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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1374424
審判番号 不服2019-14900  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-06 
確定日 2021-06-15 
事件の表示 特願2018- 53079「画像形成装置、制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月14日出願公開、特開2018- 92198、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月30日に出願された特願2014-093603号(以下、「原々出願」という。)の一部を、平成28年8月9日に新たな特許出願とした特願2016-156649号(以下,「原出願」という。)の一部を、平成30年3月20日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 3月30日 :手続補正書の提出
平成31年 1月17日付け:拒絶理由通知書(平成31年1月22日発送)
平成31年 3月22日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 7月29日付け:補正の却下の決定、拒絶査定(謄本送達日:令和1年8月6日)
令和 1年11月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年11月10日付け:拒絶理由通知書(以下、この拒絶理由通知書に記載した拒絶理由を、「当審拒絶理由」という。)(令和2年7月14日発送)
令和 3年 1月15日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和1年7月29日付け拒絶査定)の理由は、平成31年1月17日付け拒絶理由通知書に記載したとおりであって、その概要は、次のとおりである。

1.(新規事項)平成30年3月30日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2.(進歩性)平成30年3月30日付け手続補正書でした補正によって特定された特許請求の範囲の請求項1ないし13に係る発明は、原々出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1.特開2005-300685号公報
刊行物2.特開2005-169939号公報
刊行物3.特開2008-135900号公報
刊行物4.特開2012-047954号公報
刊行物5.特開2011-137944号公報
刊行物6.特開2014-030972号公報
刊行物7.特開2006-343621号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

3.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

4.(進歩性)この出願の以下の請求項に係る発明は、原々出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1)当業者が令和1年11月6日付け手続補正書によって補正された請求項1、10ないし11に係る発明(以下、「本願補正前発明1、10ないし11」という。他の請求項に係る発明も同様。)について、引用文献1ないし2
(2)本願補正前発明2について、引用文献1ないし3
(3)本願補正前発明3について、引用文献1ないし4
(4)本願補正前発明4ないし9について、引用文献1ないし5

引用文献1.特開2005-300685号公報(原査定時の刊行物1)
引用文献2.特開2008-135900号公報(原査定時の刊行物3)
引用文献3.特開2012-047954号公報(原査定時の刊行物4)
引用文献4.特開2011-137944号公報(原査定時の刊行物5)
引用文献5.特開2006-343621号公報(原査定時の刊行物7)

第4 本願発明
本願の請求項1ないし請求項11に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、令和3年1月15日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項11に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
収容部から供給される記録材を用いて画像形成を行う画像形成手段と、
前記画像形成手段により形成される画像のドットカウントに基づき、前記収容部に収容されている記録材の残量を求める手段と、
前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた残量の割合が閾値に達したかを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた残量の割合が前記閾値に達したと判定されたことに従って、ユーザに通知を行う通知手段と、
前記閾値をデフォルトの割合からユーザの指定した割合に変更する変更手段と、を有し、
前記判定手段は、前記収容部が所定の種類の収容部である場合に、前記変更手段により変更された前記割合を前記閾値として、前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた前記残量の割合が前記閾値に達したかを判定し、
前記変更手段は、前記収容部が前記所定の種類の収容部でない場合に、前記収容部に収容できる記録材の量に対する残量の割合が閾値に達したかを判定する際に用いられる閾値を、前記デフォルトの割合から他の割合に変更しないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記収容部との通信結果に基づき当該収容部が所定の種類の収容部であるか否かを判断する判断手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成手段により形成される画像のドットカウントに基づき、前記収容部に収容されている記録材の残量を求める手段は、1ドットあたり所定の量の記録材が使用されるとして、前記収容部に収容されている記録材の残量を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成手段により形成される画像のドットカウントに基づき、前記収容部に収容されている記録材の残量を求める手段は、前記所定の量と前記画像を形成するドットの数の積に基づき前記記録材の使用量を求め、前記求めた記録材の使用量に基づき、前記収容部に収容されている記録材の残量を求めることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記求められた前記記録材の残量に基づいて前記収容部のステータスを通知する第2の通知手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記録材は、トナー又はインクであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記収容部が所定の種類の収容部である場合に、前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた前記残量の割合が前記閾値に達したかの判定に用いられる閾値となる割合をユーザから受け付ける受付手段をさらに有し、
前記変更手段は、前記受付手段により受け付けられた前記割合へと、前記閾値を変更することを特徴とする請求項1又は6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記受付手段によってユーザから前記値を受け付ける場合に、前記閾値として設定可能な上限値及び下限値を表示する表示手段を更に有することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記通知手段による前記通知は、前記記録材の残量が少なくなっていることを示す通知であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
収容部から供給される記録材を用いて画像形成を行う画像形成手段を有する画像形成装置の制御方法であって、
前記画像形成手段により形成される画像のドットカウントに基づき、前記収容部に収容されている記録材の残量を求める工程と、
前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた量の割合が閾値に達したかを判定する判定工程と、
前記判定工程において前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた残量の割合が前記閾値に達したと判定されたことに従って、ユーザに通知を行う通知工程と、
前記閾値をデフォルトの割合からユーザの指定した割合に変更する変更工程と、を有し、
前記判定工程は、前記収容部が所定の種類の収容部である場合に、前記変更工程において変更された前記割合を前記閾値として、前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた残量の割合が前記閾値に達したかを判定し、
前記変更工程は、前記収容部が所定の種類の収容部でない場合に、前記収容部に収容できる記録材の量に対する残量の割合が閾値に達したかを判定する際に用いられる閾値を、前記デフォルトの割合から他の割合に変更しないことを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の画像形成装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において刊行物1として引用されるとともに当審拒絶理由において引用文献1として引用され、原々出願の出願前である平成17年10月27日に頒布された刊行物である特開2005-300685号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
ア 「【0001】
本発明は、現像器のトナーの初期容量に応じて、トナー欠レベルを適正に設定することができる画像形成装置に関する。」

イ 「【0003】
通常、前記現像器はユニット化されていて、画像形成装置本体に取り外し可能に装着されている。現像器に貯留されたトナーが無くなると、トナー欠警報表示が行われるので、トナー欠状態の現像器はトナーが満杯の現像器と交換される。現像器のトナー欠レベルの設定値は、現像器内のトナーの容量が絶対値として一定値に設定されていた。即ち、トナーの容量センサにより検出された信号が所定値となったとき、制御装置から表示装置にトナー欠警報の表示を行うようになっている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平06-194907号公報」

ウ 「【0004】
現像器に貯留されたトナーは環境条件の変動等の要因によって経時変化とともに劣化する。このため、貯留量が少なくなったときのトナーは、その品質が劣化して、記録紙へ印字された画像に濃度ムラ等の不具合が生じ安いので、所定の容量だけトナーを残すようになっている。このとき、トナーの初期容量に応じて残さなければならない適正なトナー容量は異なる。つまり、トナーの初期容量が大量の現像器の場合には、多量のトナーを残し、トナーの初期容量が少量の現像器の場合には、少量のトナーを残せばよいことになる。しかし、従来はトナーの初期容量が大量の現像器を考慮して、絶対値で一定の高いトナー欠レベルの設定値を用いて、現像器内に一定容量のトナーを残して廃棄するようになっていたので、特に、トナーの初期容量が少量の現像器の場合にトナー欠レベルが高過ぎて、まだ十分に使用できる品質のトナーが残っているにもかかわらず廃棄されることになり、トナーの無駄が発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、現像器又はトナーカートリッジに貯留されたトナーの初期容量に応じて、トナー欠レベルを適正に設定して、トナーの有効利用を図ることができる画像形成装置を提供することにある。」

エ 「【0012】
以下、本発明を複写機、ファクシミリ装置或いはプリンタ等に採用されている電子写真方式の画像形成装置に具体化した一実施形態を図1?図4に従って説明する。
この画像形成装置は、図示しないが帯電手段としての帯電器によって帯電された感光体としての感光ドラムの表面に、露光手段としての露光器によって静電潜像を形成し、この静電潜像を現像ローラを備えたトナー方式の現像器によって現像するようになっている。又、画像形成装置は、現像されたトナー画像を転写手段としての転写器によって、感光ドラムから記録紙上に転写するとともに、転写器の下流側に設けた定着手段としての定着器でトナー画像を永久画像として記録紙に定着するようになっている。」

オ 「【0013】
前記現像器はユニット化されていて、画像形成装置本体の所定位置に取り外し可能に装着されるようになっている。現像器内に貯留されたトナーが印字作業により消費されてトナーが少なくなると、トナーニアエンプティーの表示が行われ、その後に、設定されたトナー欠レベルの設定値になると、トナーエンプティーの警報表示が表示装置の画面に表示されるようになっている。そして、トナーが消費された現像器は満杯のトナーを貯留した別の現像器と交換されるようになっている。」

