力する。」

「[0037]
<リレー駆動装置の動作>
本発明の実施の形態2に係るリレー駆動装置600の動作について、図4?図6を用いて説明する。なお、トランジスタ106のオンとオフとの切り替えタイミングは図4と同一であり、コイル201の電圧変化の時間推移は図5と同一であるので、リレー駆動装置600の動作の説明には、図6に加えて、図4及び図5を用いる。
[0038]
まず、図4に示すように、時刻t0において、制御部601は、端子702より制御信号をトランジスタ602のベースに供給してトランジスタ602を導通させる。また、制御部601は、端子701より制御信号をトランジスタ106のベースに供給してトランジスタ106を導通させる。
[0039]
これにより、電源から供給される電流は、コイル201、トランジスタ106、及びグランドの順に流れる。即ち、コイル201を流れた電流は、トランジスタ106に引き込まれてトランジスタ106を経由してグランドに流れる。この際、コイル201の一端と他端との電位差が大きくなるので、コイル201の電圧は高くなる。例えば、コイル201の電圧は、図5に示すようにV10になる。
[0040]
次に、制御部601は、時刻t0から所定時間経過後の時刻t10において、端子701からの制御信号の出力を停止する。この際、時定数回路105は、制御信号に過渡的変化を生じさせ、過渡的変化を生じさせた制御信号をトランジスタ106のベースに出力する。この結果、トランジスタ106では、図4に示すように、オンからオフへの切り替えを緩やかにすることができ、コイル201を流れた電流の引き込み量を徐々に少なくすることができる。即ち、電源、コイル201、トランジスタ106及びグランドの順に流れる電流も、徐々になくなる。」

「【図4】

【図5】


【図6】



4 公知文献2
本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-255627号公報(以下「公知文献2」という。)には以下の記載がある。
「【0017】
【発明の実施の形態】
図1は本発明によるリレー駆動回路の第1の実施の形態を示す回路図である。
【0018】
この図に示すリレー駆動回路1は、制御用の信号を発生する制御回路2と、ベースが制御回路2の第1出力端子2aに接続され、エミッタが接地され、コレクタがリレー8を構成するコイル6の一端に接続されるリレー駆動用の第1トランジスタ3と、ベースが制御回路2の第2出力端子2bに接続され、エミッタが接地されるリレー駆動用の第2トランジスタ4と、一端が第2トランジスタ4のコレクタに接続され、他端がコイル6の一端に接続されるとともに、リレー8のコイル6に印加される電圧を例えば、定格12Vの50%に対応する6Vに降下するの電圧調整用の抵抗5とを備えている。
【0019】
そして、制御回路2の第1出力端子2aと、第2出力端子2bからオン信号(Hi信号)が出力されたとき、第1トランジスタ3、および第2トランジスタ4が共にオン状態になって、図2の(a)に示すように、リレー8のコイル6に、このリレー8の定格電圧である+12Vが印加されて、図2(b)に示すように、リレー8がオン状態にされ、これによってリレー接点7が閉状態にされて、このリレー接点7に接続されている電子機器などが制御される。
【0020】
この後、一定時間(例えば、10ms)後に、制御回路2の第1出力端子2aからのオン信号の出力が停止され、第1トランジスタ3がオフ状態になる。この時、第2トランジスタ4はオン状態を継続しているので、第2トランジスタ4のみによって得られる保持電圧(例えば、定格の50%に対応する+6V)で、リレー8のコイル6が駆動され、このリレー8がオン状態に保持される。」

