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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01G
管理番号 1374398
審判番号 不服2020-13285  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-24 
確定日 2021-06-15 
事件の表示 特願2019- 4209「固体電解コンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月16日出願公開、特開2019- 75582、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成28年3月31日に出願した特願2016-69888号の一部を平成31年1月15日に新たな出願したものであって、令和2年2月10日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年3月23日に手続補正がなされたが、同年7月7日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して、同年9月24日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要

原査定(令和2年7月7日付けで拒絶査定)の概要は以下のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1ないし6、9ないし11に対して引用文献1?4、6
・請求項7、8に対して引用文献1?6

<引用文献一覧>
1.実願昭54-165005号(実開昭56-84342号)のマイクロフィルム
2.特開2003-197471号公報(周知技術を示す文献)
3.国際公開第2004/023597号(周知技術を示す文献)
4.特開2011-96746号公報
5.特開平6-349688号公報(周知技術を示す文献)
6.特開平4-367212号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正、すなわち令和2年9月24日の手続補正による補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正は、(a)補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「陰極端子」について、「前記陰極側機能層の周面の一部と接する平板状の金属板からなる」ことの限定を付加し、(b)補正前の請求項11を削除するものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる「請求項の削除」、及び第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、請求項1の「陰極端子」についての上記(a)の限定事項は、当初明細書の段落【0049】、【0060】の記載、図1?4から導き出せる事項であり、新規事項を追加するものではない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし10に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明

本願の請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は、令和2年9月24日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
互いに対向する1対の端面および前記端面に隣り合う底面を有する直方体形状の本体と、
前記本体の前記1対の端面に配置された1対の陽極端子と、
前記本体の前記底面にある陰極端子と、
を備え、
前記本体は、
樹脂を含む封止材と、
前記封止材に覆われたコンデンサ素子と、
を備え、
前記コンデンサ素子は、
弁作用金属からなる円柱状の貫通導体と、
前記貫通導体の周面上にある誘電体層と、
前記誘電体層上にありかつ前記陰極端子と電気的に接続されている陰極側機能層と、
を備え、
前記貫通導体は、当該貫通導体の軸線方向に延びる芯部と、前記芯部の周面を覆いかつ多数の細孔を有する多孔部と、からなり、
前記誘電体層は、前記多孔部の前記細孔の内周面に沿って形成され、
前記貫通導体の前記周面のうち前記陰極端子に接続される部分以外は前記封止材で封止されており、前記芯部の両端面は、当該貫通導体の前記軸線方向に対して垂直な方向に延びる状態で前記封止材から露出しており、前記本体の前記1対の端面の各々上において、前記1対の陽極端子にそれぞれ覆われかつ接触しており、
前記陰極端子は、前記陰極側機能層の周面の一部と接する平板状の金属板からなる、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記陰極側機能層は、前記多孔部の前記細孔の少なくとも一部を充填している導電性高分子層を備える、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記陰極側機能層と前記陽極端子との間に配置される電気絶縁部材をさらに備える、請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記電気絶縁部材は、前記芯部に接している、請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記電気絶縁部材が前記芯部に接している部分では、前記電気絶縁部材が前記多孔部にある前記細孔を充填している、請求項4に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
前記電気絶縁部材が前記芯部に接している部分では、前記多孔部が存在しない、請求項4に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
前記陽極端子は、めっき膜を含む、請求項1ないし6のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
前記陽極端子は、導電性樹脂膜を含む、請求項1ないし7のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
前記多孔部は、線状の前記貫通導体の周面に形成されたエッチング処理部からなる、請求項1ないし8のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
前記本体は、複数個の前記コンデンサ素子を含み、複数個の前記コンデンサ素子は、前記陽極端子および前記陰極端子を介して並列接続されている、請求項1ないし9のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。」

第5 引用文献、引用発明等

原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、「有極性チップ部品の構造」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
1.「2.実用新案登録請求の範囲
(1)有極性チップ部品において、その部品の中央部と両端部とに電極を設け、両端部の電極を同一極性の電極とし、中央部の電極を異極性としたことを特徴とする有極性チップ部品の構造。」(1頁4?9行)