カ 「【0014】
次に、図1に基づいて、画像形成装置の梱包出荷の際に、画像形成装置本体に現像器がセットされた場合、或いは新旧の現像器が交換された場合に、現像器内に貯留されたトナーの初期容量に応じて、トナー欠レベルの設定値を適正値に設定するための制御システムについて説明する。
【0015】
この制御システムは、各種の動作を制御するためのコンピューターを有する制御装置11を備えている。前記制御装置11には、各種のデータに基づいて、記録プロセスに必要な各種のバイアス電位を演算するための中央演算処理装置(CPU)12、各種のデータや動作プログラムを記憶するための記憶手段としてのリードオンリーメモリ(ROM)13、各種のデータを読み出し書き込み可能なランダムアクセスメモリ(RAM)14及び図示しない電源回路等が設けられている。
【0016】
一方、前記現像器には、少なくともトナーの初期容量のデータを含むバージョンデータ記憶手段としてのチップ15が設けられている。このチップ15には、トナーの初期容量のデータ以外に、トナーの製造年月日、仕向先或いはトナーの種類等のデータが予め記憶されている。
【0017】
画像形成装置本体側には、該本体に前記現像器がセットされた場合に、前記チップ15に記憶された各種のデータを読み取るための読み取り器16が設けられている。この読み取り器16により読み取られたデータは、制御装置11側の入出力装置17Aを介して、前記CPU12に入力されるようになっている。そして、制御装置11により読み取られた現像器のデータに基づいて現像器のトナーの管理が行われるようになっている。
【0018】
画像形成装置本体側には、現像器のトナーの実際に貯留されている容量を検出するためのトナー容量検出手段としてのトナー容量センサ18が設けられ、このセンサ18の検出値信号が入出力装置17Aを介して前記CPU12に入力されるようになっている。このトナー容量センサ18として投受光式のホトインタラプタを用いている。そして、現像器内のトナーの貯留高さを検出し、それを容量(重量又は体積)としてCPU12に送るようになっている。
【0019】
前記CPU12には、入出力装置17Bを介して例えばキーボード或いはマウス等の各種のデータを入力するための操作部19が接続されている。又、前記CPU12には、入出力装置17cを介して、画像形成装置の稼働状態の各種データを表示するためのトナー欠予報又はトナー欠報知手段としての表示装置21が接続されている。
【0020】
前記CPU12には、前記読み取り器16によって読みとられたデータに基づいて、現像器のトナーの初期容量等のバージョンを判定するための初期容量判定手段としてのバージョン判定手段22が設けられている。この判定手段22によって現像器のトナーの初期容量Wftが判定されるようになっている。前記CPU12には、前記判定手段22によって判定されたトナーの初期容量Wftの大小に応じて、トナー欠レベルの適正な設定値をセットするためのトナー欠レベル設定手段23が設けられている。
【0021】
前記ROM13のデータテーブル25には、現像器のトナーの複数段の初期容量Wftと、この初期容量Wftに適したトナー欠レベルの複数段の設定値Wetが予め記憶されている。例えば、初期容量Wftが200g、300g、400g、500gと増大するのに伴って、トナー欠レベルの設定値Wetが30g、45g、60g、75gというように段階的に多くなるようにデータリストとして記憶されている。トナー欠レベル設定手段23は、前記ROM13に記憶された前記データテーブル25のデータリストの中から、実際の初期容量Wftに適したトナー欠レベルの設定値Wetを読み出して、これをROM13のトナー欠レベル設定値記憶部26に記憶するようになっている。又、前記CPU12には、現像器が別の現像器と交換された場合に、その交換回数をカウントするための現像器交換カウンタ設定手段27が設けられている。
【0022】
次に、前記のように構成された画像形成装置の制御システムに基づいて、新しい現像器がセットされた場合に、そのトナー欠レベルをセットする動作について図2を中心に説明する。
【0023】
図2において、画像形成装置本体に対して、現像器がセットされると、画像形成装置本体側に設けられた読み取り器16によって、ステップS1において現像器側のチップ15に記憶されているバージョンデータが読み取れられる。この読み取り器16によって読み取れたバージョンデータは、入出力装置17Aを介して、CPU12の判定手段22に送られる。そして、ステップS2において判定手段22によって、現像器のバージョンが判定される。このとき、現像器のトナーの初期容量Wftが判定される。
【0024】
次に、このトナーの初期容量Wftの判定結果に基づいて、この初期容量Wftに適したトナー欠レベルの設定値Wetが選択されて、前記トナー欠レベル設定手段23によってトナー欠レベル設定値記憶部26にセットされる。例えば、現像器のトナーの初期容量Wftが、200gの場合には、トナー欠レベルの設定値Wetが、30gとして設定値記憶部26に記憶される。」

キ 「【0025】
次に、図3に示すフローチャートに基づいて、画像形成装置の出荷梱包時におけるトナー欠レベルの設定方法について説明する。
最初に、現像器がセットされると、ステップS1において、初回の現像器か否かがCPU12によって判別される。この判別は画像形成装置本体に現像器を最初に装着した時に現像器側に設けられたヒューズが溶断するようになっているので、その溶断検知信号を前記CPU12が感知することにより行われる。ステップS1において、イエスと判定された場合には、ステップS2において、現像器の交換回数が現像器交換カウンタ設定手段27によってカウントされてROM13に「1」と設定される。そして、ステップS3において前述したチップ15の読み込みによって現像器のトナーの初期容量Wft(例えば200g)が判定され、これに基づいて、初回のトナー欠レベルの設定値(例えば30g)がデータテーブル25から読み出されてROM13のトナー欠レベル設定値記憶部26に記憶される。
【0026】
一方、前述したステップS1において、ノーと判断された場合には、ステップS4において、例えばセールスマンによってバージョンを手動で設定するか否かが判断され、イエスの場合には、ステップS5において、セールスマンによってバージョン設定が行われて、現像器のトナーの初期容量Wft(例えば300g)がセールスマンによって設定される。これに基づいて、トナー欠レベルの設定値Wet(例えば45g)がデータテーブル25から読み出されてROM13に記憶される。
【0027】
一方、ステップS4において、セールスマンによってノー、つまりバージョンを手動設定しないと判断された場合には、ステップS7において、前述したトナー欠レベルの設定動作と同様のトナー欠レベルの設定値Wet(例えば60g)が設定される。
【0028】
以上のようなトナー欠レベルのセット動作により、画像形成装置は、記録紙へのプリントが可能な待機状態となる。
次に、待機状態から実際に、印字作業が行われて、現像器のトナーの容量が減少した場合の作用について、図4のフローチャートに従って説明する。」

ク 「【0029】
待機状態からステップS1に示すように、印字が実行されると、トナー容量センサ18からのトナー容量の検出信号に基づいて、ステップS2において、前記CPU12によってトナーニアエンプティか否かが判定される。そして、ステップS2においてイエスと判断された場合には、ステップS3において、表示装置21の画面にトナー欠予報表示が行われる。
【0030】
一方、ステップS2において、ノーと判断された場合には、ステップS4において、トナー容量センサ18からのトナー容量の検出信号に基づいて、前記CPU12によってトナーエンプティか否か、つまり設定値Wetになったか否かが判定され、イエスの場合には、ステップS5において、表示装置21の画面にトナー欠警報が表示される。反対に、ステップS4において、ノーと判断された場合には待機状態となる。」

ケ 「【0036】
○現像器全体を交換可能にする方式に代えて、現像器本体に対しトナーを貯留したトナーカートリッジのみを交換可能にした現像器を用いてもよい。この場合には、バージョンの異なるトナーカートリッジに設けられたチップのデータを読み込むことによりトナーの初期容量Wftに応じて、適正なトナー欠レベルの設定値Wetが設定される。」

コ 「【0037】
○前記実施形態では、トナーの初期容量Wftとトナー欠レベルの設定値Wetの関係を表わしたデータテーブルの中から、適正なトナー欠レベルの設定値Wetを選択するようにした。これに代えて、トナー欠レベルの設定値Wetを求める演算式を用いて、トナーの初期容量Wftに適したトナー欠レベルの設定値Wetを演算するようにしてもよい。この演算式として、以下の式が考えられる。
【0038】
Wet=Wft×(15/100)
【0039】
【図1】この発明の画像形成装置の現像器のトナー欠レベルをセットするための制御システムの一例を示すブロック回路図。」

サ 上記カの段落【0020】、【0021】及び上記キより、ステップS1において、イエスと判定された場合には、CPU12のトナー欠レベル設定手段23が、初回のトナー欠レベルの設定値をデータテーブル25から読み出してトナー欠レベルの設定値Wetを設定することから、トナー欠レベル設定手段23は、セットされた現像器が初回の現像器である場合には、人手を介さず自動的にトナー欠レベルの設定値Wetを設定する制御を行うものと認められる。

シ 上記キより、ステップS1において、ノーと判定された場合には、ステップS4において、セールスマンによってバージョンを手動で設定するか否かが判断され、イエスの場合には、ステップS5において、セールスマンがトナー欠レベルの設定値Wetを設定するために用いる現像器のトナーの初期容量Wftを設定し、ノーの場合、すなわち、バージョンを手動設定しないと判断された場合には、ステップS7において、前述したトナー欠レベルの設定動作と同様のトナー欠レベルの設定値Wetを設定することから、セットされた現像器が初回の現像器でない場合は、手動設定するかしないかを選択できるものであるため、セットされた現像器が初回の現像器でない場合は、セールスマンが手動でトナー欠レベルの設定値Wetを設定するために用いる現像器のトナーの初期容量Wftを設定することを可能とする制御を行うと認められる。

ス 上記クの段落【0020】の「トナー欠レベルの適正な設定値」及び段落【0030】の「設定値Wet」は、段落【0027】、【0037】の記載から、いずれも「トナー欠レベルの設定値Wet」を指すことは明らかである。

セ 上記カの段落【0015】、【0018】、【0019】、上記クの段落【0030】、上記コの段落【0039】より、中央演算処理装置(CPU)12、現像器のトナーの実際に貯留されている容量を検出するためのトナー容量検出手段としてのトナー容量センサ18が設けられ、CPU12には、各種のデータを入力するための操作部19及びトナー欠警報を表示するための表示装置21が接続され、CPU12には、判定手段22によって判定されたトナーの初期容量Wftの大小に応じて、トナー欠レベルの適正な設定値をセットするためのトナー欠レベル設定手段23が設けられていることが認められる。

