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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G05D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05D
管理番号 1374465
審判番号 不服2020-9472  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-06 
確定日 2021-05-27 
事件の表示 特願2016-240527「作業車」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月21日出願公開、特開2018- 97526〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年12月12日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 元年11月15日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月23日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 3月30日付け:拒絶査定
令和 2年 7月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和2年7月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年7月6日にされた手続補正(以下「請求時補正」という。)を却下する。

[理由]
1 請求時補正について(補正の内容)
(1)請求時補正後の特許請求の範囲の記載
請求時補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「基準走行経路に沿って作業走行した後に、前記基準走行経路に平行な複数の後続走行経路に沿って作業走行する作業車であって、
前記基準走行経路に沿って作業走行する基準走行モードと、前記後続走行経路に沿って作業走行する後続走行モードと、手動走行モードのいずれかを設定する走行モード設定部と、
前記基準走行経路の一端側に配置されたビーム投光器からの光ビームを検出する第1検出部と、
前記基準走行モードが設定された場合に、前記第1検出部からの検出信号に基づいて、車体の前記基準走行経路からの位置ずれを算出する第1位置ずれ算出部と、
作業走行によって生じた作業境界線を検出する第2検出部と、
前記後続走行モードが設定された場合に、前記第2検出部からの検出信号に基づいて、前記後続走行経路に沿って走行する前記車体の、前記作業境界線からの位置ずれを算出する第2位置ずれ算出部と、
前記基準走行モードが設定された場合に、前記第1位置ずれ算出部によって算出された位置ずれに基づいて、前記位置ずれを修正するための操舵情報を生成するとともに、前記後続走行モードが設定された場合に、前記第2位置ずれ算出部によって算出された位置ずれに基づいて、前記位置ずれを修正するための操舵情報を生成する操舵情報生成部と、を備え、
前記基準走行モードにより作業走行した後に、前記基準走行モードによる作業走行により生じた作業境界線を検出して前記後続走行モードによる作業走行を行い、その後、順次、当該後続走行モードによる作業走行の直前の後続走行モードによる作業走行により生じた作業境界線を検出して前記後続走行モードによる作業走行を行う作業車。」

(2)請求時補正前の特許請求の範囲
請求時補正前の、令和2年1月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「基準走行経路に沿って作業走行した後に、前記基準走行経路に平行な複数の後続走行経路に沿って作業走行する作業車であって、
前記基準走行経路に沿って作業走行する基準走行モードと、前記後続走行経路に沿って作業走行する後続走行モードと、手動走行モードのいずれかを設定する走行モード設定部と、
前記基準走行経路の一端側に配置されたビーム投光器からの光ビームを検出する第1検出部と、
前記基準走行モードが設定された場合に、前記第1検出部からの検出信号に基づいて、車体の前記基準走行経路からの位置ずれを算出する第1位置ずれ算出部と、
作業走行によって生じた作業境界線を検出する第2検出部と、
前記後続走行モードが設定された場合に、前記第2検出部からの検出信号に基づいて、前記後続走行経路に沿って走行する前記車体の、前記作業境界線からの位置ずれを算出する第2位置ずれ算出部と、
前記基準走行モードが設定された場合に、前記第1位置ずれ算出部によって算出された位置ずれに基づいて、前記位置ずれを修正するための操舵情報を生成するともに、前記後続走行モードが設定された場合に、前記第2位置ずれ算出部によって算出された位置ずれに基づいて、前記位置ずれを修正するための操舵情報を生成する操舵情報生成部と、を備えた作業車。」

