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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09C 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09C |
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管理番号 | 1374488 |
審判番号 | 不服2020-5911 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-04-30 |
確定日 | 2021-05-26 |
事件の表示 | 特願2018-506821「炭素コーティング粒子」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月 3日国際公開、WO2016/176237、平成30年 8月16日国内公表、特表2018-522996〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)4月27日(パリ条約に基づく優先権主張 外国庁受理 2015年(平成27年)4月30日 米国、2016年(平成28年)3月7日 米国)を国際出願日とするものであって、平成30年12月21日付けで拒絶理由が通知され、令和元年7月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月20日付けで拒絶査定がされ、令和2年4月30日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がされ、同年8月28日に上申書が提出されたものである。 第2 本願発明について 1 本願発明 本願の請求項1?22に係る発明は、令和2年4月30日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項3には次のように記載されている(以下、当該請求項3に係る発明を「本願発明」という。)。なお、本願発明は、令和元年7月5日付けの手続補正書に記載された請求項4に係る発明であって、令和2年4月30日付けの手続補正書によって、補正されていない。 「プラズマカーボンブラックコア粒子又は非炭素コア粒子であるコア粒子をインサイチューで生成すること;及び コア粒子をカーボンブラック熱分解プロセスにおいて炭素層によりコーティングして、炭素コーティング粒子を形成すること を含む、炭素コーティング粒子の調製方法。」 2 原査定における拒絶の理由 本願発明についての原査定の拒絶の理由は、平成30年12月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由2-3によって、拒絶をすべきものである、というものであり、「理由2、3」は次のようなものである。 「2.(新規性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 3.(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特表2002-511334号公報」 3 当審の判断 (1)引用文献1(特表2002-511334号公報)の記載 引用文献1には、「被覆粒子、その製造法およびその使用」(発明の名称)について次の記載がある。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 a)金属もしくは半金属と非金属との化合物からなるコア、および b)コアを少なくとも部分的に包囲し、有機材料からなるシェル から構成されている被覆粒子において、 c)シェルがカーボンブラックからなることを特徴とする、被覆粒子。 【請求項2】 コアがセラミックからなる、請求項1記載の被覆粒子。 【請求項3】 コアが二酸化ケイ素からなる、請求項1記載の被覆粒子。 【請求項4】 コアの直径が3?50nmである、請求項1から3までのいずれか1項記載の被覆粒子。 【請求項5】 被覆粒子を製造する方法において、 a)金属もしくは半金属と非金属との化合物からなる粒子を、エーロゾル形に変換し、 b)エーロゾル形の粒子を、少なくとも1つの芳香族化合物を含有するガスと接触させ、 c)エーロゾル形の粒子をガスと一緒に、マイクロ波プラズマのプラズマ帯域に導通させることを特徴とする、被覆粒子の製造法。 【請求項6】 芳香族化合物としてベンゼンもしくはベンゼン誘導体またはナフタレンもしくはナフタレン誘導体を使用する、請求項5記載の方法。 【請求項7】 付加的にメタロセンを含有するガスを使用する、請求項5または6記載の方法。 【請求項8】 メタロセンとしてフェロセンまたはマグネソセンを使用する、請求項7記載の方法。 【請求項9】 ゴムを加工する際の添加物としての、金属もしくは半金属と非金属との化合物からなるコアおよびコアを少なくとも部分的に包囲し、カーボンブラックからなるシェルから構成されている被覆粒子の使用。 