ソ 上記カの【0021】には、「前記ROM13のデータテーブル25には、現像器のトナーの複数段の初期容量Wftと、この初期容量Wftに適したトナー欠レベルの複数段の設定値Wetが予め記憶されている。例えば、初期容量Wftが200g、300g、400g、500gと増大するのに伴って、トナー欠レベルの設定値Wetが30g、45g、60g、75gというように段階的に多くなるようにデータリストとして記憶されている。」と記載され、同【0024】には、「例えば、現像器のトナーの初期容量Wftが、200gの場合には、トナー欠レベルの設定値Wetが、30gとして設定値記憶部26に記憶される。」と記載され、上記キの【0025】には、「そして、ステップS3において前述したチップ15の読み込みによって現像器のトナーの初期容量Wft(例えば200g)が判定され、これに基づいて、初回のトナー欠レベルの設定値(例えば30g)がデータテーブル25から読み出されてROM13のトナー欠レベル設定値記憶部26に記憶される。」と記載され、同【0026】には、「一方、前述したステップS1において、ノーと判断された場合には、ステップS4において、例えばセールスマンによってバージョンを手動で設定するか否かが判断され、イエスの場合には、ステップS5において、セールスマンによってバージョン設定が行われて、現像器のトナーの初期容量Wft(例えば300g)がセールスマンによって設定される。これに基づいて、トナー欠レベルの設定値Wet(例えば45g)がデータテーブル25から読み出されてROM13に記憶される。」と記載され、上記コの【0037】には、「これに代えて、トナー欠レベルの設定値Wetを求める演算式を用いて、トナーの初期容量Wftに適したトナー欠レベルの設定値Wetを演算するようにしてもよい。この演算式として、以下の式が考えられる。」と記載され、同【0038】には、「Wet=Wft×(15/100)」と記載されていることから、上記セで示したように、CPU12がトナー欠レベルの適正な設定値のセットを行っていることも踏まえれば、引用文献1のCPU12は、トナー欠レベルの設定値Wetをセットされた現像器のトナーの初期容量Wftに対する一定割合(15%)でセットするものであると認められる。

タ 上記カの段落【0016】には、「一方、前記現像器には、少なくともトナーの初期容量のデータを含むバージョンデータ記憶手段としてのチップ15が設けられている。このチップ15には、トナーの初期容量のデータ以外に、トナーの製造年月日、仕向先或いはトナーの種類等のデータが予め記憶されている。」と、現像器にはチップが設けられ、チップには、トナーの初期容量のデータとトナーの種類のデータを含むデータが記憶されていることが記載されており、同【0017】には、「画像形成装置本体側には、該本体に前記現像器がセットされた場合に、前記チップ15に記憶された各種のデータを読み取るための読み取り器16が設けられている。この読み取り器16により読み取られたデータは、制御装置11側の入出力装置17Aを介して、前記CPU12に入力されるようになっている。そして、制御装置11により読み取られた現像器のデータに基づいて現像器のトナーの管理が行われるようになっている。」と、本体に現像器がセットされた場合に、読み取り器16でチップに記憶された各種のデータを読み取り、CPU12に入力されることが記載されており、同【0020】には、「前記CPU12には、前記読み取り器16によって読みとられたデータに基づいて、現像器のトナーの初期容量等のバージョンを判定するための初期容量判定手段としてのバージョン判定手段22が設けられている。この判定手段22によって現像器のトナーの初期容量Wftが判定されるようになっている。前記CPU12には、前記判定手段22によって判定されたトナーの初期容量Wftの大小に応じて、トナー欠レベルの適正な設定値をセットするためのトナー欠レベル設定手段23が設けられている。」と、CPU12が、読み取り器16によって読みとられたデータに基づいて、現像器のトナーの初期容量等のバージョンを判定し、判定されたトナーの初期容量Wftの大小に応じて、トナー欠レベルの適正な設定値をセットすることが記載されている。
このとき、「読み取り器16によって読みとられたデータ」は、現像器に設けられたチップのデータであって、トナーの初期容量のデータとトナーの種類のデータを含むデータであるといえるが、引用文献1には、現像器のトナーの初期容量がトナーの種類によって異なることは記載されていないし、交換可能な現像器を用いる場合、同一規格の現像器を用いることが電子写真装置の技術分野の技術常識であることからすれば、引用文献1のCPU12は、セットされた現像器のトナーの種類にかかわらず、トナー欠レベルの適正な設定値をセットするものであると認められる。

(2)引用発明1
したがって、上記(1)の上記記載事項アないしコ、及び、認定事項サないしタより、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「帯電器によって帯電された感光体としての感光ドラムの表面に、露光手段としての露光器によって静電潜像を形成し、この静電潜像を現像ローラを備えたトナー方式の現像器によって現像し、現像されたトナー画像を転写手段としての転写器によって、感光ドラムから記録紙上に転写するとともに、転写器の下流側に設けた定着手段としての定着器でトナー画像を永久画像として記録紙に定着する画像形成装置であって、
中央演算処理装置(CPU)、現像器のトナーの実際に貯留されている容量を検出するためのトナー容量検出手段としてのトナー容量センサが設けられ、
CPUには、各種のデータを入力するための操作部及びトナー欠警報を表示するための表示装置が接続され、
CPUには、セットされた現像器のトナーの種類にかかわらず、トナー欠レベルの設定値Wetをセットされた現像器のトナーの初期容量Wftに対する一定割合でセットするためのトナー欠レベル設定手段が設けられ、
待機状態から実際に、印字作業が行われて、現像器のトナーの容量が減少した場合に、CPUによってトナーエンプティか否か、つまり設定値Wetになったか否かが判定され、イエスの場合には、表示装置の画面にトナー欠警報が表示され、
前記セットされた現像器が初回の現像器でない場合は、CPUは、セールスマンが手動でトナー欠レベルの設定値Wetを設定するために用いる現像器のトナーの初期容量Wftを設定することを可能とする制御を行い、前記セットされた現像器が初回の現像器である場合は、CPUは、人手を介さず自動的に前記トナー欠レベルの設定値Wetを設定する制御を行う、ことを特徴とする画像形成装置。」

2.引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において刊行物3として引用されるとともに当審拒絶理由において引用文献2として引用され、原々出願の出願前である平成20年6月12日に頒布された刊行物である特開2008-135900号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0030】
以下、本発明を重連式の印刷装置に適用した場合の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。重連式の印刷装置とは、複数台の印刷装置を接続(連結)して構成されるものである。ただし、本発明は、重連式の印刷装置に限らず、周知の印刷装置に広く適用可能である。また、本発明の実施の形態においては、電子写真方式の印刷装置を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限らず、例えばオフセット印刷方式やインクジェット印刷方式など、他の印刷方式を採用した印刷装置にも適用可能である。
【0031】
さらに、本発明は、複数の消耗品を用いて動作するものであれば、印刷装置に限らず、複写装置やファクシミリ装置などの画像形成装置(印刷装置を含む)、さらには画像形成装置以外の電子機器にも広く適用可能である。また、本発明は、画像形成装置を含む電子機器を消耗品管理の対象装置とした消耗品管理装置や消耗品管理用のコンピュータ・プログラムとして実現することも可能である。」

イ 「【0036】
上記構成からなる印刷装置100においては、給紙装置1から送り出された連続用紙を表面印刷装置2に取り込み、この表面印刷装置2で各々の感光体ドラム7Y,7M,7C,7Kから連続用紙にトナー画像を転写した後、定着器8によって連続用紙にトナー画像を定着する。これにより、連続用紙の表面にカラー画像が形成される。」

ウ 「【0039】
このように動作する印刷装置100の中で、例えば、表面印刷装置2や裏面印刷装置3では、それぞれ交換可能な種々の消耗品が使用される。消耗品の具体例としては、トナー、トナー回収容器、現像剤(磁性粒子)、ドラムクリーナブラシ、トナーフィルタ、転写クリーナ、脱煙フィルタなどがある。
【0040】
トナーは、Y,M,C,Kの色ごとに専用の容器(例えば、トナーボトル)に入れて使用されるものである。トナー回収容器は、ドラムクリーニング用のブレードで感光体ドラムの表面から除去されたトナー(廃トナー)を回収する容器である。現像剤は、現像器内でトナーと混合され、摩擦帯電等によってトナーを帯電させるものである。ドラムクリーナブラシは、感光体ドラムの表面に残った不要トナーを取り除くためのものである。トナーフィルタは、ドラムクリーナブラシで感光体ドラムの表面から取り除いたトナー(廃トナー)をブロアー等による吸気によって回収するために用いられるものである。転写クリーナは、転写器の汚れを取り除くためのものである。脱煙フィルタは、定着器に加熱源として設けられるフラッシュランプの光を連続用紙に照射したときに発生する煙を取り除くためのものである。」

エ 「【0042】
図2は本発明の実施形態に係る印刷装置の制御系の構成例を示すブロック図である。図示のように印刷装置100は、主として、制御部11と、操作パネル12と、印刷機構部13と備えた構成となっている。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)14と、ROM(Read-Only Memory)15と、RAM(Random Access Memory)16と、不揮発性メモリ(NVRAM:Non-Volatile RAM)17と、ホストインターフェース部(図中の「I/F」は「インターフェース」の略)18と、パネルインターフェース部19と、ハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)20と、エンジンインターフェース部21とを有している。」