「【図1】

【図2】



第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「室内機35」、「室外機31」、「室外機31の電源線36に設けられた開閉器32」、「開閉器32の駆動コイル33」は、それぞれ、機能、作用、技術的意義からみて、本願発明の「室内機」、「室外機」、「接点」、「リレーコイル」に相当する。
引用発明の「駆動コイル33は、NPNトランジスタである第1駆動手段14のコレクタに接続されているとともに、抵抗15を介して、NPNトランジスタである第2の駆動手段16のコレクタに接続されて」いることは、本願発明の「リレーコイルの二つの端部のうちの一方の端部が第1のトランジスタのコレクタに接続されていると共に抵抗を介して第2のトランジスタのコレクタに接続されている」ことに相当し、また機能、作用からみて、引用発明の「室外機31の電源線36に設けられた開閉器32」と「開閉器32の駆動コイル33」を合わせたものが、本願発明の「リレー回路」に相当する。
引用発明の「第1の駆動手段14と第2の駆動手段16を同時にON通電して、駆動コイル33に直流電源17の電圧を印加」することは、それにより「開閉器32が閉動作」することから、本願発明の「接点をオンさせるための動作電圧以上の第1電圧」を「リレーコイルに印加させる」ことに相当する。
引用発明の「所定時間後、第1の駆動手段14をOFFして駆動コイル33に直流電源17の電圧の半分となる6Vを印加」することは、これにより「開閉器32は、小さな駆動電力で接点移動後の状態を保持する」から、本願発明の「動作電圧より低くかつ前記接点がオンしている状態を保持させるための保持電圧以上の第2電圧を前記リレーコイルに印加させる」ことに相当する。また、引用発明において、これらの制御を行う「制御部」が、本願発明の「制御部」に相当する。
引用発明の「室内機35と室外機31の通信動作時において、通信信号が途絶えたことを検知する手段」は、通信信号が途絶えることが、空気調和機の室内機35および室外機31の異常であると認められるから、本願発明の「室外機に異常が発生した場合に前記室外機に異常が発生したことを検出する異常検出部」に相当する。
引用発明の「開閉器32は、交流電源および室外機31に接続され」ることは、本願発明の「接点の二つの端部のうちの一方の端部は交流電源に接続されていて、前記接点の二つの端部のうちの他方の端部は前記室外機に接続され」ていることに相当する。
引用発明の「駆動コイル33は直流電源17に接続され」ることは、本願発明の「リレーコイルの二つの端部のうちの他方の端部は、前記リレー回路を駆動させるための電源に接続され」ていることに相当する。
引用発明の「制御部」が「NPNトランジスタである第1の駆動手段14および第2の駆動手段16のエミッタは接地されて」いることは、本願発明の「前記第1のトランジスタのエミッタ及び前記第2のトランジスタのエミッタは接地されて」いることに相当する。
引用発明の「第1の駆動手段14と第2の駆動手段16を同時にON通電して、駆動コイル33に直流電源17の電圧を印加し、これにより開閉器32が閉動作し、所定時間後、第1の駆動手段14をOFFして駆動コイル13に直流電源17の電圧の半分となる6Vを印加し、それにより、開閉器32は、小さな駆動電力で接点移動後の状態を保持する空気調和機の運転動作を行う」ことは、本願発明の「制御部は、前記接点のオンの開始時に前記第1電圧を前記リレーコイルに印加させ、前記接点がオンした後に前記第2電圧を前記リレーコイルに印加させる」ことに相当する。
引用発明の「瞬間的な停電などに起因して通信信号が途絶えた時には、開閉器駆動回路34を駆動し、駆動コイル33に再び電圧を印加して開閉器32を再駆動する」ことは、通信信号が途絶えることが異常であること、引用発明には通信信号が途絶えたことを検知する手段があること、再駆動には「第1の駆動手段14と第2の駆動手段16を同時にON通電」することを鑑みると、本願発明の「前記異常検出部によって前記異常が発生したことが検出された場合に前記異常が発生したことが検出された時から前記報知部によって前記異常が発生したことが報知される時までに前記第1制御ポート及び前記第2制御ポートをオンにして前記第1電圧を前記リレーコイルに印加させる」ことと、「前記異常検出部によって前記異常が発生したことが検出された場合に前記異常が発生した時に第1のトランジスタと第2のトランジスタに通電して前記第1電圧を前記リレーコイルに印加させる」限りにおいて一致している。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の一致点、相違点1および2を有している。
《一致点》
「室内機と、
室外機と、
接点及びリレーコイルを有し、前記リレーコイルの二つの端部のうちの一方の端部が第1のトランジスタのコレクタに接続されていると共に抵抗を介して第2のトランジスタのコレクタに接続されているリレー回路と、
前記接点をオンさせるための動作電圧以上の第1電圧又は前記動作電圧より低くかつ前記接点がオンしている状態を保持させるための保持電圧以上の第2電圧を前記リレーコイルに印加させる制御部と、
前記室外機に異常が発生した場合に前記室外機に異常が発生したことを検出する異常検出部とを備え、
前記接点の二つの端部のうちの一方の端部は交流電源に接続されていて、前記接点の二つの端部のうちの他方の端部は前記室外機に接続されており、
前記リレーコイルの二つの端部のうちの他方の端部は、前記リレー回路を駆動させるための電源に接続されており、
前記第1のトランジスタのエミッタ及び前記第2のトランジスタのエミッタは接地されており、前記制御部は、前記接点のオンの開始時に前記第1電圧を前記リレーコイルに印加させ、前記接点がオンした後に前記第2電圧を前記リレーコイルに印加させると共に、前記異常検出部によって前記異常が発生したことが検出された場合に前記異常が発生したことが検出された時に、第1のトランジスタと第2のトランジスタに通電して前記第1電圧を前記リレーコイルに印加させる
空気調和機」

≪相違点1≫
本願発明は、「室内機は、異常検出部によって室外機に異常が発生したことが検出された場合に前記室外機に異常が発生したことを報知する報知部を有し」、「異常検出部によって、異常が発生したことが検出された時から報知部によって前記異常が発生したことが報知される時までに」「第1電圧をリレーコイルに印加させる」のに対し、
引用発明は、報知部が存在するかが不明であり、また、開閉器32の再駆動が異常の発生した時に行われるものの、異常が発生したことが報知部により報知される時との関係が不明な点。

