• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1374487
審判番号 不服2020-4036  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-25 
確定日 2021-05-26 
事件の表示 特願2018- 32991「放電を防ぐ流体輸送システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月26日出願公開、特開2018-115766〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)6月6日(パリ条約による優先権主張 2012年6月8日 (US)アメリカ合衆国、2012年7月9日 (US)アメリカ合衆国、2012年10月12日 (US)アメリカ合衆国、2013年1月23日 (US)アメリカ合衆国、2013年1月23日 (US)アメリカ合衆国、2013年1月23日 (US)アメリカ合衆国)に出願した特願2013-119456号の一部を平成30年2月27日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 3月20日 :手続補正書
平成31年 3月22日付け:拒絶理由通知書
令和 1年 7月 1日 :意見書および手続補正書
令和 1年11月19日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 2年 3月25日 :審判請求書および手続補正書
令和 2年 9月 2日 :上申書

第2 令和2年3月25日提出の手続補正書による手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年3月25日提出の手続補正書による手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
令和2年3月25日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、令和1年7月1日提出の手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1を下記の(2)に示す請求項1に補正することを含むものである(下線は、補正箇所を示す。)。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「流体輸送システムであって、
複数の輸送部材(302、304)と、
前記複数の輸送部材(302、304)の輸送部材(302、304)を相互に接続する任意の数の接続部(112)とを備え、複数の輸送部材(302、304)と前記任意の数の接続部(112)は、前記流体輸送システム内に発生する放電の強度が選択許容値内まで低下するように選択された材料からなり、
前記任意の数の接続部(112)の一つの接続部は、前記複数の輸送部材(302、304)の第1輸送部材(302)と、前記複数の輸送部材(302、304)の第2輸送部材(304)を接続するように構成され、前記接続部は、前記接続部全体の電気抵抗が、第1輸送部材(302)と第2輸送部材(304)のうちの少なくとも1つの特定の長さを通る電気抵抗よりも低くなるように構成され、
前記輸送部材(302、304)の材料は、前記輸送部材(302、304)が選択範囲内の電気抵抗を有するように選択され、前記選択範囲には、引き起こされた電圧及び電流が望ましくない放電が形成されるレベル以下に制限されるような、100キロオーム/メートル超の、かつ、静電消散が可能になるような、100メガオーム/メートル未満のうちの少なくとも1つの単位長さ当たりの電気抵抗レベルが含まれる、流体輸送システム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「流体輸送システムであって、
複数の輸送部材(302、304)と、
前記複数の輸送部材(302、304)の輸送部材(302、304)を相互に接続する任意の数の接続部(112)とを備え、複数の輸送部材(302、304)と前記任意の数の接続部(112)は、前記流体輸送システム内に発生する放電の強度が選択許容値内まで低下するように選択された材料からなり、
前記任意の数の接続部(112)の一つの接続部は、前記複数の輸送部材(302、304)の第1輸送部材(302)と、前記複数の輸送部材(302、304)の第2輸送部材(304)を接続するように構成され、前記接続部は、前記接続部全体の電気抵抗が、第1輸送部材(302)と第2輸送部材(304)のうちの少なくとも1つの特定の長さを通る電気抵抗よりも低くなるように構成され、
前記輸送部材(302、304)の材料は、前記輸送部材(302、304)が選択範囲内の電気抵抗を有するように選択され、前記選択範囲には、引き起こされた電圧及び電流が望ましくない放電が形成されるレベル以下に制限されるような、100キロオーム/メートル超の、かつ、静電消散が可能になるような、100メガオーム/メートル未満のうちの少なくとも1つの単位長さ当たりの電気抵抗レベルが含まれ、前記輸送部材(302、304)の材料は、炭素強化プラスチック材料又は非均質金属材料を含む、流体輸送システム。」

2 本件補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「輸送部材の材料」について「炭素強化プラスチック材料又は非均質金属材料を含む」という限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。

3 独立特許要件の判断
(1)引用文献の記載事項
原査定の理由に引用され、本願優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2012/0056416号明細書(以下「引用文献1」という。)には、「SYSTEMS AND METHODS FOR ESTABLISHING ELECTRICAL CONTINUITY ABOUT PIPES AND OTHER CONDUITS(パイプおよび他の導管の電気的連続性を確立するシステムおよび方法)」に関して、図面とともに次の記載がある(下線は理解の一助のために当審にて付したものである。)。