オ 「【0052】
まず、制御部11は、ホスト装置200から自装置(印刷装置100)に送られた印刷用の画像データをホストインターフェース部18から取り込んだ後、オペレータが操作パネル12上で印刷開始を指示する操作(例えば、印刷開始ボタンを押下する操作など)を行なうと、その指示をパネルインターフェース部19を介して受け付けて、エンジンインターフェース部21から印刷機構部13に印刷指示を出力することにより、印刷機構部13での印刷を開始する(ステップS1)。」

カ 「【0060】
次に、制御部11は、上記ステップS3において、寿命までの残量が第1閾値TH0以下の消耗品を除く他の消耗品に関して、各々の消耗品の寿命までの残量が、第1閾値TH0よりも大きく、かつ第2閾値TH1であるかどうかを判定する(ステップS8)。ステップS8の処理は、寿命に達する消耗品の交換又は補充に追加して、交換又は補充すべき消耗品があるか否かを判定する処理となる。また、ステップS7の処理は、実際に印刷機構部13での印刷動作を停止した際に、各々の消耗品の寿命までの残量を更新することで、ステップS8の判定処理をより正確に行なうための処理となる。」

キ 「【0063】
一方、ステップS8において、寿命に達する消耗品の交換又は補充に追加して、交換又は補充すべき消耗品があると判定した場合(Yesと判定した場合)、制御部11は、寿命に達する消耗品に追加して交換又は補充すべき消耗品の交換又は補充を操作者に促す通知処理を行なう(ステップS10)。」

ク 「【0066】
ここで、上述した第1閾値TH0、第2閾値TH1及び第3閾値TH3の設定について、図4を用いて説明する。まず、各々の閾値TH0、TH1、TH2は、予め制御部11で設定されるとともに、この設定にしたがって不揮発性メモリ17に記憶されるものである。また、第1閾値TH0は、消耗品の寿命までの残量の初期値(最大値)を100%とした場合に、消耗品が寿命に達したかどうかを判定するための閾値となるもので、例えば0%又はそれに近い値で設定されるものである。第2閾値TH1は、ニアライフ値(図例では10%)よりも小さくかつ第1閾値TH0よりも大きい値で設定されるものである。、第3閾値TH2は、第2閾値TH1よりも小さくかつ第1閾値TH0よりも大きい値で設定されるものである。」

ケ 「【0080】
さらに、制御部11は、上記ステップS8,S11で参照される閾値TH1, TH2をオペレータの操作にしたがって設定(変更)する手段を備えている。より具体的に記述すると、制御部11は、例えば、操作パネル12に通常画面を表示している状態で、オペレータが通常画面内の閾値設定タブ等を選択することにより、表示パネル12の表示画面を通常画面から閾値設定画面に切り替える。なお、不揮発性メモリ17には、最初にデフォルトの設定で閾値(TH1,TH2)の情報が記憶される。
【0081】
図7に閾値設定画面の表示例を示す。まず、図7(A)に示す閾値設定画面1では、閾値の設定を受け付ける消耗品を品種別に表示する。そして、オペレータが閾値の設定変更を希望する消耗品の品種(図例では現像剤)を1つ選択して画面内の選択ボタン28を押すと、制御部11からの表示切り替え指示にしたがって操作パネル12の表示画面が図7(B)に示す閾値設定画面2に切り替わる。この閾値設定画面2では、オペレータが設定変更を希望する閾値(TH1、TH2)と印刷装置100の動作形式を適宜選択して所望の数値(閾値)を入力し、その後、画面内の確定ボタン29を押すことにより、オペレータが指定した数値にしたがってCPU14が不揮発性メモリ17内の閾値を書き換えることにより、制御部11で消耗品の品種ごとに閾値の設定(変更)が行なわれる。
【0082】
ここで、閾値設定画面2では、前述した閾値設定条件(ニアライフ値>TH1>TH2>TH0)にしたがって第2閾値TH1と第3閾値TH2を別々に設定可能となっている。また、閾値設定画面2では、印刷装置100の動作形式(図例では単独印刷動作形式、重連印刷動作形式)ごとに、各々の閾値TH1,TH2を設定可能となっている。図例では、単独印刷動作形式で現像剤に適用される第2閾値TH1を数値の入力によって設定する場面を示している。重連印刷動作形式とは、表面印刷装置2と裏面印刷装置3を連結して連続用紙の両面に画像を印刷する動作形式である。単独印刷動作形式とは、表面印刷装置2と裏面印刷装置3をそれぞれ単独で動作させることにより、表面印刷装置2で連続用紙の片面に画像を印刷するとともに、裏面印刷装置3で別の連続用紙の片面に画像を印刷する動作形式である。」

コ 「【図7】



サ 上記カの段落【0060】の「寿命までの残量が第1閾値TH0以下の消耗品を除く他の消耗品に関して、各々の消耗品の寿命までの残量が、第1閾値TH0よりも大きく、かつ第2閾値TH1であるかどうかを判定する(ステップS8)。」という記載について、図3のフローチャートのS8には、「TH0<各々の消耗品の寿命までの残量≦TH1?」と記載されているとともに、段落【0060】に記載されている、ステップS8の処理が、寿命に達する消耗品の交換又は補充に追加して、交換又は補充すべき消耗品があるか否かを判定するものであるという判定の目的に照らせば、当該記載は、「寿命までの残量が第1閾値TH0以下の消耗品を除く他の消耗品に関して、各々の消耗品の寿命までの残量が、第1閾値TH0よりも大きく、かつ第2閾値TH1以下であるかどうかを判定する(ステップS8)。」と解するのが正しいと認められる。

シ 上記コの【図7】(B)より、「現像剤の閾値設定」において設定される「閾値(TH1)」が単独印刷動作で「5%」、重連印刷動作で「6%」であるとともに、「閾値(TH2)」が単独印刷動作で「2%」、重連印刷動作で「3%」であることが看取できることから、上記ケの【0081】の「オペレータが設定変更を希望する閾値(TH1、TH2)と印刷装置100の動作形式を適宜選択して所望の数値(閾値)を入力」する際の数値(閾値)が「割合」であるから、引用文献2において、オペレータが所望の数値(閾値)を割合で入力し、閾値(TH1、TH2)が割合で設定されるものであると認められる。

(2)引用発明2
上記(1)より、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「複写装置やファクシミリ装置などの画像形成装置(印刷装置を含む)であって、
給紙装置1から送り出された連続用紙を表面印刷装置2に取り込み、この表面印刷装置2で各々の感光体ドラム7Y,7M,7C,7Kから連続用紙にトナー画像を転写した後、定着器8によって連続用紙にトナー画像を定着し、これにより、連続用紙の表面にカラー画像が形成され、
交換可能な種々の消耗品が使用され、
消耗品の具体例としては、専用の容器に入れて使用されるトナーがあり、
制御部11と、操作パネル12と、印刷機構部13と備え、
オペレータが操作パネル12上で印刷開始を指示する操作(例えば、印刷開始ボタンを押下する操作など)を行なうと、その指示をパネルインターフェース部19を介して受け付けて、エンジンインターフェース部21から印刷機構部13に印刷指示を出力することにより、印刷機構部13での印刷を開始し、
各々の閾値TH0、TH1、TH2は、予め制御部11で設定され、
制御部11は、各々の消耗品の寿命までの残量が、第1閾値TH0よりも大きく、かつ第2閾値TH1以下であるかどうかを判定することで、寿命に達する消耗品の交換又は補充に追加して、交換又は補充すべき消耗品があるか否かを判定し、寿命に達する消耗品の交換又は補充に追加して、交換又は補充すべき消耗品があると判定した場合、制御部11は、寿命に達する消耗品に追加して交換又は補充すべき消耗品の交換又は補充を操作者に促す通知処理を行ない、
制御部11は、割合で設定される閾値TH1,TH2をオペレータの操作にしたがって設定(変更)する手段を備えており、
制御部11は、操作パネル12に通常画面を表示している状態で、オペレータが通常画面内の閾値設定タブ等を選択することにより、表示パネル12の表示画面を通常画面から閾値設定画面に切り替え、
この閾値設定画面2では、オペレータが設定変更を希望する閾値(TH1、TH2)と印刷装置100の動作形式を適宜選択して所望の数値(閾値)を割合で入力し、その後、画面内の確定ボタン29を押すことにより、オペレータが指定した数値にしたがってCPU14が不揮発性メモリ17内の閾値を書き換えることにより、制御部11で消耗品の品種ごとに閾値の設定(変更)が行なわれる、
画像形成装置。」

3.引用文献3について
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由において刊行物4として引用されるとともに当審拒絶理由において引用文献3として引用され、原々出願の出願前である平成24年3月8日に頒布された刊行物である特開2012-47954号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0019】
<実施の形態1>
以下、本発明に係る定着部および画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタル複写機(以下、単に「複写機」という。)に適用した場合を例に、図面に基づいて説明する。
(1-1.複写機の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る複写機10の全体構成を示す概略断面図である。
【0020】
同図に示すように、複写機10は、画像読取部11、画像形成部12、給送部13、定着部14、制御部60、および操作パネル16などを備え、原稿画像を読み取ってその画像データに基づいて記録シートに画像を形成するコピージョブ、外部端末からネットワークを介して送られてきた画像データに基づいて記録シートに画像を形成するプリントジョブ、画像データを外部に送信する送信ジョブ等を実行可能な、いわゆる多機能複合機(MFP:Multiple Function Peripheral)と呼ばれるものであって、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)色からなるカラー画像、またはモノクロ、例えばブラック色の画像を形成して、記録シートに再現する。以下、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各再現色をそれぞれC、M、Y、Kと表す。
【0021】
画像読取部11は、セットされた原稿の画像を読み取って、読み取って得られた画像データを出力する公知の装置である。
画像形成部12は、C、M、Y、Kの各再現色それぞれに対応する作像部20C?20Kと、中間転写ベルト21、および上記C、M、Y、K各色のトナーをそれぞれ対応する作像部20に補給するトナー補給部7C?7Kなどを備えている。
【0022】
作像部20C?20Kは、それぞれ、感光体ドラム1C?1K、その周囲に配設された帯電ローラ2C?2K、露光部3C?3K、一次転写ローラ4C?4K、現像器5C?5K、感光体ドラム1C?1Kを清掃するためのクリーナ6C?6Kなどを備えており、感光体ドラム1C?1K上にC?K色のトナー像を作像する。
中間転写ベルト21は、無端状のベルトであり、駆動ローラ22と従動ローラ23に張架されて同図矢印で示す方向に循環駆動される。」