【請求項10】 車両用タイヤを製造する際の添加物としての、請求項9記載の使用。」 イ 「【発明の詳細な説明】 【0001】 本発明は、請求項1の上位概念に応じた被覆粒子、請求項5による被覆粒子の製造法および請求項9による被覆粒子の使用に関する。 ・・・ 【0007】 Roempp, Chemie-Lexikonには、見出語“カーボンブラック(Russ)”に、カーボンブラックがエラストマーのため、殊にタイヤ工業における充填剤としての使用されることが更に記載されている。カーボンブラックの製造は、例えば、黒煙を出す酸素の乏しい雰囲気中の燃焼炎で芳香族炭化水素を不完全燃焼させることにより行われる。」 ウ 「【0008】 本発明の課題は、カーボンブラックと同じく簡単に高分子相中、殊にゴム中に化学的に包むことができ、かつより良好な摩耗挙動を示す粒子を提案することにあった。粒子は、均質に高分子相中に分布されうるべきであり、かつ化学的に包んだ結果、ゴムの変形の際にもはや分離しないべきである。その上、このような粒子を製造する方法が記載されるべきであり、この方法を用いて殊にナノ粒子の製造を可能にすべきである。別の課題は、粒子の使用を記載することである。 【0009】 この課題は、請求項1に記載の特徴部、請求項5に記載の方法および請求項9に記載の使用によって解決される。別の請求項において、被覆粒子、方法および使用の好ましい実施態様が記載されている。 【0010】 硬質粒子を高分子相中、殊にゴム中に包むことにより、摩耗挙動を明らかに改善することができる。摩耗挙動は、殊に車両用タイヤの場合に実質的な役割を果たしている。 【0011】 無機粒子、殊にセラミック粒子は、前処理せずに、高分子相中に均質に分布され得ない。それというのも、この粒子は高分子相と化学的に結合されないからである。 【0012】 本発明によれば、金属もしくは半金属と非金属との化合物からなるコアおよびカーボンブラックからなるシェルから構成されており、かつそのカーボンブラックシェルのために、カーボンブラック自体と同じようにして高分子相中、殊に車両用タイヤのためのゴム中に包むことができる被覆粒子が提案される。しかしながら、本発明による粒子は、カーボンブラックに対して、その硬質のコアのために高分子相の摩耗強さが高められるという利点を有する。」 エ 「【0019】 本発明は、次の図および実施例に基づいて、より詳細に説明される。 【0020】 図1は、マグネトロン1、3つのサーキュレータ2、3dB-分岐3、各分岐中の2つの方向性結合器4およびそのつどトリ-スタブ同調器5を備えた、使用される装置の略示図を示している。各分岐の導波管6は、反応管8を包囲する2つのTE_(11)-空洞共振器中で合流する。 【0021】 図2は、双方のTE_(11)-空洞共振器7を有する反応管8を示している。反応管は、被覆粒子のコアを製造するための反応ガスのガス入口9を有する。別のガス入口10は、反応ガスと反応して望ましいコアに変換されるような化合物の導入に使用される。反応ガスおよび化合物は、第一のプラズマ帯域を通過し、その中でコアを形成する。第一のプラズマ帯域に引き続き、芳香族化合物を含有するガスを導入するために使用する別のガス入口13を備えている。引き続き、コアおよびガスは、別のプラズマ帯域12を通過し、その中でコアにカーボンブラックシェルを備えさせる。生成物を(図示されていない)生成物コレクター中に捕集する。 【0022】 例1 コアを製造するための化合物として、塩化珪素SiCl_(4)をガス入口10(図2)へ導入した。酸化ケイ素を、ガス入口9を経て導入したアルゴンおよび20%酸素からなる反応ガスで、プラズマ帯域11中で反応させて二酸化ケイ素粒子に変換した。プラズマ帯域12中で、二酸化ケイ素を、ガス入口13を経て導入したフェロセン10質量%を含有する気体状ナフタレンを用いて、炭素で被覆した。反応管中の圧力は約15ミリバールであり、ガス流量は20Nl/分であり、プラズマ帯域中の温度は550℃であり、かつマイクロ波の周波数は915MHzであった。マイクロ波発振器中の振動モードとして、TE_(01)-モードを使用した。実験結果として、無定形炭素被覆を有するガラス状SiO_(2)からなるナノ粒子が得られた。 【0023】 例2 例2による実験を繰り返したが、その際、被覆するためのガスとして約10質量%のマグネソセンを有するベンゼンを使用した。系圧は約20ミリバールであり、かつ反応管中のガス流量は50Nl/分であった。双方のプラズマ帯域の温度を約700℃に高めた。実験結果として、少量の結晶化したグラファイトを有する無定形炭素の被覆を有するガラス状二酸化ケイ素粒子が得られた。 【図面の簡単な説明】 【図1】 実施例での実施のために使用した装置を示す略示図。 【図2】 装置の反応管を示す略示図。 