≪相違点2≫
本願発明は、「制御部が、第1のトランジスタのベースに接続されている第1制御ポートと第2のトランジスタのベースに接続されている第2制御ポートを有し」、「第1制御ポート及び第2制御ポートをオンにして第1電圧をリレーコイルに印加させる」のに対し、
引用発明は、第1の駆動手段14と第2の駆動手段16を同時にON通電して、駆動コイル13に直流電源17を印加するものの、第1の駆動手段14と第2の駆動手段16が同じ制御部に設けられた二つのポートで制御されるかは不明な点。

2 判断
(1)相違点1について
上記相違点1について検討する。
上記第4 2(2)に記載したとおり、引用文献2は「空気調和機において、停電後電源復帰して再運転した後に、表示部のランプを点灯させて使用者に停電があったことを気づかせる」という引2事項を開示している。
引用発明と引2事項とは、いずれも空気調和機の停電後の制御の技術分野に属しており、引用発明においても、引2事項に倣って表示部を設けて、停電があったことを知らせる構成とすることに何ら困難性はない。そして、引用発明に引2事項を適用すると、「異常発生」→「再駆動」→「表示部による表示」という動作の流れになり、本願発明の「異常が発生したことが検出された時から前記報知部によって前記異常が発生したことが報知される時までに前記第1電圧を前記リレーコイルに印加させる」構成を満たす。
よって、相違点1にかかる本願発明の構成は、引用発明及び引2事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

(2)相違点2について
上記相違点2について検討する。
リレー回路の技術分野において、二つのトランジスタに対して一つの制御部にて制御を行うために、制御部に端子を二つ設け、両端子と二つのトランジスタのベースを接続すること、および両端子から同時に制御信号を出力して、コイルに高い電圧を印加することは、例えば、上記第4 3,4で示した公知文献1、2に記載されるように、周知の技術(以下「周知技術」という。)である。
そして、引用発明においても、第1の駆動手段14と第2の駆動手段16を連携させるために、周知技術に倣って、制御部に二つの出力端子を設けて二つの駆動手段のベースと接続し、開閉器32を閉動作させる電圧(第1電圧)を印加させる際に両端子からの出力をオンにして、同時に制御信号を出力させる構成とすることに何ら困難性はない。
よって、相違点2にかかる本願発明の構成は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

3 効果
本願発明の効果も、引用発明、引2事項および周知技術から予測できる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

審判請求人は、令和3年1月29日提出の意見書において、以下のように主張している。
「4-1.進歩性に関する拒絶理由について
上述の通り、本願の補正後の請求項1に係る発明は、「接点及びリレーコイルを有し、前記リレーコイルの二つの端部のうちの一方の端部が第1のトランジスタのコレクタに接続されていると共に抵抗を介して第2のトランジスタのコレクタに接続されているリレー回路」という発明特定事項Aを備えます。本願の補正後の請求項1に係る発明は、「前記制御部は、前記第1のトランジスタのベースに接続されている第1制御ポートと前記第2のトランジスタのベースに接続されている第2制御ポートとを有し、前記第1のトランジスタのエミッタ及び前記第2のトランジスタのエミッタは接地されており、前記制御部は、前記接点のオンの開始時に前記第1電圧を前記リレーコイルに印加させ、前記接点がオンした後に前記第2電圧を前記リレーコイルに印加させると共に、前記異常検出部によって前記異常が発生したことが検出された場合に前記異常が発生したことが検出された時から前記報知部によって前記異常が発生したことが報知される時までに前記第1制御ポート及び前記第2制御ポートをオンにして前記第1電圧を前記リレーコイルに印加させる」という発明特定事項Bを更に備えます。
引用文献1及び引用文献2はいずれも、発明特定事項Aを開示していないばかりか発明特定事項Bも開示していません。更に言いますと、引用文献1及び引用文献2はいずれも、発明特定事項A及び発明特定事項Bの下線が引かれた詳細かつ具体的な事項を開示していませんので、発明特定事項A及び発明特定事項Bを開示していません。つまり、引用文献1が開示している発明と引用文献2が開示している発明とを組み合わせても、詳細かつ具体的な事項を含む発明特定事項A及び発明特定事項Bを備える本願の補正後の請求項1に係る発明を得ることはできません。
したがって、本願の補正後の請求項1に係る発明は引用文献1及び引用文献2を考慮しても進歩性を有します。」

しかしながら、審判請求人が相違点と主張する発明特定事項AおよびBのうち、第1および第2のトランジスタのコレクタがリレーコイル側に接続され、両トランジスタのエミッタが接地されている点は、上記第4 1(2)で述べたとおり、引用発明が有している構成であるから相違点ではない。
また、制御部が制御ポートを二つ有して二つのトランジスタを制御する点(上記相違点2に相当)は、上記第5 2(2)で述べたとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、審判請求人が相違点と主張する発明特定事項AおよびBが新たな効果を奏するものでもないから、審判請求人の上記主張は採用できない。

4 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、引2事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-03-12 
結審通知日 2021-03-16 
審決日 2021-04-02 
出願番号 特願2019-500113(P2019-500113)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24F)
P 1 8・ 537- WZ (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 町田 豊隆  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 槙原 進
川上 佳
発明の名称 空気調和機  
代理人 高村 順  

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