イ 「【0032】
なお、図3においては、図面を見やすくするために、トナーおよび現像剤についてハッチングを省略している。
トナー補給部7Cは、図3に示すように、トナーカートリッジ71、ホッパ72、スパイラルローラ721、およびトナー補給モータ73等により構成されており、トナーカートリッジ71に収容されているC色の補給用トナーEを制御部60の指示により現像器5Cに供給する。トナーカートリッジ71は、ホッパ72に着脱可能に装着することができるようになっている。」

ウ 「【0046】
一方、現像器5内部に収容されている現像剤のうち、トナーは画像形成に伴って消費されて新しいトナーが補給されるが、キャリアは消費されないために、複写機10の使用期間の経過に伴って劣化し、帯電性能が低下する等の問題が生じる。その場合、現像器5を複写機10に装着したまま内部の現像剤を交換することは非常に困難なため、現像器5ごと交換されることとなる。その際、トナー供給口722とトナー受入口98とのずれの大きさや方向が変化する。そこで、当該トナー供給口722とトナー受入口98とのずれに起因するトナー補給機構の個体間のトナー補給能力のばらつきについては、現像器5の初回使用時にそれぞれのトナー補給能力を検出すればよい。」

エ 「【0048】
図5は、本実施の形態におけるトナー補給係数取得処理の内容を示すフローチャートの一部であり、図6は、図5の続きを表すフローチャートである。
なお、図示していないが、複写機10全体を制御するメインルーチンが別途有り、当該メインルーチンにおいて当該トナー補給係数取得処理のサブルーチンがコールされる毎に実行される。このコールは、例えば、複写機10の電源が投入されたときやスリープ復帰時に行われる。

オ 「【0049】
まず、現像器5が初回使用時であるかどうかを判定する(ステップS1)。当該判定は、例えば、現像器5に搭載されたICチップに記録された当該現像器5の使用状況に関する情報を、初回使用情報取得部43が読み出すことにより、或いは、ユーザやサービスマンが、操作パネル16上で、初回使用である(現像器5が交換された)旨の情報を入力し、当該入力情報を初回使用情報取得部43が取得することにより行うことができる。」

カ 上記ウの段落【0046】の「現像器5ごと交換される」との記載からすれば、現像器5は交換可能であることは明らかである。

(2)引用発明3
上記(1)より、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「画像形成部12、定着部14を備えた複写機であって、
画像形成部12は、作像部20C?20Kと、作像部20に補給するトナー補給部7C?7Kを備え、
作像部20C?20Kは、それぞれ、現像器5C?5Kなどを備え、
現像器5は交換可能であり、
トナー補給部7Cは、トナーカートリッジ71等により構成され、トナーカートリッジ71に収容されているC色の補給用トナーEを制御部60の指示により現像器5Cに供給し、
トナーカートリッジ71は、ホッパ72に着脱可能に装着することができ、
現像器5に搭載されたICチップに記録された当該現像器5の使用状況に関する情報を、初回使用情報取得部43が読み出すことにより、現像器5が初回使用時であるかどうかを判定する、複写機。」

4.引用文献4について
(1)引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由において刊行物5として引用されるとともに当審拒絶理由において引用文献4として引用され、原々出願の出願前である平成23年7月14日に頒布された刊行物である特開2011-137944号公報(以下、「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0035】
図1には、本実施の形態に適用した画像形成装置10が示されている。画像形成装置10には、筐体12の内部に、感光体ユニット14が設けられている。画像形成装置10では、プロセスカラーであるY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のトナーを用いて記録紙16に画像を形成し、感光体ユニット14としては、Y色の感光体ユニット14Y、M色の感光体ユニット14M、C色の感光体ユニット14C及びK色の感光体ユニット14Kを有している(以下、総称するときは、感光体ユニット14とする)。」

イ 「【0051】
図2には、画像形成装置10の制御系の概略構成図を示した。同図に示すように、画像形成装置10の制御部64には、コントローラ66が設けられている。このコントローラ66は、CPU、ROM、RAM、及びフラッシュROM等の不揮発性メモリがシステムバスなどのバス(何れも図示省略)によって接続されて形成された一般的構成のマイクロコンピュータ、各種の入出力インターフェイス及び駆動回路を備えている。」

ウ 「【0055】
このときに、コントローラ66は、画像データからY、M、C、Kの各色のラスタデータを生成し、このラスタデータに基づいて露光ユニット22を制御することにより、画像データに応じた画像を記録紙16に形成する。
【0056】
コントローラ66は、Y、M、C、Kのラスタデータから、該当ラスタデータに基づいたトナー像を形成するときのトナー量を算出する。コントローラ66は、このトナー量を積算することにより、図示しないトナーカートリッジ内のトナー残量を把握する。」

(2)引用発明4
上記(1)より、引用文献4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

「トナーを用いて記録紙16に画像を形成する画像形成装置10であって、
画像形成装置10の制御部64には、コントローラ66が設けられ、
コントローラ66は、画像データからY、M、C、Kの各色のラスタデータを生成し、このラスタデータに基づいて露光ユニット22を制御することにより、画像データに応じた画像を記録紙16に形成し、Y、M、C、Kのラスタデータから、該当ラスタデータに基づいたトナー像を形成するときのトナー量を算出し、このトナー量を積算することにより、トナーカートリッジ内のトナー残量を把握する、
画像形成装置10。」

5.引用文献5について
(1)引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由において刊行物7として引用されるとともに当審拒絶理由において引用文献5として引用され、原々出願の出願前である平成18年12月21日に頒布された刊行物である特開2006-343621号公報(以下、「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0006】
本発明の画像形成装置は、
現像剤収容部に収容されている現像剤の量が、第1の所定量になったことを検出する現像剤量検出部と、前記現像剤の消費状況を算出する現像剤消費状況算出部と、前記現像剤に関する情報を表示する表示部と、前記現像剤消費状況算出部で算出された現像剤の消費状況を前記表示部で表示するように制御する表示制御部とを有し、
前記表示制御部は、前記現像剤量検出部から、前記現像剤が前記第1の所定量になったことを通知されると、前記第1の所定量に対応する現像剤の消費状況を前記表示部に表示するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、演算によって求めたトナー消費量が、実際の消費量に対して誤差を生じる場合にも、トナー収容部に収容されているトナー量が所定量になった段階で、正確に補正することができる。」

イ 「【0017】
図3は、画像形成装置200の画像形成部50の制御系統の構成を示すブロック図である。同図中、画像形成装置200の動作や処理を制御するエンジン制御CPU1は、CPUバス2を介して他の回路と接続されている。CPUバス2に接続されたROM3には、制御プログラムが予め書き込まれており、この制御プログラムの手順に従って、エンジン制御CPU1が後述する各種の処理を実行する。
【0018】
CPUバス2に接続されたワークRAM4は、エンジン制御CPU1が処理を実行する際に、必要な変数やデータ等を一時的に保持する。CPUバス2に接続された入力回路5には、図示しない用紙検出センサや後述するトナーローセンサ108(図2)等を含む各種センサ群6が接続されており、エンジン制御CPU1は記録媒体205(図1)の位置を検出したり、トナー量が少ないことを検出したりすることができる。
【0019】
CPUバス2に接続された画像処理回路16は、外部インターフェース17を介して図示しない上位装置より送信された画像データを受信し、受信した画像データをCPUバス2に接続されたビデオ信号処理回路7に送る。ビデオ信号処理回路7は、自身に接続されたDRAM9に入力された画像データを一旦格納し、エンジン制御CPU1により生成された印刷タイミングに従ってDRAM9から前記画像データを読み出し、LEDヘッド8群に送信することで、前記した感光ドラム103(図1)上に光電画像(静電潜像)を形成する。また、ビデオ信号処理回路7は、これと同時に印刷されたドットの数を計測することができる。尚、LEDヘッド群8は、前記した図1に示す各プロセスユニット201?204に装着された露光装置105にそれぞれ備えられた4つのLEDヘッドであり、ビデオ信号処理回路7は、各露光装置105の色に対応した画像データを各LEDヘッドに送信するものあるが、ここでは、これらの異なる4種類の画像データ送信をまとめて表現している。」

ウ 「【0025】
エンジン制御CPU1(図3)は、トナーローセンサ108(図2)の回転タイミングを、入力回路5を介して検出することで、各イメージドラムユニット102の中のトナー量が、図2(a)中の破線で示されたトナーローレベルALより少なくなったかどうかを検出できる。」