2 補正の適否
請求時補正に係る請求項1についての補正は、以下のa及びbで示す2つの補正事項からなるため、各補正事項ごとに補正の適否を検討する。
a 請求時補正前の請求項1に記載した「前記位置ずれを修正するための操舵情報を生成するともに、」の発明特定事項を、「前記位置ずれを修正するための操舵情報を生成するとともに、」とする補正事項は、脱落していたことが明らかな助詞の「と」を補うものであるから、特許法17条の2第5項3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。
b 請求時補正前の請求項1に対して、新たに「前記基準走行モードにより作業走行した後に、前記基準走行モードによる作業走行により生じた作業境界線を検出して前記後続走行モードによる作業走行を行い、その後、順次、当該後続走行モードによる作業走行の直前の後続走行モードによる作業走行により生じた作業境界線を検出して前記後続走行モードによる作業走行を行う」との発明特定事項を追加したことは、請求時補正前の請求項1に記載された発明における「作業走行」の内容について限定を付加するものであって、請求時補正前の請求項1に記載された発明と請求時補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野(段落【0001】)及び解決しようとする課題(段落【0005】)が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、請求時補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項及び引用発明
ア 引用文献1の記載事項(下線は、当審で付した。)
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2013-70685号公報(平成25年4月22日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングハンドル部に装着する走行車両自動操舵用駆動装置を備えた農業用の走行車両に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の直進走行制御を自動的に行う農業用車両では、直進走行制御は出来ても旋回後に新たな直進するために行う旋回後の正確な進入位置を考慮した構成ではなかった。
本発明の課題は、旋回後の進入位置合わせが行える機能を備えた農業用の走行車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために次の構成を有する。
請求項1記載の発明は、走行車両(1)の操舵をするステアリングハンドル(9)と、該ステアリングハンドル(9)に連動して正転と逆転をするステアリングシャフト(15)と、該ステアリングシャフト(15)の切れ角を検出するステアリングシャフト切れ角センサ(49)と、ステアリングシャフト(15)に回転駆動力を伝達するための正逆転モータ(20)と、該正逆転モータ(20)の回転駆動力をステアリングシャフト(15)に伝達するための電磁クラッチ(22)を有する連動機構と、該電磁クラッチ(22)の作動/非作動を司る自動スイッチ(24)を有する操舵装置(25)と、走行車両(1)の前方に設置した圃場内の遠目標(X)及び/又は作業軌跡(T)を検出する操舵方向検出手段(53)と、該操舵方向検出手段(53)で検出された遠目標(X)及び/又は作業軌跡(T)を画面上に表示するモニタ(47b又は47c)と、自動スイッチ(24)の作動時に、前記モニタ(47b又は47c)で表示される遠目標(X)及び/又は作業軌跡(T)の位置に基づき操舵装置(25)の正逆転モータ(20)を作動させて圃場内で直進走行の自動操舵を行う制御構成と、ステアリングシャフト切れ角センサ(49)が所定量のステアリングシャフト切れ角を検出して走行車両(1)の旋回が開始されると判断すると自動スイッチ(24)が作動して前記直進走行の自動操舵を行う構成を開始する制御構成を有する制御装置(100)を備えたことを特徴とする走行車両である。
・・・
【0007】
請求項3記載の発明は、操舵方向検出手段(53)で遠目標(X)がモニタ(47b又は47c)上に検出されると、遠目標(X)位置に基づき前記直進走行の自動操舵を優先的に行い、あるいは作業軌跡(T)がモニタ(47b又は47c)上に検出されると、遠目標(X)位置に基づく前記直進走行の自動操舵が実行されない場合には前記作業軌跡(T)の位置に基づき前記直進走行の自動操舵を行う制御構成を制御装置(100)が備えていることを特徴とする請求項1記載の走行車両である。
・・・
【0009】
請求項5記載の発明は、制御装置(100)が、前記直進走行の自動操舵が終了すると、前記自動スイッチ(24)が切り操作されて手動操舵が行われ、前記手動操舵で旋回後に操舵方向検出手段(53)で検出された遠目標(X)がモニタ(47b又は47c)の中央に表示され、その状態で所定時間経過すると、前記自動スイッチ(24)が入り操作されて前記直進走行の自動操舵に切り替える制御構成を備えたことを特徴とする請求項1記載の走行車両である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、旋回後に自動的に直進走行の自動操舵を行う制御構成が作動して遠目標(X)位置又は作業軌跡(T)位置の情報に基づき確実にオペレータは走行車両の直進走行の位置合わせを行うことができる。
・・・
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、遠目標(X)位置に基づき前記直進走行の自動操舵を優先的に行い、作業軌跡(T)がモニタ(47b又は47c)上に検出されると、遠目標(X)位置に基づく前記直進走行の自動操舵が行われなければ、前記作業軌跡(T)の位置に基づき前記直進走行の自動操舵を行うので、走行車両の旋回後にまず遠目標(X)に基づく直進走行の自動操舵を行うことができ、旋回後の直進走行自動操舵が容易となる。
・・・
【0014】
請求項5記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、手動操舵で旋回後に操舵方向検出手段(53)で検出された遠目標(X)がモニタ(47b又は47c)の中央に表示され、その状態で所定時間経過すると前記自動スイッチ(24)が入り操作されて前記直進走行の自動操舵に切り替えることができるので、旋回終了後の直進走行の自動操舵に容易に移行できる。
・・・
【0021】
図3には、車両の内部における自動操舵用の主な装置の配置位置を示し、図4には自動操作装置の制御構成の概略図を示し、図5には自動操舵用の制御ブロック図を示す。
ステアリングハンドル9を含む操舵装置とステアリング切れ角センサ49からの信号及びカメラ53と該カメラ53で撮影した画像を処理(2値化等)するためのカメラコントローラ52からの信号が制御装置100に送信され、圃場又は圃場の外側には直進走行用の遠目標Xを配置している。
・・・
【0026】
操舵用制御装置(コントローラ)100はモータ駆動ユニット23を経由して正逆転モータ20と電磁クラッチ22を有する操舵装置25へ出力され、駆動スプロケット21、従動スプロケット16、ステアリングシャフト15、パワステユニット39、前輪操舵部48を経由して、ハンドル9の操舵角に応じて前輪2が操舵される。前輪操舵角度はステアリング切れ角センサ(操舵角センサ)49により検出され、操舵用コントローラ100にフィードバックされる。
また、車両の直進支援用のカメラコントローラ52を操舵用制御装置(制御コントローラ)100とは別に設けておき、カメラ53からの撮像信号に基づき操舵用コントローラ100により車両の操舵を行うこともできる。
【0027】
操舵用コントローラ100には図5の制御ブロック図に示すように自動モニタ47aの上に配置した前記自動操舵装置25の制御を開始させるための自動スイッチ24、オペレータによるハンドル操作量をステアリングシャフト15に連動させるためにハンドル操作量を可変抵抗器の抵抗値として出力して、ステアリングハンドル9の中立位置の調整を前記自動操舵中でも行うことができるトリムスイッチ(図示せず)、ステアリングハンドル9を中立位置に戻すための中立復帰スイッチ(図示せず)、左側又は右側に傾倒自在に設けられたモータ手動ダイヤル26等を接続し、さらに作業車両1の各種作業などの操作指令、走行速度の制御指令などを発信するための操作パネル(図示せず)と通信が出来る構成を備えている。