2.「第2図には本考案に係る有極性チップ部品の構造の断面図が示されている。第2図において、正電極11,11はタンタル棒12の両端に溶接され、このタンタル棒12の周囲にはタンタル13が正電極11,11に接触しないように配設され、このタンタル13は誘電体(Ta_(2)O_(5))14によって囲繞され、しかもこの誘電体14に接着した円筒状の負電極15が設けられている。そして、前記正電極11,11とタンタル13・誘電体14・負電極15からなるコンデンサ部との間に樹脂等の絶縁物16,16が充てんされた構造となっている。また、17,17は正電極11,11とタンタル棒12との溶接部を示す。
本実施例では、この有極性チップ部品としてタンタル固体電解コンデンサで説明しており、前述した構成は全体が円筒状に構成されていて両端が正電極であり、中央部に負電極が設けられた構成としている。」(4頁9行?5頁6行)

3.「



上記「1.」ないし「3.」から以下のことがいえる。
・上記引用文献1に記載の「有極性チップ部品の構造」は、上記「1.」、「2.」の記載事項、及び「3.」(第2図)によれば、部品の中央部と両端部とに電極を設け、両端部の電極を正電極11,11とし、中央部の電極を負電極15としてなるものである。
・上記「2.」の記載事項によれば、有極性チップ部品は、具体的にはタンタル固体電解コンデンサである。
・上記「2.」の記載事項、及び「3.」(第2図)によれば、タンタル固体電解コンデンサは、タンタル棒12の両端に各端面をそれぞれ覆い接触した状態で溶接された一対の正電極11,11と、タンタル棒12の中央部の周囲に一対の正電極11,11に接触しないように配設され、誘電体(Ta_(2)O_(5))14によって囲繞されたタンタル13と、誘電体14に接着して設けられた円筒状の負電極15と、一対の正電極11,11とタンタル13・誘電体14・負電極15からなるコンデンサ部との間に充てんされた樹脂等の絶縁物16,16と、を備え、全体が円筒状に構成されてなるものである。

以上のことから、有極性チップ部品が第2図に示される「タンタル固体電解コンデンサ」である場合に着目してこれを発明として捉え、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「全体が円筒状に構成され、両端が正電極であり、中央部に負電極が設けられたタンタル固体電解コンデンサであって、
タンタル棒の両端に各端面をそれぞれ覆い接触した状態で溶接された一対の前記正電極と、
一対の前記正電極に接触しないように前記タンタル棒の中央部の周囲に配設され、誘電体(Ta_(2)O_(5))によって囲繞されたタンタルと、
前記誘電体(Ta_(2)O_(5))に接着して設けられた円筒状の前記負電極と、
一対の前記正電極と前記タンタル・前記誘電体・前記負電極からなるコンデンサ部との間に充てんされた樹脂等の絶縁物と、を備えるタンタル固体電解コンデンサ。」

第6 対比・判断

1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア.引用発明における「タンタル固体電解コンデンサ」は、全体が円筒状に構成され、両端には正電極が設けられてなるものであり、互いに対向する1対の端面を有しているといえるものであるから、本願発明1と引用発明とは、「互いに対向する1対の端面を有する本体と」を備えるものである点で共通する。
ただし、本体について、本願発明1では、「前記端面に隣り合う底面」を有する「直方体形状」である旨特定するのに対し、引用発明では、全体が円筒状である点で相違する。
また、引用発明における両端に設けられた一対の「正電極」、中央部に設けられた「負電極」のうち下記「イ.」で詳述する外側の層が、それぞれ本願発明1でいう「陽極端子」、「陰極端子」に相当するといえ、本願発明1と引用発明とは、「前記本体の前記1対の端面に配置された1対の陽極端子と、前記本体の所定箇所にある陰極端子と」を備えるものである点で共通するということができる。
ただし、陰極端子について、本願発明1では、本体の「前記底面」にある旨特定するのに対し、引用発明では、そもそも本体に底面を有していない点で相違する。