エ 「【0031】
図4のグラフの縦軸は、図2に示すトナーカートリッジ101内のトナー収容部101b及びイメージトラムユニット102内部のトナー収容部102aに残っているトナー残量Aを示し、同グラフの横軸は、後述する累積ドット数Mを示している。
以後、トナーカートリッジ101内のトナー収容部101b及びイメージトラムユニット102内部のトナー収容部102aの両方のトナー収容部を意味する場合には、単にトナー収容部と称す。
【0032】
トナー残量Aは、印刷によって消費される、トナー収容部に残っているトナーの量であり、累積ドット数Mは、印刷時にビデオ信号処理回路7で計数した印刷ドットの数を、新品トナーカートリッジに交換した時点から積算した値である。
【0033】
ここで、印刷デューティ5%で印刷されるときに1ドット当りに消費されるトナー消費量をa_(5)とし、新品トナーカートリッジに交換した当初のトナー収容部内のトナー初期量をAmとすると、これをドット数に換算した総ドット数Mmは 、Am/a_(5)となり、トナー残量Aと累積ドット数Mの関係は図4に示すように、傾き(-a_(5))の一次の直線で表せる。尚、一般的に、新品のトナーカートリッジに入っているトナーの寿命(トナー量)は、A4サイズの用紙において1色あたり5%のデューティで印刷した場合の印刷可能枚数で規定されることが多い。
【0034】
このことから、エンジン制御CPU1は、総ドット数Mmに対する累積ドット数Mの割合(M/Mm)を(%)で求め、これを表示部20(図3)で表示することで、トナー消費量を表示する。また同図に示すトナーローレベルALは、前記したトナーローセンサ108(図2)が検出するトナーの残量レベルで、ここでのトナー初期量Amに対しては、丁度残量が17%になったときのレベル(Am×0.17)に相当する。従って、ここでは、トナー消費量の83%に相当する。」

オ 「【0036】
図5は、新品のトナーカートリッジ101(図2)を装着してから前記規定の5%の印刷デューティで連続して印刷した場合のトナー残量Aとトナー消費量(%)の関係を表している。同図中、経過aまではトナー消費量が増えるに従ってトナー残量Aは線形に減少していくが、トナー消費量表示が、トナー残量AのトナーローレベルALに対応するトナー消費量(83%)の値になる同図中の経過bより少し手前の経過a(本実施の形態では80%としている)に到達した時点で、トナー消費量表示の更新を一次停止する。即ち80%を継続表示する。」

カ 「【0038】
次に、トナーローセンサ108(図2)によって、イメージドラムユニット102内のトナー残量がトナーローレベルALに達したことが検出されると、トナー消費量表示を、継続表示中の80%表示から、このトナーローレベルALに対応する経過bのトナー消費量(83%)に書き換え(リセットし)て、更新を再開する。但し、実際には、トナー残量AのトナーローレベルALに対応する累積ドット数ML(Am/a_(5)×0.83)(図4参照)を、累積ドット数Mとして上書することでリセットし、トナー消費量表示の更新を再開する。
【0039】
更に、トナー消費量表示が、100%の少し手前の経過c(本実施の形態では95%としている)に達した時点で再度トナー消費量表示の更新を一次停止する。即ち95%を継続表示する。その後の印刷により、トナーローレベルALに対応する累積ドット数MLに対して現在の累積ドット数Mが予め定められた差以上になったとき、トナーを使い果たした、即ちトナーエンプティAE(残量ゼロ)となったと判定し、トナー消費量表示を継続表示中の95%表示から100%表示に切り替える。」

キ 「【0041】
エンジン制御CPU1(図3)は、印刷終了時或いは一定枚数の印刷が完了した時点で、図6に示すトナー消費量表示のフローをスタートさせ、このフローに従ってトナー消費量表示を更新する。先ず、上記した手順によって、既にトナーエンプティAE(残量ゼロ)と判断されているか否かを判定し(ステップST101)、トナーエンプティAEと判断されている場合、トナー消費量100%を実際に表示する実表示値として設定し(ステップST110)、これを表示すべく表示部20に出力し(ステップST112)、トナー消費量表示処理を終了する。
【0042】
一方、ステップST101で、まだトナーエンプティAEではないと判定された場合、ワークRAM4から、新品トナーカートリッジに交換した時点から今までにビデオ信号処理回路7で計測したドット数を積算した累積ドット数Mを読み出し(ステップST102)、前記した総ドット数Mmに対する累積ドット数Mの割合(M/Mm)を計算した算出表示値(%)を得る(ステップST103)。次に、トナーローセンサ108(図2)によって、イメージドラムユニット102内のトナー残量がトナーローレベルALに達したこと(以後、トナーローレベルAL通過と称す)が検出されているか否かを判定し(ステップST104)、トナーローレベルAL通過が検出されていれば、更に算出表示値(%)が95%を超えているか否かを判定する(ステップST107)。
【0043】
ここで95%を超えていると判定された場合は、ステップST103で算出した算出表示値に換えて、95%を実際に表示する実表示値(図5のグラフの経過cの表示に相当する)に設定し、95%以下であれば、トナーローレベルALの検出に伴う前記リセット(前記累積ドット数MLの上書)後に更新されている算出表示値を実表示値(図5のグラフ上の経過b、c間の表示に相当する)に設定する(ステップST109)。
【0044】
一方、ステップST104で、トナーローレベルAL通過が検出されていなければ、算出表示値が80%を超えているか否かを判定し(ステップST105)、80%を超えていれば80%を実際に表示する実表示値(図5のグラフ上の経過aの表示に相当する)に設定し(ステップST106)、算出表示値が80%以下であれば、算出表示値を実表示値(図5のグラフ上の経過aまでの表示に相当する)に設定する(ステップST111)。以上のようにて設定された実表示値は、これを表示すべく表示部20に出力され(ステップST112)、トナー消費量表示処理を終了する。」

ク 引用文献5には、段落【0006】の「前記現像剤の消費状況を算出する現像剤消費状況算出部」についての具体的な実施の形態が段落【0019】、【0031】-【0034】に記載されており、印刷時に計数した印刷ドットの数を累積した累積ドット数M(段落【0019】及び【0032】を参照)と、新品トナーカートリッジに交換した当初のトナー収容部内のトナー初期量Amと、印刷デューティ5%で印刷されるときに1ドット当りに消費されるトナー消費量a_(5)から算出される総ドット数Mm(=Am/a_(5))(段落【0033】を参照)とから、「現像剤の消費状況」を示す「総ドット数Mmに対する累積ドット数Mの割合(M/Mm)」を「(%)」で算出している(段落【0034】を参照)こと、並びに、引用文献5の段落【0019】に記載のように、ビデオ信号処理回路7による印刷データの送信と同時に印刷ドットの数の計測が行われるものであることから、印刷ドットの数の計測は印刷データに基づいてなされていることは明らかであることから、引用文献5には、現像剤の消費状況を、1ドット当りに消費されるトナー消費量から算出される総ドット数と、印刷時に印刷データに基づいて計数した印刷ドットの数を累積した累積ドット数とに基づいて算出する現像剤消費状況算出部が記載されていると認められる。

(2)引用発明5
上記(1)より、引用文献5には、次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。

「現像剤収容部に収容されている現像剤の量が、第1の所定量になったことを検出する現像剤量検出部と、前記現像剤の消費状況を、印刷デューティ5%で印刷されるときに1ドット当りに消費されるトナー消費量から算出される総ドット数と、印刷時に印刷データに基づいて計数した印刷ドットの数を累積した累積ドット数とに基づいて算出する現像剤消費状況算出部と、前記現像剤に関する情報を表示する表示部と、前記現像剤消費状況算出部で算出された現像剤の消費状況を前記表示部で表示するように制御する表示制御部とを有し、
前記表示制御部は、前記現像剤量検出部から、前記現像剤が前記第1の所定量になったことを通知されると、前記第1の所定量に対応する現像剤の消費状況を前記表示部に表示するように制御することを特徴とする、
画像形成装置。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明1との対比
本願発明1と、引用発明1とを対比すると、以下のことがいえる。
ア 引用発明1の「トナー」は、記録材の一種であることから、本願発明1の「記録材」に相当する。

イ 引用発明1の「現像器」は、トナーが貯留されているのだから、本願発明1の「収容部」と引用発明1の「現像器」とは、「記録材」が「収容された」ものとの概念で共通する。

ウ 引用発明1の「画像形成装置」は、本願発明1の「画像形成装置」に相当し、引用発明1の「画像形成装置」は、「帯電器によって帯電された感光体としての感光ドラムの表面に、露光手段としての露光器によって静電潜像を形成し、この静電潜像を現像ローラを備えたトナー方式の現像器によって現像し、現像されたトナー画像を転写手段としての転写器によって、感光ドラムから記録紙上に転写するとともに、転写器の下流側に設けた定着手段としての定着器でトナー画像を永久画像として記録紙に定着する」ものであって、トナーを用いた画像の形成を行っているとともに、画像形成装置に係る技術常識を勘案すれば、「現像器によって現像」する際にトナーが現像器から供給されることは明らかであるといえるのであるから、本願発明1の「画像形成装置」と引用発明1の「画像形成装置」とは、「収容部から供給される記録材を用いて画像形成を行う画像形成手段」との概念で一致する。

エ 引用発明1の「トナー欠レベルの設定値Wet」は、トナーエンプティか否かを判定するための境目となる値であるから、本願発明1の「閾値」に相当する。

オ 引用発明1は、「待機状態から実際に、印字作業が行われて、現像器のトナーの容量が減少した場合に、CPUによってトナーエンプティか否か、つまり設定値Wetになったか否かが判定され」るものであるところ、設定値Wetになったか否かが判定するには、判定する時点における現像器のトナーの容量(残量)を求める必要があることは明らかであるから、本願発明1の「前記画像形成手段により形成される画像のドットカウントに基づき、前記収容部に収容されている記録材の残量を求める手段」及び「前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた残量」が「閾値に達したかを判定する判定手段」と、引用発明1の「待機状態から実際に、印字作業が行われて、現像器のトナーの容量が減少した場合に、CPUによってトナーエンプティか否か、つまり設定値Wetになったか否かが判定され」ることとは、「前記収容部に収容されている記録材の残量を求める手段」及び「前記求めた残量」が「閾値に達したかを判定する判定手段」という点で一致する。