【0028】
また、図5の制御ブロック図に示すようにカメラ位置センサ30、作業モード切替入力スイッチ31、走行車両1の適所には前記ステアリング切れ角センサ49の他に、リフトアーム傾斜角センサ50、傾斜地走行時に車両の傾斜角度を検出する車両傾斜角度センサ51、カメラ53による目標地点までの距離を計測できる距離センサを含むカメラコントローラ52、耕耘作業機12を昇降させるトップリンクの傾斜角度検出センサ54、走行車両の車速を検出する車速センサ57及び傾斜地走行時に進行方向を補正する傾斜時補正ダイヤル61等を設けている。
【0029】
トラクタ1の直進制御中に圃場のいずれかの位置に設置される赤外線、その他の光源からなる遠目標Xを使用するとき、図7に示すカメラ53で撮像した遠目標Xの受信信号を受信モニタ47bの中央部に表示させてトラクタ1を直進走行させる。
【0030】
図7(a)の左側の図は手動での旋回中の受信モニタ47bの画面を表し、遠目標Xが左端に見えている。また、図7(a)の右側にはハンドル9を操作して行う旋回が終了して機体中心が前進時に直進する方向に遠目標Xがある状態を表す受信モニタ47bの画像を表す。この図7(a)の右側の状態のモニタ47bの画像表示が一定時間続くと直進が安定したものとして、直進制御に移行する。図10のように、カメラ53で遠目標Xを検知して後に行う直進制御は、カメラ53を機体中央に位置させる。カメラ53は左右方向のレール55上に配置された台車(図示せず)に固定されている。台車には図示しないモータと車輪があり、モータで車輪を駆動することで台車と共にカメラ53は左右方向に移動する。
【0031】
図7(a)の右側状態の判断は次のように行われる。
具体的には、図7(a)の画面の横軸に座標の数値を割り当てる(Y0?Yn)。遠目標Xの部分の画素の輝度状態は明らかに周囲と異なる変化があるので、(Y0?Yn)/2の画素部分が遠目標Xの輝度状態に相当したものになると、機体中心は遠目標に一致したことになる。その後は自動運転(直進制御)とする。遠目標Xの部分の輝度状態が(Y0?Yn)/2から外れようとするとハンドル9を自動操舵して修正して直進走行を継続する。
【0032】
上記した図10の遠目標Xを使用しなくて、既耕地側と未耕地側との境を示す作業軌跡Tに従う倣い制御を行うときは、撮像した画像の左右方向中心に作業軌跡Tを写すために、耕耘作業機12の既耕地側の端部にカメラ53を移動させる。なお、カメラ53の移動後の位置はカメラ位置センサ30(図5)の検知により分かる。これで、作業軌跡Tは受信モニタ47bの略中心位置にくるようになる。既耕地側と未耕地側との境である作業軌跡Tは、後述するヒストグラム(図14参照)を使用する画像処理から分かるので、得られた作業軌跡Tに沿ってトラクタ1を進行させる。
【0033】
また、作業モード切替入力スイッチ31は走行車両(トラクタ)1が行う作業を認識させるためのものであり、代掻き作業では倣い制御は不可能であるので作業モード切替入力スイッチ31を代掻き位置や遠目標Xの使用位置に切り替えることで、遠目標Xを用いる制御のみで直進制御を行い、また耕耘作業では作業軌跡Tに従う倣い制御と遠目標Xを用いる制御のどちらも実行できるように、入力スイッチ31を耕耘作業位置や遠目標X及び倣い使用位置に切り替える。
【0034】
またブザー63は直進制御の入り切り、直進制御中に遠目標Xや既耕地と未耕地の境(作業軌跡T)の検出認識ができなくなったとき、認識できるものの操舵系の異常で直進できないとき等の場合に作動する報知手段である。
【0035】
さらに制御装置100の出力側にある「モータ回転出力」は直進制御を行うときのハンドルモータ(正逆転モータ)20への出力があることを表し、「モータ回転方向切替出力」は直進制御を行うときに操舵方向を変更する場合のハンドルモータ(正逆転モータ)20の出力があることを表し、自動モニタ47aは自動の直進制御モードに入っていると点灯し、入っていないと消灯するモニタであり、具体的にはLED等のランプである。
【0036】
受信モニタ47bはカメラ53から画像の表示パネルであり、図7や後述する図17(b)や図18(b)等に例示される画像であり、進入位置モニタ47cは、図9に示す画像であり、圃場などへ走行車両1の進入方向を示して車両を誘導するためのモニタである。受信モニタ47bは生画像を表示してもよいし、2値化画像を表示してもよい。進入位置モニタ47cは図9には示すように複数(図では5個)のLEDを並列配置して得られるLEDの集合体である。図9に示す複数のLEDの中で中央部のLEDが点灯するようにハンドル9の操作を行うことで、直進走行制御が容易に行えるようになる。なお、受信モニタ47bで得られた遠目標Xの画像データをコントローラ100がソフトウエア的に処理して受信モニタ47bで得られた遠目標Xの画像データに対応する図9に示す進入位置モニタ47cの5個のLEDの中の適切なLEDを点灯させることができる。
【0037】
圃場上に予め固定され位置で点灯などしている遠目標Xは、トラクタ1のコントローラ100によりハンドル9の操作でカメラ53により得られる画像データの中の輝度が高いものとして判別される。
【0038】
また、図7(a)は受信モニタ47bのモニタ画面(液晶等)であり、カメラ53で撮影した生画像又は2値化画像である。前述したように、この図7(a)の中の左右方向のどこの部分に遠目標Xがあるかを判断する。図9の進入位置モニタ47cの5つのLEDと対応させるために図7(a)の受信モニタ47bの画面も横軸座標(Y0?Yn)を5分割し、遠目標Xが5分割した部分のどこの領域にあるかの判定を遠目標Xの輝度の違いで行う。この情報に基づいて前述したように図9の5つのLEDの中の適切なLEDを遠目標Xに対応するLEDとして点灯させる。ただし、中央のLEDが遠目標Xに対応するLEDであるとして点灯するためには、遠目標Xが中央の座標位置(Y0?Yn)/2にあることが条件となる。
【0039】
また、図5の電磁クラッチ出力は電磁クラッチ22が作動することを示す。電磁クラッチ22は自動操舵用の正逆転モータ20の回転動力をステアリングハンドル9に伝達するものであり、ステアリングハンドル9を回転させる正逆転モータ20を設けた自動操舵駆動装置25により自動で操舵を行うとき、正逆転モータ20とステアリングハンドル9の動力伝達部分に設けた電磁クラッチ22の入・切により容易にステアリング9の駆動の自動/手動の切り替えが行える。
・・・
【0050】
次に図7に示す受信モニタ47bと図9に示す進入位置モニタ47cを用いて車両の直進走行制御から手動旋回に入り、次の直進制御に入るまでの工程を行う例を図6のフローチャートで説明をする。
上述のようにステアリングハンドル9を回転させる正逆転モータ20を設けた自動操舵駆動装置25(図4)により自動で操舵を行うとき、正逆転モータ20とステアリングハンドル9の動力伝達部に設けた電磁クラッチ22の入・切により容易にステアリング9の駆動の自動/手動の切り替えを行うことができる。
【0051】
まず、旋回時には自動操舵駆動装置25による自動走行制御をしないようにするために自動スイッチ24がオフであることを確認して後、電磁クラッチ22もオフにする。次に電磁クラッチ22をオフとしてステアリングハンドル9の手動操作で旋回を行う場合は、旋回が開始され、所定角度以上のハンドル9の操作がなされたことをステアリング切れ角センサ49で検知して車両が旋回していると判断されると、ステップSaでカメラ53からの画像をコントローラ100が読み込んで(カメラ53からの画像データの読み込みは、直前で直進制御を行っているため、このとき既に行われているが、ここでの読み込みは旋回に使用するための読み込みという意味である。)、その読み込まれた画像データが予め決められた目印である遠目標Xであると、ステップSbで前述のように受信モニタ47bの画像の輝度からコントローラ100が判定する(図7(a)の左側の状態)と、ステップScでカメラ53により検出した遠目標Xの画像が受信モニタ47bに表示される画像の適切な位置(ここでは受信モニタ47bの画面の端(図7(a)の左側))にあれば良いが、機体が前後左右に大きく傾斜していると遠目標Xは画面の適切な位置(予定された位置)に表示出来ない。)にあるかどうかを判断し、遠目標Xの画像が受信モニタ47bの画像の端の適切な位置(略予定された位置)に表示されていると、進入位置モニタ47cをオンする。これで図6に示す自動制御のフローは終了する。