イ.引用発明における「タンタル棒」及び当該タンタル棒の中央部の周囲に配設され「タンタル」は、いずれも弁作用金属であるタンタルで構成されており、また、タンタル固体電解コンデンサ全体が円筒状に構成されていることからして、その中心に位置する「タンタル棒」及び「タンタル」についても断面が円形のものであり、全体として円柱状のものであるといえ、本願発明1でいう「弁作用金属からなる円柱状の貫通導体」に相当するということができる。
そして、引用発明におけるタンタル棒の中央部の周囲に配設され「タンタル」について、誘電体(Ta_(2)O_(5))によって囲繞されてなるものであることを踏まえると、当該タンタルは、多数の細孔を有するものとして形成されることは技術的にみて自明であり、本願発明1でいう「多孔部」に相当するということができる。そして、当該タンタルが周囲に配設される「タンタル棒」が、本願発明1でいう貫通導体の軸線方向に延びる「芯部」に相当するといえる。
さらに、引用発明におけるタンタルを囲繞してなる「誘電体(Ta_(2)O_(5))」は、本願発明1でいう貫通導体の周面上にあり、多孔部の細孔の内周面に沿って形成された「誘電体層」に相当する。
また、引用発明における円筒状の「負電極」について、引用発明は「タンタル固体電解コンデンサ」であるから、固体電解質層などの本願発明1でいう「陰極側機能層」に相当する層を当然備えるものである。そして、円筒状の「負電極」は誘電体(Ta_(2)O_(5))に接着して設けられていることから、当該「負電極」は、誘電体(Ta_(2)O_(5))側に本願発明1でいう「陰極側機能層」に相当する層を有し、外側に本願発明1でいう「陰極端子」に相当する層を有する複数の層から構成されてなるものであると解される。
なお、引用発明の「タンタル固体電解コンデンサ」のうち、一対の正電極と、負電極のうち本願発明1でいう「陰極端子」に相当する層と、正電極とコンデンサ部との間に充てんされた樹脂等の絶縁物とを除いたものが、本願発明1でいう「コンデンサ素子」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記コンデンサ素子は、弁作用金属からなる円柱状の貫通導体と、前記貫通導体の周面上にある誘電体層と、前記誘電体層上にありかつ前記陰極端子と電気的に接続されている陰極側機能層と、を備え、前記貫通導体は、当該貫通導体の軸線方向に延びる芯部と、前記芯部の周面を覆いかつ多数の細孔を有する多孔部と、からなり、前記誘電体層は、前記多孔部の前記細孔の内周面に沿って形成され」てなるものである点で一致し、さらに、本願発明1と引用発明とは、「前記陰極端子は、前記陰極側機能層の周面と接する」ものである点で共通するといえる。
ただし、陰極端子について、本願発明1では、陰極側機能層の周面の「一部」と接する「平板状の金属板」からなる旨特定するのに対し、引用発明では、陰極側機能層の全周面と接する円筒状のものである点で相違する。

ウ.引用発明における「樹脂等の絶縁物」は、正電極とタンタル・誘電体・負電極からなるコンデンサ部との間に充てんされてなるものであり、「タンタル」の周面以外を封止しており、本願発明1でいう「コンデンサ素子」を構成するタンタル棒のうちのタンタルが配設された中央部以外の部分や、コンデンサ部の両側面を覆っているといえるものであり、本願発明1でいう樹脂を含む「封止材」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記本体は、樹脂を含む封止材と、前記封止材に覆われたコンデンサ素子と」を備え、さらに、「前記貫通導体の前記周面のうち前記陰極端子に接続される部分以外は前記封止材で封止されて」いる点で一致するということができる。
さらに、引用発明における「一対の正電極」は、タンタル棒の両端に各端面をそれぞれ覆い接触した状態で溶接されてなるものであり、タンタル棒の各端面は当然、その軸線方向に対して垂直な方向に延びる状態で樹脂等の絶縁物から露出している(この点については引用文献1の第2図も参照)ことから、本願発明1と引用発明とは、「前記芯部の両端面は、当該貫通導体の前記軸線方向に対して垂直な方向に延びる状態で前記封止材から露出しており、前記本体の前記1対の端面の各々上において、前記1対の陽極端子にそれぞれ覆われかつ接触して」なるものである点で一致するといえる。