【符号の説明】 1 マグネトロン、 2 サーキュレータ、 3 3dB-分岐、 4 方向性結合器、 5 トリ-スタブ同調器、 6 導波管、 7 空洞共振器、 8 反応管、 9 ガス入口、 10 ガス入口、 11 プラズマ帯域、 12 プラズマ帯域、 13 ガス入口」 オ 「【図1】 【図2】 」 (2)引用文献1に記載された発明(引用発明) 【0012】(上記(1)ウ)から、引用文献1には、金属もしくは半金属と非金属との化合物からなるコアと、カーボンブラックからなるシェルから構成された被覆粒子が記載され、当該被覆粒子は、【0019】?【0023】(上記(1)エ)に記載された製造方法によって製造されることが理解できる。 そして、【0022】(上記(1)エ)に記載された「例1」から、【0012】に記載された「金属もしくは半金属と非金属との化合物からなるコアと、カーボンブラックからなるシェルから構成された被覆粒子」は、「無定形炭素被覆を有するガラス状SiO_(2)からなるナノ粒子」であって、当該ナノ粒子は、被覆粒子塩化珪素SiCl_(4)をガス入口10へ導入し、ガス入口9を経て導入したアルゴン及び20%酸素からなる反応ガスで、プラズマ帯域11中で反応させて二酸化ケイ素粒子に変換し、次に、プラズマ帯域12中で、ガス入口13を経て導入したフェロセン10質量%を含有する気体状ナフタレンを用いて、該二酸化ケイ素粒子を炭素で被覆することで得られることが理解できる。 また、例1において使用される装置は、【0021】(上記(1)エ)から、被覆粒子のコアを製造するための反応ガスのガス入口9と、反応ガスと反応して望ましいコアに変換されるような化合物の導入に使用される別のガス入口10と、芳香族化合物を含有するガスを導入するために使用する別のガス入口13とを備え、 反応ガス及び化合物は、第一のプラズマ帯域を通過して、その中でコアを形成し、 第一のプラズマ帯域に引き続き、引き続き、コア及び芳香族化合物を含有するガスは、別のプラズマ帯域12を通過して、その中でコアにカーボンブラックシェルを備えさせるものであることが理解できる。 そうすると、引用文献1には、上記「例1」について、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「被覆粒子のコアを製造するための反応ガスのガス入口9と、 反応ガスと反応して望ましいコアに変換されるような化合物の導入に使用される別のガス入口10と、 芳香族化合物を含有するガスを導入するために使用する別のガス入口13とを備え、 反応ガス及び化合物は、第一のプラズマ帯域を通過して、その中でコアを形成し、 第一のプラズマ帯域に引き続き、コア及び芳香族化合物を含有するガスは、別のプラズマ帯域12を通過して、その中でコアにカーボンブラックシェルを備えさせる装置を用いた被覆粒子の調製方法であって、 被覆粒子は、無定形炭素被覆を有するガラス状SiO_(2)からなるナノ粒子であり、 プラズマ帯域中の温度はいずれも550℃であり、 塩化珪素SiCl_(4)をガス入口10へ導入し、アルゴン及び20%酸素からなる反応ガスをガス入口9に導入して、プラズマ帯域11中で反応させて二酸化ケイ素粒子のコアを製造し、 引き続いて、該二酸化ケイ素粒子を、ガス入口13にフェロセンを10質量%含有する芳香族化合物である気体状ナフタレンを導入して、プラズマ帯域12中で二酸化ケイ素粒子のコアを炭素で被覆する、 無定形炭素被覆を有するガラス状SiO_(2)からなるナノ粒子の調製方法。」 また、引用文献1には、【0023】(上記(1)エ)に記載された「例2」から、【0012】に記載された「金属もしくは半金属と非金属との化合物からなるコアと、カーボンブラックからなるシェルから構成された被覆粒子」は、「少量の結晶化したグラファイトを有する無定形炭素の被覆を有するガラス状二酸化ケイ素粒子」であって、「例1」と同様に、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「被覆粒子のコアを製造するための反応ガスのガス入口9と、 反応ガスと反応して望ましいコアに変換されるような化合物の導入に使用される別のガス入口10と、 芳香族化合物を含有するガスを導入するために使用する別のガス入口13とを備え、 反応ガス及び化合物は、第一のプラズマ帯域を通過して、その中でコアを形成し、 第一のプラズマ帯域に引き続き、コア及び芳香族化合物を含有するガスは、別のプラズマ帯域12を通過して、その中でコアにカーボンブラックシェルを備えさせる装置を用いた被覆粒子の調製方法であって、 被覆粒子は、少量の結晶化したグラファイトを有する無定形炭素の被覆を有するガラス状二酸化ケイ素粒子であり、 プラズマ帯域中の温度はいずれも約700℃であり、 塩化珪素SiCl_(4)をガス入口10へ導入し、アルゴン及び20%酸素からなる反応ガスをガス入口9に導入して、プラズマ帯域11中で反応させて二酸化ケイ素粒子のコアを製造し、 引き続いて、該二酸化ケイ素粒子を、ガス入口13にマグネソセンを約10質量%有する芳香族化合物であるベンゼンのガスを導入して、プラズマ帯域12中で、二酸化ケイ素粒子のコアを炭素で被覆する、 少量の結晶化したグラファイトを有する無定形炭素の被覆を有するガラス状二酸化ケイ素粒子の調製方法。」 (3)対比・判断 ア 本願発明と引用発明1との対比・判断 本願発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「無定形炭素被覆を有するガラス状SiO_(2)からなるナノ粒子の調製方法」において、引用発明1の「無定形炭素被覆」及び「ガラス状SiO_(2)からなるナノ粒子」は、本願発明の「炭素コーティング」及び「粒子」にそれぞれ相当するから、引用発明1の「無定形炭素被覆を有するガラス状SiO_(2)からなるナノ粒子の調製方法」は、本願発明の「炭素コーティング粒子の調製方法」に相当する。 また、引用発明1の「塩化珪素SiCl_(4)をガス入口10へ導入し、アルゴン及び20%酸素からなる反応ガスをガス入口9に導入して、プラズマ帯域11中で反応させて二酸化ケイ素粒子のコアを製造」する構成は、「二酸化ケイ素粒子」は非炭素粒子であって、プラズマ帯域11中で製造されるコアであり、引き続いて、炭素の被覆が行われることから、インサイチューで生成するものといえ、本願発明の「プラズマカーボンブラックコア粒子又は非炭素コア粒子であるコア粒子をインサイチューで生成すること」に相当する。 そして、本願発明の「コア粒子をカーボンブラック熱分解プロセスにおいて炭素層によりコーティングして、炭素コーティング粒子を形成すること」と、引用発明1の「引き続いて、該二酸化ケイ素粒子を、ガス入口13にフェロセンを10質量%含有する芳香族化合物である気体状ナフタレンを導入して、プラズマ帯域12中で二酸化ケイ素粒子のコアを炭素で被覆する」構成とは、「コア粒子を炭素層によりコーティングして、炭素コーティング粒子を形成すること」である点で共通する。 そうすると、本願発明と引用発明1とは、 「プラズマカーボンブラックコア粒子又は非炭素コア粒子であるコア粒子をインサイチューで生成すること;及び コア粒子を炭素層によりコーティングして、炭素コーティング粒子を形成すること を含む、炭素コーティング粒子の調製方法。」である点で一致し、次の点で一応の相違が認められる。 (相違点1) 炭素層によるコーティングについて、本願発明は「カーボンブラック熱分解プロセス」によるものであるのに対し、引用発明は、「ガス入口13にフェロセンを10質量%含有する芳香族化合物である気体状ナフタレンを導入して、プラズマ帯域12中で二酸化ケイ素粒子のコアを炭素で被覆する」ものである点。 ここで、相違点1について検討する。 引用発明1は、「コアにカーボンブラックシェルを備えさせる装置」を用いたものであり、そのプラズマ帯域12の温度は550℃であって、芳香族化合物であるナフタレンがプラズマ帯域12において分解して、コアである二酸化ケイ素粒子に対し炭素被覆が生成されているものである。 ここで、「カーボンブラック」とは、一般に、「黒色の非常に細かい炭素の粉末。天然ガス・油・タールなどを不完全燃焼または熱分解させて製造する。ゴムの補強剤として多用されるほか、印刷インキ・乾電池・墨の原料などにする。」(デジタル大辞林、小学館)を意味するところ、引用文献1の【0007】には、「カーボンブラックの製造は、例えば、黒煙を出す酸素の乏しい雰囲気中の燃焼炎で芳香族炭化水素を不完全燃焼させることにより行われる。」と記載されており、引用発明1の「カーボンブラック」は、酸素の乏しい雰囲気の中で芳香族炭化水素が不完全燃焼の熱分解によって生じるものを意味するといえる。 そうすると、引用発明1のプラズマ帯域12は酸素の乏しい雰囲気であることは明らかであるから、引用発明1の炭素被覆(無定形炭素被覆)の炭素は、芳香族炭化水素であるナフタレンが、プラズマ帯域12の酸素の乏しい雰囲気の中で熱分解によって生じたものであって、引用発明1の炭素被覆(無定形炭素被覆)の炭素はカーボンブラックであって、その生成は、カーボンブラック熱分解プロセスによるものということができる。 したがって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。 イ 本願発明と引用発明2との対比・判断 本願発明と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「少量の結晶化したグラファイトを有する無定形炭素の被覆を有するガラス状二酸化ケイ素粒子の調製方法」において、引用発明2の「無定形炭素の被覆」及び「ガラス状二酸化ケイ素粒子」は、本願発明の「炭素コーティング」及び「粒子」にそれぞれ相当するから、引用発明2の「少量の結晶化したグラファイトを有する無定形炭素の被覆を有するガラス状二酸化ケイ素粒子の調製方法」は、本願発明の「炭素コーティング粒子の調製方法」に相当する。 また、引用発明2の「塩化珪素SiCl_(4)をガス入口10へ導入し、アルゴン及び20%酸素からなる反応ガスをガス入口9に導入して、プラズマ帯域11中で反応させて二酸化ケイ素粒子のコアを製造」する構成は、「二酸化ケイ素粒子」は非炭素粒子であって、プラズマ帯域11中で製造されるコアであり、引き続いて、炭素の被覆が行われることから、インサイチューで生成するものといえ、本願発明の「プラズマカーボンブラックコア粒子又は非炭素コア粒子であるコア粒子をインサイチューで生成すること」に相当する。 