【0052】
進入位置モニタ47cがオンされると、操縦者は次工程の直進制御を行う前段階として進入位置モニタ47cを見ながら「中央部のLEDが点灯する」ようにハンドル9の操作を行い、「中央部のLEDが点灯する」、即ち、車両の中心の前方への直進方向と遠目標Xが一致すると、直進制御を再開する。この再開は自動再開でもよいし、自動スイッチを操作しての再開でもよい。
【0053】
このように手動旋回時に次工程の直進制御の前段階として、旋回終了から直進に移行するに従い車両の中心の前方への直進方向と遠目標Xを手動で合わせるための案内ガイド役が進入位置モニタ47cの役割である。ただし、前述したように、旋回中に遠目標Xが認識できれば、自動旋回も可能である。
【0054】
次に図9に示す予め進入位置モニタ47cに表示される5つのLEDを横一列に並べて車両の直進走行制御を行う例を図8のフローチャートで説明をする。なお、進入位置モニタ47cは5つのLEDを表示できる構成であるが、液晶等の画面に表示する構成としてもよい。
図9は車両の旋回(手動操作)から直進へ入るときの案内用の進入位置モニタ47cであり、旋回から直進への移行はハンドル9を手動操作して行うので、進入位置モニタ47cを見ながら進入位置モニタ47cの中央位置のLEDが点灯するようにハンドル操作を行う。進入位置モニタ47cの中央位置のLEDが点灯すると、遠目標Xと機体中心の前方への直進方向が一致するので、その後はこの状態を保持するように直進制御を行う。
【0055】
図8に示すフローが図6のフローと違うステップは、まず、図8のステップSeの「画像内か」は、図6のステップScの「適正位置」と基本的には同じである。図6のステップScの「適正位置」は、受信モニタ47bの画像内に遠目標Xを認識してさらに遠目標Xが前記画像内の想定される適正位置にあるかを判断する。図8のステップSeの「画像内か」は、遠目標Xが受信モニタ47bの画像内に認識されたことのみを判断しているが、実際には適正位置の判断が必要である。図8のステップSfとステップSgは、受信モニタ47b内に存在する遠目標Xの位置を進入位置モニタ47cに置き換える工程である。
図6、図8にはないが、自動直進制御を再開する場合や再開しない場合等ある。自動直進制御を再開する場合は、自動で再開してもよいし、自動スイッチ24を再度操作することなどで行う。
【0056】
次に、耕耘などによる作業軌跡Tの端を検出しながら自動直進操舵(倣い制御)を行う場合の制御について説明する。
図10に示す右側のトラクタ1が遠目標Xを受信モニタ47bの画面中央に取り入れて直進走行した後に、旋回して中央のトラクタ1に示すようにトラクタ1の中央にあったカメラ53をトラクタ1の左端に向けてレール55上を移動させて、耕耘などによる作業軌跡Tの端を検出しながら自動直進操舵(倣い制御)を行う。
【0057】
次に再び旋回して左端のトラクタ1に示すようにカメラ53の位置をトラクタ1の右端に移動させて、耕耘などによる作業軌跡Tの端を検出しながら自動操舵を行う。このようにして圃場全体を自動操舵しながら耕耘などの作業を行うことができる。
【0058】
また、図6に示すフローチャートのステップScに相当する図11(a)に示すフローチャートのステップShにおいて遠目標Xがガメラ53で認識出来なかった場合は、得られる画像データをコンピュータ100に読み込んで受信モニタ47bに表示し、受信モニタ47bの図17(b)の右側の画面に示すような直線状の耕耘などの作業軌跡Tを後述する方法で検出すると、図11(b)に示すように、カメラ53はトラクタ1の前側中央に配置したままで、作業軌跡Tの端を検出しながら自動走行制御を行う。このときカメラ53の位置をトラクタ1の左端に移動させて、耕耘などによる作業軌跡Tの端を検出しながら自動操舵(倣い制御)を行っても良い。
【0059】
なお、この場合は遠目標Xによる直進走行用の自動操舵は、遠目標Xが検出できないときは前記作業軌跡Tの端を検出しながら行う倣い制御で直進制御を行う。図11(a)のステップShで遠目標Xが検出できないときは作業軌跡Tの判定に移行するが、このとき作業軌跡Tを認識するとともに作業軌跡Tが画面内の適正位置であれば、ステップSiで作業軌跡Tの位置を進入位置モニタ47cのLED点灯表示に置き換えて点灯表示する。なお、作業軌跡Tそのものは、LEDを並べただけの進入位置モニタ47cでは表示出来ないので、前述のように、遠目標Xの進入位置に対応した進入位置モニタ47cのLEDを点灯するだけで行う。
【0060】
ここで、直線状の耕耘などの作業軌跡Tを検出する方法について述べる。なお、この方法は本出願人の出願発明である特開平9-238510号公報に開示した方法である。この場合は図13に示す未耕地Y1と既耕地Y2の境界Zを作業軌跡Tとする例である。
【0061】
耕耘作業時にカメラ53を、ロータリ耕耘装置等の耕耘幅の一端部に合致する位置へカメラアーム55上を左右移動させて固定し、カメラ回動モータ(図示せず)の駆動によってカメラ53を角度検出センサ(図示せず)により設定される所定の角度範囲内を回動揺動させ、図13に示す略境界Zを中心として未耕地Y1と既耕地Y2の領域間を、車速に同期させたタイミングにより高速側では早い間隔で、低速側では遅い間隔でカメラ53により土壌面を撮像する。
【0062】
この撮像により、未耕地Y1側の分析領域と既耕地Y2側の分析領域において、図14に例示するような各々周波数分析を行って得られたパワースペクトル分布が、既耕地Y2側では未耕地Y1側に対し高周波域の分布に広がりがあることから、これらの情報を基準として未耕地Y1と既耕地Y2の境界Zの検出を、図12のフローチャートに示すような手順によって行う。
【0063】
まず、前記操縦席の一側に内装した耕耘境界検出装置(図示せず)に、図13に示すように該境界Z近傍のモニタ47b上の画像69を入力し、この画像69から、例えば横及び縦軸の画素区画(158,342と413,469のポイント区画)を分析領域とし、この分析領域の輝度の変化を計測して周波数分析を行い、この分析によって、パワースペクトル分布(図示せず)を得ることができる。このパワースペクトル分布から高周波成分の情報を消去するために、このパワースペクトル分布の中心となる直流部から、例えば6画素の半径によるサークル部分以外をマスク処理する。
【0064】
このマスク処理したものを逆周波数分析を行うことによって、図示しない画像を再構築して、この再構築画像から、図14に示すようなヒストグラムを算出する。このヒストグラムのパターンは未耕地Y1側と既耕地Y2側とに各々ピークを有しているため、輝度度数の既耕地Y2側のピーク値bと未耕地Y1側のピーク値aとの差を求め、この差に別に設定する係数dを乗じ、この値に未耕地Y1側のピーク値aを加算して度数分布上の境界位置cを算出し、この境界位置cに相当する輝度レベルからしきい値を算定する。このしきい値を求める境界位置cの算出式の一例としてa+(b-a)*d=c又はb*d=cが成立する。なお、係数dは実験値等から求めることができる。
【0065】
この算定されたしきい値によって前記再構築画像を2値化し、図15に示す2値化画像62から未耕地Y1と既耕地Y2の境界Zを検出することができる。従って、未耕地Y1側のピーク値aと既耕地Y側のピーク値bからしきい値が決定されることにより、高精度の境界Zの検出が可能となる。この境界Zの検出により、角度検出センサ(図示せず)によるカメラ53の回動角度0°位置(水平状態)の検出時において、境界Zが該画像62の略中心にあれば境界Zが適正位置にあることを示しており、この条件から外れているときは条件に合致するまでステアリングホイル(図示せず)を自動的に操作して、走行車両1の進行方向を左右側に操向して(自動操作を行わずとも報知のみでも有効)、例えばロータリ耕耘装置の耕耘幅の位置を左右側に移動させる。これらの作用により、未耕地Y1と既耕地Y2の境界Zの検出精度を安定して維持できると共に、作業適応性の向上を図ることができる。」