カ 引用発明1の「待機状態から実際に、印字作業が行われて、現像器のトナーの容量が減少した場合に、CPUによってトナーエンプティか否か、つまり設定値Wetになったか否かが判定され、イエスの場合には、表示装置の画面にトナー欠警報が表示され、」は、現像器のトナーの容量が減少して設定値Wetになったと判定された場合に「表示装置」の画面にトナー欠警報が表示されるものであるから、本願発明1の「前記判定手段により前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた残量」が「前記閾値に達したと判定されたことに従って、ユーザに通知を行う通知手段」と、引用発明1の「待機状態から実際に、印字作業が行われて、現像器のトナーの容量が減少した場合に、CPUによってトナーエンプティか否か、つまり設定値Wetになったか否かが判定され、イエスの場合には、表示装置の画面にトナー欠警報が表示され、」とは、「前記求めた残量」が「前記閾値に達したと判定されたことに従って、ユーザに通知を行う通知手段」という点で一致する。

キ 引用発明1の「セールスマンが手動で」設定した「現像器のトナーの初期容量Wft」は、「セットされた現像器が初回の現像器でない場合」に設定されるものであって、「セットされた現像器が初回の現像器である場合」に設定される「現像器のトナーの初期容量Wft」とは異なるものであるのだから、引用発明1の「セールスマンが手動でトナー欠レベルの設定値Wetを設定するために用いる現像器のトナーの初期容量Wftを設定することを可能とする制御」とは、本願発明1の「閾値」を「変更する」ことに相当し、引用発明1の画像形成装置は、本願発明1の「閾値」を「変更する変更手段」を実質的に備えているものと認められる。

ク 引用発明1の「前記セットされた現像器が初回の現像器である場合は、CPUは、人手を介さず自動的に前記トナー欠レベルの設定値Wetを設定する制御を行う」は、「初回でない現像器」ではない場合には、CPUが、現像器をセットした際に、現像器のトナーの残量がトナー欠レベルの設定値Wetに達したかを判定する際に用いられるトナー欠レベルの設定値Wetの人手による設定を受け付けずに自動的にトナー欠レベルの設定値Wetを設定する制御を行うものであって、セールスマンが手動で設定したWftに対して一定の割合でセットされたWetが設定されないのであるから、本願発明1の「前記変更手段は、前記収容部が前記所定の種類の収容部でない場合に、前記収容部に収容できる記録材の量に対する残量の割合が閾値に達したかを判定する際に用いられる閾値を、前記デフォルトの割合から他の割合に変更しない」ことと、引用発明1の「前記セットされた現像器が初回の現像器である場合は、CPUは、人手を介さず自動的に前記トナー欠レベルの設定値Wetを設定する制御を行う」こととは、「前記収容部が前記所定」の「収容部でない場合に、前記収容部」の「記録材の」「残量」が「閾値に達したかを判定する際に用いられる閾値を、前記デフォルト」から「変更しない」ことという点で一致する。

ケ 上記アないしクから、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致する。
[一致点]
「収容部から供給される記録材を用いて画像形成を行う画像形成手段と、
前記収容部に収容されている記録材の残量を求める手段と、
前記求めた残量が閾値に達したかを判定する判定手段と、
前記求めた残量が前記閾値に達したと判定されたことに従って、ユーザに通知を行う通知手段と、
前記閾値を変更する変更手段と、を有し、
前記収容部が前記所定の収容部でない場合に、前記収容部の記録材の残量が閾値に達したかを判定する際に用いられる閾値を、前記デフォルトから変更しないことを特徴とする画像形成装置。」

コ そして、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明1は、「前記画像形成手段により形成される画像のドットカウントに基づき」、前記収容部に収容されている記録材の残量を求めるのに対し、引用発明1は、「トナー容量検出手段としてのトナー容量センサ」によって、現像器のトナーの実際に貯留されている容量を検出するものである点。

[相違点2]
本願発明1は、判定手段が、「前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた残量の割合」が閾値に達したかを判定するとともに、「前記収容部が所定の種類の収容部である場合に、」「前記変更手段により変更された前記割合を前記閾値として、」「前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた前記残量の割合」が前記閾値に達したかを判定するのに対し、引用発明1は、「CPUによってトナーエンプティか否か、つまり設定値Wetになったか否かが判定され」るものである点。

[相違点3]
本願発明1は、変更手段が、「前記閾値をデフォルトの割合からユーザの指定した割合に変更する」とともに、「前記収容部が前記所定の種類の収容部でない場合に、前記収容部に収容できる記録材の量に対する残量の割合が閾値に達したかを判定する際に用いられる閾値を、前記デフォルトの割合から他の割合に変更しない」のに対し、引用発明1は、前記セットされた現像器が「初回の現像器でない場合」は、CPUは、「セールスマンが手動でトナー欠レベルの設定値Wetを設定するために用いる現像器のトナーの初期容量Wft」を設定することを可能とする制御を行い、「前記セットされた現像器が初回の現像器である場合」は、CPUは、「人手を介さず自動的に前記トナー欠レベルの設定値Wetを設定する」ものである点。

(2)相違点についての判断
上記各相違点について以下検討する。
ア [相違点1]について
(ア)引用発明5の「現像剤」は、現像を発生させ、記録媒体に転写するために用いるものであることから、本願発明1の「記録材」に相当する。

(イ)引用発明5の「画像形成装置」は、「前記現像剤の消費状況を、印刷デューティ5%で印刷されるときに1ドット当りに消費されるトナー消費量から算出される総ドット数と、印刷時に印刷データに基づいて計数した印刷ドットの数を累積した累積ドット数とに基づいて算出する現像剤消費状況算出部」を有するものであるのだから、引用発明5は、画像形成装置によって形成される「画像のドットカウントに基づき、記録材の」消費状況を「求める手段」を有しているといえる。

(ウ)そして、引用発明1と引用発明5は、いずれもトナーを用いて画像形成を行う画像形成装置の技術分野に属するものであり、かつ、トナーの消費状況を求める点で共通の技術的手段を有するものであること、並びに、画像形成装置において、収容部の容量は、規格化され、既知であるとの技術常識にたってみれば、トナーの消費状況として、トナー消費量を算出することにかえて、トナー消費量と既知の容量に基づくトナー残量を算出するようにすることは、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項にすぎないことからすれば、引用発明1において、現像器のトナーの貯留されている容量を、引用文献5に記載の「現像剤消費状況算出部」を採用して算出することにより、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ [相違点2]ないし[相違点3]について
[相違点2]ないし[相違点3]は互いに関連するため、まとめて検討する。
(ア)引用発明2について
引用発明2において、オペレータの入力した所望の数値であって、割合で表される数値に設定変更が可能な閾値(TH1、TH2)は、予め制御部11で設定されるものであるから、デフォルトの値を有することは明らかであるとともに、当該閾値(TH1、TH2)は、交換又は補充すべき消耗品である、専用の容器に入れて使用されるトナーがあるか否かを判定・通知するために用いられるものであることからすれば、引用発明2は、本願発明1の「前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた残量の割合が閾値に達したかを判定する判定手段」、「前記判定手段により前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた残量の割合が前記閾値に達したと判定されたことに従って、ユーザに通知を行う通知手段」、及び、「前記閾値をデフォルトの割合からユーザの指定した割合に変更する変更手段」に相当する構成を備えているといえる。

(イ)引用発明1及び引用発明2に基づく本願発明1の容易想到性についての判断
引用発明1と引用発明2は、ともに、画像形成装置という共通の技術分野に属するものであって、いずれの発明もトナーの残量が所定の閾値に達したときに所定の通知を行う際の当該閾値を手動で設定することができるという共通の作用を奏するものである。
しかしながら、引用発明1は、セットされた現像器が初回の現像器でない場合に現像器のトナーの初期容量Wftをセールスマンが手動で設定しても、セットされた現像器が初回の現像器である場合に人手を介さずに自動で設定しても、トナー欠レベルの設定値Wetは、セットされた現像器のトナーの種類にかかわらず、現像器のトナーの初期容量Wftに対して常に一定の割合(15%)になるように設定されるものであるとともに、引用文献1には、トナー欠レベルの設定値Wetを一度設定した後から、現像器が新たにセットされるまでの間に、トナー欠レベルの設定値Wetを変更することを示唆する記載もないのであるから、引用発明1に、引用発明2の「割合で設定される閾値TH1,TH2をオペレータの操作にしたがって設定(変更)する」構成を適用することには阻害要因があると言わざるを得ない。
さらに、本願発明の課題に照らせば、上記相違点2ないし3に相当する本願発明1の構成が当業者の設計的事項であるということもできない。
よって、上記相違点2ないし3に係る本願発明1の発明特定事項は、当業者であっても引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に想到し得たことであるとはいえない。

(ウ)引用発明1、引用発明2、及び、引用発明3ないし5に基づく本願発明1の容易想到性についての判断
a 上記第5の3.(2)及び4.(2)でそれぞれ説示した引用発明3ないし4は、上記相違点2ないし3に相当する本願発明1の構成を示唆するものではない。

b 引用発明5は、引用文献5の段落【0042】ないし【0044】の記載から、現像剤の消費状況が「割合」で表示されることから、上記相違点2に相当する本願発明1の構成を示唆するとはいえるものの、上記相違点3に相当する本願発明1の構成を示唆するものではない。

c よって、上記相違点2ないし3に係る本願発明1の発明特定事項は、当業者であっても引用発明1、引用発明2、及び、引用発明3ないし5に基づいて容易に想到し得たことであるとはいえない。