「[0002] This invention relates to establishing electrical paths capable of dissipating electrostatic charges and more particularly, although not necessarily exclusively, to conductive seals for pipes intended to carry flammable fluids particularly in an aerospace environment.
(【0002】
本発明は、静電気を拡散可能な電気経路を確立することに関し、より具体的には、特に航空宇宙環境において引火性流体を運ぶことが意図されているパイプ用の導電性シール(封止部材)に関するが、必ずしもそれのみに限定されるものではない。」)(括弧内は、引用文献1のパテントファミリーである特表2013-541677号公報の記載を参考として当審が作成したものである。以下同様。)

「[0007] The present invention provides such means to dissipate electrical charges at junctions between fuel lines using conductive seals. Especially suitable for use in aeronautics, the present seals may be formed of polymeric materials, as are standard aeronautical seals. Suitable polymeric materials include, but are not limited to, rubber, silicon, fluorosilicon, and thermoplastics. Additionally forming the seals may be conductive materials such as metallic charges (from silver or other metals, for example), carbon, carbon fibers or nanotubes, or intrinsically conducting polymers. Preferably the conductive materials are added to the polymeric materials when the seals are formulated, although they conceivably could be applied or added later.
(【0007】
本発明では、導電性シールを用いて燃料ラインの間の接合部において電荷を拡散するための手段が提供される。本発明のシールは、特に航空技術における使用に好適であり、標準的な航空技術のシールと同様に、高分子材料で形成されてもよい。好適な高分子材料は、ゴム、シリコン、フルオロシリコン、及び熱可塑性樹脂を含むがこれらに限定されない。金属充填材(例えば、銀又は他の材料由来の金属充填材)、炭素、カーボンファイバーもしくはカーボンナノチューブ、又は真性導電性ポリマーのような導電性材料が、さらなる追加材料としてシールを形成してもよい。導電性材料は、シールを調合するときに高分子材料に添加されることが好ましいが、後から添加することも可能であることが想定される。)」

「[0016] Illustrated in the FIGURE are exemplary seals 10A and 10B of the present invention. Also depicted are pipes 14A and 14B, which are shown as separate and distinct elements each defining a respective channel 18A or 18B through which fluid may flow. To ensure continuity of fluid flow through pipes 14A and 14B, they beneficially may be connected at a junction or joint. Element 22 illustrates an example of an assembly useful for connecting pipes 14A and 14B.
[0017] Element 22 may include seals 10A and 10B as well as either or both of proof ring 26 and coupling ring 30. If present, each of proof ring 26 and coupling ring 30 is preferably made of electrically-conductive material, although coupling ring 30 in particular need not necessarily conduct electricity. Such material may comprise one or more metals, composites, or thermoplastics, although any suitable material may be used. Hence, all of pipes 14A and 14B, proof ring 26, and coupling ring 30 beneficially are configured to conduct electricity.
(【0016】
図には、本発明の例示的なシール10A及び10Bが示されている。図にはまたパイプ14A 、14Bも示されており、パイプ14Aと14Bは、流体が流れ得る各流路18Aと18Bとをそれぞれ規定する、分かれた別個の要素として図示されている。流体がパイプ14A及びパイプ14Bを通って連続して流れることを確実にするために、パイプ14A及びパイプ14Bは連結部又は接合部において接続され得ることが有益である。要素22はパイプ14A及びパイプ14Bを接続するために有益なアセンブリの一例を示している。
【0017】
要素22は、シール10A及び10Bを含み得、さらに耐性リング26及び継手リング30の一方又は両方を含み得る。耐性リング26及び継手リング30が存在する場合は、それぞれが電気伝導性材料で形成されていることが好ましいが、特に継手リング30は必ずしも電気を伝導する必要は無い。このような材料は、任意の好適な材料が用いられるが、1以上の金属、複合物又は熱可塑性プラスチックを含み得る。したがって、パイプ14A及び14B、耐性リング26、並びに継手リング30は全て、電気を伝導するように構成されるのが有益である。)」