図5


図7


図10


図13


イ 引用文献1に記載された技術的事項
上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1記載の技術は、農業用の走行車両に関するもの(【0001】)であり、直進走行制御を自動的に行い、旋回後に新たな直進をする形式の走行を行うことを前提とし、旋回後の進入位置合わせが行える機能を有するものを提供することを課題とした(【0004】-【0005】)ものである。

b 引用文献1記載の走行車両は、段落【0056】-【0057】に記載され、図10の右側に図示されるトラクタ1として記載されているように、遠目標Xを受信モニタ47bの画面中央に取り入れて(図7)直進走行した後に、旋回して、図10の中央のトラクタ1に示すようにトラクタ1の中央にあったカメラ53をトラクタ1の左端に向けてレール55上を移動させて、耕耘などによる作業軌跡Tの端を検出しながら自動直進操舵(倣い制御)を行い、次に再び旋回して、図10の左端のトラクタ1に示すようにカメラ53の位置をトラクタ1の右端に移動させて、耕耘などによる作業軌跡Tの端を検出しながら自動操舵を行い、このようにして圃場全体を自動操舵しながら耕耘などの作業を行うことができるものである。
そして、図10の図示内容も勘案すれば、最初の旋回の後の自動直進操舵(倣い制御)で検出される耕耘などによる作業軌跡Tの端は、遠目標Xを受信モニタ47bの画面中央に取り入れて直進走行したことで生じたものであることが明らかであり、最終的に「このようにして圃場全体を自動操舵しながら耕耘などの作業を行うことができる」(【0057】)のであるから、次に再び旋回した以降の自動直進操舵は、直前の自動直進操舵における耕耘などの作業で生じた作業軌跡Tの端を検出しながら、旋回を挟んで圃場全体で繰り返され、また、それぞれの自動直進操舵は、お互いに平行な経路に沿って行われることが、認められる。