エ.そして、引用発明における「タンタル固体電解コンデンサ」は、本願発明1でいう「固体電解コンデンサ」に相当するものである。

したがって上記「ア.」ないし「エ.」によれば、本願発明1と引用発明とは、
「互いに対向する1対の端面を有する本体と、
前記本体の前記1対の端面に配置された1対の陽極端子と、
前記本体の所定箇所にある陰極端子と、
を備え、
前記本体は、
樹脂を含む封止材と、
前記封止材に覆われたコンデンサ素子と、
を備え、
前記コンデンサ素子は、
弁作用金属からなる円柱状の貫通導体と、
前記貫通導体の周面上にある誘電体層と、
前記誘電体層上にありかつ前記陰極端子と電気的に接続されている陰極側機能層と、
を備え、
前記貫通導体は、当該貫通導体の軸線方向に延びる芯部と、前記芯部の周面を覆いかつ多数の細孔を有する多孔部と、からなり、
前記誘電体層は、前記多孔部の前記細孔の内周面に沿って形成され、
前記貫通導体の前記周面のうち前記陰極端子に接続される部分以外は前記封止材で封止されており、前記芯部の両端面は、当該貫通導体の前記軸線方向に対して垂直な方向に延びる状態で前記封止材から露出しており、前記本体の前記1対の端面の各々上において、前記1対の陽極端子にそれぞれ覆われかつ接触しており、
前記陰極端子は、前記陰極側機能層の周面と接する、固体電解コンデンサ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本体について、本願発明1では、「端面に隣り合う底面」を有する「直方体形状」である旨特定するのに対し、引用発明では、全体が円筒状である点。

[相違点2]
陰極端子について、本願発明1では、本体の「底面」にあり、陰極側機能層の周面の「一部」と接する「平板状の金属板」からなる旨特定するのに対し、引用発明では、そもそも本体に底面を有しておらず、陰極側機能層の全周面と接する円筒状のものである点。

(2)相違点についての判断
まず、上記[相違点2]について検討する。
引用発明は、引用文献1の4頁4行に記載のように印刷配線基板への自動装着が容易となることを目的としていることに関連して、負電極は誘電体(Ta_(2)O_(5))によって囲繞されたタンタルの全周を覆うように円筒状に設けられるとともに、コンデンサ全体についても円筒状に構成されているものと解され、あえて負電極のうちの本願発明1でいう「陰極端子」に相当する外側の層のみを平板状の異なる形状にすべき動機付けを見出すことはできない。
したがって、たとえ原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3にはストリップ線路型素子において、弁作用金属の一方の面に導電性物質層を挟んで両端部に第2の電極引き出し端子を設けた金属板を配置してなる構成が記載(16頁2行?18頁9行、図3を参照)され、上記引用文献4には表面実装薄型コンデンサにおいて、平板上の陰極端子をその表面が露出するようにモールド樹脂ケースの底面部に埋設した構成が記載(段落【0005】、図2を参照)され、さらに、上記引用文献6にはチップ型固体電解コンデンサにおいて、対向する2端面から陽極リードを導出した弁作用金属からなる陽極体等を有するコンデンサ素子における陽極リード導出面に隣接する4面のうちの1面(底面)の中央部に、陰極導電体層に接続する陰極端子を設けた構成が記載(【請求項1】、段落【0006】?【0009】、図1、図2を参照)されているとしても、引用発明において上記相違点2に係る構成とすることが、当業者であれば容易になし得たものであるということはできない。
なお、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には固体電解コンデンサにおいて、弁作用金属上に焼結体からなる多孔質体を形成するようにした技術事項が記載(段落【0020】を参照)されているにすぎず、上記相違点2に係る構成に関しては記載も示唆もない。

(3)まとめ
したがって、上記[相違点1]について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし4、6に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2.本願発明2ないし6、9、10について
請求項2ないし10は、請求項1に従属する請求項であり、上記相違点2に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2ないし6、9、11は、引用発明及び引用文献2ないし4、6に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3.本願発明7、8について
請求項7、8は、請求項1に従属する請求項であり、上記相違点2に係る発明特定事項を備えるものである。ここで、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5にはパッケージ型固体電解コンデンサにおいて、陽極側及び陰極側の端子電極を、金属ペーストを塗布したのち乾燥・硬化することによって形成した導電膜と、当該導電膜の表面に形成した金属メッキ層とで構成したことが記載(段落【0016】、【0017】、図6を参照)されているにすぎず、上記相違点2に係る構成に関して記載も示唆もない。したがって、本願発明1と同じ理由により、本願発明7、8は、引用発明及び引用文献2ないし6に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定について

審判請求時の補正により、本願発明1ないし10は、陰極端子について、本体の「前記底面」にあり、陰極側機能層の周面の「一部」と接する「平板状の金属板」からなるという上記「第6 (2)」で検討した上記相違点2に係る発明特定事項を備えるものであるから、原査定において引用された引用文献1ないし6に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-05-31 
出願番号 特願2019-4209(P2019-4209)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 多田 幸司  
特許庁審判長 山田 正文
特許庁審判官 井上 信一
須原 宏光
発明の名称 固体電解コンデンサ  
代理人 小柴 雅昭  

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