(3)小括
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1、引用発明2、及び、引用発明3ないし5に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2ないし11について
本願発明2ないし9は、本願発明1をさらに減縮した発明であり、本願発明1の上記相違点2ないし3に係る発明特定事項を備えるものである。
また、本願発明10ないし11は、それぞれ、画像形成装置の発明である本願発明1に対応する画像形成装置の制御方法及びプログラムの発明であって、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であり、本願発明1の上記相違点2ないし5に係る発明特定事項を備えるものである。
よって、本願発明2ないし11は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2、及び、引用発明3ないし5に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.まとめ
上記1.及び2.より、本願発明1ないし11は、当業者であっても、引用発明1、引用発明2、及び、引用発明3ないし5に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 当審拒絶理由についての判断
1.特許法第36条第4項第1号について
(1)当審拒絶理由の概要
当審では、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願補正前発明3及び4、並びに、本願補正前発明3又は4を引用する本願補正前発明5ないし9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとの拒絶の理由を通知している。

(2)本願発明1ないし11が当審拒絶理由を解消しているか否かについて
上記(1)の理由に対して、令和3年1月15日付け手続補正書でした補正によって、本願補正前発明3及び4が削除されたことから、上記(1)の理由は解消した。

2.特許法第36条第6項第1号について
(1)当審拒絶理由の概要
ア 当審では、本願補正前発明1ないし11は、「記録材が収容された収容部が所定の条件を満たしている場合」であっても、画像形成装置には、収容部に収容された記録材のトナー消費係数が設定できる状況ではないのであるから、トナーLOWの閾値の変更を許可し得るものとはいえず、発明が解決しようとする課題を解決する手段が認識できるものとはいえないため、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないとの拒絶の理由を通知している。

イ 当審では、本願補正前発明1ないし2、並びに、本願補正前発明5ないし11は、発明の課題を解決するための前提となる「ドットカウントによりトナー残量を予測する手段」が反映されていないことから、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになるものと認められるため、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないとの拒絶の理由を通知している。

ウ 当審では、発明の詳細な説明には、1ドット当たりのトナー消費量を示すトナー消費係数とラスタデータとから記録材の残量を予測するCPU401が記載されているが、記録材の残量を予測するに際して、収容部に収容されている記録材の残量に基づいて記録材の残量を予測することは記載されていないことから、本願補正前発明4の「予測手段」は、発明の詳細な説明に記載したものでないとの拒絶の理由を通知している。

(2)本願発明1ないし11が当審拒絶理由を解消しているか否かについて
ア 上記(1)アの理由に対して、令和3年1月15日付け手続補正書でした補正によって、「記録材が収容された収容部が所定の条件を満たしている場合」との記載が削除され、本願発明1ないし11が、「前記収容部が前記所定の種類の収容部でない場合に、前記収容部に収容できる記録材の量に対する残量の割合が閾値に達したかを判定する際に用いられる閾値を、前記デフォルトの割合から他の割合に変更しない」ことが特定され、当該特定された事項は、発明の詳細な説明の段落【0091】及び図7に記載されていることから、上記(1)アの拒絶理由は解消した。

イ 上記(1)イの理由に対して、令和3年1月15日付け手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし11が、「前記画像形成手段により形成される画像のドットカウントに基づき、前記収容部に収容されている記録材の残量を求める」ことが特定され、当該特定された事項は、発明の詳細な説明の段落【0058】ないし【0062】に記載されていることから、上記(1)イの拒絶理由は解消した。

ウ 上記(1)ウの理由に対して、令和3年1月15日付け手続補正書でした補正によって、本願補正前発明4は削除されたことから、上記(1)ウの拒絶理由は解消した。

3.特許法第36条第6項第2号について
(1)当審拒絶理由の概要
ア 当審では、本願補正前発明1には、「前記記録材の残量が減少し閾値に達したことに従って、ユーザに通知を行う通知手段」と記載されているが、当該記載では、当該通知手段が有する機能が、ユーザに通知を行う機能であることを特定しているのか、記録材の残量が減少し閾値に達したことを判断し、ユーザに通知を行う機能であることを特定しているのかを明確に把握することができないとの拒絶の理由を通知している。

イ 当審では、本願補正前発明1には、「前記記録材が収容された収容部が所定の条件を満たしている場合に、ユーザから前記閾値を変更する指示を受け付けて前記閾値を前記ユーザから受け付けた前記値に変更することを許可し、前記記録材が収容された収容部が前記所定の条件を満たしていない場合に、ユーザから前記閾値を変更する指示を受け付けて前記閾値を変更することを禁止する制御」を行うことが記載されているが、当該記載中の「所定の条件」については、どのような条件が所定のものに該当するのかが不明であることから、「所定の条件」との記載では、その外縁が不明確と言わざるを得ないとの拒絶の理由を通知している。

ウ 当審では、本願補正前発明3及び4、並びに、本願補正前発明3又は4を引用する本願補正前発明5ないし9は明確でないとの拒絶の理由を通知している。

(2)本願発明1ないし11が当審拒絶理由を解消しているか否かについて
ア 上記(1)アの理由に対して、令和3年1月15日付け手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし9は、「前記画像形成手段により形成される画像のドットカウントに基づき、前記収容部に収容されている記録材の残量を求める手段と、前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた残量の割合が閾値に達したかを判定する判定手段と、前記判定手段により前記収容部に収容できる記録材の量に対する前記求めた残量の割合が前記閾値に達したと判定されたことに従って、ユーザに通知を行う通知手段」とを有することが特定され、「通知手段」の内容が明確に特定されたこと、及び、本願発明10ないし11についても同様に、「通知工程」の内容が明確に特定されたことから、上記(1)アの拒絶理由は解消した。

イ 上記(1)イの理由に対して、令和3年1月15日付け手続補正書でした補正によって、「前記記録材が収容された収容部が所定の条件を満たしている場合」が削除され、本願発明1ないし11において、「前記収容部が所定の種類の収容部である場合」、「前記収容部が前記所定の種類の収容部でない場合」が特定されたことにより、「所定の条件」が、所定の種類の収容部であることが明確に特定されたことから、上記(1)イの拒絶理由は解消した。

ウ 上記(1)ウの理由に対して、令和3年1月15日付け手続補正書でした補正によって、本願補正前発明3及び4は削除されたことから、上記(1)ウの拒絶理由は解消した。

4.特許法第29条第2項について
当審では、本願補正前発明1ないし11は、原々出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由を通知しているが、この通知に対して、令和3年1月15日付け手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし11が特定され、「第5 引用文献、引用発明等」、及び、「第6 対比・判断」で示したように、本願発明1ないし11は、当業者であっても、引用発明1、引用発明2、及び、引用発明3ないし5に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、特許法第29条第2項の当審拒絶理由は解消した。

第8 原査定についての判断
1.平成30年3月30日付け手続補正書でした補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない点について
上記「第2 原査定の概要」の1.は、平成30年3月30日付け手続補正書でした補正によって特定された本願査定時発明10及び12の記載から、記録材が収容された収容部が所定の条件を満たしていない場合には、設定工程で閾値が設定可能であるものの、記録材の残量が減少し、設定された閾値とは別の閾値である既定の閾値に達した場合にユーザ通知を行うように制御する内容が読み取れるが、そのような内容は当初明細書等に記載されておらず、当初明細書等に記載されているのと同然の事項でもないというものである。
しかしながら、令和3年1月15日付け手続補正書でした補正によって特定された本願発明1ないし11は、当初明細書等の段落【0091】及び図7の記載を根拠に、「前記収容部が前記所定の種類の収容部でない場合に、前記収容部に収容できる記録材の量に対する残量の割合が閾値に達したかを判定する際に用いられる閾値を、前記デフォルトの割合から他の割合に変更しない」ことが特定され、かつ、当初明細書等に記載されていないとされた上記内容を含んでいないものであるから、上記「第2 原査定の概要」の1.の拒絶理由は解消した。

2.本願査定時発明1ないし9、11及び13が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとされた点について
(ア)上記「第2 原査定の概要」の2.で示した、原査定の拒絶の理由において引用された刊行物1、3、4、5及び7は、それぞれ、上記「第5 引用文献、引用発明等」で示した引用文献1、2、3、4及び5と同一である。

(イ)また、刊行物2の段落【0058】ないし【0061】には、インク残量に基づくターゲット閾値を割合(%)で表示することが記載されていることから、上記相違点2に相当する本願発明1の構成を示唆するとはいえるものの、上記相違点3に相当する本願発明1の構成を示唆するものではないし、刊行物6には、上記相違点2ないし3に相当する本願発明1の構成については何ら記載も示唆もされていない。

(ウ)上記(ア)及び(イ)、並びに、「第5 引用文献、引用発明等」、及び、上記「第6 対比・判断」での検討を踏まえれば、令和3年1月15日付け手続補正書でした補正によって特定された本願発明1ないし11は、原査定の拒絶の理由において引用された刊行物1ないし7に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから、「第2 原査定の概要」の2.の拒絶理由は解消した。

3.まとめ
したがって、上記1.及び2.より、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし11は、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-05-25 
出願番号 特願2018-53079(P2018-53079)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G)
P 1 8・ 536- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田代 憲司  
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 古川 直樹
畑井 順一
発明の名称 画像形成装置、制御方法、及びプログラム  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 阿部 琢磨  

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