c 引用文献1記載の走行車両は、カメラ53で、走行する経路の一端側に配置された遠目標Xとなる赤外線、その他の光源、及び耕耘作業の自動直進操舵によって生じた作業軌跡Tを撮像し、撮像した信号を受信モニタ47bに表示させる(【0021】,【0029】,【0056】-【0058】、図4,7,13)。

d そして、より詳細には、走行車両は、以下の(a)-(d)の操舵状態となる。
(a)遠目標Xの位置に基づき自動直進操舵を行う場合には、カメラ53を機体中央に位置させて遠目標Xを撮像し、カメラ53からの画像を表示する受信モニタ47bの遠目標Xの部分の輝度状態が、機体中心が遠目標に一致したことになる受信モニタ47bの画面中央から外れようとすると、受信用モニタ47bで得られた画像データを操舵用コントローラ100が処理し、ハンドル9を自動操舵して修正して直進走行を継続する。(【0031】、図7)、
(b)作業軌跡Tの位置に基づき自動直進操舵を行う場合には、作業軌跡Tとしての未耕地Y1と既耕地Y2の境界Zの土壌面を、カメラ53からの画像を表示する受信モニタ47bの画像の左右方向中心に写すために、耕耘作業機12の既耕地側の端部にカメラ53を移動して撮像し(【0032】)、境界Z(作業軌跡T)が該画像の略中心にないときは、受信用モニタ47bで得られた画像データを操舵用コントローラ100が処理し、境界Z(作業軌跡T)が該画像の略中心に位置するまでステアリングホイルを自動的に操作して、進行方向を左右側に操向する(【0056】-【0057】、【0065】、図10、図13)。
(c)旋回時には、自動操舵駆動装置25による自動走行制御をしないようにするために、自動スイッチ24をオフにして、ステアリングハンドル9の手動操作で旋回を行う(【0050】-【0051】、【0056】-【0057】)。
(d)遠目標Xがカメラ53で認識出来なかった場合は、得られる画像データをコンピュータ100に読み込んで受信モニタ47bに表示し、直線状の耕耘などの作業軌跡Tを検出すると、作業軌跡Tの端を検出しながら行う倣い制御で直進制御を行う(【0058】-【0059】)。

e 以上をまとめると、引用文献1記載の走行車両は、上記bからみて、「遠目標Xの位置に基づき走行する経路」に沿って「耕耘作業の自動直進操舵」した後に、「遠目標Xの位置に基づき走行する経路」に平行な複数の「作業軌跡Tの位置に基づき走行する経路」に沿って「耕耘作業の自動直進操舵」するものであることが認められる。そして、上記d(a)-(c)のとおり、「遠目標Xの位置に基づき走行する自動操舵状態」と、「作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態」と、「手動操舵で旋回する手動操舵状態」とは、それぞれ、制御の有無や内容、カメラ53の位置の点で異なるものである。そして、耕耘作業の自動直進操舵の際は、上記d(a)又は(b)のいずれかの操舵状態とするものであり、また、上記d(a)及び(d)のとおり、遠目標Xが検出されると、「遠目標Xの位置に基づき走行する自動操舵状態」となり、遠目標Xが検出されずに作業軌跡Tが検出されるときは、「作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態」となり、または、上記d(c)のとおり、自動スイッチ24をオフにして「手動操舵で旋回する手動操作状態」となるものである。
また、「遠目標Xの位置に基づき走行する自動操舵状態」と、「作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態」は、自動操舵駆動装置25により実現されるから、自動スイッチ24(【0027】)をオンとすることは当然である。
ウ 引用発明
上記ア、イを総合すると、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「遠目標Xの位置に基づき走行する経路に沿って走行した後に、前記遠目標Xの位置に基づき走行する経路に平行な複数の作業軌跡Tの位置に基づき走行する経路に沿って走行する走行車両であって、
前記遠目標Xの位置に基づき走行する自動操舵状態と、前記作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態と、手動操舵で旋回する手動操舵状態のいずれかの状態とするのに、自動スイッチ24をオンにして、前記遠目標Xが検出されると、前記遠目標Xの位置に基づき走行する自動操舵状態となり、前記遠目標Xが検出されずに作業軌跡Tが検出されるときは、前記作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態となり、又は自動スイッチ24をオフにして手動操舵で旋回する手動操舵状態となる自動スイッチ24と、
前記遠目標Xの位置に基づき走行する経路の一端側に配置された前記遠目標Xとなる赤外線、その他の光源を撮像するカメラ53と、
前記遠目標Xの位置に基づき走行する自動操舵状態にされた場合に、前記カメラ53からの信号に基づいて、前記遠目標Xの受信モニタ47bの画像表示が、機体中心が前記遠目標Xに一致したことになる画面の中央座標位置から外れようとすると、自動操舵して修正して直進走行を継続する制御装置100と、
走行によって生じた前記作業軌跡Tを撮像する前記カメラ53と、
前記作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態にされた場合に、前記作業軌跡Tの前記受信モニタ47bの画像表示が、前記作業軌跡Tが画像62の略中心にあるという条件から外れているときは条件に合致するまで走行車両1の進行方向を左右側に操向する前記制御装置100と、
前記遠目標Xの位置に基づき走行する自動操舵状態により走行した後に、前記遠目標Xの位置に基づき走行する自動操舵状態による走行により生じた前記作業軌跡Tを検出して前記作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態による走行を行い、その後、順次、当該作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態による走行の直前の作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態による走行により生じた前記作業軌跡Tを検出して前記作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態による走行を行う
走行車両。」