そして、本願発明の「コア粒子をカーボンブラック熱分解プロセスにおいて炭素層によりコーティングして、炭素コーティング粒子を形成すること」と、引用発明2の「引き続いて、該二酸化ケイ素粒子を、ガス入口13にマグネソセンを約10質量%有する芳香族化合物であるベンゼンのガスを導入して、プラズマ帯域12中で、二酸化ケイ素粒子のコアを炭素で被覆する」構成とは、「コア粒子を炭素層によりコーティングして、炭素コーティング粒子を形成すること」である点で共通する。 そうすると、本願発明と引用発明2とは、 「プラズマカーボンブラックコア粒子又は非炭素コア粒子であるコア粒子をインサイチューで生成すること;及び コア粒子を炭素層によりコーティングして、炭素コーティング粒子を形成すること を含む、炭素コーティング粒子の調製方法。」である点で一致し、次の点で一応の相違が認められる。 (相違点2) 炭素層によるコーティングについて、本願発明は「カーボンブラック熱分解プロセス」によるものであるのに対し、引用発明は、「ガス入口13にマグネソセンを約10質量%有する芳香族化合物であるベンゼンのガスを導入して、プラズマ帯域12中で、二酸化ケイ素粒子のコアを炭素で被覆する」ものである点。 ここで、相違点2について検討する。 引用発明2は、「コアにカーボンブラックシェルを備えさせる装置」を用いたものであり、そのプラズマ帯域12の温度は約700℃であって、芳香族化合物であるベンゼンがプラズマ帯域12において分解して、コアである二酸化ケイ素粒子に対し炭素被覆が生成されているものである。 ここで、引用発明2の炭素被覆(無定形炭素被覆)の炭素は、芳香族炭化水素であるベンゼンが、プラズマ帯域12の酸素の乏しい雰囲気の中で熱分解によって生じたものといえるから、引用発明2の炭素被覆(無定形炭素被覆)の炭素はカーボンブラックであって、その生成は、カーボンブラック熱分解プロセスによるものということができ、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。 ウ 審判請求人の主張について 請求人は審判請求書において、次のように主張している。 「当技術分野において知られているように、フェロセンは、約400℃までは安定です。従って、上記の例1の温度(550℃)では、フェロセンは分解して、鉄不純物を生成させ、それがアモルファス炭素コーティングの中に捕捉されるものと思料されます。マグネソセンの高い反応性は、種々の化学気相堆積およびドーピング用途で利用されています。更に、マグネソセンは、酸素に暴露された場合には迅速に分解することが知られています。従って、例2に記載されたコーティングの取り組みでは、有意の量のMgを含む不純物を含むアモルファス炭素をもたらしているであろうことが思料されます。 従って、引用文献1に記載された発明によって生成されたアモルファス炭素のコーティングで予想される高い水準の不純物は、カーボンブラックの一般的な特徴である高い純度とは相容れないものです。」 しかしながら、本願発明においては、カーボンブラックの純度については規定がなく、不純物が含まれるものはカーボンブラックからは排除されるという特段の事情は見当たらない。 そして、引用発明1、2(「例1」、「例2」)の炭素被覆に不純物が含まれることがあるとしても、当該炭素被覆には、炭化水素が熱分解して生成した炭素が含まれていることには変わりがなく、引用発明1、2の炭素被覆には、カーボンブラックが含まれるものであるということができ、請求人の主張は採用することができない。 (4)まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明1又は2である。 また、仮に、本願発明と引用発明1又は2と実質的な相違があるとしても、本願発明は、引用発明1又は2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第3 むすび 以上のとおり、本願の請求項3に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、また、本願の請求項3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-12-16 |
結審通知日 | 2020-12-22 |
審決日 | 2021-01-05 |
出願番号 | 特願2018-506821(P2018-506821) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(C09C)
P 1 8・ 121- Z (C09C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 仁科 努 |
特許庁審判長 |
門前 浩一 |
特許庁審判官 |
蔵野 雅昭 川端 修 |
発明の名称 | 炭素コーティング粒子 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 木村 健治 |
代理人 | 渡辺 陽一 |
代理人 | 胡田 尚則 |
代理人 | 南山 知広 |