「[0021] Testing was performed for an exemplary assembly consistent with the FIGURE. For the testing, pipes 14A-B comprised two 500 mm long tubes made of conductive, fiberglass-reinforced epoxy resin. Each of ferrules 38A-B was made of conductive, fiberglass-reinforced polyetheretherketone (PEEK), and proof ring 26 and coupling ring 30 were made of aluminum. Each of seals 10A-B was made of fluorosilicon charged with carbon and had volumic resistivity less than six ohm-centimeters. Tests conducted on the assembly yielded resistance of only 3×10^(6) ohms.
(【0021】
図と一致する例示的なアセンブリについて、試験が行われた。試験用に、パイプ14A及び14Bは、導電性ガラス繊維強化エポキシ樹脂で形成された長さ500mmの管を二つ備えて構成された。フェルール38A及び38Bの各々は導電性ガラス繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で製造され、耐性リング26及び継手リング30はアルミニウムで製造された。シール10A及び10Bの各々は、カーボンを充填したフルオロシリコンで製造され、体積抵抗率は6Ωcm未満であった。このアセンブリについて行った試験では、抵抗がわずか3×10^(6)Ωであった。)」

「[FIGURE]



以上の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「引火性流体を運ぶことが意図されているパイプおよび他の導管の電気的連続性を確立するシステムであって、
該システムは、導電性シールを用いて燃料ラインの間の接合部において電荷を拡散するための手段を提供するものであり、流体が流れ得る各流路18Aと18Bとをそれぞれ規定するパイプ14A、14Bと、前記パイプ14A及びパイプ14Bを接続するための要素22とを備え、
前記要素22は、シール10A及び10B、耐性リング26及び継手リング30の一方又は両方を含み、前記耐性リング26及び継手リング30はアルミニウムで製造され、前記シール10A及び10Bの各々は、カーボンを充填したフルオロシリコンで製造され、その体積抵抗率は6Ωcm未満であり、
導電性ガラス繊維強化エポキシ樹脂で形成された長さ500mmの管を二つ備えて構成された前記パイプ14A及び14Bと、前記耐性リング26と、前記継手リング30と、前記シール10A及び10Bと、からなるアセンブリは抵抗が3×10^(6)Ωである、
パイプおよび他の導管の電気的連続性を確立するシステム。」

(2)対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「引火性流体を運ぶことが意図されているパイプおよび他の導管の電気的連続性を確立するシステム」は、流体の運搬に供されるものであり、本件補正発明における「流体輸送システム」に相当する。
引用発明における「流体が流れ得る各流路18Aと18Bとをそれぞれ規定するパイプ14A、14B」は、パイプ14A、14Bが流体を輸送しているといえるから、本件補正発明における「複数の輸送部材」に相当する。
引用発明における「パイプ14A及びパイプ14Bを接続するための要素22」は、本件補正発明における「複数の輸送部材の輸送部材を相互に接続する任意の数の接続部」に相当し、また、引用発明における「パイプ14A及びパイプ14Bを接続するための要素22」は、本件補正発明における「前記複数の輸送部材(302、304)の第1輸送部材(302)と、前記複数の輸送部材(302、304)の第2輸送部材(304)を接続するように構成され」る「前記任意の数の接続部(112)の一つの接続部」に相当する。
引用発明における「導電性シールを用いて燃料ラインの間の接合部において電荷を拡散するための手段を提供するもの」は、電荷の拡散によりシステム内の放電強度を下げているものと認められ、また、システムの設計時に一定の許容値以下となるよう設計することは明らかである。また、引用発明においては、パイプ14A及び14Bに導電性ガラス繊維強化エポキシ樹脂、耐性リング26及び継手リング30にアルミニウム、シール10A及び10Bにはカーボンを充填したフルオロシリコン、と、特定の材料を選択していることから、本件補正発明における「複数の輸送部材(302、304)と前記任意の数の接続部(112)は、前記流体輸送システム内に発生する放電の強度が選択許容値内まで低下するように選択された材料からな」ることに相当する。
引用発明において、パイプ14A及び14Bに導電性ガラス繊維強化エポキシ樹脂、耐性リング26及び継手リング30にアルミニウム、シール10A及び10Bにはカーボンを充填したフルオロシリコンを用いており、非金属である導電性ガラス繊維強化エポキシ樹脂と、金属であるアルミニウムを比較すると、アルミニウムの方が電気抵抗が低くなることは明らかであるから、本件補正発明における「前記接続部は、前記接続部全体の電気抵抗が、第1輸送部材(302)と第2輸送部材(304)のうちの少なくとも1つの特定の長さを通る電気抵抗よりも低くなるように構成され」る構成を備えるものである。
してみると、本件補正発明と引用発明の一致点、相違点は以下のとおりである。