(3)引用発明との対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は、農業用の走行車両に関するものであり、直進走行制御を自動的に行い、旋回後に新たな直進をする形式の走行を行うことを前提としている点で、本願補正発明と、技術分野が共通する。
(イ)引用発明の「遠目標Xの位置に基づき走行する経路」は、本願補正発明の「基準走行経路」に相当し、以下同様に、「走行」は「作業走行」に、「複数の作業軌跡Tの位置に基づき走行する経路」は「後続走行経路」に、「走行車両」は「作業車」に、それぞれ相当する。
また、やはり同様に、「遠目標Xの位置に基づき走行する自動操舵状態」は「基準走行モード」に、「作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態」は「後続走行モード」に、「手動操舵で旋回する手動操舵状態」は「手動走行モード」に相当する。
そして、引用発明の「いずれかの状態とするのに、自動スイッチ24をオンにして、前記遠目標Xが検出されると、前記遠目標Xの位置に基づき走行する自動操舵状態となり、前記遠目標Xが検出されずに作業軌跡Tが検出されるときは、前記作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態となり、又は自動スイッチ24をオフにして手動操舵で旋回する手動操舵状態となる自動スイッチ24」と、本願補正発明の「いずれかを設定する走行モード設定部」を対比すると、「いずれかを選択する走行モード選択手段」という点で共通する。
さらに同様に、「遠目標Xとなる赤外線、その他の光源」は「ビーム投光器からの光ビーム」に、「撮像」は「検出」に、「作業軌跡T」は「作業境界線」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「カメラ53」は、「遠目標Xとなる赤外線、その他の光源を撮像」する場合は、本願補正発明の「ビーム投光器からの光ビームを検出する第1検出部」に相当し、同様に、「走行によって生じた作業軌跡Tを撮像」する場合は、本願補正発明の「作業走行によって生じた作業境界線を検出する第2検出部」に、相当する。
(ウ)引用発明の「前記遠目標Xの位置に基づき走行する自動操舵状態にされた場合に、前記カメラ53からの信号に基づいて、前記遠目標Xの受信モニタ47bの画像表示が、機体中心が前記遠目標Xに一致したことになる画面の中央座標位置から外れようとすると、自動操舵して修正して直進走行を継続する」ことは、本願補正発明の「前記基準走行モードが設定された場合に、前記第1検出部からの検出信号に基づいて、車体の前記基準走行経路からの位置ずれを算出」し「前記基準走行モードが設定された場合に、前記第1位置ずれ算出部によって算出された位置ずれに基づいて、前記位置ずれを修正するための操舵情報を生成する」ことに相当するから、引用発明の「制御装置100」は、本願補正発明の「第1位置ずれ算出部」及び「操舵情報生成部」の両方の制御を一体で行っているものであるといえ、これらを包含するものであると認められる。
(エ)上記(ウ)と同様に、引用発明の「前記作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態にされた場合に、前記作業軌跡Tの受信モニタ47bの画像表示が、前記作業軌跡Tが画像62の略中心にあるという条件から外れているときは条件に合致するまで走行車両1の進行方向を左右側に操向する」ことは、本願補正発明の「前記後続走行モードが設定された場合に、前記第2検出部からの検出信号に基づいて、前記後続走行経路に沿って走行する前記車体の、前記作業境界線からの位置ずれを算出」し「前記後続走行モードが設定された場合に、前記第2位置ずれ算出部によって算出された位置ずれに基づいて、前記位置ずれを修正するための操舵情報を生成する」ことに相当するから、引用発明の「制御装置100」は、本願補正発明の「第2位置ずれ算出部」及び「操舵情報生成部」の両方の制御を一体で行っているものであるといえ、これらを包含するものであると認められる。
イ 以上のことから、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「基準走行経路に沿って作業走行した後に、前記基準走行経路に平行な複数の後続走行経路に沿って作業走行する作業車であって、
前記基準走行経路に沿って作業走行する基準走行モードと、前記後続走行経路に沿って作業走行する後続走行モードと、手動走行モードのいずれかを選択する走行モード選択手段と、
前記基準走行経路の一端側に配置されたビーム投光器からの光ビームを検出する第1検出部と、
前記基準走行モードが設定された場合に、前記第1検出部からの検出信号に基づいて、車体の前記基準走行経路からの位置ずれを算出する第1位置ずれ算出部と、
作業走行によって生じた作業境界線を検出する第2検出部と、
前記後続走行モードが設定された場合に、前記第2検出部からの検出信号に基づいて、前記後続走行経路に沿って走行する前記車体の、前記作業境界線からの位置ずれを算出する第2位置ずれ算出部と、
前記基準走行モードが設定された場合に、前記第1位置ずれ算出部によって算出された位置ずれに基づいて、前記位置ずれを修正するための操舵情報を生成するとともに、前記後続走行モードが設定された場合に、前記第2位置ずれ算出部によって算出された位置ずれに基づいて、前記位置ずれを修正するための操舵情報を生成する操舵情報生成部と、を備え、
前記基準走行モードにより作業走行した後に、前記基準走行モードによる作業走行により生じた作業境界線を検出して前記後続走行モードによる作業走行を行い、その後、順次、当該後続走行モードによる作業走行の直前の後続走行モードによる作業走行により生じた作業境界線を検出して前記後続走行モードによる作業走行を行う作業車。」
<相違点>
走行モードのいずれかを選択する走行モード選択手段が、本願補正発明は、「いずれかを設定する走行モード設定部」であるのに対して、引用発明は、「いずれかの状態とするのに、自動スイッチ24をオンにして、前記遠目標Xが検出されると、前記遠目標Xの位置に基づき走行する自動操舵状態となり、遠目標Xが検出されずに作業軌跡Tが検出されるときは、前記作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態となり、又は自動スイッチ24をオフにして手動操舵で旋回する手動操舵状態となる自動スイッチ24」である点。

(4)判断
ア 相違点について
(ア)本願補正発明の「走行モード設定部」は、基準走行モード、後続走行モード及び手動走行モードの3つのモードの内の一つを、直接設定することができるのに対して、引用発明の「自動スイッチ24」は、手動走行モード(手動操舵で旋回する手動操舵状態)については、直接設定することができるものの、基準走行モード(遠目標Xの位置に基づき走行する自動操舵状態)と後続走行モード(作業軌跡Tに沿って走行する自動操舵状態)については、直接設定することはできず、最初は、基準走行モードが設定され、カメラ53が遠目標Xを検出せずに作業軌跡Tを検出する場合に、後続走行モードが設定される。
(イ)そして、引用文献1には、基準走行モードで走行する際には「カメラ53を機体中央に位置させる」(【0030】)ことが記載され、後続走行モードで走行する際には「耕耘作業機12の既耕地側の端部にカメラ53を移動させる」(【0032】)ことが記載されているから、耕耘作業を開始する際は、常にカメラ53が機体中央に位置され、当該カメラが遠目標Xを検出しない場合に、機体の既耕地側の端部に移動するものと解される。
(ウ)一方、耕耘作業は、常に未耕地で開始されるとは限られず、広い畑を数日かけて耕耘作業する場合なども当然に想定されるが、その場合は、耕耘作業の開始時に、既耕地側と未耕地側との境を示す作業軌跡Tが存在していることもある。
(エ)引用文献1に係る車両では、耕耘作業の開始時に作業軌跡Tが存在している場合であっても、最初は、カメラ53が機体中央に移動し、その後に、機体の既耕地側の端部に移動するものであり、カメラの移動が終わるまで耕耘作業を開始できないから、引用文献1に接した当業者であれば、このようなカメラの移動時間や動作が冗長であると認識し、すみやかに耕耘作業を開始しようとする動機、すなわち、後続走行モードを直接設定することの動機があるといえる。
(オ)そして、作業車両において、走行における複数のモードを、装置が判断することによって自動でモードが設定されることも、操作者が直接モードを設定部で設定することも、周知技術であって(例えば、特開平3-295766号公報[第3頁右下欄第4-17行におけるCPUによる四輪操舵制御に従って操舵モードが自動的に変更されること(前者の設定に相当。)、及び操舵モード切替スイツチを操作して任意の操舵モードへ変更すること(後者の設定に相当。)に関する記載を参照。]、及び特開2016-71426号公報[【0027】,【0046】における路上走行モードNと作業走行モードPについて、コントローラ100がミッションケース6を制御して切り替えること(前者の設定に相当。)、及び操縦者が任意の走行モードに設定出来ること(後者の設定に相当。)に関する記載を参照。])、いずれの設定方法を採るかは、当業者が適宜選択し得る事項である。
(カ)上記(イ)ないし(エ)に示すように、引用発明には、作業軌跡Tが存在している場合に、後続走行モードを直接設定することの動機が内在されているといえるし、上記(オ)に示すように、作業車両において、走行における複数のモードを、自動でモードを設定することも、操作者が直接モードを設定することも周知技術であって、いずれの設定方法を採るかは、当業者が適宜選択し得る事項であることを考え合わせると、引用発明において、手動走行モード、基準走行モード及び後続走行モードを、直接設定することができるように「走行モード設定部」を設けることは、当業者が容易に想到できた事項である。

イ 請求人の主張について
請求人は、請求の理由において、引用発明が「基本的には、遠目標Xに基づく自動操舵(本願発明の「基準走行モード」に相当)を行い、遠目標Xが検出できないときのみに自動的に作業軌跡Tに基づく倣い制御を行う構成」(引用文献1の【0059】)となっていて、引用文献1には、本願補正発明の「基準走行モードから後続走行モードへの切り替えを走行モード設定部により切り替える構成」は開示されていない旨の主張をする。
しかしながら、耕耘作業は、常に未耕地で開始されるとは限られず、作業軌跡Tが存在している場合もある(上記ア(ウ))ところ、引用文献1に係る車両では、そのような場合でも、最初にカメラ53を機体中央に移動させ、その後に、機体の既耕地側の端部に移動させるという冗長な動作を行う(上記ア(エ))ことから、当業者は、速やかに耕耘作業を開始できるように、引用発明において上記ア(カ)の「走行モード設定部」を設けることを容易に想到するといえる。
したがって、請求人の主張は採用することができない。

ウ 小活
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 請求時補正についてのむすび
よって、請求時補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年7月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-6に係る発明は、令和2年1月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-6に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2013-70685号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、実質的に、前記第2の2で検討した本願補正発明から、「前記基準走行モードにより作業走行した後に、前記基準走行モードによる作業走行により生じた作業境界線を検出して前記後続走行モードによる作業走行を行い、その後、順次、当該後続走行モードによる作業走行の直前の後続走行モードによる作業走行により生じた作業境界線を検出して前記後続走行モードによる作業走行を行う」ことの限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-03-17 
結審通知日 2021-03-23 
審決日 2021-04-08 
出願番号 特願2016-240527(P2016-240527)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05D)
P 1 8・ 575- Z (G05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 善邦  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 大山 健
田々井 正吾
発明の名称 作業車  
代理人 特許業務法人R&C  
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