《一致点》
「流体輸送システムであって、
複数の輸送部材と、
前記複数の輸送部材の輸送部材を相互に接続する任意の数の接続部とを備え、複数の輸送部材と前記任意の数の接続部は、前記流体輸送システム内に発生する放電の強度が選択許容値内まで低下するように選択された材料からなり、
前記任意の数の接続部の一つの接続部は、前記複数の輸送部材の第1輸送部材と、前記複数の輸送部材の第2輸送部材を接続するように構成され、前記接続部は、前記接続部全体の電気抵抗が、第1輸送部材と第2輸送部材のうちの少なくとも1つの特定の長さを通る電気抵抗よりも低くなるように構成された、流体輸送システム。」

《相違点1》
本件補正発明においては、輸送部材(302、304)の材料は、前記輸送部材(302、304)が選択範囲内の電気抵抗を有するように選択され、前記選択範囲には、引き起こされた電圧及び電流が望ましくない放電が形成されるレベル以下に制限されるような、100キロオーム/メートル超の、かつ、静電消散が可能になるような、100メガオーム/メートル未満のうちの少なくとも1つの単位長さ当たりの電気抵抗レベルが含まれるのに対し、引用発明においては、パイプ14A及び14B、耐性リング26、継手リング30、シール10A及び10Bからなるアセンブリ全体の抵抗が3×10^(6)Ωだが、パイプ14A及び14B自体の電気抵抗は不明な点。

《相違点2》
本件補正発明における輸送部材(302、304)の材料は、炭素強化プラスチック材料又は非均質金属材料を含むのに対し、引用発明におけるパイプ14A及び14Bは導電性ガラス繊維強化エポキシ樹脂を材料に用いている点。

上記相違点1について検討する。
引用発明においては、パイプ14A及び14Bを含むアセンブリ全体の抵抗が3×10^(6)Ω(3メガオーム)であり、パイプ14A及び14Bと、アセンブリの他の構成要素である耐性リング26、継手リング30、シール10A及び10Bとが電気的に直列に接続されていることが図示されているから、アセンブリの構成要素であるパイプ14A及び14Bの抵抗値が3×10^(6)Ωを超えることはないことは、技術常識からみて明らかである。
また、アセンブリ全体の抵抗値には、耐性リング26、継手リング30、シール10A及び10Bの電気抵抗が含まれているが、引用発明において、耐性リング26および継手リング30はアルミニウムを材料に用いており、また、耐性リング26および継手リング30はパイプ14A及び14Bを接続するものであって、その電荷拡散方向である軸線方向の長さはパイプ14A及び14Bを合わせた長さより短いから(図からも明らか)、耐性リング26および継手リング30は導電性ガラス繊維強化エポキシ樹脂からなるパイプ14A及び14Bより遙かに電気抵抗が小さいと理解できる。また、シール自体の電気抵抗も6Ωcm未満と非常に小さく、アセンブリ全体の抵抗値に有意な影響を与えるものではない。
そうすると、引用発明におけるアセンブリ全体の抵抗である3×10^(6)Ωは概ねパイプ14A及び14Bの電気抵抗であると理解でき、少なくとも3×10^(6)Ωを大きく下回ることはないと認められる。
そして、パイプ14A及び14Bは、長さ500mmの管を二つ備えて構成されていることから、両者を合わせて1メートルとなり、この合わせて1メートルのパイプ14A及び14Bが、概ね3×10^(6)Ωで、少なくとも3×10^(6)Ωを大きく下回ることはない電気抵抗を有していると理解できる。
以上を総合すると、引用発明において、パイプ14A及び14Bを合わせたものの電気抵抗は、3×10^(6)オーム/メートル(3メガオーム/メートル)未満であり、かつ、3×10^(6)オーム/メートルを大きく下回るものではないと認められる。
してみると、引用発明におけるパイプ14A及び14Bの電気抵抗値は、本件補正発明における「100キロオーム/メートル超、かつ、100メガオーム/メートル未満のうちの少なくとも1つの単位長さ当たりの電気抵抗レベル」の範囲内となる。また、引用発明における3×10^(6)オーム/メートル未満であり、かつ、3×10^(6)オーム/メートルを大きく下回るものではない電気抵抗は、本件補正発明における「引き起こされた電圧及び電流が望ましくない放電が形成されるレベル以下に制限されるような」構成および「静電消散が可能になるような」構成も当然に備えていると認められる。
よって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。

上記相違点2について検討する。
パイプ等の輸送部品に、輸送部品を構成する材料の電気抵抗を考慮しながら炭素繊維強化プラスチック材料を用いることは、例えば国際公開第2012/032406号(請求項1および請求項4の記載を参照:静電荷を消散させるために、輸送部品の材料として電気抵抗が約10^(5)?約10^(9)Ω/mの材料を用いること、当該材料の一つとして炭素繊維と樹脂を組み合わせた材料を用いる点が記載されている。)、また、国際公開第2009/087372号(第3ページ第10行-第4ページ第2行には、航空機の燃料配管として50kΩ/mから4.0MΩ/mの電気抵抗値を有する複合パイプを用いること、好ましくは抵抗値が150kΩから1.4MΩの間であること、第5ページ第7-17行、図1には、実施の形態として、複合パイプのコア部に、炭素繊維強化プラスチックを用いる点が記載されている。)に記載されているように本願の優先日前周知の技術(以下「周知技術」という。)であった。
そして、引用発明においても、パイプ14Aおよび14Bの材料として、導電性ガラス繊維強化エポキシ樹脂を用いており、導電性を考慮しながら材料の選択を行っていることは明らかであるから、その材料として上記周知技術に倣って、炭素繊維強化プラスチック材料を採用して、100キロオーム/メートル超、かつ、100メガオーム/メートル未満の電気抵抗レベルとすることに何ら困難性はない。
よって、相違点2にかかる本件補正発明の構成は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

本件補正発明の効果も、引用発明および周知技術から予測できる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

審判請求人は、令和2年9月2日の上申書において「引用文献1の段落[0008]には、単にゴム(rubber)についての記載があるのみで、本願発明のように輸送部材の材料として『炭素強化プラスチック材料』を用いることが具体的に開示ないし示唆されてはいません。したがって、仮に炭素強化プラスチック材料自体が周知であったとしても、引用文献1の技術に炭素強化プラスチック材料を適用する動機付けがあるとはいえません。」と主張している。
しかしながら、引用発明においては、パイプ14Aおよび14Bの材料として、「導電性ガラス繊維強化エポキシ樹脂」を用いており、「導電性」を有し、かつ「軽量」で「強靱」な材料を用いようとしているのは明らかである。そして、引用発明において、さらなる材料の好適化を図るべく、周知技術に倣って、導電性と軽量・強靱であることを兼ね備える炭素繊維強化プラスチック材料を用いることに何ら困難性はないから、審判請求人の主張は採用できない。

(3)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし13に係る発明は、令和1年7月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は上記第2[理由]1(1)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の概要は次のとおりである。
(1)本願の請求項1ないし6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)本願の請求項1ないし13に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:米国特許出願公開第2012/0056416号明細書

3 引用文献
原査定の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]3(1)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、第2[理由]2において検討した本願補正発明から、上記第2[理由]3(2)の《相違点2》に対応する発明特定事項である「前記輸送部材(302、304)の材料は、炭素強化プラスチック材料又は非均質金属材料を含む」ものであることの限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明と引用発明は、上記第2[理由]3(2)で挙げた《相違点1》のみで文言上相違するものの、同上記第2[理由]3(2)の相違点1の検討において述べたとおり、《相違点1》は実質的な相違点ではない。
よって、本願発明と引用発明に相違点はない。
また、仮に、本願発明と引用発明とが相違するとしても、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に想到し得るものである。

5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
前記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-12-14 
結審通知日 2020-12-15 
審決日 2021-01-07 
出願番号 特願2018-32991(P2018-32991)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (F16L)
P 1 8・ 575- Z (F16L)
P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二階堂 恭弘西塚 祐斗柳本 幸雄  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 川上 佳
松下 聡
発明の名称 放電を防ぐ流体輸送システム  
代理人 園田・小林特許業務法人  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